JP4467167B2 - 低合金耐熱鋼用溶接ワイヤ - Google Patents

低合金耐熱鋼用溶接ワイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火力技術基準:火STBA24J1(火:発電用火力設備に関する技術基準を定める省令(通商産業省)で定められた規格)等に示される低合金耐熱鋼用溶接ワイヤに関し、特に、SR(応力除去:stress relief)処理後の室温及び高温強度、靱性、クリープ強度が優れ、更に耐SR割れ性が優れた低合金耐熱鋼用溶接ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
2.25乃至3質量%Cr−1質量%Mo鋼は高温特性が優れているため、ボイラー及び化学反応容器等の高温高圧環境下において使用される材料として、従来から広く使用されている。近年、設備の高効率操業を図るために、これらの構造物の使用環境は、より一層、高温・高圧化される傾向にあり、溶接構造物を大型厚肉化したり、又は更に鋼材としてV及びNb等を添加した低合金耐熱鋼用溶接材料を使用したりする等、高強度化のための種々の対応が進められている。
【0003】
このような鋼材に対応する溶接材料としては、従来、V又はVに加えて更にNb及びW等を含有させた低合金耐熱鋼用溶接ワイヤが提案されている(例えば、特許第2622516号公報、特許第2742201号公報、特開平10−128576号公報及び特開平10−272592号公報等)。なお、溶接方法としては、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、マグ溶接、及びティグ溶接がある。能率面からサブマージアーク溶接(submerged arc welding)が多用されるが、その初層溶接又は配管等の溶接にはティグ溶接又は被覆アーク溶接の適用が不可欠である。また、マグ溶接も被覆アーク溶接に比較して能率が良いので有効な溶接方法である。
【0004】
一方、これらの溶接部には、溶接のままの状態において引張成分の残留応力が存在しており、これを解放するため、通常、SR(応力除去)処理が施される。しかし、このSR処理により析出時効による粒界割れである所謂SR割れが発生しやすい。従って、溶接材料には、長時間及び高温・高圧に曝される被溶接構造物の使用環境を考慮した諸性質、即ちクリープ強度及び焼き戻し脆化特性は勿論のこと、更にSR処理に対する耐SR割れ性が要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来から提案されている低合金耐熱鋼用溶接ワイヤは、SR処理による析出時効により粒界に所謂SR割れが発生しやすいという欠点がある。また、特開平10−128576号公報には、ワイヤに含有するCとN、更にVの各含有量を調整することにより、SR割れを抑制する技術が開示されているが、その改善効果が必ずしも十分ではなかった。本願発明者等の種々の調査の結果、SR割れは、溶接時に生じる高温割れ又は水素に起因した低温割れとは異なるものであり、溶着金属の原質部、特に、長大且つ直線的に形成された旧オーステナイト粒界が開口することにより発生することが判明している。このための対策として、グラインダ等によるドレッシングで溶着金属の原質部を除去してしまうか、又はテンパービートによって溶着金属の原質部を再加熱し組織の微細化(旧オーステナイト粒の粒界面積の増加)を図る等の技術が提案されているが、いずれも作業工数を増加させ、生産性を著しく阻害するものである。このような背景から、溶接ワイヤ自体の改善によりSR割れを防止する技術が強く望まれている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、SR処理後の室温及び高温強度、靱性、並びにクリープ強度が優れていると共に、耐SR割れ性が良好な低合金耐熱鋼用溶接ワイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る低合金耐熱鋼用溶接ワイヤは、C:0.020乃至0.090質量%、Si:0.05乃至0.70質量%、Mn:0.6乃至2.0質量%、Cr:2.00乃至3.25質量%、Mo:0.01乃至0.65質量%、W:1.3乃至3.0質量%、V:0.010乃至0.800質量%、Nb:0.005乃至0.080質量%及びN:0.0050乃至0.040質量%を含有し、更に、Niを0.25質量%以下、Bを0.0020質量%以下に規制し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本願発明者等は上述の課題を解決するべく鋭意実験研究した結果、溶接ワイヤの化学成分を調整することによって、上述の課題を解決できることを見い出した。
【0009】
即ち、本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤは、C:0.020乃至0.090質量%、Si:0.05乃至0.70質量%、Mn:0.6乃至2.0質量%、Cr:2.00乃至3.25質量%、Mo:0.01乃至0.65質量%、W:1.3乃至3.0質量%、V:0.010乃至0.800質量%、Nb:0.005乃至0.080質量%及びN:0.0050乃至0.040質量%を含有し、更に、Niを0.25質量%以下、Bを0.0020質量%以下に規制し、残部がFe及び不可避的不純物からなるものである。
【0010】
本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤの基本思想は、適用される溶接構造物の使用環境を勘案して、各種強度及び靱性等の十分な特性を得るために、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb及びNの各含有量を調整し、更に、耐SR割れ性向上のために、Ni及びBの含有量の上限値を制限したことにある。
【0011】
従来技術において、長時間、高温に曝された際の焼戻し脆化特性を改善する目的から、鋼材に含まれる不可避的不純物の含有量を制限するものは数多くある。本願発明者等が、種々実験研究を行った結果、SR割れに対しても鋼材に含まれる不可避的不純物を制限すべきものであることが判明した。しかし、不可避的不純物の制限はコスト的に多大なデメリットとなる上に、それのみでSR割れの抑制は困難であった。これに対し、本願発明者等が鋭意実験研究した結果、SR割れには粒界析出物の量が影響していること、具体的には、C及びMoの含有量が多いものほど粒界析出物量が多くなり、SR割れが発生することを知見した。また、不可避的不純物については、その含有量だけではなく、特に不可避的不純物の偏析挙動に着目した結果、Mn及びNiが不可避的不純物の粒界偏析を助長し、SR割れを引き起こしていることを知見した。また、特に、Bは粒界偏析による強度低下に対して極めて影響が大きく、SR割れの発生を引き起こしていることを知見した。
【0012】
即ち、ワイヤのC、Mn、Si、Cr、Mo、W、V、Nb及びNの各含有量の調整と、Ni及びBの含有量の制限とにより耐合金鋼の溶接材料として必要な特性(各種強度及び靱性等)を具備しつつ、SR割れを抑制できる。しかし、以上の各要件のいずれか1つが欠けても、本発明が目的としているSR処理後の室温及び高温強度、靱性並びにクリープ強度が優れると共に耐SR割れ性が良好な低合金鋼用溶接ワイヤを得ることができない。
【0013】
以下、本発明における低合金耐熱鋼用溶接ワイヤについて成分添加理由及び組成限定理由について説明する。
【0014】
C:0.020乃至0.090質量%
Cの規定は、Mn、Ni、Mo及びBと共に本発明の特徴となる構成要件の1つである。Cは焼き入れ硬化性に大きな影響を及ぼし、室温及び高温強度、クリープ強度並びに靱性を確保する上で重要な元素である。しかし、Cの含有量が0.020質量%未満では、焼き入れ性が不十分で室温強度が不足するうえ、炭化物の析出が不十分となって高温強度及びクリープ強度が不足する。一方、Cの含有量が0.090質量%を超えると、室温強度が過度に高くなって靱性が低下するうえ、粒界析出物量が増大してしまい、Mn、Ni、Mo及びBを本発明範囲内で添加しても耐SR性が劣化する。従って、ワイヤ中のCの含有量は0.020乃至0.090質量%とする。
【0015】
Si:0.05乃至0.70質量%
Siは、溶融金属の粘性を高めて、ビード形状を整える効果を有する。しかし、Siの含有量が0.05質量%未満ではこの効果が得られず、溶融金属の粘性が不足して例えば初層の裏波ビードが凸となる等、ビード形状が著しく劣化する。一方、Siの含有量が0.70質量%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎ、靱性の低下原因となり、更にSR処理によって溶接金属が脆化して靱性低下を招く。従って、ワイヤ中のSi含有量は0.05乃至0.70質量%とする。
【0016】
Mn:0.6乃至2.0質量%
Mnの規定は、C、Ni、Mo及びBと共に本発明の特徴となる構成要件の1つである。従来、焼戻し脆化特性を改善する目的から、溶接ワイヤの不可避的不純物の含有量を制限する技術が開示されているが、コストの面から限界があるうえに、SR割れの抑制は不十分であった。本発明は、このような従来技術とは異なり、粒界析出物量の調整と共に偏析を助長する元素を調整することにより、SR割れの抑制を可能としたものである。不可避的不純物以外の成分であって、SR割れ性を損なわせる成分としてMn及びNiがあり、これらは不可避的不純物の粒界偏析を助長して耐SR割れ性を損なわせる。このため、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、C、Ni、Mo及びBを本発明範囲内で添加してもSR割れの抑制が困難である。一方、Mnは靱性を向上させる効果を有しているが、Mnの含有量が0.6質量%未満であるとこの効果を得られない。従って、ワイヤ中のMn含有量は0.6乃至2.0質量%とする。
【0017】
Cr:2.00乃至3.25質量%
Crは耐食性並びに室温及び高温強度を確保するために添加するものであり、本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤの必須成分である。しかし、Crの含有量が2.00質量%未満では、十分な耐食性、室温及び高温強度が得られない。一方、Crの含有量が3.25質量%を超えると、溶接金属の靱性が低下する。従って、ワイヤ中のCrの含有量は2.00乃至3.25質量%とする。
【0018】
Mo:0.01乃至0.65質量%
Moは、Crと同様に耐食性並びに室温及び高温強度を確保するために添加するものであり、本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤの必須成分である。更に、Moの規定は、C、Mn、Ni及びBと共に、本発明の特徴となる構成要件の一つである。即ち、Moの含有量が0.65質量%超えると、靱性低下を引き起こと共に、粒界析出物量が過剰となって、C、Mn、Ni及びBを本発明範囲内で添加しても耐SR割れ性を著しく損なってしまう。一方、Moの含有量が0.01質量%未満では、十分な耐食性並びに室温及び高温強度が得られない。従って、ワイヤ中のMoの含有量は0.01乃至0.65質量%とする。
【0019】
W:1.3乃至3.0質量%
Wは、マトリックスを固溶強化すると共に、微細炭化物として析出して析出強化を図り、クリープ強度の向上に寄与する。また、Wは耐SR割れ性の向上にも寄与している。しかし、Wの含有量が1.3質量%未満であるとこの効果が得られない。一方、Wの含有量が3.0質量%を超えると溶接金属の靱性が低下する。従って、ワイヤ中のW含有量は1.3乃至3.0質量%とする。
【0020】
V:0.010乃至0.800質量%、好ましくは0.010乃至0.600 質量%
Nb:0.005乃至0.080質量%、好ましくは0.010乃至0.060質量%
V及びNbは、共に析出硬化元素であり、室温及び高温強度を確保するために添加する。しかし、Vの含有量が0.010質量%未満、Nbの含有量が0.005質量%未満では、十分な室温及び高温強度を得ることができない。一方、V及びNbの含有量が夫々0.800質量%及び0.080質量%を超えると、いずれの場合も強度が過度に高くなり、靱性低下を引き起こす。従って、ワイヤ中のVの含有量は0.010乃至0.800質量%、より好ましくは0.010乃至0.600質量%、また、Nb含有量は0.005乃至0.080質量%、より好ましくは0.010乃至0.060質量%とする。
【0021】
N:0.0050乃至0.040質量%
Nは、V又はNbと結合してV窒化物を形成し、クリープ強度を向上する効果を有する。しかし、Nの添加量が0.0050質量%未満では、この効果が得られない。また、Nを0.040質量%を超えて過剰に添加した場合には、靱性の低下を招くと共に溶接金属に球状欠陥が発生する原因となる。従って、ワイヤ中のN含有量は0.0050乃至0.040質量%とする。
【0022】
Ni:0.25質量%以下
Niは、Mnと共に不可避的不純物の粒界偏析を助長して、耐SR割れ性を損なわせるという欠点を有しているため、このNiの含有量を規制することは、C、Mn、Mo及びBの規定と共に本発明の特徴となる構成要件の1つである。Niの含有量が0.25質量%を超えると、C、Mn、Mo及びBを本発明範囲内で添加してもSR割れの抑制が困難となる。従って、ワイヤ中のNiの含有量は0.25質量%以下に規制する。
【0023】
B:0.0020質量%以下
Bは炭化物を分散して析出させることから靱性を向上する効果を有する。更に、その炭化物は高温下での安定性が優れており、クリープ強度の一層の向上に有効である。しかし、Bの含有量が0.0020質量%を超えると、耐SR割れが劣化する。従って、ワイヤ中のBの含有量は0.0020質量%以下に規制する。
【0024】
以上の要件を全て満たすことにより、低合金耐熱鋼用の溶接用ワイヤとして必要な室温強度、高温強度、クリープ強度、靱性、更に優れた耐SR割れ性が得られる。
【0025】
なお、本発明における不可避的不純物とは、P、S、Cu、Sn、As、Sb、Al、Ti及びO等がある。P及びSの最大許容含有量は夫々0.015質量%、Sn、As及びSbの最大許容含有量は、夫々0.010質量%である。また、ワイヤ表面処理として、Cuメッキを施しても、また施さなくてもよい。なお、Cuメッキを行う場合は、Cuメッキ量がワイヤの全質量当たり最大0.30質量%となるようにする。また、Al、Ti及びOの最大許容量は夫々0.04質量%である。
【0026】
本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤは、マグ溶接、ティグ溶接及びサブマージアーク溶接にも適用できることはいうまでもない。また、シールドガスについても特に制約はなく、ティグ溶接の場合、Ar又はAr+He等、マグ溶接の場合、Ar+CO2、Ar+O2又はAr+CO2+O2等種々の組成のシールドガスを使用することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の低合金耐熱鋼用溶接ワイヤを実際に製造し、その特性を本発明範囲から外れる比較例と比較して、その効果について説明する。
【0028】
下記表1及び表2に示す化学成分のソリッドワイヤ(ワイヤ径1.2mm )を作製し、下記表3に示す化学成分の母材と組み合わせて、JIS Z 3317に準じてマグ溶接を行い、試験材を作成した。そして、得られた試験材について、ビードのなじみ性、耐SR割れ性及び強度試験を行った。下記表4に各試験要領(評価基準、試験片形状及び採取位置等)を示す。なお、表4中のACは空冷、FCは炉冷を示す。
【0029】
また、図1及び図2は夫々SR割れ試験片の形状及び採取位置を示す図であって、図1(a)は側面図、図1(b)は試験片長手方向に直交する面の断面図、図1(c)は図1(b)のノッチ部分を拡大して示す断面図、また、図2は、採取位置の模式的断面図である。表3に示す組成を有する母材1の開先に、表1及び表2に示す組成を有する供試材の各ソリッドワイヤを使用し、マグ溶接を行って形成された溶接金属4において、図4に示すように、この溶接金属4の最終ビート4aを含むようにノッチ12及びスリット11を有する円筒形の試験片10を採取した。採取した円筒形の試験片10は、図1(a)に示すように、内径5mm、外形10mm、長さは15mmとした。また、試験片10のスリット11は、円筒の空洞部に至る幅0.5mmのスリットであって、このスリット11の反対側の外周面には試験片10の長手方向にノッチ12を有している。ノッチ12は、図1(c)に示すように、深さが0.5mm、幅が0.4mm、底部の曲率半径が0.2mmであるU字型の溝となっている。図2に示すように、SR割れの試験片10は、溶接金属4の表面から深さが0.5mm位置である原質部上方にUノッチ12が位置し、スリット11が下方に位置するようにして、試験片10の一部が母材の開先部分に重なる位置にて、溶接ままの状態の溶接金属4から採取した。そして、図3に示すように、矢印で示す方向に試験片10に曲げ応力を印加してUノッチ12の反対側の位置に設けた0.5mm幅の間隙を有するスリット11を0.05mmまで狭め、この狭めたスリット11をTIG電極で走査した(ノンフィラーのなめ付け溶接)。この調整により、溶接金属原質部であったUノッチ底部には引張残留応力13が加わることになる。その後、試験片10に715℃で、10時間のSRを施し、冷却した。そして、図4に示すように、試験片10の長手方向(TIG溶接方向)に対して直交する方向に、長さ5mmずつ、3つに切断し、試験片10の円筒の一方の端面及び2つの切断面の3断面A乃至Cを観察することでSR割れの有無を評価した。なお、SR割れが発生した試験材のソリッドワイヤは使用不可と判断して、クリープ試験を実施しなかった。また、引張試験、シャルピー衝撃試験、クリープ破断試験の試験片は、全て、試験片の中心が母材1の板厚中央にくるようにして溶接金属4の中央位置から採取した。なお、引張試験片及びクリープ破断試験片は、各溶接金属につき1つ採取し試験した。また、シャルピー衝撃試験用の試験片は、各溶接金属につき3つ採取し試験し、その平均値を求めた。これらの結果を下記表5及び6に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004467167
【0031】
【表2】
Figure 0004467167
【0032】
【表3】
Figure 0004467167
【0033】
【表4】
Figure 0004467167
【0034】
【表5】
Figure 0004467167
【0035】
【表6】
Figure 0004467167
【0036】
実施例1乃至6は、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb及びNの含有量がいずれも本発明範囲内であり、更にNi及びBの含有量が本発明範囲の夫々0.25及び0.0020質量%以下に規制されているため、ビートのなじみ性がよく、耐SR割れ性、室温及び高温強度、靱性、並びにクリープ破断強度がいずれも所定の性能を満足した。
【0037】
比較例7は、C及びMoの含有量がいずれも本発明範囲の下限値未満であったため、室温強度及び高温強度が共に低く、溶接ワイヤとして実用不可能であるため、クリープ破断試験は行わなかった。
【0038】
比較例8は、Cの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、SR割れが発生し、また、Moの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、室温強度が高くなりすぎ、シャルピー衝撃値が低い。従って、溶接ワイヤとして実用不可能であるため、クリープ破断試験は行わなかった。
【0039】
比較例9は、Siの含有量が本発明範囲の下限値未満であったため、ビートのなじみ性が悪く、健全な試験片の作成が不可能であったのでその他の試験は行わなかった。
【0040】
比較例10は、Si及びWの含有量がいずれも本発明範囲の上限値を超えたため、シャルピー衝撃値が小さく、クリープ破断試験は行わなかった。
【0041】
比較例11は、Mnの含有量が本発明範囲の下限値未満であったため、シャルピー衝撃値が小さく、また、Vの含有量が本発明範囲の下限値未満であったため、室温及び高温強度が低く、クリープ破断試験は行わなかった。
【0042】
比較例12は、Mnの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、SR割れが発生し、また、Vの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、シャルピー衝撃値が小さく、クリープ破断試験は行わなかった。
【0043】
比較例13は、Cr及びNbの含有量がいずれも本発明範囲の下限値未満であったため、室温及び高温強度が低く、また、比較例14は、Cr及びNbの含有量がいずれも本発明範囲の上限値を超えたため、シャルピー衝撃値が小さく、溶接ワイヤとして実用不可能であるため、クリープ破断試験は行わなかった。
【0044】
比較例15は、W及びNの含有量がいずれも本発明範囲の下限値未満であったため、クリープ破断時間が短く、比較例16はNの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、球状欠陥が発生し、健全な溶接が不可能であったため、その他の評価は行わなかった。
【0045】
比較例17及び18は、夫々Ni及びBの含有量が本発明範囲の上限値を超えたため、SR割れが発生したのでクリープ破断試験は行わなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、C、Si、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb及びNの含有量を適切に規定し、更にNi及びBの含有量を夫々0.25及び0.0020質量%以下に規制したので、SR処理後の室温及び高温強度、靱性、並びにクリープ強度が優れていると共に、耐SR割れ性が良好な低合金耐熱鋼用溶接ワイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SR割れ試験片の形状を示す図であって、(a)は側面図、(b)は試験片長手方向に直交する面の断面図、(c)は(b)のノッチ部分を拡大して示す断面図である。
【図2】採取位置の模式的断面図である。
【図3】試験片の調整要領を示す断面図である。
【図4】SR割れの観察位置を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
1;溶接母材
4;溶接金属
4a;最終ビート
10;試験片
11;スリット
12;ノッチ

Claims (1)

  1. C:0.020乃至0.090質量%、Si:0.05乃至0.70質量%、Mn:0.6乃至2.0質量%、Cr:2.00乃至3.25質量%、Mo:0.01乃至0.65質量%、W:1.3乃至3.0質量%、V:0.010乃至0.800質量%、Nb:0.005乃至0.080質量%及びN:0.0050乃至0.040質量%を含有し、更に、Niを0.25質量%以下、Bを0.0020質量%以下に規制し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする低合金耐熱鋼用溶接ワイヤ。
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