JP3458971B2 - 高温強度および被削性の優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼およびそれからなる排気系部品 - Google Patents
高温強度および被削性の優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼およびそれからなる排気系部品Info
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系部品等に適する耐熱鋳鋼に関し、特に900℃以上の
高温度での強度、および被削性の優れたオーステナイト
系耐熱鋳鋼およびそれからなる排気系部品に関する。
えば表1に従来材として示すような組成のものがある。
自動車のエキゾーストマニホールドやタービンハウジン
グ等の排気系部品等においては、使用条件が高温過酷と
なることから、表1に示すようなNi−Cr系耐熱性オ
ーステナイト鋳鉄(ニレジスト鋳鉄など)や、フェライ
ト系耐熱鋳鋼などが採用されていた。
61ー87852号公報には、C,Si,Mn,N,N
i,Cr,V,Nb,Ti,B,WおよびFeからなる
組成を特定し、クリープ強度と耐力を向上する開示があ
る。また、特開昭61ー177352号公報には、C,
Si,Mn,Cr,Ni,Al,Ti,B,Nbおよび
Feからなる組成を限定し、酸素含有量および清浄度を
特定して、高温特性とともに室温特性を改善する開示が
ある。更に、特公昭57ー8183号公報には、Fe−
Ni−Crオーステナイト系耐熱鋳鋼の炭素量を増加さ
せるとともに、Nb,Coを添加して、高温耐酸化性を
低下させずに、高温強度を向上する開示がある。更に、
特開平5−5161号公報には、Fe−Ni−Crオー
ステナイト系耐熱鋳鋼にNb,W,Mo,B,Coを添
加して、高温強度を飛躍的に向上する開示がある。
鉄、耐熱鋳鋼のうち、オーステナイト鋳鉄は、900℃
までは高温強度は比較的良好であるが、それ以上の温度
では耐久性が劣る。また、このオーステナイト鋳鉄は、
Ni含有量が多く高価であるという問題点がある。その
他にフェライト系耐熱鋳鋼があるが、通常のフェライト
系耐熱鋳鋼は、900℃以上の高温強度が絶対的に劣る
という問題点がある。
のものは、C量が0.15重量%以下と低いことによ
り、900℃以上での高温強度が不足し、またTiを
0.002〜0.5重量%含有するため、大気溶解では
有害な非金属介在物の生成を招く恐れがある。
報のものは、Niを多量に含有するため、高温でイオウ
(S)雰囲気が存在すると、損傷を受ける虞れがある。
は、高炭素(C)のため、高温で長時間の使用中に脆化
する虞れがある。
は、高温に曝される排気系部品に適するものの、オース
テナイト系耐熱鋳鋼特有の被削性に問題がある。
耐熱鋳鋼の問題点を解決し、より高温強度および被削性
に優れ、かつ安価に製造可能な耐熱鋳鋼を提供すること
を目的とする。
鋼からなる排気系部品を提供することである。
の結果、本発明者らは、Ni−Cr基オーステナイト系
耐熱鋳鋼に、Nb、WおよびMoの1種または2種、S
あるいはそれらにNを適量添加することにより、高温強
度および被削性を向上することができることを見い出
し、本発明に想到した。
被削性に優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼は、重量比率
で、 C :0.2〜0.6%,Si:1.5%以下 , Mn:2%以下, Ni:8〜20%, Cr:15〜30%, Nb:0.2〜1%, WおよびMoの1種または2種以上で、W+2Mo:1
〜6%, S :0.01〜0.5%, N :0.01〜0.3%, 残部:Feおよび不可避不純物からなることを特徴とす
る。
発明に記載の高温強度および被削性の優れたオーステナ
イト系耐熱鋳鋼からなる。そして、この排気系部品とし
ては、エキゾーストマニホールドまたはタービンハウジ
ングである。
オーステナイト系耐熱鋳鋼の各合金元素の組成範囲の限
定理由について詳細に説明する。
り、また一部基地に固溶して、固溶強化する作用があ
る。さらに、一次炭化物を形成し、高温強度を高めるの
に必要である。このような作用を有効に発揮するために
は、Cは少なくとも0.2%以上必要である。
次炭化物が過剰に析出し、靱性を著しく劣化する。この
ため、Cは0.2〜0.6%とする。強度と靱性のバラ
ンスから、望ましくは、Cは0.25〜0.5%であ
る。
化性の改善に有効な元素である。しかし、過剰に加える
とオーステナイト組織が不安定になり、高温強度の劣化
を招くので、Siの含有量は1.5%以下とする。組織
安定性の点から、望ましくは0.3〜1.5%である。
が、あまり多く加えると耐酸化性が劣化するので、2%
以下とする。耐酸化性を考慮して、望ましくは0.3〜
1.5%である。
テナイト組織とし、その組織を安定にして高温強度を高
めるのに有効な元素である。特に、900℃以上の高温
域において良好な高温強度を有するためには、8%以上
の添加が必要である。Niの増加とともに上記特性は向
上するが、20%を越えても効果は飽和し、経済的にも
不利である。そのためNi含有量は8〜20%とする。
強度と経済的な面を考慮して、望ましくは8〜15%で
ある。
化して、高温強度や耐酸化性を高めるほか、炭化物を形
成し高温強度を高めるのに有効な元素である。特に、9
00℃以上の高温域でこれらの効果を有効なものにする
ためには、15%以上の添加が必要である。しかし、添
加量が30%を越えると、過剰に二次炭化物が析出する
こと、更にはσ相などの脆い析出物などが析出し、脆化
が著しくなる。そのためCr含有量を15〜30%とす
る。組織安定性を考慮して、望ましくは17〜25%で
ある。
を改善する。また、Crの炭化物の生成を抑制すること
によって耐酸化性を向上させる。これらの効果を有効に
発揮させるためには、0.2%以上の添加が必要であ
る。しかし、多量の添加は靱性を劣化させるので上限を
1%とする。そのため、Nbの含有量は0.2〜1%と
する。靱性を考慮して、望ましくは0.3〜0.8%で
ある。
リブデン)の1種または2種以上で、W+2Mo:1〜
6% WおよびMoは高温強度を改善する。この効果を得るた
めには1%以上の添加(重量比率でW=2Moの関係が
ある)が必要である。しかし、多量に添加すると耐酸化
性が劣化するので6%が上限である。そのためWの含有
量は1〜6%とする。強度と耐酸化性を考慮して、望ま
しくは2〜4%である。なお、WとMoの効果を比較す
ると、WはMoに比して融点が高いことにより、高温強
度特に900℃以上の高温強度向上に寄与する程度が大
きい。また、WはMoより耐酸化性が優れるので高温用
途の場合、W含有鋳鋼の方がMo含有鋳鋼より有利であ
る。
し、機械加工において切粉の分断を促進するため被削性
が向上する。この効果を得るためには0.01%以上必
要である。しかし、多量に含有すると粒界に硫化物が多
量に析出し、高温強度を劣化させるので0.5%を上限
とする。そのため、Sの含有量は0.01〜0.5%と
する。被削性と高温強度のバランスを考慮して、望まし
くは0.03〜0.25%である。
イト基地を安定にする。また、結晶粒微細化に有効な元
素であり、本発明のような鍛造・圧延などの加工による
結晶粒微細化が不可能な鋳造部材では極めて有効であ
る。この結晶粒微細化により構造物として重要な材料の
延性の確保が可能になり、また、本系耐熱鋳鋼のような
オーステナイト系耐熱鋳鋼に特有な被削性が悪いという
欠点を改善できる。また、NはCの拡散速度を遅らせ析
出炭化物の凝集を遅らせるので、脆化に対して有効であ
る。この効果を得るためには、0.01%以上の添加が
必要である。しかし、多量に添加すると、Cr2N-Cr
23C6 の粒界析出を生じ、脆化を促進する一方、有効な
Cr量が減少し耐酸化性を劣化させるので、0.3%を
上限とする。脆化と耐酸化性を考慮して、望ましくは
0.03〜0.2%である。
の優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼は、特に自動車の排
気系部品として、エンジンに取り付けられるエキゾース
トマニホールドやタービンハウジングとして薄肉に鋳造
して用い、加熱冷却のサイクルを受けても変形が僅かで
あり、優れた耐久性を有する。
Y形B号供試材を作製した。なお、鋳造にあたっては、
100kg用高周波炉を用いて大気溶解し、直ちに15
50℃以上で出湯して1500℃以上で注湯した。
ーステナイト系耐熱鋳鋼については、鋳造時の湯流れが
良く、鋳造欠陥の発生が見られなかった。次に、鋳造し
た本発明材(実施例1,2,4〜17)、本発明に関す
る参考例3、および従来例21、22、23および24
の供試材(Yブロック)を加熱炉にて1000℃で2時
間保持後空冷する熱処理を行った。
〜24)は自動車のターボチャージャー用ハウジングや
エキゾーストマニホールド等の耐熱部品に使用されてい
るもので、従来例21および22の供試材は、それぞれ
耐熱性オーステナイト鋳鉄のニレジスト鋳鉄D2および
D5Sである。また、従来例23は汎用オーステナイト
系耐熱鋳鋼で,JIS規格SCH−12である。また、
従来例24は特開平5−5161号公報に開示されるオ
ーステナイト系耐熱鋳鋼である。
種の評価試験を行った。 (1)室温引張試験 標点間距離が50mm、標点の直径が14mmの丸棒試
験片(JIS4号試験片)を用いて行った。
き試験片を用いて、1000℃で行った。
試験片を用いて、加熱冷却に伴う伸び縮みを機械的に完
全に拘束した状態で、下記の条件で加熱冷却サイクルを
繰り返し、熱疲労破壊を起こさせた。下限温度:150
℃上限温度:1000℃各1サイククル:12分なお、
試験機として、電気−油圧サーボ方式の熱疲労試験機を
用いた。
000℃において200時間大気中に保持し、取り出し
後にショットブラスト処理を施して酸化スケールを除去
し、酸化試験前後の単位面積あたりの重量変化(酸化減
量:mg/mm2 )を求めることにより、耐酸化性を
評価した。以上の室温引張試験結果を表3に、高温引張
試験結果を表4に、熱疲労試験結果および酸化試験結果
を表5に示す。
ドリル試験にて調査した。表2に示すような条件で試験
を行い、10回穴明けを行った後、ドリルの逃げ面摩耗
幅を測定し、更に1穴当りの摩耗幅を比較した。
す。
に、本発明による実施例1,2,4〜17、および本発
明に関する参考例3は、従来材である従来例21、22
のニレジスト鋳鉄D2およびD5S、更に従来例23の
SCH−12と比較して、高温強度が著しく改善され、
室温性質が同等以上であることがわかる。更に、従来例
24の特開平5−5161号公報に開示されるオーステ
ナイト系耐熱鋳鋼と機械的性質がほぼ同等の性能を有し
ていることがわかる。
例1,2,4〜17、および本発明に関する参考例3
は、従来例23および24のオーステナイト系耐熱鋳鋼
と比較して著しく被削性が改善されていることがわか
る。
び17のオーステナイト系耐熱鋳鋼を用いて、自動車用
排気系部品のエキゾーストマニホールド(肉厚:2.0
〜3.4mm)およびタービンハウジング(肉厚:2.
7〜4.1mm)を鋳造した。得られた排気系部品はい
ずれも健全なものであった。
して、切削性の評価を行ったが、いずれのものにも何等
問題は生じなかった。
ンハウジングを組み付けた直列4気筒で排気量2000
ccの高性能ガソリンエンジン相当の排気ガスを発する
排気シミュレータにより、耐久試験を実施した。試験条
件として、6000回転相当での全負荷運転(連続14
分)−アイドリング(1分)−完全停止(14分)−ア
イドリング(1分)を1サイクルとする熱冷(GO−S
TOP)サイクルを、500サイクルまで実施した。全
負荷時の排気ガス温度は、タービンハウジングの入口温
度で、1050℃であった。この条件下でのエキゾース
トマニホールドの表面温度は、エキゾーストマニホール
ドの集合部で、約980℃、タービンハウジングの表面
温度は、ウエストゲート部で約1020℃であった。評
価試験の結果、熱変形によるガスの漏洩や熱亀裂は生じ
ず、優れた耐久性および信頼性を有することが確認され
た。
イト系耐熱鋳鋼は、特に高温領域において強度に優れ、
しかも室温延性を損なわず、かつ鋳造性、被削性に優れ
ているので、安価に製造することがでる。このような本
発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼は、エキゾーストマニ
ホールドやタービンハウジング等の自動車用排気系部品
に好適である。本発明のオーステナイト系耐熱鋳鋼から
なる排気系部品は、高温強度に優れ、極めて優れた耐久
性を示す。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量比率で、 C :0.2〜0.6%,Si:1.5%以下 , Mn:2%以下, Ni:8〜20%, Cr:15〜30%, Nb:0.2〜1%, WおよびMoの1種または2種以上で、W+2Mo:1
〜6%, S :0.01〜0.5%, N :0.01〜0.3%, 残部:Feおよび不可避不純物からなることを特徴とす
る高温強度および被削性の優れたオーステナイト系耐熱
鋳鋼。 - 【請求項2】 請求項1に記載の高温強度および被削性
の優れたオーステナイト系耐熱鋳鋼からなる排気系部
品。 - 【請求項3】 請求項2に記載の排気系部品において、
エキゾーストマニホールドであることを特徴とする排気
系部品。 - 【請求項4】 請求項2に記載の排気系部品において、
タービンハウジングであることを特徴とする排気系部
品。
Priority Applications (1)
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1994
- 1994-04-14 JP JP07580294A patent/JP3458971B2/ja not_active Expired - Lifetime
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