JPH06168811A - 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法

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JPH06168811A JP5180647A JP18064793A JPH06168811A JP H06168811 A JPH06168811 A JP H06168811A JP 5180647 A JP5180647 A JP 5180647A JP 18064793 A JP18064793 A JP 18064793A JP H06168811 A JPH06168811 A JP H06168811A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 R成分とバインダーとの反応や成形体中に残
留する炭素および酸素による磁気特性の劣化を防止し、
磁場中での射出成形時に大きな着磁電流を必要とせず、
複雑な形状、特に小型製品が得られる射出成形法による
R−Fe−B系焼結磁石の製造方法の提供。 【構成】 R2Fe14B相を主相とする平均粒径1〜5
μmの主相系合金粉末と、R3Co相を含むCo又はF
eとRとの金属間化合物相に一部極力有機バインダーと
の反応を抑えるように、主相系合金より平均粒径の大き
い平均粒径8〜40μmのR2(FeCo)14B相等を
含みかつ希土類金属含有量の多い液相系化合物粉末の2
種類を所定割合で配合し、さらに粉末表面に樹脂又は遷
移金属を被覆した原料を用い、バインダーとしてメチル
セルロース及び/又は寒天と水との混練物となし射出成
形し、脱バインダー処理後に焼結することにより、R−
Fe−B焼結体中の残留酸素量と炭素量を大幅に減少で
き、射出成形時の成形性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、射出成形法によるR
−Fe−B系焼結異方性永久磁石を製造する方法に係
り、微細結晶化したR−Fe−B系合金微粉末の表面に
樹脂を被覆した後、所定温度によりゾル・ゲル反応を起
こすバインダーとしてメチルセルロース及び/又は寒天
と水との混練物となし射出成形し、脱バインダー処理後
に焼結することにより、焼結体中の炭素と酸素の残留を
抑制し、磁気特性の劣化防止とともに、射出成形時の成
形性を向上させ、三次元的に複雑な形状の焼結磁石が得
られる射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、家電製品を初めコンピュータの周
辺機器や自動車等用途に用いられる小型モーターやアク
チュエータ等には、小型化、軽量化とともに高性能化が
求められており、その磁石材料も小型化、軽量化、薄肉
化からさらに磁石材料表面の所定位置に凹凸を設けた
り、貫通孔を設ける等、三次元的に複雑な形状製品が要
求されている。高性能永久磁石として、R−Fe−B系
焼結永久磁石が提案(USP4,770,223、特開
昭59−46008号公報、特公昭61−34242号
公報)され、また、R−Fe−B系ボンド磁石も提案
(USP4,902,361)されている。
【0003】上記R−Fe−B系焼結永久磁石及びR−
Fe−B系ボンド磁石ともに、通常、製造工程中に磁場
中のプレス成形を含むことから、単純形状の成形品しか
得られなかった。しかし、最近の種々形状の要求に対応
するために、従来から多くの技術分野において採用され
ている射出成形法を、上記R−Fe−B系焼結永久磁石
の製造方法に採用することが検討されている。例えば、
R−Fe−B系合金鋳塊を粉砕して得られた合金粉末と
ポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を含有す
るバインダーを混練して射出成形し、脱バインダー後に
焼結するR−Fe−B系焼結永久磁石の製造方法(特開
昭61−220315号公報、特開昭64−28302
号公報、特開昭64−28303号公報)が提案されて
いる。又、バインダーとしてパラフィン系ワックスを用
いた射出成形法を採用したR−Fe−B系焼結永久磁石
の製造方法(特開昭64−28302号公報)が提案さ
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般に、希土
類元素(R)を含有する金属間化合物はO、H、C、N
等の元素と反応し易く、上記の射出成形法で使用されて
いる熱可塑性樹脂やパラフィン系ワックス等のバインダ
ーをR−Fe−B系合金粉末に添加混合した場合、一般
的にバインダー中の炭素と酸素の含有量がRとの反応に
より増加するために、射出成形、脱バインダー後、及び
焼結後でもかなりの炭素と酸素が残留し、特に永久磁石
の場合磁気特性の劣化を招き、射出成形法による複雑形
状品の磁石部品への応用の妨げになっている。また、従
来の射出成形法で使用されている上記のバインダーは、
合金粉末と混合した後、射出成形機内でバインダーの融
点、すなわち100℃〜200℃程度まで加熱してバイ
ンダーを溶解させていたが、R−Fe−B系永久磁石の
キュリー温度(Tc)は300℃〜350℃程度である
ことから、磁場中配向させる際にキュリー温度近くまで
加熱すると配向が困難になり、また配向に大きな着磁電
流を必要とする問題があった。
【0005】そこで、溶解温度が低いバインダーを検討
すると、従来、Co系スーパーアロイ粉末を対象とした
圧縮成形用のバインダーとして、対象合金粉末に対し
て、1.5〜3.5wt%のメチルセルロースとさらに
所定量の添加物であるグリセリンとほう酸を混合した組
成が提案(USP4,113,480)され、また、Y
23−ZrO2やアルミナ粉末を対象とした射出成形用
のバインダーとして、対象合金粉末に対して10〜50
wt%のアガロースや寒天にさらに脱イオン水とグリコ
ールを加えた混合物が提案(USP4,734,23
7)され、さらに、工具用合金粉末の射出成形用のバイ
ンダーとして、特殊組成からなり、対象合金粉末に対し
て0.5〜2.5wt%のメチルセルロースに水、グリ
セリン等の可塑剤、ワックスエマルジョン等の滑剤、離
型剤を添加した組成が提案(特開昭62−37302号
公報)されている。
【0006】しかし、上述のメチルセルロースや寒天を
主体とするバインダーは、所定の流動性と成形体強度を
確保するためいずれも対象合金粉末に対して、上記のよ
うに比較的多量に使用するもので、しかも種々のバイン
ダー添加剤の添加、例えばグリセリン等の可塑剤をメチ
ルセルロースと同量程度添加することが不可欠であるた
め、やはり、射出成形、脱脂した後、焼結後でもかなり
の炭素と酸素が残留し、特にこの発明の対象とするR−
Fe−B系焼結永久磁石の場合、磁気特性の劣化を招
き、射出成形法による複雑形状品の磁石部品への応用の
妨げとなっている。
【0007】この発明は、射出成形にて成形し、これを
焼結するR−Fe−B系焼結永久磁石の製造方法におい
て、R成分とバインダーとの反応や、成形体中に残留す
る炭素および酸素による磁気特性の劣化を防止し、磁場
中での射出成形時に大きな着磁電流を必要とせず、射出
成形性を向上させて複雑な形状、特に小型製品のR−F
e−B系焼結異方性磁石が得られる射出成形法によるR
−Fe−B系焼結磁石の製造方法の提供を目的としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、射出成形時
の金型温度を100℃以下にでき、R−Fe−B系合金
粉末中のR成分とバインダーとの反応を抑制でき、残留
する炭素および酸素量を低減できるバインダーとして寒
天及び/またはメチルセルロースを選定した。さらにR
−Fe−B系合金粉末への適用を検討した結果、所定の
平均粒度からなるR−Fe−B系合金粉末であれば、水
分を多量に含む割りには、メチルセルロース量を0.5
wt%以下としても、十分な流動性と成形体強度を得る
ことができることを知見し、また、寒天の場合も4.0
wt%以下の少量でも同様な作用効果を得ることができ
ることを知見した。これら所定量以下のメチルセルロー
スや寒天だけでなく、必要に応じて使用する滑剤も0.
30wt%以下と極少量でよいことを知見し、さらにバ
インダーとして寒天とメチルセルロースを複合使用して
も同様の作用、効果が得られることを知見した。すなわ
ち、発明者らは、R−Fe−B系合金粉末中のR成分と
バインダーとの反応を抑制でき、成形体中に残留する炭
素および酸素量を低減できる方法を目的に種々検討した
結果、従来の射出成形法で一般的に使用されている熱可
塑性のバインダーの代わりに、R−Fe−B系合金粉末
にバインダーとして、所定温度によりゾル・ゲル変態を
起こすメチルセルロースまたは寒天あるいはそれらを複
合したものと水、さらに少量の滑剤を使用することによ
り、バインダーの大部分が水分であるにもかかわらず、
十分な粘弾性を得ることができるため、総バインダー中
の炭素量を大幅に低減できること、射出成形時の成形性
を向上させるとともに射出成形時に100℃以下で金型
内でゲル化させて硬化させ、所定の形状に成形可能であ
ること、さらに脱水処理、またそれに続く脱バインダー
処理により、成形体中に残留するほぼ全ての酸素及び炭
素を除去することができること、引き続く焼結後に得ら
れる焼結体における残留酸素量・炭素量を大幅に減少で
き、優れた磁気特性を有する3次元的に複雑な形状の焼
結磁石が得られることを知見した。
【0009】また、発明者らは、バインダー中に多量の
水分が含まれることを考慮し、R−Fe−B系合金粉末
の表面を樹脂被覆したのち、上記のバインダーを混合す
ることにより、水と合金粉末中のR成分との反応を抑制
し、混練後の各工程における合金粉末の酸化を防止で
き、得られる焼結体中の残留酸素量を低減できること、
射出成形時の成形性がさらに向上して3次元的に複雑な
形状の焼結磁石が得られること、さらに脱バインダー処
理で被覆した樹脂のほぼ全てが除去できるので、焼結体
中の残留炭素量を増加させることがないことを知見し
た。さらに発明者らは、R−Fe−B系磁性粉中のR成
分とバインダーとの反応を抑制でき、残留する炭素及び
酸素量を低減できる方法を目的に種々検討した結果、従
来の射出成形法で一般的に使用されている所要の単一組
成のR−Fe−B合金原料粉末の代わりに、R2Fe14
B相を主相とする平均粒径1〜5μmの主相系合金粉末
と、R3Co相を含むCo又はFeとRとの金属間化合
物相に一部R2(FeCo)14B相等を含みかつ希土類
金属含有量が多く、極力有機バインダーとの反応を抑え
るように主相系合金より平均粒径の大きい平均粒径8〜
40μmの液相系化合物粉末の2種類の原料を所定の割
合で配合した原料を混合して、バインダー添加、混練、
射出成形、脱バインダー、焼結することにより、R−F
e−B焼結体中の残留酸素量と炭素量を大幅に減少で
き、射出成形時の成形性を向上させ、3次元的に複雑な
形状の焼結磁石が得られることを知見した。また、さら
に発明者らは、磁性粉末粒子のR成分とバインダーとの
反応を極力抑え、安定した磁気特性が得られる方法を種
々検討した結果、特に主相系合金粉末及び液相系化合物
粉末からなるR−Fe−B系合金粉末を用いる場合、該
合金粉末にさらに所定量の遷移金属粉の微粉末を混合し
て、不活性雰囲気中でメカノフュージョン処理により磁
性粉末粒子の表面を微粉末の遷移金属粉で被覆した後、
熱処理により表面拡散させて被膜を緻密でしかも均一に
することにより、該被膜によって、磁性粉末粒子のR成
分とバインダーとを完全に隔離し、バインダー混練、射
出成形、脱バインダー、焼結の途中工程で磁性粉末粒子
のR成分とバインダーとの反応を防止できることを知見
し、この発明を完成した。
【0010】すなわち、この発明は、R(但しRはYを
含む希土類元素のうち少なくとも1種)11原子%〜1
3原子%、B4原子%〜12原子%、残部Fe及び不可
避的不純物からなるR2Fe14B相を主相とする平均粒
径1〜5μmの主相系合金粉末と、R3Co相を含むC
o又はFeとRとの金属間化合物相に一部R2(FeC
o)14B相等を含み、R(但しRはYを含む希土類元素
のうち少なくとも1種)13原子%〜45原子%、B1
2原子%以下、残部Co(但しCoの1部あるいは大部
分をFeにて置換できる)及び不可避的不純物からなる
平均粒径8〜40μmの液相系化合物粉末の2種類の原
料粉末を配合混合した原料粉末を用い、バインダー添
加、混練後、射出成形を行うことを特徴とする射出成形
法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法である。
【0011】また、この発明は、上記の構成において、
主相系合金粉末及び/又は液相系化合物粉末の表面に樹
脂あるいは遷移金属を被覆したことを特徴とする射出成
形法による焼結異方性磁石の製造方法を提案するもので
ある。さらに、この発明は、上記の構成において、主相
系合金粉末と液相系化合物粉末を配合した原料粉末に、
所定温度によりゾル・ゲル反応を起こす有機バインダー
としてメチルセルロース及び/又は寒天と水を加えて磁
場中で射出成形により成形体となし、該成形体を脱バイ
ンダー後に焼結して、焼結体が含有する炭素量を130
0ppm以下、酸素量10000ppm以下にすること
を特徴とし、好ましくは焼結体が含有する炭素量を10
00ppm以下、酸素量を9000ppm以下、最も好
ましくは焼結体が含有する炭素量を800ppm以下、
酸素量を8000ppm以下にすることを特徴とする射
出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法であ
る。
【0012】この発明は、R−Fe−B系合金粉末とし
て、R(但しRはYを含む希土類元素のうち少なくとも
1種)11原子%〜13原子%、B4原子%〜12原子
%、残部Fe及び不可避的不純物からなるR2Fe14
相を主相とする平均粒径1〜5μmの主相系合金粉末
と、R3Co相を含むCo又はFeとRとの金属間化合
物相に一部R2(FeCo)14B相等を含み、R(但し
RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)13原
子%〜45原子%、B12原子%以下、残部Co(但し
Coの1部あるいは大部分をFeにて置換できる)及び
不可避的不純物からなる平均粒径8〜40μmの液相系
化合物粉末を所定の割合で配合混合し、混合後の平均粒
度が20μm程度以下の範囲にある合金粉末を用いるこ
とを特徴とする。これらの合金粉末を用い2種類の原料
の平均粒度を変えると同時に、希土類元素の酸化物の発
生を見込んで予め過剰のR成分を添加することにより、
過剰の液相系化合物粉末の添加により焼結時の液相の発
現を充分にすることが可能で、R成分とバインダーとの
反応による磁気特性の劣化を防止することができる。
【0013】上記の配合合金粉末において、主相系合金
粉末を得るには、Rが11原子%未満では合金溶製時に
晶出するα−Fe相が増加し、13原子%を超えると、
Rリッチ相が増加し、主相とRリッチ相を均一に分散さ
せることが困難なため、Rは11原子%〜13原子%の
範囲とする。また、Bは、4原子%未満では、高い保磁
力(iHc)が得られず、12原子%を超えると、残留
磁束密度(Br)が低下するため、すぐれた永久磁石が
得られないため、Bは4原子%〜12原子%の範囲とす
る。さらに、残部はFe及び不可避的不純物からなり、
Feは75原子%〜85原子%の範囲が好ましい、Fe
は75原子%未満では相対的に希土類元素がリッチとな
り、Rリッチ相が増加し、85原子%を超えると相対的
に希土類元素が少なくなり、残留Fe部が増加し不均一
な合金粉末となる。主相系合金粉末中のCoは、R2
14B主相中のFeと置換されて保磁力を低下させるた
め、Coは10原子%以下が好ましい。ただし、上述の
CoでFeの一部を置換した場合、Feは62原子%〜
85原子%の範囲である。主相系合金粉末は、含有酸素
量の低減および組織の均一性からも、Rリッチ相が全く
ないことが望ましいが、全体の4wt%以下であれば、
含有酸素量の低減を大きく損なうことがない。
【0014】R3Co相を含むCo又はFeとRとの金
属間化合物相(但しCoの1部あるいは大部分をFeに
て置換できる)からなる液相系化合物粉末は、R3Co
相あるいはR3Co相のCoの一部Feで置換された相
とからなり、中心相が、RCo5、R2Co7、RCo3
RCo2、R2Co3、R2Fe17、RFe2、Nd2
17、Nd5Co19、Dy6Fe2、DyFe等、及び前
記金属間化合物相とR2(FeCo)14B、R1.11(F
eCo)44等のいずれかからなる合金粉末である。液
相系化合物粉末の組成は、前述の如く、目的組成の希土
類元素の種類とその量に応じて、金属間化合物の含有希
土類元素比率を変化させる。しかし、Rが13原子%未
満では、主相系原料と配合して磁石を製造する際に、焼
結時の液相の発現が十分でなく、また45原子%を超え
ると含有酸素量の増加を招き好ましくない。また、Co
は、液相系化合物粉末において、1原子%以上必要で好
ましくは3〜20原子%であり、残部はFeで置換でき
る。さらに、Bは12原子%を超えるとR2(FeC
o)14B相以外にB−rich相やFe−B化合物等が
余剰に存在することとなるので好ましくない。さらに、
主相系合金粉末および/またはR3Co相を含むCo又
はFeとRとの金属間化合物相及びR2(FeCo)14
B相等からなる液相系化合物粉末に、Cu、S、Ni、
Ti、Si、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、
Al、Sb、Ge、Sn、Zr、Hf、Ca、Mg、S
r、Ba、Be、のうち少なくとも1種を添加含有させ
ることにより、得られる永久磁石の高保磁力化、高耐食
性化、温度特性の改善が可能になる。これらの添加元素
は通常合計量で10at%以下が望ましく、添加元素に
応じて合計量を5at%以下、3at%以下等適宜選定
することが望ましい。
【0015】上記の配合合金粉末において、主相系合金
粉末の平均粒度が1μm未満では合金粉末の表面積が増
大するため、混練物とするためのバインダー添加量を合
金粉末との容積比で、1:1.2に増加させる必要があ
り、射出成形後の焼結品の焼結密度が95%程度と低下
するため好ましくなく、また、5μmを超える平均粒径
では粒径が大きすぎて焼結密度が95%程度で飽和し、
該密度の向上が望めないため、平均粒度は1〜5μmの
範囲が好ましい。
【0016】一方、液相系化合物粉末の平均粒度は、8
μm未満ではバインダーとの反応が単一組成の合金粉末
(1〜10μmの平均粒度)と同程度であり、主成分系
粉末への添加の効果がほとんど見られない。また液相系
化合物粉末の平均粒度が、40μmを超えるとバインダ
ーとの反応はかなり抑制されるが、逆に焼結時の焼結性
が悪化し、焼結密度が低下すると同時に保磁力が低下す
るので、液相系の合金粉末の平均粒径は8〜40μmが
好ましい。また、主相系合金粉末と液相系化合物粉末
は、70〜99:30〜1の比率で配合することがで
き、さらに70〜97:30〜3が好ましく、磁石特性
に応じた複数種組成の合金粉末を得ることができる。こ
のような比率で配合することによって、平均粒度1〜5
μmの主成分系合金粉末と、平均粒度8〜40μmの液
相系合金粉末とからなる混合粉末の全体としての平均粒
度が先の単一組成の合金粉末と同程度の平均粒度20μ
m程度以下、好ましくは10μm程度以下の合金粉末と
なる。
【0017】上述のR−Fe−B系合金粉末の製造方法
としては、溶解・粉化法、超急冷法、直接還元拡散法、
水素含有崩壊法、アトマイズ法等の公知の方法を適宜選
定し、所要平均粒度の合金粉末を得ることができる。い
ずれのR−Fe−B系合金粉末を用いても、平均粒度を
それぞれ好ましい範囲とすることにより、一般的な射出
成形用の遷移金属粉末、例えばFe基合金粉末やCo基
合金粉末等の場合よりも、平均粒度が数分の1から10
分の1程度となり、該遷移金属粉末を射出成形する際に
用いるバインダーの添加量よりも、大幅にバインダーの
添加量を低減することができる。
【0018】樹脂被覆 この発明において、上述の合金粉末、すなわち主相系合
金粉末および/または液相系化合物粉末に樹脂を被覆す
ることは、バインダー混練後の水とのR元素の反応、成
形時のゲル化段階及び射出成形後の脱水処理時の水との
R元素の反応を抑え、残留酸素量の安定化及び低減化を
図るために有効である。R−Fe−B系合金粉末に被覆
する樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMM
A)、ポリメチルアクリレート(PMA)等のメタクリ
ル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニ
ル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニト
リル等の熱可塑性樹脂の単独または複合したものを用い
ることが好ましい。樹脂の添加量は、合金粉末に対して
0.30wt%以下が好ましい、これは樹脂の被覆膜厚
が50Å〜200Åに相当し、0.30wt%を超える
と被覆樹脂からの残留酸素量が増加するために好ましく
ない。被覆の方法は、通称メカノフュージョンシステム
あるいはハイブリダイゼーションシステムと呼ばれる方
法やボールミルを用いる方法であり、被覆用樹脂粉末の
粒径としては1000Å〜5000Å位が好ましい。こ
のように樹脂被覆した合金粉末は、残留酸素量の点で比
較的安定であるために、射出成形時のリサイクルが可能
であるという利点がある。また樹脂被覆した合金粉末で
は、混練時に滑剤を添加しなくても射出成形できる利点
もある。
【0019】また、磁性粉末粒子のR成分とバインダー
との反応を極力抑えるために、上述した主相系合金粉末
及び液相系化合物粉末からなるR−Fe−B系合金粉末
を用いる場合、該合金粉末にさらに所定量の遷移金属粉
の微粉末を混合して、不活性雰囲気中でメカノフュージ
ョン処理により磁性粉末粒子の表面を微粉末の遷移金属
粉で被覆した後、熱処理により表面拡散させて被膜を緻
密でしかも均一にし、該被膜によって磁性粉末粒子のR
成分とバインダーとを完全に隔離した原料粉末を利用す
ることができる。この被覆用の遷移金属としては、希土
類元素を除く遷移金属であり、なかでもFe,Ni,C
u等が好ましく、特にR−Fe−B系の磁性粉末中に最
も多く含有されているFe元素は、磁性粉末の成分を前
もって調整しておけば、添加量の制約がなく、また展延
性に富むためにメカノフュージョン処理中に磁性粉末粒
子の周囲に比較的均一な被膜を形成しやすく、しかも比
較的入手しやすいために最も好ましい。また遷移金属粉
は、バインダーと反応して炭化物、酸化物等の化合物を
形成しても、真空中もしくは一時的な水素流気により比
較的低温で簡単に脱酸素、脱炭素されるので、R−Fe
−B系の射出成形による焼結磁石用合金粉末の被覆には
好都合である。さらに、付着又は被覆用遷移金属粉の平
均粒径は0.02μm未満では遷移金属粉自体が非常に
活性化して酸化物になってしまい、金属特有の展延性に
乏しくなり、1μmを超えるとメカノフュージョンによ
る被覆処理時に磁性粉末粒子への遷移金属微粉末の付着
が不十分になり、被覆膜に欠陥が発生しやすくなるた
め、0.02μm〜1μmが好ましい。上記の遷移金属
からなる被膜を有する磁性粉末粒子の表面に、さらに先
に説明した樹脂被覆を施すことによって、磁性粉末粒子
中のR成分とバインダーや水との反応を一層低減するこ
とができ、磁気特性の優れたR−Fe−B系焼結磁石を
得ることが可能となる。
【0020】バインダー成分 この発明において、射出成形用のバインダーには、所定
温度によりゾル・ゲル変態を起こすメチルセルロースま
たは寒天あるいはそれらを複合したものに水を添加した
ものを用いる。バインダーとして、メチルセルロースを
単独で用いる場合の含有量は、0.05wt%未満では
成形時の強度が著しく低下し、また0.50wt%を越
えると、残留炭素量と酸素量が増加して保磁力が下がり
磁気特性が劣化するので、0.05wt%〜0.50w
t%の含有量がこれらの点で好ましい。さらに0.1w
t%〜0.45wt%が望ましく、0.15wt%〜
0.4wt%が最も望ましい。寒天を単独で用いる場合
の含有量は、0.2wt%未満では成形時の強度が著し
く低下し、また4.0wt%を越えると、残留炭素量と
酸素量が増加して保磁力が下がり、磁気特性が劣化する
ので、0.2wt%〜4.0wt%の含有量がこれらの
点で好ましい。さらに、0.5wt%〜3.5wt%が
望ましく、0.5wt%〜2.5wt%が最も望まし
い。またメチルセルロースと寒天を複合して用いる場合
は、0.2wt%未満になると成形時の強度が著しく低
下するとともに成形金型と成形体との離型性が悪化する
ため好ましくなく、また、4.0wt%を超えると焼結
後の焼結密度が低下するとともに残留炭素量と酸素量が
増加して得られる磁石の特性が劣化し好ましくないた
め、0.2wt%〜4.0wt%が好ましい。ただし、
メチルセルロースの含有量は、上記メチルセルロースを
単独で含有する場合の範囲を超えて含有することは望ま
しくなく、又、合計の含有量も3.5wt%以下、2.
5wt%以下が望ましい。
【0021】この発明において、バインダーとしてメチ
ルセルロースおよび/または寒天とともに水を使用する
ことを特徴とするが、Rとの反応を抑制するために、脱
酸素処理した純水を使用することが望ましい。メチルセ
ルロースを単独で用いる場合の水の含有量は6wt%未
満では成形時の流動性が悪くなり、ショート・ショット
が発生しやすくなり、16wt%を越えると実質総バイ
ンダー量が増加するために、焼結後の焼結密度が低下す
ると同時に残留酸素量が増加し、磁気特性が劣化するの
で、6〜16wt%が最も好ましい。寒天を単独で用い
る場合の水の含有量は8wt%未満では成形時の流動性
が悪くなり、ショート・ショットが発生しやすくなり、
18wt%を越えると実質総バインダー量が増加するた
めに、焼結後の焼結密度が低下すると同時に残留酸素量
が増加し、磁気特性が劣化するので、8〜18wt%が
最も好ましい。またメチルセルロースと寒天を複合して
用いる場合は、メチルセルロースと寒天の割合を考慮し
て6〜18wt%の範囲から適宜選定される。
【0022】また上述したバインダーにグリセリン、ワ
ックスエマルジョン、ステアリン酸、水溶性アクリル樹
脂等の滑剤のうち少なくとも1種を添加することも有効
であり、添加含有量は、バインダーがメチルセルロース
及び寒天である場合、ともに0.10wt%未満では成
形体の密度が不均一になりやすく、特にメチルセルロー
スを単独で用いる場合は0.30wt%を越えると、成
形体の強度が低下するので、0.10wt%〜0.30
wt%が最も好ましく、また、寒天を単独で用いる場合
も1.0wt%を越えると、同様に成形体の強度が低下
するので、0.10wt%〜1.0wt%が最も好まし
い。バインダーにメチルセルロースと寒天を複合して用
いる場合は、メチルセルロースと寒天の割合を考慮し
て、0.1wt%〜1.0wt%の範囲から適宜選定さ
れる。
【0023】射出成形条件 射出条件はバインダーの添加量に応じて変動するが、メ
チルセルロースを単独で用いる場合は、金型温度は70
℃〜90℃が好ましく、70℃未満では成形後の取出時
に固化が不十分で変形する恐れがあり、また90℃を超
えると混練物の流動性が悪くなる。また、寒天を単独で
用いる場合は金型温度は10℃〜30℃が好ましく、1
0℃未満では流動性が悪くなり、30℃を超えると成形
後の取出時に固化が不十分で変形する恐れがある。ま
た、射出温度は、メチルセルロースを単独で用いる場合
は0〜40℃が好ましく、0℃未満では混練物が凍って
しまい流動性が低下し、また40℃を超えると流動性が
不充分となりショート・ショットが発生しやすくなるた
め好ましくない。また、寒天を単独で用いる場合は、射
出温度は75〜95℃が好ましく、75℃未満では流動
性が不十分となりショート・ショットが発生しやすくな
り、また95℃を超えると成形体中に水の蒸発による気
泡が発生し、焼結後の焼結体中にボイドが発生する原因
となり、また、水の蒸発により、混練物の流動性が低下
し、該混練物が成形機内で詰まってしまう可能性がある
ため好ましくない。また、射出成形圧力は、30kg/
cm2未満ではウエルドが発生し成形密度が不均一にな
り、焼結後に曲がりやうねりが発生し、また、メチルセ
ルロースを単独で用いる場合は50kg/cm2を超え
ると、ばりが発生して好ましくないため、30〜50k
g/cm2が好ましく、また、寒天を単独で用いる場合
は70kg/cm2を超えると同様にばりが発生して好
ましくないため、圧力は30〜70kg/cm2が好ま
しい。従って、メチルセルロースと寒天を複合して用い
る場合は、メチルセルロースと寒天の割合を考慮して、
金型温度や射出温度及び射出成形圧力等を上記の範囲か
ら適宜選定するとよい。焼結異方性磁石を得るための磁
場中射出成形時の磁場が10kOe未満では配向が不十
分なため、10kOe以上の磁場中射出成形が好まし
い。
【0024】脱バインダー処理 脱バインダー処理の前工程として脱水処理を行うが、脱
バインダー処理とともに処理方法は特に限定しない。例
えば、脱水処理を昇温乾燥方法で行う場合、昇温温度は
選定した純水の添加量に応じて変動するが、少なくとも
20℃〜100℃までの昇温速度を30〜60℃/hr
にする必要があり、30℃/hr未満では処理品が酸化
する恐れがあり、60℃/hrを超えると水の急激な気
化蒸発のため、処理品にひび、割れを生じるため好まし
くない。特に処理品が小物である場合は、少なくとも2
0℃〜100℃までの昇温速度を45〜55℃/hrに
するとよく、脱水処理がより簡素化できる。また、10
0℃までの昇温中に水のほとんどが蒸発してしまうた
め、100℃を超える温度域での脱水処理は不要であ
る。引き続いて脱バインダー処理するが、昇温速度は、
100〜200℃/hrで脱バインダー処理できるの
で、通常の有機バインダーの場合よりも大幅に処理時間
を短縮できる利点がある。また、脱水処理を低温から高
温まで連続して行い、またR−Fe−B系合金粉末の酸
化を抑えるためには、脱水雰囲気を1×10-3Torr
以下の真空中で行うことが好ましい。なお、脱水処理後
は、引き続いて昇温加熱して焼結を行うことが好まし
く、500℃を超えてからの昇温速度は任意に選定すれ
ばよく、例えば100〜300℃/hrなど、焼結に際
して取られる公知の昇温方法を採用できる。
【0025】脱バインダー処理後の成形品の焼結並びに
焼結後の熱処理条件は、選定した合金粉末組成に応じて
適宜選定されるが、従来公知のFe−B−R系焼結永久
磁石の製造条件と同様でよい。好ましい焼結並びに焼結
後の熱処理条件としては、1000〜1180℃、1〜
2時間保持する焼結工程、450〜800℃、1〜8時
間保持する時効処理工程が好ましい。
【0026】この発明において、焼結体が含有する炭素
量と酸素量の上限を炭素量1300ppm以下、酸素量
を10000ppm以下、さらに炭素量を1000pp
m以下、酸素量を9000ppmを以下、特に最適条件
下においては炭素量を800ppm以下、酸素量を80
00ppm以下とすることができ、優れた磁気特性を有
する焼結磁石を得ることができる。従って、各条件によ
り、最大エネルギー積にて、4MGOe以上、10MG
Oe以上、15MGOe以上が得られ、特に好ましい条
件においては20MGOe以上が得られる。
【0027】
【作用】この発明の特徴である寒天は、一般に良く知ら
れているように、水の中で95℃前後に加熱すると溶解
して粘性のあるゾル状物質となり、約40℃以下に冷却
すると弾性のあるゲル状物質となって固化する。一方、
メチルセルロースは、水に溶解した後約50℃前後に加
熱すると溶解して粘性のあるゾル状物質となり、さらに
70℃以上に加熱すると弾性のあるゲル状物質となり、
一度ゲル化すると温度の変化にかかわらずゲル状態を維
持し、寒天バインダーとは温度に対して正反対にゾル・
ゲル反応を起こす。この両者の性質を利用すると、寒天
バインダーを主成分として考えると、メチルセルロース
の少量の添加により80℃前後の温度ではゾル状態の粘
度を向上させることができる。従って、メチルセルロー
スの僅かの添加により、通常の寒天バインダーの添加量
(約3wt%)の数分の1に減らすことが可能になる。
このように水分を多量に含む割りには、僅かの寒天バイ
ンダー量で粘弾性が発生するために、射出成形用のバイ
ンダーとしては総バインダー中の炭素含有量を大幅に減
らすことができるのである。また、脱脂時には100℃
までに総バインダー中の約99%の水分が蒸発除去され
るので、R−Fe−B粉末が活性になる温度では、すで
に大量の水分に起因する酸素が抜けた状態であるため
に、R−Fe−B合金粉末の酸化が大幅の抑えられる利
点がある。さらには、射出成形時の金型温度を100℃
以下にでき、磁場中での射出成形時に大きな着磁電流を
必要とせず、射出成形性を向上させて複雑な形状、特に
小型製品のR−Fe−B系焼結異方性磁石が得られる。
主相系合金粉末と液相系化合物粉末の2種類の原料の平
均粒度を変えると同時に、希土類元素の酸化物の発生を
見込んで予め過剰のR成分を添加することにより、過剰
の液相系化合物粉末の添加により焼結時の液相の発現を
充分にすることが可能で、R成分とバインダーとの反応
による磁気特性の劣化を防止することができる。
【0028】
【実施例】
実施例1 RとしてNd11.5原子%とPr0.2原子%、B
7.0原子%、残部はFeおよび不可避的不純物からな
る合金塊をArガス中で高周波加熱溶解して作成したボ
タン状溶製合金を粗粉砕した後、ジョークラッシャーな
どにより平均粒径約15μmに粗粉砕し、更にジェット
ミル粉砕により微粉砕して得た平均粒度3μmの主相原
料粉末と、Nd19.7原子%とPr0.8原子%、D
y1.1原子%、Co15.0原子%、B4.5原子
%、残部はFeからなる合金塊をArガス中で高周波加
熱溶解して作成したボタン状溶製合金をジョークラッシ
ャーなどにより平均粒径約14μmに粗粉砕した液相原
料粉末を重量比76:24の割合で配合し混合した。こ
の混合粉の分析値は、Nd13.4原子%とPr0.3
4原子%、Dy0.26原子%、Co3.6原子%、B
6.4原子%、残部はFeからなるものであった。上記
混合粉を用いて、表1に示す種類及び添加量のバインダ
ー、水、添加物を添加して室温で混練し、得られた混練
ペレットを表1に示す射出温度、金型温度に設定保持し
て20mm×20mm×3mmの板に磁場中(15kO
e)で射出成形した。なお、添加物にはグリセリンを使
用した。得られた成形体を、真空中で室温から100℃
まで昇温速度50℃/Hで昇温し、この温度で1時間保
持し完全脱水した後、500℃まで昇温速度100℃/
Hで昇温し脱バインダーを行った。更に加熱して110
0℃で1時間保持して焼結した。焼結完了後にArガス
を導入して7℃/分の速度で800℃まで冷却し、その
後100℃/時間で冷却して550℃、2時間保持する
時効処理を施した。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変
形等は全く見られなかった。この工程によって得られた
Nd−Fe−B焼結合金の特性を表2に示す。
【0029】比較例 上記実施例と最終焼結体の成分が同一になるように各元
素のインゴットを秤量し、Arガス中で高周波加熱溶解
して作成したボタン状溶製合金を粗粉砕した後、ジョー
クラッシャーなどにより平均粒径約15μmに粗粉砕
し、更にジェットミル粉砕により微粉砕して得た平均粒
度3μmの原料粉末を得た。得られた原料粉末はNd1
3.3原子%とPr0.31原子%、Dy0.28原子
%、Co3.4原子%、B6.5原子%、残部はFeか
らなるものであった。この原料粉末と、バインダーとし
てアクリル系バインダーを容積比1:1で配合し、16
0℃で10分間加熱混練して射出成形用混練物となした
後、45℃に加熱した金型内に磁場強さ15kOe中で
射出成形して、長さ10mm×幅10mm×高さ5mm
の平板状の射出成形体を得た。射出成形体を3×10-4
Torrの真空中で350℃まで6℃/時間の昇温速度
で昇温する脱バインダー処理した後、実施例1と同一条
件で焼結、熱処理して焼結異方性磁石を得た。(比較例
1) また、実施例の試料No.1、No.2、No.3の混
合粉からなる合金粉末を上記の単一組成からなる合金粉
末に代える以外は実施例と全く同一条件により、実施例
の試料No.1に対応する比較例2、試料No.2に対
応する比較例3、試料No.3に対応する比較例4の磁
石を得た。得られた比較例磁石1〜4の磁石特性並びに
残留酸素量、残留炭素量の測定結果を実施例とともに表
2に示す。
【0030】表2から明らかなように、従来のアクリル
系バインダーを用いた比較例1に対して、実施例の方が
残留酸素量、残留炭素量が大幅に減少しており、磁気特
性が格段にすぐれていることがわかる。また、比較例の
単一の組成のR−Fe−B系磁性粉を用いた場合より
も、この発明による平均粒径3μmの主成分系原料粉末
と平均粒径15μmの液相系原料粉末を混合した混合粉
を用いた方が、残留酸素量および残留炭素量は同程度な
がら、磁気特性がかなりすぐれていることがわかる。こ
れは希土類元素の消耗分を補うように、予め液相系原料
粉末を添加しているために、液相焼結が良好に進展した
ものと思われる。またR量の多い液相系化合物粉末の粒
径が大きいために、Rと水との酸化反応がかなり抑えら
れたこと、またバインダーのほとんどが水のために、主
成分系と液相系の合金粉末が活性になる温度では、すで
に水分が蒸発してなくなっていることなども磁気特性向
上の要因になっていると思われる。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】実施例2 実施例1で得た混合粉末300gに、疎水性の平均粒径
0.15μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)
を0.20wt%添加し、メカノフュージョンシステム
の容器内に投入し、温度を70℃に保持し、容器の回転
数を最高1800rpmで10分間保持して樹脂被覆
(膜厚約100Å)を行った微粉末の合金粉末を用い、
表3に示す種類及び添加量のバインダー、水、添加物を
添加して室温で混練し、得られた混練ペレットを表3に
示す射出温度、金型温度に設定保持して20mm×20
mm×3mmの板に磁場中(15kOe)で射出成形し
た。なお、添加物にはグリセリンを使用した。得られた
成形体を、真空中で室温から100℃まで昇温速度50
℃/Hで昇温し、この温度で1時間保持し完全脱水した
後、500℃まで昇温速度100℃/Hで昇温し脱バイ
ンダーを行った。更に加熱して1100℃で1時間保持
して焼結した。焼結完了後にArガスを導入して7℃/
分の速度で800℃まで冷却し、その後100℃/時間
で冷却して550℃、2時間保持する時効処理を施し
た。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変形等は全く見ら
れなかった。この工程によって得られたNd−Fe−B
焼結合金の特性を表4に示す。混合粉末の表面に樹脂を
被覆した本実施例による磁石と、表面に樹脂を被覆しな
い実施例1による磁石とは、磁石特性、残留酸素量、残
量炭素量はほぼ同程度であるが、本実施例による磁石は
表面に樹脂を被覆しているために、焼結前の成形体及び
混練物の状態では酸素に対して非常に安定であり、それ
らを数時放置した後においてもその含有酸素量はほとん
ど増加しなかった。これに対し、実施例1による樹脂を
被覆しない磁石は、成形体及び混練物の状態で数時間放
置するとその含有酸素量が急激に増加し、焼結後の磁石
特性も著しく低下していた。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】実施例3 実施例1で得た混合粉末に平均粒径0.02μmの微粉
末の鉄粉を7.0wt%添加し混合した混合粉をメカノ
フュージョン装置(ホソカワミクロン社製AM−20F
V)の容器内に投入し、アルゴンガスを封入した後、運
転中アームヘッドの温度が50℃以下になるように水冷
制御を行ないながら、回転数700rpmで3時間保持
してFe粉を被覆した合金粉末を作成した。この混合粉
と、表5に示す種類及び添加量のバインダー、水、添加
物を添加して室温で混練し、得られた混練ペレットを表
5に示す射出温度、金型温度に設定保持して20mm×
20mm×3mmの板に磁場中(15kOe)で射出成
形した。なお、添加物にはグリセリンを使用した。得ら
れた成形体を、真空中で室温から100℃まで昇温速度
50℃/Hで昇温し、この温度で1時間保持し完全脱水
した後、500℃まで昇温速度100℃/Hで昇温し脱
バインダーを行った。更に加熱して1100℃で1時間
保持して焼結した。焼結完了後にArガスを導入して7
℃/分の速度で800℃まで冷却し、その後100℃/
時間で冷却して550℃、2時間保持する時効処理を施
した。得られた焼結体にはワレ、ヒビ、変形等は全く見
られなかった。この工程によって得られたNd−Fe−
B焼結合金の特性を表6に示す。混合粉末の表面に鉄粉
を被覆した本実施例による磁石と、表面に鉄粉を被覆し
ない実施例1による磁石とは、磁石特性、残留酸素量、
残留炭素量はほぼ同程度であるが、本実施例による磁石
は表面に鉄粉を被覆しているために、焼結前の成形体及
び混練物の状態では酸素に対して非常に安定であり、そ
れらを数時間放置した後においてもその含有酸素量は殆
ど増加しなかった。これに対し、実施例1による鉄粉を
被覆しない磁石は、成形体及び混練物の状態で数時間放
置するとその含有酸素量が急激に増加し、焼結後の磁石
特性も著しく低下していた。
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【発明の効果】この発明は、R2Fe14B相を主相を有
する平均粒径1〜5μmの主成分系合金粉末と、R3
o相を含むCo又はFeとRとの金属間化合物相に一部
2(FeCo)14B相等を含み、極力有機バインダー
との反応を抑えるように、主成分系合金より平均粒径の
大きい平均粒径8〜40μmの希土類金属含有量の多い
液相系化合物粉末の2種類の原料を所定の割合で配合し
た後、メチルセルロース及び/又はバインダーと純水を
添加混練して、これを所要形状に射出成形することによ
り、射出成形時の成形性が向上して三次元的に複雑な形
状の焼結磁石を得ることができ、また得られた成形体を
特定昇温速度の脱水、脱バインダー処理することによ
り、脱バインダー時間が数時間に短縮されると同時に、
希土類元素の酸化物の発生を見込んで予め過剰のR成分
を添加することにより、処理時の希土類元素(R)との
反応を著しく抑制し、特に残留酸素量を低減して、磁気
特性の劣化を防止することができ、複雑な形状で磁気特
性のすぐれた焼結異方性磁石を得ることができる。ま
た、射出成形時の金型温度を100℃以下にでき、磁場
中での射出成形時に大きな着磁電流を必要とせず、複雑
な形状で磁気特性のすぐれた焼結異方性磁石を得ること
ができる。さらに、粉末表面に樹脂または遷移金属を被
覆することにより、焼結前の工程中における酸素量の増
加を抑制することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/053 // H01F 7/02 B

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R(但しRはYを含む希土類元素のうち
    少なくとも1種)11原子%〜13原子%、B4原子%
    〜12原子%、残部Fe及び不可避的不純物からなるR
    2Fe14B相を主相とする平均粒径1〜5μmの主相系
    合金粉末と、R3Co相を含むCo又はFeとRとの金
    属間化合物相に一部R2(FeCo)14B相等を含み、
    R(但しRはYを含む希土類元素のうち少なくとも1
    種)13原子%〜45原子%、B12原子%以下、残部
    Co(但しCoの1部あるいは大部分をFeにて置換で
    きる)及び不可避的不純物からなる平均粒径8〜40μ
    mの液相系化合物粉末の2種類の原料粉末を配合混合し
    た原料粉末を用い、バインダー添加、混練後、射出成形
    を行うことを特徴とする射出成形法によるR−Fe−B
    系焼結磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 主相系合金粉末及び/又は液相系化合物
    粉末の表面に樹脂を被覆したことを特徴とする請求項1
    に記載の射出成形法による焼結異方性磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 主相系合金粉末及び/又は液相系化合物
    粉末の表面に遷移金属を被覆したことを特徴とする請求
    項1に記載の射出成形法による焼結異方性磁石の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 主相系合金粉末と液相系化合物粉末を配
    合した原料粉末に、所定温度によりゾル・ゲル反応を起
    こす有機バインダーとしてメチルセルロース及び/又は
    寒天と水を加えて磁場中で射出成形により成形体とな
    し、該成形体を脱バインダー後に焼結して、焼結体が含
    有する炭素量を1300ppm以下、酸素量10000
    ppm以下となしたことを特徴とする請求項1、請求項
    2または請求項3に記載の射出成形法によるR−Fe−
    B系焼結磁石の製造方法。
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