JPH06158268A - 金属帯の連続浸炭及び板温制御方法 - Google Patents

金属帯の連続浸炭及び板温制御方法

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JPH06158268A
JPH06158268A JP32089192A JP32089192A JPH06158268A JP H06158268 A JPH06158268 A JP H06158268A JP 32089192 A JP32089192 A JP 32089192A JP 32089192 A JP32089192 A JP 32089192A JP H06158268 A JPH06158268 A JP H06158268A
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順 諸住
Susumu Okada
岡田  進
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Control Of Heat Treatment Processes (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】連続的に送給されるストリップの通板速度が浸
炭処理の操業条件から規制される場合に、焼鈍処理にお
いて所望する板温を得る制御方法を提供する。 【構成】鋼板仕様諸元から浸炭濃度分布条件を読込むと
共に,当該鋼板仕様諸元並びに浸炭温度等の浸炭条件か
ら鋼板への設定浸炭量を算出し(S1, S2)、炉内の物質収
支を考慮した熱力学モデル式に基づいて雰囲気ガスの各
成分濃度を設定し(S3, S4)、雰囲気ガス組成成分の各分
圧から表面反応速度を算出し(S5)、鋼中拡散モデル式に
従って鋼中への浸炭速度から算出した拡散C量を積分し
て鋼板への浸炭量を算出し(S7)、設定浸炭量と浸炭量と
の差が大きい場合には設定浸炭量を補正して(S8, S9),
浸炭濃度分布を満足しながら設定浸炭量を達成する通板
速度を出力し(S10) 、この通板速度で設定される焼鈍処
理時間から板温制御に必要な加熱量,燃料投入量,炉温
等の板温制御量を制御する構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浸炭炉の内外の各熱処
理炉等の板温制御帯において,金属帯に対して所望する
板温を得るための板温制御を行いながら,浸炭炉内に通
板される金属帯を連続ガス浸炭する場合に、該浸炭炉内
でスーティングが発生しない雰囲気組成範囲内で所望す
る浸炭量又は浸炭濃度分布を得るために通板速度を設定
する金属帯の連続浸炭制御方法,及びこの通板速度で前
記所望する板温を得るための板温制御方法に関するもの
であり、例えば極低炭素鋼からなるストリップを所定の
板温に加熱又は均熱して再結晶焼鈍を行った後に,浸炭
炉内に通板して連続的にガス浸炭する場合に、前記浸炭
量又は浸炭濃度分布を得るための雰囲気ガス組成,組成
ガス濃度,浸炭温度,通板速度等を制御すると共に、加
熱炉及び/又は均熱炉の炉内温度(炉温)や燃料投入量
を制御するのに適するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車産業のような金属二次加工
産業界では、加工対象金属板に対してより高い加工性と
強度との両立が要求されている。具体的に前記自動車産
業界では、昨今問題化されている地球環境問題から低燃
費化を追求するために車体を軽量化する必要から、プレ
ス加工焼付塗装鋼板等に対して従来の深絞り性を維持し
た上でより強度の高い鋼板が要求される。
【0003】このような金属板の評価指標としては、例
えば延性,深絞り性,時効性,強度,二次加工脆性,焼
付硬化性,スポット溶接性等が考えられる。そこで、前
記の深絞り性を特に重要視して,この深絞り性をランク
フォード値(以下r値:金属板幅歪み/板厚歪み)で評
価した場合、鋼中の炭素(以下Cと記す)量を低減する
ことが最も有利であることは公知であり、加えてこの低
炭素化により延性(Elongation:El)や常温遅時効性
(Aging Index :AIは低い程良い)も向上する。とこ
ろが一方で、鋼中のC量が低下するに従ってその他の評
価指標は大方について劣化する。例えば、析出物が減少
して組織強度が低下するために引張強度(Tensile Stre
ngth:TS)が低下し、粒界強度が低下するために二次
加工脆性が劣化し、固溶C量が低下するために焼付硬化
性が劣化する。また、鋼中C量50ppm以下では,溶
接による加熱で粒成長速度が促進されて熱影響部(Heat
Affected Zone:HAZ)の粗粒化によってスポット溶
接性が劣化する。
【0004】一方、前記金属二次加工産業界で使用され
るプレス加工塗装鋼板等では、プレス加工後に焼付塗装
を行う場合が多く、そのため,プレス加工時にはその成
形性を発揮し、焼付塗装時に焼付硬化性を発揮して強度
が向上する高焼付硬化型鋼板が要求される。勿論、プレ
ス加工時まではその成形性を維持できる常温遅時効性が
必要となるから、結果として使用される鋼板は常温遅時
効性を有する高焼付硬化型鋼板(低AI−高BH性鋼
板)を要求される。
【0005】そこで、図1に示すように極低炭素鋼から
なる金属帯を連続焼鈍処理によって再結晶焼鈍すること
により前記延性,深絞り性,時効性を得ながら、これに
続いて,連続浸炭処理によって表層部に固溶Cを存在さ
せることにより前記引張強度,二次加工脆性,BH性,
スポット溶接性を向上するために、本出願人は図2に示
すような特開平4−88126号公報に記載される連続
焼鈍浸炭設備を開発した。
【0006】この連続焼鈍浸炭設備によれば、加熱帯2
又は均熱帯3で金属帯に対して所定の再結晶焼鈍を行っ
た後、鋼板温度,雰囲気諸元,搬送速度(在炉時間),
及び冷却条件を制御して浸炭処理を行うことにより、金
属帯の材質仕様を満足させながら表層浸炭深さと濃度分
布を所望の値とした金属帯を連続的に製造することを可
能とする。
【0007】また、本出願人は前記低AI−高BH性鋼
板として特願平4−95503号に記載される有用な鋼
板を開発し、提案した。この鋼板は所定量の所定元素を
含有する極低炭素鋼に対して適切な焼鈍処理及び浸炭処
理を施し、設定された表層部及び内層部の固溶C量又は
炭素濃度分布を得ることにより、前述のような低AI−
高BH性を発揮するものである。具体的には図3に示す
ように,鋼板内層部のC濃度は低いままに、表層部のC
濃度だけを大きく高める焼鈍処理及び浸炭処理を必要と
する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、元来,非常
に大きな設置スペースを必要とする連続焼鈍設備に連続
浸炭設備を付加した前記図2のような連続焼鈍浸炭設備
は、正に巨大な設置スペースを必要とする。一方で、前
記低AI−高BH鋼板のような金属板に要求される仕様
から当該金属帯の諸元を求めると、浸炭濃度も浸炭深さ
も極めて小さく、浸炭処理時間,即ち在炉時間も短いこ
とが明らかになった。従って、前記のような連続焼鈍浸
炭設備の巨大な設置スペースを少しでも小さくするため
には、前記浸炭帯在炉時間に関与する有効浸炭炉長を短
くして浸炭炉も極力コンパクトなものとしたい。
【0009】また、既知のように金属帯への浸炭量制御
には浸炭温度というパラメータが存在する。これは、温
度の上昇に伴って,雰囲気ガスから分離したCが金属帯
表面においてFeと結合する反応速度が上昇し、金属帯
表層部から内部に向けて拡散する速度も上昇するためで
ある。一方で,この温度が低下すると遊離C,即ちスー
ティングの発生する一酸化炭素(CO)濃度限界が下が
り、テンパーカラー等の原因となる露点による水素(H
2 )濃度限界も降下する。更に浸炭量制御の温度という
制御因子は制御の応答時間が大きいことも知られてい
る。ところが、仕様諸元の異なる鋼板を継ぎ合わせたス
トリップを一連に通板して,各鋼板に合わせたストリッ
プへの浸炭量を、前述のような浸炭時間の短い条件下で
次々と制御しなければならない工業的連続浸炭操業で
は、浸炭温度の制御量を大きくするとその応答時間の大
きさから浸炭制御の実際に追従できないとか,目標制御
量に対して極端なオーバーシュートの生じる虞れがあ
る。従って、できるかぎり浸炭温度の制御量は小さくし
たいという要求がある。
【0010】ここで、前記浸炭温度の設定条件について
考察する。材質条件から浸炭温度は再結晶温度以下が望
ましい。一方、前記浸炭炉のコンパクト化並びに定めら
れた炉長で大きな処理能力を得るという条件下で,前記
Feと遊離Cとの結合反応速度及び固溶Cの内部拡散速
度(以下,両者を同時に考慮した場合の速度を浸炭速度
と称し、その具体的な理由については後述する)を大き
くするためには、スーティングの発生しない範囲内でC
O濃度を高く設定し、同時に浸炭速度そのものを大きく
するために浸炭温度を高くしたい。
【0011】このようにして浸炭温度がある程度規制さ
れると、前記スーティング限界や露点限界から雰囲気ガ
スの組成や組成濃度の上限値が設定されるから、残る浸
炭量制御因子である浸炭時間,即ち在炉時間が設定さ
れ、これにより浸炭炉内の通板速度が設定される。な
お、前記低AI−高BH鋼板に要求されるような浸炭濃
度分布を制御する場合には,固溶Cの取り込み量を規制
する金属帯表面の反応速度及び拡散速度に関与する浸炭
温度から、雰囲気組成,及び拡散時間に関与する浸炭時
間を求め、これに基づいて通板速度が設定される。
【0012】ところで、図2のような連続焼鈍浸炭設備
のうち,浸炭帯以外でも、加熱帯2及び/又は均熱帯3
で金属帯に対して所定の焼鈍処理を行い,各冷却帯5,
6で所定の冷却処理を行う必要があるから、夫々の熱処
理帯(浸炭帯を除く熱処理帯では板温とその保持時間並
びに両者から生じる板温勾配の制御を主体とするために
これらの熱処理帯を総括して,板温制御帯と称する)で
も例えば炉温を制御するなどにより所定の板温制御を行
う必要がある。これらの各板温制御帯を構成する各炉で
は主として伝熱によって板温制御を行っているが、同時
に各炉の能力計算によって炉温自体の上下限値も存在す
る。例えば,加熱帯の加熱炉や均熱帯の均熱炉では最大
処理能力を得るために、炉の能力から炉温の上限値が設
定され、ラジアントチューブ,炉壁,ハースロール等の
間の伝熱係数を考慮したヒートバランスから板温の上下
限値を満足するストリップの最小在炉時間(即ち,最小
加熱時間又は最小均熱時間である)が設定され、この最
小在炉時間を満足するための最大通板速度が設定される
ことになる。また、各冷却帯の冷却炉では前記伝熱係数
に冷却ガスジェット等の伝熱係数が採用される。
【0013】ここで前記浸炭帯で設定される最大通板速
度,及び,その他の板温制御帯で設定される最大通板速
度について考えると、浸炭帯で設定される最大通板速度
を優先した場合,つまりその他の板温制御帯の最大通板
速度よりも浸炭帯の最大通板速度が小さい場合に、浸炭
帯以外の板温制御帯,即ち加熱炉や均熱炉,冷却炉等の
板温を制御するための具体的な手段は未だ提案されてお
らず、特に焼鈍工程に不可欠な加熱炉や均熱炉における
物性や温度を制御する手段が早急に望まれている。
【0014】また、このような連続焼鈍浸炭設備の諸条
件を設定する実際にあたり、以下に述べる問題が判明し
た。 (1)浸炭速度については葉らの報告(葉 煦雲,春山
志郎ら:日本金属学会誌49(1985)7,529 )によって,
図4に示すように金属表層部のC量がある程度高く且つ
浸炭時間が長い場合、浸炭の速度は表層部のC濃度が平
衡濃度(即ち平衡濃度である)に達した後、Cが金属組
織内に拡散していく速度に比例するため、通常,時間の
平方根に比例することになり、この時間浸炭利得域を拡
散律速域と称するが、一方、前記のように金属表層部の
C量が極めて低く且つ浸炭時間が極めて短い場合は、該
表層部のC濃度が平衡濃度に達しないため、浸炭の速度
は金属表層部と炭素とが直接的に反応する速度に比例す
ることになり、この時間浸炭利得域を表面反応律速域と
称することが知られている。
【0015】そこで、例えば前記の耐二次加工脆性の向
上を対象とする金属に要求される仕様から(特開平3−
199344号公報など)当該金属帯の浸炭条件を求め
ると、浸炭濃度も浸炭深さも極めて小さいため、この場
合には表面反応律速域での浸炭処理を行う必要があり、
金属帯表層部の鋼中の平衡炭素濃度を等しい状態にある
と考える,従来のCO/CO2 等の管理によるカーボン
ポテンシャル(Cポテンシャル)制御では、金属帯への
浸炭量を制御できないことが判明した。 (2)また一般に、浸炭条件における雰囲気ガス組成は
化学平衡により求めることができる。従来の解法では考
え得る反応を全て列挙し、これらの反応の平衡関係か
ら,非線形の連立方程式を解くことによってガスの組成
を得ている。しかし、気相系の反応式からは正確なすす
発生(スーティング)の限界を求めることが極めて困難
である。 (3)更に、前述した表面反応速度については先の葉ら
の報告があるが、この報告ではCOガスのみにおける浸
炭速度について論じられているだけで、これをそのま
ま,複雑な組成からなる連続浸炭操業の実際に展開する
ことはできない。
【0016】本発明は斯かる諸問題に鑑みて開発された
ものであり、特に浸炭炉内のスーティングを発生しない
雰囲気組成範囲内で金属帯への所望する浸炭量を得るた
めの浸炭制御、並びに浸炭処理の実際から予め通板速度
が制御された場合に、浸炭炉の内外で行われる板温制御
の具体的な制御方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本件発明者等は前記諸問
題について鋭意検討を重ねた結果、以下の知見に基づい
て本発明を開発した。即ち、例えば金属表層部への浸炭
反応によって金属帯が雰囲気から持ち出す元素に対し
て,原系が持ち込む元素の量が一定であるという物質収
支の制約条件を考慮し、スーティングの発生を抑止でき
る平衡状態を一酸化炭素濃度又は一酸化炭素濃度及び水
素濃度をパラメータとし且つ浸炭温度に関する熱力学
(雰囲気組成)モデル式化した。同時に,前記浸炭炉の
コンパクト化及び定められた炉長で最大の処理能力を得
るためには浸炭速度を大きくすることが必要であるか
ら、このスーティングの発生しない範囲内で前記一酸化
炭素濃度を大きくする必要があり、このようにして一酸
化炭素濃度を設定した場合に,従来,普遍化されていな
い水素濃度の設定をこの一酸化炭素濃度を基準として行
うこととした。具体的には後述する表面反応律速域での
浸炭反応を阻害しない関係式に基づいて水素濃度を設定
する。
【0018】一方、例えば前述のように金属表層部の炭
素濃度が平衡濃度に達する以前の表面反応律速域で,金
属帯への浸炭量を制御するためには、まず当該反応速度
域における表面反応速度を得、この反応速度を時間積分
すればよいことに着目した。この時間,即ち浸炭時間は
通板速度によって決定される。そして、この表面反応速
度を研究するうちに,金属帯と雰囲気ガスとの表面反応
で考えられる浸炭反応の式と脱酸素反応の式とに包含さ
れるガスの組成を制御することにより,反応速度を制御
できることを見出した。そしてこのガス組成に最も有効
となるのは一酸化炭素と水素であり、特に高温下で雰囲
気ガスの供給/排出流量の小さい場合には組成量は少な
いが二酸化炭素及びH2 Oも、浸炭反応を阻害するとい
った意味で影響があることを見出し、更にこれらの組成
は,その分圧が前記表面反応速度の制御因子であること
を実験により証明した。また、物質反応の温度に対する
依存度を考慮し、表面反応速度の係数に,温度という制
御因子を介在させることとした。
【0019】また、前記低AI−高BH鋼板のように金
属帯の浸炭濃度分布が要求される場合は、前記浸炭量一
定の制約条件下で表面反応速度と浸炭時間とを制御す
る。即ち,浸炭量=表面反応速度×浸炭時間,である。
この表面反応速度の制御因子には前記浸炭雰囲気ガス組
成,組成濃度,浸炭温度というパラメータが存在するこ
とは前述のとおりである。そこで具体的に、例えば金属
帯の表層部のC濃度を高くする(C濃度勾配を急峻にす
る)場合には,浸炭時間を短くして表面反応速度を大き
くし、表層部のC濃度を低くする(C濃度勾配を緩やか
にする)場合には,浸炭時間を長くして表面反応速度を
小さくする。
【0020】ところで、これらの浸炭時間は,単純計算
で,浸炭時間=在炉時間=有効浸炭炉長/通板速度で表
される。従って、鋼板の仕様諸元から浸炭量が与条件と
して与えられている場合に、炉内の最大処理能力若しく
は浸炭濃度分布の要求から前述のようにして浸炭時間が
設定されると、この浸炭時間を達成するための浸炭炉内
の通板速度が設定される。この設定された浸炭炉内の最
大通板速度が,加熱帯や均熱帯等の,その他の板温制御
帯で設定される最大通板速度よりも小さい場合には、そ
の他の板温制御帯内の通板速度も浸炭炉内の最大通板速
度に律速されるから,各板温制御帯の在炉時間(加熱時
間,均熱時間)が設定される。この在炉時間に対して,
要求される板温を達成するために各伝熱係数を考慮した
ヒートバランス等から炉温が設定される。この炉温を達
成するために、例えば加熱帯や均熱帯ではその加熱量,
即ち燃料投入量を設定すればよい。
【0021】而して,本発明のうち請求項1に係る金属
帯の連続浸炭及び板温制御方法は、浸炭炉の内外で金属
帯に対して所望する板温を得るための板温制御を行いな
がら、スーティングが発生しない雰囲気組成範囲内で、
浸炭炉内に通板される金属帯を連続的に浸炭する場合の
浸炭及び板温の制御方法であって、前記浸炭炉内のスー
ティングが発生しない条件と浸炭条件とから通板速度が
設定され、この通板速度に応じて前記所望する板温を得
るための板温制御量を設定することを特徴とするもので
ある。
【0022】本発明のうち請求項2に係る金属帯の連続
浸炭及び板温制御方法は、前記スーティングが発生しな
い条件と浸炭条件とから通板速度を設定するに際し、前
記浸炭炉内でスーティングが発生しないために予め設定
された浸炭温度に関する基礎式に基づいて,目標とする
浸炭濃度分布を得るための一酸化炭素濃度又は一酸化炭
素濃度及び水素濃度と浸炭時間とを設定し、この浸炭時
間を達成するために必要な通板速度を設定することを特
徴とするものである。
【0023】本発明のうち請求項3に係る金属帯の連続
浸炭及び板温制御方法は、前記スーティングが発生しな
い条件と浸炭条件とから通板速度を設定するに際し、前
記浸炭炉内でスーティングが発生しないために予め設定
された浸炭温度に関する基礎式に基づいて一酸化炭素濃
度又は一酸化炭素濃度及び水素濃度を設定し、これに基
づいて設定される最大処理能力から浸炭時間を設定し、
この浸炭時間を達成するために必要な通板速度を設定す
ることを特徴とするものである。
【0024】本発明のうち請求項4に係る金属帯の連続
浸炭及び板温制御方法は、前記板温制御が加熱の場合に
は前記板温制御量を加熱量とし、該加熱量には炉内温度
及び/又は燃料投入量を設定することを特徴とするもの
である。本発明のうち請求項5に係る金属帯の連続浸炭
及び板温制御方法は、前記水素濃度を設定するに際し、
前記スーティングが発生しないための基礎式に基づいて
設定された一酸化炭素濃度に対して,浸炭反応を阻害し
ないために設定された関係式に基づいて水素濃度を設定
することを特徴とするものである。
【0025】
【作用】本発明の金属帯の連続浸炭及び板温制御方法で
は、例えば要求される鋼板の仕様諸元を満足するストリ
ップへの浸炭量を設定し、浸炭温度に関するスーティン
グ発生限界の基礎式から一酸化炭素の最大濃度,又はこ
の基礎式と必要に応じて浸炭反応を阻害しない関係式と
を用いて一酸化炭素及び水素の最大濃度を設定する。こ
の際、前記ストリップ板厚方向への浸炭濃度分布が要求
される場合には、前記浸炭量一定の制約条件下で当該浸
炭濃度分布を達成する一酸化炭素濃度又は一酸化炭素濃
度及び水素濃度と浸炭時間とを設定し、特に浸炭濃度分
布が要求されず,浸炭量だけが要求される場合には、前
記スーティング発生限界の基礎式から得られた一酸化炭
素濃度又は一酸化炭素濃度及び水素濃度に基づいて設定
される炉内の最大処理能力から浸炭時間を設定し、これ
らの設定された浸炭時間を達成するための浸炭炉内の最
大通板速度を設定する。この浸炭炉内の最大通板速度
が,前記以外の手段によって設定されたその他の各板温
制御帯内の最大通板速度よりも小さい場合には、この浸
炭炉内の通板速度がその他の板温制御帯内の通板速度を
律速することから、この通板速度で各板温制御帯におい
て所定の板温を得るための,例えば加熱帯や均熱帯にお
ける加熱量を板温制御量とし、この加熱量を達成するた
めの炉温や,それに必要な燃料投入量を設定することと
した。
【0026】これにより、例えば前記浸炭速度が金属帯
表層部から内部への拡散速度よりも大きい表面反応速度
に従う反応速度域においては、鋼板の仕様諸元から金属
帯への浸炭量を与条件として設定し、浸炭条件である再
結晶温度以下で浸炭反応を大きくするための浸炭温度を
設定し、当該浸炭温度における浸炭炉内のスーティング
限界の基礎式又はこの基礎式と浸炭反応を阻害しない関
係式から一酸化炭素濃度又は一酸化炭素濃度及び水素濃
度の制御量を算出し、これに基づいて算出される一酸化
炭素分圧又は一酸化炭素分圧及び水素分圧の制御量と,
当該浸炭温度の制御量に関する基礎式から算出される浸
炭の反応速度に係る温度依存係数とに基づいて単位時間
当たりの表面反応速度を算出し、前記浸炭量をこの表面
反応速度で微分して浸炭時間を算出するか,或いは前記
表面反応速度に応じて設定される前記浸炭濃度分布を達
成する浸炭時間を算出し、これらの浸炭時間で有効浸炭
炉長を除して浸炭炉内の最大通板速度を算出する。この
浸炭炉内の最大通板速度が連続焼鈍浸炭設備の通板速度
を律速する場合には、当該浸炭炉内の通板速度で前記各
板温制御帯の板温制御量,即ち加熱量,炉温,燃料投入
量等を設定する制御を行うことにより、最も効率のよい
浸炭条件の下に前記鋼板の仕様諸元を満足する金属帯表
層部への浸炭量を得ると共に、各板温制御帯において所
定の板温を得ることができる。
【0027】なお、特に高温下で雰囲気ガスの供給・排
出流量が小さい場合にあっては、浸炭反応を阻害すると
いった影響を考慮する意味で,例えば前記表面反応速度
の基礎式に二酸化炭素分圧及びH2 O分圧を加えること
により、CO2 ,H2 Oが存在する浸炭条件下での金属
帯の浸炭量を更に正確に制御することが可能となる。そ
して、本発明の金属帯の連続浸炭方法では、例えば必要
な浸炭制御を行うために,加熱と浸炭とを同時に行う場
合や加熱の後に幾らか温度を下げて浸炭を行う場合のよ
うに、板温制御と浸炭制御との場が同じ場合も異なる場
合も,例えば通板速度の時系列的な考慮により同様な制
御を可能とする。
【0028】
【実施例】図2は本発明の金属帯の連続浸炭及び板温制
御方法を実施化した極低炭素鋼からなるストリップの連
続焼鈍浸炭設備の一例を示すものである。同図において
極低炭素鋼ストリップAはコイル巻戻し機,溶接機,洗
浄機等を有する図示しない入側設備、予熱帯1、加熱帯
2、均熱帯3、浸炭帯4、第1冷却帯5、第2冷却帯
6、剪断機,巻取り機等の図示しない出側設備の順に通
板される。
【0029】前記加熱帯2は、入側設備から連続的に送
給されて予熱帯1で予熱されたストリップAを再結晶温
度以上まで加熱するものであり、具体的には炉内温度が
850〜1000℃でストリップAの温度が700〜9
50℃になるように当該ストリップを加熱する。そして
加熱されたストリップAは前記均熱帯3で必要な時間,
再結晶温度以上に保持されることにより、深絞り性に有
利な{1,1,1}集合組織を発達させることができ
る。
【0030】この加熱帯2及び均熱帯3内を,ハースロ
ールを介して上下に昇降しながら通板されるストリップ
の通板路近傍には多数のラジアントチューブが配設され
ており、このラジアントチューブに送給される燃料ガス
を燃焼させて炉内温度(炉温)を制御する。本発明で
は、この燃料ガスの供給流量の設定は通板されて炉から
熱量を運び出すストリップへの加熱量に排ガス損失熱及
び炉体放散熱等を加えた炉内の熱収支から求まる炉の要
求(必要)熱量と同等であり、図示されないホストコン
ピュータにより後述するライン全体の制御ロジックに則
って行われる。
【0031】前記浸炭帯4は、ストリップA表面の極薄
い部分(表層部)に固溶炭素(C)が存在する浸炭層を
形成するために、該浸炭帯4内の浸炭炉は図示されない
ホストコンピュータにより700〜950℃の炉内温度
に制御して,ストリップ温度(板温)が700℃以上,
好ましくは再結晶温度以下となるようにし、またストリ
ップが浸炭炉内を10〜120秒で通過するように通板
速度が制御される。ちなみに前記炉温制御は、浸炭量
(浸炭反応速度)をストリップの通板方向に対して一定
とし、材質上のバラツキを抑止するために行う。また、
既知のようにスーティング,即ち鋼板の表面に遊離炭素
[C]が付着すると、表面品質低下及び後工程の弊害要
因となる。同時に炉内の反応が所定の方向,例えば浸炭
反応方向に促進した結果,露点が上昇すると浸炭反応が
阻害されたり、ストリップ表面に酸化が生じてテンパー
カラーの原因となったりするため、炉内物性及び炉内温
度は後述する浸炭条件設定ロジックに基づいて重要に管
理されている。
【0032】本発明では、この浸炭炉内の物性,浸炭温
度,通板速度即ち浸炭時間は、連続浸炭の実際における
制御対象物理量(制御量)と見なされ、前記ホストコン
ピュータにより、ストリップに形成されるべき要求され
る浸炭層の浸炭濃度分布,浸炭深さ等の仕様諸元から,
例えば必要な浸炭量を与条件として設定し、後述する予
め設定したこれら制御量に関する各種の基礎式を適宜取
捨選択して,当該浸炭量を実現するための各制御量を算
出し、その他の設備の能力やプロセスをも考慮して、そ
れらの制御量を設定するようにしてある。
【0033】また、この実施例において浸炭炉内に供給
される浸炭ガスの組成及び供給・排出流量は、前記ホス
トコンピュータが,後述する炉内の物質収支を考慮して
炉内の自由エネルギを最小とする雰囲気組成モデル式に
基づいて算出した,諸条件に従って制御されている。こ
の浸炭ガスの組成及び供給・排出流量は、前記CO2
び露点上昇を抑制して浸炭反応速度の低下やテンパーカ
ラーを防止するように制御される。
【0034】ちなみに浸炭炉内のストリップはハースロ
ール20を介して炉内を昇降しながら通板されている
が、これらのハースロール20はその回転性及びロール
クラウンを所定状態に保持するために,例えば軸受近傍
等が冷却されている。また、ロール自体の強度及び耐磨
耗性を維持するためにハースロールにはクロムCr合金
が使用されている。ところが、前記浸炭雰囲気ガスがハ
ースロール近傍まで及ぶと冷却されてスーティングが進
行するため、ハースロールにCが付着した後、ハースロ
ール内部にCが拡散する。このようになると前記Crと
Cが結合してCr炭化物が析出し、これによりハースロ
ールに用いられている耐熱合金の結晶粒が破壊され或い
は膨張し、一方で固溶Crが減少するため、ハースロー
ルが脆化,酸化されることにより孔状の腐食が進行す
る。このようにハースロールを浸炭雰囲気ガス中に曝す
と、本件発明者等の実験によれば2年以内でハースロー
ルを交換しなければならないことが判明している。そこ
で本実施例では、ハースロール室を非接触のシール装置
21によって浸炭雰囲気から分離してハースロールの劣
化を防止するようにし、また該ハースロール室内を前記
ハースロールの劣化が進行しない程度の微弱浸炭状態と
することによって、分離されたハースロール室内をスト
リップが通過する間に浸炭された表層部からCが放散す
る,所謂脱炭を防止することに成功した。なお、ストリ
ップがハースロール室を通過する時間が極めて短く,当
該時間に係る鋼板表層部からの脱炭が問題とならない場
合には、前記ハースロール室内を非浸炭雰囲気としても
よい。
【0035】前記シール装置21はここではその構造を
詳述しないが、例えばハースロール室と浸炭雰囲気室と
の間に介装されたシール層を3層構造とし、このうちハ
ースロール室側のシール層には前記弱浸炭雰囲気ガスを
噴出し、浸炭雰囲気室側のシール層には前記浸炭雰囲気
ガスを噴出し、中間のシール層からは排気を行うように
し、更に各雰囲気ガスの噴射方向及び噴射流量を制御し
て各雰囲気ガスの流れが前記中間のシール層側に向かう
ようにすると共に、ストリップの通板に伴う板層流によ
って発生する循環流をシール層のうちストリップの幅方
向端面に形成された排出口から排気する構成とした。
【0036】この浸炭帯4から送出されたストリップA
は前記第1冷却帯5に送給される。この第1冷却帯5で
はストリップの表層部のうち表面の極薄い範囲にのみ固
溶Cを固定するため、浸炭後のストリップを、鋼板温度
が600℃以下,好ましくは500〜400℃程度にな
るまで20℃/sec.以上の冷却速度で急冷する。この第
1冷却帯5内ではこの冷却条件が達成できるように,前
記ホストコンピュータにより冷却帯内を搬送されるスト
リップに対して冷却ガスジェットから吹付けられる吹付
けられる冷却ガス流量,流速及び冷却ロールの温度,巻
付け角等が制御される。
【0037】前記第1冷却帯5から送出されたストリッ
プAは次いで第2冷却帯6に送給される。この第2冷却
帯6では鋼板温度が250〜200℃程度までガス冷却
が行われる。このようにして最終的には表層部にのみ固
溶Cが存在する極低炭素のプレス成形用冷延鋼板を得る
ことができる。次に、本実施例の連続焼鈍浸炭設備にお
いて、前記ホストコンピュータによって行われるトータ
ルな連続焼鈍浸炭制御の構成概念について説明する。
【0038】まず、前述したように浸炭帯における浸炭
制御では、鋼板中の浸炭濃度分布が要求される場合を含
めて,浸炭量は目標材質を得るための与条件として与え
られる。そして、材質条件から浸炭温度の上限は再結晶
温度以下に設定される。一方、前記浸炭炉のコンパクト
化並びに定められた炉長で最大の処理能力を得るために
は前述した浸炭量=浸炭反応速度×浸炭時間の原理に基
づいて浸炭反応速度を大きくする必要があり、この必要
から浸炭反応速度に関与する浸炭温度は高いほどよく、
これは後述するスーティングの発生を防止してCO濃度
上限を高くすることにも繋がる。
【0039】本実施例では前述したようにスーティング
の発生限界を物質収支を考慮した熱力学(雰囲気組成)
モデル式により得ることができるが、単にスーティング
の発生しない範囲からという条件だけでは,雰囲気組成
に関与するCO濃度及びH2濃度を設定するとことが困
難である。そのため、本発明では前記浸炭反応速度を阻
害しない関係式を予め設定し、例えば前記スーティング
の発生しない雰囲気組成モデル式によって得られたCO
濃度を基準として,この関係式を用いてH2 濃度を算出
する。具体的には, H2 濃度=a×(CO濃度) 但し、 a:0≦a<5の範囲の定数 で表される。この定数aは、具体的には後述する表面反
応速度の基礎式で、反応を阻害するCO2 とH2 Oの生
成濃度を最小に抑える値に設定され、通常は0.5〜
1.0の範囲で設定することが多い。即ち、この関係式
を満足するときに,表面反応速度式に基づく浸炭反応速
度は最大となる。
【0040】また、表面反応速度が設定されると所望さ
れる浸炭濃度分布を達成するための浸炭時間が設定され
る。即ち、表層部のC濃度だけを高めて内層部のC濃度
との勾配を急峻にする場合には、浸炭反応速度を大きく
して(浸炭力を高めて)浸炭時間を短くすればよい。逆
に、鋼板のC濃度全体を高めて内層部と表層部とのC濃
度勾配を緩くする場合には、浸炭反応速度を小さくして
(浸炭力を低めて)浸炭時間を長くすればよい。これら
の浸炭反応速度と浸炭時間の制御は、前述した浸炭量一
定の制約条件を満足する。
【0041】一方、前記加熱帯や均熱帯等の項でもふれ
たように各板温制御帯でも夫々の炉の能力計算やプロセ
ス計算によって最適な通板速度が設定される。これらの
各板温制御帯の最大通板速度と前記浸炭帯の最大通板速
度を考慮した場合,ストリップが一連に通板される連続
焼鈍浸炭設備では、いずれの通板速度が設備全体の通板
速度を律速するかを判断しなければならない。この場合
には、鋼板のあらゆる仕様諸元を考慮しなければなら
ず、しかもその仕様諸元は絶対条件として与えられる。
【0042】以上から,前記浸炭帯で得られる最大通板
速度が、前記各板温制御帯で得られる各最大通板速度の
最小値よりも大きい場合には、各板温制御帯の最大通板
速度の最小値をライン通板速度として設定し、この通板
速度で前記浸炭量を満足する浸炭炉の雰囲気条件を再度
設定し直す必要がある。なお、この場合は浸炭時間が長
くなるから,浸炭量一定の制約条件下では浸炭反応速度
を低下させる方向,即ち雰囲気ガス中のCO濃度,H2
濃度を低下させる方向に設定し直すことになり、必然的
に前記スーティングを発生しない条件を満足することに
なる。
【0043】逆に前記各板温制御帯で得られる各最大通
板速度の最小値が、前記浸炭帯で得られる最大通板速度
以上である場合には、本発明の骨子であるところの浸炭
帯の最大通板速度をライン通板速度として設定し、この
通板速度で各板温制御帯の板温を満足するために炉温や
燃料供給量を板温制御量として設定し直す必要がある。
【0044】これらの制御概念を具体化したのが前記ホ
ストコンピュータで行われる図5に示すロジックであ
る。このロジックでは、まずステップS20で浸炭帯,
各板温制御帯を含む各炉の能力限界から各鋼板の仕様諸
元を満足するために必要な炉温の上下限値が設定され
る。
【0045】次にステップS21に移行して、各板温制
御帯での板温制御量及び浸炭帯での浸炭制御量が設定さ
れる。具体的には例えば,前記加熱帯2,均熱帯3にお
いて伝熱理論を基礎とした数式モデルに基づいて,前記
ラジアントチューブ,炉壁,ストリップ,ハースロール
等の間の伝熱係数を考慮したヒートバランスからプロセ
スモデル式を設定し、このプロセスモデル式に基づいて
目標板温を満足する炉内温度,燃料ガス供給流量等を算
出してフィードバック制御を行うためのプロセスモデル
計算や、鋼板,即ちコイルの継ぎ目での板温変動を最小
とする燃料ガス供給流量の最適時系列を算出し、これに
基づいて対象コイル通板時にプリセットしてフィードフ
ォワード制御するための最適ルート計算を行い、これら
に基づいて各炉の最大通板速度を設定する。
【0046】一方、後段に詳述する浸炭帯4のスーティ
ング条件及び浸炭条件をモデル化した浸炭モデル式に基
づいて,鋼板の仕様諸元から設定される目標浸炭量,若
しくは当該浸炭量を満足する浸炭濃度分布を得るための
雰囲気ガス組成及び浸炭温度を求め、その条件下で浸炭
帯内の最大通板速度を設定する。次にステップS22に
移行して、浸炭炉を含む各熱処理炉内のハースロールの
ヒートクラウンを板温モデル等により予測計算し、ロー
ルクラウンがストリップの蛇行限界内になるような最大
通板速度を算出するサーマルクラウン計算を行う。これ
によりストリップの蛇行を抑制した安定操業範囲での炉
の最大処理能力を達成することができる。
【0047】次にステップS23に移行して、前記ステ
ップS21で設定された各炉内の最大通板速度を比較
し、前記各板温制御帯の最大通板速度の最小値が浸炭帯
の最大通板速度よりも小さい場合には当該板温制御帯の
最大通板速度の最小値を、浸炭帯の最大通板速度が各板
温制御帯の最大通板速度の最小値以下である場合には当
該浸炭帯の最大通板速度を,夫々ライン全体の通板速度
に設定する。
【0048】次にステップS24に移行して、前記ステ
ップS23で設定されたライン全体の通板速度に基づい
て各熱処理炉の制御量を再度設定し直す,制御量再設定
計算を行う。ここで、前記浸炭帯で行われる浸炭制御に
ついて説明するにあたり、例えば前述した低AI−高B
H鋼板のようなプレス成形性に富み且つ強度を有する鋼
板を得るために要求されるストリップの仕様諸元に基づ
いて,本実施例における浸炭処理条件が従来の浸炭処理
条件に比してどのようなレベルにあるのか、そしてその
浸炭処理条件を満足するために必要な項目について説明
する。
【0049】従来の浸炭技術は、歯車,シャフト,ベア
リング等の所謂調質鋼からなる不連続物の耐磨耗性,耐
衝撃性向上等のために表面硬化を目的として行われる。
そのため、素材中のC量は0.05%以上で要求される
浸炭量は0.1%以上,浸炭深さは0.5〜1.5mm
以上であり、従って浸炭所要時間は1〜5時間にも及
ぶ。このような条件下では鋼板表層部のC濃度が時間に
対して平衡濃度に達しているから、図4に示すように浸
炭速度は鋼中への拡散速度に従う鋼中拡散律速域であ
り、その浸炭速度は時間の平方根に比例する。この浸炭
速度域では、鋼板表層部の鋼中平衡C濃度が,所定の値
となるように鋼中拡散速度が表面反応速度と等しくなる
ように雰囲気ガスのカーボンポテンシャル(Cポテンシ
ャル)を制御する必要があり、実際の操業管理指標とし
てはCO/CO2 の管理が重要になる。一方、本実施例
のようなストリップの連続浸炭においては、該ストリッ
プが前記極低炭素鋼からなる連続物であり、このストリ
ップの表面特性を改善すること及び鋼板そのものの材質
の向上を目的として行われる。そのため、例えば前記の
耐二次加工脆性の向上を対象とする金属に要求される仕
様(特開平3−199344号公報など)から当該金属
帯の浸炭条件を求めると、本実施例では素材中のC量は
20ppmで要求される浸炭量は200ppm以下,浸
炭深さは50〜200μmであり、しかも通板速度に左
右される浸炭時間は120秒以下になる。このような条
件下では鋼板表層部のC濃度が時間に対して平衡濃度に
達しないから、前出した葉らの報告にあるように、図4
に示すように浸炭速度は鋼表面の反応速度に従う表面反
応律速域であり、該浸炭速度は時間そのものに比例す
る。この表面反応律速域では浸炭量,浸炭深さ共に非平
衡状態であるから、実際の操業管理指標として従来のよ
うに単に鋼中表層部の平衡C濃度となるようにCポテン
シャル制御によってCO/CO2 を管理するだけでな
く、炉内における多数の制御量を考慮して,要求される
鋼板の仕様諸元から決定される浸炭量を得るように、浸
炭条件を設定する必要がある。以下、本実施例において
浸炭量を制御するために前記ホストコンピュータで処理
されるロジックに則り,当該ロジックを構築する基本的
な原理について説明する。
【0050】まず、前記表面反応律速域において雰囲気
ガスの組成を制御するにあたっては前述のようにスーテ
ィングの発生を防止すると共に露点上昇を抑制する必要
があるが、これらの状態発生メカニズムについて以下の
ように推論する。一般に、浸炭条件における雰囲気ガス
組成は化学平衡により求めることができる。従来の解法
では考え得る反応を全て列挙し、これらの反応の平衡関
係から,非線形の連立方程式を解くことによってガスの
組成を得ている。しかし、気相系の反応式だけからは正
確なすす発生(スーティング)の限界を求めることが極
めて困難である。
【0051】そこで本実施例では以下のようにして熱力
学(雰囲気組成)モデル式を考え、スーティング発生を
防止する雰囲気ガス組成を求めた。等温,等圧の系の場
合、自然に起こる変化ではギブス自由エネルギーが減少
し、平衡状態において系のギブス自由エネルギーは最小
値をとる。従って、雰囲気ガスの平衡状態を求めるため
には,生成系の各成分ガス濃度を変数として得られる全
系のギブス自由エネルギーを目的関数とし、これを原系
が持ち込む元素成分が一定であるという物質収支の制約
条件下,具体的には炉内に供給される雰囲気ガス組成及
び供給量と浸炭によって金属帯に炉内から持ち出される
C量が一定という制約条件下で最小値となるように各成
分ガス濃度を求めればよい。この成分ガス濃度が与えら
れた炉温,炉圧における雰囲気ガスの平衡組成となり、
スーティングC量は以下に述べるロジック中で凝縮種の
一つとして表される。
【0052】雰囲気ガスの組成を算出するにあたり、二
つの仮定を設定する。その一つは、気体は理想気体とす
ること。もう一つは、遊離Cに代表される凝縮相は気体
と混合できないとすることである。この仮定の基にガス
種と凝縮種との全自由エネルギーF(X) は、i番目のガ
ス種の自由エネルギーfg i ,h番目の凝縮種の自由エ
ネルギーfc h に対して下記1式で与えられる。
【0053】 但し、 n:ガス種の数,p:凝縮種の数 を示す。
【0054】ここで、前記ガス生成物に関するi番目の
ガス種の自由エネルギーfg i は、i番目のガス種のモ
ルエネルギーCg i に対して当該ガス種のモル数がxg
i として下記2式〜4式で与えられる。 fg i =xg i (Cg i +ln(xg i /X)) ……… (2) Cg i =(F/(R・T))g i +lnP ……… (3) 一方、凝縮生成物については、前記仮定の基に圧力及び
混合の影響は除かれるので、h番目の凝縮種の自由エネ
ルギーfc h は、h番目の凝縮種のモルエネルギーCc
h に対して当該凝縮種のモル数がxc h として下記5
式,6式で与えられる。
【0055】 fc h =xc h ・Cc h ……… (5) Cc h =(F/(R・T))C h ……… (6) なお、前記3式,6式中の(F/(R・T))は下記7
式で定義される。 (F/(R・T))i =((F−H298)/T)i /R +ΔH0 f,298,i /RT ……… (7) 次にこの系における物質収支を考慮する。生成系の各成
分量は変化しても、各元素、即ち雰囲気ガス成分中の炭
素C,水素H,窒素N,酸素Oの原子単位で見れば夫々
の総量は一定となる。この物質収支式は下記8式で表さ
れる。
【0056】 但し、 j=1,2,………,m ag ij:i番目のガス種の分子に含まれるj番目の元素
の原子数 ac ij:i番目の凝縮種の分子に含まれるj番目の元素
の原子数 bj :系に存在するj番目の元素の量 m:系に存在する元素種の数 を示す。
【0057】ここで本実施例では、前記ホストコンピュ
ータ内に記憶させたプログラムにより、前記8式及び前
記1式から線形化した雰囲気組成モデル式を設定し、こ
の雰囲気組成モデル式から得られる解を収束して最適解
を得ることとした。次に実際の連続浸炭における雰囲気
ガス組成の必要条件について考慮するにあたり、炉内の
Cバランスを下記9式,10式で与えた。なお、10式
は鋼板の仕様諸元と表面反応速度によって算出される関
数である。
【0058】 Wg I =Ws C +Wg O ……… (9) Ws C =ξ(V,t,w,LS) ) ………(10) 但し、 Wg I :炉内に入る雰囲気ガス中のC質量 Ws C :ストリップに持ち去られるC質量 Wg O :炉内から出る雰囲気ガス中のC質量 V:表面反応速度, t:浸炭時間, w:板幅 を示す。
【0059】このようにして、浸炭炉内の連続浸炭の実
際における物質収支を考慮した熱力学(雰囲気組成)モ
デル式に基づいて前記雰囲気諸元を算出することによ
り、確実にスーティングの発生を防止しながら、炉内の
物質収支を考慮しないで求めた雰囲気諸元に比して雰囲
気組成の浸炭力を高めることが可能となる。従って、例
えば雰囲気ガス中のCO濃度を高めて通板速度を上げる
といった実際の操業能力を向上することができる。
【0060】次に、本実施例の主幹部を構成する浸炭量
制御の原理について説明する。雰囲気ガスにCOを用い
た場合の表面反応は下記11〜13式のように考えられ
る。 CO⇔[C]+O ………(11) CO+O→CO2 ………(12) Fe+[C]→Fe−C(鋼中拡散) ………(13) 前述した葉らによれば鋼板表層部のC濃度が極めて低く
且つ浸炭時間が極めて短い場合には浸炭条件が平衡状態
に達せず、そのため13式の反応速度は12式の吸着酸
素の脱離反応よりも速いために、この反応が律速反応で
あると仮定し、この表面反応律速域における表面反応速
度Vを下記14式で表した。
【0061】 V=k・PCO(PCO/(PCO+(ac/K))) ………(14) 但し、 k:反応速度定数,PCO:COガス分圧,ac:炭素活
量,K:平衡定数 を示す。しかしながら、前記14式にはH2 の影響が考
慮されていない。H2 に関する反応式としては、前記1
2式で表される反応式に対して下記15式で表される反
応が考えられる。
【0062】 CO+H2 +2O→CO2 +H2 O ………(15) また、生成したCO2 に対して下記16式で表される反
応等が考えられる。 H2 +CO2 ⇔H2 O+CO ………(16) これらの反応式に基づき,H2 は浸炭反応を促進する効
果があり、CO2 ,H 2 Oは浸炭反応を阻害することが
わかる。そこで本実施例では表面反応速度Vを下記17
式で表した。
【0063】 V=k1 ・f1 (PCO,PH2,θO )−k2 ・f2 (PCO2 ,PH2O ) ………(17) 但し、 θO :吸着酸素の被覆率,k1 ,k2 :反応速度定数 を示し、反応速度定数k1 ,k2 は下記17’式で設定
することができる。
【0064】 ki =Ai ・exp ( −Ei /RT) ……… (17') 但し、 Ai :頻度因子,Ei :活性化エネルギー,R:気体定
数,T:絶対温度 を示す。なお、頻度因子Ai ,活性化エネルギーEi
気体定数Rはいずれも定数であるため、反応速度定数k
1 ,k2 は種々の絶対温度Tの条件下における実験値か
ら算出した。
【0065】なお、本実施例においてCO濃度だけを考
慮すればよい場合,例えば雰囲気の供給ガス流量が多い
場合には、前記14式を表面反応速度式として使用して
もよい。次に固溶炭素の鋼中拡散について考察する。鋼
中へのCの拡散状態は下記18式で表される。
【0066】 dC/dt=D・d2 C/dX2 ………(18) 但し、 C:鋼中のC濃度,t:時間,D:拡散係数,X:拡散
距離 を示す。なお、前記拡散係数Dは実測データにより近似
的に表示することとした。従って、前記17式及び18
式により鋼板への浸炭量を算出することができる。
【0067】ここで、前述のように浸炭処理の操業条件
から通板速度を規制する場合、前記18式中の目標浸炭
時間tから有効浸炭炉長Lをこの浸炭時間tで微分した
値が通板速度LS となる。以上の演算を前記ホストコン
ピュータに予め記憶されたプログラムにより順次行っ
て、浸炭後の鋼板の仕様諸元で与えられるストリップへ
の浸炭量と,雰囲気ガス中のC減少量から算出されるス
トリップへの浸炭量とが一致する,浸炭条件を設定する
ためのロジックを図6のフローチャートに示す。
【0068】まずステップS1では、浸炭後の鋼板仕様
諸元として与えられる条件設定から、雰囲気ガスの組
成,投入ガスの流量,浸炭温度及び通板速度,鋼板諸元
等の条件を読込む。次にステップS2に移行して、前記
鋼板諸元及び鋼板仕様から鋼板への設定浸炭量ΔCを算
出する。
【0069】次にステップS3に移行して、前記ステッ
プS1で読込んだ雰囲気ガスの組成から前記雰囲気組成
モデル式を設定する。次にステップS4に移行して、前
記ステップS3で設定した雰囲気組成モデル式に従って
雰囲気ガスの各成分濃度を算出する。次にステップS5
に移行して、前記17式に基づいて鋼板の表面反応速度
を算出する。
【0070】次にステップS6に移行して、前記19式
に基づいて鋼中への浸炭速度を算出し、鋼中へのC拡散
量を算出する。次に当該浸炭処理時間が経過した場合に
はステップS7に移行して、前記ステップS6で算出さ
れた単位時間及び単位面積当たりの鋼中への拡散C量を
処理時間及び鋼板総表面積で積分して鋼板への浸炭量Δ
C’を算出する。
【0071】次にステップS8に移行して、前記設定浸
炭量ΔCと浸炭量ΔC’との差の絶対値が所定値aより
小さいか否かを判定し、両者の差の絶対値が所定値aよ
り小さい場合にはステップS10に移行し、そうでない
場合にはステップS9に移行する。前記ステップS9で
は、前記浸炭量に基づいて設定浸炭量を下記20式に基
づいて補正し、前記ステップS3に移行する。
【0072】 ΔC=ΔC+(ΔC’−ΔC)×b ………(20) 但し、 b:定数 を示す。前記ステップS10では、上記演算の結果得ら
れた雰囲気ガス成分の濃度,全浸炭量,平均浸炭量,鋼
板表面からの浸炭分布,スーティングC量,通板速度等
の演算結果を出力してプログラムを終了する。
【0073】このプログラムによって算出された各浸炭
温度における物質収支を考慮して求めたスーティングの
発生限界を図7に実線で示す。同図において破線は露点
上限を示す。また一点鎖線は物質収支を考慮しないで求
めたスーティングの発生限界を示す。そして同図におい
て斜線を施した部分が実浸炭操業における操業範囲を表
す。
【0074】同図から明らかなように物質収支を考慮し
て求めたスーティングの発生限界では、物質収支を考慮
しないで求めたスーティングの発生限界に比してCO濃
度もH2 濃度も高くなる。即ち、その分だけ浸炭速度も
向上する。一方、浸炭温度が高くなるほどスーティング
の発生限界に伴うCO濃度もH2 濃度も高くなる。この
ことは全体的な浸炭操業効率が温度にも依存することを
意味するから、逆に通板速度を速くする場合には材質の
許す範囲で炉内温度を高くする等の操業の余裕度が増す
ことになり、連続浸炭の実際における諸条件の設定範囲
がより広がることになる。勿論、炉内の物質収支を考慮
しないで求めたスーティングの発生限界に沿って操業範
囲を設定してもスーティングは発生しないが、その分だ
け操業の余裕度は減少し、諸条件の設定範囲は狭くな
る。
【0075】また、このプログラムによって算出された
各浸炭条件,即ち前記各制御量を変化させた場合の浸炭
量と、実測された浸炭量との相関を図8に示す。同図か
ら明らかなように、浸炭量の計算値と実測値とは非常に
よく一致している。このことは、前記浸炭速度,即ち表
面反応速度の設定と、その温度依存係数の設定が正しい
ことを意味しており、表面反応速度の設定が正しい限
り、本発明の連続浸炭方法は浸炭速度が拡散速度よりも
大きい表面反応速度に従う領域での幅広い応用が可能で
あることを意味する。
【0076】次に、本プログラムによって算出される浸
炭制御の具体的演算例について説明する。ここで例え
ば、ステップS1で読込まれた板厚諸元等の鋼板諸元か
ら,前記ステップS2で所定(目標)浸炭量が設定され
る。また、前記ステップS1では鋼板の材質条件より目
標浸炭温度が設定された。更に、前記ステップS1で読
込まれた通板速度で,前記有効浸炭炉長を除して浸炭時
間が算出される。
【0077】次いで、前記ステップS3及びステップS
4でスーティングを防止する雰囲気ガス条件としてCO
濃度,H2 濃度の上限が設定される。これに対して前記
ステップS3〜S9のフローにおいて表面反応速度式,
鋼中拡散モデル式が設定され、これらの式から前記目標
浸炭量を達成するのに必要なCO濃度,H2 濃度,CO
2 濃度,H2 O濃度,浸炭時間が設定され、同時に前記
設定通板速度に対して,所望する浸炭時間を達成する通
板速度が新たに設定される。
【0078】従ってこのロジックでは、浸炭濃度分布が
要求されない場合は勿論,浸炭濃度分布が要求される場
合にも、鋼板の仕様諸元から与えられた浸炭量を満足し
ながら,スーティングを発生しない条件下で最大処理能
力を得るように前記各浸炭制御量が設定される。次に、
前記図6のロジックの浸炭制御によって通板速度が規制
された場合に、浸炭帯以外の熱処理帯で行われる板温制
御の具体的演算例を図9に基づいて説明する。
【0079】前記図5に示す板温制御プログラムによれ
ば、各熱処理炉の能力計算及び鋼板の仕様諸元に基づい
て炉温が再設定され、同時に焼鈍処理に必要な目標板温
及び板温変動の許容範囲が再設定される。一方、前記浸
炭制御プログラムによって通板速度が規制され、その通
板速度精度が±0.06m/min.である場合に、図9に
示す設定炉温に対する板温と焼鈍時間との制御マップに
基づいて,当該通板速度の通板条件に従って板温制御時
間(目標焼鈍時間)及び焼鈍時間変動の許容範囲を設定
する。
【0080】この場合、板温変動の許容範囲と焼鈍時間
変動の許容範囲とが前記板温と焼鈍時間との制御マップ
上で合致しない場合には設定炉温を変更し、当該変更さ
れた設定炉温を達成するために、前記ラジアントチュー
ブへの燃料流量等の制御量,即ち加熱量等の板温制御量
を変更する。つまりこれが図5のロジックによって達成
される定常時の連続焼鈍浸炭制御に相当し、所謂フィー
ドバック制御を行っていることになる。一方、図5のロ
ジックにおける非定常時の連続焼鈍浸炭制御にあって
は、前記プロセスモデル計算,最適ルート計算によって
炉温を決定している燃料流量の制御量を直接算出するこ
とにより、応答速度の大きい炉温制御の時定数エラーを
低減若しくは抑止する,所謂フィードフォワード制御に
よって最適な板温制御が可能となる。
【0081】なお、本実施例では表面反応においてC
O,H2 ,CO2 及びH2 Oの影響のみを考慮して表面
反応速度を算出する場合について詳述したが、前述した
ようにその他の雰囲気ガス組成,例えば重炭化水素の影
響を考慮して表面反応速度を算出するようにしてもよ
い。また、本実施例では物質収支を考慮した熱力学モデ
ル式を線形化し、その解を収束することによって平衡状
態を算出することとしたが、この平衡状態の算出手段は
これに限定されるものではない。
【0082】また、本実施例では特に極低炭素鋼からな
るストリップを連続焼鈍・浸炭して,浸炭濃度が平衡濃
度に達する以前で浸炭速度が表面反応速度に律速される
表面反応律速域での浸炭制御についてのみ詳述したが、
本発明の連続焼鈍及び連続浸炭方法は,前記浸炭速度が
金属帯表面から内部への拡散速度に律速される拡散律速
域においても展開可能であることは言うまでもない。
【0083】
【発明の効果】以上説明したように本発明の金属帯の連
続浸炭及び板温制御方法によれば、浸炭温度に関するス
ーティング発生限界の基礎式に基づいて,材料の仕様諸
元から与えられる浸炭量を制約条件として、例えば所望
する浸炭濃度分布を満足する或いは最大処理能力から得
られる一酸化炭素又は一酸化炭素及び水素,及び浸炭時
間を設定してこの浸炭時間を達成するための通板速度を
設定し、この通板速度で各板温制御帯において所定の板
温を得るために,例えば加熱帯や均熱帯における加熱量
を板温制御量とし、この加熱量を達成するための炉温
や,それに必要な燃料投入量を設定することとしたため
に、最も効率のよい浸炭条件の下に前記鋼板の仕様諸元
を満足する金属帯表層部への浸炭量を得ると共に、各板
温制御帯において所定の板温を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続焼鈍浸炭設備で行われる熱処理工程の概念
説明図である。
【図2】本発明の金属帯の連続浸炭及び板温制御方法を
用いた浸炭制御の対象となる連続焼鈍浸炭設備の一実施
例を示す概略構成図である。
【図3】低AI−高BH鋼板等に要求される板厚方向へ
の浸炭濃度分布の説明図である。
【図4】金属帯表層部の炭素濃度が平衡濃度に達した後
の拡散律速域と該平衡濃度に達する以前の表面反応律速
域との説明図である。
【図5】図2の連続焼鈍浸炭設備で行われる全体的なラ
イン制御のロジックを示すフローチャート図である。
【図6】本発明の金属帯の連続浸炭及び板温制御方法を
用いて浸炭制御を行うロジックの一例を示すフローチャ
ート図である。
【図7】図6の浸炭制御ロジックにより得られたスーテ
ィング発生限界と炉内の物質収支を考慮しないで得たス
ーティング発生限界とを比較したCO−H2 特性図であ
る。
【図8】図6のロジックによって得られた浸炭量の計算
値と実測値との相関関係図である。
【図9】図5,図6の実施例によって目標とする板温を
得るために算出された板温制御諸条件の説明図である。
【符号の説明】
1は予熱帯 2は加熱帯 3は均熱帯 4は浸炭帯 5は第1冷却帯 6は第2冷却帯 Aはストリップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蔵本 浩史 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 諸住 順 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 岡田 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 浸炭炉の内外で金属帯に対して所望する
    板温を得るための板温制御を行いながら、スーティング
    が発生しない雰囲気組成範囲内で、浸炭炉内に通板され
    る金属帯を連続的に浸炭する場合の浸炭及び板温の制御
    方法であって、前記浸炭炉内のスーティングが発生しな
    い条件と浸炭条件とから通板速度が設定され、この通板
    速度に応じて前記所望する板温を得るための板温制御量
    を設定することを特徴とする金属帯の連続浸炭及び板温
    制御方法。
  2. 【請求項2】 前記のスーティングが発生しない条件と
    浸炭条件とから通板速度を設定するに際し、前記浸炭炉
    内でスーティングが発生しないために予め設定された浸
    炭温度に関する基礎式に基づいて,目標とする浸炭濃度
    分布を得るための一酸化炭素濃度又は一酸化炭素濃度及
    び水素濃度と浸炭時間とを設定し、この浸炭時間を達成
    するために必要な通板速度を設定することを特徴とする
    請求項1に記載の金属帯の連続浸炭及び板温制御方法。
  3. 【請求項3】 前記のスーティングが発生しない条件と
    浸炭条件とから通板速度を設定するに際し、前記浸炭炉
    内でスーティングが発生しないために予め設定された浸
    炭温度に関する基礎式に基づいて一酸化炭素濃度又は一
    酸化炭素濃度及び水素濃度を設定し、これに基づいて設
    定される最大処理能力から浸炭時間を設定し、この浸炭
    時間を達成するために必要な通板速度を設定することを
    特徴とする請求項1に記載の金属帯の連続浸炭及び板温
    制御方法。
  4. 【請求項4】 前記板温制御が加熱の場合には前記板温
    制御量を加熱量とし、該加熱量には炉内温度及び/又は
    燃料投入量を設定することを特徴とする請求項1乃至3
    に記載の金属帯の連続浸炭及び板温制御方法。
  5. 【請求項5】 前記水素濃度を設定するに際し、前記ス
    ーティングが発生しないための基礎式に基づいて設定さ
    れた一酸化炭素濃度に対して,浸炭反応を阻害しないた
    めに設定された関係式に基づいて水素濃度を設定するこ
    とを特徴とする請求項2乃至4に記載の金属帯の連続浸
    炭及び板温制御方法。
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