JP2983398B2 - 金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法 - Google Patents

金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法

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JP2983398B2
JP2983398B2 JP4318676A JP31867692A JP2983398B2 JP 2983398 B2 JP2983398 B2 JP 2983398B2 JP 4318676 A JP4318676 A JP 4318676A JP 31867692 A JP31867692 A JP 31867692A JP 2983398 B2 JP2983398 B2 JP 2983398B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属帯の連続焼鈍方法
及び連続浸炭方法に関するものであり、例えば極低炭素
鋼からなるストリップを焼鈍炉内から浸炭炉内に通板し
て連続的に焼鈍浸炭を行い、遅時効性を有する高焼付硬
化型鋼板等を製造する場合の板温制御に適するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車産業のような金属二次加工
産業界では、加工対象金属板に対してより高い加工性と
強度との両立が要求されている。具体的に前記自動車産
業界では、昨今問題化されている地球環境問題から低燃
費化を追求するために車体を軽量化する必要から、従来
の深絞り性を維持した上でより強度の高い鋼板が要求さ
れる。
【0003】このような金属板の評価指標としては、例
えば延性,深絞り性,時効性,強度,二次加工脆性,焼
付硬化性,スポット溶接性等が考えられる。そこで、前
記の深絞り性を特に重要視して,この深絞り性をランク
フォード値(以下r値:金属板幅歪み/板厚歪み)で評
価した場合、鋼中の炭素(以下Cと記す)量を低減する
ことが最も有利であることは公知であり、加えてこの低
炭素化により延性(Elongation:El)や常温遅時効性
(Aging Index :AIが低い程良い)も向上する。とこ
ろが、一方で鋼中のC量が低下するに従ってその他の評
価指標は大方について劣化する。例えば、析出物が減少
して組織強度が低下するために引張強度(Tensile Stre
ngth:TS)が低下し、粒界強度が低下するために二次
加工脆性が劣化し、固溶C量が低下するために焼付硬化
性が劣化する。また、鋼中C量50ppm以下では,溶
接による加熱で粒成長速度が促進されて熱影響部(Heat
Affected Zone:HAZ)の粗粒化によってスポット溶
接性が劣化する。
【0004】一方、前記金属二次加工産業界で使用され
るプレス加工塗装鋼板等では、プレス加工後に焼付塗装
を行う場合が多く、そのため,プレス加工時にはその成
形性を発揮し、焼付塗装時に焼付硬化性を発揮して強度
が向上する高焼付硬化型鋼板が要求される。勿論、プレ
ス加工時まではその成形性を維持できる常温遅時効性が
必要となるから、結果として使用される鋼板は常温遅時
効性を有する高焼付硬化型鋼板(低AI−高BH性鋼
板)を要求される。
【0005】そこで、図1に示すように極低炭素鋼から
なる金属帯を連続焼鈍処理によって再結晶焼鈍すること
により前記延性,深絞り性,常温遅時効性を得ながら、
これに続いて,連続浸炭処理によって表層部に固溶Cを
存在させることにより前記引張強度,二次加工脆性,B
H性,スポット溶接性を向上するために、本出願人は図
2に示すような特開平4−88126号公報に記載され
る連続焼鈍浸炭設備を開発した。
【0006】この連続焼鈍浸炭設備によれば、加熱帯2
又は均熱帯3で金属帯に対して所定の再結晶焼鈍を行っ
た後、浸炭炉4で鋼板温度,雰囲気諸元,搬送速度(在
炉時間),及び冷却条件を制御して浸炭処理を行うこと
により、金属帯の材質仕様を満足させながら表層浸炭深
さと濃度分布を所望の値とした金属帯を連続的に製造す
ることを可能とする。
【0007】また、本出願人は前記低AI−高BH性鋼
板として特願平4−95503号に記載される有用な鋼
板を開発し、提案した。この鋼板は所定量の所定元素を
含有する極低炭素鋼に対して適切な焼鈍処理及び浸炭処
理を施し、設定された表層部及び内層部の固溶C量を得
ることにより、前述のような低AI−高BH性を発揮す
るものである。具体的には図3に仮想線で示すように,
鋼板内層部のC濃度は低いままに、表層部のC濃度だけ
を大きく高める焼鈍処理及び浸炭処理を必要とする。
【0008】一方、前記連続焼鈍及び連続浸炭の具体的
な指針として、例えば特開平3−72932号公報や特
開平3−150318号公報に記載されるように,焼鈍
処理と同時に,再結晶温度以上の温度で炭処理を行うこ
とが提案されている。この連続焼鈍浸炭方法によれば、
処理の時間を短縮したり付帯設備や所要床面積を軽減し
たりすることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記した
連続焼鈍及び浸炭方法によれば、焼鈍処理と同時に又は
その直後に浸炭処理を行うために、図4に示すように少
なくとも焼鈍処理では板温を再結晶温度以上とする必要
があるから、浸炭処理も再結晶温度以上で行われる。と
ころが、このような再結晶温度以上では金属組織内の粒
界が著しく移動しているから、固溶Cは金属帯の表層部
から内層部に急速に移動するため、前記図3に実線で示
すように板厚方向全体のC濃度が高くなって,前述した
低AI−高BH性鋼板としてのC濃度分布が満足されな
い。また、再結晶温度以上の浸炭では前記粒界の著しい
移動に伴って図5に示すように粒内にも多量の固溶Cが
取り込まれる。これにより、r値やEl値が低下するの
は前記の逆の通りであり、前述したプレス加工時の深絞
り成形性も失われる。
【0010】一方、前記特願平4−95503号によれ
ば,結晶粒内に存在する固溶Cと結晶粒界に存在する固
溶Cとでは、その挙動に違いがあることが究明されてい
る。この内容によれば、従来は,焼付硬化性も常温時効
性も共に時効現象であり、転位,特に結晶粒内の転位に
固溶Cが固着されて転位の移動が妨げられることにより
生じるものであるから、結晶粒内の固溶C量が増大する
と,それに伴ってBH性が高くなると共に常温時効も進
行すると考えられていた。しかし、固溶Cのうち結晶粒
内に存在する固溶Cは、常温でも時間がたつにつれて転
位に固着されるのに対し、結晶粒界に存在している固溶
Cは、BHのような高温で時効を行ってはじめて,粒界
から粒内へ拡散して粒内の転位に固着されるものであ
り、常温時効のような低温時効では粒内には拡散しな
い。従って、時効処理前から粒内に存在する固溶Cは、
BH性と常温時効の両者に関与するのに対し、粒界に存
在する固溶Cは常温時効には関与せず、BH性のみに関
与する。
【0011】この知見によれば前記図5に示すように粒
内に多量の固溶Cが存在し、粒界の固溶Cがさほど多く
ない鋼板を作成する,前記連続焼鈍及び浸炭方法では、
原板のプレス加工性が低く、常温時効性も劣化し、しか
も焼付硬化性の低い鋼板しか得られないことになる。本
発明は斯かる諸問題に鑑みて開発されたものであり、プ
レス加工時の深絞り性を維持しながら低AI−高BH性
鋼板の製造に適した,金属帯の連続焼鈍及び浸炭方法を
提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本件発明者等は前記諸問
題について鋭意検討を重ねた結果、以下の知見に基づい
て本発明を開発した。即ち、焼鈍工程においてはその意
味からも金属帯をその再結晶温度以上に加熱又は均熱し
なければならないのは言うまでもないが、要するに浸炭
工程における板温の制御範囲を再結晶温度以下とするこ
とで,前記の諸問題に対応することができることを見出
した。つまり再結晶温度以下の板温浸炭条件では粒界の
移動が鈍化して,表層部から内層部への固溶Cの拡散を
抑制し、同時に粒内への固溶Cの取り込みを低減させ、
これにより、深絞り性を維持しながら前記低AI−高B
H性を発揮することができる。また、この命題を研究す
るうちに,焼鈍時の再結晶温度以上から浸炭時の再結晶
温度以下までの板温制御の経緯(履歴)から金属帯の種
々の冶金的・機械的特性をコントロールできることを副
産物的に知見した。即ち、焼鈍時の再結晶温度以上から
の冷却速度に応じて粒内への固溶Cの取り込み量を制御
でき、同時に浸炭温度に至る前の冷却到達温度を或るレ
ベル以下とすることにより,金属帯幅方向の浸炭濃度分
布のバラツキを抑制することができる。
【0013】而して本発明の金属帯の連続焼鈍及び連続
浸炭方法は、深絞り性と低AI−高BH性とが要求され
る極低炭素鋼からなる金属帯を加熱炉又は加熱炉及び均
熱炉から構成される焼鈍炉に連続的に送給して焼鈍を行
い、当該金属帯を浸炭炉に連続的に送給して浸炭を行う
金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法において、前記焼鈍
炉では再結晶温度以上の板温条件下で金属帯を焼鈍し、
然る後に前記浸炭炉では再結晶温度以下の板温条件下で
金属帯を浸炭することを特徴とするものである。
【0014】
【作用】本発明の金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法で
は、前記焼鈍炉内に連続的に送給される極低炭素鋼から
なる金属帯に対して再結晶温度以上の板温条件下で焼鈍
を行うことにより、ストリップの結晶方位を発達させて
十分な延性や深絞り性を発揮せしめ、然る後、例えば前
記焼鈍炉内から浸炭炉内へ金属帯が連続的に送給される
場合井は、焼鈍炉から送出される金属帯を強制冷却する
か或いは放冷して、必要に応じて加熱し、又は一旦、焼
鈍処理された金蔵帯が巻取り等によって完全に冷却した
場合には必要に応じて加熱するなどして、前記浸炭炉内
に連続的に送給される金属帯に対して再結晶温度以下の
板温条件下で浸炭を行うことにより、粒界の移動を低減
して、金属帯内層部への固溶Cの拡散を抑制して金属帯
表層部の濃度だけを高め、同時にこの表層浸炭部では粒
内への固溶Cの取り込みを抑制して粒界に多量の固溶C
を存在せしめて、r値で表されるプレス加工時の深絞り
性を維持したまま、前記低AI−高BH性を発揮するこ
とができる。また、前記焼鈍時の再結晶温度以上の板温
からの冷却速度を制御することで前記粒内への固溶Cの
取り込み量をコントロールすることができ、この浸炭前
の冷却到達板温を制御することで金属帯幅方向への浸炭
濃度のバラツキを抑制することができる。
【0015】
【実施例】図6は本発明の金属帯の連続焼鈍及び連続浸
炭方法を実施化した極低炭素鋼からなるストリップの連
続焼鈍浸炭設備の一例を示すものである。同図において
極低炭素鋼ストリップAはコイル巻戻し機,溶接機,洗
浄機等を有する図示しない入側設備、予熱帯1、加熱帯
2、均熱帯3、板温調節帯4、浸炭帯5、第1冷却帯
6、第2冷却帯7、剪断機,巻取り機等の図示しない出
側設備の順に通板される。
【0016】前記加熱帯2は、入側設備から連続的に送
給されて予熱されたストリップAを図7に示すように再
結晶温度以上まで加熱するものであり、具体的には炉内
温度が850〜1000℃でストリップAの温度が70
0〜950℃の再結晶温度以上になるように当該ストリ
ップを加熱する。そして加熱されたストリップAは前記
均熱帯3で必要な時間,再結晶温度以上に保持されるこ
とにより、深絞り性に有利な{1,1,1}集合組織を
発達させることができる。この加熱帯2及び均熱帯3内
を,ハースロールを介して上下に昇降しながら通板され
るストリップの通板路近傍には多数のラジアントチュー
ブが配設されており、このラジアントチューブに送給さ
れる燃料ガスを燃焼させて炉内温度(炉温)を制御す
る。この燃料ガスの供給流量の設定は、図示されないホ
ストコンピュータにより、ラジアントチューブ,ストリ
ップ,ハースロール,炉壁等の間の伝熱係数を考慮した
ヒートバランスから炉内温度の上限値が設定され、所望
する再結晶温度の上下限値を満足するプロセスモデル計
算や、コイル同士の継ぎ目での通板速度の最適時系列を
算出する最適ルート計算や、ハースロールのヒートクラ
ウンを予測計算して最大通板速度を算出するサーマルク
ラウン計算等に基づいて,各熱処理帯内の在炉時間(加
熱時間,均熱時間)を達成する通板速度と共に設定され
る。
【0017】前記板温調節帯4は、前記加熱帯2及び均
熱帯3において焼鈍に必要な再結晶温度以上の板温に加
熱及び均熱されたストリップAを所望する冷却速度で冷
却して、以下に続く浸炭帯5における浸炭に最も適する
板温,即ち本発明では再結晶温度以下の板温に調節する
ものである。この板温調節帯4は、前記浸炭帯5で所望
する浸炭量,浸炭濃度分布,固溶Cの拡散及び存在状態
が得られる,浸炭に適した温度,即ち本発明においてス
トリップAの再結晶温度以下に板温を制御すると共に、
炉温制御の時定数エラーに伴うストリップの長手方向へ
の板温のバラツキを抑制し、更にストリップの板幅方向
への板温のバラツキをも抑制するために、ガスジェット
冷却装置12を用いてこれらの板温を制御している。具
体的には前記図6及び図8に示すように,板温調節帯4
の入側と出側とに設けられた板温分布センサ10,11
によりストリップAの板温及びその板幅方向並びに長手
方向への板温バラツキを検出し、その検出信号を例えば
集中制御室内に設けられた前記ホストコンピュータ17
に送出する。一方、前記ガスジェット冷却装置12は、
ストリップAの板幅方向に複数個並設されたガスジェッ
トノズル13を一組として構成され、このガスジェット
冷却装置12が板温調節帯4のタワー内において送給さ
れるストリップAに対向して複数組設けられている。そ
してこれらのガスジェットノズル13には夫々流量弁1
4が設けられており、該流量弁14を介してガス供給源
15から供給される不活性冷却用ガスを所定の温度に制
御するガス温度制御装置16に連結されている。そこ
で、前記ホストコンピュータ17は,ストリップAをト
ラッキングしながら入側板温分布センサ10からの検出
信号に基づいて,最終的に浸炭炉内に送給されるストリ
ップAの板温が前記再結晶温度以下の浸炭温度となるた
めに,ストリップAの板幅方向を含むどの部分をどれ程
冷却するか、即ち当該部分の冷却量を算出し、その冷却
量を満足するための冷却用ガスの流量,流速,噴射時間
等の制御量を算出し、その制御量に応じて前記流量弁1
4の絞り開度を各ガスジェットノズル13毎に行う。更
にこのホストコンピュータ17では、前記出側板温分布
センサ11からの検出信号に基づいて前記冷却量を常時
補正する,フィードバック制御を行っている。このよう
にして、再結晶温度以下の浸炭に最も適する板温に制御
されたストリップAは前記浸炭帯5に至る。なお、この
板温調節帯4における板温制御の原理については後段に
説明する。
【0018】前記浸炭帯5は、ストリップA表面の極薄
い部分(表層部)に固溶炭素(C)が存在する浸炭相を
形成するために、該浸炭帯5内の浸炭炉は図示されない
ホストコンピュータにより700〜950℃の炉内温度
に制御して,ストリップ温度(板温)が700℃以上再
結晶温度以下となるようにし、またストリップが浸炭炉
内を10〜120秒で通過するように通板速度が制御さ
れる。ちなみに前記炉温制御は、ストリップ温度が70
0℃未満であると浸炭速度が低下して熱処理生産性が低
下し、また炉内温度が950℃を越えると変態点を越え
て材質が劣化するといった諸条件を満足するために行わ
れる。また、既知のようにスーティング,即ち鋼板の表
面に遊離炭素[C]が付着すると、化成処理性の劣化
等,品質低下及び後工程の弊害要因となる。同時に炉内
の反応が所定の方向,例えば浸炭反応方向に促進した結
果,露点が上昇すると浸炭反応が阻害されたり、ストリ
ップ表面に酸化が生じてテンパーカラーの原因となった
りするため、炉内物性及び炉内温度は後述する浸炭条件
設定ロジックに基づいて重要に管理されている。
【0019】本発明では、この浸炭炉内の物性,浸炭温
度,通板速度即ち浸炭時間は、連続浸炭の実際における
制御対象物理量(制御量)と見なされ、前記ホストコン
ピュータにより、ストリップに形成されるべき要求され
る浸炭層の浸炭濃度分布,浸炭深さ等の仕様諸元から,
前記再結晶温度以下の浸炭温度の条件下で、例えば必要
な浸炭量を設定し、後述する予め設定したこれら制御量
に関する各種の基礎式を適宜取捨選択して,当該浸炭量
を実現するための各制御量を算出し、その他の設備の能
力やプロセスをも考慮して、それらの制御量を設定する
ようにしてある。
【0020】また、この実施例において浸炭炉内に供給
される浸炭ガスの組成及び供給・排出流量は、前記ホス
トコンピュータが,後述する炉内の物質収支を考慮して
炉内の自由エネルギを最小とする雰囲気組成モデル式に
基づいて算出した,諸条件に従って制御されている。こ
の浸炭ガスの組成及び供給・排出流量は、前記CO2
び露点上昇を抑制して浸炭反応速度の低下やテンパーカ
ラーを防止するように制御される。
【0021】ちなみに浸炭炉内のストリップはハースロ
ール20を介して炉内を昇降しながら通板されている
が、これらのハースロール20はその回転性及びロール
クラウンを所定状態に保持するために,例えば軸受近傍
等が冷却されている。また、ロール自体の強度及び耐磨
耗性を維持するためにハースロールにはクロムCr合金
が使用されている。ところが、前記浸炭雰囲気ガスがハ
ースロール近傍まで及ぶと冷却されてスーティングが進
行するため、ハースロールにCが付着した後、ハースロ
ール内部にCが拡散する。このようになると前記Crと
Cが結合してCr炭化物が析出し、これによりハースロ
ールに用いられている耐熱合金の結晶粒が破壊され或い
は膨張し、一方で固溶Crが減少するため、ハースロー
ルが脆化,酸化されることにより孔状の腐食が進行す
る。このようにハースロールを浸炭雰囲気ガス中に曝す
と、本件発明者等の実験によれば2年以内でハースロー
ルを交換しなければならないことが判明している。そこ
で本実施例では、ハースロール室を非接触のシール装置
21によって浸炭雰囲気から分離してハースロールの劣
化を防止するようにし、また該ハースロール室内を前記
ハースロールの劣化が進行しない程度の微弱浸炭状態と
することによって、分離されたハースロール室内をスト
リップが通過する間に浸炭された表層部からCが放散す
る,所謂脱炭を防止することに成功した。なお、ストリ
ップがハースロール室を通過する時間が極めて短く,当
該時間に係る鋼板表層部からの脱炭が問題とならない場
合には、前記ハースロール室内を非浸炭雰囲気としても
よい。
【0022】前記シール装置21はここではその構造を
詳述しないが、例えばハースロール室と浸炭雰囲気室と
の間に介装されたシール層を3層構造とし、このうちハ
ースロール室側のシール層には前記弱浸炭雰囲気ガスを
噴出し、浸炭雰囲気室側のシール層には前記浸炭雰囲気
ガスを噴出し、中間のシール層からは排気を行うように
し、更に各雰囲気ガスの噴射方向及び噴射流量を制御し
て各雰囲気ガスの流れが前記中間のシール層側に向かう
ようにすると共に、ストリップの通板に伴う板層流によ
って発生する循環流をシール層のうちストリップの幅方
向端面に形成された排出口から排気する構成とした。
【0023】この浸炭帯5から送出されたストリップA
は前記第1冷却帯6に送給される。この第1冷却帯6で
はストリップの表層部のうち表面の極薄い範囲にのみ固
溶Cを固定するため、浸炭後のストリップを、鋼板温度
が600℃以下,好ましくは500〜400℃程度にな
るまで20℃/sec.以上の冷却速度で急冷する。この第
1冷却帯6内ではこの冷却条件が達成できるように冷却
帯内を搬送されるストリップに対して吹付けられる冷却
ガス流量,流速及び冷却ロール温度,巻付け角等が制御
される。なお、この冷却速度制御の原理に関しては、前
記浸炭雰囲気制御,板温調節制御の後に説明する。
【0024】前記第1冷却帯6から送出されたストリッ
プAは次いで第2冷却帯7に送給される。この第2冷却
帯7では鋼板温度が250〜200℃程度までガス冷却
が行われる。このようにして最終的には表層部にのみ固
溶Cが存在する極低炭素のプレス成形用冷延鋼板を得る
ことができる。次に前記浸炭帯で行われる浸炭雰囲気制
御について説明する。
【0025】まず、前述したようなプレス成形性に富み
且つ強度を有する鋼板を得るために要求されるストリッ
プの仕様諸元に基づいて,本実施例における浸炭処理条
件が従来の浸炭処理条件に比してどのようなレベルにあ
るのか、そしてその浸炭処理条件を満足するために必要
な項目について説明する。従来の浸炭技術は、歯車,シ
ャフト,ベアリング等の所謂調質鋼からなる不連続物の
耐磨耗性,耐衝撃性向上等のために表面硬化を目的とし
て行われる。そのため、素材中のC量は0.05%以上
で要求される浸炭量は0.1%以上,浸炭深さは0.5
〜1.5mm以上であり、従って浸炭所要時間は1〜5
時間にも及ぶ。このような条件下では鋼板表層部のC濃
度が時間に対して平衡濃度に達しているから、図9に示
すように浸炭速度は鋼中への拡散速度に従う鋼中拡散律
速域であり、その浸炭速度は時間の平方根に比例する。
この浸炭速度域では、鋼板表層部の鋼中平衡C濃度が,
所定の値となるように鋼中拡散速度が表面反応速度と等
しくなるように雰囲気ガスのカーボンポテンシャル(C
ポテンシャル)を制御する必要があり、実際の操業管理
指標としてはCO/CO2 の管理が重要になる。
【0026】一方、本実施例のようなストリップの連続
浸炭においては、該ストリップが前記極低炭素鋼からな
る連続物であり、このストリップの表面特性を改善する
こと及び鋼板そのものの材質の向上を目的として行われ
る。そのため、例えば前記の耐二次加工脆性の向上を対
象とする金属に要求される仕様(特開平3−19934
4号公報など)から当該金属帯の浸炭条件を求めると、
本実施例では素材中のC量は20ppmで要求される浸
炭量は200ppm以下,浸炭深さは50〜200μm
であり、しかも通板速度に左右される浸炭時間は120
秒以下になる。このような条件下では鋼板表層部のC濃
度が時間に対して平衡濃度に達しないから、葉らの報告
(葉 煦雲,春山 志郎ら:日本金属学会誌49(1985)7,
529 )にあるように、図9に示すように浸炭速度は鋼表
面の反応速度に従う表面反応律速域であり、該浸炭速度
は時間そのものに比例する。この表面反応律速域では浸
炭量,浸炭深さ共に非平衡状態であるから、実際の操業
管理指標として従来のように単に鋼中表層部の平衡C濃
度となるようにCポテンシャル制御によってCO/CO
2 を管理するだけでなく、炉内における多数の制御量を
考慮して,要求される鋼板の仕様諸元から決定される浸
炭量を得るように、浸炭条件を設定する必要がある。以
下、本実施例において浸炭量を制御するために前記ホス
トコンピュータで処理されるロジックに則り,当該ロジ
ックを構築する基本的な原理について説明する。
【0027】まず、前記表面反応律速域において雰囲気
ガスの組成を制御するにあたっては前述のようにスーテ
ィングの発生を防止すると共に露点上昇を抑制する必要
があるが、これらの状態発生メカニズムについて以下の
ように推論する。一般に、浸炭条件における雰囲気ガス
組成は化学平衡により求めることができる。従来の解法
では考え得る反応を全て列挙し、これらの反応の平衡関
係から,非線形の連立方程式を解くことによってガスの
組成を得ている。しかし、気相系の反応式だけからは正
確なすす発生(スーティング)の限界を求めることが極
めて困難である。
【0028】そこで本実施例では以下のようにして熱力
学(雰囲気組成)モデル式を考え、スーティング発生を
防止する雰囲気ガス組成を求めた。等温,等圧の系の場
合、自然に起こる変化ではギブス自由エネルギーが減少
し、平衡状態において系のギブス自由エネルギーは最小
値をとる。従って、雰囲気ガスの平衡状態を求めるため
には,生成系の各成分ガス濃度を変数として得られる全
系のギブス自由エネルギーを目的関数とし、これを原系
が持ち込む元素成分が一定であるという物質収支の制約
条件下,具体的には炉内に供給される雰囲気ガス組成及
び供給量と浸炭によって金属帯に炉内から持ち出される
C量が一定という制約条件下で最小値となるように各成
分ガス濃度を求めればよい。この成分ガス濃度が与えら
れた炉温,炉圧における雰囲気ガスの平衡組成となり、
スーティングC量は以下に述べるロジック中で凝縮種の
一つとして表される。
【0029】雰囲気ガスの組成を算出するにあたり、二
つの仮定を設定する。その一つは、気体は理想気体とす
ること。もう一つは、遊離Cに代表される凝縮相は気体
と混合できないとすることである。この仮定の基にガス
種と凝縮種との全自由エネルギーF(X) は、i番目のガ
ス種の自由エネルギーfg i ,h番目の凝縮種の自由エ
ネルギーfc h に対して下記1式で与えられる。
【0030】 但し、 n:ガス種の数,p:凝縮種の数 を示す。
【0031】ここで、前記ガス生成物に関するi番目の
ガス種の自由エネルギーfg i は、i番目のガス種のモ
ルエネルギーCg i に対して当該ガス種のモル数がxg
i として下記2式〜4式で与えられる。 fg i =xg i (Cg i +ln(xg i /X)) ……… (2) Cg i =(F/(R・T))g i +lnP ……… (3) 一方、凝縮生成物については、前記仮定の基に圧力及び
混合の影響は除かれるので、h番目の凝縮種の自由エネ
ルギーfc h は、h番目の凝縮種のモルエネルギーCc
h に対して当該凝縮種のモル数がxc h として下記5
式,6式で与えられる。
【0032】 fc h =xc h ・Cc h ……… (5) Cc h =(F/(R・T))C h ……… (6) なお、前記3式,6式中の(F/(R・T))は下記7
式で定義される。 (F/(R・T))i =((F−H298)/T)i /R +ΔH0 f,298,i /RT ……… (7) 次にこの系における物質収支を考慮する。生成系の各成
分量は変化しても、各元素、即ち雰囲気ガス成分中の炭
素C,水素H,窒素N,酸素Oの原子単位で見れば夫々
の総量は一定となる。この物質収支式は下記8式で表さ
れる。
【0033】 但し、j=1,2,………,m ag ij:i番目のガス種の分子に含まれるj番目の元素
の原子数 ac ij:i番目の凝縮種の分子に含まれるj番目の元素
の原子数 bj :系に存在するj番目の元素の量 m:系に存在する元素種の数 を示す。
【0034】ここで本実施例では、前記ホストコンピュ
ータ内に記憶させたプログラムにより、前記8式及び前
記1式から線形化した雰囲気組成モデル式を設定し、こ
の雰囲気組成モデル式から得られる解を収束して最適解
を得ることとした。次に実際の連続浸炭における雰囲気
ガス組成の必要条件について考慮するにあたり、炉内の
Cバランスを下記9式,10式で与えた。なお、10式
は鋼板の仕様諸元と表面反応速度によって算出される関
数である。
【0035】 Wg I =Ws C +Wg O ……… (9) Ws C =ξ(V,t,w,LS) ………(10) 但し、 Wg I :炉内に入る雰囲気ガス中のC質量 Ws C :ストリップに持ち去られるC質量 Wg O :炉内から出る雰囲気ガス中のC質量 V:表面反応速度, t:浸炭時間, w:板幅 を示す。
【0036】このようにして、浸炭炉内の連続浸炭の実
際における物質収支を考慮した熱力学(雰囲気組成)モ
デル式に基づいて前記雰囲気諸元を算出することによ
り、確実にスーティングの発生を防止しながら、炉内の
物質収支を考慮しないで求めた雰囲気諸元に比して雰囲
気組成の浸炭力を高めることが可能となる。従って、例
えば雰囲気ガス中のCO濃度を高めて通板速度を上げる
といった実際の操業能力を向上することができる。
【0037】次に、本実施例の主幹部を構成する浸炭量
制御の原理について説明する。雰囲気ガスにCOを用い
た場合の表面反応は下記11〜13式のように考えられ
る。 CO⇔[C]+O ………(11) CO+O→CO2 ………(12) Fe+[C]→Fe−C(鋼中拡散) ………(13) 前述した葉らによれば鋼板表層部のC濃度が極めて低く
且つ浸炭時間が極めて短い場合には浸炭条件が平衡状態
に達せず、そのため13式の反応速度は12式の吸着酸
素の脱離反応よりも速いために、この反応が律速反応で
あると仮定し、この表面反応律速域における表面反応速
度Vを下記14式で表した。
【0038】 V=k・PCO(PCO/(PCO+(ac/K))) ………(14) 但し、 k:反応速度定数,PCO:COガス分圧,ac:炭素活
量,K:平衡定数 を示す。しかしながら、前記14式にはH2 の影響が考
慮されていない。H2 に関する反応式としては、前記1
2式で表される反応式に対して下記15式で表される反
応が考えられる。
【0039】 CO+H2 +2O→CO2 +H2 O ………(15) また、生成したCO2 に対して下記16式で表される反
応等が考えられる。 H2 +CO2 ⇔H2 O+CO ………(16) これらの反応式に基づき,H2 は浸炭反応を促進する効
果があり、CO2 ,H 2 Oは浸炭反応を阻害することが
わかる。そこで本実施例では表面反応速度Vを下記17
式で表した。
【0040】 V=k1 ・f1 (PCO,PH2,θO )−k2 ・f2 (PCO2 ,PH2O ) ………(17) 但し、 θO :吸着酸素の被覆率,k1 ,k2 :反応速度定数 を示し、反応速度定数k1 ,k2 は下記17’式で設定
することができる。
【0041】 ki =Ai ・exp ( −Ei /RT) ……… (17') 但し、 Ai :頻度因子,Ei :活性化エネルギー,R:気体定
数,T:絶対温度 を示す。なお、頻度因子Ai ,活性化エネルギーEi
気体定数Rはいずれも定数であるため、反応速度定数k
1 ,k2 は種々の絶対温度Tの条件下における実験値か
ら算出した。
【0042】なお、本実施例においてCO濃度だけを考
慮すればよい場合,例えば雰囲気の供給ガス流量が多い
場合には、前記14式を表面反応速度式として使用して
もよい。次に固溶炭素の鋼中拡散について考察する。鋼
中へのCの拡散状態は下記18式で表される。
【0043】 dC/dt=D・d2 C/dX2 ………(18) 但し、 C:鋼中のC濃度,t:時間,D:拡散係数,X:拡散
距離 を示す。なお、前記拡散係数Dは実測データにより近似
的に表示することとした。従って、前記17式及び18
式により鋼板への浸炭量を算出することができる。
【0044】以上の演算を前記ホストコンピュータに予
め記憶されたプログラムにより順次行って、浸炭後の鋼
板の仕様諸元で与えられるストリップへの浸炭量と,雰
囲気ガス中のC減少量から算出されるストリップへの浸
炭量とが一致する,浸炭条件を設定するためのロジック
を図10のフローチャートに示す。まずステップS1で
は、浸炭後の鋼板仕様諸元として与えられる条件設定か
ら、雰囲気ガスの組成,投入ガスの流量,浸炭温度及び
通板速度,鋼板諸元等の条件を読込む。
【0045】次にステップS2に移行して、前記鋼板諸
元及び鋼板仕様から鋼板への設定浸炭量ΔCを算出す
る。この浸炭量ΔCは初回のフローにおいては所定浸炭
量ΔC 0 に設定する。次にステップS3に移行して、前
記ステップS1で読込んだ雰囲気ガスの組成から前記雰
囲気組成モデル式を設定する。
【0046】次にステップS4に移行して、前記ステッ
プS3で設定した雰囲気組成モデル式に従って雰囲気ガ
スの各成分濃度を算出する。次にステップS5に移行し
て、前記17式に基づいて鋼板の表面反応速度を算出す
る。次にステップS6に移行して、前記18式に基づい
て鋼中への浸炭速度を算出し、鋼中へのC拡散量を算出
する。
【0047】次に当該浸炭処理時間が経過した場合には
ステップS7に移行して、前記ステップS6で算出され
た単位時間及び単位面積当たりの鋼中への拡散C量を処
理時間及び鋼板総表面積で積分して鋼板への浸炭量Δ
C’を算出する。次にステップS8に移行して、前記設
定浸炭量ΔCと浸炭量ΔC’との差の絶対値が所定値a
より小さいか否かを判定し、両者の差が所定値aより小
さい場合にはステップS10に移行し、そうでない場合
にはステップS9に移行する。
【0048】前記ステップS9では、前記浸炭量に基づ
いて設定浸炭量を下記20式に基づいて補正し、前記ス
テップS3に移行する。 ΔC=ΔC+(ΔC’−ΔC)×b ………(20) 但し、 b:定数 を示す。
【0049】前記ステップS10では、上記演算の結果
得られた雰囲気ガス成分の濃度,全浸炭量,平均浸炭
量,鋼板表面からの浸炭分布,スーティングC量等の演
算結果を出力してプログラムを終了する。このプログラ
ムによって算出された各浸炭条件,即ち前記各制御量を
変化させた場合の浸炭量と、実測された浸炭量との相関
を図11に示す。同図から明らかなように、浸炭量の計
算値と実測値とは非常によく一致している。このこと
は、前記浸炭速度,即ち表面反応速度の設定と、その温
度依存係数の設定が正しいことを意味しており、表面反
応速度の設定が正しい限り、本発明の連続浸炭方法は浸
炭速度が拡散速度よりも大きい表面反応速度に従う領域
での幅広い応用が可能であることを意味する。
【0050】次に本発明で行われる浸炭温度制御の原理
について説明する。前記浸炭諸条件の設定は、本発明で
は再結晶温度以下の板温条件の下に行われる。具体的に
は、図7に見られるように再結晶温度と浸炭処理板温と
の格差ΔTは0〜100℃以内とするのがよい。前述し
た特願平4−95503号に挙げられるように、プレス
加工性の良好な低AI−高BH性鋼板を得るためには,
焼鈍によって得られた前記{1,1,1}集合組織を有
する極低炭素鋼からなるストリップにおいて、図12に
示すように鋼板内層部の炭素濃度は低いままに,表層部
の浸炭濃度のみをやや急峻に立ち上げて増大させる必要
がある。これは十分なEl値を得て延性を確保しなが
ら,高いr値を得てプレス加工における深絞り性を発揮
するためである。同時に図13に示すように前記表層浸
炭部においては、粒内の固溶Cの含有量が小さく,粒界
の固溶Cの存在量が大きいことが望まれる。これは、前
述したように常温時効硬化に関与する粒内C量を抑制し
て常温遅時効性(低AI)を実現すると共に、高温時効
硬化に影響する粒界固溶C量を増大して高焼付硬化性
(高BH)を発揮するためである。
【0051】このような鋼板への炭素濃度プロファイル
並びに固溶Cの存在状態の所望に対して、浸炭時の板温
が再結晶温度より高い場合には,粒界の移動が著しいた
めに、前記拡散モデル式における固溶Cの内層部への拡
散が促進されて内層部全域の炭素濃度が高くなる上に、
表層部の浸炭濃度を所望値に高めることができず、同時
に粒内への固溶Cの取り込み量が増大し、相対的に粒界
の固溶Cの存在量が減少するから、結果的にEl値,r
値が低下してプレス加工性が劣化すると共に、十分な焼
付硬化性を得ることができない。
【0052】一方、浸炭時の板温が再結晶温度−100
℃以下となると浸炭効率が極端に低下し、浸炭時間が1
20sec.以下である,前述のようなストリップの連続浸
炭操業の実際では所望する浸炭量を得られないために推
奨しない。次に前記板温調節帯の板温制御の原理につい
て説明する。浸炭時の板温制御そのものは概ね上記説明
によるが、再結晶温度から浸炭板温に至る経緯若しくは
履歴によっても,得られる鋼板の冶金的及び機械的特性
は異なり、その温度経緯・履歴を前記板温調節帯の冷却
ガス流量やその温度制御によって得ることができる。具
体的に冷却速度を増大する場合には冷却ガス流量を増大
し,又は冷却ガス温度を低下し、冷却速度を減少する場
合には冷却ガス流量を減少し,又は冷却ガス温度を上昇
すればよい。
【0053】例えば図14に示すように焼鈍板温が再結
晶温度以上で,浸炭板温が再結晶温度以下500℃以上
である場合に、冷却速度が放冷に近い10℃/sec.以下
の冷却を行って,そのまま冷却到達温度が浸炭板温とな
ると、板幅方向端部(エッジ部,図中,Edge部)の冷却
速度が幅方向中央部(センター部,図中,Center部)の
冷却速度よりも相対的に大きいために,エッジ部の温度
が低下して十分なC析出が行われず、図15に示すよう
に当該エッジ部に固溶Cが濃化する。このストリップを
用いて浸炭処理を行うと、当然,板エッジ部のC濃度
は、板センター部において目標とするC濃度よりも高く
なって,板幅方向に材質上の不均一を生じる。
【0054】そこで前記板温調節帯のガスジェット冷却
装置からの冷却ガスの吐出位置,流量,ガス温度を制御
して、ストリップの板幅方向の冷却速度のバラツキを低
減すると共に、図16に示すように全体的な冷却速度を
10℃/sec.以上とし、更に前記再結晶温度以下の浸炭
板温に至る温度経緯・履歴の中で板温を500℃以下と
することで、図17に示すように原板のC析出を安定さ
せてC濃度の板幅方向へのバラツキを低減する。そして
この原板を前記浸炭温度まで加熱して浸炭を行うことに
より、浸炭後のC濃度の板幅方向へのバラツキも抑制さ
れる。従って、特に浸炭後に必要以上の鋼中へのC拡散
を抑制するために前記第1冷却帯による冷却速度を20
℃/sec.以上(望ましくは40℃/sec.以上)に設定し
ている場合には、このように再結晶温度以上に加熱して
焼鈍を行い、一旦,所定の冷却速度で冷却した後に再結
晶温度以下で浸炭を行うことが望ましい。なお、前記板
温調節帯による冷却到達温度の下限値は前記浸炭帯の加
熱能力によって限定されることは言うまでもない。
【0055】なお、前記第1冷却帯による冷却速度制御
は前記浸炭帯での浸炭が所望する浸炭濃度プロファイル
から外れるC拡散や脱炭を防止するために、前記20℃
/sec.以上(望ましくは40℃/sec.以上)の冷却速度
で冷却するのがよく、更に前記粒内の固溶Cの存在を皆
無若しくは極めて少なくし、同時に粒界に大量の固溶C
を存在させるためには、前記冷却速度を100℃/sec.
以上とすればよく、そのようにすれば,前記夫々の固溶
Cの挙動の違いによって常温時効硬化が極めて低く,高
い焼付硬化性を有する,所謂,非時効性の高焼付硬化型
鋼板を製造することができることを確認している。
【0056】本実施例によって得られた鋼板と、再結晶
焼鈍処理中に浸炭処理を行った比較例の鋼板の,夫々B
H値と100℃で20時間保持後(常温1年相当)のY
−El値の関係を図18に示す。同図から明らかなよう
に、比較例はいずれもBH値の増加に伴ってY−El値
も上昇しているのに対し、実施例ではY−El値の上昇
を招くことなく効果的にBH値が高まっている。
【0057】また、図20には,図19aのように再結
晶温度以上で浸炭を行った比較例と、図19bのように
再結晶温度以下で浸炭を行った本発明の実施例との,B
H値とAI値との関係を示す。同図からも明らかなよう
に、同じBH値を得るのにAI値は比較例の半分にする
ことができ、プレス加工性に優れると共に常温遅時効性
が低く,且つ焼付硬化性の高い鋼板を得ることができ
た。
【0058】なお、本実施例では表面反応においてC
O,H2 ,CO2 及びH2 Oの影響のみを考慮して表面
反応速度を算出する場合について詳述したが、前述した
ようにその他の雰囲気ガス組成,例えば重炭化水素の影
響を考慮して表面反応速度を算出するようにしてもよ
い。また、本実施例では物質収支を考慮した熱力学モデ
ル式を線形化し、その解を収束することによって平衡状
態を算出することとしたが、この平衡状態の算出手段は
これに限定されるものではない。
【0059】また、本実施例では特に極低炭素鋼からな
るストリップを連続焼鈍・浸炭して.浸炭濃度が平衡濃
度に達する以前で浸炭速度が表面反応速度に律速される
表面反応律速域での浸炭制御についてのみ詳述したが、
本発明の連続焼鈍及び連続浸炭方法は,前記浸炭速度が
金属帯表面から内部への拡散速度に律速される拡散律速
域においても展開可能であることは言うまでもない。
【0060】また、上記実施例では低AI−高BH鋼板
の製造に適する連続焼鈍及び連続浸炭方法についてのみ
詳述したが、再結晶焼鈍後に粒界C量と粒内C量とのコ
ントロール及びC濃度プロファイルのコントロールを可
能とした本発明の連続焼鈍及び連続浸炭方法は、例えば
耐二次加工脆性向上鋼板や高r値−ハイテン鋼板等の他
の浸炭鋼板についても同様の原理の成立に基づいて展開
可能である。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように本発明の金属帯の連
続焼鈍及び連続浸炭方法によれば、再結晶温度以上の板
温条件下で極低炭素鋼からなる金属帯に焼鈍を行うこと
により十分な延性や深絞り性を発揮せしめ、然る後、
該金属帯に再結晶温度以下の板温条件下で浸炭を行うこ
とにより金属帯内層部への固溶Cの拡散を抑制して粒界
に多量の固溶Cを存在せしめて、深絞り性を維持したま
ま、低AI−高BH性鋼板を得ることができる。また、
前記焼鈍時からの板温経緯・履歴を制御することで前記
粒内への固溶Cの取り込み量をコントロールすることが
でき、冷却到達温度を制御することで金属帯幅方向への
浸炭濃度のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続焼鈍浸炭設備で行われる熱処理工程の概念
説明図である。
【図2】図1の連続焼鈍浸炭設備の一例を示す概略構成
図である。
【図3】低AI−高BH性鋼板に要求される板厚方向へ
の浸炭濃度プロファイルと従来の焼鈍及び浸炭方法によ
る浸炭濃度プロファイルの説明図である。
【図4】従来の焼鈍及び浸炭方法の温度制御の時間経緯
・履歴の説明図である。
【図5】図4の焼鈍及び浸炭方法によって得られる粒内
及び粒界の固溶Cの存在状態説明図である。
【図6】本発明の金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法を
用いた連続焼鈍浸炭制御の対象となる連続焼鈍浸炭設備
の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の焼鈍及び浸炭方法の一実施例を示す温
度制御の時間経緯・履歴の説明図である。
【図8】図6の連続焼鈍浸炭設備に設けられた板温調節
帯内のガスジェット冷却装置の概略構成図である。
【図9】金属帯表層部の炭素濃度が平衡濃度に達した後
の拡散律速域と該平衡濃度に達する以前の表面反応律速
域との説明図である。
【図10】本発明の金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法
を用いて浸炭制御を行うロジックの一例を示すフローチ
ャート図である。
【図11】図4のロジックによって得られた浸炭量の計
算値と実測値との相関関係図である。
【図12】図7の温度制御の時間経緯・履歴によって得
られた板厚方向への浸炭濃度プロファイルの説明図であ
る。
【図13】図7の温度制御の時間経緯・履歴によって得
られた粒内及び粒界の固溶Cの存在状態説明図である。
【図14】本発明の焼鈍及び浸炭方法の他の実施例を示
す温度制御の時間経緯・履歴の説明図である。
【図15】図14の温度制御の時間経緯・履歴によって
得られた板幅方向への浸炭濃度プロファイルの説明図で
ある。
【図16】本発明の焼鈍及び浸炭方法の更に他の実施例
を示す温度制御の時間経緯・履歴の説明図である。
【図17】図16の温度制御の時間経緯・履歴によって
得られた板幅方向への浸炭濃度プロファイルの説明図で
ある。
【図18】本実施例によって得られた鋼板と、再結晶焼
鈍処理中に浸炭処理を行った比較例の鋼板との,BH値
とY−El値の関係説明図である。
【図19】温度制御の時間経緯・履歴を示すものであ
り、(a)は比較例の説明図,(b)は本実施例の説明
図である。
【図20】図19の温度制御の時間経緯・履歴によって
得られた鋼板のAI−BH特性図である。
【符号の説明】 1は予熱帯 2は加熱帯 3は均熱帯 4は板温調節帯 5は浸炭帯 6は第1冷却帯 7は第2冷却帯 Aはストリップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諸住 順 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 岡田 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平1−96330(JP,A) 特開 平3−188256(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 1/26 C21D 1/74 C21D 9/52 101 C23C 8/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 深絞り性と低AI−高BH性とが要求さ
    れる極低炭素鋼からなる金属帯を加熱炉又は加熱炉及び
    均熱炉から構成される焼鈍炉に連続的に送給して焼鈍を
    行い、当該金属帯を浸炭炉に連続的に送給して浸炭を行
    う金属帯の連続焼鈍及び連続浸炭方法において、前記焼
    鈍炉では再結晶温度以上の板温条件下で金属帯を焼鈍
    し、然る後に前記浸炭炉では再結晶温度以下の板温条件
    下で金属帯を浸炭することを特徴とする金属帯の連続焼
    鈍及び連続浸炭方法。
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