JP2944755B2 - 金属帯の連続浸炭方法 - Google Patents

金属帯の連続浸炭方法

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JP2944755B2 JP6509838A JP50983893A JP2944755B2 JP 2944755 B2 JP2944755 B2 JP 2944755B2 JP 6509838 A JP6509838 A JP 6509838A JP 50983893 A JP50983893 A JP 50983893A JP 2944755 B2 JP2944755 B2 JP 2944755B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、金属帯を連続ガス浸炭する場合の連続浸炭
方法に関するものであり、例えば極低炭素鋼からなるス
トリップを焼鈍炉内から浸炭炉内に通板して連続的にガ
ス浸炭する場合に、当該ストリップ表層部の炭素濃度が
ストリップと雰囲気ガスとの間における平衡濃度に達す
る以前の表面反応律速域で、浸炭処理以外の操業条件に
よって設定された通板速度で通板されるストリップを所
望する浸炭量で浸炭することを目的としたり、所望する
鋼中浸炭濃度分布を得ることを目的としたりするため
に、スーティングが発生しない雰囲気諸元としての雰囲
気ガス組成,組成ガス濃度,炉内温度,金属帯温度,通
板速度等を制御するのに適するものである。
背景技術 例えば自動車産業のような金属二次加工産業界では、
加工対象金属板に対してより高い加工性と強度との両立
が要求されている。具体的に前記自動車産業界では、昨
今問題化されている地球環境問題から低燃費化を追求す
るために車体を軽量化する必要から、従来の深絞り性を
維持した上でより強度の高い鋼板が要求される。
このような金属板の評価指標としては、例えば延性,
深絞り性,時効性,強度,二次加工脆性,焼付硬化性,
スポット溶接性等が考えられる。そこで、前記の深絞り
性を特に重要視して、この深絞り性をランクフォード値
(以下r値:金属板幅歪み/板厚歪み)で評価した場
合、鋼中の炭素(以下Cと記す)量を低減することが最
も有利であることは公知であり、加えてこの低炭素化に
より延性(Elongation:El)や常温遅時効性(Aging Ind
ex:AIが低い程良い)も向上する。ところが、一方で鋼
中のC量が低下するに従ってその他の評価指標は大方に
ついて劣化する。例えば、析出物が減少して組織強度が
低下するために引張強度(Tensile Strength:TS)が低
下し、粒界強度が低下するために二次加工脆性が劣化
し、固溶C量が低下するために焼付硬化性が劣化する。
また、鋼中C量50ppm以下では、溶接による加熱で粒成
長速度が促進されて熱影響部(Heat Affected Zone:HA
Z)の粗粒化によってスポット溶接性が劣化する。
そこで、第1図に示すように極低炭素鋼からなる金属
帯を連続焼鈍処理によって再結晶焼鈍することにより前
記延性,深絞り性,常温遅時効性を得ながら、これに続
いて、連続浸炭処理によって表層部に固溶Cを存在させ
ることにより前記引張強度,二次加工脆性,BH性,スポ
ット溶接性を向上するために、本出願人は第2図に示す
ような特開平4-88126号公報に記載される連続焼鈍浸炭
設備を開発した。
この連続焼鈍浸炭設備によれば、予熱帯1から加熱帯
2又は均熱帯3で金属帯(ストリップA)に対して所定
の再結晶焼鈍を行った後、浸炭帯4内の金属帯温度,雰
囲気諸元,搬送速度(在炉時間)及び冷却条件を制御し
て浸炭処理を行うことにより、金属帯の材質仕様を満足
させながら表層浸炭深さと濃度分布を所望の値(形態)
とした金属帯を連続的に製造することを可能とする。
一方で、このような金属帯表層部の浸炭深さと浸炭濃
度の分布形態を制御する方法として特公昭54-31976号公
報に記載されるものがある。この浸炭深さ及び浸炭濃度
の制御方法は、浸炭期には浸炭ガスを所定の流量で噴出
導入して金属帯表層部に炭素を浸透させ、この浸炭期に
続く拡散期には浸炭ガスを排気した十分な減圧下で、金
属帯表層部に浸透した炭素を拡散させ、これらの浸炭期
と拡散期の時間を制御することによって浸炭深さと浸炭
濃度とからなる浸炭濃度分布形態をコントロールするよ
うにしたものである。この浸炭深さ及び浸炭濃度の制御
方法によれば、特に薄い浸炭層(浸炭肌)を必要とする
ガスジェット浸炭で発生し易い、不均一浸炭を防止する
ことが可能である。
ところで、このような連続焼鈍浸炭設備の諸条件を設
定する実際にあたり、以下に述べる問題が判明した。
(1)浸炭速度については葉らの報告(葉 煦雲,春山
志郎ら:日本金属学会誌49(1985)7,529)によっ
て、第3図に示すように金属表層部のC量がある程度高
く且つ浸炭時間が長い場合、浸炭の速度は表層部のC濃
度が、当該ストリップと雰囲気ガスとの間の平衡濃度に
達した後、Cが金属組織内に拡散していく速度に比例す
るため、通常、時間の平方根に比例することになり、こ
の時間浸炭利得域を拡散律速域と称するが、一方、前記
のように金属表層部のC量が極めて低く且つ浸炭時間が
極めて短い場合は、該表層部のC濃度が平衡濃度に達し
ないため、浸炭の速度は金属表層部と炭素とが直接的に
反応する速度に比例することになり、この時間浸炭利得
域を表面反応律速域と称することが知られている。
そこで、例えば前記の耐二次加工脆性の向上を対象と
する金属に要求される仕様から(特開平3-199344号公報
など)当該金属帯の浸炭条件を求めると、浸炭濃度も浸
炭深さも深めて小さいため、この場合には表面反応律速
域での浸炭処理を行う必要があり、金属帯表層部が雰囲
気ガスの持つ浸炭力と常に平衡状態にあると考える、所
謂従来のCO/CO2等の管理によるカーボンポテンシャル
(Cポテンシャル)制御では、金属帯への浸炭量を制御
できないことが判明した。(2)また一般に、浸炭条件
における雰囲気ガス組成は化学平衡により求めることが
できるが、従来の解法では考え得る気相系の反応を全て
列挙し、これら個々の反応の平衡関係から、非線形の連
立方程式を解くことによってガスの組成を得ていた。し
かし、気相系の反応式からは正確なすす発生(スーティ
ング)の限界を求めることが極めて困難である。
(3)更に、前述した表面反応速度については先の葉ら
の報告があるが、この報告ではCOガスのみにおける浸炭
速度について論じられているだけで、これをそのまま、
複雑な組成からなる連続浸炭操業の実際に展開すること
はできない。
ところで前記第2図のような連続焼鈍浸炭設備では加
熱帯2及び/又は均熱帯3で金属帯に対して所定の焼鈍
処理を行い,浸炭帯4で所定の浸炭処理を行い、各冷却
帯5,6で所定の冷却処理を行う必要があるから、夫々の
熱処理帯では例えば炉温を制御するなどにより所定の金
属帯の温度(以下、板温とも記す)制御を行う必要があ
る。これらの各熱処理帯を構成する各炉では主として伝
熱によって板温制御を行っているが、同時に各炉の能力
計算によって炉内温度(以下、炉温とも記す)自体の上
下限値も存在する。例えば、加熱帯の加熱炉や均熱帯の
均熱炉では、炉の能力から炉温の上限値が設定され、ラ
ジアントチューブ,炉壁,ハースロール等の間の伝熱係
数を考慮したヒートバランスから板温の上下限値を満足
するストリップの在炉時間(即ち、加熱時間又は均熱時
間である)が設定され、この在炉時間を満足するための
通板速度が設定されることになる。また、各冷却帯の冷
却炉では、前記伝熱係数に冷却ガスジェットの伝熱係数
等が採用される。
一方、このような連続焼鈍浸炭設備では,例えばコイ
ルの継ぎ目等の非定常部位で操業条件を変更するなどの
様々な操業条件が混在しており、これらを満足するため
にも最も応答速度の速い通板速度を制御することも多
い。しかしながら、前記連続焼鈍浸炭の板温制御を含む
様々な操業条件から設定された通板速度に対して、浸炭
炉内の浸炭諸条件を設定する具体的な手段は未だ提案さ
れておらず、特に通板速度が設定されている条件下で、
前記のような鋼板に要求される仕様諸元を満足するため
の浸炭量を達成する浸炭炉内の物性や温度を制御する手
段が早急に望まれている。
こうした通板速度の制約を除外するためには、各熱処
理帯間にルーパを介装することが考えられるが、元来、
非常に大きな設置スペースを必要とする連続焼鈍設備や
これに連続浸炭設備を付加した連続焼鈍浸炭設備に、こ
れも大きな設置スペースを必要とするルーパを設置する
ことは、現実問題に照らして実用化することが困難であ
る。
また、前記浸炭薄鋼板の仕様諸元は更に微細な条件を
要求される傾向にあり、そのような仕様諸元を満足する
ためには金属帯表層部の浸炭濃度分布形態、即ち該表層
部の浸炭濃度の深さ方向へのプロファイルまでも管理制
御する必要が生じてきた。例えば、車両や電気機器に使
用される鋼板では多くの場合、プレス加工後に焼付塗装
を行うため、プレス加工時には前記延性Elや深絞り性r
値を発揮して成形性が高く、焼付塗装時に前記焼付硬化
性BHを発揮して強度が向上するといった特性が必要とな
る。同時にこれらの鋼板ではプレス加工時まではその成
形性を維持できる常温遅時効性(低AI)も要求される。
従って、これらの鋼板は深絞り性を有する常温遅時効性
高焼付硬化型鋼板(低AI-高BH性鋼板)である必要が生
じる。こうした鋼板を極低炭素鋼の連続焼鈍浸炭によっ
て得る場合に必要となる鋼中浸炭濃度のプロファイル、
即ち分布状態を検討すると、鋼板の厚さ方向内層部の炭
素濃度は前記極低炭素鋼並に低いまま、表層部の炭素濃
度を大きく高めて最適なC濃度勾配を形成するようにし
なければならない。しかしながら、前記特公昭54-31976
号公報に記載される浸炭深さ及び浸炭濃度の分布形態の
制御方法では、こうした浸炭濃度プロファイルは考慮さ
れておらず、この制御方法をそのまま浸炭濃度分布の制
御に展開することはできない。
発明の開示 本発明は斯かる諸問題に鑑みて開発されたものであ
り、特に浸炭処理以外の操業条件から通板速度が規制さ
れ、この通板速度で行われる浸炭処理が前記表面反応律
速域で行われる場合にあっても,スーティングを防止し
ながら、金属帯への所望する浸炭量,浸炭濃度分布を得
ることのできる制御方法を提供することを目的とするも
のである。
本件発明者等は前記諸問題について鋭意検討を重ねた
結果、以下の知見に基づいて本発明を開発した。即ち、
浸炭炉内で遊離Cという形態で発生するスーティングの
問題では、浸炭炉内の生成系の各成分量は変化しても、
各元素レベルで考えれば夫々の総量は一定となる。そし
て、等温,等圧の系の場合、自然に起こる変化では当該
浸炭炉内のギブスの自由エネルギーは減少し、浸炭炉内
の雰囲気ガスと金属帯との間の平衡状態において系のギ
ブス自由エネルギーは最小値となる。従って、このギブ
ス自由エネルギーが最小となる雰囲気ガス組成を求めれ
ば,炉内雰囲気の平衡状態を求めることができるので、
遊離C(すす)の発生方向への反応を低減或いは抑止す
ることができる。しかしながら、金属帯表層部における
反応によって金属帯が雰囲気ガス中から持出す元素に対
して原系が持込む元素成分が一定であるという物質収支
の制約条件を加えなければ、連続浸炭の実際における真
の平衡状態,即ち真のスーティング発生限界を算出する
ことはできないことに着目した。従って、この物質収支
の実際を考慮する際には、雰囲気ガス組成だけでなく、
雰囲気ガス供給・排出流量、金属帯の通板速度、炉内温
度、板厚、板幅などを考慮しなければならない。
そこで、本発明の金属帯の連続浸炭方法では、炭素、
酸素、窒素又は炭素、酸素、水素、窒素を含み且つスー
ティングが発生しない浸炭雰囲気諸元を制御するにあた
って、前記浸炭炉内の連続浸炭の実際における各元素レ
ベルの物質収支を考慮して、炉内雰囲気全体のギブス自
由エネルギーが最小となる状態を求めることにより炉内
雰囲気の平衡状態を求めるようにした熱力学モデル式に
基づいて、雰囲気ガス組成及び/又は炉内温度を算出す
ることにより、炉内の前記各元素レベルの物質収支を考
慮しないで、単に供給されたガス組成流量と炉内温度と
から得た平衡状態からこれらを算出した場合に比して、
スーティングの発生を防止しながら雰囲気組成のポテン
シャルを高めることが可能となる。つまり、雰囲気ガス
中のCO濃度を高めて通板速度を上げるといった実際の操
業能力を向上することができる。なお、前記雰囲気諸元
の条件として、炉内温度が700〜950℃、一酸化炭素濃度
が0%<CO濃度≦22%、水素濃度が0%≦H2濃度≦30%
といった工業的連続浸炭操業の実際に則した条件を設定
した。なお、前記雰囲気ガス組成中の窒素は、当該雰囲
気ガスの濃度を希釈するための不活性気体と考えられる
ことから、アルゴンAr等の類似する不活性気体を用いて
もよい。
また、前述のように金属表層部の炭素濃度が金属帯と
雰囲気ガスとの間の平衡濃度以下の表面反応律速域で、
金属帯への浸炭量を制御するためには、まず当該速度域
における浸炭量,即ち表面反応速度を得、この反応速度
を時間積分すればよいことに着目した。この時間、即ち
浸炭時間は通板速度によって決定される。そして、この
表面反応速度を研究するうちに,金属帯と雰囲気ガスと
の表面反応で考えられる浸炭反応の式と脱酸素反応の式
とに包含されるガスの組成を制御することにより、反応
速度を制御できることを見出した。そしてこのガス組成
に最も有効となるのは一酸化炭素と水素であり、特に高
温下で雰囲気ガスの供給/排出流量の小さい場合には組
成量は少ないが二酸化炭素及びH2Oも、浸炭反応を阻害
するといった意味で影響があることを見出し、更にこれ
らの組成は,その分圧が前記表面反応速度の制御因子で
あることを実験により証明した。また、物質反応の温度
に対する依存度を考慮し、表面反応速度の係数に,金属
帯温度という制御因子を介在させることとした。
そこで、本発明の金属帯の連続浸炭方法では、前記浸
炭速度が金属帯表層部から内部への拡散速度よりも大き
い表面反応速度に従う浸炭条件域で、例えば前記浸炭炉
内の金属温度に関する予測式から浸炭の表面反応速度に
係る温度依存係数を算出し、この温度依存係数と,前記
一酸化炭素分圧又は一酸化炭素分圧及び水素分圧に関す
る予測式とから浸炭の表面反応速度を算出し、この表面
反応速度から前記浸炭時間に関する予測式に基づいて金
属帯への浸炭量を算出することができるので、逆に浸炭
後の鋼板に要求される仕様諸元から金属帯への浸炭量を
設定し、前記各予測式に介在される制御量をパラメータ
として,実際の連続浸炭に応じてこれらのパラメータを
適宜に設定することにより、最も効率のよい浸炭条件の
下に前記鋼板の仕様諸元を満足する金属帯への浸炭量を
得ることができる。また、特に高温下で雰囲気ガスの供
給・排出流量が小さい場合にあっては、浸炭反応を阻害
するといった影響を考慮する意味で,例えば前記表面反
応速度の予測式に二酸化炭素分圧及びH2O分圧を制御
量,即ちパラメータとして加えることにより、CO2,H2O
が存在する浸炭条件下での金属帯への浸炭量を正確に制
御することが可能となる。
なお、前記雰囲気ガス組成中のCO2及びH2Oの濃度は、
当該雰囲気ガスの投入流量を増加することにより低減す
ることができ、また雰囲気ガスの投入流量を減少するこ
とにより増大することができる。
ところで、前記表面反応速度を時間積分する際には実
際の浸炭時間を用いる。この浸炭時間は,単純計算で,
浸炭時間=在炉時間=有効浸炭炉長/通板速度で表され
る。従って、前述のように浸炭処理以外の操業条件によ
って通板速度が規制されている場合には、逆にこの通板
速度から設定される浸炭時間が固定されているものとし
て捉え、その他の制御因子を制御することで所望する浸
炭量を制御することが可能であることを確認した。そし
て浸炭処理の実際にはこれらの浸炭時間と通板速度との
相関関係に、浸炭炉内の雰囲気ガス組成と金属帯の温度
を考慮すればよい。この場合に、規制される通板速度が
或る範囲をもっているときには、更に制御の正確性を追
求して前記浸炭時間を前記予測式のパラメータを加える
ことも可能である。
ここで、本発明の金属帯の連続浸炭方法では、例えば
必要な浸炭量制御を行うために、熱処理と浸炭とを同時
に行う場合や熱処理の後に幾らか温度を下げて浸炭を行
う場合のように、板温制御と浸炭制御との場が同じ場合
も異なる場合も、例えば通板速度の時系列的な考慮によ
り同様な制御を可能とする。
一方、金属帯表層部の所定深さの浸炭濃度は、浸炭時
間(拡散時間を含む)と浸炭温度とをパラメータとす
る、所謂フィック(Fick)の法則に基づく炭素拡散モデ
ル式で得られるのではないかという点に着目し、これを
実験により証明した。従って、本発明の金属帯の連続浸
炭方法では、所望される浸炭濃度分布をこの炭素拡散モ
デル式に当てはめることで各深さ位置の浸炭濃度を得る
ための浸炭時間と金属帯温度を設定することができる。
また、前述した低AI-高BH鋼板等では所望とする浸炭濃
度分布形態は、金属帯の表面に近いほど、即ち表層部の
浅い部分ほど浸炭濃度が高く、金属帯の表面から遠いほ
ど、即ち表層部から深い部分ほど浸炭濃度が低いが、前
記浸炭薄鋼板に要求される仕様諸元から金属帯の浸炭濃
度分布条件を設定すると、金属帯表面から10〜250μm
の深さの浸炭濃度分布を制御すればよいことが判明し
た。一方で、この浸炭濃度分布を深さ方向に積分するこ
とで浸炭量も設定される。更に、この浸炭濃度分布形態
に冷却工程での脱炭の影響がある場合には,深さ凡そ10
〜50μmに浸炭濃度の最大値が存在し、以下深さが増す
に従って浸炭濃度は小さくなる。これらより、本発明の
金属帯の連続浸炭方法では、総浸炭量が一定の場合には
前記炭素拡散モデル式に基づいて、浸炭濃度分布形態の
ピーク点を捉える意味で前記深さ10〜50μmの範囲で一
点の浸炭濃度を設定することで当該炭素拡散モデル式が
確定し、総浸炭量が異なる場合でも、その他の一点以上
の浸炭濃度を前記深さ10〜250μmの範囲内で設定する
ことで、前記炭素拡散モデル式が確定するから、例えば
この浸炭濃度分布形態を満足する深さ方向の各点の浸炭
濃度が例えば目標値の所定許容範囲内になる浸炭濃度分
布状態を算出して当該炭素拡散モデル式のパラメータと
なる金属帯温度,雰囲気ガス組成及び浸炭時間を設定す
ることができる。また、仮に、総浸炭量が設定されてい
ない場合でも、この炭素拡散モデル式によって得られる
浸炭濃度分布を深さ方向に積分することで、浸炭量を設
定することも可能となる。更に、本発明の金属帯の連続
浸炭方法では、ここに前記表面反応律速域の表面反応速
度を適用することも勿論可能である。
更に、本発明の金属帯の連続浸炭方法では、浸炭工程
で金属帯表層部に存在する固溶Cは未だ拡散若しくは脱
炭可能な状態であり、この浸炭後の金属帯温度、例えば
鋼板の冷却速度を制御することによって固溶Cの拡散及
び脱炭を制御して、所望する浸炭濃度分布状態に固溶C
を固定化することを可能とする。
図面の簡単な説明 添付する図面中、第1図は、連続焼鈍浸炭設備で行わ
れる熱処理工程の概念説明図、第2図は、本発明の金属
帯の連続浸炭方法を用いた浸炭制御の対象となる連続焼
鈍浸炭設備の一例を示す概略構成図、第3図は、金属帯
表層部の炭素濃度が平衡濃度に達した後の拡散律速域と
該平衡濃度に達する以前の表面反応律速域との説明図、
第4図は、第2図の連続焼鈍浸炭設備で行われる全体的
なライン制御のロジックを構築するアルゴリズムのフロ
ーチャート、第5図は、本発明の金属帯の連続浸炭方法
において、表面反応速度の温度依存係数を算出するため
に浸炭温度を変化させて得られたデータの温度係数相関
図、第6図は、本発明の金属帯の連続浸炭方法を用いて
浸炭制御を行うロジックの一実施例を構築するアルゴリ
ズムのフローチャート、第7図は、本発明の金属帯の連
続浸炭方法により得られたスーティング発生限界と炉内
の物質収支を考慮しないで得たスーティング発生限界と
を比較したCO-H2特性図、第8図は、第6図の実施例の
アルゴリズムによって得られた浸炭量の計算値と実測値
との相関関係図、第9図は、第6図の実施例のアルゴリ
ズムによって目標とする浸炭量を得るために算出された
浸炭諸条件の説明図、第10図は、第6図の実施例のアル
ゴリズムによって通板速度が設定された条件下で目標と
する浸炭量を得るために算出された浸炭諸条件の説明
図、第11図は、本発明の金属帯の連続浸炭方法を用い
て、炭素拡散モデル式に従って得られた浸炭濃度分布と
実測浸炭濃度分布との相関の一例を示す説明図、第12図
は、第6図の実施例のアルゴリズムによって雰囲気ガス
組成濃度及び浸炭時間を制御した場合に得られる浸炭濃
度分布の一例を示す説明図、第13図は、第6図の実施例
のアルゴリズムによって浸炭後の冷却速度を制御した場
合に得られる浸炭濃度分布の一例を示す説明図、第14図
は、本発明の実施例で使用される雰囲気組成モデル式に
従って算出された浸炭炉における発生ガス組成結果とそ
の実測結果を示す説明図である。
発明を実施するための最良の形態 第2図は本発明の金属帯の連続浸炭方法を実施化した
極低炭素鋼からなるストリップの連続焼鈍浸炭設備の一
例を示すものである。
同図において極低炭素鋼ストリップAは、前記した第
1図に示す板温制御の経緯・履歴を満足するように、コ
イル巻戻し機,溶接機,洗浄機等を有する図示しない入
側設備、予熱帯1、加熱帯2、均熱帯3、浸炭帯4、第
1冷却帯5、第2冷却帯6、剪断機,巻取り機等の図示
しない出側設備の順に通板される。
前記加熱帯2は、入側設備から連続的に通板されて予
熱帯1で予熱されたストリップAを再結晶温度以上まで
加熱するものであり、具体的には炉内温度が850〜1000
℃でストリップAの温度が700〜950℃になるように当該
ストリップを加熱する。そして加熱されたストリップA
は前記均熱帯3で必要な時間,再結晶温度以上に保持さ
れることにより、深絞り性に有利な{1,1,1}集合組織
を発達させることができる。
この加熱帯2及び均熱帯3内を,ハースロールを介し
て上下に昇降しながら通板されるストリップAの通板路
の近傍には多数のラジアントチューブが配設されてお
り、このラジアントチューブに供給される燃料ガスを燃
焼させて炉内温度(炉温)を制御する。この燃料ガスの
供給流量の設定は、後述する図示されないホストコンピ
ュータにより、ラジアントチューブ,ストリップ,ハー
スロール等の間の伝熱係数を考慮したヒートバランスか
ら炉内温度の上限値が設定され、所望する再結晶温度の
上下限値を満足するプロセスモデル計算や、コイル同士
の継ぎ目での通板速度の最適時系列を算出する最適ルー
ト計算や、ハースロールのヒートクラウンを予測計算し
て最大通板速度を算出するサーマルクラウン計算等に基
づいて、各熱処理帯内の在炉時間(加熱時間,均熱時
間)を達成する通板速度と共に設定される。ここで本実
施例では、前記ラジアントチューブへの燃料ガスの供給
流量の設定は、通板されて炉から熱量を運び出すストリ
ップへの加熱量に排ガス損失熱及び炉体放散熱等を加え
た炉内の熱収支から求まる炉の要求(必要)熱量と同等
であり、図示されないホストコンピュータにより後述す
るライン全体の制御アルゴリズムに則って行うことも可
能とした。
前記浸炭帯4は、ストリップA表面の極薄い部分(表
層部)に固溶炭素(C)が存在する浸炭相を形成するた
めに、該浸炭帯4内の浸炭炉は図示されないホストコン
ピュータにより金属帯温度は700〜950℃に制御され、ま
たストリップが700℃以上、好ましくは再結晶温度以下
となるようにして、浸炭炉内を10〜120秒で通過するよ
うに通板速度が制御される。この制御は、浸炭量(浸炭
反応速度×浸炭時間)をストリップの通板方向に対して
一定とし、材質上のバラツキを抑止するために行われ
る。ちなみに前記炉温制御は、ストリップ温度が700℃
未満であると金属帯表面における浸炭反応速度が低下し
て熱処理生産性が低下し、また炉内温度が950℃を越え
ると変態点を超えて材質が劣化するといった問題を回避
し、浸炭条件を満足するために行われる。また、既知の
ようにスーティング、即ち鋼板の表面に遊離炭素[C]
が付着すると、化成処理性の劣化等、品質低下及び後工
程の弊害要因となる。同時に炉内の反応が所定の方向、
例えば浸炭反応方向に促進した結果、露点が上昇すると
浸炭反応が阻害されたり、ストリップ表面に酸化が生じ
てテンパーカラーの原因となったりするため、炉内物性
及び炉内温度は後述する浸炭条件設定アルゴリズムに基
づいて重要に管理されている。
この浸炭炉内に供給される浸炭ガスの組成及び供給・
排出流量は、前記ホストコンピュータが、後述する炉内
の物質収支を考慮して炉内の自由エネルギーを最小とす
る熱力学(雰囲気組成)モデル式に基づいて算出した、
諸条件に従って制御されている。この浸炭ガスの組成及
び供給・排出流量は前記スーティングを防止すると共
に、前記露点上昇を抑制して浸炭反応速度の低下やテン
パーカラーを防止するように制御される。勿論、次いで
説明するストリップに形成される浸炭層の浸炭濃度分
布,浸炭深さ等のストリップの仕様諸元を最優先し、更
に前記通板速度,炉内温度に鑑みて前記浸炭ガスの組成
及び供給・排出流量を算出することは言うまでもない。
そして、この浸炭炉内の物性,炉温,金属帯温度,通
板速度即ち浸炭時間,雰囲気ガス組成は、連続浸炭の実
際における制御対象物理量(制御量)と見なされ、前記
ホストコンピュータにより、ストリップに形成されるべ
き要求される浸炭槽の浸炭濃度分布,浸炭深さ等の仕様
諸元から、例えば必要な浸炭量を設定し、後述する予め
設定したこれら制御量に関する各種の基礎式を適宜取捨
選択して、当該浸炭量を実現するための各制御量を算出
し、その他の設備の能力やプロセスをも考慮して、それ
らの制御量を設定するようにしてある。
ちなみに浸炭炉内のストリップはハースロール10を介
して炉内を昇降しながら通板されているが、これらのハ
ースロール10はその回転性及びロールクラウンを所定状
態に保持するために、例えば軸受近傍等が冷却されてい
る。また、ロール自体の強度及び耐磨耗性を維持するた
めにハースロールにはクロムCr合金が使用されている。
ところが、前記浸炭雰囲気ガスがハースロール近傍まで
及ぶと冷却されてスーティングが進行するため、ハース
ロールにCが付着した後、ハースロール内部にCが拡散
する。このようになると前記CrとCが結合してCr炭化物
が析出し、これによりハースロールに用いられている耐
熱合金の結晶粒が破壊され或いは膨張し、一方で固溶Cr
が減少するため、ハースロールが脆化、酸化されること
により孔状の腐食が進行する。このようにハースロール
を浸炭雰囲気ガス中に曝すと、本件発明者等の実験によ
れば2年以内でハースロールを交換しなければならない
ことが判明している。そこで本実施例では、ハースロー
ル室を非接触のシール装置11によって浸炭雰囲気から分
離してハースロールの劣化を防止するようにし、また該
ハースロール室内を前記ハースロールの劣化が進行しな
い程度の微弱浸炭状態とするこによって、分離されたハ
ースロール室内をストリップが通過する間に浸炭された
表層部からCが放散する、所謂脱炭を防止することに成
功した。なお、ストリップがハースロール室を通過する
時間が極めて短く、当該時間に係る鋼板表層部からの脱
炭が問題とならない場合には、前記ハースロール室内を
非浸炭雰囲気としてもよい。
前記シール装置11はここではその構造を詳述しない
が、例えばハースロール室と浸炭雰囲気室との間に介装
さたシール層を3層構造とし、このうちハースロール室
側のシール層には前記弱浸炭雰囲気ガスを噴出し、浸炭
雰囲気室側のシール層には前記浸炭雰囲気ガスを噴出
し、中間のシール層からは排気を行うようにし、更に各
雰囲気ガスの噴射方向及び噴射流量を制御して各雰囲気
ガスの流れが前記中間のシール層側に向かうようにする
と共に、ストリップの通板に伴う板面気流によって発生
する循環流をシール層のうちストリップの幅方向端面に
形成された排出口から排気する構成とした。
この浸炭帯4から送出されたストリップAは前記第1
冷却帯5に通板される。この第1冷却帯5では、前記浸
炭帯4で浸炭された固溶Cをストリップの表層部のうち
表面の極薄い範囲にのみ固定するため、浸炭後のストリ
ップを、鋼板温度が600℃以下、好ましくは500〜400℃
程度になるまで5℃/sec.以上の冷却速度で急冷する。
この第1冷却帯5内ではこの冷却条件が達成できるよう
に、前記ホストコンピュータにより冷却帯内を搬送され
るストリップに対して冷却ガスジェットから吹付けられ
る冷却ガス流量,流速及び冷却ロール温度,巻付け角等
が制御される。
前記第1冷却帯5から送出されたストリップAは次い
で第2冷却帯6に通板される。この第2冷却帯6では鋼
板温度が250〜200℃程度までガス冷却が行われる。この
ようにして最終的には表層部の固溶Cの量及び形態が制
御された極低炭素プレス成形用冷延鋼板を得ることがで
きる。
次に、本実施例の連続焼鈍浸炭設備において、前記ホ
ストコンピュータによって行われるトータルな連続焼鈍
浸炭制御の構成概念について説明する。なお、理解を容
易化するために、これ以後、浸炭反応に係る金属帯の温
度を浸炭温度とも記すが、その実質的な制御因子が炉内
温度であることは前述の内容から明らかであろう。
まず、前述したように浸炭帯における浸炭制御では、
鋼板中の浸炭濃度分布が要求される場合を含めて、当該
鋼板への浸炭量は目標材質を得るための与条件として与
えられる。例えば浸炭濃度分布が要求される場合は、そ
の分布を深さ方向に積分することで浸炭量が設定され
る。そして、材質条件から浸炭温度の上限は再結晶温度
以下に設定される。一方、前記浸炭炉の最大処理能力を
得るためには浸炭量=浸炭反応速度×浸炭時間の原理に
基づいて浸炭反応速度を大きくする必要があり、この必
要から浸炭反応速度に関与する浸炭温度は高いほどよ
く、これは後述するスーティングの発生を防止してCO濃
度上限を高くすることにも繋がる。
本実施例では前記スーティングの発生限界を物質収支
を考慮した熱力学(雰囲気組成)モデル式により得るこ
とができるが、単にスーティングの発生しない範囲から
という条件だけでは、雰囲気組成に関与するCO濃度及び
H2濃度を設定することが困難である。そのため、本発明
では前記浸炭反応速度を阻害しない関係式を予め設定
し、例えば前記スーティングの発生しない雰囲気組成モ
デル式によって得られたCO濃度を基準として、この関係
式を用いてH2濃度を算出する。具体的には、 H2濃度=a×(CO濃度) 但し、 a:0≦a<5の範囲の定数 で表される。この定数aは、具体的には後述する表面
反応速度の基礎式で、反応を阻害するCO2とH2Oの生成濃
度を最小に抑える値に設定され、通常は0.5〜1.0の範囲
で設定することが多い。即ち、この関係式を満足すると
きに、表面反応速度式に基づく浸炭反応速度は最大とな
る。
また、本実施例では前記設定された表面反応速度に基
づいて所望される浸炭濃度分布を達成するための浸炭時
間が設定される。即ち、表層部のC濃度だけを高めて内
層部のC濃度との勾配を急峻にする場合には、浸炭反応
速度を大きくして(浸炭力を高めて)浸炭時間を短くす
ればよい。逆に、鋼板のC濃度全体を高めて内層部と表
層部とのC濃度勾配を緩やかにする場合には、浸炭反応
速度を小さくして(浸炭力を低めて)浸炭時間を長くす
ればよい。これらの浸炭反応速度と浸炭時間の制御は、
前述した浸炭量一定の制約条件を満足する。
一方、前記加熱帯や均熱帯等の項でもふれたように浸
炭帯以外の各板温制御帯でも夫々の炉の能力計算やプロ
セス計算によって最適な通板速度が設定される。これら
の各板温制御帯の最大通板速度と前記浸炭帯の最大通板
速度を考慮した場合、ストリップが一連に通板される連
続焼鈍浸炭設備では、いずれの通板速度が設備全体の通
板速度を律速するかを判断しなければならない。この場
合には、鋼板のあらゆる仕様諸元を考慮しなければなら
ず、しかもその仕様諸元は絶対条件として与えられる。
以上から、前記浸炭帯で得られる最大通板速度が、前
記各板温制御帯で得られる各最大通板速度の最小値より
も大きい場合には、各板温制御帯の最大通板速度の最小
値をライン通板速度として設定し、この通板速度で前記
浸炭量を満足する浸炭炉の雰囲気条件を再度設定し直す
必要がある。なお、この場合は浸炭時間が長くなるか
ら、前記浸炭量一定の制約条件下では浸炭反応速度を低
下させる方向、即ち雰囲気ガス中のCO濃度,H2濃度を低
下させる方向に設定し直すことになり、必然的に前記ス
ーティングを発生しない条件を満足することになる。
逆に前記各板温制御帯で得られる各最大通板速度の最
小値が、前記浸炭帯で得られる最大通板速度以上である
場合には、浸炭帯の最大通板速度をライン通板速度とし
て設定し、この通板速度で各板温制御帯の板温を満足す
るために炉温や燃料供給量を板温制御量として設定し直
す必要がある。
これらの制御概念を具体化したのが前記ホストコンピ
ュータで行われる第4図に示すアルゴリズムである。
この演算処理では、まずステップS20で浸炭帯,各板
温制御帯において、設備能力の上限を制約条件として、
各種鋼板の加熱、浸炭及び冷却仕様を満足する通板速度
の最大値を設定する。具体的には、例えば前記加熱帯
2、均熱帯3においては、伝熱理論を基礎とした数式モ
デルに基づいて、前記ラジアントチューブ、炉壁、スト
リップ、ハースロール等の間の伝熱を考慮したヒートバ
ランスから、プロセスモデル式を設定し、このプロセス
モデル式に基づいて、設備上設定が可能な炉温及び燃料
ガス供給流量又は電気加熱装置の容量の範囲内で且つ目
標板温を満足できる通板速度の最大値(以下、最大通板
速度と記す)を算出する。
一方、浸炭帯4においては、後段に詳述する熱力学を
基礎とした数式モデルに基づいて、浸炭炉内の物質収支
を考慮した浸炭炉内の雰囲気ガス組成モデルを設定し、
この雰囲気ガス組成モデルと浸炭反応速度式からスーテ
ィングを発生しない雰囲気ガス組成(具体的にはCO)の
上限値以下で且つ目標浸炭量を満足する最大通板速度を
算出する。
また、冷却帯5、6においては、冷却ガスジェットに
よる冷却ガスとストリップの伝熱を考慮したモデル式に
基づいて、冷却ガス供給能力の範囲内で且つ目標冷却速
度及び/又は目標冷却終了温度を満足する最大通板速度
を算出する。
なお、前記冷却帯5、6において、冷却方式として、
ガスジェット方式以外の冷却ロール方式やミスト冷却方
式を用いた場合には、これらの冷却装置で使用する媒体
とストリップとの伝熱を考慮したモデル式を用いて同様
の計算を行えばよい。
以上のようにして、算出された浸炭帯を含む各熱処理
帯の最大通板速度を比較して、その最小値をライン全体
の最大通板速度として設定する。
次にステップS21に移行して、前記ステップS20で設定
したライン全体の最大通板速度を用いて、浸炭帯を含む
各熱処理帯の夫々において、鋼板の加熱、浸炭及び冷却
仕様を満足する制御量の設定値を求める。
具体的には例えば、前記加熱帯2、均熱帯3において
はステップS20で述べた伝熱モデルを用いて、目標板温
を満足する炉温を設定する。この炉温は、フィードバッ
ク制御により燃料ガス供給流量又は電気加熱装置の負荷
を制御してもよいし、前述したプロセスモデル計算に基
づき、鋼板のコイルの継ぎ目等の板温変動を最小とする
燃料ガス供給流量又は電気加熱装置の負荷の最適時系列
を最適ルート計算により算出して、これに基づいてフィ
ードフォワード制御を行ってもよい。
一方、浸炭帯4においては、目標値が浸炭量のみの場
合と、浸炭量と共に鋼板厚さ方向へのC濃度分布形態の
目標値が指定される場合がある。目標浸炭量のみが指定
されている場合には、前記ステップS20で述べた雰囲気
ガス組成モデルと鋼板表面の浸炭反応速度式とを用いて
目標浸炭量を満足する雰囲気ガス組成を算出する。それ
に対して、目標浸炭量と共に鋼板厚さ方向へのC濃度分
布形態の目標値が指定されている場合には、雰囲気ガス
組成モデルと鋼板表面の浸炭反応速度式と共に、浸炭時
間だけでなく冷却期間も考慮した鋼中拡散モデルを用い
て、通板速度を前記ステップS20で設定したライン全体
の最大通板速度以下の範囲で、目標とする鋼板厚さ方向
へのC濃度分布形態が設定可能な通板速度に再設定する
と共に、目標浸炭量を満足する雰囲気ガス組成を算出す
る。なお、ここで再設定された通板速度は、本ステップ
以降におけるライン全体の通板速度として設定する。ま
た、本実施例では、鋼板厚さ方向へのC濃度分布形態が
目標値を満たすための通板速度設定のロジックを本ステ
ップS21で説明したが、設定した通板速度がその他の要
因で設定変更されるのを防止するために、鋼板厚さ方向
へのC濃度分布を満たす通板速度設定は後述するステッ
プS23で実施することが望ましく、実施例ではこのステ
ップS23で実施している。
冷却帯5、6においては、前記ステップS20で述べた
伝熱モデルを用いて、目標冷却温度や目標冷却終了温度
を満足するように冷却ガスジェットの風速をファンの回
転数等により設定する。
次にステップS22に移行して、浸炭帯を含む各熱処理
帯のハースロールのヒートクラウンを板温モデルとロー
ル室の熱バランスモデルとにより予測計算し、ロールク
ラウンがストリップの蛇行発生限界内やバックリングの
発生限界内になるような最大通板速度を算出する,所謂
サーマルクラウン計算を行う。なお、ここで算出された
最大通板速度が前記ステップS21までのステップで設定
されたライン全体の最大通板速度よりも大きい場合には
次のステップS23に移行する。一方、ここで算出された
最大通板速度が前記ステップS21までのステップで設定
されたライン全体の最大通板速度よりも小さい場合に
は、本サーマルクラウン計算で求めた最大通板速度をラ
イン全体の通板速度に再設定し、前記ステップS21に移
行する。
前記ステップS23では、コイルの継ぎ目溶接の実施や
コイル検査等の操業上の理由やその他の理由(主として
トラブル)によって、目標とする通板速度が予め指定さ
れている場合に、その指定された通板速度が前記ステッ
プS20〜S22で設定されるライン全体の最大通板速度以下
であることをチェックした後に、ライン全体の通板速度
を指定された通板速度に設定する。
次にステップS24に移行して、最終的に設定されたラ
イン全体の通板速度に対して、浸炭帯を含む各熱処理帯
の夫々において鋼板の加熱、浸炭及び冷却仕様を満足す
る制御量を算出し、設定する。本ステップでの計算内容
は前記ステップS21と同様であるが、鋼板厚さ方向への
C濃度分布形態に基づく通板速度の設定計算は行わな
い。
なお、本ロジックの説明において、浸炭帯4におい
て、目標板温を満足するための板温制御の記述を省略し
たが、当該浸炭帯4の板温制御は、ロジックの説明の中
で述べた加熱帯2、均熱帯3における板温制御と同じ内
容であると考えれば良い。
次に前記浸炭帯で行われる浸炭雰囲気制御について説
明する。
まず、前述した低AI-高BH鋼板のようなプレス形成性
に富み且つ強度を有する鋼板を得るために要求されるス
トリップの仕様諸元に基づいて、本実施例における浸炭
処理条件が従来の浸炭処理条件に比してどのようなレベ
ルにあるのか、そしてその浸炭処理条件を満足するため
に必要な項目について説明する。
従来の浸炭技術は、歯車,シャフト,ベアリング等の
所謂調質鋼からなる不連続物の耐磨耗性,耐衝撃性向上
等のために表面硬化を目的として行われる。そのため、
素材中のC量は0.05%以上で要求される浸炭量は0.1%
以上、浸炭深さは0.5〜1.5mm以上であり、従って浸炭所
要時間は1〜5時間にも及ぶ。このような条件下では鋼
板表層部のC濃度が時間に対して平衡濃度に達している
から、前記第3図に示すように浸炭速度は鋼中への拡散
速度に従う鋼中拡散律速域であり、その浸炭速度は時間
の平方根に比例する。この浸炭速度域では、鋼板表層部
の鋼中平衡C濃度が、所定の値となるように鋼中拡散速
度が表面反応速度と等しくなるように雰囲気ガスのカー
ボンポテンシャル(Cポテンシャル)を制御する必要が
あり、実際の操業管理指標としてはCO/CO2の管理が重要
になる。
一方、本実施例のようなストリップの連続浸炭におい
ては、該ストリップが前記極低炭素鋼からなる連続物で
あり、このストリップの表面特性を改善すること及び鋼
板そのものの材質の向上を目的として行われる。そのた
め、例えば前記の耐二次加工脆性の向上を対象とする金
属に要求される仕様(特開平3−199344号公報など)か
ら当該金属帯の浸炭条件を求めると、本実施例では素材
中のC量は20ppmで要求される浸炭量は200ppm以下、浸
炭深さは50〜200μmであり、しかも通板速度に左右さ
れる浸炭時間は120秒以下になる。このような条件下で
は鋼板表層部のC濃度が時間に対して平衡濃度に達しな
いから、前出した葉らの報告にあるように、第3図に示
すように浸炭速度は鋼表面の反応速度に従う表面反応律
速域であり、該浸炭速度は時間そのものに比例する。こ
の表面反応律速域では浸炭量,浸炭深さ共に非平衡状態
であるから、実際の操業管理指標として従来のように単
に鋼中表層部の平衡C濃度となるようにCポテンシャル
制御によってCO/CO2を管理するだけでなく、炉内におけ
る多数の制御量を考慮して、要求される鋼板の仕様諸元
から決定される浸炭量を得るように、浸炭条件を設定す
る必要がある。
また、実際の連続焼鈍浸炭操業では、例えば前記第4
図に示すアルゴリズムのように浸炭帯以外のヒートセク
ションで行われる板温制御の実際から通板速度が設定さ
れる場合を始めとして、種々の操業条件から最も応対速
度の速い通板速度を制御することが多々ある。そこで、
本発明の連続浸炭方法では、浸炭処理以外の連続焼鈍浸
炭操業条件から通板速度が規制された場合に、当該通板
速度の下に、要求される鋼板の仕様諸元から金属帯表層
部の浸炭量を満足する浸炭条件とを設定する。
ここで、本実施例において浸炭量を制御するために前
記ホストコンピュータで処理されるアルゴリズムに則
り、そのロジックを構築する基本的な原理について説明
する。
まず、前記表面反応律速域において雰囲気ガスの組成
を制御するにあたっては前述のようにスーティングの発
生を防止すると共に露点上昇を抑制する必要があるが、
これらの状態発生メカニズムについては以下のように推
論する。
一般に、浸炭条件における雰囲気ガス組成は化学平衡
により求めることができる。従来の解法では考え得る反
応を全て列挙し、これらの反応の平衡関係から、非線形
の連立方程式を解くことによってガスの組成を得てい
る。しかし、気相系の反応式だけからは正確なすす発生
(スーティング)の限界を求めることが極めて困難であ
る。
そこで本実施例では以下のようにして熱力学(雰囲気
組成)モデル式を考え、スーティング発生を防止する雰
囲気ガス組成を求めた。
等温,等圧の系の場合、自然に起こる変化ではギブス
自由エネルギーが減少し、平衡状態において系のギブス
自由エネルギーは最小値をとる。従って、雰囲気ガスの
平衡状態を求めるためには、生成系の各成分ガス濃度を
変数として得られる全系のギブス自由エネルギーを目的
関数とし、これを原系が持込む元素成分が一定であると
いう物質収支の制約条件下、具体的には炉内に供給され
る雰囲気ガス組成及び供給量と浸炭によって金属帯に炉
内から持出されるC量が一定という制約条件下で最小値
となるように各成分ガス濃度を求めればよい。この成分
ガス濃度が与えられた炉温,炉圧における雰囲気ガスの
平衡組成となり、スーティングC量は以下に述べるロジ
ック中で凝縮種の一つとして表される。
雰囲気ガスの組成を算出するにあたり、二つの仮定を
設定する。その一つは、気体は理想気体とすること。も
う一つは、遊離Cに代表される凝縮相は気体と混合でき
ないとすることである。この仮定の下にガス種と凝縮種
との全自由エネルギーF(X)は、i番目のガス種の自
由エネルギーfg i,h番目の凝縮種の自由エネルギーfc h
対して下記1式で与えられる。
但し、 n:ガス種の数,p:凝縮種の数 を示す。
ここで、前期ガス生成物に関するi番目のガス種の自
由エネルギーfg iは、i番目のガス種のモルエネルギーC
g iに対して当該ガス種のモル数がXg iとして下記2式〜
4式で与えられる。
一方、凝縮生成物については、前記仮定の下に圧力及
び混合の影響は除かれるので、h番目の凝縮種の自由エ
ネルギーfc hは、h番目の凝縮種のモルエネルギーCc h
対して当該凝縮種のモル数がXc hとして下記5式,6式で
与えられる。
fc h=Xc h・Cc h ……(5) Cc h=(F/(R・T))c h ……(6) なお、前記3式,6式中の(F/(R・T))は下記7式
で定義される。
(F/(R・T))i=((F-H298)/T)i/R +ΔHo f,298,i/RT ……(7) 次にこの系における物質収支を考慮する。生成系の各
成分量は変化しても、各元素、即ち雰囲気ガス成分中の
炭素C,水素H,窒素N,酸素Oの原子単位で見れば夫々の総
量は一定となる。この物質収支式は下記8式表される。
但し、 j=1,2,……,m ag ij:i番目のガス種の分子に含まれるj番目の元素の
原子数 ac ij:i番目の凝縮種の分子に含まれるj番目の元素の
原子数 bj:系に存在するj番目の元素の量 m:系に存在する元素種の数 を示す。
ここで本実施例では、前記ホストコンピュータ内に記
憶させたプログラムにより、前記8式及び前記1式から
線形化した雰囲気組成モデル式を設定し、この雰囲気組
成モデル式から得られる解を収束して最適解を得ること
とした。
この雰囲気組成モデル式に従って、浸炭炉における発
生ガス組成を算出してみた。その算出結果と実測結果を
第14図に示す。
同第14図からも明らかなように浸炭炉内のガス組成は
当該算出結果は実測値によく一致している。
次に実際の連続浸炭における雰囲気ガス組成の必要条
件について考慮するにあたり、炉内のCバランスを下記
9式,10式で与えた。なお、10式は鋼板の仕様諸元と表
面反応速度によって算出される関数である。
Wg l=Ws c+Wg o ……(9) Ws c=ξ(V,t,w,LS) ) ……(10) 但し、 Wg l:炉内に入る雰囲気ガス中のC質量 Ws c:ストリップに持去られるC質量 Wg o:炉内から出る雰囲気ガス中のC質量 V:表面反応速度, t:浸炭時間, w:板幅 を示す。
このようにして、浸炭炉内の連続浸炭の実際における
物質収支を考慮した熱力学(雰囲気組成)モデル式に基
づいて前記雰囲気諸元を算出することにより、確実にス
ーティングの発生を防止しながら、炉内の物質収支を考
慮しないで求めた雰囲気諸元に比して雰囲気組成の浸炭
力を高めることが可能となる。従って、例えば雰囲気ガ
ス中のCO濃度を高めて通板速度を上げるといった実際の
操業能力を向上することができる。
次に、本実施例の主幹部を構成する浸炭量制御の原理
について説明する。
雰囲気ガスにCOを用いた場合の表面反応は下記11〜13
式のように考えられる。
CO⇔[C]+O ……(11) CO+O→CO2 ……(12) Fe+[C]→Fe−C(鋼中拡散) ……(13) 前述した葉らによれば鋼板表層部のC濃度が極めて低
く且つ浸炭時間が極めて短い場合には浸炭条件が平衡状
態に達せず、そのため13式の反応速度は12式の吸着酸素
の脱離反応よりも速いために、この反応が律速反応であ
ると仮定し、この表面反応律速域における表面反応速度
Vを下記14式で表した。
V=k・PCO(PCO/(PCO+(ac/K))) ……(14) 但し、 k:反応速度定数,PCO:COガス分圧,ac:炭素活量,K:平衡
定数を示す。
しかしながら、前記14式にはH2の影響が考慮されてい
ない。H2に関する反応式としては、前記12式で表される
反応式に対して下記15式で表される反応が考えられる。
CO+H2+2O→CO2+H2O ……(15) また、生成したCO2に対して下記16式で表される反応
等が考えられる。
H2+CO2⇔H2O+CO ……(16) これらの反応式に基づき,H2は浸炭反応を促進する効
果があることから、本実施例では基本的な表面反応速度
Vを下記17式で表した。
V=k1・f1(PCO,PH20) ……(17) 但し、 θ:吸着酸素の被覆率 を示す。
なお、浸炭によって発生するCO2やH2Oの雰囲気ガス中
の濃度が高い場合(例えばCO/CO2≦50)には、下記18式
や19式で表される反応によって浸炭反応が阻害される。
C+CO2⇔2CO ……(18) C;H2O⇔CO+H2 ……(19) 従って本実施例では、これらの浸炭反応の阻害因子を
考慮して表面反応速度Vを下記20式又は21式によって表
わすこととした。
V=k1・f1(PCO,PH20)×α・f3(PCO,PCO2) ……(20) V=k1・f1(PCO,PH20)-k2・f2(PCO2,PH2O) ……(21) 但し、前記 α:定数、k1,k2:反応速度定数 を示し、反応速度定数k1,k2は下記22式で設定するこ
とができる。
ki=Ai・exp(-Ei/RT) ……(22) 但し、 Ai:頻度因子,Ei:活性化エネルギー,R:気体定数,T:
絶対温度 を示す。なお、頻度因子Ai,活性化エネエルギーEi
気体定数Rはいづれも定数であるため、反応速度定数
k1,k2は種々の絶対温度Tの条件下における実験値から
算出した。第5図に実験によって得られた反応速度定数
k1を示す。
なお、本実施例においてCO濃度だけを考慮すればよい
場合、例えば雰囲気の供給ガス流量が多い場合には、前
記14式を表面反応速度式として使用してもよい。
次に本実施例で、所望される浸炭濃度分布を得るため
にモデル式化された固溶炭素の鋼中拡散について説明す
る。鋼中へのCの拡散状態はフィックの法則に基づいて
下記23式に示す炭素拡散モデル式で表される。
dC/dt=D・d2C/dX2 ……(23) 但し、 C:鋼中のC濃度,t:時間,D:拡散係数,X:拡散距離 を示す。
前記拡散係数Dは下記24式で表されるアレニウスの式
によっても設定されるが、本実施例では実測データによ
り近似的に表示することとした。
D=exp(a・T-1+b) ……(24) 但し、 T:浸炭温度,a:比例係数,b:定数 を示す。
従って、前記17式又は21式又は22式及び23式により鋼
板への浸炭量を算出することができる。このことは浸炭
量一定の条件では所望される浸炭濃度分布の一点の浸炭
濃度を設定すれば前記炭素拡散モデル式が設定され、浸
炭量が異なる場合でも浸炭濃度分布の二点以上の浸炭濃
度を設定すれば前記炭素拡散モデル式は設定されること
を意味する。また、前述のように浸炭処理以外の操業条
件から通板速度が規制されている場合には、前記23式中
の浸炭時間tは通板速度Lsで有効浸炭炉長Lを除した値
に決定されているから、前記23式を浸炭時間で時間積分
する際に、この計算値を使用する。
以上の演算を前記ホストコンピュータに予め記憶され
たプログラムにより順次行って、浸炭後の鋼板の仕様諸
元、即ち本実施例では所望される浸炭濃度分布から与え
られるストリップへの浸炭量と、雰囲気ガス中のC減少
量から算出されるストリップへに浸炭量とが一致する、
浸炭条件を設定するためのアルゴリズムを第6図のフロ
ーチャートに示す。
まずステップS1では、浸炭後の鋼板仕様諸元として与
えられる条件設定から、雰囲気ガスの組成,投入ガスの
流量,浸炭温度及び通板速度,鋼板諸元並びに鋼板の浸
炭濃度分布から鋼板表面より指定深さX1のC濃度C1等の
条件を読込む。また、ここでは例えば通板速度をLSと
し、追って行われるフローで修正されるパラメータとす
る。
次にステップS2に移行して、前記鋼板諸元及び鋼板仕
様から鋼板への設定浸炭量ΔCを設定し、浸炭炉からス
トリップによって持出される,単位時間当たりのC量を
算出する。
次にステップS3に移行して、前記ステップS1で読込ん
だ雰囲気ガスの組成から前記雰囲気組成モデル式を設定
する。
次にステップS4に移行して、前記ステップS3で設定し
た雰囲気組成モデル式に従って、前記浸炭炉からストリ
ップにより持出されるC量を考慮した雰囲気ガスの各成
分濃度を算出する。
次にステップS5に移行して、前記17式に基づいて鋼板
の表面反応速度を算出する。
次にステップS6に移行して、前記23式に基づいて鋼中
への浸炭速度を算出し、鋼中へのC拡散量を算出する。
次に当該浸炭処理時間が経過した場合にはステップS7
に移行して、前記のステップS5又はステップS6で算出さ
れた単位時間及び単位面積当たりの表面反応速度又は鋼
中への拡散C量を処理時間及び鋼板総表面積で積分して
鋼板への浸炭量ΔC′を算出する。
次にステップS8に移行して、前記設定浸炭量ΔCと上
記計算結果の浸炭量ΔC′との差の絶対値が所定値aよ
り小さいか否かを判定し、両者の差の絶対値が所定値a
より小さい場合にはステップS10に移行し、そうでない
場合にはステップS9に移行する。
前記ステップS9では、前記浸炭量に基づいて設定浸炭
量を下記25式に基づいて補正し、前記ステップS3に移行
する。
ΔC=ΔC+(ΔC′−ΔC)×b ……(25) 但し、 b:定数 を示す。従って、浸炭戸からストリップにより持出さ
れる総C量と浸炭した総C量とが等しくなれば、即ち浸
炭炉内の物質収支が満足あれれば、ステップS10に移行
する。
前記ステップS10では、前記目標浸炭量ΔCと設定
浸炭量ΔCとの差の絶対値が所定値dより小さいか否か
を判定し、両者の差の絶対値が所定値dより小さい場合
にはステップS12に移行し、そうでない場合にはステッ
プS11に移行する。
前記ステップS11では、前記浸炭濃度分布条件から設
定される設定浸炭量を得るために雰囲気ガス流量,雰囲
気組成,通板速度,浸炭温度の各パラメータの何れか一
つ以上を変更して、前記ステップS2に移行する。ここ
で、例えば前記所定浸炭量ΔCと設定浸炭量ΔCとの
格差を補正するように通板速度LSを補正する場合には、
例えば下記26式に基づいて当該補正される通板速度LSを
算出すればよい。
LS=LS+(ΔC−ΔC)×d′ ……(26) 但し、 d′:定数 を示す。
前記ステップS12では、前記ステップS6で設定された
鋼中拡散モデルに従って鋼板表面より指定深さX1のC濃
度C′を算出する。
次にステップS13に移行して、前記ステップS1で読込
んだ鋼板表面より指定深さX1の設定C濃度C1と、前記ス
テップS12で算出した鋼板表面より指定深さX1のC濃度
C′との差の絶対値が所定値eより小さいか否かを判
定し、両者の差の絶対値が所定値eより小さい場合には
ステップS15に移行し、そうでない場合にはステップS14
に移行する。
前記ステップS14では、前記浸炭濃度分布条件から設
定される設定浸炭量を得るために雰囲気組成,通板速
度,浸炭温度の各パラメータの何れか一つ以上を変更し
て、前記ステップS2に移行する。
前記ステップS15では、上記演算の結果得られた雰囲
気ガス成分の濃度、又は通板速度又は浸炭温度の各設定
値を制御の目的に応じて出力すると共に、全浸炭量,平
均浸炭量,鋼板表面からの浸炭分布等の演算結果を出力
してプログラムを終了する。
なお、第6図のフローチャートにおいて、入力条件と
なっている雰囲気ガス流量は、前述したように雰囲気ガ
ス中のCO2及びH2O濃度を変更するための制御量であり、
制御因子としては炉内に投入するCO+H2流量と同様に雰
囲気ガス組成に含めて考えている。
本プログラムを用いて、工業的連続浸炭操業における
通板条件が通板速度LS=200mpm,板厚D=0.75mm,板幅W
=1400mm,供給ガス量=1000Nm3/hr時において、このプ
ログラムによって算出された各浸炭温度における物質収
支を考慮して求めたスーティングの発生限界を第7図に
実線で示す。同図において破線は露点上限を示す。また
一点鎖線は物質収支を考慮しないで求めたスーティング
の発生限界を示す。そして同図において斜線を施した部
分が実浸炭操業における操業範囲を表す。
同図から明らかなように物質収支を考慮して求めたス
ーティングの発生限界では、物質収支を考慮しないで求
めたスーティングの発生限界に比してCO濃度もH2濃度も
高くなる。即ち、その分だけ浸炭速度も向上する。一
方、浸炭温度が高くなるほどスーティングの発生限界に
伴うCO濃度もH2濃度も高くなる。このことは全体的な浸
炭操業効率が温度にも依存することを意味するから、逆
に通板速度を速くする場合には材質の許す範囲で炉内温
度を高くする等の操業の余裕度が増すことになり、連続
浸炭の実際における諸条件の設定範囲がより広がること
になる。勿論、炉内の物質収支を考慮しないで求めたス
ーティングの発生限界に沿って操業範囲を設定してもス
ーティングは発生しないが、その分だけ操業の余裕度は
減少し、諸条件の設定範囲は狭くなる。
また、このプログラムによって算出された各浸炭条
件、即ち前記各制御量を変化させた場合の浸炭量と、実
測された浸炭量との相関を第8図に示す。同図から明ら
かなように、浸炭量の計算値と実測値とは非常によく一
致している。このことは、前記浸炭速度,即ち表面反応
速度の設定と、その温度依存係数の設定が正しいことを
意味しており、表面反応速度の設定が正しい限り、本実
施例の連続浸炭方法は浸炭速度が拡散速度よりも大きい
表面反応速度に従う領域での幅広い応用が可能であるこ
とを意味する。
更に本プログラムによって算出される浸炭量制御のた
めの制御量の具体的演算例を第9図に基づいて説明す
る。
ここで例えば、ステップS1で読込まれた板厚諸元等の
鋼板諸元から,第9図に明示するように前記ステップS2
で所定(目標)浸炭量が設定され、同時に全板厚に対す
る許容範囲が設定された。また、前記ステップS1では鋼
板の材質条件より目標浸炭温度が設定された。
従って、前記ステップS3及びステップS4でスーティン
グを防止する雰囲気ガス条件としてCO濃度,H2濃度が設
定される。
この雰囲気ガス成分濃度の制御精度が実機において±
0.3%であるとすると、前記前記ステップS3〜ステップS
11のフローにおいて演算される前記17式〜23式によって
第9図に明示するように、目標浸炭時間が設定され、同
時に浸炭時間変動の許容範囲が設定される。
次に、浸炭炉長に対して、通板速度は、 通板速度=浸炭帯炉長/浸炭時間 で表されるから、ステップS12では目標通板速度及び
その許容範囲が設定されて出力される。
このように浸炭量及び雰囲気ガス組成が設定された時
点で前記ステップS10,S11のループでは浸炭時間(通板
速度)が設定される。
以上のように本実施例では、浸炭速度が表面反応速度
に律速される領域で、板諸元から設定される浸炭量を得
るための浸炭諸条件を全体的な操業条件に鑑みながら最
適条件に設定することができ、従来、経験に頼っていた
これらの制御を完全に自動化することが可能となった。
更に、浸炭処理以外の操業条件から通板速度が規制さ
れた場合、本プログラムによって算出される浸炭量制御
のための制御量の具体的演算例を第10図に基づいて説明
する。
ここで例えば、ステップS1で読込まれた板厚諸元等の
鋼板諸元から、前記ステップS2で所定(目標)浸炭量が
設定される。また、前記ステップS1では鋼板の材質条件
より目標浸炭温度が設定された。更に、前記ステップS1
で読込まれた通板速度で、前記有効浸炭炉長を除して浸
炭時間が算出される。
次いで、前記ステップS3及びステップS4でスーティン
グを防止する雰囲気ガス条件としてCO濃度,H2濃度の上
限が設定される。
これに対して前記ステップS3〜S9のフローにおいて表
面反応速度式,鋼中拡散モデル式が設定され、これらの
式から前記目標浸炭量を達成するのに必要なCO濃度,H2
濃度,CO2濃度,H2O濃度が設定される。
従って、第10図に示すように目標浸炭量が大きくなる
か若しくは浸炭時間が短くなれば、例えば雰囲気ガス中
のCO濃度が大きくなるように雰囲気ガス組成を制御し、
目標浸炭量が小さくなるか若しくは浸炭時間が長くなれ
ば、例えば雰囲気ガス中のCO濃度が小さくなるように雰
囲気ガス組成を制御する。
なお、浸炭炉温において浸炭炉から排出される雰囲気
ガス組成を制御する方法としては、例えばCO+H2濃度は
浸炭炉に供給する雰囲気ガス流量中のCO流量やH2流量の
比率を変化させればよく、CO2やH2Oの濃度は供給する雰
囲気ガスの総流量を変化させればよい。
以上のように本実施例では、通板速度が予め規制され
た場合にも、板諸元から設定される浸炭量を得るための
浸炭諸条件を全体的な操業条件に鑑みながら最適条件に
設定することができ、従来,経験に頼っていたこれらの
制御を完全に自動化することが可能となった。
次に、前記浸炭薄鋼板に所望される浸炭濃度分布を前
記フィックの法則に基づく炭素拡散モデル式によって算
出した演算例を第11図〜第13図に基づいて説明する。前
記第6図のアルゴリズムによればこの浸炭濃度分布を深
さ方向に積分することによって単位面積当たりの浸炭量
が設定され、この浸炭量を満足する制約条件下で、所望
する浸炭濃度分布の形態から炭素拡散モデル式を設定
し、深さ方向各点の目標値に対して許容範囲を設定し
て、当該炭素拡散モデル式から算出される浸炭濃度プロ
ファイルがこの許容範囲内に納まるように、該モデル式
のパラメータである浸炭温度と浸炭時間とを設定する。
ところで、第11図に示す浸炭濃度分布形態では金属帯
表面からの深さ凡そ10〜50μmで浸炭濃度のピークがあ
り、それより深い深さ250μmまでの範囲では徐々に浸
炭濃度は減少する。これは本来的に浸炭濃度が最も高い
表層部の表面直近部位では、前記シール部や冷却の仮定
において脱炭が進行してしまうためである。そこでこの
浸炭濃度分布の形態と前記炭素拡散モデル式とを合致さ
せるためには、前記表面からの深さ10〜250μmの範囲
の浸炭濃度分布の形態で2点以上の浸炭濃度を設定すれ
ばよく、好ましくは前記浸炭濃度のピーク点を捉えるた
めに深さ10〜50μmの範囲で一点、100〜250μmの範囲
で一点以上の浸炭濃度を設定することが望まれる。とこ
ろが前述のように浸炭量が一定の場合には、表面反応速
度や浸炭温度,浸炭時間等の諸条件が設定されている条
件下で、浸炭濃度を一点だけ設定すれば前記炭素拡散モ
デル式は一意的に設定されることになる。
ここで、浸炭時間(処理時間,sec.)がt1,t2,t3で,CO
濃度(%)がa1,a2,a3、H2濃度(%)がb1,b2,b3,浸炭
温度がT(℃)一定の浸炭条件下において、このモデル
式によって得られる金属帯表面からの距離、即ち深さ
(μm)と鋼中炭素濃度(浸炭濃度,ppm)との相関曲線
及び実測値データを第11図に示す。但し、前記浸炭時間
t1=t2≠t3であり、CO濃度a1=a3≠a2であり、H2濃度b1
=b2=b3である。同第11図において浸炭濃度の実測はフ
ッ酸に試片を入れてその表面から溶解させ、所定の溶解
時間で溶解したC量とFe量との重量比から固溶炭素量を
算出したが、浸炭濃度によって決まる(依存する)鋼の
特定組織の深さを測定することにより推定してもよい。
次に、前記鋼中拡散モデル式における浸炭時間の影響
を実験した結果を第12図に示す。同図では浸炭温度T℃
一定、総浸炭量ΔCppm一定の条件下で、CO濃度(%)が
a4、H2濃度(%)がb4,浸炭時間(処理時間,sec.)がt
4の雰囲気条件で浸炭を行った場合を実線で、CO濃度
(%)がa5,H2濃度(%)がb5、浸炭時間(処理時間,s
ec.)がt5の雰囲気条件で浸炭を行った場合を破線で示
す。但し、浸炭時間t5≒3t4,CO濃度a4>a5,H2濃度b4≫b
5である。前述のようにCO濃度及びH2濃度が高いほど浸
炭反応速度が大きく、浸炭時間が長いほど内層部への浸
炭量が大きくなる。従って同図から明らかなように、本
実施例では、表層部のC濃度だけを高めて内層部のC濃
度との勾配を急峻にする場合には、浸炭反応速度を大き
くして(浸炭力を高めて)浸炭時間を短くすればよく、
逆に、鋼板のC濃度全体を高めて内層部と表層部とのC
濃度勾配を緩やかにする場合には、浸炭反応速度を小さ
くして(浸炭力を低めて)浸炭時間を長くすればよいこ
とが分かる。
次に、浸炭工程後の板温制御、具体的には冷却速度の
制御によって浸炭濃度分布を制御する実施例について第
13図を用いて説明する。同図では浸炭温度T℃一定,浸
炭時間tsec.一定,CO濃度a6%一定,H2濃度b6%一定の条
件下で、冷却速度ΔT1℃/sec.で冷却した場合を実線
で,冷却速度ΔT2℃/sec.で冷却した場合を破線で示
し、冷却速度ΔT1≪ΔT2である。同図から明らかなよう
に冷却速度が大きいほど固溶Cの内部への拡散を速やか
に抑止するため、表層部のC濃度だけが高くなって内層
部のC濃度との勾配が急峻になる。逆に冷却速度が小さ
いほど固溶Cは内部に拡散してしまうので、表層部のC
濃度は低く且つ内層部とのC濃度勾配は緩やかになる。
なお、本実施例では浸炭帯で所定の浸炭処理を成され
たストリップが第1冷却帯によって急冷されて炭素拡散
が固定化される場合について詳述したが、本発明では浸
炭後のストリップを加熱,均熱,冷却して炭素拡散状態
を操作することが可能であり、そのために第1冷却帯に
代えて/又は加えて板温制御帯を設けてもよい。
また、本実施例では前記第6図のアルゴリズムを用い
て、材質条件から浸炭温度が設定され且つスーティング
の発生限界からCO濃度並びにH2濃度が予め設定された条
件下で所定のC量を得るために浸炭時間(通板速度)を
最終的に変更する場合、浸炭濃度分布条件から浸炭温度
及び浸炭時間の上限が設定され且つスーティングの発生
限界からCO濃度並びにH2濃度の上限が予め設定された条
件下で所定の鋼板厚さ方向への浸炭濃度分布及び浸炭量
を得るために浸炭時間(通板速度)と雰囲気ガス組成と
を最終的に変更する場合、浸炭処理以外の操業条件から
設定された通板速度に基づいて浸炭時間が決定され且つ
材質条件から浸炭温度が設定された条件下で所定のC量
を得るために雰囲気ガス組成を最終的に変更する場合に
ついて詳述したが、これらを含めて前記各制御因子の制
御例としては下記の夫々も考えられる。
1)雰囲気組成が一定のとき、浸炭温度,浸炭時間を個
別に又は同時に変化させる。
2)浸炭温度が一定のとき、雰囲気組成のうちCO分圧又
はH2分圧又はCO+H2分圧,浸炭時間を個別に又は同時に
変化させる。
3)浸炭時間が一定のとき、雰囲気組成のうちCO分圧又
はH2分圧又はCO+H2分圧,浸炭温度を個別に又は同時に
変化させる。
4)全ての制御因子を同時に又は個別に変化させる。
これらの制御因子の取捨選択方法はいずれかに限定さ
れるものではなく、種々の与えられた条件下でいずれの
場合にも全て展開可能である。
また、本実施例では表面反応においてCO,H2,CO2及びH
2Oの影響のみを考慮して表面反応速度を算出する場合に
ついて詳述したが、前述したようにその他の雰囲気ガス
組成、例えば重炭化水素の影響を考慮して表面反応速度
を算出するようにしてもよい。
また、本実施例では物質収支を考慮した熱力学モデル
式を線形化し、その解を収束することによって平衡状態
を算出することとしたが、この平衡状態の算出手段はこ
れに限定されるものではない。
また、本実施例では特に前記表面反応律速域において
極低炭素鋼からなるストリップを連続焼鈍・浸炭する場
合についてのみ詳述したが、それ以外の浸炭反応律速域
においても、また浸炭のみを必要とする場合において
も、或いはその他の金属帯についても展開可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平4−344472 (32)優先日 平4(1992)12月24日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 諸住 順 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 岡田 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社技術研究本部内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 8/22 C23C 8/06 C23C 10/06

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属帯を連続的に浸炭炉に通板して浸炭す
    るに際して、浸炭炉内に供給される浸炭ガスと、金属帯
    に固定されて持出される炭素との、浸炭炉内における物
    質収支に基づいて、スーティングが生じない雰囲気ガス
    組成又は炉内温度に当該浸炭炉内の雰囲気ガス組成又は
    炉内温度を制御することを特徴とする金属帯の連続浸炭
    方法。
  2. 【請求項2】金属帯表層部の炭素濃度が、当該金属帯と
    雰囲気ガスとの間で平衡する濃度以下の領域で前記雰囲
    気ガス組成又は炉内温度若しくはそれら双方を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属帯の連続浸炭方
    法。
  3. 【請求項3】浸炭炉内に通板される金属帯を連続的に浸
    炭する場合に、少なくとも炭素、酸素、窒素又は炭素、
    酸素、水素、窒素の元素を含み且つスーティングが生じ
    ない雰囲気ガス組成又は炉内温度を制御するにあたっ
    て、前記浸炭炉内の各元素の物質収支に基づいて、炉内
    雰囲気全体のギブス自由エネルギーが最小となる状態を
    求めることにより当該炉内雰囲気の平衡状態を求めるよ
    うにした熱力学モデル式に基づいて、前記雰囲気ガス組
    成又は炉内温度の制御量を算出することを特徴とする金
    属帯の連続浸炭方法。
  4. 【請求項4】前記雰囲気ガス組成及び炉内温度の条件と
    して、炉内温度が700〜950℃、一酸化炭素濃度が0%<
    CO濃度≦22%、水素濃度が0%≦H2濃度≦30%の条件が
    適用されることを特徴とする請求項3に記載の金属帯の
    連続浸炭方法。
  5. 【請求項5】金属帯を浸炭炉内に通板して連続的にガス
    浸炭するに際して、金属帯温度、雰囲気ガス組成及び浸
    炭時間を制御量として用い、これらの制御量を制御して
    浸炭時の金属帯表層部の炭素濃度が金属帯と雰囲気ガス
    との間における平衡濃度以下で、且つ該表層部の浸炭速
    度が表層部から内部への拡散速度よりも大きい反応領域
    で浸炭処理を行うことを特徴とする金属帯の連続浸炭方
    法。
  6. 【請求項6】前記各制御量を制御するにあたって、金属
    帯温度と一酸化炭素分圧、或いは金属帯温度と一酸化炭
    素分圧及び水素分圧をパラメータとする浸炭反応速度予
    測式と、浸炭時間によって決まる浸炭量の予測式とを予
    め設定し、これらの予測式の何れか又は組み合わせに基
    づいて各制御量を設定することを特徴とする請求項5に
    記載の金属帯の連続浸炭方法。
  7. 【請求項7】前記予測式中の制御量に、二酸化炭素分圧
    及び/又はH2O分圧を加えて浸炭量を制御することを特
    徴とする請求項6に記載の金属帯に連続浸炭方法。
  8. 【請求項8】金属帯を浸炭炉内に通板して連続的にガス
    浸炭するに際して、金属帯温度及び/又は雰囲気ガス組
    成を制御量として用い、浸炭処理以外の操業条件によっ
    て規制された通板速度から決まる浸炭時間に対して、目
    標とする浸炭量を得るために予め設定された予測式に基
    づいて、雰囲気ガス組成及び/又は金属帯温度の制御量
    を設定することを特徴とする請求項6又は7に記載の金
    属帯の連続浸炭方法。
  9. 【請求項9】請求項8に記載される金属帯の連続浸炭方
    法において、規制された通板速度の範囲内で、浸炭時間
    をパラメータとして加えることを特徴とする金属帯の連
    続浸炭方法。
  10. 【請求項10】金属帯を浸炭炉内に通板して連続的にガ
    ス浸炭するに際して、金属帯温度、雰囲気ガス組成及び
    浸炭時間を制御量として用い、所望する板厚方向の浸炭
    濃度分布形態に対して、予め設定されたフィックの法則
    に基づく金属帯板厚方向の炭素拡散モデル式に基づいて
    前記各制御量を設定することを特徴とする金属帯の連続
    浸炭方法。
  11. 【請求項11】請求項10に記載される金属帯の連続浸炭
    方法において、金属帯温度と一酸化炭素分圧と浸炭時
    間、或いは金属帯温度と一酸化炭素分圧及び水素分圧と
    浸炭時間とをパラメータとして用いることを特徴とする
    金属帯の連続浸炭方法。
  12. 【請求項12】前記制御量に、二酸化炭素分圧及びH2O
    分圧をパラメータとして加えることを特徴とする請求項
    11に記載の金属帯の連続浸炭方法。
  13. 【請求項13】前記浸炭濃度分布形態は、金属帯表層部
    の深さ10〜250μmの範囲の1点以上の浸炭濃度又は浸
    炭濃度によって決まる金属の組成形態を目標に設定する
    ことを特徴とする請求項10乃至12に記載の金属帯の連続
    浸炭方法。
  14. 【請求項14】前記ガス浸炭の後に金属帯の板厚方向の
    浸炭濃度分布形態を制御する金属帯の温度制御を行うこ
    とを特徴とする請求項10乃至13に記載の金属帯の連続浸
    炭方法。
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