JP7218224B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、図6に示すように、帯状の熱間圧延鋼板をコイル状に巻き取る工程(S1)と、上記巻取工程後の鋼板を冷却する工程(S2)と、上記冷却工程後の鋼板を冷間圧延する工程(S3)と、上記冷間圧延工程後の鋼板を焼鈍する工程(S4)と、上記焼鈍工程後の鋼板の表面に溶融亜鉛めっきする工程(S5)と、上記溶融亜鉛めっき工程後のめっきされた鋼板を合金化炉で加熱して合金化処理を行う工程(S6)とを備える。また、上記合金化処理工程(S6)が、上記焼鈍工程前の鋼板の粒界酸化層の厚みに応じて合金化温度又は合金化度を予測し、上記めっきされた鋼板が予測した合金化温度となるように上記合金化炉の入熱量を決定する工程(図示しない)と、上記粒界酸化層の厚みと上記合金化炉におけるヒートパターンに基づく予測式に基づいて上記合金化度を予測する工程(図示しない)又はめっきされた鋼板の温度と放射率との関係式に基づいて上記合金化度を予測する工程(図示しない)を備える。また、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、熱間圧延鋼板を酸洗槽の酸によって洗浄する酸洗工程(図示しない)を有していてもよい。
巻取工程では、帯状の熱間圧延鋼板2をコイル状に巻き取る。
冷却工程では、上記巻取工程後の鋼板2を冷却する。巻き取られた鋼板2は、コイル3の状態のまま常温まで冷却される。コイルは、次工程の冷間圧延工程に搬送されるまでに、冷却される。この冷却過程で、ケイ素やマンガンなどの易酸化性元素が含まれた場合に粒界で易酸化性元素が酸化物を生成する。一般に、粒界に雰囲気からの酸素が拡散し、粒界界面で母材から易酸化性元素が拡散し、酸素と結合し酸化物を作った状態を粒界酸化と呼ぶ。粒界酸化は、酸素の拡散により進行するため、鋼板表層から進行する。粒界酸化の進行した領域は、易酸化性元素が母材より少なくなり、易酸化性元素が欠乏した領域(以下、粒界酸化層ともいう)となる。
冷間圧延工程では、上記冷却工程後の鋼板2を冷間圧延する。
焼鈍工程では、上記冷間圧延工程後の鋼板2を搬送しながら連続焼鈍炉15内で焼鈍する。始めに、予熱炉内で母材鋼板表面の油分を燃焼除去した後、非酸化性雰囲気または還元性雰囲気の焼鈍炉内で加熱して再結晶焼鈍を行う。
溶融亜鉛めっき工程では、上記焼鈍工程後の鋼板2の表面に耐食性を向上させるための溶融亜鉛めっきが施される。溶融亜鉛めっきは、上記焼鈍工程後の鋼板2を連続的に溶融亜鉛浴18に浸漬させることによって溶融亜鉛めっき処理を行う。めっき処理は、めっき温度が通常400℃~480℃程度の溶融亜鉛めっき浴に浸漬することによって行われる。めっき処理後、鋼板を放冷することによってめっき層を固化させる。
合金化処理工程では、溶融亜鉛めっき工程後の鋼板2を合金化炉20で加熱して合金化処理を行う。具体的には、溶融亜鉛めっき工程後の鋼板2は、溶融亜鉛浴18から鋼板2を引き上げ、ワイピングにより亜鉛付着量の調整を行った後に、合金化炉20で加熱して亜鉛めっき層への鉄の拡散を促進させることによって、めっき層を亜鉛と鉄の合金層に変化させる。合金化は、鋼板表層に付着した亜鉛層中に母材中の鉄が加熱により拡散し亜鉛と鉄が合金化することである。そのため、合金化の進行には、鉄が拡散できる温度まで上昇させる必要がある。
入熱量決定工程は、上記粒界酸化層の厚みに応じて合金化温度又は合金化度を予測し、上記めっきされた鋼板が予測した合金化温度となるように上記合金化炉への入熱量を決定する。「粒界酸化層の厚みに応じて」とは、例えば、実測した粒界酸化層の厚みに基づいてもよく、推定した粒界酸化層の厚みに基づいてもよいし、実験シミュレーション、計算などにより求めた粒界酸化層の厚みと入熱量の関係を求めたテーブルに基づいてもよいことを意味する。具体的には、例えば粒界酸化層の厚みは、鋼板の成分及び熱間圧延の条件と粒界酸化層の厚みとの実績に基づく対応データから推定することができる。粒界酸化層の厚みは、同一条件で処理された鋼板で実測した条件を用いることや、理論や実測値に基づいて作成した計算モデルなどで算出する方法などにより求めることができる。
本発明者らは、この合金化の際に、焼鈍炉に入る前の鋼板表面に生成する粒界酸化層の厚みが合金化に強く影響することを見出した。鋼板は、構成成分および製品用途が決定するとその材料特性が得られるよう焼鈍条件を決定する。よって、焼鈍条件はあまり大きく変動させることができない。そのため、合金化不良が発生した場合は、合金化炉の供給熱量を調整する方法が一般的である。これに対して、本発明者らは、焼鈍前の鋼板表面の粒界酸化層の厚みに注目し、既知の粒界酸化層の厚みの鋼板を同じ焼鈍条件、めっき付着させた後、合金化炉を再現して加熱したところ、鋼板表面の粒界酸化層の厚みに応じて合金化開始温度が変化することを見出した。
図3は、上記加熱実験に基づいて鋼板の合金化に必要な合金化温度と必要滞在時間とを達成するために粒界酸化層の厚み毎に設定したヒートパターン条件の一例を示すものである。図3の合金化温度は、合金化温度実測実験結果(図示しない)に基づいて粒界酸化層の厚み毎の合金化温度を算出したものである。
上記合金化温度及び後述する合金化度に達するように上記合金化炉への入熱量を調整する。なお、鋼板の受熱量は、鋼板の放射率に依存する。亜鉛の場合は低い放射率であるが、合金化が進行するに従い放射率が高くなるため、合金化が進行するに伴い、鋼板の受熱量も増加する。従って、合金化温度を予測する場合、鋼板の放射率を考慮することが重要となる。
本発明者らは鋭意研究の結果、上記粒界酸化層の厚みと上記合金化炉におけるヒートパターンに基づいて合金化度の予測式を作成できることを見出した。また、めっきされた鋼板は合金化の進行とともに鋼板放射率が増加することに着目し、合金化度の異なる鋼板サンプルの放射率を調査したところ合金化度と鋼板放射率の関係を見出した。
上記合金化度に達するように上記合金化炉への入熱量を調整する。なお、入熱量の調整は、上述の上記合金化温度の予測における入熱量の調整と同様である。
上記合金化処理工程では、予測した上記合金化温度と実際の合金化温度との乖離又は予測した上記合金化度と実際の合金化度との乖離が生じた場合にその乖離を補償するように、上記合金化処理した鋼板の入熱量を調整することが好ましい。予測した上記合金化温度と実際の合金化温度との乖離又は予測した上記合金化度と実際の合金化度との乖離が生じた場合にその乖離を補償するように、上記合金化処理した鋼板の入熱量を調整することにより、より合金化の精度を向上し、表面性状に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
さらに、従来、合金化の制御については、経験に基づいて合金化の具合を見ながら通板速度を調整しながら行っているが、当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、上記鋼板温度度予測計算等に基づき予め条件を設定した上で合金化処理工程が行われるので、生産効率及び歩留まりの向上を図ることができる。
当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、表面性状に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を確実に製造することができる。当該溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法により、特に自動車、家電製品、建材等の分野で有用な表面性状に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
表1に記載の化学組成を有する鋼のスラブを1200℃に加熱して溶製した。
合金化の評価基準として、めっき層に対する鉄の含有量(質量%)で評価し、鉄の含有量が8質量%以上になったときを合金化完了とした。合金化が完了した場合は○とし、完了していない場合を×とした。
表3に示すように、到達鋼板温度が予測合金化温度の範囲内であり、かつ予測合金化温度範囲滞在時間が必要滞在時間以上であった実施例1~実施例9は、合金化が達成できたことがわかる。一方、到達鋼板温度が予測合金化温度に達していない、又は予測合金化温度範囲滞在時間が必要滞在時間よりも短く、合金化は開始しているものの必要滞在時間を具備していない比較例1~比較例5は、合金化が達成できず不十分であることが示された。
粒界酸化層の厚みが異なるめっき鋼板サンプルを用いて合金化度の予測式を作成した。
この結果から、粒界酸化層の厚みと、合金化温度及び経過時間(加熱時間及び保持時間)から予測式に基づいて実測値に近い合金化度を予測できることが示された。なお、他の粒界酸化層の厚みについても、上記手順により、定数A及びBを同定することにより、予測式(1)~(3)を適用して、合金化度を予測することができる。
合金化度の異なる鋼板サンプルを用いて合金化と放射率の関係を調査した。
この実験結果から、合金化度の実測と予測との関係が図9のようになることが示された。図9の式は、例えば、以下のように利用することができる。実際の製造工程において、溶融亜鉛めっきされた鋼板を、バーナーを用いて追加加熱する際に、リアルタイムで放射率を測定し、図9の式を用いて放射率を合金化度に換算することにより、当該鋼板を所望の合金化度に処理することができる。
2 鋼板
3 コイル
6 酸洗槽
10 連続圧延機
11 冷間圧延鋼板のコイル
15 連続焼鈍炉
18 溶融亜鉛浴
20 合金化炉
Claims (4)
- 帯状の熱間圧延鋼板をコイル状に巻き取る工程と、
上記巻取工程後の鋼板を冷却する工程と、
上記冷却工程後の鋼板を冷間圧延する工程と、
上記冷間圧延工程後の鋼板を焼鈍する工程と、
上記焼鈍工程後の鋼板の表面に溶融亜鉛めっきする工程と、
上記溶融亜鉛めっき工程後のめっきされた鋼板を合金化炉で加熱して合金化処理を行う工程と
を備え、
上記合金化処理を行う工程が、
上記冷間圧延工程後の冷延鋼板の粒界酸化層の厚みに応じて上記合金化炉への入熱量を決定する手順を含み、
上記入熱量決定手順で、
上記粒界酸化層の厚みに応じて合金化温度又は合金化度を予測し、上記めっきされた鋼板が予測した合金化温度となるように上記合金化炉への入熱量を決定する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 上記入熱量決定手順で、
上記粒界酸化層の厚みと上記合金化炉におけるヒートパターンとに基づく予測式に基づいて上記合金化度を予測する工程、又は上記粒界酸化層の厚みと上記めっきされた鋼板の温度と上記めっきされた鋼板の放射率との関係式に基づいて上記合金化度を予測する請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 上記合金化処理を行う工程で、予測した上記合金化温度と実際の合金化温度との乖離又は予測した上記合金化度と実際の合金化度との乖離が生じた場合に、その乖離を補償するように上記合金化処理した鋼板の入熱量を調整する請求項1又は請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 上記合金化処理を行う工程で、上記めっきされた鋼板の幅方向及び長手方向における上記粒界酸化層の厚み分布に基づいて、上記合金化炉におけるヒートパターンを決定する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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