JP3704893B2 - 鋼板の酸洗装置および酸洗方法ならびに鋼板の溶融めっ き装置および溶融めっき方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱間圧延後の鋼板の酸洗装置および酸洗方法、ならびに熱間圧延後の鋼板の溶融めっき装置および溶融めっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延後の鋼板は、熱間圧延工程でその表面に不可避的に生成したスケールを除去した後、冷間圧延素材として冷間圧延設備、熱延下地溶融めっき鋼板素材として連続式溶融めっき設備等に送られ、あるいはそのまま脱スケール処理された熱延鋼板として販売される。
【0003】
熱間圧延後の鋼板の脱スケール処理は、一般に、塩酸などの酸を用いた酸洗処理により行われている。
【0004】
従来より行われている浸漬式塩酸酸洗設備による熱間圧延後の鋼板の脱スケール処理について、図6に示す酸洗設備の図を用いて説明する。
【0005】
熱間圧延された鋼板1は、コイルヤードで、およそ20〜72時間かけて、常温までに冷却された後、図6に示す酸洗ラインに装入され、入側のペイオフリール2から送り出され、溶接機3、ルーパー4、ブライドル装置5、スケールブレーカ6を経由して、塩酸の入った酸洗槽7に浸漬される。酸洗槽7内の塩酸に浸漬された鋼板1は、塩酸との化学反応により表層部のスケールが除去された後、水洗槽8で水洗され、出側のテンションリール9で巻き取られる。
【0006】
巻き取られた脱スケール後の鋼板1は、次いで、次工程の冷間圧延設備や連続式溶融めっき設備等に送られ、あるいはそのまま製品として販売される。
【0007】
酸洗槽7は、深さ500〜1000mm、長さ10〜20m程度の槽(1槽当たり)が5〜6槽設けられており、全長は約100m程度である。
【0008】
酸洗槽7内の塩酸が、高濃度・高温度であればあるほど、脱スケール性が向上することが知られている。しかし、装置あるいはコスト等の実用上の制約から、これらを無制限に高くすることはできず、一般的には、塩酸濃度4〜15wt%、塩酸温度80〜90℃程度が最適操業範囲とされている。
【0009】
従来より、生産性の向上・設備投資の抑制を狙って、機械的手段によって脱スケール性を向上させ、酸洗処理時間を短縮し、あるいは酸洗槽の長さを短くする技術の開発が盛んに行われている。
【0010】
例えば、酸洗槽入側にスケールブレーカを設置して、表層のスケールに割れを生じさせること(以下、スケールブレーキングという)により酸洗液の浸透を促す酸洗方法(特開昭56−160825号公報)、酸洗前工程において調質・冷間圧延等を行い、表層のスケールに割れを生じさせる方法(特開昭60−3912号公報、特開昭61−212419号公報、特開昭58−145307号公報)、ショットブラストにより上層のスケールを機械的に剥離した後、下層を酸洗する方法(特開昭61−130496号公報)、または酸洗槽内、複数の酸洗槽の中間部に、ブラシロール、曲げロール、圧延ロール等を単独であるいは組み合わせて配置する方法(特開昭62−252607号公報)が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記に提案される機械的手段による場合、設備費が高価な割に、酸洗処理時間の短縮効果あるいは酸洗槽の長さを短縮する効果が小さい。そのため、依然として、酸洗槽は、従来レベルと大差のない長大な設置スペースと膨大な建設費用を必要とするため、機械的手段による前記提案は、コスト面からみて、必ずしも有効な対策とはいえない。
【0012】
また、前記機械的手段によるスケールブレーキング法では、鋼板の溶接部近傍では、板破断の危険があるので、充分な脱スケール性向上効果を発揮できないため、酸洗処理後の鋼板長手方向の表面仕上がりに、むらが発生するという問題がある。
【0013】
さらに、従来より、酸洗設備入側のゴムロールの耐熱制約から、熱間圧延後の高温の鋼板をコイルヤードで常温に冷却した後、酸洗設備に装入しているが、冷却に長時間かかるため、酸洗処理前の中間在庫増によるコスト高を伴うという問題があるが、前記提案においては、この問題点については全く考慮されていない。
【0014】
また、前記したように、熱延下地溶融亜鉛めっき鋼板は、酸洗設備で酸洗処理による脱スケール後、連続式溶融めっき設備に送られて、溶融めっきされているが、酸洗設備を経ることは、コイル搬送コストならびに酸洗設備の操業コストの増大を伴う。酸洗処理による脱スケール処理と溶融めっきを同一設備で連続的に行うことができれば、熱延下地溶融めっき鋼板をより安価に製造することができることになる。したがって、酸洗設備が、連続式溶融めっき設備における溶融めっきの前処理として使用できるものであれば、製造コスト面から好都合である。
【0015】
本発明は、前記事情を考慮してなされたもので、設置スペースを小さくでき、設備費の低廉化、操業コストの低下が可能であるとともに、酸洗処理後の表面仕上がりの良好な鋼板を安定的に製造できる酸洗設備と酸洗方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、前記酸洗装置、酸洗方法を用いた鋼板の溶融めっき装置、溶融めっき方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
【0018】
(1)熱間圧延後の鋼板を酸洗処理する鋼板の酸洗装置において、酸洗槽の入側の搬送過程に、鋼板を冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせるスプレー水噴霧装置、前記スプレー水噴霧装置の前後に鋼板温度を測定する温度計、および前記温度計の検出信号に基いて、スプレー水噴霧装置の後の鋼板温度が目標鋼板温度になるようにスプレー水噴霧装置の冷却パターンを制御する制御装置を備えることを特徴とする鋼板の酸洗装置(以下、第1発明)。
【0019】
(2)前記(1)において、制御装置が、さらに、鋼板サイズが検出データ、または初期設定データとして入力され、これらの入力データに基いて、必要な冷却パターンを演算する演算部と、前記演算に基いて、スプレー水噴霧装置の冷却パターンの設定・動作を調整する制御部とを有する鋼板の酸洗装置(以下、第2発明)。
【0020】
(3)熱間圧延後の高温の鋼板を冷却した後、酸洗液に浸漬して酸洗処理するに際して、冷却前の温度が100〜400℃の範囲にある鋼板を、酸洗液の温度までスプレー水により急速冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせた後、酸洗液に浸漬して連続的に酸洗処理することを特徴とする脱スケール性に優れた鋼板の酸洗方法(以下、第3発明)。
(4)前記(3)において、前記スプレー水噴霧のスプレー圧が10kg/cm 2 以上であることを特徴とする請求項3に記載の脱スケール性に優れた鋼板の酸洗方法(以下、第4発明)。
【0021】
(5)連続溶融めっき装置の入側に、前記(1)または(2)記載の鋼板の酸洗装置を設けた鋼板の溶融めっき装置(以下、第5発明)。
【0022】
(6)熱間圧延後の鋼板を酸洗処理後、引き続いて連続する連続めっき工程に導入して、亜鉛または亜鉛系合金を溶融めっきする方法において、100〜400℃の温度範囲にある鋼板を、酸洗液の温度までスプレー水により急速冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせた後、酸洗液に浸漬して酸洗処理し、引き続いて連続する連続めっき工程に導入して、亜鉛または亜鉛系合金を溶融めっきすることを特徴とする鋼板の溶融めっき方法(以下、第6発明)。
(7)前記(6)において、前記スプレー水のスプレー圧が10kg/cm 2 以上であることを特徴とする鋼板の溶融めっき方法(以下、第7発明)。
【0023】
以下、本発明について、さらに説明する。
熱間圧延後の高温の鋼板をスプレー水で急速冷却すると、鋼板母材の表層のスケールは、急激な熱衝撃により界面にクラックが生じるとともに母材とスケールの熱収縮差により剥離する。以下に説明するように、クラックの程度は、鋼板と液相(冷却水)間での熱移動や両者の界面での物質移動(冷却水、蒸気の移動)の状態と関係している。
【0024】
高温の鋼板を水冷すると、両者の温度差に応じて3段階の沸騰現象が現れる。鋼板の温度が比較的低温の第一段階の温度域では核沸騰状態が出現する。核沸騰状態においては、鋼板の表面全体から気泡が発生し、表面と液相間の熱および界面での物質の移動が活発に行われる。鋼板の温度がこれより高い第二段階の温度域では遷移沸騰状態に移行する。遷移沸騰状態では、鋼板表面の大部分から連続的に気泡が発生するとともに、鋼板表面が部分的に蒸気膜によって覆われるようになり、表面と液相間の熱および界面での物質の移動が核沸騰時よりも鈍くなる。鋼板温度がさらに高温の第三段階の温度域では膜沸騰状態に移行する。膜沸騰状態では鋼板の全表面が蒸気膜に覆われることになり、熱および物質の移動が妨げられ、遷移沸騰状態よりさらに鈍くなる。
【0025】
クラックが多いと酸洗処理の際の脱スケール性が向上する。そこで、熱間圧延した高温の低炭素鋼板を、塩酸酸洗の酸洗液の温度に相当する80℃までスプレー水で急速冷却し、冷却開始温度と冷却後のスケールのクラック発生状況の関係について調査した。
【0026】
スケールのクラック発生状況の調査は、冷却後の鋼板断面を顕微鏡で目視観察し、同一条件で熱間圧延後室温まで冷却し、伸長率1.5%のスキンパスを施した鋼板のクラック発生状態を基準(評価1)にして、この鋼板に対するクラックの増加程度に応じて、評価1〜5の5段階に評価した。調査結果を図1に示す。
【0027】
冷却開始温度が100℃以上では、急速冷却による熱衝撃により、スケールにクラックが発生する。冷却開始温度が高くなるほど、クラック発生が著しくなる。また、スプレー水圧が高いと急速冷却の効果が向上し、クラック発生がより顕著になる。図1から、好ましい冷却開始温度は200℃以上、より好ましくは300℃以上であり、また、スプレー水圧は10kg/cm2 以上であることが好ましい。
【0028】
図1の場合、鋼板温度は100〜400℃、冷却水の水温は10〜30℃レベルであるから、遷移〜核沸騰領域にある。前記したように遷移沸騰領域では、鋼板表面に一部蒸気膜が形成されるため、蒸気膜が形成された場所で熱移動が鈍化して、クラック発生が阻害される。この蒸気膜を界面から速やかに排除すれば、熱移動の鈍化を防止することができる。スプレー水圧が10kg/cm2 になると、形成された蒸気膜が速やかに破壊され、鋼板表面と液相間の熱移動および界面での物質移動が鈍くなることが防止されたことにより、クラック発生がより顕著になったものと考えられる。鋼板温度が高温の領域でスプレー水圧を高くすることが、クラック発生効果を高める上で有効なので、スプレー水噴霧装置前段のスプレー水圧を10kg/cm2 以上にすることが好ましい。
【0029】
本発明は、この知見に基くものである。第1発明では、酸洗槽の入側の搬送過程に、鋼板を冷却するスプレー水噴霧装置、前記スプレー水噴霧装置の前後に鋼板温度を測定する温度計、および前記温度計の検出信号に基いて、スプレー水噴霧装置の後の鋼板温度が目標鋼板温度になるようにスプレー水噴霧装置の冷却パターンを制御する制御装置を備えるので、鋼板を所定温度に急速冷却できる。
【0030】
第2発明では、制御装置が、さらに、鋼板サイズが検出データ、または初期設定データとして入力され、これらの入力データに基いて、必要な冷却パターンを演算する演算部と、前記演算に基いて、スプレー水噴霧装置の冷却パターンの設定・動作を調整する制御部とを有するので、冷却後の鋼板温度の制御性がより向上する。
【0031】
第1発明、第2発明の装置は、第3発明、第4発明の鋼板の酸洗方法の実施の際に用いる装置として好適である。
【0032】
次に第3発明について説明する。第3発明において、冷却前の鋼板温度を100〜400℃、急速冷却後の鋼板温度を酸洗液の温度範囲に限定したのは、下記の理由による。
【0033】
通常、熱間圧延機で圧延された鋼板の巻き取り温度は500〜700℃の範囲である。しかし、次工程の酸洗設備に送られる搬送途上で、鋼板は冷却されて温度降下するので、酸洗設備に装入する鋼板を400℃から冷却開始できれば、酸洗処理前の中間在庫の削減効果を充分大きくでき、また、冷却開始温度が400℃を超えると、急速冷却により材質が劣化する材料があることを考慮して、冷却開始温度の上限を400℃に限定した。
【0034】
冷却開始温度の下限を100℃としたのは、100℃以上の温度域から急速冷却すると、急速冷却によるクラック発生効果が認められることによる。クラック発生効果を高める上で、好ましい冷却開始温度は200℃以上、より好ましくは300℃以上である。
【0035】
冷却終点温度については、酸洗反応(化学反応)促進のため、酸洗液と同等の温度レベルが必要であるため、酸洗液の温度に限定した。
【0036】
スプレー水による急速冷却の目的は、前記した酸洗設備入側部で、テンションレベラー、スキンパス等を設置した機械的手段によるスケールブレーキングと同じであるが、スプレー水による急速冷却は、前記機械的手段のような大幅な設備改造・投資を必要とせず、また機械的手段よりもクラックを発生する効果が優れる。したがって、酸洗装置の設置スペースを小さくでき、設備コストを低廉化できる。
【0037】
また、溶接部近傍やサイズ替え等の特異点においても、均一にクラックを発生させることができるので、酸洗処理後の鋼板長手方向の表面仕上がりむらを低減できる。
【0038】
酸洗槽に浸漬する鋼板温度が酸洗液温度範囲内なので、従来法に見られる低温の鋼板浸漬に起因する酸洗液の加熱が不要になり、操業コストを低減できる。
【0039】
さらに、本発明では、100〜400℃の熱間圧延後の高温の鋼板を、酸洗装置入側のゴムロールに到達前に、所定温度まで冷却するので、従来のように、ゴムロールの耐熱性が問題になることがない。また、酸洗設備装入前の長時間の冷却が不要になるので、中間在庫の削減とそのための置き場を削減できるという効果がある。
【0040】
前記酸洗処理は、酸洗設備をコンパクトにできるだけでなく、溶接部近傍においても良好な脱スケール効果を得ることができる。したがって、連続式溶融めっき設備のめっき装置の前に前記酸洗装置を設け(第5発明)、脱スケールしてない熱間圧延した鋼板を連続式溶融めっき設備に装入して脱スケールし、引続き後続するめっき設備で溶融めっきすれば、鋼板長手方向の表面品質の良好なめっき鋼板を得ることができる。また、酸洗ラインを経ることが不要になるので、前記鋼板を安価に製造できる(第6発明、第7発明)。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0042】
浸漬式塩酸酸洗設備における本発明の実施の形態を、図2および図3を用いて説明する。
【0043】
図2は、酸洗ラインの要部を示す模式図である。図2において、2はペーオフリール、3は溶接機、4はルーパー、5はブライドルロール、7は酸洗槽、8は水洗槽、9はテンションリールである。
【0044】
13は冷却前の鋼板温度を測定するための温度計で、ペイオフリール2に近接して設けられ、巻き戻される鋼板1の温度を非接触で連続的に検出できるようになっている。14は、酸洗槽7とペーオフリール2の間に設けられたスプレー水噴霧装置である。
【0045】
スプレー水噴霧装置14の要部を図3に示す。図3において、21aは幅狭鋼板用スプレーヘッダー、21bは幅広鋼板用スプレーヘッダーである。幅狭鋼板用スプレーヘッダー21a、幅広鋼板用スプレーヘッダー21bは、それぞれ、パスライン上下の鋼板幅方向に延在し、鋼板走行方向に複数配設され、各スプレーヘッダー21a、21bは、おのおの電磁弁22a、22bを備える。23はメインヘッダー、24は加圧ポンプ、25は圧力調節弁である。
【0046】
加圧ポンプ24で加圧された冷却水は、メインヘッダー23を経て、各スプレーヘッダー21aまたは21bから鋼板に噴霧される。
【0047】
電磁弁22a、22bを操作して、冷却する鋼板幅に応じて、幅狭鋼板用スプレーヘッダー21aまたは幅広鋼板用スプレーヘッダー21bを選択して、スプレー水のスプレー幅を調整できるようになっている。スプレーヘッダーのスプレー水圧は、ポンプ24出側の圧力調節弁25で調整でき、また10kg/cm2 以上のスプレー水圧に調整できるようになっている。スプレー水量は、前記スプレー水圧および電磁弁22aまたは22bを操作して、スプレーヘッダーのスプレー段数を調整して制御できるようになっている。
【0048】
15は水冷後の鋼板温度を測定する温度計で、酸洗槽7の入側直前で、かつパスラインの上方に設けられ、通過中の鋼板1の温度を非接触で連続的に検出できるようになっている。
【0049】
温度計15のすぐ下流側には酸洗槽7が設けられている。酸洗槽7の中には液温度80〜90℃に調整された濃度4〜8wt%の塩酸が入っている。
【0050】
温度計13、15が演算部16の入力側に接続されている。演算部16の入力側には、この他に鋼板サイズ、ピンチロール11の軸端に取り付けられた回転数計(PLG)18、酸洗液温度センサー19が接続されている。
【0051】
演算部16では、鋼板サイズ、回転数計(PLG)18の出力から演算した鋼板走行速度、酸洗液温度センサー19および温度計13で検出した冷却前の鋼板温度に基いて、スプレー水噴霧装置14の冷却パターン(スプレー幅、スプレー段数、スプレー水量)を演算して求める。
【0052】
鋼板サイズは、酸洗装置の入側に設けた板厚計、板幅計の検出データであってもよいし、生産管理用計算機から送られたデータに基く初期設定データであってもよい。
【0053】
演算部16は、演算結果を制御部17に入力し、制御部17は、入力にしたがって、スプレー水噴霧装置の冷却パターン(スプレー幅、スプレー段数、スプレー水量)を設定し、動作させる。
【0054】
また、温度計15で検出した冷却後の鋼板温度と酸洗液温度センサー19で検出した酸洗液温度との偏差情報に基いて、必要な冷却パターンの修正を演算し、制御部17で冷却パターンを調整するフィドバック制御を行う。
【0055】
このように冷却パターンを制御することにより、鋼板サイズや鋼板走行速度が変化しても、それに合わせた冷却パターンの制御を行うことが可能になる。
【0056】
次に前記浸漬式塩酸酸洗設備において、熱間圧延した鋼板を連続的に酸洗処理する場合について述べる。
【0057】
熱間圧延機で圧延された鋼板1は、特に限定するものではないが、通常500〜700℃の範囲でコイルに巻き取られ、浸漬式塩酸酸洗設備に搬送される。
【0058】
酸洗設備では、100〜400℃の範囲の鋼板1を、入側設備のペイオフリール1に装着し、スプレー水噴霧装置14において、100〜400℃の範囲の鋼板1を、酸洗液の温度80〜90℃の範囲にスプレー水で冷却し、鋼板表層のスケールにクラックを形成した後、溶接機3、ルーパー4等を経由して酸洗槽7に浸漬する。酸洗槽7内には、温度80〜90℃で濃度4〜8wt%の塩酸溶液が入っており、脱スケールされる。
【0059】
鋼板1を100〜400℃の範囲からスプレー水で急速冷却すると、鋼板1の表層のスケールに熱衝撃によりクラックが発生し、酸洗処理において、酸洗液の浸透してスケール剥離が効果的に行えるようになり、脱スケール反応が著しく促進され、酸洗処理時間が短縮でき、また、酸洗処理後の仕上がりが良好で表面性状に優れた鋼板を製造することができる。酸洗処理時間の短縮に伴い、酸洗設備をコンパクトにすることができる。
【0060】
なお、以上の説明は、浸漬式塩酸酸洗についての場合であるが、本発明はこれに限定されず、例えば浸漬式硫酸酸洗の場合にも同様の効果を発揮できる。
【0061】
また、本発明の技術は金属材料全般にわたる脱スケール処理に応用することが可能である。
【0062】
次に、連続式溶融めっき設備のめっき装置の前に、前記酸洗装置を設けた場合の発明の実施の形態について、図4を用いて説明する。
【0063】
図4に示す装置の構成は、従来の溶融めっき設備の前に、図2に示した酸洗装置を設けた場合である。図4において、31はコイラー、32は連続溶融めっき装置で、焼鈍炉33とめっき槽34を備える。35は溶融亜鉛または溶融亜鉛合金からなるめっき浴である。連続めっき装置32の前に、図2に示した酸洗装置が設けられており、図2に示した部分と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0064】
溶融連続式溶融めっき設備において、100〜400℃の温度範囲にある脱スケールされていない熱間圧延された鋼板1が、コイラー31から繰り出され、スプレー水噴霧装置14で酸洗液の温度まで冷却された後、酸洗槽7で脱スケールされ、後続する所定の還元性雰囲気を保った焼鈍炉33内で還元焼鈍され、その雰囲気を保ったまま溶融亜鉛または溶融亜鉛系合金からなるめっき浴35に浸漬して連続的に溶融めっきが施される。還元焼鈍、溶融めっきは常法によることができる。
【0065】
溶接部近傍を含めて、酸洗処理後の仕上がりが良好で表面性状に優れるので、引き続いて施される溶融めっき後に、鋼板長手方向の表面仕上がりむらのない良好な表面外観の熱延下地溶融めっき鋼板が得られる。また酸洗設備を経ることが不要になるので、前記鋼板を従来より安価に製造できる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
本発明の効果を図5により説明する。図5において、脱スケール時間は、従来例の脱スケール所要時間を基準(100%)とし、異なる脱スケール法における脱スケール所要時間の比率(%)で評価した。
【0067】
なお、図5において、従来例は、温度30℃の熱間圧延した鋼板を、濃度8.0wt%、温度80℃の塩酸酸洗により酸洗処理する従来法の脱スケールである。スキンパス(比較例)は、従来例と同様の鋼板を、酸洗前に伸長率1.5%の調質圧延を施した後、テンレベ(比較例)は、従来例と同様の鋼板を酸洗前にテンションレベラーにより伸び率3.0%の歪みを付与して、スケールブレーキングを行った後、いずれも従来例と同様の塩酸酸洗を行い、脱スケールした場合である。
【0068】
本発明例は、図2に示した本発明の酸洗装置を用いて、温度300℃の鋼板をスプレー水冷して塩酸温度の80℃まで冷却した後、従来例と同様の塩酸酸洗を行い、脱スケールした場合である。
【0069】
本発明例は、従来例に比べて脱スケール時間が10%短縮され、比較例に比べて脱スケール時間が5〜7%短縮されている。
【0070】
また、本発明例は、溶接部近傍においても充分に脱スケールできるので、鋼板長手方向の表面仕上がりむらの発生がなかった。一方、従来例や比較例では、溶接部近傍においては充分に脱スケールできないので、鋼板長手方向の表面仕上がりむらが発生した。
【0071】
(実施例2)
実施例1で脱スケール処理した鋼板の溶接部近傍および鋼板長手方向の中間部から採取した試験材に、溶融亜鉛めっき(めっき浴組成はAlが0.16wt%で残部Zn、めっき浴温は465℃、めっき付着量は両面で150g/m2 以上)を行い、めっき後の表面外観を調査した。
【0072】
本発明例、従来例の試験材は、中間部、溶接部近傍のいずれも、めっき後に不メッキ等の発生がなく、表面外観が良好であった。一方、比較例(スキンパス、テンレベ)は、中間部の試験材の表面外観は良好だったが、溶接部近傍の試験材に不めっきが発生し、表面外観が不良であった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果がある。
【0074】
(1)脱スケール速度を向上できるので、酸洗処理時間の短縮が可能になり、酸洗槽数の減少が可能になり、設備費の低廉化効果を得ることができる。
【0075】
(2)溶接部近傍においても、脱スケール性に優れるので、脱スケール後の鋼板長手方向の表面仕上がりむらのない良好な表面の鋼板を得ることができる。
【0076】
(3)酸洗槽に浸漬する鋼板温度が酸洗液温度と等しいので、従来法に見られる低温の鋼板浸漬に起因する酸洗液の加熱が不要になり、操業コストを低減できる。
【0077】
(4)高温の鋼板を酸洗ラインに装入するので、酸洗設備前の中間在庫品の量とそのための置き場を低減できる。
【0078】
(5)酸洗装置をコンパクトにでき、また溶接部近傍の脱スケール性に優れるので、連続式溶融めっき設備のめっき処理前の脱スケールに用いることができる。連続式溶融めっき設備のめっき処理の前に、本発明の酸洗処理を行った後、溶融めっきを行うと、鋼板長手方向の表面外観の良好なめっき鋼板を得ることができ、また、酸洗ラインを経ることが不要になるので、前記鋼板を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の冷却開始温度、スプレー水圧とクラック発生状況の関係を示す図。
【図2】本発明の鋼板の酸洗装置および酸洗方法の実施の形態を説明する酸洗ラインの要部を示す模式図。
【図3】図2の酸洗ラインに用いたスプレー水噴霧装置の要部を示す図。
【図4】本発明の鋼板の溶融めっき装置および溶融めっき方法の実施の形態を説明する連続式溶融めっき設備の要部を示す模式図。
【図5】本発明の脱スケール性向上効果を示す図。
【図6】従来の酸洗装置を示す模式図。
【符号の説明】
1 鋼板
2 ペイオフリール
3 溶接機
4 ルーパー
5 ブライドル
6 スケールブレーカ
7 酸洗槽
8 水洗槽
9 テンションリール
13 温度計
14 スプレー水噴霧装置
15 温度計
16 演算部
17 制御部
21a、21b スプレーヘッダー
22a、22b 電磁弁
24 加圧ポンプ
25 圧力調節弁
31 コイラー
32 めっき装置
33 還元焼鈍炉
34 めっき槽
35 めっき浴
Claims (7)
- 熱間圧延後の鋼板を酸洗処理する鋼板の酸洗装置において、酸洗槽の入側の搬送過程に、鋼板を冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせるスプレー水噴霧装置、前記スプレー水噴霧装置の前後に鋼板温度を測定する温度計、および前記温度計の検出信号に基いて、スプレー水噴霧装置の後の鋼板温度が目標鋼板温度になるようにスプレー水噴霧装置の冷却パターンを制御する制御装置を備えることを特徴とする鋼板の酸洗装置。
- 制御装置が、さらに、鋼板サイズが検出データ、または初期設定データとして入力され、これらの入力データに基いて、必要な冷却パターンを演算する演算部と、前記演算に基いて、スプレー水噴霧装置の冷却パターンの設定・動作を調整する制御部とを有することを特徴とする請求項1記載の鋼板の酸洗装置。
- 熱間圧延後の高温の鋼板を冷却した後、酸洗液に浸漬して酸洗処理するに際して、冷却前の温度が100〜400℃の範囲にある鋼板を、酸洗液の温度までスプレー水により急速冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせた後、酸洗液に浸漬して連続的に酸洗処理することを特徴とする脱スケール性に優れた鋼板の酸洗方法。
- 前記スプレー水のスプレー圧が10kg/cm 2 以上であることを特徴とする請求項3に記載の脱スケール性に優れた鋼板の酸洗方法。
- 連続溶融めっき装置の入側に、請求項1または請求項2記載の鋼板の酸洗装置を設けたことを特徴とする鋼板の溶融めっき装置。
- 熱間圧延後の鋼板を酸洗処理後、引き続いて連続する連続めっき工程に導入して、亜鉛または亜鉛系合金を溶融めっきする方法において、100〜400℃の温度範囲にある鋼板を、酸洗液の温度までスプレー水により急速冷却して鋼板表層のスケールにクラックを生じさせた後、酸洗液に浸漬して酸洗処理し、引き続いて連続する連続めっき工程に導入して、亜鉛または亜鉛系合金を溶融めっきすることを特徴とする鋼板の溶融めっき方法。
- 前記スプレー水のスプレー圧が10kg/cm 2 以上であることを特徴とする請求項6に記載の鋼板の溶融めっき方法。
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JP17850197A JP3704893B2 (ja) | 1997-07-03 | 1997-07-03 | 鋼板の酸洗装置および酸洗方法ならびに鋼板の溶融めっ き装置および溶融めっき方法 |
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