JPH0615786A - 織布を仮貼りした複合シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 合成樹脂フィルムの表面処理時における寸法
安定性を確保しつつ、貼合わせ時および剥離時の不具合
をなくす。 【構成】 合成樹脂フィルム１の片面に耐熱性を有する
織布２を剥離可能に仮貼りする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、織布を仮貼りした複合
シートに関し、特に化粧材として用いられる合成樹脂フ
ィルムの印刷時および熱処理時等における寸法安定性を
確保するための対策に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、家具および家電用キャビネッ
ト等の表面層を構成する化粧材として、汎用樹脂である
ポリ塩化ビニルからなるフィルムが一般によく用いられ
ている。このポリ塩化ビニルフィルムには印刷等の表面
処理が施されるが、この際、ポリ塩化ビニルフィルムに
張力がかかったり、溶剤が浸透したりする。また、ポリ
塩化ビニルフィルムは他のフィルムと熱ラミネートする
際等に高温雰囲気下に置かれる。このため、ポリ塩化ビ
ニルフィルムの寸法安定性が悪くなって表面処理し難く
なる。

【０００３】一方、ポリ塩化ビニルフィルムの片面に耐
熱性および寸法安定性を有するポリエステル製等の支持
フィルムを一体に貼り合わせることにより、ポリ塩化ビ
ニルフィルムの表面処理時における変形を支持フィルム
で抑制してポリ塩化ビニルフィルムの寸法安定性の向上
を図るようにした複合シートが提案されている。

【０００４】しかし、この複合シートでは、表面処理後
も支持フィルムがポリ塩化ビニルフィルムに一体に貼り
合わされていることから、ポリ塩化ビニルフィルムの柔
軟性が支持フィルムによって阻害され、真空成形等の加
工に支障をきたすこととなる。

【０００５】そこで、例えば特開平４―５０３６号公報
に開示されているように、ポリエステル製の支持フィル
ムをポリ塩化ビニルフィルムに一体に貼り合わせるので
はなく、剥離可能に仮貼りすることにより、ポリ塩化ビ
ニルフィルムの表面処理時にはその変形を支持フィルム
で抑制してポリ塩化ビニルフィルムの寸法安定性を良く
する一方、真空成形等の加工時には支持フィルムをポリ
塩化ビニルフィルムから剥離してポリ塩化ビニルフィル
ムの本来の柔軟性を回復して加工性を改善するようにし
た複合シートが開発されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の公報
例の複合シートでは、次のような問題点がある。すなわ
ち、 支持フィルムが硬く伸びが少ないため、ポリ塩化ビ
ニルフィルムの貼合わせ時における張力コントロールが
難しく、かつポリ塩化ビニルフィルムに皺が入り易くな
って加工し難い。また、ポリ塩化ビニルフィルムの位置
決めが難しく、支持フィルムとの間で幅ずれが起こり易
くなる。

【０００７】 支持フィルムに衝撃が加わったり切傷
が入ると、切れたり裂けたりし易い。

【０００８】 切断した場合、接続が難しい。また、
接続後に張力がかかると接続部分から直ぐに切断する。

【０００９】 貼合わせ時にエアが入り易い。

【００１０】 表面処理後に支持フィルムをポリ塩化
ビニルフィルムから剥離する時、大きな音が発生した
り、静電気が発生し易い。また、剥離した支持フィルム
の巻きずれのコントロールが難しい。

【００１１】本発明はかかる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、支持フィルムに替え
て別のものを採用することにより、ポリ塩化ビニルフィ
ルム等の合成樹脂フィルムの表面処理時における寸法安
定性を確保しつつ、上記〜の問題点を解決せんとす
ることにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の第１の解決手段は、合成樹脂フィルムの片
面に耐熱性を有する織布を剥離可能に仮貼りしたことを
特徴とする。

【００１３】本発明の第２の解決手段は、第１の解決手
段において、織布をポリエステル繊維で構成したことを
特徴とする。

【００１４】本発明の第３の解決手段は、第１の解決手
段において、合成樹脂フィルムをポリ塩化ビニルフィル
ムで構成したことを特徴とする。

【００１５】本発明の第４の解決手段は、第１の解決手
段において、合成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面に
織布を構成する経糸および緯糸によってその織目に対応
した凹凸を形成していることを特徴とする。

【００１６】本発明の第５の解決手段は、第４の解決手
段において、合成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面に
形成された凹凸の高低差を５〜２０μｍにしたことを特
徴とする。

【００１７】

【作用】上記の構成により、本発明の第１〜３の解決手
段では、支持フィルムの替わりに用いた織布により、合
成樹脂フィルムの表面処理時における変形が抑制されて
その寸法安定性が良くなる。また、織布の適度の伸びと
柔らかさとにより、合成樹脂フィルムの貼合わせ時にお
ける張力コントロールが容易になり、かつ合成樹脂フィ
ルムに皺が入り難くなり、加工し易くなる。さらに、合
成樹脂フィルムの位置決めが容易になり、織布との間で
幅ずれが起こり難くなる。

【００１８】さらに、織布自体に備わる優れた引張強度
および引裂強度により、衝撃が加わったり切傷が入って
も、切れたり裂けたりし難い。万一、切断しても、ミシ
ン等によって簡単にかつ強固に接続可能である。

【００１９】また、貼合わせ時、合成樹脂フィルムと織
布との間のエアが織布の織目から外部に逃げ、両者の間
にエアが介在しない。

【００２０】さらにまた、織布の柔軟性により、表面処
理後に織布を合成樹脂フィルムから剥離する時、スムー
ズに剥離して剥離音が小さく、かつ静電気が発生し難
い。また、剥離後の織布はロール状に簡単に巻かれ、巻
きずれが生じ難い。さらに、剥離後の織布は上述の如く
損傷し難く、複数回の繰返し使用により経済的なものと
なる。

【００２１】本発明の第４及び第５の解決手段では、合
成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面に織布の織目に対
応して形成された凹凸により、ロール状に巻き取った状
態において相隣る層との接触が少なくなってベタ付か
ず、加工時の巻取体からの展開が容易になる。

【００２２】また、２次加工時、基材に貼り合わせるた
めに合成樹脂フィルムの凹凸面に塗布した接着剤が凹凸
面の凹部に十分に供給されて濡れが良くなり、強固な接
着性が得られる。

【００２３】さらに、加熱加圧して貼り合わせる場合
も、凹凸面がいわゆるアンカー効果を果たし、基材との
食込みが大きくなって強固な接着性が得られる。

【００２４】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。

【００２５】図１は本発明の実施例に係る複合シートＡ
を示し、１はポリ塩化ビニルフィルム等からなる合成樹
脂フィルム、２はポリエステル繊維等からなる耐熱性を
有する平織織布であり、該織布２を上記合成樹脂フィル
ム１の片面に剥離可能に仮貼りすることによって上記複
合シートＡが構成されている。そして、この複合シート
Ａはこの貼合わせ状態で印刷等の表面処理に供され、上
記合成樹脂フィルム１に表面処理が施される。

【００２６】この表面処理の例としては、例えば図３に
示すように、複合シートＡの合成樹脂フィルム１にアク
リル塗料やウレタン塗料等をコーティングしてコーティ
ング層３を形成したり、図５に示すように、複合シート
Ａの合成樹脂フィルム１に印刷層４を形成し、さらにそ
の上にアクリル塗料やウレタン塗料等をコーティングし
てコーティング層３を形成するのである。

【００２７】また、図２に示すように、上記合成樹脂フ
ィルム１の織布２との貼合わせ面には、織布２を構成す
る経糸５および緯糸６によってその織目に対応した凹凸
７が格子状に形成されている。そして、この合成樹脂フ
ィルム１の織布２との貼合わせ面に形成された凹凸７の
高低差ｈは５〜２０μｍに設定されている。この凹凸７
の高低差ｈを５〜２０μｍに設定したのは、５μｍ未満
では凹凸７の高低差ｈが小さ過ぎ、ロール状に巻き取っ
た状態において相隣る層との接触が多くなって、特に軟
質フィルムの場合、フィルム同士のベタ付きが大きく、
加工後の巻取体からの展開がし難くなるとともに、加工
時、基材に貼り合わせるために合成樹脂フィルム１の凹
凸７面に塗布した接着剤の凹凸７面の凹部への供給量が
少なくなって濡れが悪くなり、強固な接着性を得ること
ができなくなるからである。一方、凹凸７の高低差ｈが
２０μｍを超えると凹凸７の凹部への接着剤の供給量が
多くなり過ぎて接着剤の塗布ムラができ、均一な接着性
を得ることができなくなるからである。

【００２８】上述の如く合成樹脂フィルム１に表面処理
が施された複合シートＡは、加工時、合成樹脂フィルム
１から織布２が剥離され（図４および図６参照）、基材
に貼り合わせられる。なお、織布２にシリコン等の離型
剤を塗布すれば合成樹脂フィルム１からの剥離をスムー
ズに行うことができる。

【００２９】このように、本実施例では、合成樹脂フィ
ルム１の片面に織布２を剥離可能に仮貼りしていること
から、合成樹脂フィルム１の寸法安定性を良くすること
ができる。また、上記織布２は適度の伸びと柔らかさと
を有することから、合成樹脂フィルム１の貼合わせ時に
おける張力コントロールを容易に行うことができ、かつ
合成樹脂フィルム１に皺が入り難くすることができ、加
工し易くすることができる。さらに、合成樹脂フィルム
１の位置決めを容易にでき、織布２との間での幅ずれを
起こり難くすることができる。

【００３０】さらに、上記実施例では、織布２は優れた
引張強度および引裂強度を備えていることから、衝撃が
加わったり切傷が入っても、切れたり裂けたりし難く、
万一、切断しても、ミシン等によって簡単にかつ強固に
接続することができる。

【００３１】また、上記実施例では、貼合わせ時、合成
樹脂フィルム１と織布２との間のエアを織布２の織目か
ら外部に逃がすことができ、両者の間へのエアの介在を
なくすことができる。

【００３２】さらにまた、上記実施例では、織布２は柔
軟性を有することから、表面処理後に織布２を合成樹脂
フィルム１から剥離する時、スムーズに剥離でき剥離音
を小さくすることができ、かつ静電気を発生し難くする
ことができる。また、剥離後、織布２をロール状に簡単
に巻くことができ、巻きずれを生じ難くすることができ
る。さらに、剥離後、織布２は上述の如く損傷し難いの
で、複数回、繰り返して使用することができ経済的であ
る。

【００３３】加えて、上記実施例では、合成樹脂フィル
ム１の織布２との貼合わせ面に織布２の織目に対応して
凹凸７を形成していることから、ロール状に巻き取った
状態において相隣る層との接触を少なくできてベタ付き
を防止することができ、加工時の巻取体からの展開を容
易に行うことができる。また、２次加工時、基材に貼り
合わせるために合成樹脂フィルム１の凹凸７面に塗布し
た接着剤を凹凸７面の凹部に十分に供給し得て濡れを良
くすることができ、強固な接着性を得ることができる。
さらに、加熱加圧して貼り合わせる場合において、凹凸
７面でいわゆるアンカー効果を出すことができ、基材と
の食込みを大きくし得て強固な接着性を得ることができ
る。

【００３４】次に、本発明の実施例をさらに具体的に説
明する。

【００３５】図７に示すように、ポリ塩化ビニル１０を
逆Ｌ形に配置された４本のカレンダーロール１１，１
１，…に供給し、可塑剤量２０phr 、厚み０．１mm、幅
１００cmのポリ塩化ビニルフィルムからなる合成樹脂フ
ィルム１をカレンダ加工する。この際、合成樹脂フィル
ム１の下方からテトロンタフタ（（５０ｄ×１５２本）
／（７５ｄ×９７本））からなる織布２を予熱ドラム１
２を経て圧着ロール１３とバッキンングロール１４との
間に供給し、該両ロール１３，１４で合成樹脂フィルム
１と織布２とを圧着して合成樹脂フィルム１の片面に織
布２が剥離可能に仮貼りされた複合シートＡを得、該複
合シートＡを５本の冷却ロール１５，１５，…を通過す
る間に冷却して巻き取った。

【００３６】図８に示すように、この複合シートＡを押
えロール１６とスクイズロール（１００メッシュのクラ
ビアロール）１７との間に供給して塗料（固形分３０
％、ＭＥＫおよびトルエンを主体とした混合溶剤）１８
を合成樹脂フィルム１に１００μｍの厚さに塗布し、こ
れを乾燥炉１９に導いて１５０℃で２分間加熱乾燥し、
図３に示すように、複合シートＡの合成樹脂フィルム１
側にコーティング層３を形成した後、冷却ロール２０で
冷却して巻き取った。このときの複合シートＡの幅方向
の収縮量は２cmであった。

【００３７】図９に示すように、コーティング層３が形
成された複合シートＡを中央の巻返機２１にセットし、
複数のガイドロール２２，２２，…を経て左右の巻取機
２３，２３にコーティング層３を有する合成樹脂フィル
ム１と織布２とに分離して巻き取った。このときの剥離
強度は約５０g/cmであった。また、合成樹脂フィルム１
の裏面に織布２の織目に相当して凹凸７が形成されてい
た。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１〜３に係
る本発明によれば、合成樹脂フィルムの片面に耐熱性を
有する織布を剥離可能に仮貼りしたので、合成樹脂フィ
ルムの寸法安定性を保持しつつ、織布の適度の伸びと柔
らかさとによって合成樹脂フィルムの貼合わせ時におけ
る張力コントロールを容易にでき、かつ合成樹脂フィル
ムに皺を入り難くでき、加工し易くすることができる。
また、合成樹脂フィルムの位置決めを容易にでき幅ずれ
を起こり難くすることができる。さらに、織布自体に備
わる優れた引張強度および引裂強度によって切断や引裂
きを防止でき、万一、切断しても、ミシン等によって簡
単にかつ強固に接続することができる。また、貼合わせ
時、合成樹脂フィルムと織布との間のエアを織布の織目
から外部に逃がして、両者間へのエアの介在をなくすこ
とができる。さらにまた、織布をその柔軟性によって合
成樹脂フィルムからスムーズに剥離でき剥離音を小さく
することができ、かつ静電気を発生し難くすることがで
きる。また、剥離後の織布をロール状に簡単に巻くこと
ができ、巻きずれを生じ難くすることができる。さら
に、剥離後の織布が上述の如く損傷し難いので、複数
回、繰返し使用できて経済的なものとすることができ
る。

【００３９】請求項４及び５に係る本発明によれば、合
成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面に織布を構成する
経糸および緯糸によってその織目に対応した凹凸を形成
したので、ロール状に巻き取った状態において相隣る層
との接触を少なくできてベタ付きを防止でき、加工時の
巻取体からの展開を容易にすることができる。また、２
次加工時、基材に貼り合わせるために合成樹脂フィルム
の凹凸面に塗布した接着剤を凹凸面の凹部に十分に供給
できて濡れを良くすることができ強固な接着性を得るこ
とができるとともに、加熱加圧して貼り合わせる場合
も、凹凸面のアンカー効果によって強固な接着性を得る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】合成樹脂フィルム単体に織布を仮貼りした複合
シートの縦断面図である。

【図２】織布剥離後の合成樹脂フィルム単体の縦断面図
である。

【図３】コーティング層を有する合成樹脂フィルムに織
布を仮貼りした複合シートの縦断面図である。

【図４】織布剥離後のコーティング層を有する合成樹脂
フィルムの縦断面図である。

【図５】印刷層およびコーティング層を有する合成樹脂
フィルムに織布を仮貼りした複合シートの縦断面図であ
る。

【図６】織布剥離後の印刷層およびコーティング層を有
する合成樹脂フィルムの縦断面図である。

【図７】合成樹脂フィルムと織布との貼合わせ工程図で
ある。

【図８】複合シートの表面処理工程図である。

【図９】複合シートの剥離工程図である。

【符号の説明】 １ 合成樹脂フィルム ２ 織布 ５ 経糸 ６ 緯糸 ７ 凹凸 Ａ 複合シート

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 合成樹脂フィルムの片面に耐熱性を有す
   る織布を剥離可能に仮貼りしたことを特徴とする織布を
   仮貼りした複合シート。
2. 【請求項２】 織布がポリエステル繊維からなることを
   特徴とする請求項１記載の織布を仮貼りした複合シー
   ト。
3. 【請求項３】 合成樹脂フィルムがポリ塩化ビニルフィ
   ルムからなることを特徴とする請求項１記載の織布を仮
   貼りした複合シート。
4. 【請求項４】 合成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面
   に織布を構成する経糸および緯糸によってその織目に対
   応した凹凸が形成されていることを特徴とする請求項１
   記載の織布を仮貼りした複合シート。
5. 【請求項５】 合成樹脂フィルムの織布との貼合わせ面
   に形成された凹凸の高低差が５〜２０μｍであることを
   特徴とする請求項４記載の織布を仮貼りした複合シー
   ト。