JPH06153468A - 電気機器のワニス含浸方法並びに電気機器の巻線体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ワニスを巻線体の巻線の素線間等の狭い空間
まで十分含浸させると共に、加熱硬化時に含浸されたワ
ニスが流出することを確実に防止する。 【構成】 固定子鉄心１２とこの固定子鉄心１２に巻回
された巻線１３とから成る固定子１１の表面に粉体ワニ
ス１５処理を行って非浸透性の被膜１７を形成した後、
真空加圧含浸装置により被膜１７内に無溶剤ワニス２０
を充填し、この後、被膜１７内に充填された無溶剤ワニ
ス２０を加熱硬化させるように構成して成るワニス含浸
方法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、回転電機の固定子など
の巻線体に対するワニス処理の方法を改良した電気機器
のワニス含浸方法並びに電気機器の巻線体に関する。

【０００２】

【従来の技術】電気機器例えば回転電機においては、鉄
心に巻線を巻装してなる固定子に、ワニス含浸処理を施
し、固定子の絶縁性，耐熱性の向上や強度の向上などを
図ることが行われている。

【０００３】この種のワニス含浸処理方法として、従来
では、固定子を、熱硬化性樹脂からなるワニスに浸した
後、その固定子を加熱炉に収容してワニスを加熱硬化さ
せる浸漬法や、固定子に対してワニスを滴下させて含浸
させる滴下含浸法等が用いられていた。

【０００４】また、これらの含浸処理を施し、ワニスを
加熱硬化させた後、更に、図４に示すように、高粘度ワ
ニス又は高粘度レジンを刷毛１で巻線２に塗布して加熱
硬化させるようにしている。これにより、巻線２の絶縁
処理をより一層十分なものにしている。尚、図４におい
て、３は固定子鉄心、４は固定子鉄心３に巻線２を巻装
して成る固定子である。

【０００５】ところで、ワニスを固定子鉄心のスロット
内に充填して、巻線と固定子鉄心との間の隙間や巻線の
素線間にワニスを含浸させて硬化させると、巻線の伝導
率が向上し、巻線の温度上昇を防ぐことができるため、
固定子にとって非常に好ましいことがわかっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来構成の含浸方法では、巻線の素線間等の狭小な部分に
ワニスが含浸されにくく、また、一旦含浸されたワニス
が流出することがあるといった欠点があった。これに対
して、従来より、真空加圧含浸方法という方法があり、
この方法では、固定子を真空含浸容器内に収容して、そ
の内部を真空引きした後、該真空引きした状態で、無溶
剤ワニスを固定子に含浸させるようにしている。

【０００７】この方法によれば、減圧状態にてワニスを
固定子に含浸させることができるので、ワニスを固定子
の巻線の素線間等の狭い空間まで十分含浸させることが
できる。しかし、上記方法でワニスを含浸させても、含
浸したワニスを硬化させるために、固定子を加熱炉に入
れて加熱すると、ワニスが硬化する前に一旦軟化したと
きに、軟化したワニスが固定子即ち巻線内から流出しま
うという問題点があった。

【０００８】そこで、本発明の目的は、ワニスを巻線体
の巻線の素線間等の狭い空間まで十分含浸させることが
でき、しかも、加熱硬化時に含浸されたワニスが流出す
ることを確実に防止できる電気機器のワニス含浸方法を
提供するにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明のワニス含浸方法
は、鉄心とこの鉄心に巻回された巻線とから成る巻線体
の表面に粉体ワニス処理を行って非浸透性の被膜を形成
する工程を備えると共に、前記被膜内に無溶剤ワニスを
充填する工程を備え、そして、前記被膜内に充填された
無溶剤ワニスを硬化させる工程を備えたところに特徴を
有する。

【００１０】また、本発明の電気機器の巻線体は、鉄心
とこの鉄心に巻回された巻線とを備えて成る巻線体にお
いて、前記巻線体の表面に粉体ワニス処理を行って形成
された非浸透性の被膜と、この被膜内に充填されて硬化
された無溶剤ワニスとを備えたところに特徴を有するも
のである。

【００１１】

【作用】上記手段によれば、巻線体の表面に粉体ワニス
処理を行って非浸透性の被膜を形成し、この被膜内に無
溶剤ワニスを充填させる構成であるので、このワニス充
填を例えば真空加圧含浸方法により行えば、ワニスを巻
線体の巻線の素線間等の狭い空間まで十分含浸させるこ
とができる。そして、ワニスが粉体ワニス処理により形
成された被膜内に充填されているので、加熱硬化時にワ
ニスが軟化したとしても流出しなくなる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図１ないし
図３を参照しながら説明する。まず、図１を参照して、
電気機器の巻線体として例えば回転電機の固定子１１の
概略構成について述べる。固定子１１は、固定子鉄心１
２に複数個の巻線１３を巻装して構成され、全体として
略円環状をなしている。このうち、固定子鉄心１２は、
例えばリング状で内径側に開放形のスロット１２ａを複
数個穿設した薄鋼板を複数枚積層して形成されている。
一方、巻線１３は、エナメル線やポリエステルイミド銅
線などからなる素線１３ａ（図３参照）を巻回して形成
され、複数個が所定のスロット１２ａに収容されて楔
（図示しない）により固定された状態で固定子鉄心１２
に巻装されている。

【００１３】このように構成された固定子１１は、以下
説明するようにワニス含浸処理がなされ、これにより、
図３に示すように、全体の表面、並びに巻線１３の素線
１３ａ同士間、及び巻線１３とスロット１２ａとの間な
どに、ワニスによる絶縁層１４が形成されるようになっ
ている。このワニス含浸処理によって、巻線１３の耐熱
強度や耐振強度の向上、固定子鉄心１２への固着力強
化、絶縁劣化の防止等が図られるようになっている。

【００１４】さて、上記固定子１１に対するワニス含浸
処理の手順について説明するに、まず、固定子１１の表
面に粉体ワニス処理を行う。具体的には、固定子１１を
（固定子鉄心１２及び巻線１３を共に）加熱した後、図
１に示すように、粉体ワニス１５を収容した容器１６内
に該固定子１１を入れて、粉体ワニス１５中に固定子１
１を完全に浸漬する。これにより、固定子１１の表面に
は、粉体ワニス１５が溶融硬化して非浸透性の被膜１７
が形成される（図２参照）。この後、固定子１１を容器
１６即ち粉体ワニス１５内から引き上げると、被膜１７
が固定子１１の表面を覆っている。

【００１５】この場合、粉体ワニス１５中に固定子１１
を浸漬する前には、巻線１３のコイルエンド部１３ｂの
図１中上端部分１３ｃにマスキングテープ１８を予め貼
着しておき、コイルエンド部１３ｂの上端部分１３ｃに
粉体ワニス１５の被膜層が付着形成されないようにして
いる。

【００１６】この後、上記被膜１７内に無溶剤ワニスを
充填させる。この場合、真空加圧含浸装置によって、被
膜１７内即ち巻線１３内（巻線１３の素線１３ａ同士
間、及び巻線１３と固定子鉄心１２のスロット１２ａと
の間）に無溶剤ワニスを充填させる。具体的には、図２
に示すように、被膜１７が上述したように形成された固
定子１１を真空加圧含浸装置の真空加圧含浸槽１９内に
収容し、図示しない真空ポンプによって真空加圧含浸槽
１９内即ち被膜１７内を真空引きした後、エポキシ、エ
ポキシエステル、ポリエステル、ポリウレタン等からな
る無溶剤ワニス２０をワニス供給源（図示しない）から
ワニス供給管２１を通して供給し、該無溶剤ワニス２０
をコイルエンド部１３ｂの上端部分１３ｃからを通して
巻線１３内へ充填する。

【００１７】この後、無溶剤ワニス２０の充填が完了し
たら、即ち、無溶剤ワニス２０が固定子鉄心１２のスロ
ット１２ａ内を通って下部側のコイルエンド部１３ｂへ
達するまで巻線１３内に十分に充填されたら、真空加圧
含浸槽１９内から固定子１１を取り出す。そして、取り
出した固定子１１をそのコイルエンド部１３ｂの上端部
分１３ｃ（被膜１７が付着していない部分）が上になる
ように設置した状態で加熱炉等によって加熱して、固定
子１１に含浸された無溶剤ワニス２０つまり被膜１７内
に充填された無溶剤ワニス２０を硬化させる。

【００１８】これにより、図３に示すように、固定子１
１の全体の表面、並びに巻線１３の素線１３ａ同士間、
及び巻線１３と固定子鉄心１２のスロット１２ａとの間
などに、ワニス（粉体ワニス１５及び無溶剤ワニス２
０）による絶縁層１４が形成される。

【００１９】そして、上記実施例において、被膜１７内
に無溶剤ワニス２０を充填する場合、真空加圧含浸装置
により充填する構成としたので、無溶剤ワニス２０を巻
線１３の素線１３ａ間等の狭い空間まで十分に含浸させ
ることができる。また、ワニスを加熱硬化する場合、固
定子１１の表面に粉体ワニス処理を行って非浸透性の被
膜１７を形成し、この被膜１７内に無溶剤ワニス２０を
充填させて固定子１１に含浸させる構成としたので、無
溶剤ワニス２０が加熱硬化時に軟化したとしても、従来
構成とは異なり、被膜１７の外へ即ち固定子１１（巻線
１３）の外へ流出しなくなる。

【００２０】従って、固定子１１の全体の表面を粉体ワ
ニス１５の被膜１７により覆うと共に、巻線１３の素線
１３ａ同士間、及び巻線１３と固定子鉄心１２のスロッ
ト１２ａとの間などの隙間を無溶剤ワニス２０の絶縁層
１４により確実に充填することができる。このため、巻
線１３の熱伝導率がよくなり、巻線１３の温度上昇を防
ぐことができ、ひいては回転電機の高密度化即ち小形化
を実現することができる。

【００２１】

【発明の効果】本発明は以上の説明から明らかなよう
に、巻線体の表面に粉体ワニス処理を行って非浸透性の
被膜を形成し、この被膜内に無溶剤ワニスを充填させ、
更に、被膜内に充填した無溶剤ワニスを加熱硬化させる
構成としたので、加熱硬化時に無溶剤ワニスが軟化した
としても被膜の外へ即ち固定子の外へ流出しなくなり、
ワニスが十分に含浸された絶縁層を形成することができ
るという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示すもので、粉体ワニスを
収容した容器内に固定子を入れた状態を示す縦断側面図

【図２】真空加圧含浸槽内に固定子を収容した状態を示
す縦断側面図

【図３】ワニス含浸処理を行った後の巻線の断面図

【図４】従来構成を示す固定子の側面図

【符号の説明】

１１は固定子、１２は固定子鉄心、１３は巻線、１４は
絶縁層、１５は粉体ワニス、１７は被膜、１８はマスキ
ングテープ、１９は真空加圧含浸槽、２０は無溶剤ワニ
スを示す。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄心とこの鉄心に巻回された巻線とから
   成る巻線体の表面に粉体ワニス処理を行って非浸透性の
   被膜を形成する工程と、 前記被膜内に無溶剤ワニスを充填する工程と、 前記被膜内に充填された無溶剤ワニスを硬化させる工程
   とを備えて成る電気機器のワニス含浸方法。
2. 【請求項２】 鉄心とこの鉄心に巻回された巻線とを備
   えて成る電気機器の巻線体において、 前記巻線体の表面に粉体ワニス処理を行って形成された
   非浸透性の被膜と、 この被膜内に充填されて硬化された無溶剤ワニスとを備
   えたことを特徴とする電気機器の巻線体。