JPH06145690A - ハッカ油の香味の改質法 - Google Patents
ハッカ油の香味の改質法Info
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- JPH06145690A JPH06145690A JP20497691A JP20497691A JPH06145690A JP H06145690 A JPH06145690 A JP H06145690A JP 20497691 A JP20497691 A JP 20497691A JP 20497691 A JP20497691 A JP 20497691A JP H06145690 A JPH06145690 A JP H06145690A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 品種、産地、収穫時期、抽出方法の異なるハ
ッカ草から得られたハッカ油の香味を改善し、良質な精
油を製造する。 【構成】ハッカ油と水酸化ナトリウム水溶液の混液に金
属アルミニウム粉末又はニッケル−アルミニウム合金
(ラーネ合金)の粉末を添加し撹拌することによってハ
ッカ油の香味を改質する。
ッカ草から得られたハッカ油の香味を改善し、良質な精
油を製造する。 【構成】ハッカ油と水酸化ナトリウム水溶液の混液に金
属アルミニウム粉末又はニッケル−アルミニウム合金
(ラーネ合金)の粉末を添加し撹拌することによってハ
ッカ油の香味を改質する。
Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]本発明は、品種、産地、収穫時
期、抽出方法の異なるハッカ草から得られたハッカ油を
金属アルミニウムとアルカリ水溶液の反応から発生する
いわゆる発生期の水素で処理することにより、ハッカ油
中に含まれている微量の硫黄化合物、アルデヒド、及び
不飽和ケトン類などの香味に悪い影響を与える物質を還
元して、ハッカ油の香味を改善し、良質な精油を製造す
る方法に関するものである。 [従来の技術]l−メントール高含量を特徴とする和種
ハッカ(Mentha arvensis L)は洋種
ハッカ(ミッチャムペパーミント,Mentha pi
perita L)とともに、メントール系のハッカと
して世界の各地で栽培されている。和種ハッカは中国、
インド、北朝鮮、パラグアイなどで栽培され、夏から秋
にかけて刈り取り、1〜2週間陰干しした後水蒸気蒸留
する。得られた精油をハッカ取卸油と呼ぶが、普通これ
を冷却して結晶を析出させ、天然l−メントールとハッ
カ脱脳油に分ける。ハッカ脱脳油中の化学成分について
は、その主なものを表1に表示したが、微量成分も含め
ると200種以上にも及ぶ複雑な組成で、それらの成分
が互いに影響しあって繊細、微妙なハッカ油の香味を形
成しているのである(坂田功ら、香料、テルペンおよび
精油化学に関する討論会講演要旨、25th.,21
(1981))。ハッカはきわめて変種が多く、絶えず
品種改良が行われ、病害虫・天候に強いもの、採油量の
多いもの、l−メントール含量の高いものなど、優良な
品種が求め続けられる結果、その精油の香味も非常に変
動が多く、さらに産地、収穫時期によっても品質が大き
く変化する。年間を通じて各地から入荷するハッカ油を
原料として、その自然の風味を損なわずに、優れた香味
をもつ精製ハッカ油を製造することは、技術的にも高度
な熟練と経験とを必要とする。ハッカ油のいわゆる『青
くさい』『汗くさい』あるいは『泥くさい』と云われる
異臭の原因、また舌に感ずる『苦味』の原因としては、
まず、和種ハッカ独特の悪臭成分として硫化メチルの存
在が報告されている。さらに、微量に存在する低級のカ
ルボン酸(ぎ酸、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸
など)およびそれらのエステル類、ケトン類(3−オク
タノン、3−メチルシクロヘキサノン、プレゴン、ピペ
リトン、ピペリテノンなど)、アルデヒド類(フルフラ
ール、イソ吉草アルデヒド、2−ヘキセナール、オクタ
ナール)などの影響が考えられる。それら原因物質を除
去、あるいは変化させて、ハッカ油の香味を改質するた
め、従来から次のような方法が行われている。 ハッカ油を減圧下に分別蒸留して、低沸点部分(5
〜7%)に存在する悪臭物質を除去する。 ハッカ油にその酸価を中和するよりやや過剰のアル
カリを加えて水蒸気蒸留し、悪臭及び苦味物質を中和、
加水分解あるいは重合させて除去する。 ハッカ油に粉末活性炭を加えて撹拌するか、ハッカ
油を粒状活性炭の層を通して悪臭物質及び樹脂状物質を
吸着・除去する。(R.J.Chong;Chosen
Minjujuui Inmin Konghwag
uk Tongbo, 5, 16(1987);C
A: 108, 114617k)これに関連して、活
性アルミナを用いる吸着法も考えられるが(桑田智著、
「クロマトグラフィー」 27〜57頁、(195
6)、広川書店)、ハッカ油の香味の改質に対しては活
性炭、活性アルミナ、けいそう土、酸性白土ともに顕著
な効果が認められなかった。また、ハッカ油に適応され
た例はないが、これまで各種精油に応用され、有効であ
ると考えられる方法としては次のようなものがある。 亜硫酸水素ナトリウムあるいは亜硫酸ナトリウム水
溶液と反応させて、ハッカ油中のアルデヒドおよびα,
β−不飽和ケトン類と付加化合物をつくり、これを除去
する。(船久保英一著「有機化合物確認法」、上巻 3
43、352頁(1954) 養賢堂) 過マンガン酸カリウム水溶液と反応させて、ハッカ
油中の不飽和化合物およびアルデヒド類を酸化分解す
る。(特許第29339号) 少量の金属水素錯化合物(ソジウム・ボロ・ハイド
ライド)を作用させて悪臭化合物を還元する。(N.S
h.Bagaturiya ら、U.S.S.R.SU
1,375,641(1988);CA:108,22
6665f) [発明が解決しようとする課題]ハッカ油の香味を改質
する方法としては、前述のとおり、機能的に分画、中
和、吸着、付加、酸化、還元反応に分類される。何れの
方法もそれだけで目的が達成されるというわけでなく、
匂いや味の種類によって幾つかの方法を併用する場合が
多い。実施する方法に要求される条件としては、 1. ハッカ油の持つ自然の風味を損なわないこと。 2. 試薬、方法に危険性がないこと。 3. 簡単な装置と操作で行えること。 4. 経費が少なくて済むこと。 などが挙げられる。そのような観点から、従来の方法を
検討すると、多量の脱臭剤、吸着剤を必要とする方法
も、亜硫酸塩、重金属を使用する方法も企業的には適格
とは云い難い。金属水素錯化合物を用いる方法は操作が
簡単で、能率よく目的を達成できるが、試薬が高価なの
と貯蔵中に変質し易いのが難点である。以上の検討の結
果、ハッカ油の香味を効率よく改質する目的のために
は、新しい方法を探索する必要があった。 [課題を解決するための手段]従来の改質方法を、種々
追試し比較した結果、ハッカ油の悪い匂いや味を矯正す
るためには、これを軽く還元するのが最も効果的である
ことが判明した。還元法は大別して、金属及び金属塩に
よる還元(いわゆる発生期の水素による還元)、金属水
素化物及び金属水素錯化合物による還元、接触水素添加
に区別される。これらのうち、接触水素添加法はオート
クレーブさえあれば容易に行えるが、ハッカ油の場合ラ
ーネニッケル触媒を用いて、ごく僅かに接触水添して
も、異臭が発生し実用にはならなかった。また、金属水
素錯化合物のうちでは最も安価でかつ取扱の安全なソジ
ウム・ボロ・ハイドライドを用いた還元法もなお前述の
ような難点がある。本発明では、上記の実験結果を考慮
して、アルミニウム、ニッケル−アルミニウム合金(ラ
ーネ合金)とアルカリ水溶液から発生する水素を用い
て、悪臭、悪味物質を還元して、ハッカ油の香味を改質
する精製法を考案した。具体的には、ハッカ油100部
について、10乃至20%の水酸化ナトリウム水溶液1
0部を加え、両液がよく混じるように攪拌しながら、こ
れに金属アルミニウムあるいはニッケル−アルミニウム
合金の粉末を添加するのである。金属アルミニウムある
いはニッケル−アルミニウム合金の添加量は、操作中に
反応液から適宜試料を採り出して、香味が改善された時
点で、添加を中止するのが最も合理的であるけれども、
従来の経験では0.2乃至1.5部の範囲内であった。
過剰の反応は、ハッカ油の主成分の組成まで変化させ、
自然の風味を損なうので避けなければならない。添加す
る金属の量が僅少なので、ことさら加温、冷却の必要は
ない。ただし、水素ガスが発生するので、換気には十分
注意する。反応は短時間で終了するので、反応液はその
まま、水蒸気蒸留して、精製ハッカ油(ハッカ白油)に
するのが望ましい。反応液中に混在する水酸化アルミニ
ウムは水を加えるとゲル状となるので、反応液を水洗し
て精製することは得策でない。(ハッカ油に鉱酸を添加
することは避けた方がよい。) [作 用]金属とアルカリの量を加減することによっ
て、還元の程度を調節できる。反応は極めて円滑に進行
するから、加温する必要はなく、金属の添加速度を調節
することによって反応速度を制御でき、冷却の必要もな
い。反応はきわめて短時間に完了し、低級アルデヒド、
硫化メチルなどは還元され、低級カルボン酸類はアルカ
リに中和され水溶性の塩となる。反応終了後、混合液を
そのまま水蒸気蒸留すれば、香味の改質されたハッカ白
油が得られる。 [実施例]実施例 1 .インド産ハッカ脱脳油100g に20%
水酸化ナトリウム水溶液10ccを加える。この混液を
撹拌しつつ、これに金属アルミニウム粉末(純度99.
9%,150mesh)300mgを加え、2時間撹拌
を続ける。反応液は水洗・乾燥して、吸光度測定、ガス
クロマトグラフ分析、官能テストに供する。収率95.
7%. 実際には、香味の改質処理後、直ちに水蒸気蒸留にかけ
て、ハッカ白油を製造するのであるが、水蒸気蒸留前の
ハッカ油の性状を知るため、反応液を水洗・乾燥した。実施例 2 .前項と同じインド産ハッカ脱脳油100g
に20%水酸化ナトリウム水溶液10ccを加え、撹拌
しつつラーネ合金(ニッケル50%)1gを添加する。
以下前項と同様に処理する。収率95.3%.比較実験例 1 .前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0gに粉末活性炭(カルボラフィン、武田薬品工業製)
1gを添加し、分液ロートに入れて、2時間振盪する。
終了後、活性炭をろ過して、ろ液を前項と同様に処理す
る。収率95.4%.比較実験例 2.前項と同じインド産ハッカ脱脳油100
g に、亜硫酸水素ナトリウム3gを水12ccに溶解
して加え、分液ロートに入れて、2時間振盪する。終了
後、前項と同様に処理する。収率93.4%.比較実験例 3.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0g に、亜硫酸ナトリウム4.2gを水15ccに溶
解して加え、これにフェノールフタレイン液数滴を加
え、水蒸気浴上で、激しく3時間撹拌する。液はアルカ
リ性を呈するに至らない。終了後、前項と同様に処理す
る。収率94.0%.比較実験例 4.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0g に、過マンガン酸カリウム500mgを水20c
cに溶解して加え、分液ロートに入れて、2時間振盪す
る。終了後、二酸化マンガンをろ過して除き、ろ液を前
項と同様に処理する。収率93.0%.比較実験例 5.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0gに、ソジウム・ボロ・ハイドライド300mgを加
え、常温にて、2時間撹拌する。反応終了後、酸性白土
を少量加え、水洗・乾燥して、吸光度測定、ガスクロマ
トグラフ分析、官能テストに供する。収率96.5%. 各ハッカ処理油の吸光度、成分組成、官能テストの結果
を表1、2および3に表示した。 [発明の効果]本発明は、以上説明したように構成され
ているので、如何に記載されるような効果を奏する。 安価にして、安全、簡便な操作で目的を達すること
ができる。従って、ハッカ脱脳油からハッカ白油を製造
する工程の前に、この作業を入れることができる。 本発明の処理法は、表1および比較のための表2に
見られるように、ハッカ油の主成分組成にはなんらの変
化も与えていない。従って、ハッカ油本来の風味を損な
うことなく、悪い香味だけを改質できる。 表3に見られるように、本発明の方法は他の処理法
よりも特に優れた効果を挙げている。アルミニウム粉末
よりも、ラーネ合金の方がさらによい結果を与えている
理由は、未解決であるが、多分多孔性ニッケル触媒の吸
着性か、本来の触媒能力よるものと考えられる。 【表1】 【表2】【表3】
期、抽出方法の異なるハッカ草から得られたハッカ油を
金属アルミニウムとアルカリ水溶液の反応から発生する
いわゆる発生期の水素で処理することにより、ハッカ油
中に含まれている微量の硫黄化合物、アルデヒド、及び
不飽和ケトン類などの香味に悪い影響を与える物質を還
元して、ハッカ油の香味を改善し、良質な精油を製造す
る方法に関するものである。 [従来の技術]l−メントール高含量を特徴とする和種
ハッカ(Mentha arvensis L)は洋種
ハッカ(ミッチャムペパーミント,Mentha pi
perita L)とともに、メントール系のハッカと
して世界の各地で栽培されている。和種ハッカは中国、
インド、北朝鮮、パラグアイなどで栽培され、夏から秋
にかけて刈り取り、1〜2週間陰干しした後水蒸気蒸留
する。得られた精油をハッカ取卸油と呼ぶが、普通これ
を冷却して結晶を析出させ、天然l−メントールとハッ
カ脱脳油に分ける。ハッカ脱脳油中の化学成分について
は、その主なものを表1に表示したが、微量成分も含め
ると200種以上にも及ぶ複雑な組成で、それらの成分
が互いに影響しあって繊細、微妙なハッカ油の香味を形
成しているのである(坂田功ら、香料、テルペンおよび
精油化学に関する討論会講演要旨、25th.,21
(1981))。ハッカはきわめて変種が多く、絶えず
品種改良が行われ、病害虫・天候に強いもの、採油量の
多いもの、l−メントール含量の高いものなど、優良な
品種が求め続けられる結果、その精油の香味も非常に変
動が多く、さらに産地、収穫時期によっても品質が大き
く変化する。年間を通じて各地から入荷するハッカ油を
原料として、その自然の風味を損なわずに、優れた香味
をもつ精製ハッカ油を製造することは、技術的にも高度
な熟練と経験とを必要とする。ハッカ油のいわゆる『青
くさい』『汗くさい』あるいは『泥くさい』と云われる
異臭の原因、また舌に感ずる『苦味』の原因としては、
まず、和種ハッカ独特の悪臭成分として硫化メチルの存
在が報告されている。さらに、微量に存在する低級のカ
ルボン酸(ぎ酸、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸
など)およびそれらのエステル類、ケトン類(3−オク
タノン、3−メチルシクロヘキサノン、プレゴン、ピペ
リトン、ピペリテノンなど)、アルデヒド類(フルフラ
ール、イソ吉草アルデヒド、2−ヘキセナール、オクタ
ナール)などの影響が考えられる。それら原因物質を除
去、あるいは変化させて、ハッカ油の香味を改質するた
め、従来から次のような方法が行われている。 ハッカ油を減圧下に分別蒸留して、低沸点部分(5
〜7%)に存在する悪臭物質を除去する。 ハッカ油にその酸価を中和するよりやや過剰のアル
カリを加えて水蒸気蒸留し、悪臭及び苦味物質を中和、
加水分解あるいは重合させて除去する。 ハッカ油に粉末活性炭を加えて撹拌するか、ハッカ
油を粒状活性炭の層を通して悪臭物質及び樹脂状物質を
吸着・除去する。(R.J.Chong;Chosen
Minjujuui Inmin Konghwag
uk Tongbo, 5, 16(1987);C
A: 108, 114617k)これに関連して、活
性アルミナを用いる吸着法も考えられるが(桑田智著、
「クロマトグラフィー」 27〜57頁、(195
6)、広川書店)、ハッカ油の香味の改質に対しては活
性炭、活性アルミナ、けいそう土、酸性白土ともに顕著
な効果が認められなかった。また、ハッカ油に適応され
た例はないが、これまで各種精油に応用され、有効であ
ると考えられる方法としては次のようなものがある。 亜硫酸水素ナトリウムあるいは亜硫酸ナトリウム水
溶液と反応させて、ハッカ油中のアルデヒドおよびα,
β−不飽和ケトン類と付加化合物をつくり、これを除去
する。(船久保英一著「有機化合物確認法」、上巻 3
43、352頁(1954) 養賢堂) 過マンガン酸カリウム水溶液と反応させて、ハッカ
油中の不飽和化合物およびアルデヒド類を酸化分解す
る。(特許第29339号) 少量の金属水素錯化合物(ソジウム・ボロ・ハイド
ライド)を作用させて悪臭化合物を還元する。(N.S
h.Bagaturiya ら、U.S.S.R.SU
1,375,641(1988);CA:108,22
6665f) [発明が解決しようとする課題]ハッカ油の香味を改質
する方法としては、前述のとおり、機能的に分画、中
和、吸着、付加、酸化、還元反応に分類される。何れの
方法もそれだけで目的が達成されるというわけでなく、
匂いや味の種類によって幾つかの方法を併用する場合が
多い。実施する方法に要求される条件としては、 1. ハッカ油の持つ自然の風味を損なわないこと。 2. 試薬、方法に危険性がないこと。 3. 簡単な装置と操作で行えること。 4. 経費が少なくて済むこと。 などが挙げられる。そのような観点から、従来の方法を
検討すると、多量の脱臭剤、吸着剤を必要とする方法
も、亜硫酸塩、重金属を使用する方法も企業的には適格
とは云い難い。金属水素錯化合物を用いる方法は操作が
簡単で、能率よく目的を達成できるが、試薬が高価なの
と貯蔵中に変質し易いのが難点である。以上の検討の結
果、ハッカ油の香味を効率よく改質する目的のために
は、新しい方法を探索する必要があった。 [課題を解決するための手段]従来の改質方法を、種々
追試し比較した結果、ハッカ油の悪い匂いや味を矯正す
るためには、これを軽く還元するのが最も効果的である
ことが判明した。還元法は大別して、金属及び金属塩に
よる還元(いわゆる発生期の水素による還元)、金属水
素化物及び金属水素錯化合物による還元、接触水素添加
に区別される。これらのうち、接触水素添加法はオート
クレーブさえあれば容易に行えるが、ハッカ油の場合ラ
ーネニッケル触媒を用いて、ごく僅かに接触水添して
も、異臭が発生し実用にはならなかった。また、金属水
素錯化合物のうちでは最も安価でかつ取扱の安全なソジ
ウム・ボロ・ハイドライドを用いた還元法もなお前述の
ような難点がある。本発明では、上記の実験結果を考慮
して、アルミニウム、ニッケル−アルミニウム合金(ラ
ーネ合金)とアルカリ水溶液から発生する水素を用い
て、悪臭、悪味物質を還元して、ハッカ油の香味を改質
する精製法を考案した。具体的には、ハッカ油100部
について、10乃至20%の水酸化ナトリウム水溶液1
0部を加え、両液がよく混じるように攪拌しながら、こ
れに金属アルミニウムあるいはニッケル−アルミニウム
合金の粉末を添加するのである。金属アルミニウムある
いはニッケル−アルミニウム合金の添加量は、操作中に
反応液から適宜試料を採り出して、香味が改善された時
点で、添加を中止するのが最も合理的であるけれども、
従来の経験では0.2乃至1.5部の範囲内であった。
過剰の反応は、ハッカ油の主成分の組成まで変化させ、
自然の風味を損なうので避けなければならない。添加す
る金属の量が僅少なので、ことさら加温、冷却の必要は
ない。ただし、水素ガスが発生するので、換気には十分
注意する。反応は短時間で終了するので、反応液はその
まま、水蒸気蒸留して、精製ハッカ油(ハッカ白油)に
するのが望ましい。反応液中に混在する水酸化アルミニ
ウムは水を加えるとゲル状となるので、反応液を水洗し
て精製することは得策でない。(ハッカ油に鉱酸を添加
することは避けた方がよい。) [作 用]金属とアルカリの量を加減することによっ
て、還元の程度を調節できる。反応は極めて円滑に進行
するから、加温する必要はなく、金属の添加速度を調節
することによって反応速度を制御でき、冷却の必要もな
い。反応はきわめて短時間に完了し、低級アルデヒド、
硫化メチルなどは還元され、低級カルボン酸類はアルカ
リに中和され水溶性の塩となる。反応終了後、混合液を
そのまま水蒸気蒸留すれば、香味の改質されたハッカ白
油が得られる。 [実施例]実施例 1 .インド産ハッカ脱脳油100g に20%
水酸化ナトリウム水溶液10ccを加える。この混液を
撹拌しつつ、これに金属アルミニウム粉末(純度99.
9%,150mesh)300mgを加え、2時間撹拌
を続ける。反応液は水洗・乾燥して、吸光度測定、ガス
クロマトグラフ分析、官能テストに供する。収率95.
7%. 実際には、香味の改質処理後、直ちに水蒸気蒸留にかけ
て、ハッカ白油を製造するのであるが、水蒸気蒸留前の
ハッカ油の性状を知るため、反応液を水洗・乾燥した。実施例 2 .前項と同じインド産ハッカ脱脳油100g
に20%水酸化ナトリウム水溶液10ccを加え、撹拌
しつつラーネ合金(ニッケル50%)1gを添加する。
以下前項と同様に処理する。収率95.3%.比較実験例 1 .前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0gに粉末活性炭(カルボラフィン、武田薬品工業製)
1gを添加し、分液ロートに入れて、2時間振盪する。
終了後、活性炭をろ過して、ろ液を前項と同様に処理す
る。収率95.4%.比較実験例 2.前項と同じインド産ハッカ脱脳油100
g に、亜硫酸水素ナトリウム3gを水12ccに溶解
して加え、分液ロートに入れて、2時間振盪する。終了
後、前項と同様に処理する。収率93.4%.比較実験例 3.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0g に、亜硫酸ナトリウム4.2gを水15ccに溶
解して加え、これにフェノールフタレイン液数滴を加
え、水蒸気浴上で、激しく3時間撹拌する。液はアルカ
リ性を呈するに至らない。終了後、前項と同様に処理す
る。収率94.0%.比較実験例 4.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0g に、過マンガン酸カリウム500mgを水20c
cに溶解して加え、分液ロートに入れて、2時間振盪す
る。終了後、二酸化マンガンをろ過して除き、ろ液を前
項と同様に処理する。収率93.0%.比較実験例 5.前項と同じインド産ハッカ脱脳油10
0gに、ソジウム・ボロ・ハイドライド300mgを加
え、常温にて、2時間撹拌する。反応終了後、酸性白土
を少量加え、水洗・乾燥して、吸光度測定、ガスクロマ
トグラフ分析、官能テストに供する。収率96.5%. 各ハッカ処理油の吸光度、成分組成、官能テストの結果
を表1、2および3に表示した。 [発明の効果]本発明は、以上説明したように構成され
ているので、如何に記載されるような効果を奏する。 安価にして、安全、簡便な操作で目的を達すること
ができる。従って、ハッカ脱脳油からハッカ白油を製造
する工程の前に、この作業を入れることができる。 本発明の処理法は、表1および比較のための表2に
見られるように、ハッカ油の主成分組成にはなんらの変
化も与えていない。従って、ハッカ油本来の風味を損な
うことなく、悪い香味だけを改質できる。 表3に見られるように、本発明の方法は他の処理法
よりも特に優れた効果を挙げている。アルミニウム粉末
よりも、ラーネ合金の方がさらによい結果を与えている
理由は、未解決であるが、多分多孔性ニッケル触媒の吸
着性か、本来の触媒能力よるものと考えられる。 【表1】 【表2】【表3】
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1. ハッカ油と水酸化ナトリウム水溶液の混液に金属
アルミニウム粉末を添加し撹拌することによってハッカ
油の香味を改質する方法。 2. ハッカ油と水酸化ナトリウム水溶液の混液にニッ
ケル−アルミニウム合金(ラーネ合金)の粉末を添加し
撹拌することによってハッカ油の香味を改質する方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20497691A JPH06145690A (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | ハッカ油の香味の改質法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20497691A JPH06145690A (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | ハッカ油の香味の改質法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06145690A true JPH06145690A (ja) | 1994-05-27 |
Family
ID=16499413
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20497691A Pending JPH06145690A (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | ハッカ油の香味の改質法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06145690A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002038187A (ja) * | 2000-07-28 | 2002-02-06 | Ogawa & Co Ltd | シソ科メンタ属植物精油の改質方法 |
JP2009542695A (ja) * | 2006-07-07 | 2009-12-03 | ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー | 硫黄含有量が減少された香味油及び口腔ケア組成物におけるその使用 |
WO2010055864A1 (ja) * | 2008-11-11 | 2010-05-20 | 高砂香料工業株式会社 | 精製エッセンシャルオイルの製造方法 |
-
1991
- 1991-04-22 JP JP20497691A patent/JPH06145690A/ja active Pending
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