JPH0614216A - 画質改善装置 - Google Patents

画質改善装置

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JPH0614216A
JPH0614216A JP4189848A JP18984892A JPH0614216A JP H0614216 A JPH0614216 A JP H0614216A JP 4189848 A JP4189848 A JP 4189848A JP 18984892 A JP18984892 A JP 18984892A JP H0614216 A JPH0614216 A JP H0614216A
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JP
Japan
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signal
phase
waveform
value
characteristic
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JP4189848A
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Inventor
Shigehiro Ito
茂広 伊藤
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Victor Company of Japan Ltd
Original Assignee
Victor Company of Japan Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ビデオ機器に好適な画質改善装置であり、エ
ッジ強調成分を、入力信号の傾斜部分に観賞者に違和感
を与えることなく自然な形で付加できると共に、エッジ
強調の度合いを調整でき、さらに、デジタル回路化が容
易な装置を提供することを目的としている。 【構成】 高域濾波器a-1 で入力信号Saと90゜の位相差
を持つ直交成分Sbと入力信号Saと同位相の同相成分Scと
を得る。位相検出器a-2 で信号Sb,Sc から位相値θi(信
号Se) を求め、その信号Seから制御信号形成回路a-4 で
制御信号Siを得る。波形形成器a-3 では同相成分Scから
第1の波形エッジ強調信号Sgを形成し、利得制御回路a-
5 はエッジ強調信号Sgの大きさを制御信号Siで制御し
て、第2の波形エッジ強調信号Sjを得る。加算器a-6 で
このエッジ強調信号Sjを入力信号Saに加算することによ
り、エッジ強調された出力信号Skを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、テレビジョン(TV)
受像機、ヒデオテープレコーダ(VTR )等の各種ビデオ
機器、及び画像データを扱う各種画像処理装置等に好適
な画質改善装置に関する。そして、この発明は、特に波
形の変化部即ち波形エッジを急峻化することで画質を改
善するが、その改善を観賞者に特に違和感を与えること
なく自然な形で行い得、再生画像の鮮鋭度及び解像度を
最も効果的に改善するための画質改善装置を提供するこ
とを目的としている。
【0002】
【従来の技術】従来、画質改善のために用いられる輪郭
補正では、2次微分処理によって輪郭補正成分を求め、
この補正成分を元の信号に適量付加していた。この方法
による輪郭補正では輪郭補正成分である2次微分波形
が、元の信号の波形変化部(エッジ部)の中点よりもか
なり外側にピークを持つ波形となる。従って、この2次
微分波形を元の信号に付加しエッジ強調を行おうとする
と、過度のプリシュートやオーバーシュートが発生する
ことがあり、そのため再生画像のエッジに不自然な白黒
の縁どりができるなど、輪郭補正として期待する程の効
果が得られなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しよう
とする課題は、元の信号の波形変化部、即ち、エッジ部
の略中点位置に、できるだけ滑らかなスロープで波形を
急峻化するための信号成分を付加することでエッジ強調
を行い、過度のプリシュートやオーバーシュートによる
不自然な輪郭補正を防ぎ、観賞者に対して違和感を与え
ることなく、かつ自然な形で最適な鮮鋭度及び解像度を
向上させる画質改善装置とするには、どのような手段を
講じればよいかという点と、あわせて、ディジタル回路
で装置を構成する場合に、特に非線形処理による破綻を
来さないで本来の目的を達成するのには、どのような手
段を講じればよいかという点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
するために本発明は、入力信号から高域周波数成分を抽
出する高域濾波器と、前記高域周波数成分の位相値を検
出する位相検出器と、前記位相値から少なくとも微分回
路を用いて所定周波数特性に依存した制御信号を形成す
る制御信号形成回路と、前記高域周波数成分から第1の
波形エッジ強調信号を得る波形形成器と、前記第1の波
形エッジ強調信号を前記制御信号に応じて制御し、第2
の波形エッジ強調信号を得る制御回路と、前記入力信号
に前記第2の波形エッジ強調信号を加算する加算器とに
より構成し、前記入力信号の波形変化部を急峻化した出
力信号を得ることを特徴とする画質改善装置を提供する
ものである。
【0005】
【実施例】図1にこの発明の画質改善装置の概念図及び
第1実施例を示す。また、図2は第一実施例の更に詳細
な構成例を示す図、図3〜図15は第1実施例の動作説
明図である。動作説明図では、便宜上、簡略化した模擬
的な表現法も採用してある。また、具体的回路例として
デジタル回路を挙げる場合でも、その動作説明をわかり
やすくするため、その回路の信号波形をアナログ波形と
して示すものとする。
【0006】図1(a)は本発明の概念図(請求項1に
対応)であり、図1(b)はその概念図に基づく第1実
施例(請求項2に対応)である。まずは図1(a)に基
づき本発明の基本概念を説明する。図において、a−1
は高域濾波器、a−2は位相検出器、a−3は波形形成
器、a−4は制御信号形成回路、a−5は利得制御回路
(第1の波形エッジ強調信号を前記制御信号に応じて制
御し、第2の波形エッジ強調信号を得る制御回路)、そ
してa−6は加算器である。
【0007】なお、説明の便宜上、各回路自体の処理時
間による信号の遅れ、及びその遅れを単に補正するため
だけに通常用いられる遅延回路等は、説明上必要な場合
を除いて省略するものとする。
【0008】本発明の基本動作を理解するために、ライ
ンL1からの入力信号Saが次式、即ち図5(a)のよ
うな余弦波の場合を考える。
【0009】
【数1】
【0010】高域濾波器a−1では入力信号Saと90
゜の位相差を持つ直交成分Sb、そして入力信号Saと
同位相の同相成分Scを得る。次式がSbを表す式であ
り、図5(b)がその波形図である。
【0011】
【数2】
【0012】また、次式がScの式であり、図5(c)
がその波形図である。
【0013】
【数3】
【0014】次段の位相検出器a−2では、供給される
2つの信号Sb及びScから、次式のような演算により
位相値θi 、即ち信号Seを求める。
【0015】
【数4】
【0016】この信号の場合には、更に次式のように簡
略化される。
【0017】
【数5】
【0018】位相値θi は図5(d)に示すように、通
常−π/2〜π/2の範囲で値が求められる。ラインL
2を介してSeが供給される制御信号形成回路a−4で
は、次式のような微分処理により位相値θi の傾斜を求
めている。
【0019】
【数6】
【0020】更に、この信号の場合には簡略化されて、
次式のようになる。
【0021】
【数7】
【0022】得られる微分値はこの例では図5(e)の
ような負の一定値になるが、数7で明らかなように、微
分値は周波数fの関数になっており、図6(a)のの
ように周波数fに比例する特性になっている。今、f=
2MHzでの値をpとし、
【0023】
【数8】
【0024】数7をpでノーマライズすると、次式のよ
うに(即ち図6(a)ののように)、基準点(f=2
MHz)で1となる直線状の特性になる。
【0025】
【数9】
【0026】数9のような周波数に比例する関係を使え
ば、周波数依存度を変えた新たな特性を容易に得ること
ができる。例えば、図6(b)のように
【0027】
【数10】
【0028】周波数1〜2MHzで最大値=1になるよ
うな特性を作ることができる。数10で求めたkはブロ
ックa−4の出力Siとして、次段の利得制御回路a−
5のゲイン(利得)を制御するための制御信号として使
用される。一方、波形々成器a−3では高域濾波器a−
1から同相の高域成分を得て、波形変化部を急峻化する
ための第1の波形エッジ強調信号Sgを形成している。
利得制御回路a−5にはエッジ強調信号Sgと制御信号
Siが供給され、図6(b)のような周波数特性のもと
で制御された出力Sjが得られる。この利得制御回路の
特徴はエッジ強調されるべき信号の周波数領域を検出
し、規定することで、無理のない自然な形での波形の急
峻化を行うことである。次段の加算器a−6では、入力
信号Saに新たなエッジ強調信号Sj(第1の波形エッ
ジ強調信号)が付加された出力信号SkがラインL3を
介して出力される。
【0029】なお、波形形成器a−3に制御回路を設け
て、制御信号Siを波形形成器a−3に供給し、波形形
成器でのエッジ強調信号の形成を制御信号Siで直接制
御するようにしてもよい。この場合、利得制御回路は不
要となる。さらに、図1(b)に示す第1実施例(請求
項2に対応)で詳細な説明を行うことにする。図におい
て、b−1は直交高域濾波器、b−2は同相高域濾波
器、b−3は波形形成器、b−4は制御信号形成回路、
b−5は利得制御回路、そしてb−6は加算器である。
【0030】なお、本発明の特徴となる機能ブロックb
−4及びb−5以外の非線形処理による波形の傾斜部の
急峻化処理については、本発明者による特願平3-313605
号(整理番号:H03000870、出願日:平成3年10月31
日)及び特願平3-360616号(整理番号:H03001093、出願
日:平成3年12月27日)などで詳細に説明してある
ので、ここでは最小限の簡略化した説明にとどめること
にする。
【0031】この画質改善装置の扱う入力信号の例とし
ては、テレビジョン信号の輝度信号、色信号、RGB信
号等を想定している。従って、上限が4MHz迄の周波
数成分を有する入力信号に対し、以下での処理で信号波
形の傾斜部に非線形処理を施し、周波数帯域4MHzを
越える成分を付加して急峻化することでエッジ強調を行
っている。
【0032】まず、ラインL1から入来する入力信号S
aが、図7(a)に示すような余弦波の場合について説
明する。この余弦波は、周波数f=2MHzの輝度信号
の一例である。入力信号Saは、まず直交高域濾波器b
−1に供給される。この直交高域濾波器は周波数特性の
虚数部が次式で表わされ、
【0033】
【数11】
【0034】実数部が0であるような微分性の特性を有
している。低域の周波数特性を定めるパラメターβの値
は0〜1の範囲の値である。図3(a)はβが0.31
25、即ちf1=1.25MHzの時の周波数特性であ
り、図3(c)がそのインパルス応答である。Saに対
して直交即ち90゜の位相差を有している。この時の直
交高域濾波器の出力波形Sbは、図7(b)のようにな
る。一方、入力信号Saは、同相高域濾波器b−2にも
供給される。同相高域濾波器は周波数特性の実数部が次
式で表わされ、
【0035】
【数12】
【0036】虚数部が0であるような高域濾波特性を有
している。図3(b)はβが0.3125の時の周波数
特性であり、図3(d)がそのインパルス応答であり、
Saに対して同位相である。この時の同相高域濾波器の
出力波形Scは図7(c)のようになる。直交高域濾波
器b−1と同相高域濾波器b−2とは、振幅特性G
(f)が同一で、その特性は次式のような特性であり、
【0037】
【数13】
【0038】位相差がπ/2で、直交関係になってい
る。数11に示す特性は、虚数部に値を持つ高域濾波特
性であるので、その特性を有する濾波器を直交高域濾波
器と呼び、数12に示す特性は、実数部に値を持つ高域
濾波特性であるので、その特性を有する濾波器を同相高
域濾波器と呼んでいる。図3(a),(b)に示す特性
を、周波数の絶対値が0〜f1の範囲で直線状に値が増
加し、f1〜f2の間で一定値、f2以上で0になるよ
うに設定したのは、テレビジョンの伝送特性と微分性の
高域濾波特性とを考慮したためであるが、結果的にこの
設定は、本発明を効果的に機能させる設定であった。
【0039】本実施例は数11〜数13に於けるパラメ
ータβを、0〜1の範囲で可変することにより(βが小
さくなる程強調の度合いが強くなる)、エッジ強調の度
合いを調整できる。最適なエッジ強調の度合いは、画面
に映し出された映像を見る人それぞれに個人差がある
が、本実施例は前述のようにパラメータβを調整するこ
とで各人に合った最適なエッジ強調を得ることができ
る。
【0040】次の波形形成器b−3には、直交高域濾波
器b−1及び同相高域濾波器b−2の出力信号Sb、S
cが供給される。これらの信号は位相差がπ/2であ
り、Sbは直交成分であることからSbを縦軸に、そし
てScが同相成分であることからScを横軸にそれぞれ
配置して図示すると、図4(a)のようになる。従っ
て、直交成分と同相成分とのベクトル合成により、次式
のように、
【0041】
【数14】
【0042】2つの信号Sb、Scの2乗和の平方根か
ら、合成振幅Sdが求められる。Sdは当然のことなが
ら、負の値にはならない。同図から、合成位相θi は次
式で
【0043】
【数15】
【0044】求められる。位相θi の値は、通常−π/
2〜π/2の範囲で計算される。この位相θi は信号S
eとして出力される。これらの合成振幅Sd及び合成位
相θi などを用いて非線形処理を行い、信号Scの波形
変化部を急峻化した信号Sfが次式のように求められ
る。
【0045】
【数16】
【0046】ここでの非線形処理の特徴は数15で表さ
れる位相θi をパラメータαを用いて、次式のように変
換することにある。
【0047】
【数17】
【0048】これは図4(b)において、1点鎖線(α
=1)の特性を実線(α=4の例)のように零位相側に
よせる処理である。かくして得られる波形形成器のエッ
ジ強調信号出力は次式のような、信号SfとScとの差
から得られるSgである。
【0049】
【数18】
【0050】図2(a)は波形形成器b−3を更に細分
化したブロック構成図である。ブロック3−1で数15
に基づき位相θi を求め、信号Seとして出力すると共
に、ブロック3−2でSb・sinθi の演算を行い、
ブロック3−3でSc・cosθi を求め、ブロック3
−4で合成振幅値Sdを求める。ブロック3−5では信
号Scの極性を表す信号sgn(Sc)を求め、ブロッ
ク3−6でsgn(Sc)Sdを求めている。ブロック
3−7で数17のような位相値の非線形変換を行い、新
たな位相値θo を求め、ブロック3−8でcosθo を
求める。ブロック3−9の乗算器で数16のような信号
Sfを求め、ブロック3−10の減算器で数18のよう
なエッジ強調信号Sgが求められる。
【0051】図2(a)の主たるブロックにおける信号
波形として、図7(d)に信号Sd、図7(e)に信号
Se(但し、位相値π/2を1にノーマライズして表
示)、図7(f)に信号Sf(α=4の例)、そして図
7(g)に信号Sgを示す。次に、図1(b)に示すラ
インL2を介して信号Seが供給される制御信号形成回
路b−4の細分化したブロック構成図を図2(b)に示
す。ブロック4−1では数6で表される微分処理を行い
信号Shを得、ブロック4−2では数8〜数10で求め
られる制御信号k、即ち信号Siを求めている。
【0052】図5(d)及び図7(e)を見て分かるよ
うに、位相値の特性は計算上では−π/2〜π/2の範
囲内の値しか求められないので、これをそのまま微分す
ると−π/2からπ/2に変わる所が見かけ上の特異点
になり、大きな値になる。従って、位相値を微分する際
には、この特異点の検出とそこでの微分値の修正処理が
必要になる。
【0053】図2(c)はこの特異点処理を含んだ微分
回路の詳細ブロック構成図である。ブロック41−1は
微小単位時間Tの遅延回路であり、信号Se、即ち位相
値θi (t)から出力θi (t−T)を得ている。ブロ
ック41−3は、θi (t)が正の時にはπ/2を減算
し、負の時にはπ/2を加算して新たな位相値θi2
(t)得る変換器である。ブロック41−4は、θi
(t−T)が正の時にはπ/2を減算し、負の時にはπ
/2を加算して新たな位相値θi2(t−T)得る変換器
である。減算器であるブロック41−2では、θi
(t)からθi2(t)を減算し、やはり減算器であるブ
ロック41−5では、θi (t−T)からθi2(t−
T)を減算する。比較器のブロック41−6では、ブロ
ック41−2と41−5との出力の中で絶対値の小さい
方を得て、微分値Shとして出力している。
【0054】ブロック41−1、41−2、41−5な
どは汎用のディジタル回路で構成でき、またブロック4
1−3、41−4、41−6、4−2などは、予想され
る入力値に対応した出力値を予め計算して書き込んだ、
テーブルルックアップ方式のROMなどで構成すること
ができる。図2(b)記載の微分回路4−1の出力Sh
を図7(h)に、制御信号形成回路の出力Siを図8
(i)に示す。入力信号Saが2MHzの余弦波であ
り、図6のように制御信号の基準周波数を2MHzに設
定してあることから、信号Siは1なる一定値である。
【0055】図1(b)にもどって、ブロックb−5は
利得制御回路であり、この回路では、エッジ強調信号で
あるSgと制御信号であるSiとが供給され、次式のよ
うに、
【0056】
【数19】
【0057】信号SgがSi倍、即ちk倍された出力S
jが得られる。図8(j)がその波形図である。次の加
算器b−6では、入力信号Saにエッジ強調信号Sjを
加算し、ラインL3から最終出力信号Skが求められ
る。図8(k)がSkの波形図である。図7(a)のS
aと比較して、波形傾斜部(変化部)が明らかに急峻化
されている。
【0058】次に、余弦波入力信号Saの周波数fの値
を変えて、制御信号形成回路b−4及び利得制御回路b
−5の効果を確かめてみることにする。図9では余弦波
入力の周波数fの値を次式のように与えており、余弦波
を2サイクル描けるように時間軸を設定してある。
【0059】
【数20】
【0060】図10は図9の各々に対応する出力Skの
波形図である。図3と図6(b)との総合特性が現れて
おり、f=2MHzで最大のエッジ強調効果が現れてお
り、周波数が大きくなっても、小さくなってもその効果
が減少していく様子が良くわかる。低域側のエッジ強調
効果の減少は図3の高域濾波器の特性と図6(b)の制
御特性によるものであり、高域側の効果の減少は図6
(b)の制御特性によるものである。
【0061】図11は更に、高域濾波器のパラメータβ
の効果を見るためのものであり、β=1、即ちf1=f
2=4MHzとしたときの出力Skの波形図である。図
10に比較して、明らかにエッジ強調効果が弱くなって
いる。
【0062】次に、入力信号Saが図12(a)のよう
な右下がりの傾斜の場合について各部の応答波形を求め
てみることにする。この傾斜部は約2MHzの周波数成
分を持っている。図12(a)〜図13(k)は図7
(a)〜図8(k)に一対一に対応している。入力信号
Saと出力信号Skとを比較すると、明かなエッジ強調
効果が見られ、且つ不自然な感じを抱かせない滑らかな
強調効果であることが分かる。図12(a)は10μs
の正極性のパルスの右サイドから取ったものであるが、
エッジ強調処理によるそのスペクトルの変化を求めたも
のを図14に示す。図14(a)が信号Saのスペクト
ル、図14(b)が信号Skのスペクトルである。この
ように、本実施例による効果は入力信号の側波帯成分を
再生付加することで、強調効果を得ていることが分か
る。
【0063】エッジ強調効果に影響するもう1つのパラ
メータとして、波形形成器に於けるパラメータαがあ
る。その効果を確かめた波形図が図15である。図15
(a)はα=1、即ちエッジ強調効果のない出力Skの
波形図であり、図15(b)はα=2とした時の出力S
k、図15(c)はα=4とした時のSk、図15
(d)はα=8とした時のSkの波形図である。αの値
を大きくしていくにつれて、エッジ強調効果が大きくな
っていくことが分かる。しかし、あまりαの値を大きく
しても、効果自体が飽和してしまうので、α=8程度が
実用上の上限と思われる。
【0064】さて、非線形処理をディジタル回路で行う
場合に問題になることは、標本化周波数にもよるが、処
理過程における波形の零クロスのずれ、即ち位相歪が起
こりがちになることである。本発明に於ける波形々成器
では、直交及び同相高域濾波器から求めた信号の合成振
幅値と合成位相値を併用しているので、比較的こうした
歪は少ない方である。しかしながら、パラメータαの値
を大きくしていくと、やはりこうした現象を避けること
ができなくなる。この種の位相歪を回避するために、本
実施例では波形変化部の位相値を求め、この位相の変化
が周波数特性に対応していることを利用して制御信号k
の特性を定め、位相歪の起こりがちな高周波領域でのエ
ッジ強調処理を控えるように機能させ、位相歪の発生を
防いでいる。これにより、通常よりも低い値の標本化周
波数でも、非線形位相歪の弊害を避けることができる。
【0065】また、図1(b)の実施例ではエッジ強調
信号を得るために、非線形処理による波形形成器を使用
しているが、本発明はこうした非線形処理に限らず線形
処理によるものであってもなんら差し支えがなく、従来
技術の2次微分波形によるエッジ強調信号を用いること
もでき、これに周波数依存の最適な効果を発揮させるこ
とができる。
【0066】以上のように、本発明によるエッジ強調処
理では、入力信号と完全な相関関係があり、かつ自然な
形で滑らかに最適なエッジ強調成分が付加されるので、
この画質改善装置は、観賞者に対して違和感を与えるこ
となく、自然な形で、鮮鋭度及び解像度の向上感を抱か
せることができる。
【0067】次に、第2実施例(請求項3に対応)につ
いて説明する。図16は第2実施例のブロック構成図で
あり、また、図17は第2実施例の各ブロックの更に詳
細な構成例を示す図、図18〜図30は動作説明図であ
る。なお、動作説明図では、便宜上、簡略化した模擬的
な表現法も採用してある。また、具体的回路例としてデ
ジタル回路を挙げる場合でも、その動作説明をわかりや
すくするため、その回路の信号波形をアナログ波形とし
て示すものとする。
【0068】図16において、1−1は直交高域濾波
器、1−2は同相高域濾波器、1−3は波形形成器、1
−4は特性制御回路、そして1−5は加算器である。本
実施例の特徴は特性制御回路1−4の機能にある。波形
形成器などその他のブロックによる波形変化部の急峻化
処理については、本発明者による特願平3-313605号(整
理番号:H03000870、出願日:平成3年10月31日)、
及び特願平3-360616号(整理番号:H03001093、出願日:
平成3年12月27日)などで詳細に説明してあるの
で、ここでは必要最小限の簡略化した説明にとどめるこ
とにする。また、説明の便宜上、各回路自体の処理時間
による信号の遅れ、及びその遅れを単に補正するためだ
けに通常用いられる遅延回路等は、説明上必要な場合を
除いて省略するものとする。
【0069】本実施例の基本動作を理解するために、ラ
インL1からの入力信号Saが次式、即ち図20(a)
のような余弦波の場合を考える。
【0070】
【数1】
【0071】直交高域濾波器1−1では入力信号Saと
90゜の位相差を持つ直交成分Sbを得ている。次式が
Sbを表す式であり、図20(b)が波形図である。
【0072】
【数2】
【0073】また、同相高域濾波器1−2では入力信号
Saと同位相の同相成分Scを得ている。次式がScの
式であり、図20(c)がその波形図である。
【0074】
【数3】
【0075】次の波形形成器1−3では、直交高域濾波
器1−1から信号Sbと同相高域濾波器1−2からの信
号Scとを用いて、波形変化部を急峻化するための強調
信号Sgを形成している。信号Sgは非線形処理によっ
て求められている。更に、加算器1−5で入力信号Sa
にエッジ強調信号Sgを合成してラインL3から出力信
号Sjを得ている。波形形成器1−3では、非線形処理
を行うにあたり、高域周波数成分の位相値を使用してい
る。供給される2つの信号Sb及びScから、まず次式
のような演算により位相値θi 、即ち信号Seを求め
る。
【0076】
【数4】
【0077】この信号の場合には、更に次式のように簡
略化される。
【0078】
【数5】
【0079】位相値θi は図20(d)に示すように、
通常−π/2〜π/2の範囲で値が求められる。ライン
L2を介してSeが供給される特性制御回路1−4で
は、次式のような微分処理により位相値θi の傾斜を求
めている。
【0080】
【数6】
【0081】更に、この信号の場合には簡略化されて、
次式のようになる。
【0082】
【数7】
【0083】得られる微分値は、この例では図20
(e)のような負の一定値になるが、数7で明らかなよ
うに、周波数fの関数になっており、図21(a)の
のように周波数fに比例する特性になっている。今、f
=2MHzでの値をpとし、
【0084】
【数8】
【0085】数7をpでノーマライズすると、次式、即
ち図21(b)ののQ特性のように、基準点(f=2
MHz)で1となる直線状の特性になる。
【0086】
【数9】
【0087】数9のような周波数に比例する関係を使え
ば、周波数依存の任意特性を作ることが可能になる。例
えば、図21(b)のように(次式のように)、
【0088】
【数21】
【0089】周波数1〜2MHzで最大値=α2 になる
ような特性を作ることができる。数21で求めたαは、
図16の特性制御回路1−4の出力Siとして、波形形
成器1−5の非線形特性を制御するための制御信号に使
用され、図21(b)のような周波数特性のもとで制御
されたエッジ強調信号Sgが得られる。この特性制御回
路の特徴は、エッジ強調されるべき信号の周波数領域を
検出し、規定することで、無理のない自然な形での波形
の急峻化を行うことである。
【0090】さて、次に図17の第2実施例の細部構成
図などを用い、ラインL1にいくつかの具体的な信号を
入力させて、更に詳細な説明を行うことにする。この画
質改善装置の扱う入力信号の例としては、テレビジョン
の輝度信号、色信号、RGB信号等を想定している。上
限が4MHz迄の周波数成分を有するこれらの入力信号
に対し、以下での処理で信号の波形変化部に非線形処理
を施し、周波数帯域4MHzを越える側波帯成分を再生
付加することでエッジ強調を行っている。
【0091】まず、ラインL1から入来する入力信号S
aが、図22(a)に示すような余弦波の場合について
説明する。これは周波数f=2MHzの輝度信号の例で
ある。入力信号Saは、まず直交高域濾波器1−1に供
給される。この直交高域濾波器は周波数特性の虚数部が
次式で表わされ、
【0092】
【数11】
【0093】実数部が0であるような微分性の特性を有
している。低域の周波数特性を定めるパラメターβの値
は0〜1の範囲の値である。図18(a)はβが0.3
125、即ちf1=1.25MHzの時の周波数特性で
あり、図18(c)がそのインパルス応答である。Sa
に対して直交即ち90゜の位相差を有している。この時
の直交高域濾波器の出力波形Sbは、図22(b)のよ
うになる。一方、入力信号Saは、同相高域濾波器1−
2にも供給される。同相高域濾波器は周波数特性の実数
部が次式で表わされ、
【0094】
【数12】
【0095】虚数部が0であるような高域濾波特性を有
している。図18(b)はβが0.3125の時の周波
数特性であり、図18(d)がそのインパルス応答であ
り、Saに対して同位相である。この時の同相高域濾波
器の出力波形Scは図22(c)のようになる。直交高
域濾波器1−1と同相高域濾波器1−2とは、振幅特性
G(f)が同一で次式のような特性であり、
【0096】
【数13】
【0097】位相差がπ/2で、直交関係になってい
る。数11に示す特性は、虚数部に値を持つ高域濾波特
性であるので、その特性を有する濾波器を直交高域濾波
器と呼び、数12に示す特性は、実数部に値を持つ高域
濾波特性であるので、その特性を有する濾波器を同相高
域濾波器と呼んでいる。図18(a),(b)に示す特
性を、周波数の絶対値が0〜f1(=βf2)の範囲で
直線状に値が増加し、f1〜f2の間で一定値、f2以
上で0になるように設定したのは、テレビジョンの伝送
特性と微分性の高域濾波特性とを考慮したためである
が、結果的にこの設定は、本発明を効果的に機能させる
設定であった。
【0098】本発明は数11〜数13に於けるパラメー
タβを、0〜1の範囲で可変することにより(βが小さ
くなる程強調の度合いが強くなる)、最適なエッジ強調
を得る事ができる。最適なエッジ強調の度合いは、画面
に映し出された映像を見る人それぞれに個人差がある
が、本実施例は前述のようにパラメータβを調整するこ
とで各人に合った最適なエッジ強調を得ることができ
る。
【0099】次の波形形成器1−3には直交高域濾波器
1−1及び同相高域濾波器1−2からの信号Sb、Sc
が供給される。これらの信号は位相差がπ/2であり、
Sbを直交成分であることから縦軸に、そしてScを同
相成分であることから横軸に配置して図示すると、図1
9(a)のようになる。従って、直交成分と同相成分と
のベクトル合成により、次式のように、
【0100】
【数14】
【0101】2つの信号Sb、Scの2乗和の平方根か
ら、合成振幅Sdが求められる。Sdは当然のことなが
ら、負の値にはならない。また、同図から、合成位相θ
i は次式で求められる。
【0102】
【数15】
【0103】位相θi の値は、通常−π/2〜π/2の
範囲で計算される。この位相θi は信号Seとして出力
される。これらの合成振幅Sd及び合成位相θi などを
用いて非線形処理を行い、信号Scの波形変化部を急峻
化した信号Sfが次式のように求められる。
【0104】
【数16】
【0105】ここでの非線形処理の特徴は、数15で表
される位相θi をパラメータαを用いて、次式のように
して出力位相θoに変換することにある。
【0106】
【数17】
【0107】これは図19(b)において、1点鎖線
(α=1)の特性を実線(α=4の例)のように零位相
側によせる処理である。この非線形処理のパラメータα
の特性を決めるのが、特性制御回路1−4からの制御信
号である。前述の如く、このα特性の一例として図21
(b)のような周波数依存型の特性を用いているのが本
実施例の特徴である。かくして得られる波形形成器のエ
ッジ強調信号出力Sgは次式のように、信号SfとSc
との差として求められる。
【0108】
【数18】
【0109】図17(a)は波形形成器1−3を更に細
分化したブロック構成図である。なお、図17の符号
は、図2の符号と一致しても、同一の部分を表すもので
はない。ブロック3−1で数15に基づき位相θi を求
め、信号SeとしてラインL2から出力すると共に、ブ
ロック3−2でSb・sinθi の演算を行い、ブロッ
ク3−3でSc・cosθi を求め、ブロック3−4で
合成振幅値Sdを求めている。ブロック3−5では信号
Scの極性を表す信号sgn(Sc)を求め、ブロック
3−6でsgn(Sc)Sdを求めている。ブロック3
−7では特性制御回路から与えられたパラメータαによ
り、数17のような位相値の非線形変換を行い、新たな
位相値θo を求めている。次のブロック3−8ではco
sθo を求め、ブロック3−9の乗算器で数16のよう
な信号Sfを求め、ブロック3−10の減算器で数18
のようなエッジ強調信号Sgを求めている。
【0110】図17の主たるブロックにおける信号波形
として、図22(d)に信号Se(但し、位相値π/2
を1にノーマライズして表示)、図22(e)に信号S
d、図22(h)に信号Sf(α=4の例)、そして図
23(i)に信号Sgを示す。
【0111】さてラインL2を介して信号Seが供給さ
れる特性制御回路1−4の機能ブロック図を図17
(b)に示す。ブロック4−1では数6で表される微分
処理を行い信号Shを得、ブロック4−2では数8,数
9,数21で求められる制御信号α、即ち信号Siを求
めている。
【0112】図20(d)(及び図22(d))を見て
も分かるように、位相値の特性は計算上では−π/2〜
π/2の範囲内の値しか求まらないので、これをそのま
ま微分すると−π/2からπ/2に変わる所が見かけ上
の特異点になり、大きな値になる。従って、位相値を微
分する際には、この特異点の検出とそこでの微分値の修
正処理が必要になる。
【0113】図17(c)はこの特異点処理を含んだ微
分回路の詳細回路図である。ブロック41−1は微小単
位時間Tの遅延回路であり、信号Se即ち位相値θi
(t)から出力θi (t−T)を得ている。ブロック4
1−3は変換器であり、θi (t)が正の時にはπ/2
を減算し、負の時にはπ/2を加算して新たな位相値θ
i2(t)得る。ブロック41−4も変換器であり、θi
(t−T)が正の時にはπ/2を減算し、負の時にはπ
/2を加算して新たな位相値θi2(t−T)得る。減算
器のブロック41−2では、θi (t)からθi2(t)
を減算し、一方、やはり減算器のブロック41−5で
は、θi (t−T)からθi2(t−T)を減算してい
る。比較器のブロック41−6ではブロック41−2と
41−5の出力の中で絶対値の小さい方を得て、微分値
Shとして出力している。
【0114】ブロック41−1、41−2、41−5な
どは汎用のディジタル回路で構成でき、またブロック4
1−3、41−4、41−6、4−2などは、予想され
る入力値に対応した出力値を予め計算して書き込んだ、
テーブルルックアップ方式のROMなどで構成すること
ができる。
【0115】微分回路4−1の出力Shを図22(f)
に、特性制御回路の出力Siを図22(g)に示す。入
力信号Saが2MHzの余弦波であり、図21(a)及
び(b)のような変換を行う際の基準周波数を2MHz
に設定したこと等から、信号Siは4なる一定値とな
る。次の加算器1−5では入力信号Saにエッジ強調信
号Sgを加算し、次式のように、ラインL3から最終出
力信号Sjが求められる。
【0116】
【数22】
【0117】図23(j)がSjの波形図であるが、図
22(a)のSaと比較して、波形傾斜部(変化部)が
明らかに急峻化されている。次に、余弦波入力信号Sa
の周波数fの値を変えて、特性制御回路1−4の効果を
確かめてみることにする。図24では余弦波入力の周波
数fの値を次式のように与えており、余弦波を2サイク
ル描けるように時間軸を設定して波形図を描いてある。
【0118】
【数23】
【0119】図25は図24の各々に対応する出力信号
Sjの波形図であるが、図18と図21(b)との総合
特性の影響が出ており、f=2MHzの波形図に最大の
エッジ強調効果が見られ、更に周波数が大きくなって
も、小さくなってもその効果が減少していく様子が良く
わかる。低域側のエッジ強調効果の減少は図18の高域
濾波器の周波数特性と図21(b)の特性によるもので
あり、高域側の効果の減少は図21(b)の特性による
ものである。図26は更に、高域濾波器のパラメータβ
の効果を見るためのものであり、β=1、即ちf1=f
2=4MHzとしたときの出力信号Sjの波形図であ
る。図25に比較して、明らかにエッジ強調効果が弱く
なっている。
【0120】次に、入力信号Saが図27(a)のよう
な右下がりの傾斜の波形の場合について、各部の応答を
求めてみることにする。この傾斜部は約2MHzの周波
数成分を持っている。図27(a)〜図28(j)は図
22(a)〜図23(j)に一対一に対応している。入
力信号Saと出力信号Sjとを比較すると、明かなエッ
ジ強調効果が見られ、且つ不自然な感じを抱かせない滑
らかな強調効果であることが分かる。
【0121】図27(a)は10μsの正極性のパルス
の右サイドから取ったものであるが、エッジ強調処理に
よるそのスペクトルの変化を求めたものを図29に示
す。図29(a)が入力信号Saのスペクトル、図29
(b)が出力信号Sjのスペクトルである。
【0122】このように本実施例では波形形成器の非線
形処理で、入力信号の側波帯成分を再生し、入力信号に
付加することで、強調効果を得ていることが確認でき
る。
【0123】エッジ強調効果に影響するもう1つのパラ
メータとして、波形形成器に特性制御回路によって設定
されるパラメータαがある。その効果を確かめた波形図
が図30である。図30(a)は、α2 =α1 =α0 =
1、即ちエッジ強調を行わない時の出力信号Sjの波形
図であり、図30(b)は、α2 =2、α1 =4/3、
α0 =1とした時の出力Sj、図30(c)は、α2 =
4、α1 =2、α0 =1とした時のSj、図30(d)
は、α2 =8、α1 =10/3、α0 =1とした時のS
jの波形図である。αの値を大きくしていくにつれて、
エッジ強調効果が大きくなっていくことが分かる。しか
し、あまりαの値を大きくしても、効果自体が飽和して
しまうので、α2 =8程度が実用上の上限と思われる。
【0124】さて、非線形処理をディジタル回路で行う
場合に問題になることは、標本化周波数にもよるが、処
理過程における波形の零クロスのずれ、即ち位相歪が起
こりがちになることである。本発明における波形形成器
では、直交及び同相高域濾波器から求めた信号の合成振
幅値と合成位相値を併用しているので、比較的こうした
歪は少ない方である。しかしながら、パラメータαの値
を大きくしていくと、やはりこうした現象を避けること
が出来なくなる。
【0125】この種の位相歪を回避するために、本実施
例では波形変化部の位相値を求め、この位相の変化が周
波数特性に対応していることを利用して制御信号αの特
性を定め、位相歪の起こりがちな高周波領域でのエッジ
強調処理を控えるように機能させ、位相歪の発生を防い
でいる。これにより、通常よりも低い値の標本化周波数
でも、非線形位相歪の弊害を避けることができる。ま
た、低周波領域についてもαの特性を抑えているのは、
あまり緩やかな傾斜部の中程に段差を付けるのもおかし
な感じがすると思われるからである。このように、特性
制御回路を使って最適なエッジ強調効果を得ることがで
きる。
【0126】また、図16の実施例ではエッジ強調信号
を得るために、非線形処理を行っているが、本発明はこ
うした非線形処理に限らず線形処理によるものであって
もなんら差し支えがなく、例えば従来技術の2次微分波
形によるエッジ強調信号の大きさを特性制御回路で制御
するなどにより、最適な周波数依存型の強調効果を得る
こともできる。
【0127】以上のように、本発明によるエッジ強調処
理では、入力信号と完全な相関関係があり、かつ自然な
形で滑らかに最適なエッジ強調成分が付加されるので、
この画質改善装置は、観賞者に対して違和感を与えるこ
となく、自然な形で、鮮鋭度及び解像度の向上感を抱か
せることができる。
【0128】次に、第3実施例(請求項4に対応)につ
いて説明する。図31は画質改善装置の第3実施例のブ
ロック構成図である。また、図32は第3実施例内の制
御回路と移相器との詳細な構成例を示す図、図33〜図
45は第3実施例の動作説明図である。動作説明図で
は、便宜上、簡略化した模擬的な表現法も採用してあ
る。また、具体的回路例としてデジタル回路を挙げる場
合でも、その動作説明をわかりやすくするため、その回
路の信号波形をアナログ波形として示すものとする。
【0129】まず、図31を用いて第3実施例の特徴と
なる機能を説明する。図において、2−1は直交高域濾
波器、2−2は同相高域濾波器、2−3は位相検出回
路、2−4は制御回路、そして2−5は移相器である。
なお、説明の便宜上、各回路自体の処理時間による信号
の遅れ、及びその遅れを単に補正するためだけに通常用
いられる遅延回路等は、説明上必要な場合を除いて省略
するものとする。
【0130】ラインL1からの入力信号Saは、まず2
つの高域濾波器2−1及び2−2に加えられ高域成分が
抽出される。直交高域濾波器2−1は周波数特性の虚数
部が次式で表わされ、
【0131】
【数24】
【0132】実数部が0であるような微分性の特性を有
している。低域の周波数特性を定めるパラメターβの値
は0〜1の範囲の値である。図33(a)はβが0.2
5、即ちf1=1MHzの時の周波数特性であり、図3
3(c)がそのインパルス応答である。Saに対して直
交即ち90゜の位相差の高域成分Sbが取り出される。
一方、同相高域濾波器2−2は周波数特性の実数部が次
式で表わされ、
【0133】
【数25】
【0134】虚数部が0であるような高域濾波特性を有
している。図33(b)はβが0.25の時の周波数特
性であり、図33(d)がそのインパルス応答である。
Saに対して同位相の高域成分Scが取り出される。直
交高域濾波器2−1と同相高域濾波器2−2とは、振幅
特性G(f)が同一で次式のような特性になっており、
【0135】
【数26】
【0136】それぞれの高域成分出力は位相差がπ/2
で、直交関係になっている。数24に示す特性は、虚数
部に値を持つ高域濾波特性であるので、その特性を有す
る濾波器を直交高域濾波器と呼び、数25に示す特性
は、実数部に値を持つ高域濾波特性であるので、その特
性を有する濾波器を同相高域濾波器と呼んでいる。図3
3(a),(b)に示す特性を、周波数の絶対値が0〜
f1(=βf2)の範囲で直線状に値が増加し、f1〜
f2の間で一定値、f2以上で0になるように設定した
のは、テレビジョンの伝送特性と微分性の高域濾波特性
とを考慮したためであるが、結果的にこの設定は、本発
明を効果的に機能させる設定であった。
【0137】ラインL1からの入力信号Saの例とし
て、図35(a)のような余弦波を考える。その周波数
fは図33(a)及び(b)の輝度信号領域内の値(2
MHz前後)とする。Saを次式で表す事にすれば、
【0138】
【数27】
【0139】直交高域濾波器2−1からの出力Sbは次
式のようになり、波形図は図35(b)のようになる。
【0140】
【数28】
【0141】また、同相高域濾波器2−2からの出力S
cは次式及び図35(c)の様になる。
【0142】
【数29】
【0143】位相検出回路2−3には直交高域濾波器2
−1及び同相高域濾波器2−2からの信号Sb、Scが
供給される。これらの信号は位相差がπ/2であり、S
bを直交成分であることから縦軸に、そしてScを同相
成分であることから横軸に配置して図示すると、図34
(a)のようになる。従って、直交成分と同相成分との
ベクトル合成により、次式のような合成位相θi
【0144】
【数30】
【0145】が求められる。位相値θi は、通常−π/
2〜π/2の範囲で計算される。ピタゴラスの定理によ
って求めた合成振幅Am(次式に示す)も参考の為に図
示してある。
【0146】
【数31】
【0147】入力信号Saが数27の場合には、数30
の合成位相値θi は次式の数32となり、
【0148】
【数32】
【0149】数31の合成振幅値Amは次式の数33の
ように1になる。
【0150】
【数33】
【0151】位相検出回路2−3からは次式のように求
めた位相値を信号Sdとして、ラインL2を介して出力
される。図35(d)がSd(= θi )の波形図であ
る。
【0152】
【数34】
【0153】次段の制御回路2−4では、まず位相値θ
i (= Sd)が−π/2〜π/2の範囲の値である事を
考慮して、次式のようにパラメ−タα(≧1)を用いた
非線形処理を行い、
【0154】
【数35】
【0155】新たな位相値θo (= 信号Se、出力位
相)に変換する。この非線形処理をθi>0の範囲で図
示すると図34(b)のようになる。1点鎖線がα=1
即ち非線形処理を行わない時の入出力特性であり、太い
実線がα=4として非線形処理を行った時の特性であ
る。このようにαの値を大きくして零位相に近づける変
換処理をしている。次に、次式のように非線形変換処理
前後の位相値の差 dθを求め、これを信号Sfとする。
【0156】
【数36】
【0157】一方、入力位相値θi (= Sd)に対して
次式のように時間微分を行い、位相値θi の時間変動値
Sgを求めている。
【0158】
【数37】
【0159】数32を考慮すれば、例として取り上げた
信号の場合には更に簡略化されて、次式のようになる。
【0160】
【数38】
【0161】得られる微分値はこの例では図35(e)
のような負の一定値になるが、数38で明らかなよう
に、周波数fの関数になっており、図36(a)のの
ような周波数fに比例する特性になる。今、基準周波数
foを2MHzとし、foでのSgの値をPとし、数3
7(数38)をPでノーマライズすると、数39(数4
0)、即ち図36(a)ののQ特性のように、基準周
波数fo=2MHzで1となる直線状の特性になる。
【0162】
【数39】
【0163】
【数40】
【0164】数40のような周波数に比例する関係を使
えば、周波数依存の任意特性を作ることが可能になる。
例えば、次式即ち、図36(b)ののように
【0165】
【数41】
【0166】周波数0〜2MHzの間で1で、周波数2
〜4MHzの間で直線状に減少し、他の周波数領域で零
となるような特性K(信号Sh)を作ることができる。
この周波数依存の特性曲線は後で説明する入力信号の移
相制御(所定時間隔てた信号値を移動して、元信号値と
入れ換える処理)のパラメータの1つとして使用され
る。この移相制御を理想的に行おうとする場合には、次
式のK’特性(図36(b)のに図示)のように、
【0167】
【数42】
【0168】Qの逆数に設定すればよい。しかし、K’
特性の代わりにK特性を用いるのは、利かせ過ぎの弊害
を配慮したためである。数36のSfと数41のShと
から移相制御の際の移相量即ち移相時間Tdが次式で求
められる。
【0169】
【数43】
【0170】この移相時間Tdを単位時間、例えば標本
化周期tsでノーマライズすれば、何単位離れた信号を
移相すればよいかが分かる。この関係を次式に示す。
【0171】
【数44】
【0172】図37に信号の標本値と移相時間との関係
を示してある。Xnが信号の標本値であり、中央のX0
の値をX1 とX2 の中間にあたるYで置き換える処理を
行う為に、前記の移相時間TdそしてSiを求めてい
る。次段の移相器2−5では数44の信号Siの制御に
基づき、入力信号SaをSa自身の前後の値で置き換え
る、次式のような移相処理を行っている。
【0173】
【数45】
【0174】Siの値はSaの波形変化部で大きな値に
なるので、この性質を使ってエッジ強調処理を行い出力
信号Sjが求められる。以上が第3実施例の概念であ
る。更に、このエッジ強調の度合いを、好みに合わせて
調整したい場合には、例えば数46のように、
【0175】
【数46】
【0176】信号SjとSaとの差を求め、これを増幅
率γで増減する信号Skを求め、これをエッジ強調成分
として数47の様に、入力信号Saに重畳することで、
目的が達せられる。
【0177】
【数47】
【0178】さて、次に図32の細部構成図などを用
い、ラインL1からいくつかの具体的な信号を入力しな
がら、更に詳細な説明を行うことにする。この画質改善
装置の扱う入力信号の例としては、テレビジョンの輝度
信号、色信号、RGB信号等を想定している。上限が4
MHz迄の周波数成分を有するこれらの入力信号に対
し、以下での処理で信号の波形変化部に非線形処理を施
し、周波数帯域4MHzを越える側波帯成分を再生付加
することでエッジ強調を行っている。
【0179】まず、ラインL1から入来する入力信号S
aが、図38(a)に示すような余弦波の場合について
説明する。これは周波数f=2MHzの輝度信号の例で
ある。
【0180】図31において入力信号Saは、まず直交
高域濾波器2−1に供給される。低域の特性を定めるパ
ラメターβの値は0.25、即ちf1=1MHzに設定
してある。この直交高域濾波器の出力波形Sbは、図3
8(b)のようになる。一方、入力信号Saは、同相高
域濾波器2−2にも供給される。低域の特性を定めるパ
ラメタ−βの値は直交高域濾波器と同じで、0.25、
即ちf1=1MHzに設定してある。この同相高域濾波
器の出力波形Scは図38(c)のようになる。Sbと
Scとは位相差がπ/2で、直交関係になっている。
【0181】2つの高域濾波器からの信号SbとScと
が供給された2−3の移相検出回路では、数30に基づ
き位相値θi が求められる。位相値θi 、即ち信号Sd
の波形図を図38(d)に示す。図ではSdを数48の
ように、π/2でノーマライズして−1〜1の範囲でS
dz(=θiz、なお添え字のzは簡略化表現を示す記号と
する。以下同主旨)として表示してある。
【0182】
【数48】
【0183】数34を数48のような形にすると、すで
に概略説明の中で用いた、これに関連する信号Se、S
f、Sgは各々次式の、数49、数50、数51の信号
Sez、Sfz、Sgzのように簡略化される。
【0184】
【数49】
【0185】
【数50】
【0186】
【数51】
【0187】更に、数39のQは値そのものに変化はな
いが、内容上は下記の数52のようになる。数43の移
相時間Tdも値そのものに変化はないが、下記の数53
のような形で求められることになる。
【0188】
【数52】
【0189】
【数53】
【0190】ここで、話を元に戻して図31の説明を続
ける事にする。位相検出回路2−3の出力Sdはライン
L2を介して次の制御回路2−4に供給される。図32
(a)が制御回路の内部構成例である。なお、図32の
符号は、図2、図17の符号と一致しても、同一の部分
を表すものではない。信号Sdはまず、ブロック4−1
に加えられる。これはテーブルルックアップ方式のRO
Mなどで構成された非線形変換器であり、Sd即ち位相
値θi に数35の様な処理を行い、出力位相値θo (=
Se)を求めている。図38(e)はパラメータα=4
のときの出力位相値の波形図である。この波形図はピー
ク値を1にノーマライズしてあり、数49に基づき表示
している。
【0191】次のブロック4−2は減算器であり、Sd
とSeとの差即ち位相差(θi −θo )を数36のよう
にして dθを求め、信号Sfを得ている。図38(f)
にSfの波形図を示してあるが、やはりノーマライズし
た数50のSfzのように表示している。
【0192】ブロック4−3では数37(または数5
1)の位相微分を行っている。図35(d)(及び図3
8(d))を見ても分かるように、位相値の特性は計算
上では−π/2〜π/2の範囲内の値しか求まらないの
で、これをそのまま微分すると−π/2からπ/2に変
わる所が見かけ上の特異点になり、大きな値になる。従
って、位相値を微分する際には、この特異点の検出とそ
こでの微分値の修正処理が必要になる。
【0193】図32(b)はこの特異点処理を含んだ微
分回路の詳細回路図である。ブロック43−1と43−
2は微小単位時間Tの遅延回路であり、信号Sd即ち位
相値θi (t)から時間Tだけ前の値θi (t−T)
と、更に時間Tだけ前の値θi (t−2T)を得てい
る。ブロック43−3ではθi (t)が正の時にはπ/
2を減算し、負の時にはπ/2を加算して新たな位相値
θi2(t)得る変換器である。ブロック43−4では
θi (t−T)が正の時にはπ/2を減算し、負の時に
はπ/2を加算して新たな位相値θi2(t−T)得る、
やはり変換器である。ブロック43−5では θi (t
−2T)が正の時にはπ/2を減算し、負の時にはπ/
2を加算して新たな位相値θi2(t−2T)得る、やは
り変換器である。
【0194】ブロック43−6〜43−9は減算器であ
り、ブロック43−6ではθi (t)からθi (t−
T)を減算し、ブロック43−7ではθi (t−T)か
らθi(t−2T)を減算し、ブロック43−8ではθi
2(t)からθi2(t−T)を減算し、ブロック43−
9ではθi2(t−T)からθi2(t−2T)を減算して
いる。
【0195】ブロック43−Aは比較器であり、ブロッ
ク43−6と43−8の出力の中で絶対値の小さい方の
値を出力している。ブロック43−Bも比較器であり、
ブロック43−7と43−9の出力の中で絶対値の小さ
い方の値を出力している。ブロック43−Cは加算器で
あり、ブロック43−Aと43−Bからの信号を合成し
て微分値Sgとして出力する。ブロック43−1、43
−2、43−6〜43−9、43−Cなどは汎用のディ
ジタル回路で構成でき、他のブロック43−3〜43−
5、43−A、43−Bなどは、予想される入力値に対
応した出力値を予め計算して書き込んだ、テ−ブルルッ
クアップ方式のROMなどで構成することができる。
【0196】微分回路4−3の出力Sgを図38(g)
に示してあるが、実際の表示には数51のSgzを用いて
いる。位相値θi の波形図が図38(d)のように右下
がりであることから分かるように、負の一定値になる。
ブロック4−4は図36(a)について説明したよう
に、供給される信号Sgを数38に見立てて、基準周波
数fo(2MHzに設定)でのSgの値(=P)でノー
マライズし、数39(数40)のQ特性を求め、図36
(b)の即ち、数41の様な制御特性K(=Sh)を
求めている。このブロックの機能もまた、予想される入
力値に対応した出力値を予め計算して書き込んだ、テー
ブルルックアップ方式のROMなどで構成することがで
きる。信号Shの波形図を図38(h)に示すが、この
場合は値が1の一定値である。この制御特性Kは信号S
hとして次段に供給される。
【0197】ブロック4−5では供給される信号Sfと
Shとから、数43そして数44のように、移相時間T
dを求め、さらにこれを単位時間tsで換算して信号S
iを求め、ラインL3から出力される。単位時間tsは
ディジタル回路で扱う場合には標本化周期と考えてよ
い。図39(i)がSiの波形図である。
【0198】図31に戻って、信号SaとSiが供給さ
れる移相器2−5の具体回路構成例を図32(c)に示
す。ラインL1を介して供給される信号Saはまず、遅
延回路ブロック5−1に入る。この遅延回路は縦続接続
された偶数個(2N個)の単位遅延回路(ブロック3−
1〜3−2N)から成っており、各単位遅延回路の入出
力端よりXN 〜X0 〜X-Nなる2N+1個の信号を出力
している。この信号配列は図37に対応しており、X0
が移相処理の基準となる中央値である。XN 〜X0 〜X
-Nなる2N+1個の信号は次のブロック5−2及び5−
3のスイッチ回路に供給される。これらのスイッチ回路
は後述のブロック5−5からの制御信号により、入力さ
れる2N+1個の信号の中から1つの信号を選択して出
力する働きをする。
【0199】さて、ラインL3から供給された信号Si
はまず、遅延回路5−4で前述のブロック5−1の入力
Saが中央値X0 として出力される迄の遅延時間を補正
され、更にブロック5−5で図37に示したように、中
央値X0 から単位時間ts喚算で何番目(XA)と何番
目(XB)の間の信号をYとするかを信号Siから割り
出し、ブロック5−2と5−3のスイッチ開閉の為の制
御信号を作りまた、前述のXAとその1つ隣のXBとの
信号の混合率をブロック5−6と5−7に設定する働き
をしている。ブロック5−2から出力される信号をX
A、ブロック5−3から出力される信号をXB、ブロッ
ク5−6で与えられる混合率をa、ブロック5−7で与
えられる混合率をbとし、次の加算器5−8で次式のよ
うに2つの信号が合成された信号Yを得る。
【0200】
【数54】
【0201】この信号YがラインL4から信号Sjとし
て出力される。図39(j)がSjの波形図である。こ
のSjが図31の最終出力信号であるが、図38(a)
の入力信号Saの波形図と比較すると明かなエッジ強調
効果が分かる。概論で触れたように、これに更に図32
(d)のようなエッジ強調度合いを調節する回路を付け
加えることも出来る。
【0202】減算器6−1では信号SjからSaを減算
し、その出力を増幅率γの増幅器6−2でγ倍に増幅し
て信号Skを得、加算器6−3で入力信号SaにSkを
加算して信号SlをラインL5を介して出力している。
増幅率γの値を調節することによって、最適なエッジ強
調効果を得る事ができる。図39(k)が増幅率γ=
0.5の時の信号Skの波形図であり、図39(l)が
信号Slの波形図である。この例はエッジ強調効果を半
減してみた例である。
【0203】次に、余弦波入力信号Saの周波数fの値
を変えて、エッジ強調の効果を確かめてみることにす
る。図40は余弦波入力信号Saの波形図であり、周波
数fの値を次のように与え、余弦波を2サイクル描ける
ように時間軸を設定して描いてある。 図40(a) ... f=1.00MHz 図40(b) ... f=2.00MHz 図40(c) ... f=3.00MHz 図40(d) ... f=3.58MHz
【0204】図41(a)〜(d)は図40(a)〜
(d)の各々に対応する図31の出力信号Sjの波形図
であるが、図33と図36との総合特性の影響が出てお
り、f=2MHzの波形図に最大のエッジ強調効果が見
られ、更に周波数が大きくなっても、小さくなってもそ
の効果が減少していく様子が良くわかる。図33の高域
濾波器は位相の検出感度と位相特性(位相の時間変化)
に影響し、図36の制御特性は前述の高域濾波器の影響
を加味した、任意の周波数依存の特性を設定するために
利用できる。
【0205】なお、高域濾波器のパラメータβは、主と
して感度向上、特に低域周波数成分の位相特性への影響
を考慮して、0.25前後の小さめの値に設定した方が
よい。
【0206】次に、入力信号Saが図42(a)のよう
な右下がりの傾斜の波形について各部の応答を求めてみ
ることにする。この傾斜部は約2MHzの周波数成分を
持っている。図42(a)〜図43(l)は図38
(a)〜図39(l)に一対一に対応している。入力信
号Saと第1の出力信号Sjとを比較すると、明かなエ
ッジ強調効果が見られ、且つ不自然な感じを抱かせない
滑らかな強調効果であることが確認できる。図43
(k)については増幅率γの値を1.25としてあるの
で、図43(l)の第2の出力信号Slは前述のSjに
比較して、更にエッジ強調の度合いが進んでいることが
わかる。
【0207】図42(a)の入力信号Saは5μsの正
極性のパルスの右サイドから取ったものであるが、エッ
ジ強調処理によるそのスペクトルの変化を求めたものを
図44に示す。図44(a)が入力信号Saのスペクト
ル、図44(b)が第1の出力信号Sjのスペクトル、
図44(c)がエッジ強調信号Skのスペクトル、そし
て図44(d)が第2の出力信号Slのスペクトルであ
る。このように本提案では制御回路及び移相器の働きに
より、入力信号Saの側波帯成分を再生し、これに付加
することで、強調効果を得ていることが確認できる。
【0208】エッジ強調効果に影響するもう1つのパラ
メータとして、制御回路で位相値を非線形処理する際に
使用したパラメータαがある。その効果を確かめた波形
図が図45である。図45(a)は入力信号Saの波形
図であり、図45(b)はα=2とした時の出力信号S
j、図45(c)はα=4とした時のSj、図45
(d)はα=8とした時のSjの波形図である。αの値
を大きくしていくにつれて、エッジ強調効果が大きくな
っていくことが分かる。しかし、あまりαの値を大きく
しても、効果自体が飽和してしまうので、α=8程度が
実用上の上限と思われる。ちなみに、α=1はエッジ強
調を行わないでそのまま出力する、Sj=Saとなる処
理である。
【0209】さて、非線形処理をディジタル回路で行う
場合に問題になることは、標本化周波数にもよるが、処
理過程における波形の零クロス点のずれ、即ち位相歪が
起こりがちになることである。本発明では、直交及び同
相高域濾波器から求めた信号の合成位相値を併用してい
るので、比較的こうした歪は少ない方である。しかしな
がら、パラメータαの値を大きくしていくと、やはりこ
うした現象を避けることが出来なくなる。
【0210】この種の位相歪を回避するために、本提案
では波形変化部の位相値を求め、この位相の変化が周波
数特性に対応していることを利用して制御特性を定め、
位相歪の起こりがちな高周波領域でのエッジ強調処理を
控えるように機能させ、位相歪の発生を防いでいる。こ
れにより、通常よりも低い値の標本化周波数でも、非線
形位相歪の弊害を避けることができる。また、低周波領
域について移相特性を抑えているのは、あまり緩やかな
傾斜部の中程に段差を付けるのもおかしな感じがすると
思われるからである。このように、制御回路を使って波
形変化部の周波数特性に適合した移相処理を行えるの
で、最適なエッジ強調効果を得ることができる。また、
図31の実施例でエッジ強調信号を得るために、非線形
処理を行っているが、その非線形処理は数35に示す処
理に限らず他の非線形処理を用いることもできる。例え
ば、本発明者による特願平3-313605号(整理番号:H0300
0870、出願日:平成3年10月31日)、及び特願平3-
360616号(整理番号:H03001093、出願日:平成3年12
月27日)などで示した、いくつかの非線形位相処理を
応用することにより、用途に合わせた最適な周波数依存
型の強調効果を得ることもできる。
【0211】以上のように、第3実施例によるエッジ強
調処理では、入力信号と完全な相関関係があり、かつ自
然な形で滑らかに最適なエッジ強調成分が付加されるの
で、この画質改善装置は、観賞者に対して違和感を与え
ることなく、自然な形で、鮮鋭度及び解像度の向上感を
抱かせることができる。
【0212】上述の第1〜第3実施例の構成要素の各ブ
ロック自体は、周知の回路で市販のIC等を用いて簡単
に構成できるので、各実施例とも、装置全体は低コスト
で実現できる。
【0213】また、第1〜第3実施例の説明では、入力
信号例として、テレビジョン信号の輝度信号を用いた
が、本発明の画質改善装置は色信号やRGB信号などに
も適用できる。また、ディジタル化された画像データに
対しても、本発明と等価な輪郭補正処理、エッジ強調処
理、拡大縮小画像データに対する同様の処理などを、コ
ンピュータを使用したソフトウェア処理によって実現で
き、また画像データのソフトウェアによる加工処理にも
応用できることになる。NTSCからHDTVに至る各
種の放送方式、これらの信号を記録再生するVTR、ま
た各種のコンピュータ画像など、低解像度から高解像度
の再生画像の画質の均一化に特に効果がある。更に、本
発明は、一般のデジタル伝送通信系の波形劣化を改善す
ることにも有効である。
【0214】
【発明の効果】以上の通り本発明の画質改善装置は、以
下の効果を有する。(イ)エッジ強調を、入力信号の波
形変化部(傾斜部分)の略中点位置に波形段差を適格に
付加することにより行い、その結果入力信号の有する周
波数帯域外の周波数成分が付加された出力信号が得ら
れ、再生画像の輪郭が強調される。(ロ)従来の輪郭補
正のようなプリシュート、オーバーシュートなどの原信
号の振幅を越えたエッジ強調に対し、この発明のエッジ
強調は、原信号の振幅内の振幅変化に極力押え込むこと
ができるエッジ強調である。従って、この画質改善装置
を組込んだ機器を、デジタル回路で構成した場合でもオ
ーバーフローの問題が発生せず、その機器は良好な画質
改善が行える。
【0215】(ハ)入力信号に対する波形エッジ強調の
度合は、入力信号の含有周波数に依存すると共に、その
度合は振幅情報と位相情報とを含めて完全な相関関係が
保たれておる。また、このエッジ強調成分は波形変化部
を滑らかに急峻化させる。従って、処理後の画質は観賞
者に対して違和感を与えることなく、この画質改善装置
は、自然な形で鮮鋭度及び解像度の向上感を抱かせるこ
とができる。 (ニ)非線形処理によりエッジ強調処理を行っているの
にも関わらず、互いに直交関係にある同相及び直交高域
濾波器からの信号により得られる合成振幅及び合成位相
による非線形処理なので、原信号との相関性が保たれた
滑らかな波形急峻化が行われる。
【0216】(ホ)含有周波数を考慮したエッジ強調処
理を行っているので、ディジタル回路で構成する場合で
も、非線形位相歪が特に少ないなど、(ハ)で述べた効
果がディジタル構成の場合でも十分に発揮できる。 (ヘ)波形形成器、同相及び直交高域濾波器のパラメー
タ、そして制御信号の特性を最適化することで、波形形
成器の非線形処理を効果的に機能させることができる。 (ト)本発明の画質改善装置における各構成要素自体
は、市販のIC等の汎用部品を用いて、簡単な回路構成
で実現できるので、この画質改善装置は装置全体が低コ
ストであると共に、容易に製造でき、さらに幅広い用途
を有しているので工業上有効、有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念図と第1実施例とを示す図であ
る。
【図2】第1実施例の波形形成器及び制御信号形成回路
の具体的な構成例を示す図である。
【図3】第1実施例の動作説明図である。
【図4】第1実施例の動作説明図である。
【図5】第1実施例の動作説明図である。
【図6】第1実施例の動作説明図である。
【図7】第1実施例の動作説明図である。
【図8】第1実施例の動作説明図である。
【図9】第1実施例の動作説明図である。
【図10】第1実施例の動作説明図である。
【図11】第1実施例の動作説明図である。
【図12】第1実施例の動作説明図である。
【図13】第1実施例の動作説明図である。
【図14】第1実施例の動作説明図である。
【図15】第1実施例の動作説明図である。
【図16】本発明の第2実施例のブロック構成図であ
る。
【図17】第2実施例の波形形成器及び特性制御回路の
具体的な構成例を示す図である。
【図18】第2実施例の動作説明図である。
【図19】第2実施例の動作説明図である。
【図20】第2実施例の動作説明図である。
【図21】第2実施例の動作説明図である。
【図22】第2実施例の動作説明図である。
【図23】第2実施例の動作説明図である。
【図24】第2実施例の動作説明図である。
【図25】第2実施例の動作説明図である。
【図26】第2実施例の動作説明図である。
【図27】第2実施例の動作説明図である。
【図28】第2実施例の動作説明図である。
【図29】第2実施例の動作説明図である。
【図30】第2実施例の動作説明図である。
【図31】第3実施例ブロック構成図である。
【図32】第3実施例内の制御回路と移相器との詳細な
構成例を示す図である。
【図33】第3実施例の動作説明図である。
【図34】第3実施例の動作説明図である。
【図35】第3実施例の動作説明図である。
【図36】第3実施例の動作説明図である。
【図37】第3実施例の動作説明図である。
【図38】第3実施例の動作説明図である。
【図39】第3実施例の動作説明図である。
【図40】第3実施例の動作説明図である。
【図41】第3実施例の動作説明図である。
【図42】第3実施例の動作説明図である。
【図43】第3実施例の動作説明図である。
【図44】第3実施例の動作説明図である。
【図45】第3実施例の動作説明図である。
【符号の説明】
a−1 高域濾波器 a−2 位相検出器 a−3 波形形成器 a−4 制御信号形成回路 a−5 利得制御回路 a−6 加算器

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入力信号から高域周波数成分を抽出する高
    域濾波器と、 前記高域周波数成分の位相値を検出する位相検出器と、 前記位相値から少なくとも微分回路を用いて所定周波数
    特性に依存した制御信号を形成する制御信号形成回路
    と、 前記高域周波数成分から第1の波形エッジ強調信号を得
    る波形形成器と、 前記第1の波形エッジ強調信号を前記制御信号に応じて
    制御し、第2の波形エッジ強調信号を得る制御回路と、 前記入力信号に前記第2の波形エッジ強調信号を加算す
    る加算器とにより構成し、 前記入力信号の波形変化部を急峻化した出力信号を得る
    ことを特徴とする画質改善装置。
  2. 【請求項2】入力信号を第1の信号とし、 前記第1の信号が供給され、第2の信号を出力する直交
    高域濾波器と、 前記第1の信号が供給され、第3の信号を出力する同相
    高域濾波器と、 前記第2及び第3の信号が供給され、この2つの信号を
    ベクトル合成することによって得られる振幅値と位相値
    とを用いた非線形処理を行い、前記第1の信号の波形変
    化部を急峻化するための第1の波形エッジ強調信号であ
    る第4の信号を出力する波形形成器と、 前記第2及び第3の信号から得られる前記位相値から、
    所定周波数特性に依存した制御信号である第5の信号
    を、少なくとも微分回路を用いて得る制御信号形成回路
    と、 前記第4及び第5の信号が供給され、前記第4の信号の
    大きさを前記第5の信号に応じて制御して得た第2の波
    形エッジ強調信号である第6の信号を出力する利得制御
    回路と、 前記第1の信号に前記第6の信号を加算する加算器とに
    より構成し、 前記入力信号の波形変化部を急峻化した出力信号を得る
    ことを特徴とする画質改善装置。
  3. 【請求項3】入力信号を第1の信号とし、 前記第1の信号が供給され、第2の信号を出力する直交
    高域濾波器と、 前記第1の信号が供給され、第3の信号を出力する同相
    高域濾波器と、 前記第2及び第3の信号が供給され、この2つの信号を
    ベクトル合成することによって得られる振幅値と位相値
    とを用いた非線形処理を行い、前記第1の信号の波形変
    化部を急峻化するためのエッジ強調信号である第4の信
    号を出力する波形形成器と、 前記第2及び第3の信号から得られる前記位相値から、
    少なくとも微分手段を用いて、所定周波数特性に依存し
    た制御信号である第5の信号を得る特性制御回路と、 前記第1の信号に前記第4の信号を加算する加算器とに
    より構成し、 前記波形形成器は、前記第4の信号を得るための前記非
    線形特性を前記第5の信号に応じて制御し、 前記入力信号の波形変化部を急峻化した出力信号を前記
    加算器より得ることを特徴とする画質改善装置。
  4. 【請求項4】入力信号を第1の信号とし、 前記第1の信号が供給され、第2の信号を出力する直交
    高域濾波器と、 前記第1の信号が供給され、第3の信号を出力する同相
    高域濾波器と、 前記第2及び第3の信号が供給され、この2つの信号の
    ベクトル合成することによって得られる位相値を第4の
    信号として出力する位相検出回路と、 前記第4の信号である位相値の時間変化を求めて、所定
    周波数特性に依存した制御信号である第5の信号を得る
    制御回路と、 前記第1の信号のある時点での信号値を、その時点に対
    して時間軸上で前後の時点の信号値と入れ換える処理を
    前記第5の信号に基づいて行い、前記第1の信号の波形
    変化部を急峻化させる移相器とより構成したことを特徴
    とする画質改善装置。
  5. 【請求項5】請求項4記載の画質改善装置において、前
    記制御回路は、 前記第4の信号を第1の位相値とし、この第1の位相値
    から少なくとも微分手段によって前記第1の信号の位相
    の変化を求め、前記位相の変化に基づき所定周波数特性
    に依存した第1の制御信号を求めると共に、 前記第1の位相値を非線形処理して第2の位相値を求
    め、前記第1の位相値と前記第2の位相値との差をとっ
    て差分位相値を求め、 前記差分位相値と前記第1の制御信号とから第2の制御
    信号を求め、この第2の制御信号を前記第5の信号とし
    て出力するようにしたことを特徴とする画質改善装置。
  6. 【請求項6】請求項5記載の画質改善装置において、前
    記制御回路は、 前記第1の制御信号によって、前記第1の信号の周波数
    成分が所定周波数よりも高くなるに従い、また逆に低く
    なるに従い、共に前記移相器の時間移動量を少なくし、
    エッジ急峻化の度合いを抑えるように制御することを特
    徴とする画質改善装置。
JP4189848A 1992-06-24 1992-06-24 画質改善装置 Pending JPH0614216A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6501922B2 (en) 1999-04-14 2002-12-31 Kyocera Mita Corporation Image forming apparatus with a housing diffusing ozone
US10183254B2 (en) 2014-12-26 2019-01-22 Toray Industries, Inc. Separation membrane element

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US6501922B2 (en) 1999-04-14 2002-12-31 Kyocera Mita Corporation Image forming apparatus with a housing diffusing ozone
US10183254B2 (en) 2014-12-26 2019-01-22 Toray Industries, Inc. Separation membrane element

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