JPH06140229A - インダクタ及び酸化物磁性材料 - Google Patents

インダクタ及び酸化物磁性材料

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JPH06140229A
JPH06140229A JP5048348A JP4834893A JPH06140229A JP H06140229 A JPH06140229 A JP H06140229A JP 5048348 A JP5048348 A JP 5048348A JP 4834893 A JP4834893 A JP 4834893A JP H06140229 A JPH06140229 A JP H06140229A
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JP
Japan
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ferrite
inductor
magnetic material
magnetic
spinel
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JP5048348A
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English (en)
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Tadakuni Sato
忠邦 佐藤
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Tokin Corp
Original Assignee
Tokin Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 スピネル型フェライトを磁芯材料としこれに
樹脂を複合化してインダクタを製造する際に多層化処理
が不要であって温度係数が良好であるインダクタを提供
する。また、電気的短絡を防止することができるインダ
クタを提供する。 【構成】 スピネル型フェライト磁性材料と樹脂を複合
化して構成されるモールド型のインダクタにおいて、前
記スピネル型フェライト磁性材料の透磁率の温度係数を
負とする。前記スピネル型フェライト磁性材料の主成分
をa(Ni(1-x)・Cux )O・bZnO・cFe2
3 とした場合に、x=0.1〜0.8,a+b+c=1
00,b=0〜35(b=0も含む),c=47.5〜
48.5とし、かつ、前記スピネル型フェライト磁性材
料のキューリー温度が100℃以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スピネル型フェライト
磁芯材料と樹脂を複合化して構成されるトランスおよび
コイルを含むインダクタおよび酸化物磁性材料に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、インダクタにおいては、軟磁
性材料に金属に比べ電気抵抗が高くなり周波数特性が高
周波化できることから、Mn−Zn系フェライトやNi
−Zn系フェライトや、Mn−Mg−Zn系で代表され
るようなスピネル型フェラト焼結体が使用されてきた。
従来より市販されているこれらのスピネル型フェライト
は、特に周波数による制約がない場合、より高い透磁率
を有する材料がより有用とされる。例えば、高い透磁率
を示すスピネル型フェライトとして知られているMn−
Zn系フェライトは、材料の透磁率が正の温度範囲を示
す領域で使用されている。また、インダクタとしては、
温度変化が零であるか、又は正となる方が好ましい。し
たがって、従来より市販されている磁芯材料用スピネル
型フェライトの温度係数は、零もしくは正を示してい
る。
【0003】現在、インダクタは、小型化、表面実装化
が進展している。したがって、磁芯材料と銅線を配置し
た状態を樹脂等でモールドし、表面実装を容易にした素
子形状としたインダクタが工業化されている。しかしな
がら、このフェライト磁芯材料と樹脂を複合化して形成
するインダクタの磁性材料として、市販されているよう
な透磁率の温度係数が正を示すフェライトを使用する
と、複合した樹脂とフェライト間で発生する応力の変化
のために、インダクタのインダクタンスの変動が著しく
大きくなるという問題がある。そこで、現在では、この
変動を小さくするため、樹脂を多層化することにより、
フェライトに加わる応力の変化を減少し、インダクタの
インダクタンスの変動幅を小さくする工夫がなされてい
る。
【0004】また、チョークコイルに使用される酸化物
磁性材料は、一般に高い磁束密度が要求され、スイッチ
ング電源等の高周波で動作されるチョークコイルにはM
n−Zn系フェライトが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のインダ
クタにおいては、樹脂を多層化するため処理工程が多く
なるので、好ましくない。したがって、工業的には、フ
ェライト磁芯材料に対し、例えば樹脂を直接モールドす
る等、直接的に複合化し、かつインダクタのインダクタ
ンスの温度変化を小さくできることは、極めて有益とな
る。
【0006】また、フェライト磁性材料の電気抵抗が高
いと、電気導線の絶縁被覆膜が破損した場合でも電気的
短絡を防止することができるから品質の面でも工業上極
めて有益となる。
【0007】また、チョークコイルに使用される酸化物
磁性材料においては、電気抵抗が約103 Ω・cmであっ
て電気絶縁性が低いから、電気絶縁性を要する場合には
絶縁被覆処理をする必要がある。
【0008】本発明の第1の課題は、スピネル型フェラ
イトを磁芯材料としこれに樹脂を複合化してインダクタ
を製造する際に多層化処理が不要であって、インダクタ
ンスの温度係数が良好であるインダクタを提供すること
にある。
【0009】本発明の第2の課題は、電気導線の絶縁被
覆膜が破損した場合でも電気的短絡を防止することがで
きるインダクタを提供することにある。
【0010】本発明の第3の課題は、電気絶縁性を要す
る場合には絶縁被覆処理をする必要がない酸化物磁性材
料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、スピネ
ル型フェライト磁性材料と樹脂を複合化して構成される
モールド型のインダクタにおいて、前記スピネル型フェ
ライト磁性材料の透磁率の温度係数を負とすることを特
徴とするインダクタが得られる。
【0012】また、本発明によれば、前記インダクタに
おいて、前記スピネル型フェライト磁性材料の主成分を
a(Ni(1-x) ・Cux )O・bZnO・CFe2 3
とした場合に、x=0.1〜0.8, a+b+c=1
00,b=0〜35(b=0も含む),c=32〜4
8.5とし、かつ、前記スピネル型フェライト磁性材料
のキューリー温度が100℃以上であることを特徴とす
るインダクタが得られる。
【0013】また、本発明によれば、前記インダクタに
おいて、前記スピネル型フェライト磁性材料の主成分を
a(Ni(1-x) ・Cux )O・bZnO・cFe2 3
とした場合に、x=0.1〜0.8, a+b+c=1
00,b=0〜35(b=0も含む),c=47.0〜
48.5とし、かつ、前記スピネル型フェライト磁性材
料のキューリー温度が100℃以上であることを特徴と
するインダクタが得られる。
【0014】また、本発明によれば、前記インダクタに
おいて、前記樹脂の曲げ弾性率を2000kgf/mm2
下とすることを特徴とするインダクタが得られる。ま
た、本発明によれば、スピネル型フェライト磁性材料の
主成分をa(Ni(1 -x) ・Cux )O・bZnO・cF
2 3 とした場合に、x=0.05〜0.55, a
+b+c=100,b=11.0〜25.0,c=4
4.0〜49.7とすることを特徴とする酸化物磁性材
料が得られる。
【0015】
【実施例】本発明者は、種々検討を重ねた結果、磁芯材
料として使用するスピネル型フェライトの透磁率μの温
度係数を負とすることにより、フェライト材と樹脂の間
に生ずる応力に関係する透磁率μの変化を、フェライト
材の温度変化にて補正することにより、樹脂モールド型
のインダクタにおけるインダクタンスの温度変化を著し
く減少できることを見い出した。
【0016】また、このスピネル型フェライト磁性材料
の主成をa(Ni(1-x) ・Cux )O・bZnO・CF
2 3 とした場合に、x=0.1〜0.8,a+b+
c=100,b=0〜35(b=0も含む),c=32
〜48.5とし、かつ、スピネル型フェライト磁性材料
のキューリー温度Tcが100℃以上であることを必要
とすることがわかった。
【0017】x=0.1〜0.8としたのは、フェライ
ト材料の透磁率μの温度変化が0.1〜0.8の範囲で
負を示すからである。またb=0〜35(b=0も含
む)としたのは、透磁率μはbの増加とともに明らかに
向上し、35で極大を示し、それ以上では透磁率μの減
少に加えたTcの減少をともない、ZnO置換による正
の効果が期待できなくなるためである。また、c=32
〜48.5としたのは、48.5以下で透磁率μの温度
係数が負を示し、32以下で損失係数tanδが明らか
に大きくなるためである。
【0018】また、フェライト材料のTcを100℃以
上としたのは、透磁率の著しい減少はTcより約20℃
低い温度からTcの間で生ずるのでインダクタの使用上
限温度を80℃以上を可能とする場合、材料のTcとし
ては100℃以上が必要となるためである。
【0019】また、ΔμT は、0〜60℃におけるフェ
ライト磁性材料の透磁率μの温度変化を、μ20℃(μ
20℃は、100kHz、20℃におけるフェライト磁性
材料の比透磁率をあらわしている)で標準化し、1℃に
対する変化率を求めたものであり、ΔμT ={(μ60℃
−μ0 ℃)/μ20℃}×(1/60)×100(%/
℃)となる。ここでμ60℃は60℃におけるμ、μ0 ℃
は0℃におけるμをあらわす。したがって、ΔμT が負
の場合、μが負の温度特性を示すフェライト材料である
といえる。
【0020】比較的高いμが得られる組成領域の中で
も、前記C(Fe2 3 の組成)を47.0〜48.5
とすることにより、フェライト磁性材料の電気抵抗を高
くとれることに加えてモールド型L素子の温度変化率Δ
Lを小さくすることができる。c=47.0〜48.5
とした理由は、cが47.0以下である場合にはΔLが
やや大きくなる傾向があり、かつ、直流比抵抗ρdcが焼
結温度の低下により明かに減少する傾向がみられるから
であり、一方cが48.5以上になるとΔLが顕著に増
加するからである。
【0021】またフェライト磁性材料をモールドする樹
脂の曲げ弾性率を200kgf/mm2以下とすることによ
り、ΔLを小さくすることができる。前記モールド用の
樹脂の曲げ弾性率を200kgf/mm2 以下としたのは、
200kgf/mm2 以上とするとΔLが顕著に増加するか
らである。
【0022】実施例1 市販されているNi−Zn系フェライト材で温度係数Δ
μT が0.05%/℃と0%/℃の材料を入手し、外径
1mmで長さ3mmの棒状に加工した。また、実施例3
で示した試料と同様の製法(b=20,25,30に対
応)により、ΔμT が−0.05%/℃、−0.12%
/℃、−0.25%/℃のNi−Cu−Zn系フェライ
ト材料を得、外径1mm長さ3mmの棒状に加工した。
【0023】次に、これらフェライト棒に直径30μm
の絶縁被覆銅線を150個巻線した後、150℃でポリ
エステル系樹脂及びエポキシ系樹脂を射出成形し、外径
が1.5×1.5×3.5mmの直方体状のモールド型
のインダクタを作製した。
【0024】次に、500kHzで0.1mAの電流を
流し、YHP製インピーダンスアナライザーを使用し
て、−20℃〜80℃の範囲におけるこれらモールド型
インダクタのインダクタンスを測定した。そして、−2
0℃〜80℃におけるインダクタンスの温度変化を20
℃におけるインダクタンスで標準化して、インダクタン
スの変化率ΔL(%)を求めると、ΔL={(L80℃
-20 ℃/L20℃}×100(%)と表される。ここで
-20 ℃は−20℃におけるインダクタンスLとし、L
20℃は20℃におけるインダクタンスLとし、L80℃
80℃におけるインダクタンスLとする。図1に、これ
らモールド型のインダクタの温度変化率ΔLと、フェラ
イト材料の温度変化率ΔμT との関係を示す。図1より
フェライト材料のμの温度変化が負を示す領域で、モー
ルド型のインダクタの温度変化が著しく小さくなること
がわかる。
【0025】実施例2 組成比を23(Ni(1-x) ・Cux )O・30ZnO・
47Fe2 3 とし、ここでx=0,0.1,0.2,
0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,
0.9,1.0となるように、酸化鉄(α−Fe
2 3 )と酸化ニッケル(NiO)と酸化第2銅(Cu
O)及び酸化亜鉛(ZnO)を原料とし、ボールミルに
て20時間湿式混合した。次にこれら原料混合粉末を大
気中800℃で2時間仮焼した後、ボールミルにて3時
間湿式粉砕し、成形用粉末とした。
【0026】次に、これら粉砕粉末にPVAを1wt%
湿式混合した後、成形圧2ton/cm2 で外径約18
mm、内径約12mm、高さ約7mmの成形体となるよ
うに金型を使用し、圧縮成形した。次に、これら成形体
を、大気中、徐熱、炉冷にて、1000℃で4時間保持
し、焼結した。
【0027】次に、これら焼結体に直径0.26mmの
絶縁被覆銅線を10回巻線した後、YHP製アナライザ
ーを用いて、0℃〜60℃の範囲で100kHz、1m
Aの電流を流し、フェライト試料の比透磁率μを測定し
た。また、μの温度変化率ΔμT を求めた。図2に、こ
れら焼結体の20℃における比透磁率μ20℃とΔμT
組成値xの関係を示す。図2から明らかなように、xが
0.1〜0.8の範囲でΔμT が負を示すことがわか
る。
【0028】なお、x=0.1〜0.8においては、ρ
dc=1×108 〜2×1010Ωcmであった。
【0029】実施例3 実施例2と同様にして、組成比が(53−b)(Ni
0.7 −Cu0.3 )O・bZnO・47Fe2 3 とし、
ここでb=0,5,10,15,20,25,30,3
5,40となるように、リング状のフェライト焼結体を
得た後、0℃〜60℃の範囲にわたり、比透磁率μを測
定した。また、b=25以下の焼結体は示差走査熱分析
計を使用し、b=30以上は恒温槽中加熱によるμの温
度変化測定によりTc を求めた。その結果を図3に示
す。図3から明らかなように、ΔμTは全域にわたって
負を示し、Tc は、bの増加とともに直線的に低下して
いる。μ20℃はbの増加とともに向上し、35で極大を
示している。したがって、bが35以上では、μが向上
せず、かつTc が低下するという磁性特性としては無益
な範囲といえる。したがって、bが0〜35の範囲(b
=0も含む)が工業上有益となる。
【0030】なお、b=0〜35(b=0も含む)にお
いては、ρdc=1×107 〜5×1010Ωcmであっ
た。
【0031】実施例4 実施例2と同様にして、組成比を(70−c)(Ni
0.7 −Cu0.3 )O・30ZnO・cFe2 3 とし、
ここでc=30,35,40,45,46,47,4
8,49となるように、リング状のフェライト焼結体を
得た後、0℃〜60℃の範囲にわたり、比透磁率μを測
定した。また、この時同時に、損失係数tanδも求め
た。その結果を図4に示す。図4から明らかなように、
cが48.5以下でΔμT が負を示している。一方、t
anδは、cが48.5以上で著しく高くなり、また3
2%以下でも明らかに高い値を示している。μ20℃はc
の増加とともに向上している。したがって、磁芯特性と
して有用な範囲はcが32〜48.5である。
【0032】なお、c=32〜48.5においては、ρ
dc=5×108 〜3×1010Ωcmであった。
【0033】実施例5 実施例2と同様にして、組成比を(70−c)(Ni
0.7 ・Cu0.3 )・30ZnO・cFe2 3 とし、こ
こでc=46.5,47.0,47.5,48.0,4
8.5となるフェライト焼結体を得た。次に、これらの
フェライト磁性材料を実施例1と同様に加工した後に、
同形状のモールド型L素子を作製した。ここで、モール
ドに使用した樹脂は封止用ポリエステル樹脂および封止
用エポキシ樹脂であり、これたの樹脂の曲げ弾性率は7
00〜1500kgf/mm2 であった。また、こららのモ
ールド成形条件は、約160℃の温度で約50kg/cm2
の圧力である。
【0034】次に、これらモールド素子のインダクタン
スの変化率ΔLを実施例1と同様にして測定した。その
結果を図5に示す。c=47.0〜48.5ににおいて
組成に対する変化が明かに小さくなっている。したがっ
て、フェライト磁性材料の製造においては、c=47.
0〜48.5とすることが工業上特に有用となることが
分かる。
【0035】実施例6 実施例5と同様にして、フェライト焼結体を作製し、モ
ールド素子を作製してモールド素子のインダクタンスの
変化率ΔLを測定した。ただし、ここで使用したモール
ド用の樹脂は、エポシキ系およびポリエステル系であ
り、樹脂の曲げ弾性率は300,700,1200,1
600,2000,2200kgf/mm2 (試験方法JI
SK)となっている。
【0036】その結果を図6に示す。モールド樹脂の曲
げ弾性率が200kgf/mm2 以下の範囲でΔLが明かに
小さくなっている。したがって、モールド用の樹脂とし
ては、曲げ弾性率が200kgf/mm2 以下のものを用い
ることが工業上有益となる。
【0037】実施例7 実施例5で作製した成形用粉末を使用し、成形圧2トン
/cm2 で外形10mm、高さ3mmの円盤状に成形した後
に、大気中で900℃,950℃,1000℃,105
0℃で4時間保持してフェライト焼結体を得た。次に、
これらのフェライト焼結体の直流比抵抗ρdcをブリッ
ジ法にて測定した。
【0038】その結果を図7に示す。c=47.0〜4
9.0において、広い焼結温度の範囲で高いρdcを示
している。したがって、L素子の構成に絶縁被覆導線を
使用する場合には、ρdcが高い方がよいので、実施例
5の結果と合わせるとc=47.0〜48.5であるこ
とが望ましい。
【0039】以上の実施例からわかるように、Ni,C
u,Zn,Feの酸化物を主成分として含有するスピネ
ル型フェライト焼結体のμの温度変化率ΔμT を負とす
ることで、これを使用したモールド型インダクタの温度
変化を著しく小さくすることができる。
【0040】また、これらフェライト主成分の組成比
を、a(Ni(1-x) ・Cux )O・bZnO・cFe2
3 、x=0.1〜0.8,a+b+c=100とし、
b=0〜35(b=0も含む)、c=32〜48.5と
することで、ΔμT が負で、損失が小さい磁芯材料を得
ることができる。
【0041】本実施例では、フェライトの構成元素をN
iO,CuO,ZnO,Fe2 3とした材料について
のみ述べているが、これのみに限定されるものではな
く、例えばCoやMn,Ca,Cr,Al,Ti等の添
加物を含有しても、また原料中に含まれる不純物を含有
しても、主成分がNiO,CuO,ZnO,Fe2 3
で構成するものであれば、本発明の範囲にある。
【0042】また、粉末の予備焼成及び成形体の焼結を
大気中で行なっているが、焼結における磁性生成物がス
ピネル型フェライトであれば製法が予備焼成なし、共沈
法、水熱合成法、噴霧焙焼法等を適用しても、焼成雰囲
気が大気中に比べ酸化性であっても、還元性であって
も、本発明の範囲にある。また、成形体の成形法につい
ても特に限定されるものでない。
【0043】本実施例では、スピネル型フェライトとし
て市販されているNi−Zn系フェライト及びNi−C
u−Zn系フェライトについてのみ述べているが、本発
明は、フェライト材と樹脂の間に生ずる応力に関係する
μの変化を、フェライト材の温度変化にて補正し、温度
特性の良好なインダクタを提供するものであるので、必
ずしもNi系フェライト材料にのみ限定されるものでな
く、Mg系、Mn系、Co系、Cu系、Li系、フェラ
イト系及びそれらの複合化、ZnO等による組成系及び
添加物を含有したとしても、μの温度変化が負を示すス
ピネル型フェライトで構成されているものであれば、本
発明の範囲にあることは、容易に理解できる。
【0044】次に本発明の酸化物磁性材料を説明する。
【0045】本発明の酸化物磁性材料は、スピネル型フ
ェライト磁性材料の主成分をa(Ni(1-x) ・Cux
O・bZnO・cFe2 3 とした場合に、x=0.0
5〜0.55, a+b+c=100,b=11.0〜
25.0,c=44.0〜49.7とすることを特徴と
する。
【0046】前記xを0.05以上としたのは、焼結温
度を著しく低下することができるからである。一方、x
を0.55以下としたのは、xを0.55以上とすると
50Oeの磁界を引加した時の20℃での磁束密度B50
が3500G以下となり、直流比抵抗ρdcが1×10
7 Ω・cm以下となるからである。したがって、x=0.
05〜0.55とした。
【0047】また、前記bを11.0以下とすると20
℃でのB50が4000G以下となり、一方bが25.0
以上では100℃でのB50が3500G以下となる。し
たがって、b=11.0〜25.0とした。
【0048】また、前記cを44.0以下とすると20
℃でのB50が4000G以下となると共に100℃での
50が3500G以下となり、一方cが49.7以上で
はρdcが1×107 Ω・cm以下となるからである。し
たがって、c=44.0〜49.7とした。
【0049】次に本発明の酸化物磁性材料の具体的な実
施例を説明する。
【0050】実施例8 主成分を32(Ni(1-x) ・Cux )O・20ZnO・
48Fe2 3 とし、ここでx=0,0.005,o.
1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6となるよ
うに、酸化鉄(α−Fe2 3 )と酸化ニッケル(Ni
0)と酸化第2銅(CuO)および酸化亜鉛(ZnO)
を原料とし、ボードミルにて20時間湿式混合した。
【0051】次に、これらの原料混合粉末を大気中にて
800℃で2時間仮焼した後に、ボードミルにて3時間
湿式粉砕し、成形用粉末とした。
【0052】次に、これらの粉砕粉末にPVAを1wt
%湿式混合した後に、成形圧2トン/cm2 で外径約18
mm、内径約12mm、高さ約7mmの成形体となるように金
型を使用し圧縮成形した。次に、これらの成形体を大気
中で徐熱、炉冷にて900℃〜1400℃の範囲で4時
間保持して焼結した。
【0053】次に、これらの焼結体の密度をアルキメデ
ス法にて測定した。そして、焼結温度に対して焼結密度
がほぼ飽和に達する温度をTsinとして図8に示し
た。xが0.05以上ではTsinが著しく低下し、x
=0に比べ焼結温度を約200℃以下に低下することが
可能となる。したがって、これの近傍の温度では、焼結
工程でのエネルギー費用と設備が著しく低減できる。
【0054】次に、各々の組成についてTsinより約
100℃高い温度で焼結した試料について、直径0.2
6mmの絶縁被覆銅線を10回巻線した後、YHP製アナ
ライザイーを用いて、100KHz,1mAの電流を流
し、比透磁率μを測定した。また、磁化は、電磁誘導法
により20℃および100℃における直流B−H特性を
測定し引加磁場50Oeにおける磁化量B50を求めた。
また、直流比抵抗ρdcは、ブリッジ法を用いて測定し
た。
【0055】これらの測定結果を図8に示す。図8より
明かなように、20℃でのB50はx=0〜0.6におい
ては4000G以上であるが、100℃でのB50はx≧
0.55において3500G以上である。ρdcはx≦
0.55において107 Ω・cm以上を示している。ま
た、μは250〜320の範囲にあり、明かに軟磁性を
示し、磁心用材料として機能することを示している。し
たがって、これらの結果から、x=0.05〜0.55
と設定する。
【0056】実施例9 実施例8と同様にして、主成分を(52−b)(Ni
0.8 ) ・Cu0.2 )O・bZnO・48Fe2 3
し、ここでb=10,12,14,16,18,20,
22,24,26となるように、リング状のフェライト
焼結体を1050℃で焼結して得た後、B50,μ,ρd
cを測定した。
【0057】これらの測定結果を図9に示す。図9より
明かなように、20℃におけるB50が4000Gを示す
bの範囲は11〜26であり、100℃におけるB50
3500Gを示すbの範囲は10〜25である。また、
μは150〜480の範囲にあり、磁心用材料として機
能することを示している。ρdcは109 〜1011Ω・
cmを示している。したがって、これらの結果から、b=
11〜25と設定する。
【0058】実施例10 実施例8と同様にして、主成分を(80−c)(Ni
0.8 ) ・Cu0.2 )O・20ZnO・48Fe2 3
し、ここでc=50,49.5,49,48,47,4
6,45,44,43となるように、リング状のフェラ
イト焼結体を1050℃で焼結して得た後、B50,μ,
ρdcを測定した。
【0059】これらの測定結果を図9に示す。図9より
明かなように、20℃におけるB50が4000Gを示す
cの範囲は44〜50であり、100℃におけるB50
3500Gを示すcの範囲は44〜50である。また、
μは220〜310の範囲にあり、磁心用材料として機
能することを示している。ρdcはc=43〜49.7
において107 Ω・cm以上を示している。したがって、
これらの結果から、c=44.0〜49.7と設定す
る。
【0060】実施例8〜10では、フェライトの構成元
素をNiO,CuO,ZnO,Fe2 3 とした材料に
ついてのみ述べているが、これのみに限定されるもので
はなく、例えばCoやMn,Ca,Cr,Al,Ti等
の添加物を含有しても、また原料中に含まれる不純物を
含有しても、主成分がNiO,CuO,ZnO,Fe2
3 で構成するものであれば、本発明の範囲にある。
【0061】また、粉末の予備焼成及び成形体の焼結を
大気中で行なっているが、焼結における磁性生成物がス
ピネル型フェライトであれば製法が予備焼成なし、共沈
法、水熱合成法、噴霧焙焼法等を適用しても、焼成雰囲
気が大気中に比べ酸化性であっても、還元性であって
も、本発明の範囲にある。また、成形体の成形法につい
ても特に限定されるものでない。
【0062】
【発明の効果】本発明のインダクタは、スピネル型フェ
ライトを磁芯材料としこれに樹脂を複合化してインダク
タを製造する際に多層化処理が不要であって、かつ、イ
ンダクタンスの温度係数が良好である。
【0063】本発明のインダクタは、電気導線の絶縁被
覆膜が破損した場合でも電気的短絡を防止することがで
きる。
【0064】本発明の酸化物磁性材料は、電気絶縁性を
要する場合にも絶縁被覆処理をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるモールド型のインダ
クタのΔLをフェライト材料のΔμT との関係を示す図
である(図中、○印はポリエステル系樹脂で、△印はエ
ポキシ系樹脂でモールドしたインダクタの特性を示
す)。
【図2】本発明の実施例2におけるCuOの組成値xと
フェライト焼結体のμ20℃、ΔμT の関係を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例3におけるZnOの組成値bと
フェライト焼結体のμ20℃、ΔμT の関係を示す図であ
る。
【図4】本発明の実施例4におけるFe2 3 の組成値
cとフェライト焼結体のμ20℃、tanδ、ΔμT の関
係を示す図である。
【図5】本発明の実施例5におけるモールド型のインダ
クタのΔLとフェライト材料のFe2 3 の組成との関
係を示す図である(図中、○印はポリエステル系樹脂
で、□印はエポキシ系樹脂でモールドしたインダクタの
特性を示す)。
【図6】本発明の実施例6におけるモールド型のインダ
クタのΔLとモールド用樹脂の曲げ弾性率との関係を示
す図である(図中、フェライト磁性材料におけるFe2
3 の組成をcmol%とした場合に、○印はc=4
7.0を示し、□印はc=47.5を示し、△印はc=
48.0を示し、×印はc=48.5を示す)。
【図7】本発明の実施例7におけるモールド型のインダ
クタのρdcと組成との関係を示す図である(図中、焼
結温度をT℃とした場合に、○印はT=900を示し、
□印はT=950を示し、△印はT=1000を示し、
×印はT=1050を示す)。
【図8】本発明の実施例8におけるxと磁性特性
(B50,μ,ρdc)の関係を示す図である(図中、○
印は20℃における測定値を示し、△印は100℃にお
ける測定値をを示す)。
【図9】本発明の実施例9におけるbと磁性特性
(B50,μ,ρdc)の関係を示す図である(図中、○
印は20℃における測定値を示し、△印は100℃にお
ける測定値をを示す)。
【図10】本発明の実施例10におけるcと磁性特性
(B50,μ,ρdc)の関係を示す図である(図中、○
印は20℃における測定値を示し、△印は100℃にお
ける測定値をを示す)。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スピネル型フェライト磁性材料と樹脂を
    複合化して構成されるモールド型のインダクタにおい
    て、前記スピネル型フェライト磁性材料の透磁率の温度
    係数を負とすることを特徴とするインダクタ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のインダクタにおいて、前
    記スピネル型フェライト磁性材料の主成分をa(Ni
    (1-x) ・Cux )O・bZnO・cFe2 3とした場
    合に、x=0.1〜0.8, a+b+c=100,b
    =0〜35(b=0も含む),c=32〜48.5と
    し、かつ、前記スピネル型フェライト磁性材料のキュー
    リー温度が100℃以上であることを特徴とするインダ
    クタ。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のインダクタにおいて、前
    記スピネル型フェライト磁性材料の主成分をa(Ni
    (1-x) ・Cux )O・bZnO・cFe2 3とした場
    合に、x=0.1〜0.8, a+b+c=100,b
    =0〜35(b=0も含む),c=47.0〜48.5
    とし、かつ、前記スピネル型フェライト磁性材料のキュ
    ーリー温度が100℃以上であることを特徴とするイン
    ダクタ。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のインダクタにおいて、前
    記樹脂の曲げ弾性率を2000kgf/mm2 以下とするこ
    とを特徴とするインダクタ。
  5. 【請求項5】 スピネル型フェライト磁性材料の主成分
    をa(Ni(1-x) ・Cux )O・bZnO・cFe2
    3 とした場合に、x=0.05〜0.55,a+b+c
    =100,b=11.0〜25.0,c=44.0〜4
    9.7とすることを特徴とする酸化物磁性材料。
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