JPH0613773Y2 - ボールエンドミル - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、エンドミル本体の先端部外周に２枚のスロー
アウェイチップが装着された構成のボールエンドミルに
関する。

〔従来の技術〕

第１１図ないし第１５図は、実開昭６１−１３４８１２
号公報に見られる従来のこの種のボールエンドミルを示
すものである。

このボールエンドミルは、板状をなし、両側面に1/4円
周以下の略円弧状の切刃１とこれと連続する直線状稜線
２が形成されると共に、円弧状切刃１と直線状稜線２と
が交差する端部に側面からすくい面にかけて凸状切刃３
が形成された主チップ４と、円形の概略四半分を曲線状
切刃５とし、これと直線状切刃６を連続させた補助チッ
プ７とをエンドミル本体８の端部所定部位に、主チップ
４は凸状切刃３と円弧状切刃１が、補助チップ７は曲線
状切刃５と直線状切刃６が切削に関与するように着脱自
在に固着したものである。

上記従来のボールエンドミルによれば、切削時に主チッ
プ４において、まず凸状切刃３が被削材（図示せず）に
食い付き、次いでエンドミル本体８の回転に伴って漸次
円弧状切刃１の全体が切削を行なうようになるため、衝
撃的な切削荷重が作用することがないといった利点が得
られる。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、上記従来のボールエンドミルにあっては、主
チップ４の回転投影直径ｄ_１が補助チップ７の回転投影
直径ｄ_２に比べて小径となっており、主チップ４の切削
分担域は工具回転中心部分を含んだ円弧状切刃１部分と
なり、補助チップ７の切削分担域は工具回転中心部分を
除いた曲線状切刃５と直線状切刃６部分となるが、切削
加工時に切削抵抗により、エンドミル本体８にたわみが
発生し、この結果、主チップ４、補助チップ７に振れを
生じたり、あるいは、エンドミル本体８及び両チップ
４，７の製作誤差により、振れを生じるおそれがある。
そして、このように振れを生じた場合には、第１６図と
第１７図に示すように、主チップ４と補助チップ７の各
回転軌跡間に段差ｈ′が生じ、従って、被削材９の仕上
面に段差ｈ′が発生するという問題があった。

本考案は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的
とするところは、切削負荷が高くなる、エンドミル本体
の軸線と４５°をなす角度近傍の強化を損うことなく、
しかも両チップに生じる振れによって被削材の仕上面に
形成される段差を最小限に抑制することができるボール
エンドミルを提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案は、エンドミル本体
の先端部外周に２枚のスローアウェイチップがそれぞれ
の円弧状の切刃を上記エンドミル本体の外周側から先端
側に位置させて装着され、これらのスローアウェイチッ
プのうち第１のスローアウェイチップは、その切刃の先
端を上記エンドミル本体の軸線近傍に位置させ、第２の
スローアウェイチップは、その切刃の先端を上記軸線か
ら外周側に離間させてそれぞれエンドミル本体に装着さ
れる一方、上記第２のスローアウェイチップの回転軌跡
が、上記エンドミル本体の軸線と４５°をなす角度近傍
でのみ上記第１のスローアウェイチップの回転軌跡と一
致し、かつその先端側及び基端側にあっては、上記第１
のスローアウェイチップの回転軌跡の内側に包含される
ように、上記各スローアウェイチップが上記エンドミル
本体に配置されたものである。

〔作用〕

上記のように構成されたボールエンドミルにあっては、
上記第２のスローアウェイチップの回転軌跡が、エンド
ミル本体の軸線と４５°をなす角度近傍においては、第
１のスローアウェイチップの回転軌跡と一致しているこ
とにより、切削負荷を効果的に両チップが分担し、両チ
ップに加わる切削負荷が軽減すると共に、上記エンドミ
ル本体の軸線と４５°をなす角度近傍以外の部分におい
ては、第２のスローアウェイチップの回転軌跡が第１の
スローアウェイチップの回転軌跡の内側に包含されるこ
とにより、振れが生じた場合に被削材の仕上面に形成さ
れる段差が最小限に抑制される。

〔実施例〕

以下、第１図ないし第１０図に基づいて本考案の一実施
例を説明する。

第１図ないし第４図おいて図中符号１０はエンドミル本
体を示すものである。このエンドミル本体１０は概観略
円柱状のもので、その先端部は略半球状に形成されてい
る。この先端部の軸線と対称となる位置には、それぞれ
略1/4円周が削り取られてなるチップポケット１１，１
１が形成されており、これらのチップポケット１１，１
１の回転方向に面する壁面には、それぞれチップ取付座
１２，１２が形成されている。そして、これらのチップ
取付座１２，１２には、それぞれ円弧状の切刃を有する
一対のスローアウェイチップ（以下、チップと略称す
る）１３，１４が装着されている。

これらのチップ１３，１４のうちエンドミル本体１０の
先端側に位置するチップ１３は、第５図と第６図に示す
ように、上面がすくい面１５とされかつ平坦な下面が着
座面１６とされた板状のものである。そして、上面の稜
線部には略1/4円周を描く２つの円弧状の切刃１７，１
７がこのチップ１３の中心に対して点対称となるように
形成され、これらの切刃１７，１７間には、各々これら
の切刃１７，１７と鈍角をなして交差する小切刃１８，
１８が形成されている。また、小切刃１８を間に挟む切
刃１７，１７の端部に沿うすくい面１５は、その全体が
小切刃１８，１８側に向けて漸次着座面１６側に近付く
凸状面によって形成されている。さらに、このチップ１
３の中央部には、上面側にテーパ部１９ａが形成されか
つ下面側に大径凹部１９ｂが形成された取付用の孔部１
９が穿設されている。

また、上記チップ１４は、第７図と第８図に示すよう
に、上記チップ１３と同様に、上面がすくい面２０とさ
れかつ下面が着座面２１とされた板状のものである。そ
して、上面の稜線部には、切刃２２及びこの切刃２２と
鈍角をなして交差する小切刃２３が形成されており、こ
の切刃２２は、1/4円に満たない円弧状切刃部２２ａ
と、この円弧状切刃部２２ａに連なる直線状切刃部２２
ｂとから構成されている。ここで、この円弧状切刃部２
２ａの曲率半径は、上記チップ１３の円弧状の切刃１７
の曲率半径より小さく設定されている。さらに、上記チ
ップ１４の中央部には、上面側にテーパ部２４ａが形成
された取付用の孔部２４が穿設されている。

そして、チップ１３，１４は、第１図ないし第４図に示
すように、それぞれ一方の円弧状の切刃１７，２２をエ
ンドミル本体１０の外周側に位置させ、孔部１９，２４
のテーパ部１９ａ，２４ａに頭部を当接させて嵌め込ま
れた取付ボルト２５により着脱自在に装着されている。
ここで、チップ１３は、その大径凹部１９ｂ内にチップ
取付座１２の底面に形成されたリング状の凸部１２ａを
係合させた状態でチップ取付座１２内に固定されてい
る。また、チップ１４の切刃２２の回転軌跡は、第４図
に示すように、チップ１３の切刃１７の半球状の回転軌
跡の中心Ｏを基準としてエンドミル本体１０の軸線ｌと
４５°をなす角度近傍においてチップ１３の切刃１７の
回転軌跡と一致し、かつその先端側及び基端側にあって
はチップ１３の切刃１７の回転軌跡の内側に所定値α
（０〜0.1）の範囲で包含されるように、各チップ１
３，１４がエンドミル本体１０に配置されている。

上記のように構成されたボールエンドミルにあっては、
切削時に、チップ１３の切刃１７の半球状の回転軌跡の
中心Ｏを基準としてエンドミル本体１０の軸線ｌと４５
°をなす角度近傍において切削負荷が高くなるが、この
部分においては、チップ１３の切刃１７の回転軌跡とチ
ップ１４の切刃２２の回転軌跡が一致しているから、両
者で効果的に切削負荷を分担でき、両チップ１３，１４
に加わる切削負荷を軽減できる。また、何らかの原因で
振れが生じた場合にあっては、第９図と第１０図に示す
ように、上記エンドミル本体１０の軸線ｌと４５°をな
す角度近傍以外の部分においてチップ１４の回転軌跡が
チップ１３の回転軌跡の内側に包含されることにより、
被削材２６の仕上面に形成される段差ｈが最小限に抑制
され、良好な仕上面が得られる。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案は、エンドミル本体の先端
部外周に２枚のスローアウェイチップがそれぞれの円弧
状の切刃を上記エンドミル本体の外周側から先端側に位
置させて装着され、これらのスローアウェイチップのう
ち第１のスローアウェイチップは、その切刃の先端を上
記エンドミル本体の軸線近傍に位置させ、第２のスロー
アウェイチップは、その切刃の先端を上記軸線から外周
側に離間させてそれぞれエンドミル本体に装着される一
方、上記第２のスローアウェイチップの回転軌跡が、上
記エンドミル本体の軸線と４５°をなす角度近傍でのみ
上記第１のスローアウェイチップの回転軌跡と一致し、
かつその先端側及び基端側にあっては、上記第１のスロ
ーアウェイチップの回転軌跡の内側に包含されるよう
に、上記各スローアウェイチップが上記エンドミル本体
に配置されたものであるから、上記第２のスローアウェ
イチップの回転軌跡が、エンドミル本体の軸線と４５°
をなす角度近傍においては、第１のスローアウェイチッ
プの回転軌跡と一致していることにより、切削負荷を効
果的に両チップに分担させることができ、両チップに加
わる切削負荷を軽減することができ、従って、切削負荷
が高くなる、エンドミル本体の軸線と４５°をなす角度
近傍の強化を損うことがない。しかも、上記エンドミル
本体の軸線と４５°をなす角度近傍以外の部分において
は、第２のスローアウェイチップの回転軌跡が第１のス
ローアウェイチップの回転軌跡の内側に包含されること
により、振れが生じた場合の被削材の仕上面に形成され
る段差を最小限に抑制できる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第１０図は本考案の一実施例を示すもの
で、第１図は正面図、第２図は側面図、第３図は底面
図、第４図は第１、第２のスローアウェイチップの回転
軌跡を説明する説明図、第５図と第６図は第１のスロー
アウェイチップを示すもので、第５図は正面図、第６図
は側面図、第７図と第８図は第２のスローアウェイチッ
プを示すもので、第７図は正面図、第８図は側面図、第
９図と第１０図はチップに振れが生じた場合について示
すもので、第９図は第１、第２のスローアウェイチップ
の回転軌跡のずれを説明する説明図、第１０図は被削材
の仕上面の断面図、第１１図ないし第１７図は従来のボ
ールエンドミルを示すもので、第１１図は正面図、第１
２図と第１３図は主チップを示すもので、第１２図は正
面図、第１３図は側面図、第１４図と第１５図は補助チ
ップを示すもので、第１４図は正面図、第１５図は側面
図、第１６図と第１７図はチップに振れが生じた場合に
ついて示すもので、第１６図は主チップと補助チップの
回転軌跡のずれを説明する説明図、第１７図は被削材の
仕上面の断面図である。 １０……エンドミル本体、 １３……第１のスローアウェイチップ、 １４……第２のスローアウェイチップ、 １７……切刃、 １８……小切刃、 ２２…切刃、 ２３……小切刃、 ｌ……軸線。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンドミル本体の先端部外周に２枚のスロ
   ーアウェイチップがそれぞれの円弧状の切刃を上記エン
   ドミル本体の外周側から先端側に位置させて装着され、
   これらのスローアウェイチップのうち第１のスローアウ
   ェイチップは、その切刃の先端を上記エンドミル本体の
   軸線近傍に位置させ、第２のスローアウェイチップは、
   その切刃の先端を上記軸線から外周側に離間させて装着
   されてなるボールエンドミルにおいて、上記第２のスロ
   ーアウェイチップの回転軌跡が、上記エンドミル本体の
   軸線と４５°をなす角度近傍でのみ上記第１のスローア
   ウェイチップの回転軌跡と一致し、かつその先端側及び
   基端側にあっては、上記第１のスローアウェイチップの
   回転軌跡の内側に包含されるように、上記各スローアウ
   ェイチップが上記エンドミル本体に配置されたことを特
   徴とするボールエンドミル。