JPH0613729B2 - 肌焼鋼部品の製造方法 - Google Patents

肌焼鋼部品の製造方法

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JPH0613729B2
JPH0613729B2 JP61183939A JP18393986A JPH0613729B2 JP H0613729 B2 JPH0613729 B2 JP H0613729B2 JP 61183939 A JP61183939 A JP 61183939A JP 18393986 A JP18393986 A JP 18393986A JP H0613729 B2 JPH0613729 B2 JP H0613729B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は肌焼鋼部品の製造方法、特に温間あるいは亜熱
間の温度域で塑性加工を施した後、浸炭、焼入れ処理を
行なって肌焼鋼部品を製造する方法に関するものであ
る。
[従来技術] 650℃〜1000℃の温間あるいは亜熱間温度域での
塑性加工によれば、複雑形状の鋼部品を精密に能率良く
成形できる。そのため、この温度域で歯車等の部品を鍛
造加工や転造加工で成形する技術が注目されている。
ところで、上記温度域で塑性加工した部品に浸炭焼入れ
処理を施す場合には、浸炭焼入れ処理に先立って焼準処
理を施さない限り、浸炭時にオーステナイト結晶粒の成
長(粗大化)を生じ、高強度の肌焼鋼部品を得ることは
困難とされている。
焼準処理としては、部品をそのAc点直上の温度、一
般には900℃前後に再加熱して、その温度で一定時
間、一般には2時間程度保持、空冷するそうさを行なう
が、加工後にこのような焼準処理を施すことは製造能率
を低下させ、かつ多大なエネルギ消費を必要とするた
め、経済的に不利である。
浸炭時のオーステナイト結晶粒の成長を抑制する他の手
段として、浸炭前に微細なAlNやTi、V、Nb等の
微細炭化物粒子をあらかじめ素材に数多く析出させてお
く方法が知られている。
しかしながら、上記温度域で塑性加工を施す場合には、
この手段の効果は充分でない。即ち、650℃〜100
0℃の温度域で加工を施した場合には、オーステナイト
再結晶が生じたとしても、その成長が少ないため加工後
のオーステナイト粒は微細なものとなるとともに、加工
度が場所的に異ることよりオーステナイト粒の大きさは
不均一となる。更に再結晶を生じない低温域加工の場合
には必然的にひずみが残留する。またこの加工温度域で
はAlNの凝集が生じやすい。これ等、微細な初期オー
ステナイトの生成、残留ひずみの発生、AlNの凝集
は、いずれも浸炭時のオーステナイト結晶粒の粗大化を
助長することとなり、AlNやTi、V、Nb等の添加
効果を不充分なものとする。また加工後の不均一な大き
さのオーステナイト粒のために、浸炭後に均一な大きさ
のオーステナイトを得ることが困難である。
熱間鍛造後に微細な旧オーステナイト粒の焼入組織を得
る方法としては、素材を1250℃程度の熱間で鍛造
後、鍛造品を720℃〜620℃あるいは390℃〜2
50℃の温度域に一旦冷却させてオーステナイト組織を
実質的に消失させ、その後、所定の焼入温度に再加熱、
保持して焼入をすることが提案されている(特開昭58
−141331号、特開昭58−141333号)。
しかしながら、この方法は熱間加工品を対象としてお
り、かつ加工後の浸炭処理は意図されておらず、この方
法を温間または亜熱間加工後に浸炭処理を行なう場合に
適用しても、浸炭時のオーステナイト結晶粒の成長を充
分に抑制することはできない。
[本発明が解決しようとする問題点] 本発明は上記の実情に鑑みてなされたもので、素材を温
間あるいは亜熱間の温度域で塑性加工した後に、浸炭、
焼入れ処理を行なって肌焼鋼部品を製造する場合におい
て、浸炭時のオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し
て、微細で均一な旧オーステナイト粒径を有する肌焼鋼
部品が知られる方法を提供することを目的とする。
また本発明は、浸炭前の長時間の焼準処理を必要とせ
ず、上記肌焼鋼部品を短時間の能率的な処理により得る
ことができる方法を提供することを目的とする。
[問題点を解決するための手段] 上記の目的を達成する本発明は、浸炭用鋼素材に次の工
程による処理を行なうことを特徴とする。第1図は工程
を模式的に示すものである。
(イ)素材を加熱してオーステナイト化する。
(ロ)引続き1000℃〜650℃の温度範囲において
オーステナイト状態で素材に塑性加工を施す。
(ハ)引続いて素材を、その塑性変形域が少なくとも部
分的にフェライトとパーライトに変態する温度以下にな
るまで冷却する。
(ニ)引続いて素材の上記塑性変形域をAc+100
℃ないし1100℃の温度に急速に再加熱後、室温まで
冷却する。
(ホ)冷却された素材を900℃以上の温度で浸炭後、
焼入れ焼戻し処理を行なう。
本発明において用いる素材は、浸炭、焼入れがなされる
ことより、低合金の浸炭用鋼、例えば機械構造用炭素鋼
S10C〜S22C、クロム鋼SCr415、420、
クロム・モリブデン鋼SCM415、418、420、
ニッケル・クロム鋼SNC815、ニッケル・クロム・
モリブデン鋼SNCM220、415、420、81
5、マンガン鋼SMn420、マンガン・クロム鋼SM
nC420等が用いられる。また結晶粒微細化のために
微量のAlNやNb、Ti、Vが添加された上記浸炭用
鋼も用いられ得る。
(イ)の工程における加熱温度は900℃〜1250℃
程度が適当である。素材をオーステナイト化するための
実際的下限値は900℃であり、一方、加熱時の粗大オ
ーステナイト粒の生成を避けるには1250℃ないしそ
れ以下とするのが望ましい。
(ロ)において、加工は転造、鍛造、押出しが適用さ
れ、加工温度は、精密な成形を実現するために、材料の
変形態と変形抵抗が塑性加工可能な範囲にあり、また塑
性加工終了後の二次酸化スケールの発生および金型への
熱負荷が少ない領域として選んだものである。
即ち、650℃以下の加工温度域では、材料の変形能が
低下して加工時の材料割れの危険が増すとともに、変形
抵抗が著しく高くなるため、通常の工具鋼では実用に耐
える程の金型の耐久性が期待できない。1000℃以上
の加工温度では、鍛造後の二次酸化スケールの発生が多
く、また金型への熱負荷が過大とするために金型の損耗
がはげしく、精密加工が実現し難い。
更に、(ロ)の工程は(イ)に引続いて短時間(1分程
度)で主としてオーステナイト状態で加工を行なうもの
である。かつ再結晶が生じないか、生じたとしても再結
晶速度の小さい温度域で行なうものである。
(ハ)の冷却処理は、上記(ロ)の工程の加工による塑
性変形域のオーステナイト(A)組織を、少なくとも部
分的にフェライト(F)+パーライト(P)の混合組織
に変態させるためのものである。従って冷却の下限温度
はCCT曲線(連続冷却変態曲線)において、上記の変
態が生じる温度域、即ち、第1図の(a)領域か、それ
以下とする必要がある。
(ニ)の再加熱処理は、上記(ハ)の冷却処理に引続い
て行なわれ、素材を急速にAc+100℃以上の温
度、即ち、第1図の(b)領域にまで昇温させるもので
ある。これにより上記(ハ)の工程で生じたフェライト
+パーライト、もしくはベーナイト(B)を含む組織を
再びオーステナイトに完全に変態させる。
したがって再加熱の下限温度はAc+100℃であ
り、上限温度は、この時点でのオーステナイト結晶粒の
粗大化および部品の表面酸化を最小限に押えるために1
050℃〜1100℃までとする。急速加熱手段として
は高周波誘導加熱が最も適している。
オーステナイト変態を確実なものとするために昇温後、
温度保持を行なってもよいが、保持時間は再加熱時のオ
ーステナイト粒の成長と表面酸化を極力おさえるため
に、最小必要限度(15秒程度ないしそれ以下)とす
る。
所定の昇温、保持が終了後に、室温まで放令する。
(ホ)の浸炭処理は、通常の浸炭温度範囲(一般には9
00℃〜950℃)で行なえばよく、引続いて通常の焼
入れ、例えば850℃〜950℃の油冷と、焼戻し、例
えば150℃〜200℃空冷を行なう。
なお、上記工程のうち、(イ)〜(ニ)の工程は時間的
に引続いて実施例される必要があり、各々の工程間に別
の工程や操作あるいは休止時間を挿入しない。(ホ)の
工程は、必ずしも(ニ)に引続いて続いて直ちに実施す
る必要はなく、(ニ)、(ホ)の工程間に任意の休止時
間を設けてもよい。
[作用、効果] 本発明においては、先ず上記(イ)の工程で素材の組織
はオーステナイト化され、該オーステナイトは(ロ)の
工程で塑性変形される。(ロ)の工程は温間あるいは亜
熱間領域で行なわれ、部品の精密成形が可能である。
一方、(ロ)の工程での塑性変形によってオーステナイ
ト組織には加工ひずみが集積される。この加工ひずみを
有するオーステナイト組織は(ハ)の工程におけるパー
ライト変態と、(ニ)の工程における再度のオーステナ
イト化によって、加工ひずみの極めて少ない均一微細な
オーステナイト組織となり、その後空冷される。
なお、(ハ)の工程の処理を行なうことにより、(ニ)
の工程において生成されるオーステナイト結晶粒の大き
さは、(ハ)の工程の処理を行なわずに加工後にオース
テナイト組織(加工ひずみを含む)のままで(ニ)の工
程の処理を行なった場合に比べて、より小さく、かつ均
一なものである。(ニ)の工程で生成されるオーステナ
イト粒が均一になるのは(ハ)の工程によって加工オー
ステナイト組織がA+F+PあるいはA+F+P+Bに
変態する再、加工オーステナイト粒の場所における加工
度の不均一およびこれに起因する再結晶度合いの不均一
が解消されることによる。
このように本発明は、温間あるいは亜熱間の温度域で素
材を加工するにかかわらず、浸炭前の時点における旧オ
ーステナイト組織は加工ひずみが極めて少なく微細で均
一なものとなっているので、通常の浸炭処理を行なって
もオーステナイト結晶粒の粗大化は生じず、引続く焼入
れ、焼戻し処理によって均一、微細組織の肌焼鋼部品が
得られる。
本発明によるときは、部品の精密成形が可能であるとと
もに、従来の焼準処理に比べて上記(ハ)、(ニ)の工
程が極めて短時間で済み、消費エネルギも大幅に節減で
きる。また本発明により得られる肌焼鋼部品の旧オース
テナイト結晶粒径は、従来法にる場合に比べて、より微
細なものとなる。従ってより高強度の部品の製造が可能
となる。上記(イ)〜(ホ)の工程はいずれも不可欠で
あり、この等の工程が複合されることによって、はじめ
て本発明の効果が奏され得るのである。
[実施例] 素材としてJIS SCr420(クロム鋼、0.22
%C、0.23%Si、0.73%Mn、0.023%
P、0.014%S、0.15%Cu0.07%Ni、
1.00%Cr、0.027%Al、0.04%N)を
用い、はずば歯車の転造加工を実施した。加工条件は次
の通りである。
素材寸法:外径86.7mm、幅13.8mm円板状。
転造方法:円板状素材の外周部(深さ10mmの範囲)を
1100℃に高周波誘導加熱してオーステナイト化した
後に、素材外周部に同方向、同速度で回転する2個の歯
車状ローラダイスを連続的に押込むことによって素材の
外周部に歯形を形成した。歯形の諸元はモジュール2.
75、歯数28、ネジレ角25°である。このときの転
造加工開始温度は950℃、加工完了温度は700℃
(いずれも素材外周部の塑性変形域の温度)であり、ロ
ーラダイスの押し込み速度は素材の半回転あたり0.5
5mm、転造加工所要時間は約3秒である。
上記素材加熱、転造加工を含み、本実施例における温度
条件は第2図に示す通りである。図において(イ)〜
(ホ)は工程を、I.Hは高周波誘導加熱を、A.Cは
空冷を、O.Qは油冷を示す。
転造加工終了後、素材(成形された歯車)の外周部の温
度をT(時点2)まで空冷し次いで高周波誘導加熱に
よってT(時点3)まで急速加熱し、0〜2sec
保持後に室温まで空冷した。
次いで、950℃×4hrの浸炭処理を行なった後に油
焼入れを行なった(時点4)。
温度T,Tを種々変化させた場合において、浸炭焼
入れ後(時点4)の歯の各部の旧オーステナイト結晶粒
径を調査した。結果を第3図および第4図に示す。
第3図において●、○、◎、△、▲、 印はそれぞれ同図に付記した表および歯の図に示すよう
に、、の測定位置においてTをR.T(室温)、
550℃、650℃としたときの結果を示すものであ
る。本発明における(ハ)の工程の条件を満足するT
はR.Tおよび550℃である。しかして本発明により
が950℃(Ac+100℃)以上の場合には浸
炭時のオーステナイト結晶粒の成長が抑制されている。
特にTが950℃前後では、従来の焼準処理(*印で
示される、950℃×1hr、空冷)より微細粒とな
る。
第4図において、線Aは本発明により(ハ)の工程で冷
却処理を行なってT≦550℃とした場合であり、線
BはT=650℃あるいは(ハ)の工程における冷却
処理を行なわなかった場合である。Tは600℃〜1
250℃の範囲で変化させた。本発明により(ハ)の工
程で冷却処理を行なうと、浸炭前のオーステナイト結晶
粒径がより小さい範囲まで結晶粒成長が抑制される。図
で斜線部分が本発明においてT>950℃とした場合
の結晶粒径を示す。
また、第2図の時点2および時点3から成形された歯車
を水冷し、歯の各部について組織観察を行なった。結果
を下記の表に示す。表においてAはオーステナイト、F
はフェライト、Pはパーライト、Bはベーナイト、Cは
セメンタイルである。本発明の範囲においては、時点2
および時点3で上記の変態が生じていることが知られ
る。
第5図は、(ニ)の再加熱工程において、時点3で生成
されるオーステナイト結晶粒の大きさの実験結果を示す
図である。(ハ)の冷却処理工程を行ないT=550
℃、R.Tとして(ニ)の再加熱工程を行なった場合に
は、(ハ)の冷却処理工程を行なわず(T=650
℃)、加工されたオーステナイトのままで(ニ)の再加
熱工程を行なった場合に比べてT=950℃〜110
0℃で時点3におけるオーステナイト結晶粒は小さくな
っている。これにより(ハ)の冷却処理工程が有効であ
ることが知られる。なお図には再加熱を行なわなかった
場合の結果を付記した。また、測定個所は同図に付記し
た歯車における〜である。各実験において、5つの
結果が示されているのは上記の5個所の測定個所による
ものであるが、各結果がいずれの測定個所によるもので
あるかは記載を省略した。
しかしT=650℃の場合に比べ、本発明のT=55
0℃、R.TおよびT=950℃〜1100℃では、
オーステナイト結晶粒の場所による差が少なく、均一化
されていることが知られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の工程説明図、第2図は本発明の実施例
の操作を示す説明図、第3図、第4図および第5図は、
本発明の実施例におけるオーステナイト結晶粒の大きさ
の測定結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 澤村 政敏 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−190321(JP,A) 特公 昭59−46288(JP,B2)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】浸炭用鋼の素材を次の(イ)、(ロ)、
    (ハ)、(ニ)および(ホ)の工程を経て処理すること
    を特徴とする肌焼鋼部品の製造方法。 (イ)素材を加熱してオーステナイト化する。 (ロ)引続いて1000℃〜650℃の温度範囲におい
    てオーステナイト状態で素材に塑性加工を施す。 (ハ)引続いて素材を、その塑性変形域が少なくとも部
    分的にパーライトとフェライトに変態する温度以下にな
    るまで冷却する。 (ニ)引続いて素材の上記塑性変形域を、Ac+10
    0℃以上ないし1100℃の温度に急速に再加熱後、直
    ちに、ないしは15秒以内で温度保持して後、室温まで
    冷却する。 (ホ)冷却された素材を900℃以上の温度で浸炭処理
    後、焼入れ、焼戻しを行なう。
  2. 【請求項2】上記(イ)の工程において、加熱温度が9
    00℃〜1250℃である特許請求の範囲第1項記載の
    肌焼鋼部品の製造方法。
  3. 【請求項3】上記(ロ)の工程において、塑性加工は転
    造加工および鍛造加工のいずれかである特許請求の範囲
    第1項記載の肌焼鋼部品の製造方法。
  4. 【請求項4】上記(ロ)の工程において、塑性加工の終
    了温度が650℃〜700℃である特許請求の範囲第1
    項記載の肌焼鋼部品の製造方法。
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