JP2709596B2 - 肌焼鋼強靭部品の製造方法 - Google Patents

肌焼鋼強靭部品の製造方法

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JP2709596B2 JP63025925A JP2592588A JP2709596B2 JP 2709596 B2 JP2709596 B2 JP 2709596B2 JP 63025925 A JP63025925 A JP 63025925A JP 2592588 A JP2592588 A JP 2592588A JP 2709596 B2 JP2709596 B2 JP 2709596B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、肌焼鋼強靭部品を高精度かつ経済的に製造
する方法に関するもので、更に詳しくは、浸炭処理を行
った後、熱間温度および温間温度の温度領域で塑性加工
を施し、その後再加熱し、焼入れ・焼戻し処理を行なう
ことにより強靭な肌焼鋼部品を製造する方法に関するも
のである。
〔従来の技術およびその問題点〕
従来より、高い靭性および表面硬度を要求される歯車
や軸受部品等の部品は、肌焼鋼を用いて所定の形状に切
削加工や塑性加工などで成形した後に、最終工程で浸炭
焼入れ・焼戻し処理を行うことにより製造している。
しかしながら、この浸炭熱処理は、一般に930℃〜950
℃の温度で数時間の加熱を要するため、浸炭層のオース
テナイト結晶粒を粒度番号8程度以上に微細にすること
は困難である。更に、塑性加工後に浸炭処理を行う場合
には、加工歪の影響をうけてオーステナイト結晶粒の成
長が生じ易いため、塑性加工後に900℃前後で2時間程
度加熱する焼準処理を行う必要がある。このように、従
来の浸炭部品の製造方法においては、浸炭層のオーステ
ナイト結晶粒が比較的大きいために、浸炭層が靭性に乏
しいという難点があり、また塑性加工を行った場合に
は、その後の焼準処理を要するために製造工程が複雑と
なり、経済的および省エネルギー的にも問題があった。
本出願人は、かかる従来技術の問題点に鑑み、先に、
これら問題を解決した「肌焼鋼部品の製造方法」(特願
昭61−183939号)を開発した。この方法は、熱間または
温間の温度領域で塑性加工し、短時間で再加熱処理した
後、浸炭処理を行ことにより肌焼鋼部品を製造する方法
である。これにより、塑性加工後の加熱処理が短時間で
実施できるため、経済的および工業的に有利となり、ま
た、浸炭層のオーステナイト結晶粒を粒度番号9〜10と
微細にすることができた。しかしながら該方法では、上
記結晶粒の粒度がまだ充分ではなく、肌焼鋼部品の著し
い強靭化を実現することができなかった。
また、本出願人は、「高炭素鋼強靭部品の製造方法」
(特願昭62−124944号(特開平1−52018号))を開発
した。この方法は、素材として高炭素鋼を用い、熱間お
よび温間の両温度領域で塑性加工した後、短時間で再加
熱処理することにより高炭素鋼強靭部品を製造する方法
である。これにより、得られる製品のオーステナイト結
晶粒を粒度番号12〜14と微細にし、部品の強靭化を図る
ことができた。しかしながら該方法では、対象としてい
る材料は高炭素鋼(過共析鋼)であり、ベアリングのよ
うな大きな衝撃荷重のかからない部品には適している
が、歯車などのような耐衝撃性の要求される部品には、
適用し難いなどの問題があった。
このように、前述の従来技術による方法およびショッ
トピーニングなどの強靭化のための従来法では素材の強
靭化に限界があり、さらに強靭な浸炭部品を製造する方
法の提供が望まれていた。また、浸炭部品、特に浸炭層
の強靭化を図る経済的な製造プロセスの提供が望まれて
いた。
そこで、本発明者等は、上述の如き従来技術の問題点
を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験を重ねた結
果、本発明を成すに至ったものである。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、肌焼鋼の素材を塑性加工により能率
よく精密に成形するとともに、高硬度でかつ極めて微細
な旧オーステナイト結晶粒の浸炭焼入れ層を有し、靭性
に著しく優れた高耐摩性鋼部品を得る方法を提供するに
ある。
〔発明の説明〕
本発明の肌焼鋼強靭部品の製造方法は、鋼素材に塑性
加工を施して肌焼鋼強靭部品を製造する方法において、
浸炭用鋼素材に浸炭処理を施し該素材の表面層を高炭素
の基地組織とする浸炭処理工程と、該浸炭処理した素材
を加熱して少なくとも浸炭層を含む領域をオーステナイ
ト化するオーステナイト化工程と、該オーステナイト化
した素材の前記領域を含む部分の熱間温度および温間温
度の温度域において素材を塑性加工し所望の部品形状と
する塑性加工工程と、該塑性加工された素材の前記領域
がパーライトまたはフェライトに変態する温度以下に冷
却する冷却工程と、該冷却された素材を前記基地組織の
オーステナイト化温度の直上まで急速に再加熱し、該基
地組織をオーステナイト化した後、直ちに焼入れ・焼戻
しを行う加熱処理工程とからなることを特徴とするもの
である。
上記構成よりなる本発明の作用および効果は、次のよ
うである。すなわち、本発明の肌焼鋼強靭部品の製造方
法においては、先ず、浸炭処理工程において肌焼鋼素材
の表面層が浸炭処理により高炭素の基地組織となり、次
いで、オーステナイト化工程において該浸炭層を含む領
域がオーステナイト化される。引き続いて、塑性加工工
程において熱間温度および温間温度の温度域において素
材を塑性加工することにより、塑性歪みが蓄積された基
地組織を有する所望の部品形状に精密成形される。次い
で、冷却工程において、この基地組織中の塑性歪みを有
するオーステナイトが微細なパーライトまたはフェライ
トに変態する。次いで、加熱処理工程において、先ず急
速に再加熱して該基地組織をオーステナイト化すること
により、微細で均一なオーステナイト等軸晶に変態し、
更にそれが成長する前に直ちに焼入れすることにより、
微細な旧オーステナイト粒の焼入れ組織となる。更に、
焼戻しを行うことにより、マルテンサイトの靭性を向上
することができる。
以上のようにすることにより、本発明により、延性の
大きな低炭素鋼の浸炭用素材を安定に無理なく塑性加工
して精密な部品に成形できる。
また、本方法により、極めて微細な旧オーステナイト
結晶粒の浸炭焼入れ層を有する高靭性部品を得ることが
できる。
さらに、オーステナイト化工程から加熱処理工程ま
で、時間的に連続して実施することができるので、これ
らの処理を分けて実施する従来法に比べて熱エネルギー
の節約を図ることができる。
〔その他の発明の説明〕
肌焼鋼強靭部品の製造方法に関するその他の発明につ
いて以下に述べる。
素材は、浸炭、焼入れが充分になされ得る金属材料で
あり、低合金の浸炭用鋼が用いられる。例えば、機械構
造用炭素鋼S10C〜S22C、クロム鋼SCr415、420、クロム
・モリブデン鋼SCM415、418、420、ニッケル・クロム鋼
SNC815、ニッケル・クロム・モリブデン鋼SNCM220、41
5、420、815、マンガン鋼SMn420、マンガン・クロム鋼S
MnC420等、およびこれらの相当鋼が用いられる。また、
結晶微粒化のために微量のAlNやNb、Ti、Vなどが添加
された上記浸炭用鋼も用いられる。
次に、肌焼鋼強靭部品の製造方法を、それぞれの工程
について一つの典型として温度−時間軸で模式適に展開
したものを、第1図に示す。図中、(イ)は浸炭処理工
程、(ロ)はオーステナイト化工程、(ハ)は塑性加工
工程、(ニ)は冷却工程、(ホ)は加熱処理工程をそれ
ぞれ示す(以下、同じ)。
次に、浸炭処理は、通常の浸炭温度で行うことがで
き、例えば900℃〜950℃で行う。浸炭後は、焼入れ処理
または空冷処理を行う。あるいは、第2図に示すよう
に、浸炭処理後、室温まで空冷することなくオーステナ
イト工程〔図中、(ロ)の3〜4〕につなげてもよい。
次に、オーステナイト化工程において、加熱温度は、
通常の炉中加熱では830℃〜950℃程度が適当である。す
なわち、加熱温度が830℃未満の場合には素材の浸炭層
を含む領域をオーステナイト化することができず、ま
た、950℃を越える場合には該温度で長時間加熱すると
オーステナイト結晶粒の粗大化を生じる虞があるため、
ともに好ましくない。また、高周波誘導加熱や通電加熱
などにより短時間で加熱する場合は、炉中加熱の場合よ
りも加熱温度を高くする必要があり、950℃〜1200℃程
度が適当である。オーステナイト化時間は、炉加熱では
10〜20分が、短時間加熱では数秒以内であることが好ま
しい。
次に、塑性加工工程は、塑性加工は転造加工または鍛
造加工により行われ、最終的な部品の形状に精密に成形
される。また、この塑性加工工程において、素材は少な
くとも二段階の加工過程を経て塑性加工される。すなわ
ち、先ず、オーステナイト化した素材の浸炭層を含む領
域の基地組織がオーステナイトである熱間温度域におい
て素材に塑性加工を施す(第一加工工程)〔第1図中、
Fhの時間範囲で示す領域:以下同じ〕。この第一加工工
程では、浸炭層を含めて素材は低変形抵抗かつ高変形能
を示す。従って、低い加工圧力でかつ割れの危険性のな
い状態で任意に粗加工をすることができる。次いで、該
組織が準安定オーステナイトとフェライトとパーライト
または準安定オーステナイトとパーライトとなる温間温
度域において該素材に塑性加工を施し、最終的に所望の
部品形状に精密成形する(第二加工工程)〔第1図中、
Fwの時間範囲で示す領域:以下同じ〕。この第二加工工
程は、温間域加工ではあるが、前記第一加工工程におい
て最終成形形状に至るために必要な加工度のうちかなり
の部分の変形が完了しているので、この第二加工段階に
おける加工度は少なく、従って、金型損傷や材料割れ等
の危険性が小さく、容易に精密成形をすることができ
る。また、温間温度域で仕上げ加工ができるので、切
削、切削加工等の後加工での材料の無駄を少なくするこ
とができ、加工時間も短縮できるなど、極めて経済的か
つ実用的に実施することができる。
この場合、第一加工工程と第二加工工程を時間間隔を
おいて実施しても(第1図)、これら加工工程を連続し
て実施しても(第2図)、それぞれほぼ一定の温度に保
持した状態で実施しても(第3図)よい。すなわち、こ
の塑性加工工程では、第一加工工程において、浸炭層を
含む領域の基地組織がオーステナイトの状態で行い、引
き続いて、第二加工工程において、準安定オーステナイ
トとフェライトとパーライトまたは準安定オーステナイ
トとパーライトとの混合の基地組織で行う。なお、第二
加工工程における加工温度の下限は、500℃もしくはそ
れ以上とすることが好ましい。これにより、変形抵抗の
増加と変形能の低下をできるだけ少なくすることができ
る。また、第二加工工程における加工度は、少なくとも
20%以上、さらに望ましくは30%以上であるとよい。こ
れにより、結晶の微細化および強靭化を効果的にするこ
とができる。この場合、該加工度が大きいほど、結晶に
微細化および強靭化を図ることができる。
次に、加熱処理工程において、再加熱温度は、浸炭層
を含む領域の基地組織の炭素濃度によって決定されるオ
ーステナイト化温度の直上であり、その上限はオーステ
ナイト化温度〔A1〕+150℃、好ましくはオーステナイ
ト化温度+100℃程度である。また、この再加熱の時間
(第1図〜第3図中、Htで示す)は、オーステナイト変
態が終了後数分以内とすることが好ましい。再加熱温度
および再加熱時間を前記範囲内とすることにより、オー
ステナイト等軸晶の成長(粗大化)が防止され、極めて
微細かつ均一なオーステナイト等軸晶の組織となる。
また、この加熱処理工程において、焼入れ・焼き戻し
は、冷媒を使用して焼入れを行い、適宜の条件で焼戻し
を行う。
なお、前記浸炭処理工程〜加熱処理工程の各工程のう
ち、浸炭処理工程(イ)とオーステナイト化工程(ロ)
の間、および、加熱処理工程(ホ)の焼入れ処理と焼戻
し処理の間には、それぞれ任意の休止時間を設けてもよ
い。しかし、オーステナイト化工程(ロ)と加熱処理工
程(ホ)の焼入れ処理までは引き続いて実施するのが好
ましく、この間の各工程・処理の間には前記した以外の
工程や処理操作を介在させない方がよい。
また、浸炭処理工程に先立ち、予め素材に予成形を施
しても、以下の工程には支障がないので、必要に応じて
前加工を実施することができる。
また、本発明は、上記において、塑性加工工程を、前
記オーステナイト化した素材から準安定オーステナイト
が実質的に消滅する温度以下の温度域において該素材に
塑性加工を施すことにより、実質的に、該塑性加工され
た素材の前記領域(少なくとも浸炭層を含む領域)がパ
ーライトまたはフェライトに変態する温度以下となるの
で、冷却工程を省略することができる。
すなわち、本発明の好適な肌焼鋼強靭部品の製造方法
は、鋼素材に塑性加工を施して肌焼鋼強靭部品を製造す
る方法において、浸炭用鋼素材に浸炭処理を施し該素材
の表面層を高炭素の基地組織とする浸炭処理工程と、該
浸炭処理した素材を加熱して少なくとも浸炭層を含む領
域をオーステナイト化するオーステナイト化工程と、該
オーステナイト化した素材から準安定オーステナイトが
実質的に消滅する温度以下の温度域において該素材に塑
性加工を施し所望の部品形状とする塑性加工工程と、該
塑性加工された素材を前記基地組織のオーステナイト化
温度の直上まで急速に再加熱し,該基地組織をオーステ
ナイト化した後、直ちに焼入れ・焼戻しを行う加熱処理
工程とからなることを特徴とする靭性に優れた肌焼鋼強
靭部品の製造方法である。
〔実施例〕
以下、本発明および他の発明の実施例を説明する。
第1実施例 素材として、JIS SCr420(クロム鋼、0.22%C、0.2
3%Si、0.73%Mn、0.023%P、0.014%S、0.15%Cu、
0.07%Ni、1.00%Cr、0.027%Al、0.014%N)を用い
て、リング製品の転造加工を実施した。
素材は、外径44mm、内径24mm、幅20mmのリングであ
る。
このリング素材を、930℃×6時間の浸炭処理後に室
温までに冷却し、次いで850℃の電気炉中で20分間加熱
処理して浸炭層を含む領域の基地組織をオーステナイト
化した。この場合の素材表面の炭素濃度は0.9〜1.0%で
あり、浸炭層の有効硬化深さは1.2mmであった。従っ
て、浸炭層の基地組織のオーステナイト化温度は状態図
より少なくとも約800℃以上、内部のオーステナイト化
温度は830〜840℃と推定される。
この様にしてオーステナイト化した素材を、マンドレ
ルと円筒形ローラの間で転造加工し、外径72.5mm、内径
62.5mm、幅20.2mmのリング製品に成形した。この際、加
工開始温度は800〜820℃、加工完了温度は530〜610℃で
あり、この間に連続して転造加工を行った。なお、ロー
ラ押込み速度は素材1回転当たり0.1mm、加工所要時間
は約7secであった。
転造加工完了後、成形品を500℃まで冷却した後、800
℃の電気炉中に押入て再加熱し、素材外周部の浸炭層の
基地組織がオーステナイトに変態後1〜3分炉中に保持
してから油冷した。次いで、160℃で2時間保持した
後、水冷することにより焼戻し処理を施して製品を得た
(リング製品A1)。
得られたリング製品A1の寸法精度は、直径誤差±0.1m
m(真円度誤差を含む)であった。また、表面仕上がり
は平滑で割れ等の欠陥は全く発生しておらず、そのまま
で研削仕上げが十分可能であった。また、リング製品A1
の硬さ分布を第4図に「A1」として示す。同図より明ら
かのように、表面から約0.7mmの範囲では通常熱処理品
と同等の硬さが得られたことが分る。
またリング製品A1の浸炭硬化層を含む領域の旧オース
テナイト結晶粒は、粒度番号で12〜12.5であり、極めて
微細なものが得られた。この旧オーステナイト粒は、等
軸晶的で極めて均一であった。
一方、比較のために再加熱開始温度のみを加工終了温
度である610℃とし、他の条件は同じにした場合(比較
例C1)には、浸炭硬化層の旧オーステナイト結晶粒度番
号は9〜11で、再加熱開始温度が500度のときの上記A1
の場合より粒度は低かった。
この結果より明らかの如く、比較例C1の場合は、加工
によりひずみをうけた準安定オーステナイトが多数存在
し、そのまま再加熱したためにこの準安定オーステナイ
ト粒が成長して微細なオーステナイトが得られなかった
ものと思われる。これに対して、本実施例のA1の再加熱
開始温度500℃の場合には、ひずみをうけた準安定オー
ステナイトが冷却により微細なパーライト組織に変態さ
せてから再加熱したために、A1点直上において微細なオ
ーステナイト等軸結晶粒を得ることができたものと思わ
れる。
次に、転造完了温度が500℃となるように転造時間を
長くしたところ、転造後の冷却を行わないですぐに再加
熱を行っても、上記の再加熱開始温度500℃の場合と同
様な結果が得られた。
比較のために、上記リング製品と同寸法のリングを上
記素材と同材質の丸棒から切削加工し、これに同条件で
浸炭焼入れ・焼戻し処理を施して比較用リング製品を得
た(リング製品C2)。この比較用リング製品の旧オース
テナイト結晶粒の大きさは、粒度番号8で、上記の本実
施例の場合に比べて著しく粗粒であった。なお、この通
常熱処理品の硬さ分布は、第4図に「C2」として示す如
く本実施例品とほぼ同一であった。この結果より明らか
なように、比較例C2の通常熱処理に比べて、本実施例の
ものは極めて微細な旧オーステナイト粒が得られること
が分る。
次いで、上記本発明実施例A1と比較例C2のリング製品
の圧壊試験を行った。該試験は、第5図で示すように一
部を切り欠いたリング製品1を、材料試験機によって上
下の圧盤2および3の間で30mm/minの速度で圧縮し、T
部で破壊を生じるまでのリングのたわみ量Δlとその時
の荷重(圧壊荷重)を測定した。その結果、第6図に示
す。同図よりあきらかのように、本実施例のA1の圧壊荷
重とたわみ量は、通常熱処理品C2に比べて著しく大き
く、大幅に強靭化されていることが分る。また、比較の
ため再加熱温度を760℃とし、それ以外は上述の本実施
例(A1)と同様にし、比較用のリング製品C3を得た。こ
のC3を上記と同様に圧壊試験を行ったところ、圧壊を生
じず、大きなたわみ量まで変形したが、浸炭層を含む領
域が充分に硬化されていないために、荷重は本実施例の
A1の場合に比べて著しく低く、強靭化されていなかっ
た。
第2実施例 第1実施例と同様の成分の素材を使用し、外径87mm、
内径32mm、幅20mmの円盤状ブランクに削り出した後、95
0℃×4時間の浸炭熱処理を行った。有効浸炭深さは0.9
mmであった。その後、ブランクの外周部(外周より約10
mmの範囲)を高周波誘導加熱により30sec間で1150℃ま
で昇温したのち、外周部にインボリュート歯形を転造加
工で連続的に成形した。
成形後の歯車諸元は、モジュール3.25、歯数25枚、ね
じれ角14゜、圧力角25゜、基準ピッチ円直径83.7mm、外
径89.5mm、全歯丈6.7mm、歯幅24mmで精度はJIS5級を満
たしていた。また、成形された歯車に割れ等の欠陥は全
く生じていなかった。
このとき、転造加工開始温度(表面)は1000℃で、転
造完了表面温度は600℃であった。この場合、転造後に
測定した浸炭層深さは、歯車状転造ローラで駆動させる
側(d側とする)の歯車の歯元部で0.4mm、その反対側
(f側とする)では0.1mm以下と非常に薄くなった。
転造後、表面温度で500℃以下まで冷却した後、20sec
間で800℃〜950℃に高周波誘導加熱法で再加熱し、直ち
に油冷して製品A2を得た。その時の浸炭層を含む歯部の
オーステナイト結晶粒度を、第7図中のA2に示す。
また、比較のために、同一素材で同一諸元のホブ切り
歯車を通常の浸炭焼入れして比較用製品C4を得た。この
C4の浸炭層のオーステナイト結晶粒度を、第7図に併せ
て示す。図中、「C4」が本比較例を示す。
以上より明らかのごとく、本実施例の場合、オーステ
ナイト結晶粒は再加熱温度の上昇とともに成長するが、
再加熱温度が800℃〜950℃であれば、充分微細なものが
得られていることが分る。
第3実施例 第1実施例と同様の成分の素材を使用し、外径87mm、
内径44mm、歯幅14mmの円盤状ブランクに削り出した後、
950℃×5時間、930℃×12時間、及び930℃×24時間の
浸炭処理を施した。このとき、有効浸炭深さは1.5mmと
1.8mm及び2.1mmであった。
その後、第2実施例と同様にして、ブランクの外周部
にインボリュート歯形を転造加工で連続的に成形した。
成形した歯車の諸元はモジュール2.75、歯数28枚、ねじ
れ角25゜、圧力角22.5゜、基準ピッチ円直径84.96mm、
外径90mm、歯幅17mm、全歯丈6.67mmで精度はJIS5級を満
たしていた。また、割れ等の欠陥は全く生じていなかっ
た。
このときの転造開始温度(表面)は920℃、転造完了
時表面温度は600℃であり、転造時間は約6secであっ
た。転造後、表面温度で500℃以下まで冷却した後、30s
ec程度で歯の部分を800〜950℃に高周波誘導加熱法で再
加熱した。この時の歯部の浸炭層を含む領域のオーステ
ナイト結晶粒の大きさは、第2実施例の場合(第7図中
「A2」)と同様であった。しかし、転造後の歯元の浸炭
硬化深さは、第8図(b)及び第9図に示す如くとな
り、ブランクの有効浸炭深さを2.1mmにしてもf側の歯
元では極めて薄くなった。即ち、一方向回転のみで転造
成形する通常の方法ではf側歯元の浸炭硬化層深さを通
常用いられている0.6〜0.7mmとするためにはブランクの
浸炭深さを極めて大きくしておく必要があり、実用的に
困難である。そこで、第8図(a)に示す状態まで歯を
成形した後に転造用ローラダイスの回転方向を逆転して
引き続いて成形を行うことにより第8図(c)及び第10
図に示す如くd側、f側の歯元の浸炭硬化層深さをほぼ
均等にすることができた。
このように、ローラダイスを正逆転する転造成形を行
えば通常の浸炭硬化層深さ0.5〜0.7mmを持つ歯車を得る
ことができ、さらに転造後に歯部温度を500℃以下に冷
却後、引き続いて860℃まで高周波誘導加熱法で歯部を
再加熱することにより浸炭硬化層を含む領域のオーステ
ナイト結晶粒の粒度番号11〜13.5(平均11.5)のものが
得られた。
第4実施例 第3実施例と同様の成分と形状の素材を準備し、第3
実施例の場合と同様のローラダイスを用いて、浸炭処理
前に第8図(a)に示す高さの歯を熱間転造法又はホブ
切り法で成形した。
この予加工品に対して950℃×5時間の浸炭処理によ
り有効深さ1.5mmの浸炭層を形成させた。その後、第3
実施例と同様にブランク外周部を950℃まで30sec間で高
周波誘導加熱した後、転造加工を施して、第3実施例の
場合と同様の諸元の歯車に成形した。このときの転造開
始温度は表面で850℃、転造完了時表面温度は550℃であ
り、転造時間は約5secであった。成形品の歯車は精度は
JIS5級で割れ等の欠陥は全く生じなかった。
転造後500℃まで歯部を冷却した後、860℃まで20sec
で高周波誘導加熱法で再加熱して油焼入れをした。その
結果、いずれの予加工の場合とも、旧オーステナイト結
晶粒度番号11.5の浸炭硬化深さ0.7〜1mmを有する歯車が
得られた。
また、第3実施例及び第4実施例のはすば歯車につい
て、歯元曲げ疲労強度(耐久限)と歯元のオーステナイ
ト結晶粒径の関係を静かみ合い式歯車曲げ疲労試験法に
よって調べた実験結果の一例を第11図に示す。
第3実施例の“途中逆転転造法”及び第4実施例の
“予加工後転造成形”で両歯面の歯元の浸炭深さ0.7mm
を確保するとともに微細オーステナイト粒組織の硬化層
をもつ本実施例の歯車は、通常の浸炭焼入れ歯車に比べ
て歯元曲げ疲労強度は大幅に向上していることが分る。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図は本発明の工程を示す説明図、第4
図ないし第6図は第1実施例を示し、第4図は得られた
製品の内部硬さ分布を示す線図、第5図は圧壊試験方法
を示す部分断面図、第6図は圧壊試験結果を示す線図、
第7図は第2実施例における歯車外周部の再加熱温度と
オーステナイト結晶粒度番号の関係を示す線図、第8図
は第3実施例における塑性加工状態を模式的に示す部分
断面図、第9図および第10図は第3実施例における浸炭
深さと転造後の浸炭深さの関係を示す線図、第11図は第
3実施例および第4実施例における歯元曲げ疲労強度と
歯元のオーステナイト結晶粒径の関係を示す線図であ
る。 (イ)……浸炭処理工程 (ロ)……オーステナイト化工程 (ハ)……塑性加工工程 (ニ)……冷却工程 (ホ)……加熱処理工程 A1、A2……実施例 C2、C3、C4……比較例
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 小川 武 (56)参考文献 特開 昭63−121617(JP,A) 特開 平1−15357(JP,A) 特開 平1−52018(JP,A) 特開 昭62−205228(JP,A) 特開 昭62−23930(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼素材に塑性加工を施して肌焼鋼強靭部品
    を製造する方法において、 浸炭用鋼素材に浸炭処理を施し該素材の表面層を高炭素
    の基地組織とする浸炭処理工程と、 該浸炭処理した素材を加熱して少なくとも浸炭層を含む
    領域をオーステナイト化するオーステナイト化工程と、 該オーステナイト化した素材の前記領域を含む部分の熱
    間温度および温間温度の温度域において素材を塑性加工
    し所望の部品形状とする塑性加工工程と、 該塑性加工された素材の前記領域がパーライトまたはフ
    ェライトに変態する温度以下に冷却する冷却工程と、 該冷却された素材を前記基地組織のオーステナイト化温
    度の直上まで急速に再加熱し、該基地組織をオーステナ
    イト化した後、直ちに焼入れ・焼戻しを行う加熱処理工
    程とからなることを特徴とする靭性に優れた肌焼鋼強靭
    部品の製造方法。
  2. 【請求項2】塑性加工工程が、前記オーステナイト化し
    た素材の浸炭層を含む領域の基地組織がオーステナイト
    である熱間温度域において素材に塑性加工を施す第一加
    工工程と、次いで該組織が準安定オーステナイトとフェ
    ライトとパーライトまたは準安定オーステナイトとパー
    ライトとなる温間温度域において該素材に塑性加工を施
    す第二加工工程とからなることを特徴とする特許請求の
    範囲第(1)項記載の肌焼鋼強靭部品の製造方法。
  3. 【請求項3】浸炭処理工程に先立ち、予め素材に予成形
    を施すことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載
    の肌焼鋼強靭部品の製造方法。
  4. 【請求項4】塑性加工が、転造加工または鍛造加工であ
    ることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の肌
    焼鋼強靭部品の製造方法。
  5. 【請求項5】鋼素材に塑性加工を施して肌焼鋼強靭部品
    を製造する方法において、 浸炭用鋼素材に浸炭処理を施し該素材の表面層を高炭素
    の基地組織とする浸炭処理工程と、 該浸炭処理した素材を加熱して少なくとも浸炭層を含む
    領域をオーステナイト化するオーステナイト化工程と、 該オーステナイト化した素材から準安定オーステナイト
    が実質的に消滅する温度以下の温度域において該素材に
    塑性加工を施し所望の部品形状とする塑性加工工程と、 該塑性加工された素材を前記基地組織のオーステナイト
    化温度の直上まで急速に再加熱し、該基地組織をオース
    テナイト化した後、直ちに焼入れ・焼戻しを行う加熱処
    理工程とからなることを特徴とする靭性に優れた肌焼鋼
    強靭部品の製造方法。
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