JPH0613436Y2 - 金属ガスケツト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は金属ガスケツトに関し、特に自動車用エンジン
のシリンダヘツド部に使用されるような温度が高く圧力
が高いところで良好なシール効果を発揮できる金属ガス
ケツトに係るものである。

（従来の技術） エンジンのシリンダヘツド部に使用されるガスケツトと
しては、従来アスベストを主体とする石綿ガスケツトが
安価で耐熱性に優れていることから広く用いられてきた
が、健康に悪影響を及ぼすとの観点からノンアスベスト
化の要請が高まり、その対策として金属ガスケツトが提
案されてきた。

一般に金属ガスケツトは、弾性を有する金属板にシリン
ダ孔となる密封対応用の開口部をとりまくようにビード
が形成され、このビードが接合部材の接合面間で締め付
けて押圧され、その弾性復元力によって面圧を保持しシ
ール効果を発揮している。

ところで、エンジンの駆動時には燃焼室からの熱はまず
シリンダに、続いてシリンダブロツク、シリンダヘツド
に、さらに締め付けボルトへと伝達される。このような
温度上昇の時間的なずれや、鋳鉄、アルミニウム材等の
異なった材質から生じる熱膨張係数の差に基づく熱歪み
などによって、シリンダブロツクやシリンダヘツドが変
形する。この変形で接合面間の間隙が変化し、大きくな
るところと小さくなるところとが生じる。間隙が小さく
なった接合面間では、ガスケツトに過度の力が作用し、
この過度の力によって金属ガスケツトのビード部が塑性
変形させられ、ビードの弾性復元力が低下してシール効
果が低下するという問題点があった。

実公昭５６−７７２７号「金属シール」では金属製の中
空Ｏリングから成るシールが提案され、特開昭６２−６
３２７０号「金属ガスケツト」ではガスケツト孔の周縁
を厚肉に形成し薄肉部をエツチング処理した金属ガスケ
ツトが提案されているが、いずれも孔の周縁での弾性復
元力が充分でないという欠点があった。

（考案が解決しようとする問題点） 本考案の目的は、熱歪みによって生じる接合面間の間隙
の変化に追従できる弾性を有し、かつ締め付け力によっ
てシール効果が低下することなく高い面圧を保持するこ
とのできる金属ガスケツトを提供することにある。

（問題点を解決するための手段とその作用） 本考案の前述した目的は、密封対応用の開口部を有する
単層又は複層から成る金属板の前記開口部の内周縁を金
属板に垂直な断面から見て略円形に折り曲げて開口部に
沿って連続する包持壁を形成し、少なくとも前記包持壁
の部分は複層となるように金属板を重ね合わせて二重構
造とし、この二重構造の包持壁内にコイルを概ね密着巻
きにした無端弾性コイルスプリングを芯材として内装せ
しめた金属ガスケツトによって達成される。

かかる構成に基づき、本考案の金属ガスケツトによれ
ば、芯材となるコイルスプリングの弾性力が金属板の二
重構造の包持壁を介して開口部の内周縁に内側向きの圧
力を及ぼし、接合面とのシール効果を強化する働きをす
る。接合部材が熱膨張して変形し接合面間の間隙が大き
くあるいは小さく変化しても、コイルスプリングの圧縮
力と弾性復元力とで上記変化に追従する。締め付けた状
態では、締め付け力と反対方向に働く弾性反発力によっ
て高い面圧を保持し、接合面との気密な接触を保持する
ことができる。

本考案の他の特徴及び利点は、添付図面の実施例を参照
した以下の記載により明らかとなろう。

（実施例） 第１図は、本考案の好適な実施例による金属ガスケツト
１０をその右側部分を省略して表わしている。このガス
ケツト１０は、例えばステンレス鋼など比較的硬質で弾
性を有する２枚の金属薄板１ａ，１ｂを合せて接着した
基板１で作られており、ガスケツト１０のほぼ中心線上
にシリンダ孔に対応した開口部２（２個のみ図示）が設
けられている。なお、２枚の金属薄板のうち上層の金属
薄板１ｂを例えば銅、アルミニウム等の軟質で延性のあ
る金属薄板にして重合したり、あるいは上層の金属薄板
にメツキ等の被覆を施すこともできる。

本考案に従い、この開口部２の内周縁は、第２図に示す
ように金属板に垂直な断面から見て略円形になるように
折り曲げられ、開口部２に沿って連続する包持壁３を形
成している。この包持壁３内には、コイルを概ね密着巻
きにした無端の弾性コイルスプリング４が芯材として内
装されており、製造方法としては、治具を用いてコイル
スプリングを所定の位置にセツトしてから開口部２の内
周縁を折り曲げて包持壁３を形成すると同時にコイルス
プリング４を収納する。

基板１の周辺にはさらに冷却水用の孔５とボルト孔６と
が周知の如く設けられている。

従って、この構造によれば内装されたコイルスプリング
４が包持壁３に内側（開口部の中心方向）向きの力を及
ぼし、同時に略円形に形成された壁面を押し広げようと
する力が働いて、このガスケツト１０を接合面に向けて
押し付けることになる。かくして、エンジン作動中の熱
歪みによって接合面間の間隙が大きくなった部分ではコ
イルスプリング４が包持壁３を押し広げて接合面に密着
せしめることによりシール効果を維持し、接合面間の間
隙が小さくなった部分では包持壁３とコイルスプリング
４とが圧縮されてシール効果を維持することができ、ガ
スケツト全体にわたって高い面圧を保持できることにな
る。

第３図は、本考案の他の実施例を表わしており、基板１
を硬質の金属薄板の単層とし、開口部内周縁の応力の集
中する包持壁３の部分だけを二重構造とし、全体の重量
を軽減するようにしたものである。この場合も包持壁３
の略円形部分は硬質と軟質の金属薄板の二重構造とする
こともできる。このような二重構造にすることにより、
中心のコイルスプリングの弾性力を接触表面に均一に伝
えシール効果が確実となる。なお、前述した硬質の金属
薄板を２枚重ねにすれば、応力緩和に対する抵抗力が優
れることになって高い面圧が維持でき、また上層のみを
軟質材で形成すれば塑性変形によるいわゆるなじみ性が
良くなってシール効果が高められることになる。これら
は使用条件によって適宜選択できるものである。

第４図は、本考案のさらに他の実施例を表わしており、
コイルスプリング４内に無端の金属リング２０が挿入さ
れ、その内径側表面がコイルスプリング４の内表面に接
するように配置されている。この作り方としては、コイ
ルスプリング４を巻回して端部を結合する前に金属リン
グ２０の端部を溶接して連結すればよい。金属リング２
０はステンレス鋼やばね鋼で作ることができ、その断面
形状は円形に限らず角形であってもよい。

このような金属リング２０を配置すれば、圧力変動によ
り包持壁３が変形するのが防止され、歪みが小さくなっ
て耐久性が向上することになる。

なお、図の実施例では密封対応用の開口部が円形になっ
ていたが、円形に限らず正方形や長方形の開口部であっ
ても、本考案が同様に適用できることを理解されたい。

（考案の効果） 以上詳細に説明した如く、本考案の金属ガスケツトでは
接合面間の開口部をとりかこむ金属板の二重構造の包持
壁に弾性コイルスプリングが内装されているので、スプ
リングの有する高い圧縮性と弾性復元力とにより、エン
ジンのシリンダヘツド部での熱歪みに基因する接合面間
の隙間の変化にも追随してシール効果を発揮することが
でき、高温高荷重の繰り返しに対しても応力が弛緩しな
いで高い面圧を保持することができる。さらに、外被と
して軟質の金属薄板を重合することにより接触面間のな
じみ性を良くしてシール効果を高めることができ、金属
リングを挿入することにより耐久性が向上する等、その
実用的価値には顕著なものがある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例による金属ガスケツトの一部を
省略した正面図、第２図は第１図の線Ａ−Ａに沿う拡大
断面図、第３図は他の実施例による包持壁を表わす部分
断面図、第４図はさらに他の実施例による包持壁を表わ
す部分断面図である。 １……基板、１ａ，１ｂ……金属薄板 ２……開口部、３……包持壁 ４……コイルスプリング、５……冷却水用孔 ６……ボルト孔 １０……ガスケツト、２０……金属リング

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】密封対応用の開口部を有する単層又は複層
   から成る金属板の前記開口部の内周縁を金属板に垂直な
   断面から見て略円形に折り曲げて開口部に沿って連続す
   る包持壁を形成し、少なくとも前記包持壁の部分は複層
   となるように金属板を重ね合わせて二重構造とし、この
   二重構造の包持壁内にコイルを概ね密着巻きにした無端
   弾性コイルスプリングを芯材として内装せしめたことを
   特徴とする金属ガスケツト。
2. 【請求項２】前記コイルスプリング内に無端の金属リン
   グが挿入され、該金属リングの内径側表面が前記コイル
   スプリングの内表面に接するように配置されている請求
   項１記載の金属ガスケツト。