JPH051065U - エンボス部を有する金属積層形ガスケツト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】比較的軟質の接合面を変形させるおそれなく高
温・高圧の作用するシール穴を密封することのできる金
属積層形ガスケットを提供すること。 【構成】第１構成板１でシールする穴Hcの周囲に芯部14
を形成し、第２構成板２で形成した湾曲部20と段部18と
でエンボス部24を形成し、該エンボス部24と第２表面板
２の折返し部22とで芯部14を包み、少なくとも１枚の第
３構成板４を設けた部位の合計板厚より、シール部26の
合計板厚を厚くした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本願考案は、エンボス部を有する金属積層形ガスケットに関し、更に詳細には 、比較的柔らかい接合面に有利に使用することができる金属積層形ガスケットに 関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

例えば、内燃機関のヘッドガスケットとして使用する金属積層形ガスケット（ 以下単にガスケットという）Ｇは、図６に示すように、シリンダ穴Hcの外、水穴 Hw、オイル穴Ho、ボルト穴Hbなどが設けられており、図７に示すように、金属薄 板からなる第１構成板１、第２構成板２、及び、第３構成板４を積層し、第３構 成板４にシリンダ穴Hcの周りに密封圧をもたらすビード６を形成したものである 。したがって、図示しないヘッドボルトで締め付けると、ビード６が弾性変形し て密封圧を発生させ、シリンダ穴Hc内の周囲に高圧流体の洩れを防止することが きる。該ビード６は、圧縮に対して弾性変形するので、接合面間隔が伸縮しても 、密封圧が低下することがなく高い密封性能を得ることができる。しかしなから 、アルミニウム合金製の内燃機関に適用すると、ビード６が当たる部分が変形し て圧痕を生じ、密封性能が損なわれるおそれがある。

【０００３】 そこで、本出願人は、図８に示すガスケットＧを考案し、1988年に米国特許願 第１９３，２１５号として出願した。図８に示すように、このガスケットＧは、 折返し部８を備えた構成板１と、これに積層した構成板２とから成るものである 。このガスケットＧの密封圧は、折返し部８に生じるので、より幅広のシール部 を形成することが可能であるが、湾曲部10により高い密封圧が発生するので、接 合面をアルミニウム合金製とすると、該部分に前記と同様に変形が起こるという 問題がある。

【０００４】 そこで、前記欠点を改善するために、シール穴を取り囲む段部をガスケット構 成板に形成すると共に、シール穴周縁で湾曲状に折り返して、中空の厚みのある リング状のシール部を形成し、更に所望により、該中空部の内部にビードを設け 、密封部を比較的幅広に形成したガスケットを考案し、1988年に米国特許願第２ ４３，５２８号として出願した。しかしながら、このガスケットは、完全に締め 付けないと弾性変形部がクリープを起こし、密封性能を逓減させる問題が認めら れた。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

以上説明したように、車両の高速化に伴い、内燃機関本体に軽量材が使用され るようになり、鋳鉄より軟質材のアルミニウム合金などが多用され、しかも、内 燃機関の高性能化に伴い、ガスケットの密封性能を更に向上させることが求めら れるに至っている。

【０００６】 本考案は、前記問題に着目してなされたものであり、接合面間隔の伸縮に追随 することができ、しかも、アルミニウム合金のような比較的軟質の接合面を変形 させるおそれがなく、長期間安定して高温・高圧の作用するシール穴を密封する ことのできるエンボス部を有する金属積層形ガスケットを提供することを目的と している。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

以上の目的を達成するための本考案のエンボス部を有する金属積層形ガスケッ トの構成は、第１構成板をシールする穴の周囲で折り曲げてリング状の芯部を形 成し、第２構成板を、シールする穴の周囲で第１構成板側に折り返して前記芯部 を包むエンボス部を形成し、該エンボス部は、第２構成板を、シールする穴の周 縁で湾曲状に折り返して、湾曲部と折返し部とを形成し、且つ、第２構成板を、 クランク様断面を形成するように折り曲げ、芯部の外側にリング状の段部を形成 し、該段部と前記湾曲部とでエンボス部に膨らみを与え、内周縁が前記折返し部 と干渉しない大きさの貫通穴を有する第３構成板を、少なくとも１枚積層したも のである。

【０００８】 本考案のガスケットは、前記芯部の幅を調整することにより密封圧を調整する ことができる。したがって前記芯部の幅を、第２構成板の折返し部の幅より狭く 形成することが好ましい。また、芯部は、厚さを調整するために２層以上とする ことができる。この場合、第１構成板を巻き込むように、又は、折り重ねるよう に複数回折り曲げて芯部を形成することができる。

【０００９】 前記エンボス部は、圧縮された際に、芯部が弾性変形して密封圧を発生させる 。しかしながら、前記湾曲部を、芯部の厚みより大きく湾曲させ、エンボス部と 芯部との間に隙間を設けるように形成して本考案を実施することができる。この ように隙間を形成すると、該湾曲部と段部とが弾性変形して、接合面間隔の変化 に追随することがてきるので、シリンダ穴など内圧が大きく変動する場合にも、 高い密封性能を維持させることができる。

【００１０】 該エンボス部の形状、即ち、湾曲部と段部との間の形状は、ガスケット平面部 と平行な平面に形成してもよく、緩く湾曲する曲面などによって形成してもよい 。また、段部の、前記クランク様断面形状は、明確な折り曲げ線により形成して もよく、また、曲線状に折り曲げてもよい。また、第２構成板に段部を設ける位 置を、第２構成板の平坦部とエンボス部との境に設けてもよく、また、反対側表 面の折返し部の外周側の端部に設けてもよい。前者の場合の段部の弾性力は、主 として第２構成板自体の弾性によって生じるが、後者の場合は、第２構成板の段 部が第１構成板と干渉するようになるので、以下実施例で示すように第１構成板 の弾性の影響も受ける。更に、段部は、ガスケット片面、両面のいずれに設けて もよい。また、前記弾性力は、第１，第２構成板の材質と厚さによって定まる。

【００１１】 本考案を実施する際に、前記第３構成板を積層した部位の合計板厚より、前記 エンボス部の合計板厚を厚くすると、エンボス部が確実に圧縮されて、安定した 密封圧を発生させることができる。 以上のとおり、本考案のエンボス部を有する金属積層形ガスケットは、シール 幅を任意に調整でき、且つ、剛性の高い芯部と、エンボス部の弾力性によってシ ールすることができる。したがって、ヘッドガスケットに使用した場合、ヘッド ボルトの締め付けでヘッドガスケットに反りが生じ、シリンダ穴周縁の接合面の 間隔が開く傾向が強いアルミニウム合金製のシリンダヘッドに使用しても、高い 密封性能を長期間維持させることができる。

【００１２】 前記エンボス部は、シールする穴が比較的大きい場合のシール部形成に適して いる。ただし、ヘッドガスケットの場合、シリンダ穴のシールの外、水穴、オイ ル穴など、他のシール穴に適用してもよく、また、ヘッドガスケット以外のガス ケットにも有利に適用することができる。また、前記エンボス部の外側にビード を設け、２重のシール部を形成することもできる。

【００１３】

【実施例】

以下添付の図面を対照して実施例により本考案を具体的に説明する。 図１に示す実施例１のガスケットＧは、内燃機関のヘッドガスケットのシリン ダ穴Hcの部分を示しており、一方の表面板である第１構成板１を、シリンダ穴Hc の周囲でリング状に１回折り重ねて折返し部12とし、芯部14を形成した。そして 、他方の表面板である第２構成板２を、シリンダ穴Hcを囲むリング状に、芯部14 の外側で、平坦な基部16からクランク様に折り曲げて段部18を設け、また、シリ ンダ穴Hcの周縁で第１構成板１側に湾曲部20を形成しながら折返し部22を折り返 してエンボス部24を形成した。段部18は、弾性変形し易いように傾斜させて設け るのがよい。前記エンボス部24を配置した部分が、シリンダ穴Hcのシール部26を 構成する。

【００１４】 前記各板1,2 の間に配置した第３構成板４は、シリンダ穴Hcを囲む貫通穴28を 開口させ、両面に、弾性と柔軟性とを有する材料によるコーティング層30を設け 、第１構成板１及び第２構成板２との密着性を高め、積層した板間にシールする 流体（本実施例では燃焼ガス）の侵入を防止した。 なお、段部18を設ける位置は、折返し部12の外周縁と貫通穴28の内周縁との間 に設けることが好ましい。また、折返し部22の外周縁は、折返し部12の幅より広 くして、エンボス部24に加わる圧縮力を芯部14に集中させるようにすることが好 ましい。また、シール部26の積層板の合計厚さは、シール部26の外側の平坦部16 の積層板の合計厚さと実質的に同じ厚さとする。但し、実際には、前者を僅かに 厚くすることが、該部分に圧縮力を集中させるために有利である。通常の車両用 内燃機関用の場合、シール部26の前記合計厚さを、平坦部16の合計厚さより、例 えば、0.０５〜0.１mm厚程度厚くすることが好ましい。

【００１５】 以上のように実施例１のガスケットＧを組み立てると、平坦部16の構成板1,2 とコーティング層30を備えた第３構成板４とは互いに接触し、エンボス部24と芯 部14との間に隙間が形成され、該部分が圧縮されると、段部18と湾曲部20とが弾 性変形して、弾性による密封力を発生させることができる。 弾性と柔軟性とを有する前記コーティング層30に使用しうる材料としては、例 えばＮＢＲゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム弾性体などであるが、 他のゴム弾性体、高分子エラストマーなども使用することができる。コーティン グ層30の厚さは、特に限定はないが、5 〜100 μｍ、好ましくは10〜50μｍであ る。また、本実施例の応用として、第３構成板（図に示す第３構成板４でなくて もよい）にビード（図示せず）を設け、２重にシール部を形成することもできる 。

【００１６】 図２は、実施例１のガスケットＧをシリンダヘッド32とシリンダボディ34との 間に取り付け、ヘッドボルト（図示せず）で締め付けた状態を示している。即ち 、エンボス部24は、押圧され、芯部14に接するようになる。芯部14は、剛性が高 く実質的に圧縮されないので押圧力に対して強い反力を発生させ、該シール部26 にエンボスの密封領域を形成させると共に、弾性変形した段部18と湾曲部20とが 伸縮性のある２次的な密封力を発生する。したがって、シリンダ穴Hc内圧の変動 により接合面間隔の極く僅かに伸縮しても、段部18と湾曲部20とが追随して変形 し、シール性能の低下を防止する。

【００１７】 図３によって実施例１の変形例を説明する。図３の芯部14の折返し部12とエン ボス部24の折返し部22とを同じ方向に折り曲げて形成したものである。このよう にして形成したガスケットＧも、図１に示す実施例１のガスケットＧと同様に優 れた密封性能を示す。 図４に示す実施例２のガスケットＧは、段部18を折返し部22の外周側に設け、 その外側にリング状の縁部36を設けたものである。このガスケットＧを圧縮する と、縁部36が、第１構成板１の芯部12と平坦部16との間に形成されるすり鉢状部 38と干渉し、段部18とすり鉢状部38との弾性により圧縮に対する反力を発生させ るものである。実施例２のガスケットＧも、実施例１のガスケトットＧと同様に 高い密封性能を発揮させることができる。

【００１８】 以上は、芯部14を形成した第１構成板１は、ガスケットＧの一方の表面板とし たが、図５に示す実施例３のガスケットＧは、芯部14を形成する第１構成板１を 積層板の中間に配すると共に、芯部14とエンボス部24との間に隙間を設けず、互 いに接するように形成したものである。このように、芯部14を形成する板は、前 記各実施例のように、表面板など特定の板に限定されない。即ち、実施例３では 、エンボス部24を形成した第２構成板２の折返し部22を、表面に配置した第４構 成板32の上に重ねるように折り返した。実施例３のガスケットＧも、前記各実施 例と同様に、芯部14の圧縮で高い密封圧を発生させることができる。

【００１９】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案のエンボス部を有する金属積層形ガスケットは、 前記芯部が、シール部に高い剛性と調整可能の幅を与えることができ、段部と湾 曲部とが接合面の圧縮力及び間隔の変動に追随することを可能にするので、硬質 の金属板を使用しても、アルミニウム合金など、比較的軟質の接合面を傷付ける ことなく高い密封性能を長期間維持させることができる。

【００２０】

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例１のエンボス部を有する金属積
層形ガスケットを一部断面で示した要部斜視図である。

【図２】図１に示すガスケットの使用状態を示す要部断
面図である。

【図３】実施例１の変形例を示す要部断面図である。

【図４】本考案の実施例２の要部断面図である。

【図５】本考案の実施例３の要部断面図である。

【図６】従来例による金属積層形ヘッドガスケットの部
分平面図である。

【図７】図６のIV-IV 線矢視断面図である。

【図８】別の従来例による金属積層形ヘッドガスケット
の要部断面図である。

【符号の説明】

１ 第１構成板 ２ 第２構成板 ４ 第３構成板 10 湾曲部 12 折返し部 14 芯部 16 平坦部 18 段部 20 湾曲部 22 折返し部 24 エンボス部 26 シール部 28 貫通穴 36 縁部 38 すり鉢状部

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 第１構成板をシールする穴の周囲で折り
   曲げてリング状の芯部を形成し、第２構成板を、シール
   する穴の周囲で第１構成板側に折り返して前記芯部を包
   むエンボス部を形成し、該エンボス部は、第２構成板
   を、シールする穴の周縁で湾曲状に折り返して湾曲部と
   折返し部とを形成し、且つ、第２構成板を、クランク様
   断面を形成するように折り曲げ、芯部の外側にリング状
   の段部を形成し、該段部と前記湾曲部とでエンボス部に
   膨らみを与え、内周縁が前記折返し部と干渉しない大き
   さの貫通穴を有する第３構成板を、少なくとも１枚積層
   した金属積層形ガスケット。
2. 【請求項２】 第２構成板の折返し部の幅を、前記芯部
   の幅より広く形成し、圧縮力が芯部の全幅に加わるよう
   にした請求項１のエンボス部を有する金属積層形ガスケ
   ット。
3. 【請求項３】 エンボス部の積層板厚合計を、第３構成
   板を配置したガスケット平坦部の積層板厚合計より、厚
   く形成した請求項１又は２のエンボス部を有する金属積
   層形ガスケット。