JPH06128808A - 高性能ポリビニルアルコール系繊維の製造方法 - Google Patents

高性能ポリビニルアルコール系繊維の製造方法

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JPH06128808A
JPH06128808A JP27842592A JP27842592A JPH06128808A JP H06128808 A JPH06128808 A JP H06128808A JP 27842592 A JP27842592 A JP 27842592A JP 27842592 A JP27842592 A JP 27842592A JP H06128808 A JPH06128808 A JP H06128808A
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temperature
spinning
pva
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dmso
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JP27842592A
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Akio Omori
昭夫 大森
Satoru Kobayashi
悟 小林
Shunpei Naramura
俊平 楢村
Tomoyuki Sano
友之 佐野
Hirofumi Sano
洋文 佐野
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ゴム、プラスチック、セメントなどの補強材
や、ロープ、漁網、土木シートなどの産業資材として極
めてコストパーフォマンスに優れた高強度、高ヤング率
の高性能ポリビニルアルコール系繊維を製造する方法を
提供する。 【構成】 粘度平均重合度が8000以上のポリビニル
アルコール系重合体のジメチルスルホキシド系紡糸原液
を固化浴に紡糸するに際し、紡糸原液中の酸素をなく
し、50〜130℃で溶解、脱泡、放置、移送し、ノズ
ル吐出直前に2〜300秒昇温して160〜210℃と
し、固化浴を−20〜+15℃とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴム、プラスチック、
セメントなどの補強材やロープなどの産業資材用に有用
な高性能のポリビニルアルコール系(PVAと略記す
る)繊維の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】汎用繊維の中でPVA繊維は、ポリエス
テル、ナイロン、ポリアクリロニトリル系繊維に比べ
て、強度および弾性率が高く、漁網、ロープなどの一般
産業資材やゴム、プラスチック、セメント等の補強材と
して多く使用されてきた。しかしながら、最近の社会の
技術高度化は著しく、さらに高強度でかつ高弾性率のP
VA繊維を製造する技術が強く望まれている。
【0003】超高分子量ポリエチレンの稀薄溶液をゲル
化紡糸し超延伸することにより、高強力、高弾性率のポ
リエチレン繊維が得られることが見出されて以来、他の
可撓性ポリマーにおいてもゲル紡糸超延伸の手法を用い
て高強力、高弾性率化の試みがなされている。中でもP
VAは、ポリエチレンと同じ平面ジグザグの結晶構造を
有しており、しかも分子間水素結合を生じ易いため、ポ
リエチレンの本質的欠陥である耐熱性が改善される可能
性があり、活発な検討が行なわれている。たとえば、高
重合度PVAを用いて高強度、高弾性率繊維を得る方法
が特開昭59−130314号公報や特開昭62−85
013号公報等で提案され、強度19〜29g/dで弾
性率550〜650g/dの繊維が得られている。これ
らの特許ではPVAの重合度が高くなると分子鎖が長く
なり、からみ易くなるのでポリマー濃度を低くしてから
みを少なくし、高倍率延伸を可能とすることにより、高
強度でかつ高弾性率としている。しかし低ポリマー濃度
原液は曳糸性不良かつ固化不良となり易く、工程通過性
の点では不十分であった。
【0004】またジメチルスルホキシド(以下DMSO
と略記)を主体とする溶媒を用いてPVAを紡糸する方
法は、特公昭43−16675号公報、特開昭60−1
26311号公報、特開昭62−162010号公報な
どで提案されている。しかしこれらの方法は使用するP
VAの重合度が5000以下であったり、紡糸原液の温
度が100℃以下であった。重合度が5000以下では
強度や耐久性が不十分である。また高重合度PVAの紡
糸原液は曳糸性、紡糸性改良のため高PVA濃度とする
と紡糸原液が100℃以下では粘度が高過ぎて紡糸調子
が不良となるばかりでなく、得られる繊維の性能も不十
分である。また本発明者らも特開平4−163312号
公報で溶解、脱泡、移送時の原液温度は90℃以下と
し、吐出直前の紡糸原液を短時間昇温し、100〜16
0℃で紡糸することを提案しているが、原液温度を16
0℃以上にするとPVAの分解劣化が大きく、DMSO
系高温紡糸のメリットを十分に生かしきれなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高重合度P
VAを用いて性能面及び工程通過性面のいずれもが優れ
るPVA繊維を安定に製造することを目的とするもの
で、特に紡糸原液の吐出直前の高温化に着眼したもので
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するための手段を得るべく研究を行った結果、本
発明に到達した。すなわち本発明は、粘度平均重合度が
8000以上のPVAをDMSO系溶媒に溶解し得られ
た紡糸原液をノズルから吐出し吐出液を固化浴にて固化
させる湿式あるいは乾湿式紡糸方法において、溶解前ま
たは溶解後の紡糸原液を脱酸素処理した後、その後の紡
糸原液温度を50〜130℃に保ち、そしてノズルから
吐出する直前に160〜210℃に昇温し、固化浴を−
20℃〜+15℃とすることを特徴とする高性能PVA
繊維の製造方法である。
【0007】本発明のPVA重合体は30℃水溶液の粘
度より求めた粘度平均重合度が8000以上でなければ
ならない。重合度が8000未満では本発明の目標とす
る強度、弾性率を有するPVA繊維が得られない。80
00以上の重合度を有するPVAは、酢酸ビニルのバル
ク重合、溶液重合、乳化重合、分散重合、光重合、放射
線重合等により得られるが、工業的には低温乳化重合に
より製造することが最も有望である。得られる繊維の性
能及び重合のし易さの点で重合度が9000〜40,0
00であると好ましく、10,000〜25,000で
あるとさらに好ましい。本発明に用いるPVAのケン化
度は98モル%以上が好ましく、99モル%以上である
とさらに好ましく、99.7モル%以上であると最も好
ましい。また本発明に用いるPVAは分岐度の少ない直
鎖状のものが好ましい。さらに本発明に用いるPVAは
他のビニル基を有するモノマー、例えばエチレンなどの
モノマーを10%以下の比率で共重合したPVA系ポリ
マーも包含される。
【0008】本発明で用いるPVAの溶媒は、重合度8
000以上のPVAでも重合度低下なく溶解しうるよう
120℃以下で溶解可能で、しかも160℃以上の高温
でも紡糸しうる高沸点の溶媒であるDMSOを主体とす
る溶媒を用いる。グリセリンなどの多価アルコールはP
VAの貧溶媒であるため高温溶解が必須であり、重合度
が低下し易い。また水は溶解性が十分でなくかつ沸点も
低いので高温紡糸が困難である。溶媒中には、DMSO
以外に、本発明の目的を阻害しない程度で50%以下の
割合で他の溶媒、例えばグリセリン、エチレングリコー
ル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメ
チルイミダゾリジン、N−メチルピロリドン、水などの
溶媒、及びロダン塩、塩化カルシューム、塩化リチウム
などの無機塩類が混合されていてもよい。
【0009】本発明において、PVAとDMSO系溶媒
を撹拌混合して昇温溶解するが、以下に述べる脱酸素処
理により溶解液中の酸素を実質的になくすことが本発明
のポイントの1つである。酸素が存在すると高温のDM
SO中でPVAが分解劣化するので高重合度PVA使用
の意味がなくなる。脱酸素を十分に行なうことにより、
紡糸原液を160℃以上に昇温してもPVAの分解劣化
を抑制しうる。脱酸素処理の具体的方法の1つとして例
えば、不活性気体の加減圧により酸素を不活性気体に置
換する方法がある。密閉性の良好な溶解機中でPVAと
DMSO系溶媒を撹拌しながら、溶液が沸騰する直前ま
で、または軽く沸騰するまで減圧(例えば25℃では1
00Torr以下)とし、次いで窒素、ヘリウム、アル
ゴンなどの不活性気体を撹拌中の溶解機中に導入し、1
〜2kg/cm2の加圧とする。再び同様に沸騰までの
減圧と不活性気体による加圧を撹拌条件下で繰り返す。
この撹拌条件下での不活性気体による加減圧を2回以
上、好ましくは4回以上繰り返す。このようにして脱酸
素処理をした場合、本発明では実質的に酸素がないと定
義する。脱酸素処理は不活性気体の置換だけでなく、酸
素との化学反応を利用する方法や酸素を吸着させる方法
もあり、目的に応じて使用することができる。しかしな
がら、脱酸素処理方法としては、上記した撹拌条件下で
の不活性気体による加減圧を複数回繰り返す方法が、作
業性および脱酸素の完全さの点で最も好ましい。またP
VAとDMSOを混合するに先立って、PVA粒子やD
MSO液中に十分に不活性気体をフィードして、PVA
粒子表面やDMSO中に含まれている酸素を予め除去し
ておくのが好ましい。
【0010】PVAとDMSO系溶媒の脱酸素処理した
溶液は、60〜130℃で通常3〜24時間混合撹拌し
てPVAを溶解する。本発明では高重合度PVAを用い
ており、溶解性が低下傾向にあるので従来の低重合度P
VAを溶解する場合より、高温長時間溶解が好ましい。
溶解機の密閉性が完璧である場合は減圧にして撹拌溶解
することが脱泡性の点で好ましい、一方溶解機の密閉性
が完璧でない場合は、減圧溶解すると酸素が混入する恐
れがあるので、逆に窒素やヘリウムなどの不活性気体に
より加圧状態として溶解することが好ましい。より好ま
しい溶解温度と時間は70〜120℃で5〜18時間で
あり、80〜100℃で8〜15時間であるとさらに好
ましい。脱酸素処理は、PVAを溶解する前のPVA粒
子含有溶媒の状態で行なっても、また溶解後の紡糸原液
の状態で行なってもよいが、好ましくは溶解前(部分溶
解も含む)である。
【0011】得られたPVAのDMSO系溶液すなわち
紡糸原液にはその後、通常脱泡、放置、移送等が行なわ
れるが、この際の温度を50〜130℃に保持しなけれ
ばならない。50℃以下では高粘度となり脱泡が困難と
なる。また高重合度PVAの比較的高濃度のDMSO系
原液を50℃以下に長く保持するとゲル化する場合があ
る。DMSO系原液を100℃以上で長く保持すると原
液が着色するが、本発明の如く脱酸素処理したDMSO
系原液では130℃に数時間以上放置しても着色は殆ん
どみられない。しかしながら130℃を越える温度で2
0時間以上放置すると着色の傾向がある。DMSO系原
液移送の加圧媒体としては窒素、ヘリウムなどの不活性
気体が用いられる。溶解、脱泡、放置、移送の各工程に
おいて酸素がDMSO系原液中に入り込まぬようハード
面(配管、バルブ、槽など)とソフト面(操作手順な
ど)を充分注意するのが好ましい。
【0012】本発明において紡糸原液をノズル吐出直前
に短時間(通常2〜300秒)で、加熱し160〜21
0℃に昇温し紡糸することが重要なポイントである。吐
出原液が高温である程延伸倍率が大きくなり、得られる
繊維性能が優れることとなる。160℃未満では本発明
が目標とする性能のものが得られない。210℃を越え
るとDMSOが沸騰し、正常な紡糸が困難となる。より
好ましくは165〜205℃であり、170〜200℃
であるとさらに好ましい。加熱・保温時間は短時間であ
ることが好ましく、具体的には前記したような2〜30
0秒の範囲が好ましい。2秒以下では十分な昇温が困難
であり、300秒を越えると分解・着色が大きくなるこ
とがあり、好ましくない。より好ましくは10〜100
秒であり、20〜60秒であるとさらに好ましい。従来
PVAのDMSO原液を160℃以上にすることはPV
A及びDMSOの分解のため、常識では考えられず、公
知文献には殆んど記載されていないが、本発明者らは敢
えてこの常識に挑戦し、紡糸原液中の酸素濃度を極力下
げること及びノズルから吐出する直前に加熱することに
より、160℃以上の滞留時間を短縮することを組合わ
せることにより、160℃以上としても分解、着色の問
題を解決しえたものである。吐出原液を高温にすると何
故に延伸倍率が大きくなり繊維性能が優れるかは不明で
あるが、PVAがノズル孔で高剪断力を受けた際紡糸原
液が高温程分子鎖のからみ合いがほぐれ易く、また紡糸
原液と固化浴の温度差が大きいと、急激な冷却によりゲ
ル化効果が発現し、多数の微細な結晶のゲル糸篠に均一
に生成され、後の延伸工程で分子鎖の配向に有効な延伸
が可能となるためと推察される。
【0013】紡糸原液のPVA濃度は、PVAの重合
度、原液温度によって異なるが通常2〜20%、好まし
くは3〜15%とする。従来高超分子量ポリエチレンの
ゲル紡糸、超延伸の考え方によりポリマー濃度は低目が
高強度繊維を与えると考えられてきたが、PVAのDM
SO系紡糸ではむしろ高濃度高温原液が高性能繊維を与
えることを見出した。紡糸原液の高温化により、PVA
は高濃度として、回収DMSO量を減らし、工業的には
コスト低下につながり好ましい。
【0014】また、紡糸原液にはPVAと溶媒以外にも
目的に応じて種々の添加剤、例えば顔料などの着色剤、
酸化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、界面活性剤、
溶解助剤、凍結防止剤を添加してもよい。但し本発明で
は、紡糸原液を160℃以上とするので沸点が100℃
以下のものは沸騰によるトラブルが出易いので、沸点が
150℃以上のものが好ましい。
【0015】本発明において固化浴としては、メタノー
ル、エタノール、アセトンなどのPVAに対して凝固作
用を有する有機溶媒系固化浴及びこれらと原液溶媒との
混合浴を好ましく用いることができる。凝固性有機溶媒
としては凝固能と価格の点よりメタノールが好ましい。
特に原液溶媒がDMSO100%の場合、DMSOとメ
タノールの混合浴がさらに好ましく、凝固性とDMSO
の回収性の点でメタノールとDMSOの重量比が90:
10〜50:50、さらに80:20〜60:40が好
ましい。
【0016】本発明において固化浴温度は−20℃〜+
15℃としなければならない。15℃より高温であると
固化糸篠が白っぽく不透明化し、均質な固化糸篠を得る
ことができない。このような固化糸篠は乾熱延伸倍率を
高くしうるが、延伸張力は低く、実質的な分子鎖の配向
及び結晶化に寄与しないので高強力繊維を得ることがで
きない。固化浴温度が−20℃より低いとDMSO主体
の紡糸原液では凍結し易く、凍結防止剤を原液添加する
必要がある。また凍結しない場合極めて透明な一見均質
な固化糸篠を得ることができるが、延伸性が極度に低下
し、却って高強力繊維が得られない。より好ましい固化
浴温度は−10〜+10℃であり、−5〜8℃であると
さらに好ましい。
【0017】本発明における紡糸法は、ノズルが固化浴
と接触している湿式法でも、ノズルと固化浴の間にエヤ
ギャップのある乾湿式法でも特別な限定はないが、本発
明の如く原液温度と固化浴温度の差が大きい場合にはノ
ズルの周辺部と中心部で原液の温度が斑となり易い湿式
法より温度斑のでにくい乾湿式法がより好適である。ま
た湿式法ではノズル部で固化浴液であるメタノールの沸
騰による発泡の可能性もある。なお本発明にいう乾湿式
法には、エヤギャップを通して冷却ゲル化浴を通し、次
いで溶媒抽出浴を通す所謂ゲル化紡糸も包含される。し
たがって本発明で言う固化には、紡糸原液から溶媒が除
去されて固化が生ずるいわゆる凝固と、除去されずにゲ
ル化して固化するいわゆるゲル化が含まれる。
【0018】固化浴中あるいは固化浴上の第1ローラー
またはガイドに引き取られた固化糸は以下の工程に従っ
て通常繊維化される。すなわちメタノールなどの抽出液
により固化糸篠中の原液溶媒などを抽出除去し乾燥す
る。乾燥前に1段あるいはより好ましくは多段で合計2
倍以上の大気中あるいは浴中の湿延伸を施しておくと乾
燥時の硬着を防止することができ、好ましい。より好ま
しい湿延伸倍率は2.5〜5.5倍である。乾燥温度は
30〜150℃が好ましく、乾燥速度と性能の点で60
〜120℃であるとさらに好ましい。次いで高温高倍率
で乾熱延伸し、分子鎖を配向結晶化させて高強度繊維と
する。乾熱延伸は好ましくは220〜270℃、さらに
好ましくは235〜265℃で全延伸倍率が12倍以
上、より好ましくは15倍以上となるよう実施する。更
に必要に応じて熱処理や熱収縮を施してもよい。また性
能改良のため工程内あるいは延伸後、いろいろの処理を
施してもよい。例えば耐熱性改良のため各種架橋処理や
耐摩耗性改良のため油剤処理などを施してもよい。
【0019】以上の如く、PVAのDMSO系紡糸にお
いて高性能PVA繊維とするためには紡糸時の原液温度
を高くし、固化浴温度を低くすることが重要であるが、
PVAのDMSO系原液が酸素を含む状態で高温で長く
滞留させると、PVAが分解劣化するため、PVAのD
MSO系原液を脱酸素処理しさらに原液温度を2段に制
御すること、すなわち長時間を要する溶解、脱泡、放
置、移送などの工程は溶解性が保てる範囲で比較的低温
に保持し、ノズルより吐出される直前に短時間高温に昇
温し、直ちにノズルより吐出することにより、PVAの
分解劣化を防ぎつつ高温紡糸を可能とし、高性能PVA
繊維を製造することができたのである。
【0020】
【実施例】以下実施例により具体的に説明するが、本発
明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】実施例1 30℃水溶液の粘度より求めた粘度平均重合度が165
00、ケン化度99.8モル%のPVAを6.2重量%
となるようにDMSOに添加し、撹拌しながら、溶解機
を徐々に減圧した。25℃で110Torrまで減圧し
たところDMSOが一見沸騰した如く発泡したので真空
ポンプを止め、窒素ボンベより窒素を導入し、1.5k
g/cm2に窒素加圧した。次に窒素を放出しつつ真空
ポンプで再び110Torrまで減圧し、同様に窒素加
圧を行なった。この窒素置換による脱酸素処理をさらに
5回繰り返し、PVAとDMSO溶液中の酸素を実質的
にない状態とした。なお上記操作はいずれも撹拌条件下
で行った。また溶解する前のPVA粒子およびDMSO
には、それぞれ窒素を吹き込み、酸素を除去した。この
ように脱酸素処理したPVA含有DMSO液を、1.5
kg/cm2の窒素加圧下、100℃にて12時間撹拌
してPVAを完全に溶解した。次いで脱泡・放置を10
0℃で12時間行い、1.5kg/cm2窒素加圧下に
100℃でギアポンプに移送した。ギアポンプで計量、
10μフィルターで濾過後、ノズルから吐出する直前
に、配管途中より溶解機系統とは別の熱媒循環系統の1
95℃の熱媒を用いて、ノズルに至るまでの37秒間を
160℃以上に加熱・保温しつつ、ノズル吐出前に24
エレメントのスタチックミキサーを設置し混合均一化
し、紡糸原液を孔数100、孔径0.20mmφ、孔ピ
ッチ4mmのノズルより10mmの空気層を介在させ
て、メタノール:DMSOの重量比が70:30、温度
6℃の固化浴に乾湿式紡糸した。ノズル吐出直前の原液
温度を実測したところ193℃であった。固化糸篠を4
m/分の第1ゴデットローラーに引き取り、6m/分の
第2ゴデットローラー間で延伸し、40℃のメタノール
浴中で累計3倍の湿延伸を施こし、20℃のメタノール
浴中に1分滞留させ、糸篠中のDMSOを抽出し、50
℃のメタノール浴中で累計4倍の湿延伸を行ない100
℃で乾燥し紡糸原糸を得た。紡糸原糸に着色はみられ
ず、原液を極めて高温としたにもかかわらず、PVAの
分解着色はみられなかった。
【0022】得られた紡糸原糸を150℃と185℃と
250℃の3セクションからなる熱風炉で総延伸倍率は
19倍になるよう延伸した。310d/100fのヤー
ンが得られ、ヤーン性能は強度24.4g/d、ヤング
率580g/dと極めて優れていた。延伸糸には若干の
着色がみられたが、250℃の高温延伸のためと推定さ
れた。
【0023】比較例1 ノズル周辺を加熱する循環熱媒の温度を150℃とする
以外は実施例1と同様に紡糸した。しかしエヤギャップ
部での液柱糸に斑がみられ、極端には単糸切れとなり紡
糸不良であった。これはノズル吐出直前の原液粘度が高
く曳糸性不良のためと推定した。
【0024】比較例2 PVA濃度を5.2重量%、ノズル周辺加熱熱媒の温度
を140℃とする以外は実施例1と同様に紡糸した。紡
糸は順調に行なえたが、ヤーン性能は強度22.9g/
d、ヤング率490g/dと実施例1に比べて低いもの
であった。
【0025】実施例2 粘度平均重合度が19500、ケン化度99.9モル%
のPVAを6.0重量%となるようDMSOに添加し、
脱酸素処理での最終減圧度を慎重に100Torrとす
る以外は実施例1と同様に溶解し、ノズル周辺加熱熱媒
の温度を200℃とする以外は実施例1と同様に乾湿式
紡糸した。ノズル直前の原液温度を実測したところ19
8℃であった。得られた紡糸原糸に着色はみられなかっ
た。得られた紡糸原糸を160℃と190℃と255℃
の3セクションからなる熱風炉で総延伸倍率19.5倍
となるよう延伸した。330d/100fのヤーンが得
られ、ヤーン性能は強度24.9g/d、ヤング率60
0g/dと極めて優れていた。延伸糸には若干の着色が
みられたが特に激しい着色ではなかった。
【0026】実施例3 脱酸素処理での最終減圧度を200Torrとし、かつ
脱酸素処理を撹拌することなく行なった以外は実施例2
と同様に溶解、紡糸した。得られた紡糸原糸に少し着色
がみられた。実施例2と同様に延伸を行なったところ、
延伸糸は実施例2より着色が大きくPVA分解の傾向が
窺え、ヤーン強度は23.2g/d、ヤング率520g
/dと実施例2より劣っていた。
【0027】
【発明の効果】本発明は高重合度PVAを比較的低温で
溶解しうるDMSOを原液溶媒として使用する高重合度
PVA繊維の製造法において、溶解前に十分脱酸素処理
を行ない、実質的に酸素を含まない紡糸原液を160〜
210℃の高温紡糸を行なうことにより、PVAの分解
を抑制しながら高温紡糸を可能とし、多数の微結晶によ
る均一固化、高実効倍率延伸により、高性能繊維を得る
ものである。従って本発明により得られた高性能繊維
は、パラ系アラミド繊維やポリアクリレート繊維など他
のスーパー繊維や、従来のビニロン繊維やポリエステル
繊維などの汎用繊維に比べ、コストパーフォマンスに優
れており、ゴム、プラスチック、セメントなどの補強材
としてまた一般産業資材用として広く極めて有効に使用
しうる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐野 友之 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 佐野 洋文 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が8000以上のポリビ
    ニルアルコール系重合体をジメチルスルホキシドを主体
    とする溶媒に溶解し得られた紡糸原液をノズルから吐出
    し吐出液を固化浴にて固化させる湿式あるいは乾湿式紡
    糸方法において、溶解前または溶解後の紡糸原液を脱酸
    素処理した後、その後の紡糸原液温度を50〜130℃
    に保ち、そしてノズルから吐出する直前に160〜21
    0℃に昇温し、固化浴を−20℃〜+15℃とすること
    を特徴とする高性能ポリビニルアルコール系繊維の製造
    方法。
JP27842592A 1992-10-16 1992-10-16 高性能ポリビニルアルコール系繊維の製造方法 Pending JPH06128808A (ja)

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