JPH0611364Y2 - ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案はディスクブレーキに関し、特に、そのブレーキ
の引摺りを抑制する技術に関するものである。

従来の技術 ディスクロータの両側にそのディスクロータの軸心と平
行な方向の移動可能に設けられ、そのディスクロータの
外周側に位置する側端面にディスクロータの内周側へ延
びる係合穴がそれぞれ形成された一対のパッドと、略Ｖ
字形状を成し、ディスクロータの外周部を跨いだ状態で
両端部がそれら一対のパッドの係合穴にそれぞれ嵌め入
れられることにより両パッドを互いに離隔する方向へ付
勢するリターンスプリングとを備えたディスクブレーキ
が知られている。斯かるディスクブレーキにおいては、
上記一対のパッドは、通常、ディスクロータの軸心と平
行な方向の移動可能に設けられたキャリパの内側に配設
されており、そのキャリパが作動させられると、両パッ
ドがリターンスプリングの付勢力に抗して互いに接近す
る方向へ移動させられてディスクロータの両面に押し付
けられることにより制動が行われる一方、キャリパが非
作動状態とされると、両パッドがリターンスプリングの
付勢力に従って互いに離隔する方向へ戻されることによ
り制動が解除されるようになっている。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、上記キャリパが作動状態から非作動状態
とされてリターンスプリングにより両パッドが互いに離
隔させられる際において、そのリターンスプリングの両
端部は、通常、ディスクロータ側とは反対側に位置する
部分においてだけ係合穴の内周面に当接させられるの
で、そのリターンスプリングの付勢力によって、両パッ
ドのディスクロータ外周側端部はディスクロータから好
適に離隔させられるものの、両パッドのディスクロータ
内周側端部をディスクロータから離隔させることは困難
であった。このため、非制動時に両パッドのディスクロ
ータ内周側端部がディスクロータと接触して、ブレーキ
の引摺りを生ずる場合があったのである。

本考案は以上の事情を背景として為されたものであっ
て、その目的とするところは、リターンスプリングによ
り両パッドをディスクロータから一層確実に離隔させ得
てブレーキの引摺りを抑制し得るディスクブレーキを提
供することにある。

課題を解決するための手段 上記目的を達成するために、本考案は、上記のようなデ
ィスクブレーキにおいて、前記リターンスプリングの前
記係合穴に嵌め入れられた部分のディスクロータ外周側
に位置する部分を、その係合穴の内周面の該ディスクロ
ータ側位置に弾性的に当接させるとともに、そのリター
ンスプリングのその係合穴に嵌め入れられた部分のディ
スクロータの内周側に位置する部分を、その係合穴の内
周面のディスクロータ側とは反対位置に弾性的に当接さ
せるようにしたことを特徴とする。

作用および考案の効果 このようにすれば、リターンスプリングの前記係合穴に
嵌め入れられた部分のディスクロータ外周側に位置する
部分が、その係合穴の内周面のディスクロータ側位置に
弾性的に当接させられるとともに、そのリターンスプリ
ングのその係合穴に嵌め入れられた部分のディスクロー
タ内周側に位置する部分が、その係合穴の内周面のディ
スクロータ側とは反対側位置に弾性的に当接させられる
ので、両パッドには、リターンスプリングの係合穴に嵌
め入れられた部分の外周側当接点および内周側当接点を
それぞれ作用点として、両パッドの内周側端部がディス
クロータからそれぞれ離隔する方向の回転モーメントが
発生させられることとなる。これにより、キャリパが作
動状態から非作動状態とされたときには、両パッドのデ
ィスクロータ外周側端部がリターンスプリングの付勢力
に従ってディスクロータから離隔させられるだけでな
く、両パッドのディスクロータ内周側端部を前記回転モ
ーメントに従ってディスクロータからそれぞれ離隔させ
得るため、ブレーキの引摺りを効果的に抑制し得る。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて詳細に説
明する。

第２図および第３図は本考案が適用されたディスクブレ
ーキの要部を示す図であって、１０はディスクロータ１
２の外周部を跨いだ状態で配設されたキャリパである。
キャリパ１０は、内部にシリンダボア１４が形成された
シリンダ部１６と、そのシリンダ部１６から一体に延び
出してディスクロータ１２を間にしてシリンダ部１６と
対向する二股状の爪部１８とを備えており、シリンダボ
ア１４内にはピストン２０が摺動可能に嵌合されてい
る。このキャリパ１０は図示しない非回転部材に固定さ
れたトリクプレート２２に突設された一対のスライドピ
ン２３，２４によってディスクロータ１２の軸心と平行
な方向の移動可能に支持されている。なお、２５はブレ
ーキ油圧の解除に伴ってピストン２０の戻し作用を為す
シール部材であり、２６はダストブーツである。

キャリパ１０の内側、すなわち、ピストン２０と爪部１
８との間には、略矩形状を成す一対のパッド２８，３０
がディスクロータ１２を間に挟んだ状態で配設されてい
る。パッド２８，３０は、裏金３２とそれに固着された
摩擦材３４とを有してそれぞれ構成されており、裏金３
２において前記トルクプレート２２に形成された切欠内
にディスクロータ１２の軸心と平行な方向の移動可能に
それぞれ収容されている。そして、その裏金３２のディ
スクロータ１２周方向と対向する両側端面とトルクプレ
ート２２の前記切欠の内壁面との当接に基づいて、制動
トルクがトルクプレート２２にて受け止められるように
なっている。

上記パッド２８の裏金３２のディスクロータ１２外周側
に位置する側端面には、第１図乃至第３図に示すよう
に、ディスクロータ１２の周方向に所定距離隔てた位置
において、ディスクロータ１２の内周側へ向って延びる
一対の係合穴３６，３８が形成されている。また、パッ
ド３０の裏金３２のディスクロータ１２外周側に位置す
る側端面にも、ディスクロータ１２の周方向において所
定距離隔てた位置であって且つ前記係合穴３６，３８と
対応する位置において、ディスクロータ１２の内周側へ
向って延びる一対の係合穴４０，４２が形成されてい
る。そして、一本の線材から曲成されて平面形状が略Ｖ
字形状を成すリターンスプリング４４がディスクロータ
１２の外周部を跨いで配設されており、そのリターンス
プリング４４の両端部に設けられた係合部４５，４５が
係合穴３６および係合穴４０内にそれぞれ嵌め入れられ
ているとともに、係合穴３８および係合穴４２内にも、
リターンスプリング４４と同様のリターンスプリング４
６の係合部４８，４８がそれぞれ嵌め入れられている。
これにより、両パッド２８，３０は、リターンスプリン
グ４４，４６により互いに離隔する方向へ常時付勢され
ている。

以上のように構成されたディスクブレーキにおいて、液
室４７に油圧が供給されると、ピストン２０がシリンダ
ボア１４から突き出されて一方のパッド２８がリターン
スプリング４４，４６の付勢力に抗してディスクロータ
１２の一面に押し付けられるともに、その反力でキャリ
パ１０がピストン２０の突出し方向とは反対方向へ移動
させられて爪部１８により他方のパッド３０がリターン
スプリング４４，４６の付勢力に抗してディスクロータ
１２の他面に押し付けられ、これにより、ディスクロー
タ１２が両パッド２８，３０により狭圧されて制動が行
われる。そして、液室４７内の油圧が排圧されると、ピ
ストン２０がシール部材２５の戻し作用によりシリンダ
ボア１４内へ戻されるとともに、両パッド２８，３０が
リターンスプリング４４，４６の付勢力に従って互いに
離隔する方向へ戻されて制動が解除される。

ここで、第５図は従来のディスクブレーキの要部を示す
図であって第１図に相当する図である。なお、図におい
て、第１図と同様の部分には同一の符号を付して詳細な
説明は省略する。リターンスプリング６０の係合部６
２，６２は互いに略平行に形成されており、前記液室４
７の油圧が排圧されると、通常、係合部６２，６２のデ
ィスクロータ１２側とは反対側の部分だけが係合穴３
８，４２の内周面に当接しつつパッド２８，３０の専ら
ディスクロータ１２外周側端部がリターンスプリング６
０の付勢力に従って互いに離隔させられることとなる。
これにより、パッド２８，３０のディスクロータ１２内
周側端部が制動位置に取り残されてディスクロータ１２
に接触し、ブレーキの引摺りを生ずる場合があったので
ある。

これに対し、本実施例おいては、上記リターンスプリン
グ４４の係合部４５，４５およびリターンスプリング４
６の係合部４８，４８は、それぞれディスクロータ１２
の内周側へ向かう程互いに離隔するように形成されてい
る。そして、パッド２８，３０が少なくとも第１図およ
び第２図に示す非制動位置まで戻された状態において、
より好適にはパッド２８，３０のディスクロータ１２の
軸心と平行な方向の全移動範囲において、係合部４５，
４５および係合部４８，４８のディスクロータ１２外周
側にそれぞれ位置する部分が、ディスクロータ１２側に
位置する外周側当接点（第１図中Ａにて示す部位）にお
いて係合穴３６，４０および係合穴３８，４２の内周面
にそれぞれ弾性的に当接させられるとともに、係合部４
５，４５および係合部４８，４８のディスクロータ１２
内周側にそれぞれ位置する端部が、ディスクロータ１２
側とは反対側に位置する内周側当接点（第１図中Ｂにて
示す部位）において係合穴３６，４０および係合穴３
８，４２の内周面にそれぞれ弾性的に当接させられるよ
うになっている一方、それら係合部４５，４５および係
合部４８，４８の弾性力は、液室４７内の油圧が排圧さ
れたときに、前記外周側当接点Ａおよび内周側当接点Ｂ
をそれぞれ作用点としてパッド２８，３０のディスクロ
ータ１２内周側端部をディスクロータ１２から好適に離
隔させ得る大きさの回転モーメントがパッド２８，３０
に生ずるように決定されている。リターンスプリング４
４，４６の線径および材質、係合穴３６，３８，４０，
４２の内径、係合部４５，４５が互いに成す角度および
それらの長さ寸法、係合部４８，４８が互いに成す角度
およびそれらの長さ寸法などが予めそのように決定され
るのである。

この結果、液室４７内の油圧が排圧されたときには、パ
ッド２８，３０のディスクロータ１２外周側端部がリタ
ーンスプリング４４，４６の付勢力に従ってディスクロ
ータ１２からそれぞれ離隔させられるとともに、パッド
２８，３０のディスクロータ１２内周側端部が前記回転
モーメントに従ってディスクロータ１２からそれぞれ離
隔させられるため、パッド２８，３０全体が第１図およ
び第２図に示すように一層確実に非制動位置へ戻され
て、ブレーキの引摺りが効果的に抑制されるのである。

また、本実施例によれば、リターンスプリング４４の係
合部４５，４５、リターンスプリング４６の係合部４
８，４８を、それぞれディスクロータ１２内周側へ向か
う程互いに離隔するように形成すること等によって容易
に上記効果を得ることができるため、ディスクブレーキ
のコストが増大するのを回避し得る利点がある。

なお、前述の実施例では、リターンスプリング４４の係
合部４５，４５、リターンスプリング４６の係合部４
８，４８が、それぞれディスクロータ１２内周側へ向か
う程互いに離隔するように形成されているが、必ずしも
そのように構成する必要はなく、たとえば第４図に示す
ように、リターンスプリング４６（４４）の両端部に互
いに略平行な係合部５０，５０を設けるとともに、パッ
ド２８，３０の裏金３２のディスクロータ１２外周側の
側端面にディスクロータ１２内周側へ向かう程ディスク
ロータ１２に接近する係合穴５２，５４を設け、この係
合穴５２，５４内に前記係合部５０，５０を前述の実施
例の場合と同様に外周側当接点Ａおよび内周側当接点Ｂ
において弾性的に係合させるようにしてもよい。

また、前述の実施例において、リターンスプリングは線
材から曲成されているとともにＶ字形状を成している
が、板ばねであってもよいし、Ｕ字形状のものであって
もよい。すなわち、クレームにおける略Ｖ字形状とはＵ
字形状をも含んでいるのである。

また、前述の実施例においては、パッド２８，３０の裏
金３２に係合穴３６，３８，４０，４２が設けられてい
るが、パッドの摩擦材に係合穴が設けられていたとして
も本考案を適用することが可能である。

その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範囲において種
々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は第２図の要部拡大図であって、一部を切り欠い
て示す図である。第２図は本考案が適用されたディスク
ブレーキの要部を示す断面図である。第３図は第２図に
おけるＣ矢視図であって、一部を切り欠いて示す図であ
る。第４図は本考案の他の例を示す図であって、第１図
に相当する図である。第５図は従来のディスクブレーキ
の要部を示す図であって、第１図に相当する図である。 １２：ディスクロータ ２８，３０：パッド ３６，３８，４０，４２，５２，５４：係合穴 ４４，４６：リターンスプリング

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ディスクロータの両側に該ディスクロータ
   の軸心と平行な方向の移動可能に設けられ、該ディスク
   ロータの外周側に位置する側端面に該ディスクロータの
   内周側へ延びる係合穴がそれぞれ形成された一対のパッ
   ドと、略Ｖ字形状を成し、該ディスクロータの外周部を
   跨いだ状態で両端部が該一対のパッドの係合穴にそれぞ
   れ嵌め入れられることにより該パッドを互いに離隔する
   方向へ付勢するリターンスプリングとを備えたディスク
   ブレーキにおいて、 前記リターンスプリングの前記係合穴に嵌め入れられた
   部分の前記ディスクロータの外周側に位置する部分を、
   該係合穴の内周面の該ディスクロータ側位置に弾性的に
   当接させるとともに、該リターンスプリングの該係合穴
   に嵌め入れられた部分の該ディスクロータの内周側に位
   置する部分を、該係合穴の内周面の該ディスクロータ側
   とは反対側位置に弾性的に当接させるようにしたことを
   特徴とするディスクブレーキ。