JPH0610646U - オートテンショナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】揺動部材２ａの製造作業の簡略化により、製作
費の低廉化を図る。 【構成】揺動部材２ａは、主部１９と副部２０とから成
る。主部１９の内周面２１と外周面２２とは軸対称であ
る。副部２０の内周面２３は外周面２４に対し偏心して
いる。上記主部１９を固定軸１の周囲に揺動自在に支持
し、副部２０の周囲にテンションプーリ５を、回転自在
に支持している。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案に係るオートテンショナは、例えば自動車用エンジンのタイミングベ ルト等の各種ベルト（以下『ベルト』とする。）に適正な張力を付与する為に利 用する。

【０００２】

【従来の技術】

ＯＨＣ型、或はＤＯＨＣ型エンジンのカムシャフトを、クランクシャフトと同 期して回転駆動する為、ベルトによる駆動機構が広く使用されているが、このベ ルトにはテンションプーリを弾性的に押圧する事により、ベルトに適正な張力を 付与している。

【０００３】 テンションプーリをベルトに向けて弾性的に押圧する為に従来から、ばねの弾 力を利用したオートテンショナが、例えば特開昭６３−１８０７５９号公報に記 載されている様に、従来から広く知られ、更に実際に使用されている。このオー トテンショナは、例えば図１１〜１２に示す様に構成されている。

【０００４】 固定軸１は中心ａを有し、エンジンのシリンダブロック前面等に固定される。 この固定軸１の周囲に揺動部材２を、滑り軸受３ａ、３ｂにより揺動自在に支持 している。この揺動部材２の先半部４の中心ｂは、上記固定軸１の中心ａに対し 偏心している。そして、この先半部４の周囲にテンションプーリ５を、転がり軸 受６により、回転自在に支持している。又、上記揺動部材２の基半部７には、ブ ラケット８を外嵌固定している。そして、このブラケット８の端部に形成した係 止部９に、図示しない引っ張りばねの端部を係止する事により、上記揺動部材２ に、上記固定軸１を中心として回転する方向の弾力を付与している。上記テンシ ョンプーリ５の外周面は、この弾力に基づき、上記ベルトに向け弾性的に押圧さ れる。

【０００５】 更に、上記固定軸１と揺動部材２との間に多板式のダンパ機構を設け、ベルト が細かく変位した場合にも、テンションプーリ５がこのベルトの動きに直ちには 追従しない様にして、上記ベルトが振動する事を防止している。即ち、固定軸１ の外周面と揺動部材２の内周面との間に存在し、軸方向両端をシール材１７、１ ８により塞がれた空間１０内に、それぞれ複数枚ずつの固定側平板１１、１１と 揺動側平板１２、１２とを、交互に配置している。この内の固定側平板１１、１ １の内周縁は固定軸１に、この固定軸１に対する回転を不能として支持している 。又、揺動側平板１２、１２の外周縁は揺動部材２の内周面に、この揺動部材２ に対する回転を不能として支持している。そして、上記空間１０内に油等の粘性 流体を給油孔１３を通じ充填している。この給油孔１３は、粘性流体充填後、鋼 球１４により塞いでおく。

【０００６】 上記複数枚の固定側平板１１、１１の側面と上記複数枚の揺動側平板１２、１ ２の側面とは、極く狭い隙間を介して対向しており、この隙間内には粘性流体が 存在する為、両平板１１、１２同士が急激に変位する事は、上記隙間内に存在す る粘性流体に加わる剪断力によって防止され、この結果として、ベルトの張力が 、部分的に急上昇した場合にも、テンションプーリ５が直ちには退避する事がな くなる。従って、上記ベルトが振動した場合でも、上記テンションプーリ５がこ のベルトを抑え付け、上記振動が成長するのを防止する。尚、固定軸１の一部に は抑え板３０を外嵌固定して、上記固定側平板１１、１１と揺動側平板１２、１ ２との距離が離れるのを防止している。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

本考案のオートテンショナは、揺動部材２の加工を容易化する事により、製作 費の低廉化を図るものである。

【０００８】 上記揺動部材２の先半部４の外径寸法は転がり軸受６の内輪１５を外嵌固定す る為、基半部７の外径寸法はブラケット８を外嵌固定する為、それぞれ正確に仕 上げる必要がある。この為、上記揺動部材２を造る場合、鍛造加工により図１３ に鎖線で示す様に、この揺動部材２よりも大きな外径寸法を有する素材１６を造 ってから、この素材１６に切削加工を施し、図１３の斜格子部分を削り取る事で 、先半部４及び基半部７の外径寸法を正確に仕上げていた。

【０００９】 ところが、互いに偏心した先半部４及び基半部７に切削加工を施す事は面倒で 、長い加工時間を要するだけでなく、切削状態が断続的になる為、切削工具の摩 耗が著しくなる。この為、上記揺動部材２の製作費が嵩み、この揺動部材２を組 み込んだオートテンショナの価格が高くなっていた。

【００１０】 本考案のオートテンショナは、上述の様な事情に鑑みて考案されたものである 。

【００１１】

【課題を解決する為の手段】

本考案のオートテンショナは何れも、従来のオートテンショナと同様に、第一 の中心を有する固定軸と、この固定軸の周囲に回転自在に支持された揺動部材と 、上記第一の中心と平行な第二の中心を有し、この揺動部材の外周面部分に設け られた軸受と、この軸受により回転自在に支持されたテンションプーリと、上記 揺動部材と固定部分との間に設けられ、このテンションプーリを張力を付与すべ き部材に向けて押圧するばねとから構成される。

【００１２】 特に、本考案のオートテンショナの内、請求項１に記載されたものに於いては 、上記揺動部材は上記固定軸の周囲に回転自在に支持された主部と、この主部の 一部に外嵌固定された副部とから成る。上記主部の内外両周面は、上記第一の中 心と一致する第三の中心を有する軸対称形である。又、上記副部の内周面の中心 は上記第一、第三の中心に一致し、上記副部の外周面の中心は上記第二の中心に 一致する。更に、上記軸受は上記副部の外周面に設けられている。

【００１３】 又、請求項２に記載されたものに於いては、上記揺動部材は精密鋳造品である 事を特徴としている。

【００１４】

【作用】

上述の様に構成される本考案のオートテンショナにより、ベルトに適正な張力 を付与する際の作用自体は、従来のオートテンショナの場合と同様である。

【００１５】 特に請求項１に記載されたオートテンショナの場合、揺動部材を主部と副部と を組み合わせる事により構成している為、この揺動部材を造る場合に面倒な切削 加工を施す必要がなくなり、揺動部材並びに揺動部材を組み込んだオートテンシ ョナの価格の低廉化を図れる。

【００１６】 又、請求項２に記載されたオートテンショナの場合、精密鋳造品である揺動部 材は、表面に切削加工を施す必要がないか、施すにしても従来の様に鍛造品に切 削加工を施す場合に比べて加工量が遥かに少なくて済む。この結果、揺動部材並 びに揺動部材を組み込んだオートテンショナの価格の低廉化を図れる。

【００１７】

【実施例】

図１〜２は、請求項１に対応する、本考案の第一実施例を示している。尚、本 考案のオートテンショナの特徴は、揺動部材２ａを主部１９と副部２０とにより 構成した点に特徴があり、その他の構成及び作用に就いては、前述した従来のオ ートテンショナと同様である為、同等部分には同一符号を付して、重複する説明 を省略する。

【００１８】 揺動部材２ａは、滑り軸受３ａ、３ｂを介して固定軸１の周囲に回転自在に支 持された主部１９と、この主部１９の先端部に外嵌固定された副部２０とから成 る。この内、主部１９の内周面２１及び外周面２２は軸対称形であって、これら 両周面２１、２２の中心である第三の中心ハは、上記固定軸１の中心である第一 の中心イと一致する。

【００１９】 又、上記副部２０の内周面２３の中心は上記第一、第三の中心イ、ハに一致す る。更に、上記副部２０の外周面２４の中心は、上記第一、第三の中心イ、ハに 対し偏心すると共に、テンションプーリ５を支承している転がり軸受６の第二の 中心ロに一致している。言い換えれば、上記副部２０の外周面２４の中心を上記 第一、第三の中心イ、ハに対し偏心させると共に、上記第二の中心ロを有する転 がり軸受６を上記副部２０の外周面２４に設けている。

【００２０】 即ち、上記副部２０の外周面２４に内輪軌道２５を、上記テンションプーリ５ の内周面に外輪軌道２６を、それぞれ形成すると共に、これら両軌道２５、２６ の間に複数の玉２７、２７を設ける事により、上記副部２０の外周面に転がり軸 受を設け、この転がり軸受によって副部の周囲に上記テンションプーリ５を、上 記第二の中心ロを中心とする回転自在に支持している。

【００２１】 尚、固定軸１の内端面に形成した円孔２８は、この固定軸１が回転する事を防 止する為、シリンダブロック前面に突設した係止ピンを係合させる為に利用する 。又、副部２０の外側面に形成した角孔２９は、上記テンションプーリ５にベル トを掛け渡す際に、六角レンチの端部を係合させる為に利用する。これら円孔２ ８と角孔２９とは、従来のオートテンショナにも設けられていた為、詳しい説明 は省略する。

【００２２】 上述の様に構成される本考案のオートテンショナの場合、揺動部材２ａを主部 １９と副部２０とを組み合わせる事により構成している為、この揺動部材２ａを 造る場合に面倒な切削加工を施す必要がなくなり、上記揺動部材２ａ並びにこの 揺動部材２ａを組み込んだオートテンショナの価格の低廉化を図れる。

【００２３】 即ち、上記主部１９の内周面２１と外周面２２とは互いに同心である為、これ ら両周面２１、２２の寸法を正確に仕上げる為の切削加工は、極く普通の旋盤に よる、一般的な連続加工により行なえる。又、副部２０の外周面２４の寸法を正 確に仕上げたり、更にこの外周面２４に内輪軌道２５を形成する作業も、極く普 通の旋盤による、一般的な連続加工により行なえる。更に、上記副部２０の内周 面２３の寸法を正確に仕上げる作業は、極く普通のボール盤により上記副部２０ の一部に円孔を穿設する事で、簡単に行なえる。

【００２４】 次に、図３〜４は、やはり請求項１に対応する、本考案の第二実施例を示して いる。前述の第一実施例が、副部２０の外周面２４に内輪軌道２５を、直接形成 していたのに対し、本実施例の場合、副部２０ａの外周面２４ａに、その外周面 に内輪軌道２５ａを有する内輪１５を外嵌固定する事により、上記副部２０ａの 外周面２４ａに転がり軸受を設けている。その他の構成及び作用は、前述の第一 実施例の場合と同様である。

【００２５】 次に、図５〜７は、請求項２に対応する、本考案の第三実施例を示している。 前述した従来構造と同様に、固定軸１の周囲に滑り軸受３ａ、３ｂにより揺動自 在に支持された揺動部材３１の先半部４の中心ｂは、上記固定軸１の中心ａに対 し偏心している。そして、この先半部４の周囲にテンションプーリ５を、転がり 軸受６により、回転自在に支持すると共に、上記揺動部材３１の基半部７に、ブ ラケット８を外嵌固定している。そして、このブラケット８の端部に形成した係 止部９に、図示しない引っ張りばねの端部を係止して、上記揺動部材３１に、上 記固定軸１を中心として回転する方向の弾力を付与している。

【００２６】 特に、本考案のオートテンショナを構成する揺動部材３１は、鉄若しくはアル ミニウム合金等の金属材料をロストワックス法等の精密鋳造法により鋳造する事 で、一体形成している。そして、各図に斜格子で示した様に上記先半部４に、こ の先半部４の外側面に開口する肉抜き部３２を設け、上記揺動部材３１の軽量化 と材料の節減とを図っている。粘性流体充填用の給油口１３と六角レンチ係合用 の角孔２９とは、上記肉抜き部３２の奥面に形成している。

【００２７】 精密鋳造法により造られる揺動部材３１の外径寸法は、鋳造後そのまま使用出 来る様に、精密鋳造時に所定寸法に仕上げても、或は精密鋳造時には所定寸法よ りも少しだけ大きな外径寸法を有する素材を造り、この素材の外径面に切削加工 を施す事で、所定の外径寸法を有する揺動部材３１とする事も出来る。鋳造後切 削加工を施す場合でも、その加工量は少なくて済む為、従来構造に比べて加工の 手間を軽減し、上述の様な肉抜き部３２を有する揺動部材３１並びにこの揺動部 材３１を組み込んだオートテンショナの製作費の低減を図れる。その他の構成及 び作用は、前述の各実施例の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付し て、重複する説明を省略する。

【００２８】 次に、図８〜１０は、請求項２に対応する、本考案の第四実施例を示している 。本実施例の場合、揺動部材３１に引っ張りばねの一端を接続する為の係止部９ を設ける為のブラケット８を省略し、代わりに揺動部材３１の基半部７の一部外 周面に鍔部３３を、揺動部材３１の精密鋳造時に一体形成し、この鍔部３３に、 上記係止部９を設けている。

【００２９】 この様に鍔部３３を一体形成する事で、上記揺動部材３１にブラケット８を外 嵌固定する手間を省略出来るだけでなく、次の様な効果を得られる。即ち、上記 ブラケット８を揺動部材３１に外嵌固定する場合、外嵌に伴なってこの揺動部材 ３１の一部が収縮する為、固定軸１に揺動部材３１を支持する為の滑り軸受３ｂ のクリアランス設定が難しくなる。これに対して、本実施例の様に揺動部材３１ と一体に鍔部３３を設ける事で、上記ブラケット８を省略すれば、揺動部材３１ の一部が収縮する事もなくなる為、上記滑り軸受３ｂのクリアランス設定が容易 になる。その他の構成及び作用は、前述の第三実施例と同様である。

【００３０】 尚、本考案のオートテンショナの特徴は、揺動部材２ａを主部１９と副部２０ （２０ａ）とから構成、或は揺動部材３１を精密鋳造法により製造した点に特徴 がある。従って、固定軸１と揺動部材２ａ、３１との間にダンパ機構を設けるか 否かは任意である。

【００３１】

【考案の効果】

本考案のオートテンショナは、以上に述べた通り構成され作用する為、製造工 程の簡略化により製作費の低廉化を図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第一実施例を示す正面図。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図。

【図３】本考案の第二実施例を示す正面図。

【図４】図３のＢ−Ｂ断面図。

【図５】本考案の第三実施例を示す正面図。

【図６】図５のＣ−Ｃ断面図。

【図７】揺動部材のみを取り出して示す、図６と同様の
断面図。

【図８】本考案の第四実施例を示す正面図。

【図９】図８のＤ−Ｄ断面図。

【図１０】揺動部材のみを取り出して示す、図９と同様
の断面図。

【図１１】従来構造の１例を示す正面図。

【図１２】図１１のＥ−Ｅ断面図。

【図１３】従来構造を構成する揺動部材の加工状態を示
す断面図。

【符号の説明】

１ 固定軸 ２、２ａ 揺動部材 ３ａ、３ｂ 滑り軸受 ４ 先半部 ５ テンションプーリ ６ 転がり軸受 ７ 基半部 ８ ブラケット ９ 係止部 １０ 空間 １１ 固定側平板 １２ 揺動側平板 １３ 給油孔 １４ 鋼球 １５ 内輪 １６ 素材 １７、１８ シール材 １９ 主部 ２０、２０ａ 副部 ２１ 内周面 ２２ 外周面 ２３ 内周面 ２４、２４ａ 外周面 ２５、２５ａ 内輪軌道 ２６ 外輪軌道 ２７ 玉 ２８ 円孔 ２９ 角孔 ３０ 抑え板 ３１ 揺動部材 ３２ 肉抜き部 ３３ 鍔部

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 第一の中心を有する固定軸と、この固定
   軸の周囲に回転自在に支持された揺動部材と、上記第一
   の中心と平行な第二の中心を有し、この揺動部材の外周
   面部分に設けられた軸受と、この軸受により回転自在に
   支持されたテンションプーリと、上記揺動部材と固定部
   分との間に設けられ、このテンションプーリを張力を付
   与すべき部材に向けて押圧するばねとから成るオートテ
   ンショナに於いて、上記揺動部材は上記固定軸の周囲に
   回転自在に支持された主部と、この主部の一部に外嵌固
   定された副部とから成り、上記主部の内外両周面は、上
   記第一の中心と一致する第三の中心を有する軸対称形
   で、上記副部の内周面の中心は上記第一、第三の中心に
   一致し、上記副部の外周面の中心は上記第二の中心に一
   致すると共に、上記軸受は上記副部の外周面に設けられ
   ている事を特徴とするオートテンショナ。
2. 【請求項２】 第一の中心を有する固定軸と、この固定
   軸の周囲に回転自在に支持された揺動部材と、上記第一
   の中心と平行な第二の中心を有し、この揺動部材の外周
   面部分に設けられた軸受と、この軸受により回転自在に
   支持されたテンションプーリと、上記揺動部材と固定部
   分との間に設けられ、このテンションプーリを張力を付
   与すべき部材に向けて押圧するばねとから成るオートテ
   ンショナに於いて、上記揺動部材は精密鋳造品である事
   を特徴とするオートテンショナ。