JPH0598258A - 液晶素子およびその製造方法ならびにその用途 - Google Patents

液晶素子およびその製造方法ならびにその用途

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JPH0598258A
JPH0598258A JP3048477A JP4847791A JPH0598258A JP H0598258 A JPH0598258 A JP H0598258A JP 3048477 A JP3048477 A JP 3048477A JP 4847791 A JP4847791 A JP 4847791A JP H0598258 A JPH0598258 A JP H0598258A
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liquid crystal
group
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acid ester
carboxylic acid
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JP3048477A
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English (en)
Inventor
Shinichi Nishiyama
山 伸 一 西
Hideo Hama
秀 雄 浜
Teruichi Miyakoshi
越 照 一 宮
Toru Yamanaka
中 徹 山
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、動作温度範囲が広く、スイッチング
速度が大きく、スイッチングしきい値電圧が適正な範囲
にあり、きわめて少ない消費電力で作動し、コントラス
トが大きい等の優れた特性を有する表示デバイス等を形
成し得る液晶素子を提供することを目的としている。 【構成】本発明の液晶素子には、例えば、次式で表わさ
れるカルボン酸エステル化合物が含まれた液晶組成物が
用いられる。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、液晶素子およびその製造
方法ならびにその用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】現在、広汎に使用されている液晶
化合物を用いた表示デバイスは、通常はTN(ツイスト
ネマチック)モードによって駆動されている。
【0003】しかしながら、この方式を採用した場合、
表示されている画像を変えるためには、素子中における
液晶化合物の分子の位置を変える必要があるために、駆
動時間が長くなり、液晶化合物の分子位置を変えるため
に必要とする電圧、すなわち消費電力も大きくなるとい
う問題点がある。
【0004】強誘電性液晶化合物を用いたスイッチング
素子は、TN(ツイストネマッチク)モードあるいはS
TNモードを利用したスイッチング素子とは異なり、液
晶化合物の分子の配向方向を変えるだけでスイッチング
素子として機能させることができるため、スイッチング
時間が非常に短縮される。さらに、強誘電性液晶化合物
のもつ自発分極(Ps)と電界強度(E)とにより与え
られるPs×Eの値が液晶化合物の分子の配向方向を変
えるための実効エネルギー強度であるので、消費電力も
非常に少なくなる。
【0005】そして、このような強誘電性液晶化合物
は、印加電界の方向によって二つの安定状態、すなわち
双安定性を持つので、スイッチングのしきい値特性も非
常に良好であり、動画用の表示デバイスなどとして用い
るのに特に適している。
【0006】また、反強誘電性液晶はこれらの特性を備
えた上に、メモリー性の実現が容易であり、高コントラ
スト化が容易であるため、表示デバイス等として用いる
のに特に適している。
【0007】
【従来技術における問題点】このような強誘電性液晶化
合物あるいは反強誘電性液晶化合物を光スイッチング素
子などに使用する場合、強誘電性液晶化合物あるいは反
強誘電性液晶化合物には、例えば動作温度範囲が常温付
近あるいはそれ以下にあること、動作温度幅が広いこ
と、スイッチング速度が大きい(速い)ことおよびスイ
ッチングしきい値電圧が適正な範囲内にあることなど多
くの特性が要求される。
【0008】殊にこれらのうちでも、動作温度範囲は強
誘電性液晶化合物あるいは反強誘電性液晶化合物を実用
化する際に特に重要な特性である。しかしながら、これ
まで知られている強誘電性液晶化合物においては、例え
ば、R.B.Meyer,et.al.,の論文[ジャーナル・デ・フイ
ジーク(J.dePhys.)36巻L−69頁、1975
年]、田口雅明、原田隆正の論文[第11回液晶討論会
予稿集168頁、1985年]に記載されているよう
に、一般に動作温度が狭く、また動作温度範囲が広い強
誘電性液晶化合物であっても動作温度範囲が室温を含ま
ない高温度域であるなど、強誘電性液晶化合物として実
用上満足できるものは得られていない。また、反強誘電
性液晶化合物としても実用上満足できるものは得られて
いない。
【0009】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に鑑み
てなされたものであって、動作温度範囲が広く、スイッ
チング速度が大きく、スイッチングしきい値電圧が適正
な範囲にあり、きわめて少ない消費電力で作動し、コン
トラストが大きい等の優れた特性を有する等、液晶物質
特性の優れた液晶素子を提供することを目的としてい
る。
【0010】また本発明は、上記のような新規なカルボ
ン酸エステル化合物を用いた、優れた特性を有する新規
な液晶素子の製造方法及びその用途をも提供することを
目的としている。
【0011】
【発明の概要】本発明に係る液晶素子は、対向する2枚
の基板を含んで形成されるセルの間隙に液晶物質が充填
されてなり、該液晶物質が、次式[A]で表わされる少
なくとも一種類のカルボン酸エステル化合物を含む液晶
組成物であることを特徴とする。
【0012】
【化4】
【0013】・・・[A][ただし、式[A]において、
Rは、炭素数3〜20のアルキル基、炭素数3〜20の
アルコキシ基および炭素数3〜20のハロゲン化アルキ
ル基よりなる群から選ばれる1種の基であり、Xおよび
Yは、それぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−C
2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−S−S−、
−CO−CH2−および−CH2−CO−よりなる群から
選ばれる基または単結合を表わし、AおよびBは、それ
ぞれ独立に、
【0014】
【化5】
【0015】よりなる群から選ばれる基または単結合を
表わし、R*は、不斉炭素を少なくとも1個有する炭素
数4〜20の光学活性基(該光学活性基の炭素原子に結
合した水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよ
い)、好ましくは、−(CH23ーC*H(CH3)-C2
5、−CH2ーC*H(CH3)-C25、−C*H(C
3)-C613、−C*H(CH3)-C511、−C*
(C25)-C613、−C*H(CF3)-C613、およ
び−C*H(CF3)ーCH2ーCOO-C25を表わし、m
およびnは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表わす
(ただし、mおよびnの両者が同時に0になることはな
い)]。
【0016】本発明に係る液晶素子の製造方法は、対向
する2枚の基板を含んで形成されるセルの間隙に液晶物
質が充填されてなる液晶素子を製造するに際して、少な
くとも一方の基板の内面に配向制御膜を設けてセルを形
成し、このセルの間隙に、上記式[A]で表わされるカ
ルボン酸エステル化合物を含む液晶物質を充填し、セル
中に含まれる液晶物質が等方相を示す温度以上に加熱し
た後、該液晶物質が液晶を示す温度以下に、好ましくは
2℃/分以下の降温速度で冷却することを特徴としてい
る。
【0017】さらに、本発明に係る表示用素子、液晶表
示装置、電気光学表示装置等は、上記の液晶素子を用い
ることを特徴とする。本発明によれば、動作温度範囲が
広く、スイッチング速度が大きく、スイッチングしきい
値電圧が適正な範囲にあり、きわめて少ない消費電力で
作動し、コントラストが大きい等、特性の優れた液晶素
子等が提供される。
【0018】また、本発明の製造方法によれば、上記の
ような優れた特性を有する液晶素子等が得られる。そし
て、このような液晶素子を用いることにより、動作温度
範囲が室温付近あるいはそれ以下にあり、かつ動作温度
幅が広く、スイッチング速度が大きく、消費電力が極め
て少なく、しかも安定したコントラストが得られる等の
優れた特性を有する各種デバイスを得ることができる。
【0019】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る液晶素子及び
その製造方法ならびに液晶素子の用途について、具体的
に説明する。
【0020】まず、本発明に係る液晶素子について説明
する。本発明に係る液晶素子は、対向する2枚の基板を
含んで形成されるセルの間隙に液晶物質が充填されてな
るが、該液晶物質は、以下に記載するような特定のカル
ボン酸エステル化合物[A]を少なくとも1種類含む液
晶組成物である。
【0021】新規なカルボン酸エステル化合物(液晶化
合物) 本発明に係る液晶素子のセル間隙に充填される液晶物質
に含まれる新規なカルボン酸エステル化合物(液晶化合
物)は、次式[A]で表わすことができる。
【0022】
【化6】
【0023】・・・[A] ただし、式[A]において、Rは、炭素数3〜20のア
ルコキシ基および炭素数3〜20のハロゲン化アルキル
基よりなる群から選ばれる1種の基を表わす。
【0024】上記式[A]において、Rが炭素数3〜2
0のアルキル基である場合には、このようなアルキル基
としては、直鎖状、分枝状、及び脂環状のいずれの形態
であってもよいが、Rが直鎖状のアルキル基であるカル
ボン酸エステルの分子は、分子が真っ直ぐに伸びた剛直
構造をとるため、優れた液晶性を示す。
【0025】このような直鎖状のアルキル基の具体例と
しては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル
基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシ
ル基、ヘキサデシル基およびオクタデシル基などを挙げ
ることができる。
【0026】また、Rが炭素数3〜20のハロゲン化ア
ルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基の例として
は、上記のようなアルキル基の原子の少なくとも一部
が、F、Cl、BrおよびIなどのハロゲン原子で置換
された基を挙げることができる。
【0027】また、Rが炭素数3〜20のアルコキシ基
である場合には、このようなアルコキシ基の例として
は、上記のようなアルキル基を有するアルコキシ基を挙
げることができる。
【0028】このようなアルコキシ基の具体例として
は、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクチルオキシ基、
ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ
基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘプタ
デシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基およびオクタデ
シルオキシ基を挙げることができる。
【0029】上記のようなRを有する化合物のうちアル
コキシ基を有する化合物が特に優れた液晶性を示す。ま
た、上記式[A]において、XおよびYは、それぞれ独
立に、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−C
2O−、−OCH2−、−S−S−、−CO−CH2
および−CH2−CO−よりなる群から選ばれる基また
は単結合を表わす。
【0030】これらの内、本発明では上記カルボン酸エ
ステル化合物を配合して組成物として使用する場合、X
およびYは、それぞれ独立に、−COO−、−OCO
−、−CH2CH2−、−CH2O−および−OCH2−の
内から選ばれることが好ましく、特に分子の直線性を考
慮すると、X及びYの内、少なくともいずれか一方、好
ましくは両者が、−COO−であることが好ましい。
【0031】また、上記式[A]において、AおよびB
は、それぞれ独立に、
【0032】
【化7】
【0033】よりなる群から選ばれる基を表わす。これ
らの基のうち、上記のカルボン酸エステル化合物を液晶
化合物として使用する場合、液晶物質としての特性を考
慮すると、
【0034】
【化8】
【0035】であることが好ましく、なかでもフェニレ
ン基が特に好ましい。また、式[A]において、R
*は、不斉炭素を少なくとも1個有する炭素数4〜20
の光学活性基を表わす。なお、この光学活性基を構成す
る炭素原子に結合している水素原子は、例えばF、C
l、BrおよびIなどのハロゲン原子、特に好ましくは
フッ素原子で置換されていてもよい。このような光学活
性基の例として好ましくは、−(CH23ーC*H(CH
3)-C25、−CH2ーC*H(CH3)-C25、−C*
(CH3)-C613、−C*H(CH3)-C511、−C*
H(C25)-C613、−C*H(CF3)-C613、お
よび−C*H(CF3)ーCH2ーCOO-C25を挙げるこ
とができる。
【0036】これらの基のうち、本発明のカルボン酸エ
ステル化合物を液晶化合物として使用する場合、液晶物
質としての特性を考慮すると、以下に示す基が好まし
い。−C*H(CH3)-C613、−C*H(CF3)-C6
13、および−C*H(CF3)ーCH2ーCOO-C25
らにこれらの内でも以下に示す基が特に好ましい。
【0037】−C*H(CF3)-C613 また、式[A]において、mおよびnは、それぞれ独立
に、0〜2の整数を表わす。ただし、上記式[A]にお
いて、mおよびnの両者が同時に0となることはない。
【0038】特に、このカルボン酸エステル化合物を液
晶化合物として用い、後述するような他の成分と配合し
組成物として使用する場合には、mは、1または2であ
ることが好ましい。
【0039】さらに、上記式[A]において、5,6,7,8-
テトラヒドロナフチル基としては、 5,6,7,8-テトラヒドロ-1,5-ナフチル基 5,6,7,8-テトラヒドロ-1,6-ナフチル基 5,6,7,8-テトラヒドロ-2,6-ナフチル基 および5,6,7,8-テトラヒドロ-1,7-ナフチル基を挙げる
ことができる。
【0040】特に本発明で、このカルボン酸エステル化
合物を液晶化合物として使用する場合には、分子全体が
直線状になることが好ましく、このため5,6,7,8-テトラ
ヒドロナフチル基としては、5,6,7,8-テトラヒドロ-2,6
-ナフチル基が特に好ましい。 従って、上記式[A]
で表わされるカルボン酸エステル化合物としては、具体
的には、下記式[A']で表わされ、
【0041】
【化9】
【0042】・・・[A'] R,X,Y,m,n,A,BおよびR*が、例えば、下
記表1から表6に示すよに、化合物番号[1]〜[10
4]で示される化合物を挙げることができる。
【0043】なお、下記表中、R,X,Y,m,n,
A,BおよびR*は前記と同じ意味であり、p,q,r
はそれぞれR:CpHqOr−基における炭素原子数、水
素原子数、酸素原子数を表わす。
【0044】また、記号A中、
【0045】
【化10】
【0046】をそれぞれ表わす。また、記号R*中、 イ:−C*H(CF3)-C613 ロ:−C*H(CH3)-C613 ハ:−CH2ーC*H(CH3)-C25 ニ:−C*H(C25)-C613 を表わす。以下、本明細書中では、同様である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】上記のようなカルボン酸エステル化合物
は、公知の合成技術を組み合わせて利用することにより
製造することができる。例えば、上記のカルボン酸エス
テル化合物は、以下に示す合成経路に従って合成するこ
とができる。
【0054】
【化11】
【0055】すなわち、例えば、6-n-アルコキシナフタ
レン-2-カルボン酸をパラジウム/炭素触媒で加圧下加
熱して水素添加することにより、5,6,7,8-テトラヒドロ
-6-n-アルコキシナフタレン-2-カルボン酸を得る。
【0056】一方、光学活性アルコールの4-ヒドロキシ
安息香酸エステルと4-ベンジルオキシ安息香酸を、4-N,
N-ジメチルアミノピリジンおよび塩化メチレンを溶媒と
して用い、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド溶液
を滴下しながら反応させることにより、光学活性アルコ
ールの4-(4'-ベンジルオキシベンゾイルオキシ)安息
香酸エステルを得る。
【0057】上記のようにして得られた光学活性アルコ
ールの4-(4'-ベンジルオキシベンゾイルオキシ)安息
香酸エステルを、テトラヒドロフラン等の溶媒に投入
し、パラジウム/炭素等の還元触媒の存在下に水素ガス
を用いて還元することにより、光学活性アルコールの4-
(4'-ヒドロキシベンゾイルオキシ)安息香酸エステル
を得る。
【0058】上記のようにして得られた光学活性アルコ
ールの4-(4'-ヒドロキシベンゾイルオキシ)安息香酸
エステルと、上記工程で得られた5,6,7,8-テトラヒドロ
-6-n-アルコキシナフタレン-2-カルボン酸を、4-N,N-ジ
メチルアミノピリジンおよび塩化メチレンを溶媒として
用い、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド溶液を滴
下しながら反応させることにより、本発明で用いられる
カルボン酸エステル化合物を得ることができる。
【0059】なお、上記の方法は、本発明で用いられる
カルボン酸エステル化合物の製造方法の一例であり、本
発明で用いられるカルボン酸エステル化合物は、この製
造方法によって限定されるものではない。
【0060】例えば上記のような方法により製造される
本発明で用いられるカルボン酸エステル化合物の内、次
式で表わされる4-[4'-(5",6",7",8"-テトラヒドロ-6"
-n-デシルオキシ-2"-ナフトイルオキシ)ベンゾイルオ
キシ]安息香酸R-1'''-トリフロロメチルヘプチルエス
テルの1H−NMRのチャートを図1に示す。なお、次
式中(eq)はエカトリアル配座を表わし、(ax)は
アキシャル配座を表わす。
【0061】
【化12】
【0062】なお、上記式中において1〜16の番号
は、水素原子を示し、この番号は、図1におけるピーク
に付した番号と対応している。また例えば上記のような
方法により製造される本発明で用いられるカルボン酸エ
ステル化合物の内、次式で表わされる4-(5',6',7',8'-
テトラヒドロ-6'-n-デシルオキシ-2'-ナフトイルオキ
シ)安息香酸R-1'''-トリフロロメチルヘプチルエステ
ルの1H−NMRのチャートを図2に示す。
【0063】
【化13】
【0064】なお、上記式中において1〜15の番号
は、水素原子を示し、この番号は、第2図におけるピー
クに付した番号と対応している。上記のようにして得ら
れた式[A]で表わされるカルボン酸エステル化合物
は、例えば液晶化合物として使用することができる。
【0065】特に光学活性を有するカルボン酸エステル
化合物は、強誘電性液晶化合物または反強誘電性液晶化
合物として使用することができる。そして、このような
カルボン酸エステル化合物の内、次式[4]、[12]
で表わされる化合物が特に優れた液晶特性を示す。
【0066】
【化14】
【0067】このように液晶化合物として特に優れてい
る式[4]、[12]で表わされる化合物の相転移温度
を表1に示す。なお、以下に示す表において、Cry
は、結晶相、SmCA *は、反強誘電相、SmAは、スメ
クチックA相、Isoは、等方性液体を表わす。
【0068】
【表7】
【0069】 表7 ─────────────────────────── 相 転 移 温 度 ────────────────────── 化合物 Cry-SmCA * or SmA SmCA *-SmA SmA-Iso ─────────────────────────── [4] 47℃ 64℃ 78℃ [12] −30℃以下 ─────────────────────────── 本発明で用いられる液晶化合物[A]中には、表7に例
示したように、広い温度範囲で、スメクチック相を呈す
る化合物が多い。
【0070】そして、上記の液晶化合物[A]は、スメ
クチック相を示す温度範囲が広いだけでなく、このよう
な液晶化合物を配合してなる組成物を用いて製造された
光スイッチング素子は、高速応答性にも優れている。
【0071】本発明では、例えばこの液晶化合物[A]
として具体的に例示された式[1]〜[104]の化合
物のみを2種以上組み合わせることにより液晶組成物と
して使用することもできるが、この液晶化合物[A]を
他の液晶化合物と混合することにより液晶組成物として
使用することもできる。例えば、本発明で用いられる液
晶化合物[A]は、カイラルスメクチツク相を呈する化
合物を主剤とする液晶組成物の助剤として使用すること
ができる。
【0072】いずれにしても、上記のようなカルボン酸
エステル化合物[A]は、本発明に係る液晶組成物中
に、少なくとも1種類含まれている。換言すれば、本発
明で使用される液晶化合物[A]は、液晶組成物中に1
種または2種以上配合されていてもよい。
【0073】本発明で用いられる液晶組成物において、
上記式[A]で表わされる液晶化合物の含有率は、用い
られる液晶化合物の特性、組成物の粘度、動作温度、用
途などを考慮して、液晶組成物中における液晶物質の合
計重量100%中に、このカルボン酸エステル化合物を
1〜99重量%、好ましくは5〜75重量%の範囲で適
宜設定することができる。
【0074】本発明で用いられるカルボン酸エステル化
合物のように、強誘電性または反強誘電性を示す液晶化
合物は、電圧を印加することにより、光スイッチング現
象を起こすので、この現象を利用することにより、応答
性のよい表示装置を作製することができる(例えば特開
昭56-107216号公報、同59-118744号公報参照)。
【0075】そして、このような表示装置に使用される
強誘電性液晶化合物は、カイラルスメクチックC相、カ
イラルスメクチックF相、カイラルスメクチックG相、
カイラルスメクチックH相、カイラルスメクチックI
相、カイラルスメクチックJ相およびカイラルスメクチ
ックK相のいずれかの相を示す化合物であるが、カイラ
ルスメクチックC相(SmC*相)以外では、このよう
な液晶化合物を用いた表示素子は一般に応答速度が遅い
ため、従来では応答速度の大きいカイラルスメクチック
C相で駆動させることが実用上有利であるとされてい
た。
【0076】しかしながら、本発明者らが既に提案した
ようなカイラルスメクチックA相における表示素子の駆
動法(特願昭62-157808号明細書参照)を利用すること
により、強誘電性液晶組成物は、カイラルスメクチック
C相だけでなく、カイラルスメクチックA相で使用する
ことができる。
【0077】さらに本発明の液晶化合物は、カイラルス
メクチックC相よりも高い秩序をもっているカイラルス
メクチックF相などの液晶相においても、2つ以上の安
定状体を示すので、スメクチックA相の場合と同様に光
スイッチングを行うことができる。
【0078】従って、上記のようなカルボン酸エステル
化合物を含有している液晶組成物を用いることにより、
液晶温度範囲が広くなり、さらに電気光学対応性が高速
化した液晶素子が得られる。
【0079】表8に上記のようなカルボン酸エステル化
合物を用いることにより、液晶組成物の相転移温度が広
温度域化する例を示す。表8に示すように、カルボン酸
エステル化合物として4-[4'-(5",6",7",8"-テトラハ
イドロ-6"-デシルオキシ-2"-ナフトイルオキシ)-ベンゾ
イルオキシ]安息香酸R-1"-トリフルオロメチルヘプチ
ルエステルを使用し、この化合物を用いることにより
(B)として表記した液晶物質
【0080】
【化15】
【0081】・・・(B) の相転移温度が広温度域化する。具体的には、Cry−
SmCA *相の転移温度は44℃から33℃へ下降する。
【0082】
【表8】
【0083】 表8 ─────────────────────────────── 相 転 移 温 度 化合物または組成物 ──────────────── Cry-SmCA * SmCA *-SmA SmA-Iso ─────────────────────────────── [4] 47 64 79 [4]74重量%+[B]26重量% 33 72 84 [B] 44 78 94 ─────────────────────────────── <註> 上記表中、[4]は
【0084】
【化16】
【0085】を表わしている。また[B]は、
【0086】
【化17】
【0087】を表わしている。本発明で用いられる液晶
組成物において、上記式[A]で表わされる液晶化合物
とともに使用することができる液晶化合物の例として
は、(+)-4'-(2"-メチルブチルオキシ)フェニル-6-オ
クチルオキシナフタレン-2-カルボン酸エステル、4'-デ
シルオキシフェニル-6-((+)-2"-メチルブチルオキシ)
ナフタレン-2-カルボン酸エステル、
【0088】
【化18】
【0089】を挙げることができ、
【0090】
【化19】
【0091】のようなシッフ塩基系液晶化合物、
【0092】
【化20】
【0093】のようなアゾキシ系液晶化合物、
【0094】
【化21】
【0095】のような安息香酸エステル系液晶化合物、
【0096】
【化22】
【0097】のようなシクロヘキシルカルボン酸エステ
ル系液晶化合物、
【0098】
【化23】
【0099】のようなビフェニル系液晶化合物、
【0100】
【化24】
【0101】のようなターフェニル系液晶化合物、
【0102】
【化25】
【0103】のようなシクロヘキシル系液晶化合物、お
よび
【0104】
【化26】
【0105】のようなピリミジン系液晶化合物をも併用
することができる。なお、上記のような液晶組成物を用
いて、後述するような表示素子などを形成する際には、
上記のカルボン酸エステル化合物及び他の液晶化合物に
加えて、さらに、たとえば、電導性賦与剤および寿命向
上剤など、通常の液晶組成物に配合することができる添
加剤を配合してもよい。
【0106】また、後述するような色素の二色性を利用
した駆動方式の液晶素子を形成する際に、この液晶組成
物を使用する場合には、この組成物に二色性色素を配合
することもできる。
【0107】本発明で用いられる液晶組成物は、上記の
カルボン酸エステル化合物ならびに所望により他の液晶
化合物及び添加剤を配合することにより製造することが
できる。
【0108】液晶素子 次に、本発明に係る液晶素子の構成について、更に詳細
に説明する。本発明に係る液晶素子の断面の一例を図3
及び図4に示す。図中、同一符号は同一の箇所を表わ
す。
【0109】本発明に係る液晶素子は、例えば図3に示
すように、基本的には、対向する2枚の基板31a、3
1bを含んで形成されるセル33の間隙34に液晶物質
35が充填されてなる。換言すれば、基本的には、2枚
の基板31a、31b(以下、単に基板とも言う)と、
この2枚の基板31a、31bによって構成される間隙
34とからなるセル33、及びこのセルの間隙34に充
填された液晶物質35より構成されている。
【0110】これらの基板31a、31bは、少なくと
も一方の基板が透明であることが必要であり、通常は、
基板として、ガラス、透明プラスチック(例:ポリカー
ボネート、TPX(4ーメチルー1ーペンテンポリマーある
いはコポリマー)あるいはアモルファスポリオレフィン
(例:エチレンとテトラシクロ[4、4、0、12、5
7、10]3−ドデセンとの共重合物))等が使用され
る。
【0111】また、本発明においては、透明基板とし
て、可撓性透明基板を用いることができ、上記のような
ガラス、プラスチック等の他、各種高分子フィルム等を
用いることができる。
【0112】なお、ガラス基板を用いる場合には、アル
カリ成分の溶出による液晶物質の劣化を防止するため
に、ガラス基板表面に、例えば酸化珪素等を主成分とす
るアンダーコート層(不要成分透過防止層)を設けるこ
ともできる。
【0113】透明基板の厚さは、例えばガラス基板の場
合には、通常は0.01〜1.2mmの範囲内にある。こ
れらの基板31a、31bの内面、すなわちこれらの基
板が液晶物質と対面する面には、通常は、酸化インジウ
ム−スズ等からなる電極32a、32bが設けられてい
る。そして、本発明においては、基板として、上記のよ
うな基板上に透明電極が一体的に形成された透明電極基
板を使用することもできる。
【0114】透明電極は、例えば酸化イリジウム、酸化
スズ等で透明基板表面をコーティングすることにより形
成される。透明電極の厚さは、通常は100〜2000
オングストロームの範囲内にある。
【0115】本発明の液晶素子に於て、上記のような2
枚の基板の内で、少なくとも一方の基板の内面には配向
制御膜(配向層)が設けられていることが好ましく、特
に両方の基板の内面に配向制御膜が設けられていること
がさらに好ましい。
【0116】図3には、配向制御膜が二枚設けられた態
様が示されており、この配向制御膜は37a、37bで
示されている。そして、本発明において、配向制御膜
は、ポリイミド、酸化ケイ素、ポリビニルアルコール、
ポリアミド、ポリエステル等の有機、無機の膜状物で、
特にポリイミドフィルムが好都合である。例えば好まし
い態様として、配向制御膜が一枚の場合には、この一枚
の配向制御膜がポリイミドからなり、また、二枚の配向
制御膜を有する場合には、少なくとも一方がポリイミド
からなり、好ましくは両者がポリイミドからなる。
【0117】ポリイミドとしては、イミド結合を含む高
分子であればよく、フィルム形成が可能であることが好
ましい。ポリイミドの具体的な例としては、宇部興産
(株)製ユーピレックス-R、日産化学工業(株)製サン
エバー130、日本合成ゴム(株)製オプトマーAL-1251、J
IA-28、日本ポリイミド(株)製ケルイミド601、日立化
成工業(株)製LX-1400、HL-1100などがある。但し、こ
れらの具体例に限定されるわけではない。
【0118】このように、ポリイミドはイミド結合を含
む高分子を主成分とする樹脂であるが、本発明で用いら
れる配向制御膜は、ポリイミドの特性を損なわない範囲
でポリアミド等の他の樹脂を含んでいてもよく、またイ
ミド構成単位以外の他の構成単位を含む樹脂であっても
よい。
【0119】配向制御膜の一方がポリイミド以外の物質
で形成されている場合に、このポリイミド以外の配向制
御膜は有機材料から形成されていてもよく、無機材料か
ら形成されていてもよい。
【0120】有機材料から形成された配向制御膜として
は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアミドイミ
ド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセ
タール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミ
ド、ポリスチレン、シロキサンポリイミド、セルロース
樹脂、メラミン樹脂、ユリヤ樹脂、アクリル樹脂、導電
性ポリマーなどの樹脂類からなる膜を挙げることができ
る。
【0121】さらに、配向制御膜は、例えば環化ゴム系
フォトレジスト、フェノールノボラック系フォトレジス
ト、あるいはポリメチルメタクリレート、エポキシ化1,
4-ポリブタジエンなどの電子線フォトレジストの硬化体
であってもよい。
【0122】また、配向制御膜は、無機材料から形成さ
れていてもよく、この場合に無機配向制御膜を形成する
素材の例としては、SiO、SiO2、GeO、Al2
3、Y25、ZrO2、MgF2、CeF3を挙げることが
できる。
【0123】このような配向制御膜は、基板の内面、す
なわち基板が液晶と接する面に、上記のような樹脂を例
えばスピンコート法などにより塗布する方法、このよう
に塗布した後に加熱処理する方法、樹脂フィルムを粘着
する方法、感光性樹脂を塗布した後、エネルギー線を照
射して硬化させる方法、無機材料を蒸着する方法などの
ように使用する材料に対応させて種々の方法を採用して
形成することができる。
【0124】例えば配向制御膜(配向層)は、有機シラ
ンカップリング剤あるいはカルボン酸多核錯体等を化学
吸着させることにより形成することができる。また酸化
珪素等を斜方蒸着することによっても形成することがで
きる。さらに、透明電極上にポリイミド樹脂を塗布し、
その後一定方向にラビングすることにより配向層を形成
することもできる。
【0125】また、配向層等は後述のスペーサを兼ねる
ように形成されていてもよい。上記のような透明基板3
1a、31bは、二枚の透明基板上に設けられている二
枚の透明電極32a、32bがそれぞれ向き合うように
配置され、しかもこれらの透明基板により液晶物質を充
填するための間隙が形成されるように二枚配置される。
【0126】上記のようにして形成される基板方向の間
隙(基板間距離)34の幅は、通常は1〜10μm、好
ましくは1〜5μmである。このような間隙は例えば、
スペーサを狭持するように二枚の基板を配置することに
より、容易に形成することができる。
【0127】上記のような配向制御膜の厚さは、通常
0.005〜0.25μm、好ましくは0.01〜0.
15μmの範囲内にある。そして、本発明においては、
上記のような配向制御膜は、それぞれの基板の内面に設
けられるが、特に一方の基板の一方の配向制御膜の規制
力によって配向される液晶物質の配向方向と、他方の配
向制御膜の規制力によって配向される液晶物質の配向方
向とが、略平行で、かつ方向が同一ないし逆になるよう
に二枚の配向制御膜が設けられていることが好ましい。
しかしながら、この例に限らない。
【0128】この配向制御膜37a、37bは、液晶物
質を配向させるという作用を有している。従って、この
ように配向制御膜を配置する場合には、配向制御膜を無
秩序に配置するよりも、配向制御膜の規制力によって配
向される液晶物質の配向方向が同一方向または逆平行に
なるように、配向制御膜をそれぞれ配置して液晶物質を
配向処理することが好ましく、このようにすると、セル
内に注入された液晶物質の初期配向性が向上して、コン
トラスト等に優れた液晶素子等が得られる。
【0129】さらに、本発明において、配向制御膜は、
配向処理されていることが好ましい。ここで、配向処理
とは、液晶分子を所定の方向に配向させるための処理の
ことをいい、例えばポリイミドは、布などで一方向にこ
するなどして行うラビングにより、配向処理することが
できる。
【0130】本発明で使用されるセルは、上記のように
必要により配向制御膜37a、37bが設けられた二枚
の基板31a、31bによって液晶物質を充填するため
の間隙34ができるように形成されている。このような
間隙34は、例えば基板31a、31bを、二枚の基板
の内側の周囲に、例えば、図4に示すようにスペーサ3
8を介在させて配置することにより形成することができ
る。このようにスペーサ38を配置することにより液晶
物質を充填するための間隙34を確保することができる
とともに、液晶物質の漏洩を防ぐこともできる。なお、
間隙34は、上記のような側壁を形成し得るスペーサを
用いて形成することができるとともに、液晶物質中に所
定の粒子径を有する粒子(内部スペーサ)を配合するこ
とにより形成することもできる。
【0131】このようなスペーサとしては、例えば、感
光性ポリイミド前駆体をパターニングして得られるポリ
イミド系高分子物質等を用いることができる。このよう
なスペーサを用いることにより、このスペーサと液晶物
質との界面効果により、モノドメインが形成される。ま
た、例えば、配向膜として作用する同心円形状のスペー
サあるいはクシ状のスペーサを用いて、配向膜とスペー
サとを一体化することもできる。
【0132】また、上記のようなスペーサの他に、液晶
物質中にファイバを配合して、このファイバにより、透
明基板が一定の間隙を形成するように保持することもで
きる。
【0133】さらに、上記ファイバの代わりに、あるい
は上記ファイバと共に粒状物を配合することもできる。
このような粒状物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂あ
るいはベンゾグアナミン樹脂等からなる粒子径が1〜1
0μm、好ましくは1〜5μm、特に好ましくは1.6〜
5μmの範囲内にある粒状物が用いられる。
【0134】上記のようにスペーサを介在させること等
により、間隙を形成し得るように配置された二枚の透明
基板は、通常は周辺をシール材36でシールすることに
より貼り合わされる。
【0135】このようなシール材36としては、エポキ
シ系樹脂、UV硬化性樹脂およびシリコン系樹脂等を用
いることができる。さらに、このエポキシ樹脂等がアク
リル系材料あるいはシリコン系ゴム等で変性されていて
もよい。
【0136】なお、本発明の液晶素子においては、例え
ば光導電膜、光遮断膜、光反射膜などの各種薄膜が、基
板上に設けられた配向制御膜の反対側、すなわち配向制
御膜と基板の間に設けられていてもよい。
【0137】本発明の液晶素子においては、上記のよう
なセルの間隙34に液晶物質35が充填されている。本
発明において使用される液晶物質は、前記式[A]で表
わされるカルボン酸エステル化合物を含んでいる。特に
本発明においては、式[A]で表わされる液晶化合物を
単独で使用することもできるが、式[A]で表わされる
液晶化合物を少なくとも一種類含む液晶組成物であるこ
とが好ましい。
【0138】このような本発明の液晶素子は、コントラ
スト等が著しく優れ、例えば、表面安定化強誘電性液晶
素子、表面安定化反強誘電性液晶素子、ヘリカル変歪型
素子、過渡散乱型素子、ゲストホスト型素子、垂直配向
液晶素子などとして好適に使用することができる。
【0139】そして、本発明に係る液晶素子のうち、ス
メクチックを呈する液晶組成物が充填された液晶素子
は、熱書き込み型表示素子、レーザー書き込み型液晶表
示装置などの記憶型液晶表示装置として使用することが
でき、このような液晶素子を用いて液晶表示装置あるい
は電気光学表示装置を製造することができる。
【0140】さらに上記カルボン酸エステル化合物
(A)のうちで、強誘電性または反強誘電性を有するカ
ルボン酸エステル化合物を含有する液晶組成物を用いる
ことにより得られる素子は、上記のような用途の他、光
シャッターや液晶プリンタなどの光スイッチング素子、
圧電素子、および焦電素子等の液晶素子として使用する
ことができ、このような液晶素子を用いて液晶表示装置
あるいは電気光学表示装置を製造することができる。
【0141】すなわち、本発明で使用される液晶物質を
用いてカイラルスメクチックC相を形成させると、カイ
ラルスメクチックC相は、双安定性を示す。従って、2
つの安定状態間を電界反転させることにより、この液晶
素子を用いて光スイッチング及び表示を行うことができ
る。
【0142】また、このようなカイラルスメクチックC
相を示す強誘電性の液晶物質は、自発分極を有するか
ら、一度電圧を印加すると電界消去後もメモリー効果を
有する。そこで、このメモリー効果を利用すれば液晶素
子に電圧を印加し続ける必要が無いので、このような液
晶素子からなる表示デバイスでは消費電力の低減を図る
ことができる。さらに、この場合、表示デバイスのコン
トラストは安定し、しかも非常に鮮明になる。
【0143】また、このカイラルスメクチック液晶組成
物(化合物)を用いたスイッチング素子では、分子の配
向方向を変えるだけでスイッチングが可能であり、この
場合に電界強度の一次項が駆動に作用するため、低電圧
駆動が可能になる。
【0144】そして、このスイッチング素子を用いれ
ば、数十マイクロ秒以下の高速応答性を実現できるの
で、各素子の走査時間は大幅に短縮され、走査線の多い
大画面のディスプレイ(液晶表示装置)を製造すること
ができる。しかも、このディスプレイは、室温あるいは
それ以下の温度においても作動するので、温度コントロ
ールのための補助手段を用いることなく、容易に走査さ
せることができる。
【0145】さらに、本発明の液晶素子に用いられる液
晶物質は、双安定性を示さないスメクチックA相におい
ても、電界が加わると、誘起的に分子が傾くので、この
性質を利用して光スイッチングを行うことができる。
【0146】液晶素子の製造方法 次に、上記のような液晶素子の製造方法について説明す
るが、本発明の液晶素子は、基本的には、上述したよう
なセルの間隙に、上述したカルボン酸エステル化合物
(A)を含む液晶物質を充電することにより製造するこ
とができる。
【0147】液晶物質は、通常、溶融状態になるまで加
熱され、このように溶融した状態で、内部が真空にされ
たセルの間隙に充填(注入)される。このようにして液
晶物質を充填した後、通常はセルを密封する。次いで、
通常、このようにセル内に充填された液晶物質を初期配
向させる。
【0148】このように液晶物質を初期配向させるに
は、例えば、このように密封されたセルを加熱すること
により、セル内の液晶物質が等方相を示す温度以上の温
度になるまで加熱し、その後、この液晶物質が液晶相を
示す温度になるまで冷却する。この冷却の際の降温速度
は2℃/分以下にすることが好ましい。特にこの降温速
度を0.1〜2.0℃/分の範囲内にすることが好まし
く、さらに0.1〜0.5℃/分の範囲内にすることが
特に好ましい。このようにセルを冷却する際に、冷却速
度を上記のようにすることにより、初期配向に優れ、配
向欠陥のないモノドメインからなる液晶相を有する液晶
素子が得られる。ここで、初期配向性とは、液晶素子に
電圧の印加等を行って液晶物質の配向ベクトルを変える
前の液晶物質の配向状態をいう。
【0149】また、液晶セルの間隙に充填されたこのよ
うな液晶物質は、例えばスペーサエッジを利用した温度
勾配法あるいは配向膜を用いた表面処理法等の一軸配向
制御方法を利用して初期配向させることができる。ま
た、本発明においては、液晶物質を加熱しながら、直流
バイアス電圧を用いて電界を印加することにより、液晶
物質の初期配向を行うこともできる。
【0150】
【発明の効果】本発明により、液晶物質として、少なく
とも1種類の新規なカルボン酸エステル化合物が含まれ
た液晶素子が提供される。
【0151】この新規なカルボン酸エステル化合物は、
光学的に活性であり、しかも5,6,7,8-テトラヒドロナフ
チレン環とベンゼン環とがエステル結合で結合されてい
るため、さらにベンゼン環が2個ある場合には、これら
のベンゼン環同士もエステル結合で結合されているた
め、室温を含む広範な温度範囲においてスメクチック相
を示し、強誘電性液晶化合物または反強誘電性液晶化合
物として好ましく使用することができる。
【0152】このような液晶化合物に、同種および/ま
たは他種の液晶物質を配合することにより、上記の液晶
化合物(A)の強誘電性または反強誘電性を損なうこと
なく、液晶を使用できる温度範囲を広域化した液晶素子
を得ることができる。
【0153】従って、このような液晶化合物あるいは液
晶組成物を用いた本発明の液晶素子では、広い温度範囲
において高速応答性を有する。さらに、このような素子
を用いて製造した液晶ディスプレイにおいては、操作時
間を大幅に短縮することができる。
【0154】このようなディスプレイでは消費電力の低
減を図ることができるとともに、安定したコントラスト
が得られる。また、低電圧駆動も可能である。また、本
発明で用いられる液晶物質は、自発分極を有するカルボ
ン酸エステル化合物を含有することができるので、電界
消去後もメモリー効果を持つデバイスを得ることができ
る。
【0155】このようなデバイスは、カルボン酸エステ
ル化合物のスメクチック相における双安定性を利用して
いるので、室温あるいはそれ以下の温度で光スイッチン
グに好ましく用いられる。また、上記のようなカルボン
酸エステル化合物を、反強誘電性液晶組成物を製造する
際に使用することにより、メモリー性に優れた素子など
を容易に実現することが可能となり、また、従来の液晶
組成物に比べてその配向性を著しく向上させることもで
きる。
【0156】
【実施例】次に本発明の実施例を示すが、本発明はこれ
らの実施例に限定されるものではない。
【0157】また、下記で使用したRおよびSは、光学
異性体のR体およびS体を意味する。
【0158】
【実施例1】4-[4'-(5",6",7",8"-テトラヒドロ-6"-n-
デシルオキシ-2"-ナフトイルオキシ)ベンゾイルオキ
シ]安息香酸R-1'''-トリフロロメチルヘプチルエステ
ルの合成 第1段階6-
n-デシルオキシナフタレン-2-カルボン酸328mg
(1.0ミリモル)および5%パラジウム/炭素0.1
gをテトラヒドロフラン10mlに混合し、水素雰囲気
下、120℃、25気圧で攪拌した。
【0159】常温常圧に戻した後、反応混合物を濾過助
剤であるセライトを用いて濾過し、さらに得られた濾液
を濃縮し、この固体をヘキサンを用いて再結晶すること
により、白色固体である5,6,7,8-テトラヒドロ-6-n-デ
シルオキシナフタレン-2-カルボン酸90mg(0.27
ミリモル)を得た。
【0160】第2段階 R-1-トリフロロメチルヘプタノール9.20g(50ミ
リモル)、4-ベンジルオキシ安息香酸11.40g(5
0ミリモル)、4-N,N-ジメチルアミノピリジン0.61
g(5ミリモル)をおよび塩化メチレン100mlの混合
物に、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド11.33
g(55ミリモル)を含む塩化メチレン溶液70mlを室
温で、攪拌下に2.5時間かけて滴下した。
【0161】さらに室温下で4時間反応させた。反応混
合物を濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮物をカラ
ムクロマトグラフィーを用いて分離することにより、白
色固体である4-ベンジルオキシ安息香酸R-1'-トリフロ
ロメチルヘキシルエステル15.96g(40.6ミリ
モル)を得た。
【0162】第3段階 第2段階で得られた4-ベンジルオキシ安息香酸R-1'-ト
リフロロメチルヘキシルエステル15.96g(40.
6ミリモル)、5%パラジウム/炭素1.6gおよびテ
トラヒドロフラン80gの混合物中に室温、常圧攪拌下
に水素を8時間吹き込んだ。反応混合物を濾過助剤であ
るセライトを用いて濾過し、さらに得られた濾液を濃縮
し、白色固体である4-ヒドロキシ安息香酸R-1'-トリフ
ロロメチルヘキシルエステル12.34g(40.6ミ
リモル)を得た。
【0163】第4段階 第3段階で得られた4-ヒドロキシ安息香酸R-1'-トリフ
ロロメチルヘキシルエステル12.34g(40.6ミ
リモル)、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル9.
26g(40.6ミリモル)、4-N,N-ジメチルアミノピ
リジン0.49g(4ミリモル)および塩化メチレン8
0mlの混合物に、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド
9.2g(44.7ミリモル)を含む塩化メチレン溶液
50mlを室温で、攪拌下に2時間かけて滴下した。
【0164】さらに室温下で3.5時間反応させた。反
応混合物を濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮物を
カラムクロマトグラフィーを用いて分離することによ
り、白色固体である4ー(4'-ベンジルオキシベンゾイル
オキシ)安息香酸R-1'-トリフロロメチルヘキシルエス
テル19.64g(38.2ミリモル)を得た。
【0165】第5段階 第4段階で得られた4-(4'-ベンジルオキシベンゾイル
オキシ)安息香酸R-1'-トリフロロメチルヘキシルエス
テル19.64g(38.2ミリモル)、5%パラジウ
ム/炭素3.0gおよびテトラヒドロフラン100gの
混合物中に室温、常圧攪拌下に水素を14時間吹き込ん
だ。反応混合物を濾過助剤であるセライトを用いて濾過
し、さらに得られた濾液を濃縮し、白色固体である4-
(4'-ヒドロキシフェニルカルボニル)安息香酸R-1'-ト
リフロロメチルヘキシルエステル16.29g(38.
2ミリモル)を得た。
【0166】第6段階 第1段階で得られた5,6,7,8-テトラヒドロ-6-n-デシル
オキシナフタレン-2-カルボン酸、0.332g(1.
0ミリモル)、第5段階で得られた4-(4'-ヒドロキシ
ベンゾイルオキシ)安息香酸R-1'-トリフロロメチルヘ
キシルエステル0.424g(1.0ミリモル)、4-N,
N-ジメチルアミノピリジン0.012g(0.1ミリモ
ル)および塩化メチレン25mlの混合物に、N,N'-ジシ
クロヘキシルカルボジイミド0.247(1.2ミリモ
ル)を含む塩化メチレン溶液10mlを室温、攪拌下に
2.5時間かけて滴下した。さらに室温下で2時間反応
させた。反応混合物を濾過し、得られた濾液を濃縮し
た。濃縮物をカラムクロマトグラフィーを用いて分離す
ることにより、白色固体0.23gを得た。
【0167】この白色固体のFD−マススペクトルの値
はM/e=738であった。図1にこの化合物の1H−
NMRスペクトルのチャートを示す。これらの分析の結
果より、この化合物は目的とする4-[4'-(5",6",7",8"
-テトラヒドロ-6"-n-デシルオキシ-2"-ナフトイルオキ
シ)ベンゾイルオキシ]安息香酸R-1'''-トリフロロメ
チルヘプチルエステルであると同定した。
【0168】
【実施例2】 4-(5',6',7',8'-テトラヒドロ-6'-n-デシルオキシ-2'-
ナフトイルオキシ)安息香酸R-1"-トリフロロメチルヘ
プチルエステルの合成第1段階 実施例1の第1段階で得られた5,6,7,8-テトラヒドロ-6
-n-デシルオキシナフタレン-2-カルボン酸0.332
(1.0ミリモル)、実施例1の第3段階で得られた4-
ヒドロキシ安息香酸R-1'-トリフロロメチルヘキシルエ
ステル0.304g(1.0ミリモル)、4-N,N-ジメチ
ルアミノピリジン0.012g(0.1ミリモル)およ
び塩化チメレン25mlの混合物に、N,N'-ジシクロヘキ
シルカルボジイミド0.247(1.2ミリモル)を含
む塩化メチレン溶液10mlを室温、攪拌下に1.5時間
かけて滴下し、反応させた。反応混合物を濾過し、得ら
れた濾液を濃縮した。濃縮物をカラムクロマトグラフィ
ーを用いて分離することにより、白色固体0.30gを
得た。
【0169】この白色固体のFD−マススペクトルの値
はM/e=618であった。図2にこの化合物の1H−
NMRスペクトルのチャートを示す。これらの分析の結
果より、この化合物は目的とする4-(5',6',7',8'-テト
ラヒドロ-6'-n-デシルオキシ-2'-ナフトイルオキシ)安
息香酸R-1''-トリフロロメチルヘプチルエステルである
と同定した。
【0170】
【実施例3】実施例1で得られた次式[4]で表わされ
る例示化合物[4]と次式[B]で表わされる化合物と
を74:26の重量比で混合して本発明の液晶組成物を
製造した。
【0171】
【化27】
【0172】・・・[4]
【0173】
【化28】
【0174】・・・[B] この組成物の相転移温度を測定した。結果を表9に示
す。
【0175】さらに例示化合物[4]および上記式
[B]で表わされる化合物の相転移温度も表9に併せて
記載する。
【0176】
【表9】
【0177】 表9 ─────────────────────────────── 相 転 移 温 度 化合物または組成物 ──────────────── Cry-SmCA * SmCA *-SmA SmA-Iso ─────────────────────────────── [4] 47 64 79 [4]74重量%+[B]26重量% 33 72 84 [B] 44 78 94 ─────────────────────────────── <註> 上記表中、[4]は
【0178】
【化29】
【0179】を表わしている。また[B]は、
【0180】
【化30】
【0181】を表わしている。
【0182】
【実施例4】上記のようにして得られた液晶組成物を図
3に示すセルに充填し、液晶素子を製造した。
【0183】このようにして得られた液晶素子は、使用
温度範囲が33℃から84℃までであり、しかもこの温
度範囲においてコントラストが安定していた。なお、こ
の液晶素子は以下のようにして製造した。
【0184】すなわち、図3に液晶素子の概略断面図を
示すように、ITO透明電極基板(ITO:Indium T
in Oxide)の内面に配向制御方向が略平行で、かつ同
一方向となるように2枚のラビングしたポリイミド(日
本合成ゴム(株)製オプトマーAL1251)からなる配向制
御膜(厚さ:150オングストローム)が形成されてい
るセルに、表9で表わされる液晶組成物(化合物[4]
+化合物[B])を溶融し、セルの間隙を減圧状態にし
て注入した。
【0185】このようにして液晶物質を充填したセルを
90℃まで加熱し、90℃で5分間保持した後、1℃/
分の速度で40℃まで冷却して液晶素子を製造した。得
られた液晶素子のコントラストを測定したところ30で
あった。
【0186】セル条件(イ)外形寸法;たて2.5cm×
横2.2cm×厚さ1.5mm (ロ)基板;厚さ0.7mm、基板材質(ガラス) (ハ)基板間距離;2μm (ニ)側壁寸法;たて1.8mm×横0.1cm×厚さ2μ
m 液晶の評価用に用いる上記のセルは以下の方法で作製し
た。
【0187】ITO透明電極膜付のガラス基板上にポリ
イミド塗布を行った。すなわちポリイミド(日本合成ゴ
ム(株)製、オプトマーAL1251)をスピンコート法によ
ってITO透明電極の上に塗布した。
【0188】ポリイミドは4000rpmでスピンコー
トした。これを180℃で1時間加熱し、硬化させたと
ころ300〜400オングストロームの膜厚のポリイミ
ド膜が作製できた。この後、ポリイミド膜をナイロン布
で一方向に擦ることにより液晶配向性を与えた。
【0189】このようにして作製したポリイミド膜塗布
済みガラス基板を二枚重ね合わせて評価用セルを作製し
た。まず、ポリイミド膜を塗布したガラス基板の上に、
二枚の基板の接着とセルギャップを制御するためにエポ
キシ系接着剤をシルク印刷により塗布した。
【0190】エポキシ接着剤は接着主剤(EHC(株)
製、LCB-304B)、硬化剤(EHC(株)製、LCB-310B)
とセルギャップ制御のためのビーズ(EHC(株)製、
GP-20)を130:30:3に混合して用いた。
【0191】二枚のガラス基板のうち一枚にはエポキシ
系接着剤を塗布し、互いにポリイミド膜が向かい合うよ
うに貼り合わせた。これを以下の硬化条件にしたがって
硬化させた。
【0192】すなわち50℃−15分間、60℃−15
分間、70℃−15分間、80℃−15分間、125℃
−30分間、170℃−60分間である。このように作
成したセルギャップ約2μmの評価用セルを用いて液晶
を評価した。
【0193】なお、本発明においてコントラストの測定
に際しては、直交する偏光子の間に液晶素子を置き、こ
の液晶素子を回転して得られる明時および暗時の透過光
強度を測定して、I(明時)/I(暗時)の比を算出
し、求めた。
【0194】
【実施例5】図3に液晶素子の概略断面図を示すよう
に、ITO透明電極基板(ITO:Indium Tin Oxid
e)の内面に配向制御方向が略平行で、かつ同一方向と
なるように2枚のラビングしたポリイミド(日本合成ゴ
ム(株)製オプトマーAL1251)からなる配向制御膜(厚
さ:150オングストローム)が形成されているセル
に、上記表9記載の式[4]で表わされるカルボン酸エ
ステル化合物[4]を溶融し、セルの間隙を減圧状態に
して注入した。
【0195】このようにして液晶物質を充填したセルを
90℃まで加熱し、90℃で5分間保持した後、1℃/
分の速度で50℃まで冷却して液晶素子を製造した。得
られた液晶素子のコントラストを測定したところ25で
あった。
【0196】セル条件(イ)外形寸法;たて2.5cm×
横2.2cm×厚さ1.5mm (ロ)基板;厚さ0.7mm、基板材質(ガラス) (ハ)基板間距離;2μm (ニ)側壁寸法;たて1.8mm×横0.1cm×厚さ2μ
m 液晶の評価用に用いる上記のセルは以下の方法で作製し
た。
【0197】ITO透明電極膜付のガラス基板上にポリ
イミド塗布を行った。すなわちポリイミド(日本合成ゴ
ム(株)製、オプトマーAL1251)をスピンコート法によ
ってITO透明電極の上に塗布した。
【0198】ポリイミドは4000rpmでスピンコー
トした。これを180℃で1時間加熱し、硬化させたと
ころ300〜400オングストロームの膜厚のポリイミ
ド膜が作製できた。この後、ポリイミド膜をナイロン布
で一方向に擦ることにより液晶配向性を与えた。
【0199】このようにして作製したポリイミド膜塗布
済みガラス基板を二枚重ね合わせて評価用セルを作製し
た。まず、ポリイミド膜を塗布したガラス基板の上に、
二枚の基板の接着とセルギャップを制御するためにエポ
キシ系接着剤をシルク印刷により塗布した。
【0200】エポキシ接着剤は接着主剤(EHC(株)
製、LCB-304B)、硬化剤(EHC(株)製、LCB-310B)
とセルギャップ制御のためのビーズ(EHC(株)製、
GP-20)を130:30:3に混合して用いた。
【0201】二枚のガラス基板のうち一枚にはエポキシ
系接着剤を塗布し、互いにポリイミド膜が向かい合うよ
うに貼り合わせた。これを以下の硬化条件にしたがって
硬化させた。
【0202】すなわち50℃−15分間、60℃−15
分間、70℃−15分間、80℃−15分間、125℃
−30分間、170℃−60分間である。このように作
成したセルギャップ約2μmの評価用セルを用いて液晶
を評価した。
【0203】なお、本発明においてコントラストの測定
に際しては、直交する偏光子の間に液晶素子を置き、こ
の液晶素子を回転して得られる明時および暗時の透過光
強度を測定して、I(明時)/I(暗時)の比を算出
し、求めた。
【0204】
【実施例6】実施例4と同様に、液晶素子を製造した。
ただし、ポリイミドからなる配向制御膜の配向制御方向
は、略平行で逆方向となるように製造した。得られた液
晶素子のコントラストを測定したところ、28であっ
た。
【0205】
【実施例7】実施例4と同様に、液晶素子を製造した。
ただし、一方の基板は、ITO透明電極膜付のガラス基
板上に酸化ケイ素の斜方蒸着膜を作製した。
【0206】斜方蒸着膜はSiO2を400℃に加熱し
て、基板を水平面から30度傾けてその直上方向から、
蒸着を行った。このときの斜方蒸着膜の配向制御方向
と、ポリイミドからなる配向制御膜の配向方向は互いに
略平行で、逆方向となるよう製造した。
【0207】得られた液晶素子のコントラストを測定し
たところ、30であった。
【0208】
【実施例8】実施例4において、冷却速度を0.1℃/
分に変えた以外は、実施例4と同様にして液晶素子を製
造した。
【0209】この液晶素子のコントラストは41であっ
た。
【0210】
【比較例】実施例4において、冷却速度を10℃/分に
変えた以外は、実施例4と同様にして液晶素子を製造し
た。
【0211】この液晶素子のコントラストは16であ
り、降温速度が高いためコントラストが幾分低下する傾
向がみられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、4-[4'-(5",6",7",8"-テトラヒド
ロ-6"-n-デシルオキシ-2"-ナフトイルオキシ)ベンゾイ
ルオキシ]安息香酸R-1'''-トリフロロメチルヘプチル
エステルの1H−NMRスペクトルのチャートである。
【図2】 図2は、4-(5',6',7',8'-テトラヒドロ-6'-
n-デシルオキシ-2'-ナフトイルオキシ)安息香酸R-1''-
トリフロロメチルヘプチルエステルの1H−NMRスペ
クトルのチャートである。
【図3】 図3は、本発明の液晶素子の断面を概略的に
示す図である。
【図4】 図4は、本発明の液晶素子の断面を概略的に
示す図である。
【符号の説明】
31a、31b・・・透明基板(例えばガラス、ポリカー
ボネート等の透明プラスチック) 32a、32b・・・透明電極 33・・・セル 34・・・セルの間隙 35・・・液晶物質 36・・・シール材 37a、37b・・・配向制御膜 38・・・スペーサー
フロントページの続き (72)発明者 山 中 徹 千葉県君津郡袖ケ浦町長浦字拓二号580番 32 三井石油化学工業株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 対向する2枚の基板を含んで形成される
    セルの間隙に液晶物質が充填されてなる液晶素子におい
    て、該液晶物質が、次式[A]で表わされる少なくとも
    一種類のカルボン酸エステル化合物を含む液晶組成物で
    あることを特徴とする液晶素子。 【化1】 ・・・[A] [ただし、式[A]において、Rは、炭素数3〜20の
    アルキル基、炭素数3〜20のアルコキシ基および炭素
    数3〜20のハロゲン化アルキル基よりなる群から選ば
    れる1種の基であり、 XおよびYは、それぞれ独立に、−COO−、−OCO
    −、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−S
    −S−、−CO−CH2−および−CH2−CO−よりな
    る群から選ばれる基または単結合を表わし、 AおよびBは、それぞれ独立に、 【化2】 よりなる群から選ばれる基または単結合を表わし、 R*は、不斉炭素を少なくとも1個有する炭素数4〜2
    0の光学活性基(該光学活性基の炭素原子に結合した水
    素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい)を表わ
    し、 mおよびnは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表わす
    (ただし、mおよびnの両者が同時に0になることはな
    い)]。
  2. 【請求項2】 対向する2枚の基板を含んで形成される
    セルの間隙に液晶物質が充填されてなる液晶素子におい
    て、少なくとも一方の基板の内面に配向制御膜が設けら
    れていることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
  3. 【請求項3】 上記配向制御膜が、配向処理された配向
    制御膜であることを特徴とする請求項2記載の液晶素
    子。
  4. 【請求項4】 上記液晶物質が、上記式[A]におい
    て、XおよびYは、それぞれ独立に、−COO−、−O
    CO−、−CH2CH2−、−CH2O−および−OCH2
    −よりなる群から選ばれる基であるカルボン酸エステル
    化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし請求
    項3のいずれかに記載の液晶素子。
  5. 【請求項5】 上記液晶物質が、上記式[A]におい
    て、R*で表わされる光学活性基が、−(CH23ーC*
    H(CH3)-C25、−CH2ーC*H(CH3)-C
    25、−C*H(CH3)-C613、−C*H(CH3)-
    511、−C*H(C25)-C613、−C*H(C
    3)-C613、および−C*H(CF3)ーCH2ーCOO
    -C25よりなる群から選ばれる基であるカルボン酸エ
    ステル化合物を含有することを特徴とする請求項1ない
    し請求項3のいずれかに記載の液晶素子。
  6. 【請求項6】 上記液晶物質が、上記式[A]におい
    て、 【化3】 mは、1または2の整数であり、nは0であるカルボン
    酸エステル化合物を含有することを特徴とする請求項1
    ないし請求項3のいずれかに記載の液晶素子。
  7. 【請求項7】 上記液晶物質が、上記式[A]で表わさ
    れるカルボン酸エステル化合物を、1〜99重量%含ん
    だ液晶組成物であることを特徴とする請求項1ないし請
    求項3のいずれに記載の液晶素子。
  8. 【請求項8】 対向する2枚の基板を含んで形成される
    セルの間隙に液晶物質が充填されてなる液晶素子を製造
    するに際して、少なくとも一方の基板の内面に配向制御
    膜を設けてセルを形成し、このセルの間隙に、上記式
    [A]で表わされるカルボン酸エステル化合物を含む液
    晶物質を充填し、セル中に含まれる液晶物質が等方相を
    示す温度以上に加熱した後、該液晶物質が液晶を示す温
    度以下に冷却することを特徴とする液晶素子の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 上記セルを、該液晶物質が等方相を示す
    温度以上の温度から2℃/分以下の降温速度で液晶を示
    す温度以下の温度に冷却することを特徴とする請求項8
    記載の液晶素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 上記配向制御膜が、配向処理された配向
    制御膜であることを特徴とする請求項8または請求項9
    記載の液晶素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし請求項7のいずれに記載
    の液晶素子を用いた表示用素子。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし請求項7のいずれに記載
    の液晶素子を用いた液晶表示装置。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし請求項7のいずれに記載
    の液晶素子を用いた電気光学表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001302592A (ja) * 2000-04-24 2001-10-31 Mitsui Chemicals Inc フェニルアセチレン化合物、液晶材料、液晶組成物、および液晶素子

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JP2001302592A (ja) * 2000-04-24 2001-10-31 Mitsui Chemicals Inc フェニルアセチレン化合物、液晶材料、液晶組成物、および液晶素子

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