JPH059716A - 薄膜形成装置 - Google Patents

薄膜形成装置

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JPH059716A
JPH059716A JP16563891A JP16563891A JPH059716A JP H059716 A JPH059716 A JP H059716A JP 16563891 A JP16563891 A JP 16563891A JP 16563891 A JP16563891 A JP 16563891A JP H059716 A JPH059716 A JP H059716A
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JP
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grid
filament
thin film
vacuum chamber
evaporation source
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JP16563891A
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English (en)
Inventor
Tatsuya Sato
達哉 佐藤
Wasaburo Ota
和三郎 太田
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】耐熱性のない基板等にも緻密で密着性の良い薄
膜を形成でき、且つグリッドやフィラメントを真空槽内
を大気に晒すことなく交換可能とし、厚膜や絶縁膜の形
成をも容易に可能とする薄膜形成装置を提供する。 【構成】本装置は、活性ガス及び/又は不活性ガスが導
入される真空槽1'と、真空槽内において蒸発物質を蒸
発させるための蒸発源4と、真空槽内に配置され基板1
3を蒸発源に対向するように保持する対電極12と、蒸
発源と対電極との間に配備され蒸発物質を通過させうる
グリッド10と、グリッドと蒸発源との間に配置された
熱電子発生用のフィラメント8と、グリッドの電位を対
電極の電位とフィラメントの電位に対し正電位とする手
段18を有し、且つ真空槽内を大気に晒すことなくグリ
ッド(及び/又はフィラメント)を交換可能とする交換
機構43,44を有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薄膜形成装置に関し、特
に、CVD法の長所である強い反応性と、PVD法の長
所である高真空中での成膜(緻密で強い膜が形成でき
る)とを同時に実現しうる新規な薄膜形成装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、被薄膜形成基板(以下、基板と称
する)上に薄膜を形成する薄膜形成装置としては、CV
D法やPVD法などを利用したものが良く知られてお
り、CVD法による装置は反応性が強く、PVD法によ
る装置は高真空中において緻密な強い薄膜を形成できる
などの長所を有している。これら、CVD法やPVD法
などを利用した薄膜形成装置としては従来より種々のも
のが提案されており、その方法も極めて多岐にわたって
いる。例えば、従来より、蒸発源と被蒸着物との間に高
周波電磁界を発生させて、活性あるいは不活性ガス中で
蒸発した物質をイオン化して真空蒸着を行う、所謂、イ
オンプレーティング法や、蒸発源と被蒸着物との間に直
流電圧を印加するDCイオンプレーティング法等が知ら
れている(特公昭52−29971号、特公昭52−2
9091号等)。しかし、これら従来の薄膜形成装置に
あっては、形成された膜の基板との密着性が弱かった
り、あるいは、耐熱性の弱いプラスチックフィルム等の
基板への膜形成が困難である、あるいは形成された薄膜
の特性が不均一であるなどの問題があった。
【0003】そこでこれらの問題を解決するため、本出
願人は先に薄膜形成装置として、蒸発源と蒸発源に対向
させて基板を保持させる対電極との間にグリッドを配
し、蒸発源とグリッドとの間に熱電子発生用のフィラメ
ントを配し、上記グリッドをフィラメントに対して正電
位にして薄膜形成を行なう装置を提案した(特公平1−
53351号)。この薄膜形成装置では、蒸発源から蒸
発した蒸発物質は、先ずフィラメントからの熱電子によ
りイオン化され、このようにイオン化された蒸発物質が
グリッドを通過すると、グリッドから対電極に向かう電
界の作用により加速されて基板に衝突し、基板上に密着
性の良い薄膜が形成されるという特徴を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記薄膜形成
装置においては、グリッド上への蒸発粒子の付着による
被膜の形成や熱電子発生用のフィラメントの消耗により
成膜時間が限られ、厚膜を作製する場合には、一旦真空
槽内を大気に晒してグリッド及びフィラメントの交換を
行なう必要があり、連続成膜を行なえず、純度の高い膜
を形成することが困難であった。また、作製した厚膜に
ついても安定した特性を得ることが困難であった。ま
た、絶縁膜を作製する場合には、グリッドに絶縁性の被
膜が形成され、安定した放電を行なうことが困難となる
問題があった。本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
であって、基板に対して極めて強い密着性をもった薄膜
を形成でき、且つ、耐熱性のないプラスチックフィルム
などをも基板として用いうることができ、さらには、厚
膜作製時のような長時間の連続成膜や、絶縁膜の作製等
にも有効な新規な薄膜形成装置を提供することを目的と
する。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の薄膜形成装置は、活性ガスもしくは
不活性ガスあるいはこれら両者の混合ガスが導入される
真空槽と、この真空槽内において蒸発物質を蒸発させる
ための蒸発源と、上記真空槽内に配置され基板を上記蒸
発源に対向するように保持する対電極と、上記蒸発源と
対電極との間に配備された屈曲可能な材質で形成された
蒸発物質を通過させうるグリッドと、上記グリッドと上
記蒸発源との間に配置された熱電子発生用のフィラメン
トと、上記グリッドの電位を上記対電極の電位と上記フ
ィラメントの電位に対し正電位とする手段を有し、且つ
真空槽内を大気に晒すことなく上記グリッドを交換する
ことを可能とする交換機構を有することを特徴とする。
【0006】また、請求項2記載の薄膜形成装置は、活
性ガスもしくは不活性ガスあるいはこれら両者の混合ガ
スが導入される真空槽と、この真空槽内において蒸発物
質を蒸発させるための蒸発源と、上記真空槽内に配置さ
れ基板を上記蒸発源に対向するように保持する対電極
と、上記蒸発源と対電極との間に配備された蒸発物質を
通過させうるグリッドと、上記グリッドと上記蒸発源と
の間に配置された屈曲可能な導電性の材質に保持された
平行配列の熱電子発生用のフィラメントと、上記グリッ
ドの電位を上記対電極の電位と上記フィラメントの電位
に対し正電位とする手段を有し、且つ真空槽内を大気に
晒すことなく上記フィラメントを交換することを可能と
する交換機構を有することを特徴とする。
【0007】また、請求項3記載の薄膜形成装置は、請
求項1及び請求項2記載の薄膜形成装置において、上記
交換機構を構成する領域に蒸発物質が到達しないような
遮蔽板を有することを特徴とする。
【0008】
【作用】以下、本発明の構成及び作用について詳細に説
明する。請求項1の発明による薄膜形成装置は、真空槽
と、対電極と、グリッドと、熱電子発生用のフィラメン
トと、蒸発源(単数または複数)と、グリッドと対電極
及びフィラメントの間を所定の電位関係とする電源手段
を有する。真空槽内には、活性ガスもしくは不活性ガス
あるいはこれら両者の混合ガスが導入される。対電極は
真空槽内に配備され、被蒸着基板を蒸発源と対向させる
ように適宜の方法により保持している。グリッドは屈曲
可能な材質で形成され、蒸発物質を通過させうるもので
あって、蒸発源と対電極の間に配備され、電源手段によ
り対電極及びフィラメントの電位に対して正電位にされ
る。熱電子発生用のフィラメントは、真空槽内の、グリ
ッドと蒸発源との間に配備され、このフィラメントによ
り発生する熱電子は、蒸発物質の一部をイオン化するの
に供される。上記蒸発源からの蒸発物質は、その一部
が、フィラメントからの電子により正イオンにイオン化
される。このように一部イオン化された蒸発物質は、グ
リッドを通過し、更に、イオン化されたガスにより正イ
オン化を促進され、グリッド−基板間の電界の作用によ
り基板の方へと加速され、基板に衝突付着する。
【0009】尚、フィラメントからの電子は、フィラメ
ント温度に対応する運動エネルギーを持ってフィラメン
トから放射されるので、正電位のグリッドに直ちに吸引
されずに、これを通過し、グリッドによるクーロン力に
より引き戻され、更に、グリッドを通過し、と言うよう
に、グリッドを中心として振動運動を繰返し、遂にはグ
リッドに吸収されるので、基板へは達せず、基板は電子
衝撃を受けないので、それによる加熱がなく基板の温度
上昇が防止でき、プラスチックのような耐熱性のない材
質のものでも基板とすることができる。また、真空槽内
を大気に晒すことなく上記グリッドを交換することを可
能とするグリッドの交換機構は、公知の回転導入機ある
いは直線導入機、あるいはこれらの組合せで構成され、
グリッドの送り出し−収納機構で交換するものである。
このように、請求項1の発明による装置では、グリッド
の交換機構を備えたことにより、グリッド上への蒸発粒
子の付着による被膜の形成によって困難であった絶縁膜
作製が、グリッドを交換させることにより可能となる。
【0010】次に、請求項2の発明による薄膜形成装置
は、真空槽内を大気に晒すことなくフィラメントを交換
することを可能とするフィラメントの交換機構を設けた
ものであり、活性ガス中での通電加熱によるフィラメン
トの消耗や、Alなど、フィラメントを構成している材
質を侵す作用のある材料を蒸発材料に用いたときのフィ
ラメントの消耗が問題となる場合にも適宜新しいフィラ
メントに交換可能であり、厚膜作製等の長時間の成膜が
必要な場合にも有効である。
【0011】次に、請求項3の発明による薄膜形成装置
は、上記請求項1及び請求項2記載の薄膜形成装置にお
いて、上記交換機構を構成する領域に蒸発物質が到達し
ないような遮蔽板を有する構成のため、交換機構を構成
している治具が、蒸発粒子の付着やプラズマ衝撃を受け
ることがないため、上記交換機構を構成している治具及
び新しくグリッド及びフィラメントとして送られてくる
材料の汚染を防ぐことができる。また、薄膜の交換機構
を構成している治具材料による汚染を防ぐことができ
る。さらに、放電が治具の形状に影響されず、安定した
放電を行なうことが可能である。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
て説明する。図1は請求項1の発明の一実施例を示す薄
膜形成装置の概略構成図である。図1において、ベース
プレート1とベルジャー2とはパッキング21を介して
一体化され真空槽1’を形成している。ここで、ベース
プレート1の中央部には孔1Aが形成されているが、こ
の孔1Aは図示しない真空排気系に連結され、真空槽内
の気密性を維持している。そしてこのような真空槽内に
は、上方から下方に向けて順に対電極12と、グリッド
10と、フィラメント8と、蒸発源4が適宜間隔をあけ
て配設されている。また、これらの構成部材は各々支持
体を兼用する電極11,9,7,3により水平状態に保
持されている。これらの電極11,9,7,3は何れも
ベースプレート1との電気的な絶縁性を保つ状態でベー
スプレート1を貫通して真空槽外部に引き出されてい
る。すなわちこれらの電極11,9,7,3は真空槽の
内外の電気的な接続・給電を行なうもので、その他の配
線具と共に導電手段となりうるものである。尚、これら
の電極11,9,7,3のベースプレート1の貫通部に
おいては気密性が確保されている。
【0013】ここで、上記電極の内、一対の電極3によ
り支持された蒸発源4は蒸発物質を蒸発させるためのも
のであり、例えばタングステン、モリブデンなどの金属
をコイル状に形成してなる抵抗加熱式として構成されて
いる。もっともコイル状に替えて、ボート状に形成した
ものでもよい。更には、このような蒸発源に替えて電子
ビーム蒸発源など、従来の真空蒸着方式で用いられてい
る蒸発源を適宜使用することができる。一方、一対の電
極7の間には、タングステンなどによる熱電子発生用の
フィラメント8が支持されている。このフィラメント8
の形状は、複数本のフィラメント線を平行に配列した
り、あるいは網目状にしたりするなどして、蒸発源から
蒸発した蒸発物質の粒子の広がりをカバーするように定
められている。支持体兼用電極9には、グリッド10が
支持されており、このグリッド10は、蒸発物質を通過
させうる形状にその形状が定められているが、この例で
は網目状である。また、電極11に支持された対電極1
2には、上記蒸発源4に対向する面(図では下面)側に
位置させて、薄膜を形成すべき基板13が適宜の方法に
より保持されている。この状態を蒸発源4の側から見れ
ば、基板13の背後に対電極12が配備されることにな
る。
【0014】さて、支持体兼用電極3,7,9,11は
導電体であって電極としての役割を兼ねており、それら
の真空槽外へ突出した端部間は図示のように種々の電源
に接続されている。先ず、蒸発源4は一対の電極3を介
して蒸発用電源17に接続されている。次に、直流電源
18が設けられ、この直流電源18の正極側は電極9を
介してグリッド10に接続され、直流電源18の負極側
は電極11を介して対電極12に接続されている。すな
わち、グリッド10の電位は対電極12の電位に対して
正電位となるように設定されている。これにより、グリ
ッド10と対電極12間の電界はグリッド10側から対
電極12側へと向かうものとなる。尚、電極9により支
持されたグリッド10は蒸発物質を通過させうる形状、
例えば網目状に形成されている。また、フィラメント8
は一対の電極7を介して直流電源19の両端に接続され
ている。尚、図中の接地は必ずしも必要ではない。ま
た、実際には、これらの電気的接続には種々のスイッチ
類を含み、これらの操作により成膜プロセスを実現する
のであるが、これらスイッチ類は図中に示されていな
い。
【0015】真空槽内には、真空槽内を大気に晒すこと
なく上記グリッド10を交換することを可能とする交換
機構43が設けられており、図示の例では、交換機構4
3は、動力伝達用のギヤ40とこのギヤ40と連結され
手動やモータ等により回転される回転軸41及びその軸
受42等によって構成される回転導入機44を介して動
力を伝達され、グリッド10を巻出し−巻取りするもの
である。図2はグリッドの交換機構の具体的な構成例を
示すものであるが、ここで、交換機構43を構成する棒
状支持体43a,43b,43c,43dは絶縁物質で
形成されており、上記回転導入機44との電気的絶縁を
維持できる構成となっている。ここで、棒状支持体43
a,43cは回転導入機からの動力を受け取る部分であ
るが、これらはそれぞれ異なる回転導入機からの動力を
受け取っても良いし、同一の回転導入機からの動力を受
けとってグリッド10を巻取り交換させてもよい。尚、
グリッド10の交換は成膜状況に応じて断続的に行なっ
てもよいし、成膜中に一定速度でグリッド10を送って
もよい。この際、グリッド10には平面性を保つために
十分な張力が与えられるものとする。また、棒状支持体
43b,43dはグリッド面に対して同一面内にはな
く、グリッド10を上方あるいは下方に引っ張る力を与
えており、グリッド10を電極9に常に接触させている
ものとする。従って、グリッド10は電極9に摺接した
状態で回転導入機44及び交換機構43によって図中の
矢印方向に移動され、容易に交換可能となる。
【0016】次に、図3は請求項2の発明の一実施例を
示す薄膜形成装置の概略構成図であり、請求項2の発明
である、真空槽内を大気に晒すことなくフィラメント8
を交換可能とするフィラメント8の交換機構を有する薄
膜形成装置の例を示したものであるが、図1と同符号を
付したものは同様の構成部材であり、既に説明済である
からそれらの説明は省略する。図3において、交換機構
53は、動力伝達用のギヤ50とこのギヤ50と連結さ
れ手動やモータ等により回転される回転軸51及びその
軸受52等によって構成される回転導入機55を介して
動力を伝達され、フィラメント8を巻出し−巻取りする
ものである。
【0017】ここで、図4は上記フィラメントの交換機
構の具体的な構成例を示したものである。フィラメント
8を構成する線は平行に配列され、保持用治具にスポッ
ト溶接等の方法で取り付けられている。この保持用治具
はステンレスシートなどの屈曲可能な導電性材料54を
絶縁性材料56で成膜時に必要な領域のみに通電加熱を
行なえるように例えば図5あるいは図6の如く一定間隔
で連結区分したものである。従って、電極7に接触して
いる部分だけが通電加熱され、フィラメント全体が通電
加熱されてしまうことがない。ここで、交換機構の棒状
支持体53a,53b,53c,53dは絶縁物質で形
成されており上記回転導入機55との電気的絶縁を維持
できる構成となっている。また、棒状支持体53a,5
3cは回転導入機からの動力を受け取る部分であるが、
それぞれ異なる回転導入機からの動力を受け取っても良
いし、同一の回転導入機からの動力を受けとってフィラ
メント8を交換させてもよい。尚、フィラメント8の交
換は成膜状況に応じて断続的に行なってもよいし、図4
の構成を用いて成膜中に一定速度でフィラメント8を送
ってもよい。この際、保持用治具にはフィラメント8の
平面性を保ために十分な張力が与えられるものとする。
また、棒状支持体53b,53dはフィラメント面に対
して同一面内にはなく、保持用治具を上方あるいは下方
に引っ張る力を与えており、フィラメント8を電極7に
常に接触させているものとする。従って、フィラメント
8は保持用治具を介して電極7と電気的に接触した状態
で回転導入機55及び移動機構53によって図中の矢印
方向に移動され、容易に交換可能となる。
【0018】次に、図7、図8は請求項3の発明の実施
例を夫々示す薄膜形成装置の概略構成図である。尚、図
7、図8において、図1、図3と同符号を付したものは
同様の構成部材であり、既に説明済であるからそれらの
説明は省略する。ここで、図7に示す薄膜形成装置で
は、グリッドの交換機構43を構成する領域に蒸発物質
が到達しないような遮蔽板60を有することを特徴とす
るものであり、また、図6はグリッド10及びフィラメ
ント8の交換機構43,53に蒸発物質が到達しないよ
うな遮蔽板60を有することを特徴とするものである。
図7、図8の構成によれば、遮蔽板60により、前記交
換機構43、53を構成している治具が、蒸発粒子の付
着やプラズマ衝撃を受けることがないため、交換機構を
構成している治具及び新しくグリッド10及びフィラメ
ント8として送られてくる材料の汚染を防ぐことができ
る。さらに、放電が治具の形状に影響されず安定した放
電を行なうことが可能である。
【0019】以上、各請求項に対応した薄膜形成装置の
実施例について説明したが、次に、これらの装置例によ
る薄膜形成例として、図1の薄膜形成装置による薄膜形
成について説明する。図1において、先ず、図示の如く
薄膜を形成すべき基板13を対電極12に保持させると
共に、蒸発物質を蒸発源4に保持させる。尚、蒸発物質
を構成する母材、及び導入ガス種の組合せは、勿論どの
ような薄膜を形成するかに応じて定める。例えば、Al
23薄膜を形成する場合には、蒸発物質としてAlを、
不活性ガスとしてArを、活性ガスとして酸素を選択で
きる。また、In23薄膜を形成する場合には、蒸発物
質としてIn、導入ガスとして酸素を選択することがで
きる。基板13及び蒸発物質をセットした後、真空槽内
は予め1/105〜1/106Torr の圧力に真空排気さ
れ、これに必要に応じて、活性ガス、もしくは不活性ガ
ス、あるいは、これら両者の混合ガスが1/102〜1
/104 Torrの圧力で導入される。ここでは、説明の
具体性のため、導入ガスは、例えば酸素などの活性ガス
であるとする。
【0020】この状態において、電源を作動させると、
フィラメント8には電流が流され、フィラメント8は抵
抗加熱により加熱され、熱電子を放射する。また、グリ
ッド10には正の電位が印加される。また、蒸発源4か
らは蒸発物質が蒸発される。蒸発源4から蒸発された蒸
発物質は広がりをもって基板13の側へ向かって飛行す
るが、その一部、及び前記導入ガスはフィラメント8よ
り放出された熱電子との衝突によって外殻電子が弾きだ
され、正イオンにイオン化される。このように、一部イ
オン化された蒸発物質はグリッド10を通過するが、そ
の際、前記のように、グリッド10の近傍において上下
に振動運動する熱電子、及び前記イオン化された導入ガ
スの衝突により、さらにイオン化率が高められる。
【0021】このようにして、正イオンにイオン化され
た蒸発物質は、グリッド10を通過し、更に、イオン化
されたガスにより正イオン化を促進され、グリッド−基
板間の電界の作用により基板13に向かって加速され、
基板13に高エネルギーを持って衝突付着する。この
際、酸素ガスも活性化されているので、非常に密着性の
よい酸化薄膜が形成される。尚、フィラメント8から放
出された熱電子は、最終的にはその大部分がグリッド1
0に吸収され、一部の熱電子はグリッド10を通過する
が、グリッド10と基板13との間で、前記電界の作用
によって減速されるので、仮に基板13に到達しても、
同基板13を加熱するには到らない。また、グリッド1
0は前述した交換機構43により真空槽内を大気に晒さ
ずに交換可能であり、このグリッド10の交換は、成膜
状況に応じて断続的に行なってもよいし、成膜中に一定
速度でグリッド10を送ってもよい。尚、図1の場合で
は、交換機構は図2に示すような巻出し−巻取り機構で
ある。
【0022】また、請求項2の発明によれば、フィラメ
ント8を図3、図4に示したような交換機構53により
交換させることができるため、活性ガス中での通電加熱
によるフィラメント8の消耗や、Alなどフィラメント
8を構成している材質を侵す作用のある材料を蒸発材料
に用いたときのフィラメント8の消耗が問題となる場合
に、適宜新しいフィラメントに交換可能であり、長時間
の成膜が必要な場合に有効である。また、請求項3の発
明によれば、遮蔽板60を設けたことにより、交換機構
を構成している治具が、蒸発粒子の付着やプラズマ衝撃
を受けることがないため、上記交換機構を構成している
治具及び新しくグリッド10及びフィラメント8として
送られてくる材料の汚染を防ぐことができる。また、薄
膜の交換機構を構成している治具材料による汚染を防ぐ
ことができる。さらに、放電が治具の形状に影響され
ず、安定した放電を行なうことが可能である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の薄膜形成
装置においては、蒸発物質のイオン化率が極めて高いた
め、真空槽内に活性ガスを単独で、あるいは不活性ガス
とともに導入して成膜を行なうことにより、蒸発物質と
活性ガスを化合させ、この化合により化合物薄膜を形成
する場合にも、所望の物性を有する薄膜を容易に得るこ
とができる。また、本発明の薄膜形成装置によれば、蒸
発物質がイオン化し、高いエネルギーを電気的に有する
(電子・イオン温度)ので、反応性を必要とする成膜、
結晶化を必要とする成膜を温度(反応温度、結晶化温
度)という熱エネルギーを与えずに実現できるので低温
成膜が可能となる。従って、耐熱性のないプラスチック
フィルムなどをも基板に使用することができる。
【0024】尚、真空槽内のガスのイオン化には、フィ
ラメントによる熱電子が有効に寄与するので、1/10
4Torr以下の圧力の高真空下においても蒸発物質のイオ
ン化が可能であり、このため、薄膜の構造も極めて緻密
なものとすることが可能であり、通常、薄膜の密度はバ
ルクの密度より小さいとされているが、本発明によれ
ば、バルクの密度に極めて近い密度の薄膜が得られるこ
とも大きな特徴の一つである。さらに、このような高真
空下で成膜を行なえることにより、薄膜中へのガス分子
の取り込みを極めて少なくすることができ、高純度の薄
膜を得ることができる。また、本発明の薄膜形成装置に
おいては、グリッドあるいはフィラメントを真空槽内を
大気に晒すことなく交換することが可能であるため、グ
リッド上への被膜の形成やフィラメントの消耗により成
膜時間が限られてしまうということがなく、厚膜作製の
ように長時間の連続成膜が必要な場合に有効である。あ
るいは絶縁膜のようにグリッドあるいはフィラメントに
付着することにより安定した放電を困難とする薄膜を作
製する場合に有利である。例えば、アクチュエータに用
いる圧電膜のように厚膜を作製することを要求される場
合や、SiO2,Al2のような絶縁膜を作製する場
合に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載の発明の一実施例を示す薄膜形成
装置の概略構成図である。
【図2】グリッド交換機構の一構成例を概略的に示す斜
視図である。
【図3】請求項2記載の発明の一実施例を示す薄膜形成
装置の概略構成図である。
【図4】フィラメント交換機構の一構成例を概略的に示
す斜視図である。
【図5】図4に示すフィラメント交換機構に適用される
フィラメントの保持用治具の一例示す断面図である。
【図6】図4に示すフィラメント交換機構に適用される
フィラメントの保持用治具の別の例を示す断面図であ
る。
【図7】請求項3記載の発明の一実施例を示す薄膜形成
装置の概略構成図である。
【図8】請求項3記載の発明の別の実施例を示す薄膜形
成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 ・・・ベースプレート 1’・・・真空槽 2 ・・・ベルジャー 3,7,9,11・・・支持体兼用電極 4 ・・・蒸発源 8 ・・・フィラメント 10 ・・・グリッド 12 ・・・対電極 13 ・・・基板 17 ・・・蒸発用電源 18 ・・・直流電源 19 ・・・フィラメント用直流電源 21 ・・・パッキング 43 ・・・グリッド交換機構 44 ・・・グリッド交換機構用回転導入機 53 ・・・フィラメント交換機構 55 ・・・フィラメント交換機構用回転導入機 60 ・・・遮蔽板

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】活性ガスもしくは不活性ガスあるいはこれ
    ら両者の混合ガスが導入される真空槽と、この真空槽内
    において蒸発物質を蒸発させるための蒸発源と、上記真
    空槽内に配置され基板を上記蒸発源に対向するように保
    持する対電極と、上記蒸発源と対電極との間に配備され
    た屈曲可能な材質で形成された蒸発物質を通過させうる
    グリッドと、上記グリッドと上記蒸発源との間に配置さ
    れた熱電子発生用のフィラメントと、上記グリッドの電
    位を上記対電極の電位と上記フィラメントの電位に対し
    正電位とする手段を有し、且つ真空槽内を大気に晒すこ
    となく上記グリッドを交換することを可能とする交換機
    構を有することを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 【請求項2】活性ガスもしくは不活性ガスあるいはこれ
    ら両者の混合ガスが導入される真空槽と、この真空槽内
    において蒸発物質を蒸発させるための蒸発源と、上記真
    空槽内に配置され基板を上記蒸発源に対向するように保
    持する対電極と、上記蒸発源と対電極との間に配備され
    た蒸発物質を通過させうるグリッドと、上記グリッドと
    上記蒸発源との間に配置された屈曲可能な導電性の材質
    に保持された平行配列の熱電子発生用のフィラメント
    と、上記グリッドの電位を上記対電極の電位と上記フィ
    ラメントの電位に対し正電位とする手段を有し、且つ真
    空槽内を大気に晒すことなく上記フィラメントを交換す
    ることを可能とする交換機構を有することを特徴とする
    薄膜形成装置。
  3. 【請求項3】請求項1及び請求項2記載の薄膜形成装置
    において、上記交換機構を構成する領域に蒸発物質が到
    達しないような遮蔽板を有することを特徴とする薄膜形
    成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001345177A (ja) * 2000-03-06 2001-12-14 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 薄膜形成装置およびその薄膜形成方法、及び自発光装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001345177A (ja) * 2000-03-06 2001-12-14 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 薄膜形成装置およびその薄膜形成方法、及び自発光装置
JP4574039B2 (ja) * 2000-03-06 2010-11-04 株式会社半導体エネルギー研究所 El表示装置の作製方法

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