JPH0585910A - 抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物 - Google Patents

抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物

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JPH0585910A
JPH0585910A JP3315618A JP31561891A JPH0585910A JP H0585910 A JPH0585910 A JP H0585910A JP 3315618 A JP3315618 A JP 3315618A JP 31561891 A JP31561891 A JP 31561891A JP H0585910 A JPH0585910 A JP H0585910A
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Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 樹脂、繊維、塗料等に練り込んで抗菌・抗カ
ビ性を付与する素材とその製造方法を提供する。 〔構成〕 リン酸亜鉛に、0.1〜5.0重量%の銀も
しくは銅、又は、総量で0.1〜5.0重量%の銀及び
銅を担持させたこと特徴とする抗菌・抗カビ性リン酸亜
鉛化合物、それをメカノケミカル反応により製造する方
法、及び、それを0.05〜50重量%含有する抗菌・
抗カビ性樹脂 〔効果〕 簡単な組成の化合物であるにもかかわらず、
樹脂を殆ど着色させず、また、その後の光による変色も
なく、優れた抗菌・抗カビ性を発揮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人体に対して安全で、
かつ、熱変色や光変色することなく、樹脂、繊維、塗
料、建材等に添加して、抗菌・抗カビ性を付与する抗菌
剤、その製造方法、および、それを含有する抗菌性樹脂
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、微量の銀や銅が、抗菌性や抗カビ
性を有していることは、よく知られている。そして、抗
菌性、抗カビ性を持続させるために、長期にわたり微量
の銀等を溶出させる銀等担持固形物に関しても、多くの
発明がなされてきた。例えば、特開昭62−21009
8号公報には、酸化銀を添加溶融した溶解性ガラスを作
成し、その表面から溶解する微量の銀イオンによって、
貯水槽やプール等の抗菌・抗カビを行うことが開示され
ており、特開平1−213410号公報には、魚網等の
防藻性を高めるために、銀や銅を溶出するガラスを含む
ナイロンやポリエステル等の繊維材料が開示されてい
る。
【0003】また、特公昭63−54013号公報、特
開昭63−260810号公報等には、イオン交換法に
より比表面積の大きいゼオライトに銀等を担持させた殺
菌性ゼオライト組成物を、ナイロン、ポリエステル等に
添加混合して紡糸し、抗菌性繊維をえたことが開示され
ている。
【0004】更に、銀等を担持したゼオライトの問題点
を解決するために種々の発明もなされている。例えば、
特開昭63−265809号公報には、銀担持ゼオライ
トの変色を防止するため、銀イオンの一部をアンモニウ
ムイオンで置換したものが開示され、特開平2−111
709号公報には、銀担持ゼオライトの耐アルカリ性を
改善するために銀等のアンミン錯塩やアミン錯塩を担持
させたものが開示されている。
【0005】一方、ゼオライト以外の母物質について
も、種々の発明がなされている。例えば、特開平1−1
67212号公報には、無定形アルミノケイ酸塩の交換
可能なイオンを抗菌性金属イオンで置換したものが開示
されている。また、特開平1−221304号公報に
は、酸に弱い銀担持ゼオライトに代えて、モンモリロナ
イト等の無機層状化合物の層間のアルカリ金属の一部
を、銀等の錯塩で置換したものが開示されている。更
に、特開平2−96508号公報には、高い酸性度を有
する難溶性リン酸塩や縮合リン酸塩の交換可能な陽イオ
ンを抗菌性金属イオンで置換したものが開示されてい
る。
【0006】更に、本発明者らの一部は、銀等を溶融混
合したガラスにおける銀の溶出が速いという問題点、銀
担持ゼオライトの酸やアルカリに対して弱いという問題
点、銀担持モンモリロナイトの粉砕の困難さの問題点、
及び、銀担持縮合リン酸の調製の困難さの問題点等を解
決するために、特願平2−418277号明細書に開示
したように、マグネシウム、カルシウム、アルミニウ
ム、ストロンチウム、マンガン、ニッケル、銅、及び、
亜鉛からなる群の中から選ばれた2種以上の金属の難溶
性オルトリン酸塩に、0.1〜5.0重量%の銀を担持
させたことを特徴とする抗菌・抗カビ性リン酸複塩に関
する発明を完成した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、混入された樹脂等の着色、光による変色を
防止すると同時に、前述の銀等を溶融混合したガラス、
銀担持ゼオライト、銀担持モンモリロナイト、及び、銀
担持縮合リン酸等の諸問題点を解決し、更に、前述の本
発明者らの一部が発明した抗菌・抗カビ性リン酸複塩よ
り簡単な組成の抗菌・抗カビ性素材を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の課
題を解決するため、リン酸亜鉛に、0.1〜5.0重量
%の銀もしくは銅、又は、総量で0.1〜5.0重量%
の銀及び銅を担持させたことを特徴とする抗菌・抗カビ
性リン酸亜鉛化合物、リン酸化合物と亜鉛化合物とを反
応させ、得られたリン酸亜鉛スラリーに、40℃以下で
可溶性の銀化合物及び銅化合物の一方又はその両方を添
加してメカノケミカル的に反応させて、この抗菌・抗カ
ビ性リン酸亜鉛化合物を製造する方法、及び、この抗菌
・抗カビ性リン酸亜鉛化合物を、0.05〜50重量%
含有することを特徴とする抗菌・抗カビ性樹脂を提供す
る。
【0009】本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛
化合物とは、オルトリン酸亜鉛Zn(POを主
成分として、亜鉛とリンのモル比(Zn/P)が1.0
〜3.0のリン酸亜鉛に、0.1〜5.0重量%、好ま
しくは0.1〜3.0重量%の銀もしくは銅、又は、総
量で0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0
重量%の銀及び銅を担持させたものを主成分とするもの
である。担持された銀もしくは銅、又は、銀及び銅の量
が0.1%未満であると抗菌性を発揮できず、また、
3.0%程度であれば、混入した樹脂が僅かに淡い色に
着色するものの、その後は光による変色は認められない
が、5.0%を超えると、樹脂に混入する際に、樹脂を
着色させ、また、光により樹脂が変色するようになる。
【0010】本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛
化合物の製造方法において、リン酸化合物としては、一
般的リン酸が使用され、リン酸二水素カリウム等の可溶
性リン酸塩も使用することができる。また、亜鉛化合物
としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、又は、炭酸亜鉛等が
使用される。反応は、湿式反応の方が好ましく、更に
は、メカノケミカル効果のあるボールミル、ライカイ
キ、振動ミル、サンドグランドミル等を使用することが
より好ましく、微細粒子が得やすい。
【0011】銀もしくは銅、又は、銀及び銅の担持に
は、メカノケミカル効果のある反応機を使用し、40℃
以下の温度で行う。これらの金属を担持させるリン酸亜
鉛は、必ずしもリン酸亜鉛として既に合成されたものだ
けでなく、未反応の状態、すなわち反応途上でこれらの
金属を担持させてもよい。また、反応温度が40℃を超
えると、銀が遊離して変色するので、好ましくない。
【0012】本発明に係わる抗菌・抗カビ性樹脂におい
て、樹脂として、主として、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ABS樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリエステ
ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニル
アセテート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリア
クリルロニトリル等の熱可塑性樹脂が使用されるが、樹
脂硬化前に本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化
合物を混合することによって、フェノール樹脂、尿素樹
脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル
樹脂等にも適用することができる。
【0013】これらの樹脂に、混入される本発明に係わ
る抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物の量が、0.05%
重量未満であると抗菌性が認められず、50%を超える
と樹脂の特性を著しく損なうおそれがある。通常0.1
〜20重量%の範囲で混入するのが好ましい。また、こ
のリン酸亜鉛化合物を均一に分散させるためのステアリ
ン酸、ポリエチレンワックス等の分散剤や、顔料、酸化
防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を混合してもよ
い。
【0014】本発明に係わる抗菌・抗カビ性樹脂は、単
に、フィルム、繊維、シート、パイプ等の成形品だけで
なく、発泡体、接着剤、コーテング剤、塗料等としても
使用され、また、得られたフィルム、コーテング剤、塗
料等は、他の成形品の表面に抗菌・抗カビ性を与えるた
めに使用される。
【0015】
【作用】本発明に係わるリン酸亜鉛化合物が、どのよう
な作用によって優れた抗菌・抗カビ性を示すか、また、
その製造方法おいて、どのような作用によって銀や銅が
担持されるのかについては、詳細は不明であるが、一
応、次のような作用が関与するものと考えられる。
【0016】本発明に係わるリン酸亜鉛化合物おいて
は、亜鉛は、イオン化傾向が高く、塩基性塩を作り易い
ことから、銀や銅は、リン酸塩中の亜鉛を排除して、不
溶のリン酸塩の形で強固に担持されていると考えられ
る。特にメカノケミカル反応により銀や銅を化学的に結
合させた場合は、内部にまで銀や銅が強固に保持される
ものと考えられる。従って、長期にわたって、抗菌・抗
カビ性を発揮するに必要な微量の銀イオンや銅イオンを
放出することができ、優れた抗菌・抗カビ性を示すもの
と考えられる。
【0017】本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛
化合物の製造方法において、メカノケミカル反応の際、
固体同士の接触点に瞬間的に高温高圧点が生じて、そこ
にエネルギーが集中して、溶液反応とは異なった特殊な
反応が生起し、銀や銅が強固に高濃度に結合するものと
考えられる。また、周りの環境が40℃以下に保持され
ているため、接触反応点以外で、銀や銅の遊離等の反応
が生起せず、従って銀や銅の遊離による変色も防止でき
るものと考えられる。
【0018】
【実施例】
(1)抗菌・抗カビ性亜鉛化合物の製造 〔実施例1〕25%リン酸水溶液750gを50℃に加
熱し、攪拌しながら酸化亜鉛233.6gを徐々に加え
て反応させ、60℃で3時間保持した後、得られたスラ
リーを30℃に冷却し、2lボールミルに移し硝酸銀
6.0gを添加して24時間練和した。得られたスラリ
ーを水洗し、濾過した後、250℃で乾燥し、粉砕して
試料(以下「試料I」という)とした。この試料に担持
された銀の含有量は1.0重量%であった。
【0019】〔実施例2〕75%リン酸水溶液400g
に、酸化亜鉛373.7gを徐々に加えて反応させ、反
応生成応物を得た。この反応生成物を2lボールミルに
移して、水800gと塩化銅(CuCl)37gを加
え、30℃で24時間練和して反応させた。得られたス
ラリーを実施例1と同様に処理して、試料(以下「試料
II」という)とした。この試料に担持された銅の含有
量は3.8重量%であった。
【0020】〔実施例3〕20%リン酸水溶液1000
gに、攪拌しながら酸化亜鉛166gと水酸化亜鉛20
3gを徐々に加えて反応させ、80℃で2時間保持した
後、得られたスラリーを、30℃に冷却し、2lボール
ミルに移し、硝酸銀7.5gと硝酸銅(Cu(NO
3HO)36.3gを添加して、24時間練和して
反応を終了させた。得られたスラリーを実施例1と同様
に処理して、試料(以下「試料III」という)とし
た。この試料に担持された銀の含有量は1.0重量%で
あり、銅の含有量は1.9重量%であった。
【0021】〔比較例1〕1/20M硝酸銀水溶液50
0gに、ナトリウムタイプのA型ゼオライト(東ソー製
トヨビルダー)の乾燥物250gを加え、室温にて3時
間攪拌した後、濾過し水洗して、過剰の銀イオンを除去
した。これを110℃で乾燥し、粉砕して試料(以下
「試料IV」という)とした。この試料に担持された銀
の含有量は1.1重量%であった。
【0022】〔比較例2〕トリポリリン酸二水素アルミ
ニウム10gを500mlフラスコにとり、硝酸銀5.
3gと水50mlを加え、80℃で1時間反応させた。
得られた反応生成物を濾過し水洗して、過剰の硝酸銀を
除去し、110℃で乾燥し、粉砕して試料(以下「試料
V」という)とした。この試料に担持された銀の含有量
は1.25重量%であった。
【0023】(2) 抗菌・抗カビ性樹脂の製造及び耐
光試験 実施例1〜3、及び、比較例1、2で得られた試料I〜
Vを、それぞれ、2重量%となるように、射出成形機
(設定温度220℃)を使って、ポリプロピレン樹脂
(三井石油化学(株)J−700P)に練込み、それぞ
れ、数個の60×49×2.5mmの試験片(以下、そ
れぞれ「試験片I」〜「試験片V」という)を得た。ま
た、同じ条件で、ポリプロピレン樹脂だけからなる試験
片(以下「試験片VI」という)を得た。これらの試験
片について、フェードオメータにより、63℃で48時
間の耐光試験をおこなった。その結果は表1のとおりで
あり、本発明に係わる抗菌性リン酸亜鉛化合物は、練込
み時に樹脂を殆ど変色させず、また、光によって変色し
ないことが判った。
【表1】
【0024】(3) 抗菌性試験 前述の実施例で得られた試験片I〜IVを、それぞれ、
ポリエチレンフィルム(製鉄化学(株)製フローセン
M)をヒートシールして作った袋にいれ、更に、その中
に、大腸菌(IFO 3310)およびブドウ菌(IF
O 3060)からなる菌液0.3mlを滴下し、各試
験片の両面に菌液がくまなく行きわたるようにした後、
袋内部の空気を排除し密封して、重しで加圧して孵卵器
に入れた。24時間後、10mlのリン酸緩衝液で袋中
の生残菌を洗い出し、この洗い出し液1mlについて、
SCDLP寒天培地を用いて混釈平板培養法により生残
菌数を測定した。その結果は表2のとおりであり、本発
明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物は、銀担持
トリポリリン酸アルミニウム(試験片V)のように、光
により変色することもなく、それと同様な高い抗菌作用
を示すことがわかった。
【表2】
【0025】(3) 抗カビ性試験 前述の実施例で得られた試験片I〜VIを、それぞれ、
あらかじめ滅菌したシャーレ中のポテトデキストロース
寒天培地の上に置いた。更に、別途にアスペルギルス・
ニガー(IFO 4414)を培養し、そこから5白金
耳とり、0.005%スルホコハク酸ジオクチルナトリ
ウム水溶液10mlに加え、遠心分離により胞子を分離
して、その胞子をGPLP培地10mlに分散させた胞
子液を、各試験片の上に噴霧して、孵卵器に入れ25℃
で14日間培養した。その結果は表3のとおりであり、
本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物は、銀
担持トリポリリン酸アルミニウム(試験片V)のよう
に、光により変色することもなく、それと同様な高い抗
カビ作用を示すことがわかった。
【表3】
【0026】
【発明の効果】本発明に係わる抗菌・抗カビ性リン酸亜
鉛化合物、及び、それを含有する抗菌・抗カビ性樹脂
は、前述のような構成と作用を有するので、簡単な組成
であるにもかかわらず、樹脂を、着色することなく、ま
た、光により変色させることもなく、優れた抗菌性と抗
カビ性を付与するという効果をもたらし、本発明に係わ
る抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物の製造方法は、前述
のような構成と作用を有するので、簡単な操作で、優れ
た抗菌・抗カビ剤の製造を、初めて可能にするという効
果をもたらす。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A01N 59:16) (A01N 59/26 59:20) (A01N 59/26 59:16 59:20) (72)発明者 山田 善市 愛知県岡崎市緑丘3丁目21−4 (72)発明者 竹内 聡 愛知県豊川市諏訪3丁目123 (72)発明者 戸井 祥夫 愛知県名古屋市千種区高見2−5−4メゾ ン池下4D (72)発明者 箕輪 晋 愛知県名古屋市緑区鳴海町字薬師山151 (72)発明者 真鍋 里美 大阪府堺市深井中町866−25

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸亜鉛に、0.1〜5.0重量%の
    銀もしくは銅、又は、総量で0.1〜5.0重量%の銀
    及び銅を担持させたことを特徴とする抗菌・抗カビ性リ
    ン酸亜鉛化合物
  2. 【請求項2】 リン酸化合物と亜鉛化合物とを反応さ
    せ、得られたリン酸亜鉛スラリーに、40℃以下で、可
    溶性の銀化合物及び銅化合物の両方又はその一方を添加
    してメカノケミカル的に反応させることを特徴とする請
    求項1記載の抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物の製造方
  3. 【請求項3】 0.05〜50重量%の請求項1記載の
    抗菌・抗カビ性リン酸亜鉛化合物を含有することを特徴
    とする抗菌・抗カビ性樹脂
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