JPH05833A - 透明物品およびその製造方法 - Google Patents

透明物品およびその製造方法

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JPH05833A
JPH05833A JP3206804A JP20680491A JPH05833A JP H05833 A JPH05833 A JP H05833A JP 3206804 A JP3206804 A JP 3206804A JP 20680491 A JP20680491 A JP 20680491A JP H05833 A JPH05833 A JP H05833A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】スクラッチなどの機械的な摩耗に対する十分な
強度を有する保護膜がガラス板上に被覆された透明物品
およびその製造方法を提供する。 【構成】透明基板上に少なくとも2層からなる薄膜が被
覆された透明物品であって、前記薄膜の最上層が、下記
の元素群から選ばれた少なくとも1種と窒素と炭素の群
より選ばれた少なくとも1種と酸素とからなり、かつ、
下記の化学式で表した組成を有する保護膜である透明物
品。 元素群:B,Al,Si,Ti,V,Cr,Zr,N
b,Mo,Hf,Ta,W 化学式:MNXYZ(Mは上記元素群から選ばれた少
なくとも1種の合計で、添え字は原子比率を表す) 1.0≧Z≧0.2 1.5≧Z/(X+Y)≧0.4 X≧0、Y≧0(XとYは同時にゼロでない)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明基板の表面に薄膜
が被覆された透明物品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来ガラスやプラスチックスのような透明
基板上に薄膜を被覆して、種々の光学特性を付与した透
明物品が知られている。たとえば太陽光線の一部を遮蔽
する熱線遮蔽ガラスや波長選択性を有する光学干渉フイ
ルター、さらに反射鏡、反射防止ガラスパネルなどがあ
る。これらの透明物品の薄膜は優れた光学性能が要求さ
れ、また厳密な膜の厚みの制御が必要であることから、
真空蒸着やスパッタリングのような真空成膜法で被覆さ
れる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら真空成膜
法で被覆した薄膜を有する透明物品は、その耐久性とり
わけ機械的摩耗強度が大きくないという問題点がある。
摩耗強度が大きいとされているTiO2膜やSnO2膜や
ZrO2膜やSiO2膜などの酸化物の膜を保護膜とした
光学物品が知られているが、自動車や建築物の窓ガラス
のように長期間耐摩耗強度が必要とされる物品には、必
ずしも充分な耐摩耗強度を有していない。たとえば、S
iO2膜を保護膜に用いたものとしては特開昭63−2
06333号公報に開示されているように耐摩耗強度を
確保するために1μm以上の厚みのSiO2膜を被覆し
た透明物品がある。しかしこの物品を製造するには多大
の被膜の被覆時間を有し生産性が悪く、安価に製造でき
ないという問題点がある。
【0004】本発明は、上記従来の問題点を解決するた
めになされたものであって、スクラッチなどの機械的な
摩耗に対する十分な強度を有する保護膜が被覆された透
明物品およびその製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、透明基板上に
少なくとも2層からなる薄膜が被覆された透明物品であ
って、前記薄膜の最上層が、下記の元素群から選ばれた
少なくとも1種と、窒素と炭素の群より選ばれた少なく
とも1種と、酸素とからなり、かつ下記の化学式で表し
た組成を有する保護膜である透明物品である。
【0006】元素群:B,Al,Si,Ti,V,C
r、Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W 化学式:MNXYZ(Mは上記元素群から選ばれた少
なくとも1種の合計で、添え字は原子比率を表す) 1.0≧Z≧0.2 1.5≧Z/(X+Y)≧0.4 X≧0、Y≧0(XとYは同時にゼロでない) 本発明の透明物品の保護膜は、B,Al,Si,Ti,
V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wのそれぞ
れの炭化物膜あるいは窒化物膜が有する高硬度の特性と
B,Al,Si,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,
Hf,Ta,Wのそれぞれの酸化物膜が有する可視光線
の波長域での透明性を合わせもっている。
【0007】本発明の保護膜中には必ず酸素が含まれ、
炭素と窒素はそのいずれかが含まれるか、両者が含まれ
る。上記の化学式MNXYZで表せる保護膜の酸素の
含有量を表すZの値は、0.2より小さいと保護膜の透
明度と耐摩耗強度が低下してしまう。一方Zの値が1.
0より大きいと保護膜の硬度が低下する。したがって可
視光線の領域で光の吸収を小さくし、かつ摩耗強度を十
分確保するためには、Zの値は0.2以上で1.0以下
であることが必要である。可視光線域の波長に対して光
の吸収が実質上ないようにして可視光線透過率大きくす
るには、Zの値は0.4以上とするのが好ましい。
【0008】保護膜中の窒素と炭素の合計量に対する酸
素量の原子比はZ/(X+Y)で表せ、Z/(X+Y)
の値は、保護膜が柱状構造をとったり、大きな粒子状の
結晶を含んだり、可視光線の領域で光の吸収が実質的生
じることがないために、0.4以上であることが必要で
あり、また炭化物や窒化物の高硬度特性を保護膜にもた
せるために1.5以下で有ることが必要である。可視光
線透過率を大きくするにはZ/(X+Y)の値は0.8
以上であることが好ましい。Zの値を0.2以上、Z/
(X+Y)の値を0.4以上とすることにより、保護膜
は、柱状構造を有する膜になったり、大きな粒子が生じ
たりするのが抑制され、平滑な表面を有するようにな
る。
【0009】また保護膜中に窒素と炭素と酸素とを含む
ことは、膜中の上記粒子の生成がより一層抑制され、よ
り緻密で平滑な膜になるので、保護膜の耐久性を確保す
る上で好ましい。そして本発明にかかる保護膜中の窒
素、酸素、炭素は、それぞれ上記元素群の元素の窒化
物、酸化物、炭化物としてのみ存在するのではなく、す
なわちこれら化合物の混合物としてのみあるのでなく、
窒素−酸素、炭素−酸素、炭素−窒素−酸素の結合のい
ずれかを含む複合化合物として存在する。
【0010】上記元素群を構成する元素は、それそれの
元素の炭化物あるいは窒化物を薄膜にしたときに硬度が
大きいという性質を有する。上記の元素群から選択され
て含まれる保護膜中の元素は、1種であっても2種以上
含まれても良い。とりわけB、Al、Siは1.8以下
の屈折率を有する保護膜とすることができるので、可視
光線透過率が高く、かつ保護膜面での光の反射率が低い
物品を得る上で好ましい。
【0011】本発明にかかる保護膜の厚みは、保護膜と
透明基板の間に被覆された薄膜を保護するために、少な
くとも5nm以上が好ましく、さらには10nm以上が
好ましく、さらには20nm以上が好ましい。保護膜の
厚みの上限は、得られる物品の耐久性を確保する観点か
らは特に限定されるものでなく、得られる物品の光学特
性と被覆に長時間を要し生産性が低下することがないよ
うにするなどから定めることができる。
【0012】本発明の透明物品に太陽光線の一部を遮蔽
する熱線遮蔽性能を付与するには、透明基体と保護膜と
の間に、ステンレス膜やチタニウム、ハフニウム、クロ
ムからなる金属群から選ばれた少なくとも1種の窒化物
の膜を被覆することができる。とりわけチタニウム、ハ
フニウム、クロムからなる金属群から選ばれた少なくと
も1種の窒化物の膜は、それ自身で熱線反射性能を有す
るので好ましい。このときに好んで用いられる前記金属
の窒化物の膜の厚みは、得られる透明物品の可視光線透
過率により定めることができ、100nm以下にするこ
とが明るさを確保する上で好ましく、10nm以下にす
ることにより可視光線透過率を70%以上にすることが
できる。
【0013】さらに保護膜中の上記元素群から選ばれる
元素をTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,T
a,Wのいずれかとし、透明基体と保護膜との間に、ス
テンレス膜やチタニウム、ハフニウム、クロムからなる
金属群から選ばれた少なくとも1種の窒化物の膜とする
ことにより、可視光線透過率が50%以下の低い値を有
し、熱線遮蔽性が大きい、とりわけ建築物の窓ガラスと
して適した熱線遮蔽ガラスとすることができる。このと
き前記金属の窒化物膜と透明基体との間に前記金属の窒
化物膜と透明基体との密着性を向上させるために、前記
金属の窒化物膜と透明基体との間にTiO2膜,ZrO2
膜、Al23膜などの金属酸化物の膜を被覆することが
できる。
【0014】また、上記元素群から選ばれる元素をB,
Al、Siのいずれかとし、前記元素と炭素と窒素と酸
素とからなる保護膜とすることにより、70%以上の可
視光線透過率を有し、熱線遮蔽性が大きいとりわけ自動
車の窓ガラスとして適した熱線遮蔽ガラスとすることが
できる。
【0015】また、熱線遮蔽性を有する前記金属窒化物
の膜代わりに酸化錫をドープした酸化インジウム膜や、
Ag膜を用いることができる。さらに、熱線遮蔽性を有
する前記金属窒化物の膜の代わりに、550nmにおけ
る屈折率が2.0以上の透明金属酸化物の膜を被覆する
ことにより、70%以上の可視光線透過率を有し、熱線
遮蔽性が大きいとりわけ自動車の窓ガラスとして適した
熱線遮蔽ガラスとすることができる。また、前記透明金
属酸化物の膜と前記保護膜との間に前記透明金属酸化物
側から低屈折率物質の膜と高屈折率物質の膜をこの順序
で交互に被覆することにより、70%以上の可視光線透
過率を有し、熱線遮蔽性が大きいとりわけ自動車の窓ガ
ラスとして適した熱線遮蔽ガラスとすることができる。
ここで上記の低屈折率物質の膜としては、SiO2膜、
Al23膜、高屈折率物質の膜としてはTiO2膜、T
25膜,ZrO2膜,SnO2膜,ZnO膜が例示でき
る。
【0016】また、上記低屈折率物質の膜と高屈折率物
質の膜の厚みを適当に定めることにより耐久性の無反射
膜が被覆された透明物品を得ることができる。
【0017】本発明の透明物品の透明基板として用いら
れるものとしては、透明フロートガラス板やブロンズ、
グレー、ブルーなどに着色する着色剤を含む熱線吸収ガ
ラス板などのガラス板、さらに有機樹脂からなる板が例
示できる。
【0018】本発明にかかる保護膜および前記保護膜と
透明基体との間に被覆される被膜の被覆は、公知のスパ
ッタリング法やイオンプレーテイング法を用いることが
でき、とりわけ大きい面積の基板に均一に被膜が高速に
被覆できる反応性スパッタリング法が好ましい。
【0019】本発明の第2は、透明基板上に少なくとも
2層からなる薄膜が被覆され、前記薄膜の最上層が炭素
を含む保護膜である透明物品を製造する方法において、
前記保護膜をB,Al,Si,Ti,V,Cr,Zr,
Nb,Mo,Hf,Ta,Wの群から選ばれた少なくと
も1種の金属の炭化物または2種以上の金属の炭化物を
ターゲットとし、反応ガスとして酸素または窒素と酸素
の混合ガスを用い、減圧された雰囲気内でおこなう反応
性スパッタリングにより被覆する透明物品の製造方法で
ある。本発明の方法によれば、低い電気抵抗を有する炭
化物ターゲットを用い、直流グロー放電を生起させて反
応性スパッタリングをおこなうことができ、安定して耐
摩耗性が大きい保護膜を被覆することができる。炭素を
含む膜をメタンやアセチレン等の危険な有機化合物のガ
スを反応性ガスとして用いることなく被覆することがで
きる。
【0020】
【作用】本発明の透明物品の保護膜には、炭化物、窒化
物、酸化物の混合物のみからなるのでなく、窒素−酸
素、炭素−酸素、炭素−窒素−酸素の結合のいずれかを
含む化合物が含有されている。これにより本発明の保護
膜の構造は、結晶が柱状や大きな粒状に成長した構造を
していない。したがって本発明の保護膜は、膜表面が平
滑な膜で、かつ、膜の内部には隙間がない、すなわち充
填密度が大きい膜となっている。したがって、耐摩耗強
度が強い保護膜となっている。膜中の酸素は、その含有
量が多くなるにしたがい膜の光透過率を大きくする作用
を有し、膜中の炭素及び窒素はその含有量が多くなるに
したがい膜の硬度が大きくなる作用をする。
【0021】本発明の透明物品の炭素を含む保護膜をス
パッタリングで被覆する方法において、炭化物のターゲ
ットを用いることは、ターゲットの電気抵抗を小さくす
ることができ、直流グロー放電によるスパッタリングを
安定して行うことを可能にする。また反応性ガスに酸素
と窒素を所定量用いることにより、容易に膜中の炭素、
窒素、酸素の割合を変えることや、膜中に炭素を含む複
合化合物を含有させることができる。
【0022】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の透明物品の一部断面図で、保護膜1は
透明基板3の上に被覆されており、保護膜1と透明基板
3との間に少なくとも1層からなる膜2が被覆されてい
る。 実施例1 2つのカソードが設置できる直流マグネトロンスパッタ
装置の第1のカソードに金属チタンを、第2のカソード
に金属ジルコニウムをターゲットとして設置した。清浄
にされた5mm厚のフロートガラス板を真空装置内に入
れ、真空ポンプで0.00133Pa(パスカル)の圧
力まで排気した後、アルゴンガスを60sccm、窒素
ガスを40sccmの流量で真空槽内に導入し、その圧
力を0.4Paにした。第1のカソードに5W/cm2
の電力を印加して放電を開始し、そのカソード上をガラ
ス板を所定速度で通過させることにより、70nmの厚
みの窒化チタンの膜を被覆した。再び0.00133P
aの圧力まで排気し、その後窒素ガスを70sccm、
酸素ガスを30sccmの流量で真空槽内に導入し、圧
力を0.4Paにした。第2のカソードに5W/cm2
の電力を印加して放電を開始し、そのカソード上をガラ
ス板を所定速度で通過させることにより、窒化チタン膜
の上に20nmの厚みの酸窒化ジルコニウム膜を被覆し
た。かくしてサンプル1を得た。
【0023】このサンプル1について市販のテーバ摩耗
試験機を用いて耐摩耗試験を行った。CS−10F番の
摩耗輪に500グラムの荷重をかけ、60rpmの回転
数で300回転の摩耗を膜に加えた後、その部分の可視
光線透過率およびヘイズ率を測定した結果を表1に示
す。サンプル1は、摩耗試験により発生した傷は目立た
ず、優れた耐摩耗を示した。サンプル1の膜の構造を電
子顕微鏡で観察したところ、柱状構造を有する窒化チタ
ン膜の上に緻密で表面が平滑な酸窒化ジルコニウムの保
護膜が形成されていることがわかった。 実施例2 実施例1と同じ装置で、第2のカソードのターゲットを
炭化クロム(Cr32)に代えた。実施例1と同じよう
にしてガラス板の上に70nmの厚みの窒化チタン膜を
被覆した。その後再び0.00133Paまで排気し
て、アルゴンガス70sccm、酸素ガス30sccm
の流量で圧力を0.4Paにした。第2のカソードに3
W/cm2の電力を印加して放電を開始し、その炭化ク
ロムターゲット上をガラス板を所定速度で通過させるこ
とにより、窒化チタン膜の上に20nmの厚みの炭化ク
ロムの酸化膜を被覆した。かくしてサンプル2を得た。
【0024】サンプル2の光学特性と耐摩耗性を表1に
示す。このサンプルはサンプル1と同様に優れた耐摩耗
性を有し、低透過率のガラスであることがわかった。 実施例3 実施例1と同じ装置で、第2のカソードには炭化ニオブ
のターゲットを設置し、同様の方法でガラス板上に70
nm厚の窒化チタン膜と20nm厚の炭化ニオブの酸窒
化が被覆されたサンプル3を得た。サンプル3の光学特
性と耐摩耗性を表1に示す。このサンプルはサンプル1
と同様に優れた耐摩耗性を有し、低透過率のガラスであ
ることがわかった。 実施例4 実施例1と同じ装置でその第2カソードのターゲットを
チタンアルミニウム合金(チタン50重量%アルミニウ
ム50重量%)に代えた。実施例1と同様の手順でガラ
ス板の上に70nm厚の窒化チタン膜とさらにその上に
10nm厚のチタンアルミニウム合金の酸窒化膜を被覆
して、サンプル4を得た。サンプル4の光学特性と耐摩
耗性を表1に示す。このサンプルはサンプル1と同様に
優れた耐摩耗性を有し、低透過率のガラスであることが
わかった。 実施例5 実施例1の装置の第1のカソードにステンレス合金(3
16番)を、第2のカソードに金属チタンをターゲット
として設置した。清浄にされた5mm厚のフロートガラ
ス板を真空装置内に入れ、真空ポンプで0.00133
Paの圧力まで排気した後アルゴンガスを100scc
mの流量で真空槽内に導入し、その圧力を0.4Paに
した。第1のカソードに5W/cm2の電力を印加して
放電を開始し、第1のカソード上をガラス板を所定速度
で通過させることにより、20nmの厚みのステンレス
合金の膜を被覆した。その後再び0.00133Paの
圧力まで排気し、その後窒素ガスを70sccm、酸素
ガスを30sccmの流量で真空槽内に導入し、圧力を
0.4Paにした。第2のカソードに5W/cm2の電
力を印加して放電を開始し、第2のカソード上をガラス
板を所定速度で通過させることにより、ステンレス合金
の膜の上に30nmの厚みの酸窒化チタン膜を被覆し
た。かくしてサンプル5を得た。
【0025】サンプル5の光学特性と耐摩耗性を表1に
示す。このサンプルはサンプル1と同様に優れた耐摩耗
性を有し、低透過率のガラスであることがわかった。 実施例6 実施例5で用いた装置の第2のカソードのターゲットを
炭化チタンに代えた。実施例5と同様の方法でガラス板
の上に4nm厚のステンレス合金膜と炭化チタンの酸窒
化膜の2層からなる被膜が被覆されたサンプル6を得
た。
【0026】サンプル6の光学特性と耐摩耗性を表1に
示す。このサンプルはサンプル1と同様に優れた耐摩耗
性を有し、低透過率のガラスであることがわかった。
【0027】
【表1】
【0028】実施例7 実施例1の装置の第1のカソードに金属チタンを、第2
のカソードに遊離のシリコンを含まない炭化珪素焼結体
(住友セメント製)をターゲットとして設置した。清浄
にされた5mm厚のブロンズ着色フロートガラス板(日
本板硝子製商品名ブロンズペーン)を真空装置内に入れ
た。実施例1と同様の方法でガラス板上に5nm厚の窒
化チタン膜を被覆した。次に再び0.00133Paの
圧力まで排気し、その後窒素ガスを95sccm、酸素
ガスを5sccmの流量で真空槽内に導入し、圧力を
0.4Paにした。第2のカソードに3W/cm2の電
力を印加して放電を開始し、そのカソード上をガラス板
を所定速度で通過させることにより、窒化チタン膜の上
に20nmの厚みの炭化珪素の酸窒化膜を被覆した。か
くしてサンプル7を得た。
【0029】サンプル7の光学特性と耐摩耗性を表2に
示す。このサンプルは優れた耐摩耗性と熱線遮蔽性を有
し、さらに高い可視光線透過率を有するガラスであるこ
とがわかった。 実施例8 実施例7で用い装置の第2カソードのターゲットをアル
ミニウムシリコン合金(アルミニウム70重量%シリコ
ン3重量%)に代えた。実施例7と同じ手順で、ガラス
板の上に5nm厚の窒化チタン膜とさらにその上に20
nm厚のアルミニウムシリコン合金の酸窒化膜が被覆さ
れたサンプル8を得た。サンプル8の光学特性と耐摩耗
性を表2に示す。このサンプルは優れた耐摩耗性と熱線
遮蔽性を有し、さらに高い可視光線透過率を有するガラ
スであることがわかった。 実施例9 3つのカソードが設置できる直流マグネトロンスパッタ
装置の第1のカソードに金属スズを、第2のカソードに
金属チタンを第3のカソードに炭化硼素、炭化珪素、ア
ルミニウムの焼結体(炭化硼素60重量%、炭化珪素2
0重量%、アルミニウム20重量%)をターゲットとし
て設置した。清浄にされた5mm厚のブロンズ着色フロ
ートガラス板(日本板硝子製ブロンズペーン)を真空装
置内に入れ、真空ポンプで0.00133Paの圧力ま
で排気した後、アルゴンガスを50sccm、酸素ガス
を50sccmの流量で真空槽内に導入し、その圧力を
0.4Paにした。第1のカソードに3W/cm2の電
力を印加して放電を開始し、そのカソード上をガラス板
を所定速度で通過させることにより、55nmの厚みの
酸化スズ膜を被覆した。再び0.00133Paの圧力
まで排気し、その後アルゴンガスを50sccm、酸素
ガスを50sccmの流量で真空槽内に導入し、圧力を
0.4Paにした。第2のカソードに5W/cm2の電
力を印加して放電を開始し、第2のカソード上をガラス
板を所定速度で通過させることにより、酸化スズ膜の上
に45nmの厚みの酸化チタン膜を被覆した。再び0.
00133Paの圧力まで排気し、その後窒素ガスを8
0sccm、酸素ガスを20sccmの流量で真空槽内
に導入し、圧力を0.4Paにした。第3のカソードに
2W/cm2の電力を印加して放電を開始し、第3のカ
ソード上をガラス板を所定速度で通過させることによ
り、酸化チタン膜の上に60nmの厚みの炭化硼素と炭
化珪素とアルミニウムとの酸窒化膜を被覆した。かくし
てサンプル9を得た。
【0030】サンプル9の光学特性と耐摩耗性を表2に
示す。このサンプルは優れた耐摩耗性と熱線遮蔽性を有
し、さらに高い可視光線透過率を有するガラスであるこ
とがわかった。
【0031】
【表2】
【0032】実施例10 実施例7で用いた装置の第1のカソードのターゲットを
金属スズに代えた。清浄にされた5mm厚のフロートガ
ラス板を真空装置内に入れた。真空槽内を0.0013
3Paの圧力まで排気し、その後アルゴンガスを50s
ccm、酸素ガスを50sccmの流量で真空槽内に導
入し、その圧力を0.4Paにした。第1のカソードに
5W/cm2の電力を印加して放電を開始し、第1のカ
ソード上をガラス板を所定速度で通過させることによ
り、ガラス板上に102nmの厚みの酸化スズ膜を被覆
した。その後サンプル7の保護膜を被覆したのと同じ手
順で酸化スズ膜の上に71nmの厚みの炭化珪素の酸窒
化膜を被覆した。次に真空槽を大気圧に戻しガラス板を
裏返し再び真空排気した。ガラス板の他の面に同じよう
にして102nmの厚みの酸化スズ膜とさらにその上に
71nmの厚みの炭化珪素の酸窒化物膜を被覆し、サン
プル10を得た。このサンプルの光学特性を測定したと
ころ、可視光線透過率が約97%、可視光線反射率が約
2%の低い反射率を有することがわかった。実施例1と
同様の方法で耐摩耗試験を実施しヘイズ率を測定したと
ころわずか0.5%であり、傷は全く目立たず、極めて
耐摩耗性が優れていることがわかった。 比較例1 本発明にかかる保護膜を有しない比較サンプルとして5
mm厚のフロートガラス板に80nmの厚みの窒化チタ
ン膜と10nmの厚みの酸化ジルコニウムの保護膜を被
覆した比較サンプル1を得た。窒化チタン膜はサンプル
1の窒化チタン膜と同じ方法により被覆し、酸化ジルコ
ニウム膜はサンプル1の保護膜を被覆するときの導入ガ
スを酸素ガスのみとして被覆した。得られた比較サンプ
ル1の光学特性と耐摩耗性を表1に示す。このサンプル
は摩耗試験によりヘイズ率が4.0%と大きな値を示
し、耐摩耗性が小さいことがわかった。 比較例2 本発明にかかる保護膜を有しない比較サンプルとして5
mm厚のフロートガラス板に17nmの厚みのステンレ
ス合金膜をサンプル5と同じ方法で被覆し、さらにその
上に30nmの厚みの窒化チタン膜をサンプル1と同じ
方法で被覆して比較サンプル2を得た。得られた比較サ
ンプル2の光学特性と耐摩耗性を表1に示す。摩耗試験
によりヘイズ率が7.5%と大きな値を示し、耐摩耗性
が小さいことがわかった。 比較例3 本発明にかかる保護膜を有しない比較サンプルとして5
mm厚のフロートガラス板に7nmの厚みのステンレス
合金膜をサンプル5と同じ方法で被覆し、さらにその上
に6nmの厚みの酸化チタン膜をサンプル9と同じ方法
で被覆して比較サンプル3を得た。得られた比較サンプ
ル3の光学特性と耐摩耗性を表1に示す。この比較サン
プルは、摩耗試験によりヘイズ率が3.2%を示し、透
過率変化が10.4%と大きく、耐摩耗性が小さいこと
がわかった。 比較例4 本発明にかかる保護膜を有しない比較サンプルとして、
5mm厚の着色フロートガラス板に65nmの厚みの酸
化スズ膜、50nmの厚みの酸化チタン膜、50nmの
厚みの酸化スズ膜を順次サンプル9と同じ方法で被覆
し、比較サンプル4を得た。得られた比較サンプル4の
光学特性と耐摩耗性を表2に示す。この比較サンプルは
摩耗試験によりヘイズが3.8%を示し、耐摩耗性がや
や小さいことがわかった。
【0033】以上により、本発明の光学物品は耐摩耗性
が改善されたものであることがわかる。
【0034】
【発明の効果】本発明の透明物品の空気と接する最上層
の保護膜は、膜中に硬度が大きい炭化物あるいは窒化物
が含まれ、さらに炭化物および窒化物の一部は膜中の酸
素と化学結合した複合化合物を形成している。そのため
本発明の保護膜は、膜表面の平滑性が優れ、かつ膜の緻
密性が優れて耐摩耗性が大きい。したがって直接外気に
触れる状態で使用することができ、窓ガラスとして使用
する場合は、合わせガラスや複層ガラスにすることがな
く単板ガラスとして用いることができる。
【0035】本発明の方法では、炭素を含む耐摩耗性が
優れた保護膜を、メタンやアセチレンなどの危険な反応
性ガスを用いずに、大きな面積の基板に安定して被覆す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明物品の一部断面図である。
【符号の説明】
1・・・複合化合物を含む保護膜、2・・・1層以上か
らなる膜、3・・・透明基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川口淳 大阪府大阪市中央区道修町3丁目5番11号 日本板硝子株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基板上に少なくとも2層からなる薄膜
    が被覆された透明物品であって、前記薄膜の最上層が、
    下記の元素群から選ばれた少なくとも1種と窒素と炭素
    の群より選ばれた少なくとも1種と酸素とからなり、か
    つ、下記の化学式で表した組成を有する保護膜である透
    明物品。 元素群:B,Al,Si,Ti,V,Cr,Zr,N
    b,Mo,Hf,Ta,W 化学式:MNXYZ(Mは上記元素群から選ばれた少
    なくとも1種の合計で、添え字は原子比率を表す) 1.0≧Z≧0.2 1.5≧Z/(X+Y)≧0.4 X≧0、Y≧0(XとYは同時にゼロでない)
  2. 【請求項2】前記透明基板と前記保護膜との間に被覆さ
    れた薄膜が、チタニウム、ハフニウム、クロムからなる
    金属群から選ばれた少なくとも1種の窒化物の膜である
    請求項1に記載の熱線遮蔽性の透明物品。
  3. 【請求項3】前記透明基板と前記保護膜との間に被覆さ
    れた薄膜が、550nmの波長における屈折率が2.0
    以上の透明金属酸化物膜である請求項1に記載の熱線遮
    蔽性の透明物品。
  4. 【請求項4】前記透明金属酸化物膜と前記保護膜との間
    に前記透明金属酸化物側から低屈折率物質の膜と高屈折
    率物質の膜がこの順序で交互に2層以上繰り返し被覆さ
    れた請求項3に記載の熱線遮蔽性の透明物品。
  5. 【請求項5】透明基板上に少なくとも2層からなる薄膜
    が被覆され、前記薄膜の最上層が炭素を含む保護膜であ
    る透明物品を製造する方法において、前記保護膜をB,
    Al,Si,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,H
    f,Ta,Wの群から選ばれた少なくとも1種の金属の
    炭化物、または2種以上の金属の炭化物をターゲットと
    し、反応ガスとして酸素ガスまたは窒素と酸素の混合ガ
    スを用い減圧された雰囲気内で反応性スパッタリングに
    より被覆することを特徴とする透明物品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20020047879A (ko) * 2000-12-14 2002-06-22 엘지전자 주식회사 친수성 코팅막
JP2009531178A (ja) * 2006-03-28 2009-09-03 カーディナル・シージー・カンパニー 除去可能保護カバー

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