JPH0581930A - 耐熱性直流用高圧リード線 - Google Patents

耐熱性直流用高圧リード線

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JPH0581930A
JPH0581930A JP4059285A JP5928592A JPH0581930A JP H0581930 A JPH0581930 A JP H0581930A JP 4059285 A JP4059285 A JP 4059285A JP 5928592 A JP5928592 A JP 5928592A JP H0581930 A JPH0581930 A JP H0581930A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱化の要望に応じた耐熱性直流用高圧リー
ド線を提供する。 【構成】 導体上の絶縁被覆がポリオレフィン樹脂組成
物で形成されており、UL規格の垂直難燃性(VW−
1)を有し、温度定格 125℃以上の特性を具えている耐
熱性直流用高圧リード線。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は温度定格 125℃以上のU
L規格を満たす特性を具えた、例えばテレビジョン、電
磁調理器、複写機、コンピュータ等の電子機器内配線に
使用される耐熱性直流用高圧リード線に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】テレビ
ジョン、電磁調理器、複写機、コンピュータ機器等の電
子機器内配線に使用する絶縁電線は、火災に対する安全
性が重要であり、国内では電気用品取締法、米国ではU
L規格、カナダではCSA規格等の認定を受けた難燃化
絶縁電線が使用される。さらに、これら電子機器内配線
の高圧部分に使用される難燃化絶縁電線は、10〜40kVの
直流高電圧を取扱うため、耐電圧に対する安全性も重要
である。
【0003】電子機器の高圧電線の評価方法としては、
UL規格のSubject758に記載の評価方法が知られてい
る。この評価方法の中では、(1)高圧カットスルー試
験、(2)難燃性試験が技術的に困難とみられる項目で
ある。図2はUL規格Subject758による高圧カットスル
ー試験の説明図である。図面に示すように、定格温度に
設定した槽内で2本の平行に配置した1/32″径のドリ
ルロッド11を介して電線13の両端に1ポンドの荷重10を
かけ、直流電源12より定格電圧の 1.5倍の電圧を印加し
た場合に7時間以内に絶縁破壊をおこしてはならない試
験である。図3は前記のUL規格による難燃試験の説明
図である。図面に示すように、周囲空気の動きを防止す
るために設けたチャンバー14内に垂直に立てた電線18に
下部よりガスバーナー15で炎を当てた時60秒以内に消火
し、下部の脱脂綿17が燃焼物の落下によって燃えてはな
らず、又上部のクラフト紙16が炎によって燃えたり、焦
げたりしてはならない試験である。
【0004】この両方の性能を満足するために、従来
は、電気性能の良いポリエチレンを内層とし、その上に
被覆した高難燃性組成物の外層よりなる2層構造として
機能分担させた電線が使用されている。即ち、高圧カッ
トスルー試験に合格させるために、導体上に融点が 105
℃以上のポリエチレンを被覆し、電線全体としての難燃
性を得るために、外層にエチレン、酢酸ビニル、塩化ビ
ニルを主たる繰返し単位とする重合体からなる難燃性樹
脂組成物を被覆した電線が知られている(特公昭52-417
86号公報参照)。又難燃性の外被としては、塩素化ポリ
エチレン−塩化ビニルグラフト共重合体(特公昭54-150
58号公報参照)、クロロスルホン化ポリエチレン−塩化
ビニルグラフト共重合体(特開昭49-42755号公報参照)
等も知られている。このような絶縁電線は、ポリエチレ
ンの持つ優れた電気絶縁性、耐トラッキング性を活かし
ながら、ポリエチレンの欠点である易燃性を外周上に設
けた難燃性樹脂組成物によって補うことにより電線全体
としての難燃性を確保したものである。ところが、この
絶縁電線は塩化ビニルやハロゲンを含む単量体を繰返し
単位として含有する重合体を主体とする難燃性樹脂組成
物を被覆した電線であるため、電線全体の耐熱温度は 1
05℃定格が上限であり、それ以上の高温の耐熱化の要求
には応えることが出来ない欠点がある。
【0005】又単層構造のものについても例がないわけ
ではない。即ち塩素化ポリエチレンのようなそれ自身が
難燃性の樹脂を主たる成分とする樹脂組成物を導体に被
覆した絶縁電線も高圧電線として使用されている。しか
し、この絶縁電線も耐熱性は105℃定格が上限であり、
高耐熱化の要求には応えることができないものである。
さらに、ポリエチレンに難燃剤を添加しポリエチレン自
体を難燃化する方法も知られているが、一般に耐熱性や
耐電圧特性が低下するという問題があり、高圧リード線
としては良いものが得られなかった。
【0006】ところが、一方では使用環境はますますき
びしくなってきている。機器の小型化が進み、かつ機能
は多機能が要求されるため、狭いところに多数の部品が
セットされる等により、配線量も増加し、配線材料には
より以上の安全性が求められ、高耐熱性が求められてき
ている。こうした要求にポリオレフィン以外の高耐熱性
樹脂を用いて対応することも考えられる。
【0007】一般に 150℃以上の耐熱温度が要求される
用途に使用される高圧電線には、導体上にシリコーン系
樹脂の加硫体を被覆した絶縁電線が使用されている。こ
の絶縁電線は柔軟性、電気特性に優れる半面、シリコー
ン系樹脂の加硫体が本来引裂け易い性格があるために、
端末加工や配線の引回し時に被覆層に傷がはいったり、
著しい場合には被覆層にクラックが入るといった加工上
の問題が発生することがよくある。これらの問題を解決
する手段としては、シリコーン絶縁電線にガラス編組チ
ューブや樹脂製チューブを被せてシリコーン系樹脂を保
護する方法が一般に知られている。一般にシリコーン絶
縁電線は価格が高いという問題があるが、電線自体の価
格に加え、保護チューブを被覆するための加工コストも
必要となり、又保護チューブを被せることによって、全
体の外径が増大するといった実装上の問題も派生する。
【0008】又四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン
等のフッ素系樹脂を絶縁体とした直流用高圧電線も知ら
れている。これらの電線は 150℃以上の耐熱性を有する
優れた電線であるが、価格がシリコーン系絶縁電線より
もさらに高く、特殊な用途を除き実用的でない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の問題点を
解決するため、ポリオレフィン樹脂組成物について鋭意
検討を重ね、導体上の絶縁被覆がポリオレフィン樹脂組
成物で形成されており、UL規格の垂直難燃性(VW−
1)を有し、温度定格 125℃以上の特性を具えた直流用
高圧リード線を得た。ここでいう温度定格 125℃とは前
述したUL規格の高圧カットスルー試験において、試験
温度 125℃の条件で合格することであり、かつ次の耐熱
老化性も 125℃の規格を満足することである。
【0010】上記耐熱老化性は、ポリオレフィン絶縁電
線の場合、UL規格の125℃定格では 158℃7日熱老化
試験後の試料の破断抗張力の残率が70%以上、伸び残率
が65%以上で、かつ、 136℃60日熱老化試験後の試料の
破断抗張力の残率が70%以上、伸び残率が65%以上であ
ることが定められており、UL規格の 150℃定格では、
180℃7日熱老化試験後の試料の破断抗張力の残率が70
%以上、伸び残率が65%以上で、かつ、 158℃60日熱老
化試験後の試料の破断抗張力の残率が70%以上、伸び残
率が65%以上であることが定められている。
【0011】前述のUL規格の垂直難燃性(VW−
1)、温度定格 125℃以上の条件を満たす性能を具えた
ポリオレフィン樹脂組成物の具体例の一つとしては、結
晶成分の融解温度が 125℃以上のポリエチレンとエチレ
ンαオレフィン共重合体の樹脂混合物(A)が、分子内
に炭素−炭素不飽和結合分を有する単量体(B)を必須
成分として含有する難燃化された樹脂組成物が挙げら
れ、該樹脂組成物を導体上に被覆し、該被覆層を電離放
射線により照射した直流用高圧リード線である。
【0012】具体的には、樹脂混合物(A)は結晶成分
の融解温度が 125℃以上であるポリエチレンと、エチレ
ン酢酸ビニル共重合体、エチレンメチルアクリレート共
重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレ
ンメチルメタクリレート共重合体、エチレン−1−ブテ
ン共重合体、エチレンプロピレンゴム等のエチレンαオ
レフィン共重合体の樹脂混合物であって、望ましくは樹
脂混合物中の結合成分の融解温度が 125℃以上であるポ
リエチレンの組成比は40重量%以上、80重量%以下であ
る樹脂混合物である。上記樹脂混合物(A) 100重量部
に対し、分子内に炭素−炭素不飽和結合分を有する反応
性単量体、望ましくは、トリメチロールプロパントリメ
タクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレー
ト、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレ
ート、トリアリルホルマールからなる群より選ばれた一
種又は混合物の単量体(B)を望ましくは1重量部ない
しは、10重量部と難燃剤、無機充填剤等を添加した樹脂
組成物を導体上に溶融押出し等の方法で1層もしくは複
数層に被覆し、当該被覆層に電離放射線を照射すること
によって本発明の直流用高圧電線が得られる。図1
(イ)及び(ロ)はいずれも本発明の直流用高圧電線の
具体例の横断面図で、1は導体、2及び3は前記樹脂組
成物による被覆層を示し、2及び3は同一組成物であっ
ても、前記樹脂組成物の範囲で、異種のものであっても
よい。
【0013】前記の難燃剤としては、臭素化ジフェニル
エーデル誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、臭素化
エポキシ樹脂誘導体、臭素化フタルイミド誘導体、パー
クロロペンタシクロデカン、トリクロロエチルホスフェ
ート等の有機ハロゲン化合物や三酸化アンチモン、硼酸
塩類、モリブデン酸化物類等が例示できる。無機充填剤
としては、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウムの
他に、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムが例示
できる。電離放射線としては、α線、β線(電子線)、
γ線、X線、紫外線等が例示できるが、電離放射線の透
過厚みや照射線量等工業的利用の観点からは電子線の利
用が特に好ましい。又前記樹脂組成物には必要に応じ酸
化防止剤、滑剤、着色剤、その他充填剤等を添加し得る
のは勿論である。
【0014】前記ポリオレフィン樹脂組成物の他の具体
例としては、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、金
属水酸化物を 100重量部以上 200重量部以下、ハロゲン
系難燃剤を5重量部以上、50重量部以下を混合するとき
に下記一般式で示される有機ケイ素化合物を1重量部以
上、10重量部以下の割合で添加混合した樹脂組成物が挙
げられ、該樹脂組成物を導体上に被覆し、該被覆層を電
離放射線により照射した直流用高圧リード線である。
【0015】
【化2】
【0016】ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレ
ンの他、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメチル
アクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共
重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチ
レン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共
重合体、エチレンプロピレンゴム等のエチレンαオレフ
ィン共重合体が挙げられ、特にエチレン酢酸ビニル共重
合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレン
エチルアクリレート共重合体が柔軟性と樹脂組成物とし
た場合の押出性の観点から好ましく使用できる。
【0017】ハロゲン系の難燃剤としては、パークロロ
ペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤や、臭素化ジフェ
ニルエーテル誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、臭
素化エポキシ樹脂誘導体、臭素化フタルイミド誘導体等
の臭素系の難燃剤や、臭素化フォスフェート等の含リン
系の臭素系難燃剤を例示でき、これらに三酸化アンチモ
ン、硼酸塩類、モリブデン酸化物等の難燃助剤を併用し
て難燃効果を高めることも可能である。ハロゲン系難燃
剤は、特に絶縁被覆厚が1.0mm を越える直流用高圧電線
の垂直燃焼性(VW−1)の観点から5〜50重量部の範
囲に設定するのが好ましく、5重量部未満では難燃性が
不足し、50重量部を越えると耐熱老化性に悪影響を与え
る。
【0018】金属酸化物としては、水酸化アルミニウ
ム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を例示で
き、この中でも押出加工性の観点から粒子径がおよそ
0.1〜3μmの範囲にある水酸化マグネシウムが好まし
く、脂肪酸塩やシランカップリング類等で表面処理して
いないものが、高圧カットスルー特性と初期破断抗張力
の観点から好ましい。金属酸化物の添加量は、高圧カッ
トスルー特性の観点から 100〜200 重量部の範囲に設定
するのが好ましく、 100重量部以下では高圧カットスル
ー特性が不足し、 200重量部を越えると押出性に悪影響
を与える。
【0019】又前述の一般式で示される有機ケイ素化合
物としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラ
ン、γ−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン等が
例示でき、当該有機ケイ素化合物はポリオレフィンとハ
ロゲン系難燃剤及び金属水酸化物を熱溶融混練する際に
添加して混練するのが好ましい。有機ケイ素化合物の添
加量は、金属水酸化物の添加量が100 〜 200重量部の範
囲では1〜10重量部の範囲が高圧カットスルー特性と初
期破断抗張力のバランスの観点から好ましく、1重量部
未満では高圧カットスルー特性が不足すると共に、初期
破断抗張力もポリオレフィン絶縁電線のUL規格値であ
る1.06kg/mm2 を合否の目安とすればこの値を下回り、
10重量部を越えると難燃性に悪影響を与える。
【0020】上記の樹脂組成物中には、タルク、クレ
ー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛等の
無機充填剤や酸化防止剤、着色剤、又架橋を促進するた
めにトリメチロールプロパントリメタクリレート等の多
官能性モノマー類等各種添加剤も必要に応じて適宣添加
でき、樹脂組成物の混合は、バンバリーミキサーや加圧
ニーダー、オープンロールミキサー、単軸あるいは二軸
混合機等の既知の混合装置で行なえる。
【0021】導体上への樹脂組成物の被覆は、既存の溶
融押出機で行なうことが可能であり、導体上に単層もし
くは同種の材料を多層に被覆してもよい。
【0022】樹脂組成物の架橋は、樹脂混合物中にあら
かじめ有機過酸化物を添加しておき、成形後に加圧蒸気
で加熱する方法を用いれば熱加硫が可能であるが、直流
用高圧電線とした場合の高圧カットスルー特性と被覆層
の抗張力、伸び等の機械的物性のバランスの観点からは
電離放射線の照射による架橋が好ましい。電離放射線源
としては、α線、電子線(β線)、γ線、X線、紫外線
等の電離放射線の照射による架橋も可能であり、電離放
射線源としては、特に電子線が透過厚みや照射線量と照
射所要時間等工業的利用の観点から好ましい。
【0023】
【実施例1】電線試料は次の方法で作成した。表1〜表
3に示した樹脂組成物を溶融押出法で外径 0.8mmφの軟
銅線上に厚み1.21mmで被覆した後、加速電圧1MeV の電
子線を照射して電線試料を得た。表1〜表3に使用した
樹脂組成物は、表1〜表3に記載しているポリエチレ
ン、エチレンαオレフィン共重合体、分子内に炭素−炭
素不飽和結合分を含有する単量体以外に、ポリエチレン
とエチレンαオレフィン共重合体の樹脂混合物 100重量
部に対し、テトラブロモビスフェノール誘導体(臭素含
量62重量%、分子量約8000)45重量部、三酸化アンチモ
ン粉末30重量部、クレー粉末15重量部、シリカ粉末5重
量部、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−
ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート]3重量部、ジステアリルチオジプロピオネート1
重量部、ステアリン酸亜鉛0.5重量部を共通に配合して
おり、樹脂組成物の作成は 150℃に加熱したオープンロ
ールミキサーで行ない、混合後ペレット状にして溶融押
出しに使用した。
【0024】表1〜表3で、高圧カットスルー試験は 1
25℃のギアオーブンで電線試料の両端に1ポンドの荷重
をかけ、30kVの直流電圧を印加してn=3で実施した。
耐電圧試験は電線試料を 158℃のギアオーブン内で7日
間熱老化した後、外径 0.5インチのマンドレルに7回巻
付け、 125℃のギアオーブン内で25kVの直流電圧を印加
しn=3で実施した。表1〜表3の高圧カットスルー試
験及び耐電圧試験の欄には、3点中の最初の1点が破壊
した時間を記載した。熱老化試験は電線試料を 158℃の
ギアオーブンで7日間熱老化した後の試料の伸び残率を
評価した。ここで、伸び残率(%)=熱老化試料の伸び
/初期伸び×100であり、伸び残率65%以上を合否の目
安とした。燃焼試験はVW−1法に従い、n=5で実施
した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】樹脂被覆層の組成と、高圧カットスルー試
験耐電圧試験、熱老化試験及び燃焼試験の特性は次のよ
うである。高圧カットスルー試験は、実施例1〜6及び
比較例12のように、融点が 125℃以上のポリエチレンと
エチレンαオレフィン共重合体の組成比率が重量比で40
/60以上であり、かつ分子内に炭素−炭素不飽和結合分
を有する単量体を含有する組成が 125℃の高圧カットス
ルー試験に合格する。但し、比較例2のような融点が 1
25℃以上のポリエチレンのみ組成では高圧カットスルー
試験には合格するが、初期伸びが著しく低下するという
問題がある。
【0029】耐電圧特性においては、比較例1,3,
4,5,6,7,8のように、分子内に炭素−炭素不飽
和結合分を有する単量体を含有しない組成では、8時間
に至る前に破壊するものが発生しており好ましくない。
これに対し、分子内に炭素−炭素不飽和結合分を有する
単量体を含有する実施例1〜6、比較例2,9,10,1
1,12の電線では8時間以上の耐電圧特性を示すことが
わかる。
【0030】耐老化特性とVW−1の燃焼試験について
考察すると、実施例1〜6、比較例11,12のように、分
子内に炭素−炭素不飽和結合分を有する単量体を含有す
る組成では、熱老化後の伸び残率ですべて65%を上回
り、しかもVW−1にも合格している。これに対し、分
子内に炭素−炭素不飽和結合分を有する単量体を含有し
ない組成である比較例5,6,7,8では、電子線の照
射線量が30Mradである比較例6,8はVW−1には合格
しているが、熱老化後の伸び残率が65%を下回り好まし
くない。一方照射線量が10Mradである比較例5,7は熱
老化後の伸び残率は65%を超えているが、VW−1にお
いては、不合格になる試料が発生しており好ましくな
い。
【0031】以上のように、高圧カットスルー特性、耐
電圧特性、VW−1燃焼試験、耐熱老化性のすべての特
性のバランスを考慮した場合、融点が 125℃のポリエチ
レンとエチレンαオレフィン共重合体の組成比率が40/
60以上であり、望ましくは40/60〜80/20の範囲にあ
り、かつ、分子内に炭素−炭素不飽和結合分を有する単
量体を含有する樹脂組成物が好ましいといえる。又分子
内に炭素−炭素不飽和結合分を有する単量体に関してさ
らに言えば、トリメチロールプロパントリメタクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリア
リルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートのよう
に、いわゆる三官機能の単量体を含有する組成の試料が
低い照射線量で効率よく直流用高圧リード線が製造でき
るのでより好ましい。
【0032】
【実施例2】電線試料を次のように作成した。表4〜6
に示した樹脂組成物を130℃に加熱したオープンロール
ミキサーを使用して、ポリオレフィン樹脂、フィラー
類、有機ケイ素化合物、酸化防止剤等を同時に添加して
混練後、ペレット化し、このペレットを溶融押出機で外
径 0.8mmφの軟銅導体上に押出被覆し、外径2.27mmφ及
び4.23mmφの絶縁電線を形成した後、加速電圧2MVの電
子線を照射して試験試料とした。
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】表4〜6の樹脂組成物は記載の配合材料の
他に、ポリオレフィン樹脂 100重量部に対し、三酸化ア
ンチモンを 100重量部、ペンタエリスリチルテトラキス
[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート]を3重量部、ジステアリルチオ
ジプロピオネート1重量部、ステアリン酸亜鉛 0.5重量
部を共通に配合した。
【0037】表4〜6で、高圧カットスルー試験は、 1
25℃のギアオーブン内で電線試料の両端に1ポンドの荷
重をかけ、2.27mmφの試料には15kVの直流、4.23mmφの
試料には60kVの直流を印加してn=3で試験して絶縁破
壊時間を測定し、3点とも8時間以上保持しているもの
を合格とした。熱老化試験は2.27mmφの電線試料を代表
として、 158℃のギアオーブン内で7日間熱老化した試
料と、 136℃60日間熱老化した試料の破断抗張力と伸び
の残率を評価した。ここで、残率(%)=(熱老化試料
の値/初期値)×100 であり、破断抗張力残率70%以
上、伸び残率65%以上を合否の目安とした。燃焼試験は
VW−1に従い、n=5で実施した。樹脂被覆層の組成
と高圧カットスルー試験、熱老化試験、燃焼試験などの
特性は次のようである。
【0038】実施例7〜13はポリオレフィン樹脂 100重
量部に対し、表面処理を施していない水酸化マグネシウ
ムが 100〜200 重量部の範囲にあり、ハロゲン系難燃剤
が10〜50重量部の範囲にあり、且つ、一般式[1]の有
機ケイ素化合物が1〜10重量部にある樹脂組成物を導体
上に押出被覆し、電子線照射により架橋したものであ
り、高圧カットスルー試験に合格し、燃焼試験も2.27
φ,4.23φともに合格している。初期破断抗張力も1.1
〜 1.3kg/mm2 の範囲にあり、UL規格で要求される1.
06kg/mm2 以上を満足し、 158℃7日および 136℃60日
の熱老化試験にも合格していることがわかる。また、こ
れらの試料は絶縁被覆のヤング率が、およそ3〜6kg/
mm2 であり、柔軟性にも優れた材料であることがわか
る。
【0039】比較例13は表面処理していない水酸化マグ
ネシウム 200重量部、ハロゲン系難燃剤が20重量部、一
般式[1]の有機ケイ素化合物が5重量部であり、電子
線照射による架橋を行なっていない試料である。試料で
は高圧カットスルー試験に不合格となり、初期破断抗張
力もUL規格値の1.06kg/mm2 を下回る。比較例14は一
般式[1]の有機ケイ素化合物を添加しない樹脂組成物
を絶縁被覆に使用したものであり、高圧カットスルー試
験に合格しない。比較例15は予めオレイン酸塩で表面処
理した水酸化マグネシウムを使用したものであり、燃焼
試験には合格するが、初期破断抗張力が小さく、高圧カ
ットスルー試験にも合格せず、熱老化試験後の伸び残率
の低下が著しい。比較例16は予めビニルシランで表面処
理した水酸化マグネシウムを使用したものであり、燃焼
試験には合格するが、初期破断抗張力が小さく、高圧カ
ットスルー試験にも合格せず、熱老化試験後の伸び残率
の低下が著しい。比較例17は予めγ−メタクリロシプロ
ピルトリメトキシシランで表面処理した水酸化マグネシ
ウムを使用したものであり、燃焼試験には合格するが、
初期破断抗張力が1.06kg/mm2 を下回り、高圧カットス
ルー試験にも合格せず、熱老化試験後の伸び残率が65%
を下回っている。比較例18は、一般式の有機ケイ素化合
物の代りにビニルトリエトキシシランを使用したもので
あるが、高圧カットスルー試験に合格せず、初期破断抗
張力も1.06kg/mm2 を満たさない。比較例19は、ポリオ
レフィン樹脂等の熱可塑性樹脂の架橋促進剤としてよく
用いられる多官能性モノマーであるトリメチロールプロ
パントリメタクリレートを添加して電子線照射時の架橋
の促進を行なったものであるが、高圧カットスルー試験
には合格せず、4.23φの試料の燃焼試験で不合格にな
る。比較例20は表面処理していない水酸化マグネシウム
が80重量部の試料であり、高圧カットスルー試験で合格
しない。比較例21は水酸化マグネシウムが 240重量部の
試料であり高圧カットスルー試験には合格するが、押出
外観がやや不良であり、初期伸びが 100%を下回り、実
用上問題がある。比較例22はハロゲン系難燃剤を添加し
ない試料であり、高圧カットスルー試験には合格する
が、VW−1試験において、2.27φの試料では合格する
が、4.23φの試料では不合格となる。比較例23,24はハ
ロゲン系難燃剤を使用せずにリン系難燃剤であるトリブ
チルフォスフェートやポリリン酸アンモニウムを使用し
たものであるが、比較例22と比べ却って難燃特性を悪化
させており、高圧カットスルー特性にも悪影響を与えて
いることがわかる。比較例25,26は有機過酸化物として
ジクミルパーオキシドをポリオレフィン樹脂 100重量部
に対して2重量部を添加した樹脂組成物を導体上に押出
被覆後、加圧水蒸気で熱加硫を行なった試料であるが、
高圧カットスルー特性を満足する比較例26は初期伸びが
100%を下回る問題があり、比較例25の試料は初期伸び
特性は問題ないが高圧カットスルー特性と耐熱老化特性
に問題があり、特性のバランスが取れない問題がある。
【0040】以上のように、EVA樹脂やEEA樹脂な
どのポリオレフィン樹脂 100重量部に対し、表面処理を
施していない水酸化マグネシウムを 100重量部以上 200
重量部以下、ハロゲン系難燃剤を5重量部以上50重量部
以下、及び、一般式で示される有機ケイ素化合物を1重
量部以上10重量部以下の割合で添加して混合してなる樹
脂組成物を作製し、これを導体上に被覆し、電離放射線
を照射することにより、言い換えると、樹脂組成物の製
造方法において、一般式で示される有機ケイ素化合物を
ポリオレフィン樹脂と、表面処理を施していない水酸化
マグネシウム、ハロゲン系難燃剤等のフィラー類を熱溶
融混練する際に添加して混練した組成物を使用し、電子
線等の電離放射線を照射することによりはじめて、高圧
カットスルー特性、難燃性(VW−1)に合格し、 125
℃グレード以上の耐熱老化性を有し、しかも柔軟性にも
優れる直流用高圧リード線が得られる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の直流用高
圧電線によれば、 125℃定格の直流用高圧電線が安価な
材料で効率よく製造でき、直流用高圧電線の分野におけ
る耐熱化の要求に呼応し得るものであり、利用価値は極
めて大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)及び(ロ)はいずれも本発明の直流用高
圧電線の具体例の横断面図である。
【図2】高圧カットスルー試験の説明図である。
【図3】VW−1燃焼試験の説明図である。
【符号の説明】
1 導体 2 本発明における樹脂組成物による被覆層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導体上の絶縁被覆がポリオレフィン樹脂
    組成物で形成されており、UL(Under Writers Labora
    tries )規格の垂直難燃性(VW−1)を有し、温度定
    格 125℃以上の特性を具えていることを特徴とする耐熱
    性直流用高圧リード線。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィン樹脂組成物が、結晶成分
    の融解温度が 125℃以上のポリエチレンとエチレンαオ
    レフィン共重合体の樹脂混合物(A)が、分子内に炭素
    −炭素不飽和結合分を有する単量体(B)を必須成分と
    して含有する難燃化された樹脂組成物であって、当該絶
    縁被覆層が電離放射線によって照射されていることを特
    徴とする請求項1記載の耐熱性直流用高圧リード線。
  3. 【請求項3】 ポリオレフィン樹脂組成物が、ポリオレ
    フィン樹脂 100重量部に対し、金属水酸化物を 100重量
    部以上、 200重量部以下、ハロゲン系難燃剤を5重量部
    以上、50重量部以下を混合するときに下記一般式で示さ
    れる有機ケイ素化合物を1重量部以上、10重量部以下の
    割合で添加混合した樹脂組成物であって、当該絶縁被覆
    層が電離放射線によって照射されていることを特徴とす
    る請求項1記載の耐熱性直流用高圧リード線。 【化1】
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JP2006083322A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Riken Technos Corp 架橋熱可塑性難燃樹脂組成物、その製造方法及びその成形体
JP2008501846A (ja) * 2004-06-15 2008-01-24 エルジー ケーブル リミテッド 耐熱変形及び耐カットスルー樹脂組成物及び、これを利用した絶縁材料と電線
WO2011043260A1 (ja) * 2009-10-06 2011-04-14 住友電気工業株式会社 絶縁チューブ及び熱収縮チューブ
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CN104177695A (zh) * 2014-09-17 2014-12-03 朱忠良 一种交联无卤阻燃电缆料

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