JP7498253B1 - Lanケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】細径化可能で、シースと絶縁電線との間に設けられる難燃テープを省略しても、高い難燃性を確保できるLANケーブルを提供する。【解決手段】複数本の絶縁電線3を撚り合わせた対撚り線と、対撚り線の外周を被覆するシース5と、を備え、その外径が8.8mm以下であり、シース5は、ベースポリマと、金属水酸化物と、カーボンブラックと、を含むノンハロゲン難燃性樹脂組成物から構成され、金属水酸化物は、ベースポリマ100質量部に対して、180~190質量部含有され、カーボンブラックは、ベースポリマ100質量部に対して、15~20質量部含有され、絶縁電線の外径が1.43mm以下であり、対撚り線とシース5との間に難燃テープを有しない、LANケーブル10。【選択図】図1

Description

本発明は、LANケーブルに関する。
LANケーブルは、LAN(Local Area Network)構築に用いられるケーブルである。このLANケーブルは、導体の外周に絶縁層を形成した絶縁電線の外周を被覆するシースを備えた構成からなり、そのシースには、ノンハロゲン難燃樹脂組成物を用いるものが知られている。
なかでも、鉄道車両用のLANケーブルは、欧州の統一規格であるEN規格の火災安全性(一条難燃試験)を満足するような非常に高い難燃性が要求される場合があり、かつケーブルの強度、伸び、低温特性等の物性についても満足することが求められる。
このような高い難燃性が要求される場合、一般に、添加する難燃剤の配合量を多くすることが考えられるが、難燃剤の配合量が多くなりすぎると、シースの物性が低下してしまう。そのため、シースのみでこれら特性を満足させるLANケーブルを提供することは難しい。
そこで、上記のような特性を満足するLANケーブルとして、絶縁電線とその外周を被覆するシースとの間に、ポリイミドフィルム等の難燃テープを設けるとともに、シースを所定の架橋度として、LANケーブル全体として上記特性を満足するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2021-64623号公報
ところで、近年、このようなLANケーブルにおいても細径化が求められるようになってきているが、上記用途においては、高い難燃性を確保する必要があるため、シースと絶縁電線との間に設けられる難燃テープを省略することができず、細径化することに限界があった。
そこで、本発明の目的は、細径化可能で、シースと絶縁電線との間に設けられる難燃テープを省略しても高い難燃性を確保できるLANケーブルを提供することにある。
一実施の形態におけるLANケーブルは、複数本の絶縁電線を撚り合わせた対撚り線と、前記対撚り線の外周を被覆するシースと、を備えたLANケーブルにおいて、前記LANケーブルは、その外径が8.8mm以下であり、前記シースは、ベースポリマと、金属水酸化物と、カーボンブラックと、を含むノンハロゲン難燃性樹脂組成物から構成され、前記金属水酸化物は、前記ベースポリマ100質量部に対して、180~190質量部含有され、前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、15~20質量部含有され、前記絶縁電線の外径が1.43mm以下であり、前記対撚り線と前記シースとの間に難燃テープを有しない。
一実施の形態のLANケーブルによれば、細径化可能で、シースと絶縁電線の間に設けられる難燃テープを省略しても高い難燃性を確保できるLANケーブルを提供することができる。
一実施の形態であるLANケーブルの概略断面図である。 作製例に係るLANケーブルの概略断面図である。
以下、本発明のLANケーブルについて、実施の形態を参照しながら説明する。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために断面図であってもハッチングを省略する場合がある。また、同様に、平面図であってもハッチングを付す場合がある。
[LANケーブル]
本実施の形態に係るLANケーブルについて、図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態であるLANケーブルの概略断面図である。図1に示したように、本実施の形態に係るLANケーブルは、導体1の外周に絶縁層2を備えた絶縁電線3の複数本を撚り合わせた対撚り線と、対撚り線の外周を覆うように設けられた編組4と、さらに編組4を被覆するシース5とを備えたLANケーブル10である。このLANケーブル10においては、複数本の絶縁電線3を撚り合わせた対撚り線として構成されており、対撚り線の外周にはシールド6が設けられている。
このようなLANケーブルにおいて、シース5と絶縁電線3との間に(シース5の直下に)、従来は難燃テープ等の所定の難燃層を設けることで、EN45545の海外規格に代表される難燃性試験に求められる高難燃性を達成していたが、この難燃テープを有する分だけケーブルの径が太くなってしまう。
これに対して、本実施形態に係るLANケーブル10は、このような難燃テープを設けることなく、上記規格を満足する難燃性を得ることができ、ケーブルを細径化可能としたものであって、特に、鉄道車両用に好適なLANケーブルである。
〔絶縁電線〕
絶縁電線3は導体1の外周に絶縁層2を備えて構成される。導体1としては、特にその材質を限定するものではなく公知の導体を用いることができ、例えば、銅または銅合金、アルミまたはアルミ合金を使用することができる。導体1の構成についても特にこれを限定するものではないが、単線の他、ケーブルの屈曲性を考慮すると、複数の素線を撚り合わせた撚り線構造を採用するのが好適である。また、適宜これにメッキを施すことも可能であり、例えばスズめっきなどを被覆することもできる。
絶縁層2の材質は特に限定しないが好適にはポリエチレンであり、より好適には誘電率が2.5以下であるポリエチレンである。ポリエチレンの誘電率が2.5以下であることにより、絶縁層の静電容量が小さくなる。そのことにより、LANケーブルの伝送特性が一層向上する。絶縁層全体の誘電率は、2.5以下であることが好ましい。この場合、LANケーブルの伝送特性が一層向上する。絶縁層全体の誘電率は、1.9以上2.3以下がより好ましく、1.9以上2.1以下がさらに好ましい。
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられ、より好適には、低密度ポリエチレンであり、特に好適には、密度0.930以下、MFR(メルトフローレート)0.30以下の低密度ポリエチレンである。上記のポリエチレンのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
絶縁層2は、酸化防止剤、銅害防止剤、着色剤等をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤、銅害防止剤、着色剤等の添加量は、特に限定されないが、絶縁層2全体の誘電率が2.5以下となる添加量が好ましい。着色剤等の添加量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。また、絶縁層2は難燃剤を含まなくてもよい。以下に説明する特性を備えるシースを用いることにより、絶縁層2が難燃剤を含まない樹脂組成物であったとしても、高い難燃性を満足するLANケーブル10を実現することができる。
ここで、ポリエチレンは、公知の手法を用いて発泡させてもよい。例えば、窒素等の不活性ガスを用いたり、ADCA(アゾジカルボンアミド)等の化学発泡剤を用いたりする方法で、ポリエチレンを発泡させることができる。ポリエチレンの発泡度は、15質量%以上であることが好ましい。
〔対撚り線〕
対撚り線は、複数本の絶縁電線3が撚り合わされて構成される。上記の通り、このLANケーブル10は、対撚り線を備える点に特徴を有する。図1で示したLANケーブル10では、2本の絶縁電線3から構成される対撚り線を4組有している例を示している。
このとき、対撚り線を構成する絶縁電線の外径rは、例えば、1.43mm以下のような細い径で構成され、そのコアの外側にシールド6が設けられている。本実施の形態においては、シース5を十分に難燃性の高い樹脂組成物で構成している。そのため、もう1つの課題であるLANケーブル10の細径化を達成するために、上記絶縁電線の外径rを上記のように細径化し、LANケーブルの外径を細径化してもLANケーブルの難燃性を確保することが可能であることを見出した。これによって、これまでに誰もなし得なかった細径で、かつ、高難燃性のLANケーブル10を得ることができる。なお、絶縁電線の外径rが小さくなることで、絶縁電線3で使用される可燃性である絶縁層の使用量を減らすことができ、この点でもLANケーブル10の難燃性を確保する点でプラスに作用する。
シールド6は、対撚り線の周囲に巻きまわして構成され、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂をテープ状に成形してなる基材層と、基材層の表面にアルミニウム箔等の金属箔を貼り付けてなる金属層と、を有しているシールドテープを使用することができる。
また、ここで、絶縁層2は、上記説明で発泡層としてもよい旨の説明を記載しているが、発泡層を含む多層構造の絶縁層とすることもできる。この多層構造の絶縁層2として、例えば、導体1側から内層、中間層、外層の3層構造としたとき、内層および外層は、被覆層(スキン層)として構成し、中間層を発泡層とすることが好ましい。このようにスキン層と発泡層とを組み合わせることで、絶縁電線3の外径を小さくでき、LANケーブルをより細径化できる。また、絶縁層2をこのような3層構造とすることで、発泡部分(空気)を有するため誘電率も良好なものとできる。
この絶縁層2は、上記説明したように、例えば、ポリエチレン製の材料で形成でき、例えば、内層と外層をポリエチレン製の被覆層(スキン層)とし、中間層をポリエチレン製の発泡層として、内層、中間層および外層の全てを、ポリエチレン製とすることもできる。
このとき、中間層の厚さを0.25mm~0.4mmとすることが好ましく、0.25mm~0.35mmとすることがより好ましい。さらに、3層構造の合計の厚さを、0.35mm~0.45mmとすることが好ましい。
〔編組〕
編組4は、金属線を複数本組み合わせて編んだものであり、LANケーブル10におけるノイズの低減や、LANケーブル10自体の強度を向上させるために設けられる。編組4は、例えば、クロス編組である。この編組4を構成する金属線としては、銅、銅合金等の金属線を用いることができる。
〔シース〕
シース5は、ベースポリマと、金属水酸化物と、カーボンブラックとを有するノンハロゲン樹脂組成物より構成される。本実施の形態では、これら成分が特定の割合で配合されてなるもので、以下各成分について詳細に説明する。
(ベースポリマ)
ベースポリマは、ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリオレフィンおよびエチレン酢酸ビニル共重合体を有する。
(1)ポリオレフィン
ここで用いられるポリオレフィンは、110℃以上の融点を有するポリオレフィンである。融点は、示差走査熱量測定(DSC)法にて求めることができる。この110℃以上の融点を有するポリオレフィンを用いることで、シース5の耐油性を向上させることができる。
耐油試験としては、試験片を、100℃に加熱したIRM902試験油に72時間浸漬した後、引張特性を調べ、浸漬後の引張特性が浸漬前の引張特性に対してどの程度変化したかを確認する方法がある。例えば、融点が110℃を下回ると、耐油試験中に結晶が融解し油の拡散を防ぐことが難しくなり、引張特性の変化率が大きくなる。
融点が110℃以上のポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ただし、高密度ポリエチレンは結晶化度が高すぎて、破断伸びが低く、ポリプロピレンは電子線照射などの架橋において崩壊し易い。特性のバランスを得るには低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
(2)無水マレイン酸変性ポリオレフィン
無水マレイン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを無水マレイン酸で変性したものである。
変性する材料として用いることができるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体などのエチレン-α-オレフィンなどを用いることができる。
ポリオレフィンを無水マレイン酸で変性する方法は限定されず、熱のみの反応でも得ることができる。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン中の無水マレイン酸はグラフト共重合していてもよく、また、ブロック共重合していてもよい。
無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、10~35質量部とする。10質量部未満では必要な低温特性を満足することができず、35質量部より多いと、初期の破断伸びが不足する。
より高い低温特性を得るためには、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量を、ベースポリマ100質量部に対し、25~35質量部とすることがより好ましい。
(3)エチレン酢酸ビニル共重合体
ベースポリマとして、エチレン酢酸ビニル共重合体を用いることで、燃焼時において脱酢酸による吸熱反応が生じ、難燃性を向上させることができる。ベースポリマ100質量%中の酢酸量(CH3 COOの量)を2.3質量%以上とすることで高い難燃性を得ることができる。
(金属水酸化物)
ここで用いられる金属水酸化物は難燃剤である。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。水酸化カルシウムの分解時の吸熱量は、約1000J/gであるのに対して、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの吸熱量は、1500~1600J/gであり、吸熱量が高い。このため、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを添加することにより、難燃性が向上する。
さらに、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。水酸化マグネシウムは水酸化アルミニウムより、分解温度が高いため、成形加工性が向上する。
金属水酸化物は、分散性等を良好とするために、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸等によって表面処理することができる。
金属水酸化物は、ベースポリマ100質量部に対し、180~190質量部添加する。180質量部未満だと十分に難燃性を得ることができず、190質量部より多いと破断伸びが低下する。
(カーボンブラック)
ここで用いられるカーボンブラックは難燃助剤である。添加するカーボンブラックの種類に特に限定はないが、破断伸び等を考慮するとFT、MT級カーボンを用いることが好ましい。
所定の難燃性を確保するためには難燃剤として大量の金属水酸化物を添加する必要がある。しかしながら、大量に難燃剤を添加すると樹脂組成物の機械特性を損ねる恐れがある。そこで、難燃助剤としてカーボンブラックを添加する。カーボンブラックの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、15~20質量部である。カーボンブラックの添加量は多いほうが難燃性を向上することが可能であるが、20質量部より多いと、カーボンブラックの凝集により粗粒が生じ、初期の破断伸びおよび低温特性が低下する。
(その他の添加剤)
上記材料の他、架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、滑剤、着色剤、補強剤、界面活性剤、無機充填剤、酸化防止剤、可塑剤、金属キレート剤、発泡剤、相溶化剤、加工助剤、安定剤等を添加することができる。
なお、難燃助剤として、上記カーボンブラック以外の難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、赤リンなどのリン系難燃助剤やメラミンシアヌレートなどのトリアジン系難燃助剤があるが、ホスフィンガスやシアンガスを発生する恐れがあり、取扱いに注意が必要となる。これら以外の難燃助剤であれば適用可能で、例えば、クレー、シリカ、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、水酸化ドロマイド、シリコーンなどを用いることができる。
(ゲル分率)
ゲル分率はポリマの架橋の程度を確認する手法である。ゲル分率の測定方法について説明する。まず、試料を秤量(W1)し、110℃に熱したキシレンに24時間浸漬させる。浸漬後に20℃で3時間、大気圧下で放置し、80℃で4時間真空乾燥させる。この後の試料の重量(W2)と、キシレン浸漬前の重量(W1)との重量比((W2/W1)×100、単位[%])をゲル分率と定義する。ゲル分率が85%未満だと、耐油性が十分とは言えない。
架橋処理は有機過酸化物または硫黄化合物あるいはシラン等を用いた化学架橋、電子線、放射線等による照射架橋、その他の化学反応を利用した化学架橋等があり、いずれの架橋方法も適用可能である。中でも電子線を用いた照射架橋は、他の照射架橋よりも汎用的で、化学架橋のように押出成形時のスコーチのリスクが無いため、本実施の形態の架橋処理として用いることが好ましい。
〔ケーブルの外径〕
また、本実施の形態において、LANケーブル10は、その外径が8.8mm以下である点に特徴を有する。今回の高難燃性のケーブルの構成に関して鋭意検討したところ、ケーブルの外径が細くなるほど、EN45545等の難燃性試験において燃焼しやすくなることがわかった。
そのような条件においても、難燃テープを設けずに、かつ、ケーブルを細径化した場合であっても、上記難燃性試験における難燃性を満たす高難燃性のLANケーブルを得ることができることについては、本発明者らが初めて見出したものである。
このとき、シース5の厚さは、0.68mm~0.92mmが好ましく、0.72mm~0.88mmがより好ましい。この厚さが、0.92mmを超えると、難燃性を確保しやすいが、本実施の形態で求める細径化を満足しにくくなり、また、0.68mm未満であると、十分な難燃性を確保できなくなるおそれがある。
[LANケーブルの製造方法]
本実施の形態のケーブル10は、例えば、以下のように製造される。まず、絶縁電線の絶縁層2となる樹脂組成物を用意し、その後、導体1を準備する。そして、押出成形機により、導体1の周囲を被覆するように、絶縁層用の樹脂組成物を押出して、所定厚さの絶縁層2を形成する。こうすることで、絶縁電線3を製造することができる。
この絶縁層2としては、汎用の材料を用いて形成でき、ノンハロゲンのポリマを用いることが好ましい。このポリマとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エステル共重合体などのポリオレフィンが挙げられる。
また、ゴム材料も適用可能であり、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、アクリルゴム、エチレン-アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレン-オクテン共重合体ゴム、エチレン-アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレン-オクテン共重合体ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1共重合体ゴム、ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム、ポリスチレンブロックを有するブロック共重合体ゴムなどが挙げられる。
さらに、エンジニアリングプラスチックも適用することができ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルサルホンなどが挙げられ、これらの熱可塑性エラストマーも使用することができる。この絶縁層2のベースポリマは単独でも2種以上のブレンドでもよい。
絶縁層2において、これらの材料で構成された樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、滑剤、着色剤、補強材、界面活性剤、無機充填剤、可塑剤、金属キレート剤、発泡剤、相溶化剤、加工助剤、安定剤等を添加することができる。
本実施の形態では、絶縁電線3を製造した後に、絶縁層2を構成する樹脂組成物を、例えば電子線架橋法または化学架橋法により架橋できる。
電子架橋法を用いる場合には、樹脂組成物を絶縁電線の絶縁層2として成形した後に、例えば1~30MRadの電子線を照射して架橋する。化学架橋法を用いる場合には、樹脂組成物にあらかじめ架橋剤を添加しておき、この樹脂組成物を絶縁電線3の絶縁層2として成形した後に、熱処理して架橋する。
得られた絶縁電線3の2本を撚り合わせて対撚り線とし、この対撚り線の周囲をシールドテープで巻きまわして得られたシールド6を有する対撚り線の4本を撚り合わせ、その後、これを被覆するように、編組4を公知の手法により形成する。さらに、このようにして得られた編組4の外周に、本実施の形態の樹脂組成物を押出して、所定厚さのシース(被覆層)5を形成する。こうすることで、本実施の形態のケーブル10を製造することができる。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[シース材料の作製例1~3]
シースの材料として、表1および表2に示す配合の通り調製した。これらの配合において、加圧ニーダによって220℃になるまで混練してなるペレットをシースの材料として作製した。
Figure 0007498253000002
Figure 0007498253000003
〔シースの材料〕
なお、表1中、用いた材料は以下の通りである。
(ポリマ)
PE:プライムポリマ社製、SP1510(Tm117℃)
EVA:三井・ダウ・ポリケミカル株式会社製、エバフレックスEV45X
変性ポリオレフィン:三井化学株式会社製、タフマ MH5040
(難燃剤)
水酸化マグネシウム:神島化学工業株式会社製、マグシースS4
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、アサヒサーマル
〔シース材料の評価〕
得られた樹脂組成物について、以下の特性に関し評価を行った。
(1-1)シース材料の難燃性(VFT)
得られた樹脂組成物を用い、難燃性評価用の試験用ケーブルを作製した。この試験用ケーブルは、図2に示した構成の試験用ケーブル50として、シースの材料を厚さ0.8mmで被覆し、照射量5MRadで照射架橋させて、外径が5.8mmのケーブルを作製した。
得られた試験用ケーブルの難燃性を、規格EN60332-1-2に準拠した垂直燃焼試験により評価し、合格したものを「○」、不合格だったものを「×」とした。
(1-2)シース材料の初期引張試験
上記と同様に得た図2に示した構成の試験用ケーブルから、シースを引き剥がしダンベル片を作製した。次に、その試験片を用いて、EN60811-501に準拠し、引張速度が250mm/minの条件で引張試験を行なった。伸びについては、伸びが125%未満の場合は×(不合格)とし、伸びが125%以上の場合は○(合格)とした。
また、引張り強さについては、引張強さが10MPa未満の場合は×(不合格)とし、10MPa以上の場合は○(裕度を持って合格)とした。
(1-3)シース材料の耐油性試験
上記と同様に得た図2に示した構成の試験用ケーブルから、シースを引き剥がしダンベル片を作製した。その試験片を用いて、EN60811-404に準拠し、100℃に熱したIRM902油に72時間浸漬し、試験片を250mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの荷重および伸びを測定した。試験油に浸漬する前の試験片の引張強さ(A1)、破断伸び(B1)と、試験油に浸漬した後の試験片の引張強さ(A2)、破断伸び(B2)と、から引張強さ変化率(A2/A1)×100[%])、破断伸び変化率((B2/B1)×100[%])を算出した。引張強さ変化率75~125%、破断伸び変化率65~135%の範囲のものを良(〇)とし、引張強さ変化率70~75%または125~130%、破断伸び変化率60~65%または135~140%の範囲のものを可(△)とした。
(1-4)シース材料の耐燃料性試験
上記と同様に得た図2に示した構成の試験用ケーブルから、シースを引き剥がしダンベル片を作製した。その試験片を用いて、EN60811-404に準拠し、70℃に熱したIRM903油に168時間浸漬した後、250mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの荷重および伸びを測定した。試験油に浸漬する前の試験片の引張強さ(A1)、破断伸び(B1)と、試験油に浸漬した後の試験片の引張強さ(A2)、破断伸び(B2)と、から引張強さ変化率(A2/A1)×100[%])、破断伸び変化率((B2/B1)×100[%])を算出した。引張強さ変化率70~130%、破断伸び変化率60~140%の範囲のものを合格(〇)とした。
(1-5)シース材料の低温特性試験
上記試験用ケーブルについて、EN60811-504に準拠し、低温曲げ試験を行った。-40℃と-50℃にて各条件でN=2として試験を実施し、二本とも合格(ひび・ワレなし)のものを「○」、一本のみ合格のものを「△」とした。
[実施例1]
次いで、図1で示した構成のLANケーブルを以下のように作製した。
直径0.565mmの導体に、内層となるポリエチレン層を0.01mmで被覆し、発泡度を30%とした0.36mmの発泡ポリエチレン層中間層とし、外層として0.05mmのポリエチレン層を被覆した。
上記に対して22Mradで照射架橋を行い、厚さ0.42mmの絶縁層を有する外径1.40mmの絶縁電線を得た。
次に、その絶縁電線を2本撚り合わせたもの(1対)に、アルミラミネートPETテープを縦添えしたものを4対作製し、4対を撚り合わせた上に銅編組をかぶせ、さらに表1に示す作製例1のシース材料を厚さ0.78mmで被覆し、照射量5Mradで照射架橋させて、図1で示した構成の実施例1のLANケーブルを得た。
[実施例2]
次に、直径0.565mmの導体に、内層となるポリエチレン層を0.01mmで被覆し、発泡度を50%とした0.30mmの発泡ポリエチレン層中間層とし、外層として0.05mmのポリエチレン層を被覆した。
上記に対して22Mradで照射架橋を行い、厚さ0.36mmの絶縁層を有する外径1.30mmの絶縁電線を得た。
次に、その絶縁電線を2本撚り合わせたもの(1対)に、アルミラミネートPETテープを縦添えしたものを4対作製し、4対を撚り合わせた上に銅編組をかぶせ、さらに表1に示す作製例1のシース材料を厚さ0.78mmで被覆し、照射量5Mradで照射架橋させて、図1で示した構成の実施例2のLANケーブルを得た。
得られたLANケーブルの構成の特徴については、以下に説明する比較例も含め、表3に示した。
[比較例1]
従来例として、実施例1のシース材料を作製例3とした図1に示した構成の比較例1のLANケーブルを得た。
[比較例A~C]
なお、実施例1~2、比較例1のそれぞれにおいて、銅編組とシースとの間にポリイミド製の難燃テープを1/4ラップで横巻きしたLANケーブルを作製し、これらLANケーブルをそれぞれ比較例A~Cとした。
Figure 0007498253000004
〔LANケーブルの評価〕
実施例1~2、比較例1および比較例A~Cで得られたLANケーブルについて、上記シース材料の評価と同様の操作、評価基準により、難燃性(VFT)、初期引張試験、耐油性試験、耐燃料性試験、低温特性試験のそれぞれについて評価を行った。また、得られたLANケーブルについては、老化後引張試験も行った。その結果を表3に併せて示した。
(2-1)ケーブルの老化後引張試験
得られたケーブルからシースを引き剥がしダンベル片を作製した。次に、その試験片を用い、120℃×240hで処理した後、250mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの荷重および伸びを測定した。熱処理前の試験片の引張強さ(A1)、破断伸び(B1)と、熱処理後の試験片の引張強さ(A2)、破断伸び(B2)と、から引張強さ変化率(A2/A1)×100[%])、破断伸び変化率((B2/B1)×100[%])を算出した。評価は、引張強さ変化率が70~130%、破断伸び変化率が70~130%の場合を合格「○」とした。
以上の結果から、実施例1~2では、所定の樹脂組成からなるシースを設けることで、シースと絶縁電線の間に設けられる難燃テープを省略しても高い難燃性を確保でき、シースの強度、伸び、低温特性等の物性も満足するLANケーブルが得られることがわかった。また、実施例2が、より細径化可能なケーブルであることも確認できた。
一方、比較例1では、難燃テープを用いないと、鉄道車両用として十分な難燃性が得られないことがわかった。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
1 導体
2 絶縁層
3 絶縁電線
4 編組
5 シース
6 シールド
10 LANケーブル
50 試験用ケーブル

Claims (4)

  1. 複数本の絶縁電線を撚り合わせた対撚り線と、前記対撚り線の外周を被覆するシースとを備えたLANケーブルにおいて、
    前記LANケーブルは、その外径が8.8mm以下であり、
    前記シースは、ベースポリマと、金属水酸化物と、カーボンブラックと、を含むノンハロゲン難燃性樹脂組成物から構成され、
    前記金属水酸化物は、前記ベースポリマ100質量部に対して、180~190質量部含有され、
    前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、15~20質量部含有され、
    前記絶縁電線の外径が1.43mm以下であり、
    前記対撚り線と前記シースとの間に難燃テープを有せず、
    前記絶縁電線は、絶縁層が発泡層を含む構造である、LANケーブル。
    LANケーブル。
  2. 請求項1に記載のLANケーブルにおいて、
    前記対撚り線と前記シースとの間に編組を有する、LANケーブル。
  3. 請求項1に記載のLANケーブルにおいて、
    前記金属水酸化物が、前記ベースポリマ100質量部に対して、180~185質量部含有され、前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、15~20質量部含有されている、LANケーブル。
  4. 請求項に記載のLANケーブルにおいて、
    前記絶縁層が3層構造であり、該3層構造の合計の厚さが0.35~0.45mmである、LANケーブル。
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