JPH0579462A - スクロールポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 吐出圧の脈動を充分に低減することができる
スクロールポンプを提供すること。 【構成】 固定スクロール１７の巻数をＮとしたとき、
可動スクロール２６はその巻数が、Ｎ−１、に形成され
ており、かつ、固定スクロール１７の巻き始め端１７ａ
と、可動スクロール２６の巻き始め端２６ａとが揃えら
れている。可動スクロール２６と固定スクロール１７と
によってそれぞれ形成される第１作動室Ａと第２作動室
Ｂによる吐出行程および吸入行程のタイミングが１８０
度ずれるため、スクロールポンプ１０全体としての吐出
圧の脈動は低減される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、スクロールポンプに関
し、特に、吐出圧力の脈動を低減する技術に係り、例え
ば、自動車のエンジンに燃料を供給する燃料ポンプに利
用して有効なものに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、自動車のエンジンに燃料を供給
する燃料ポンプとしては、ベーンポンプ等が使用されて
いるが、スクロールポンプを燃料ポンプに使用する試み
が、例えば、特開昭５９−１８５８６１号公報に開示さ
れている。。

【０００３】すなわち、この公報には、回転駆動される
可動部材と固定部材との対向面にそれぞれ中心が互いに
偏心したうず巻状の突条（可動スクロールと固定スクロ
ール）が設けられ、両スクロール間に形成される密閉空
間（作動室）に可動スクロールの回転に伴って燃料が吸
引され、圧縮吐出するように構成されているスクロール
ポンプと、モータハウジングに収納され、可動スクロー
ルを回転駆動させるモータとにより燃料ポンプが構成さ
れており、前記モータハウジング内には前記密閉空間か
ら吐出された燃料が流通され、この燃料を噴射ポンプあ
るいは噴射ノズルに供給するための燃料流路が形成され
ている燃料ポンプ、が開示されている。そして、この燃
料ポンプによれば、スクロールポンプにより吐出された
燃料がポンプ駆動用のモータのハウジング内に流通され
るため、吐出圧の脈動および騒音が抑制される旨が記載
されている。

【０００４】しかしながら、このようなスクロールポン
プにおいては、可動スクロールと固定スクロールとが同
一条件に形成され、かつ、位相が互いに１８０度ずらさ
れた状態でそれぞれ組み合わされているため、両スクロ
ールによってそれぞれ形成される一対の密閉空間が略同
時に吐出作動する状態になり、その結果、スクロールポ
ンプ自体から吐出される燃料の脈動が大きくなるため、
実用に未だ供し得ないという問題点がある。

【０００５】本発明の目的は、吐出圧力の脈動を充分に
低減することができるスクロールポンプを提供すること
にある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係るスクロール
ポンプは、固定スクロールの巻数をＮとしたとき、可動
スクロールはその巻数が、Ｎ−１、に形成されており、
かつ、固定スクロールの巻き始め端と、可動スクロール
の巻き始め端とが揃えられていることを特徴とする。

【０００７】

【作用】前記した手段によれば、可動スクロールと固定
スクロールとによってそれぞれ形成される第１作動室と
第２作動室とによる吐出行程および吸入行程のタイミン
グが１８０度ずれるため、スクロールポンプ全体として
の吐出圧力の脈動は低減されることになる。

【０００８】

【実施例】図１は本発明の一実施例であるスクロールポ
ンプを示す正面断面図、図２はそのスクロールポンプが
使用されている燃料ポンプを示す一部省略一部切断側面
図、図３（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）はその作用を
説明するための各説明図、図４（ａ）、（ｂ）、
（ｃ）、（ｄ）は同じく各説明図である。

【０００９】本実施例において、本発明に係るスクロー
ルポンプは、エンジンに燃料を送給するための燃料ポン
プに使用されている。この燃料ポンプ１はスクロールポ
ンプ１０と、これを駆動するためのモータ２とを備えて
いる。モータ２は一端が開口され他端が閉塞されたハウ
ジング３を備えており、このモータハウジング３の室４
内には固定子５および回転子６が組み込まれている。そ
して、回転子６は通電に伴って固定子５の内側で回転す
るように構成されており、この回転によって回転子６に
固定された回転軸８が回転されるようになっている。ま
た、モータハウジング３の閉塞壁には燃料送給パイプ７
がハウジング室４内に連通するように接続されている。

【００１０】モータハウジング３の開口側端部にはスク
ロールポンプ１０が組み込まれている。スクロールポン
プ１０は一端が開口され他端が閉塞された短尺の略円筒
形状に形成されているポンプケーシング１１を備えてお
り、このケーシング１１はモータハウジング室４の端部
に同心的に嵌入されている。ポンプケーシング１１の中
空部にはポンプ室１２が形成されており、ポンプ室１２
のモータ２側底部には略円板形状に形成された固定プレ
ート１３が嵌入されている。固定プレート１３の中心部
には吐出口１４がポンプ室１２の中心部に連通するよう
に円形形状に開設されており、この固定プレート１３お
よびポンプケーシング１１には第１連通路１５および第
２連通路１６が、吐出口１４とモータハウジング室４と
を連通されるようにそれぞれ開設されている。

【００１１】そして、固定プレート１３のポンプ室１２
側の端面にはうず巻形状に形成された固定スクロール１
７が一体的に突設されており、この固定スクロール１７
は後記する可動スクロールに組み合わされることによ
り、第１作動室Ａおよび第２作動室Ｂを形成し、互いに
協働して後述するポンプ作用を実行するように構成され
ている。

【００１２】ポンプケーシング１１の開口側にはポンプ
ヘッド２０がその開口を閉塞するように当接されてお
り、このポンプヘッド２０の外周辺においてモータハウ
ジング３の端辺がかしめ加工されることにより、スクロ
ールポンプ１０はモータ２に一体的に連設された状態に
なっている。ポンプヘッド２０におけるポンプ室１２側
の端面には吸入口２１がポンプ室１２に連通するように
略円形の環状溝形状に形成されている。また、ポンプヘ
ッド２０には吸入路２２が一端において吸入口２１に連
通するように開設されており、この吸入路２２は他端に
おいて燃料タンク（図示せず）に流体的に接続されるよ
うになっている。

【００１３】ポンプヘッド２０のポンプ室１２側端面に
は円板形状に形成された可動プレート２３が摺動自在に
当接されており、この可動プレート２３はモータ回転軸
８により偏心旋回運動されるように構成されている。す
なわち、モータ回転軸８はポンプケーシング１１に挿通
されて、ポンプケーシング１１に嵌装された軸受１８に
より回転自在に支承され、挿通端部が可動プレート２３
に挿入されている。回転軸８における可動プレート２３
への挿入端部には偏心軸９が一体的に形成されており、
この偏心軸９は回転軸８の回転中心Ｏに対して距離Ｅだ
け偏心されている。この偏心軸９には軸受２４を介して
可動プレート２３が互いに回転自在に嵌合されている。
また、可動プレート２３はポンプヘッド２０との間に介
設された係合手段２５により、摺動を許容された状態で
回り止めされている。したがって、可動プレート２３は
回転軸８の回転に伴って回転軸８の回転中心Ｏを中心に
して偏心旋回運動するようになっている。

【００１４】可動プレート２３のポンプ室１２側端面に
は、うず巻形状に形成された可動スクロール２６がポン
プ室１２内へ突出するように一体的に突設されており、
固定スクロール１７の内周面と可動スクロール２６の外
周面とで構成する第１作動室Ａ、および、固定スクロー
ル１７の外周面と可動スクロール２６の内周面とで構成
する第２作動室Ｂをそれぞれ形成するように組み合わさ
れている。そして、可動スクロール２６の固定スクロー
ル１７に対する運動に伴って、両作動室ＡおよびＢの容
積のそれぞれが漸次増減されて行くことにより、後述す
るようなポンプ作用が実行されるようになっている。

【００１５】そして、本実施例において、固定スクロー
ル１７はその巻数が２回になるように形成されており、
可動スクロール２６はその巻数が１回になるように形成
されている。この巻数の関係は、固定スクロール１７の
巻数をＮ回としたとき、可動スクロール２６の巻数が、
（Ｎ−１）回になる関係になっている。かつまた、固定
スクロール１７の巻き始め端１７ａと、可動スクロール
２６の巻き始め端２６ａとは互いに揃えられている。

【００１６】次に作用を説明する。モータ２が運転され
ると、回転軸８により可動スクロール２６がその姿勢を
維持した状態で、回転中心Ｏを中心にして偏心旋回運動
されるため、可動スクロール２６と固定スクロール１７
との協働によりそれぞれ形成される第１作動室Ａおよび
第２作動室Ｂの容積のそれぞれが漸次増減されて行く。
この両作動室ＡおよびＢの容積変化に伴って、図２に矢
印で示されているように、燃料が吸入路２２→吸入口２
１→作動室ＡまたはＢ→吐出口１４→吐出路１５、１６
→モータハウジング室４を経て、燃料送出パイプ７から
エンジンへ送出される。

【００１７】このポンプ作動において、本実施例によれ
ば、図３および図４に示されているように、第１作動室
Ａと第２作動室Ｂとの吸入行程および吐出行程のタイミ
ングが１８０度ずれるため、吐出口１４から吐出される
燃料の脈動は低減されたものになる。次に、第１作動室
Ａと第２作動室Ｂとの吸入行程および吐出行程のタイミ
ングを、図３および図４に沿って説明する。

【００１８】図３（ａ）に示されているように、図１に
示された状態から（以下、可動スクロール２６の偏心旋
回運動の角度について同じ。）可動スクロール２６が９
０度偏心旋回運動すると、第１作動室Ａ１は吸入口２１
に流体的に接続され、吸入行程が初期に至る。他方、第
２作動室Ｂ１は吸入行程が最終期に至る。

【００１９】図３（ｂ）に示されているように、可動ス
クロール２６が１８０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吸入行程が中期に至る。他方、第２作動室Ｂ１
は吸入行程が完了し、吐出口１４に流体的に接続され、
吐出行程が初期に至る。

【００２０】図３（ｃ）に示されているように、可動ス
クロール２６が２７０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吸入行程が最終期に至る。他方、第２作動室Ｂ
１は吐出行程が中期に至るとともに、次の第２作動室Ｂ
２が吸入を開始する。

【００２１】図３（ｄ）に示されているように、可動ス
クロール２６が３６０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吸入行程が完了し、吐出口１４に流体的に接続
され、吐出行程が初期に至る。他方、第２作動室Ｂ１は
吐出行程が最終期に至る。

【００２２】図４（ａ）に示されているように、可動ス
クロール２６が４５０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吐出行程が中期に至る。他方、第２作動室Ｂ１
は吐出行程が完了する。また、次の第１作動室Ａ２が吸
入を開始し、第２作動室Ｂ２は吸入行程が終了する。

【００２３】図４（ｂ）に示されているように、可動ス
クロール２６が５４０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吐出行程が最終期に至る。また、次の第２作動
室Ｂ２は吐出行程の手前で、次の第１作動室Ａ２は吸入
行程が中期に至る。

【００２４】図４（ｃ）に示されているように、可動ス
クロール２６が６３０度偏心旋回運動すると、第１作動
室Ａ１は吐出行程が完了し、また、次の第２作動室Ｂ２
は吐出を開始し、次の第１作動室Ａ２は吸入行程が最終
期に至る。

【００２５】図４（ｄ）に示されているように、可動ス
クロール２６が７２０度偏心旋回運動すると、次の第１
作動室Ａ２は吸入行程が中期に至る。他方、次の第２作
動室Ｂ２は吐出行程が中期に至る。

【００２６】以上のようにして、第１作動室Ａと第２作
動室Ｂとの吸入行程および吐出行程は互いに１８０度位
相がずれた状態で、順次実行されて行く。つまり、第１
作動室Ａから吐出口１４に吐出される燃料の圧力と、第
２作動室Ｂから吐出口１４に吐出される燃料の圧力と
は、従来例のスクロールポンプの場合のように吐出口に
おいて重畳されないため、その吐出口１４における圧力
の脈動はきわめて小さく抑制された値となる。

【００２７】本実施例に係るスクロールポンプによれ
ば、吐出圧力の脈動がきわめて小さく抑制された状態に
なるため、本実施例に係るスクロールポンプ１０が燃料
ポンプ１に使用されると、エンジンに燃料をきわめて適
正に送給することができる。また、スクロールポンプは
その性質上、騒音がきわめて小さいため、自動車の燃料
ポンプとしてスクロールポンプが使用されると、自動車
の騒音対策上、きわめて有利になる。

【００２８】なお、本発明は前記実施例に限定されるも
のではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々
変更可能であることはいうまでもない。

【００２９】例えば、固定スクロールの巻数と可動スク
ロールの巻数とは、２：１、に設定するに限らず、Ｎ：
（Ｎ−１）、に設定することができる。特に、スクロー
ルポンプの圧縮比が高く設定される場合には、両スクロ
ールの巻数を増加させることが望ましい。

【００３０】固定スクロールおよび可動スクロールの構
造は、前記実施例のように構成するに限らず、要求に応
じて最適の構成を適宜選定することが望ましい。

【００３１】前記実施例では、スクロールポンプが燃料
ポンプに使用される場合につき説明したが、これに限ら
ず、液体や気体を取り扱う他の用途のポンプ全般に使用
することができる。

【００３２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
第１作動室と第２作動室との吸入行程および吐出行程の
タイミングをずらすことができるため、吐出圧力の脈動
を充分に低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例であるスクロールポンプを示
す正面断面図である。

【図２】そのスクロールポンプが使用されている燃料ポ
ンプを示す一部省略一部切断側面図である。

【図３】その作用を説明するための各説明図である。

【図４】同じく各説明図である。

【符号の説明】

１…燃料ポンプ、２…モータ、３…モータハウジング、
４…モータハウジング室、５…固定子、６…回転子、７
…燃料送給パイプ、８…回転軸、９…偏心軸、１０…ス
クロールポンプ、１１…ポンプケーシング、１２…ポン
プ室、１３…固定プレート、１４…吐出口、１５、１６
…連通路、１７…固定スクロール、１７ａ…巻き始め
端、１８…軸受、２０…ポンプヘッド、２１…吸入口、
２２…吸入路、２３…可動プレート、２４…軸受、２５
…係合手段、２６…可動スクロール、２６ａ巻き始め
端、Ａ…第１作動室、Ｂ…第２作動室。

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【手続補正書】

【提出日】平成４年９月２２日

【手続補正１】

【補正対象書類名】図面

【補正対象項目名】全図

【補正方法】変更

【補正内容】

【図１】

【図２】

【図３】

【図４】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定スクロールの巻数をＮとしたとき、
   可動スクロールはその巻数が、Ｎ−１、に形成されてお
   り、かつ、固定スクロールの巻き始め端と、可動スクロ
   ールの巻き始め端とが揃えられていることを特徴とする
   スクロールポンプ。