JPH0574092U - スピーカの構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は後面解放型のスピーカの構造に関
し、スピーカユニットの高剛性材料部分やユニット支持
体の共振による共振音を除去して再生音の音質を飛躍的
に向上させようとする。 【構成】 スピーカユニットを高剛性材料製のスピーカ
ユニット支持体に支持固定せしめ、スピーカユニットの
高剛性材料部分及び該ユニット支持体の内外全表面を吸
音材にて被覆するとともにその被覆表面全体をさらに音
響学的に内部損失の高い防音シートで密閉してなる遮音
壁を形成したことを特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、後面解放型スピーカの構造に関し、特にスピーカユニットを支持固 定するバッフル若しくはフレーム等のユニット支持体及び当該スピーカユニット の高剛性材料部分の共振による表面から空気中への音の放射を遮断して忠実な音 響信号の再生を図ったスピーカの構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般に後面解放型スピーカの構造においては、形状、型式を問わず、スピーカ ユニットを固定するバッフル若しくはフレーム等のユニット支持体の材質として 、まずスピーカユニットを確実に且つ安定に固定するために剛性の高いことが要 求され、次にこれらユニット支持体の共振をできるだけ抑制するために音響学的 な内部損失の高いことが要求される。

【０００３】 しかしながら、これらの両特性を併せ持つ材料はない。一方には剛性のみを追 求した、金属、陶器、ガラス製のユニット支持体がある。金属製の場合は、ユニ ット支持体の共振時間を短縮させるためにハニカム構造による軽量化が試みられ ているが、それでもユニット支持体のもつ鋭いＱの共振は免れない。ガラス製、 陶器製の場合は軽量化が不可能なために、共振時間が比較的長く、制振のために スピーカユニットとの間にゴムをかませてスピーカユニットの振動が直接ユニッ ト支持体に伝わるのを回避しているが、ゴムの介在によって確実で安定した固定 が得られず、立ち上がりのよい音は期待できない。他方、内部損失のみの高い材 料としては木製や、プラスチック製のユニット支持体が用いられている。これら の材質のＱは、前述の剛性の高い材料に比べて平坦ではあるが、伝播速度が遅い ために重く鈍い共振音は免れない。以上から、材料の選択のみでは抜本的な解決 は得られない。

【０００４】 多少に拘らず剛性のある材料であれば、プラスチックからファインセラミック スに至るまですべて共振する。これを予め鉛やゴム等でデッドニングして共振を 回避する方策も講じられてきたが、デッドニングによる再生音は生彩を欠き、重 く鈍い付帯音を伴う。他方、ユニット支持体の共振を無制限に放置しておくと、 無視し難い相当量の歪みを生じさせ、再生音が著しく損われる。すなわち、防振 対策もそれが十分には作用することなく、ただ単に共振という歪みの周波数分布 を変えるに留まるのである。

【０００５】 従来、ユニット支持体の構造上の改善により上記の諸問題を解決して再生音の 音質を改善すべく、例えば、本考案者による実開平２−１２６４９３号公報に記 載のエンクロージャータイプのスピーカ等が提案されている。しかしながら、後 面解放型スピーカにおいては上記問題の解決の困難性の故にエンクロージャータ イプのスピーカにおけるような改良はほとんどみられず、スピーカユニットとユ ニット支持体の間にゴムをかませる程度の改良しか試みられていないのが現状で ある。

【０００６】 上記のような従来技術では、ゴムの介在によって確実で安定した固定が得られ ず、立ち上がりのよい音は期待できない。また、スピーカユニットはコーン乃至 ダイヤフラム以外の永久磁石、コーンハウジング乃至はダイヤフラム支持体、電 極支持体等は高剛性材料で構成されているが、後面解放型スピーカにあっては、 かかる高剛性材料部分が外部に露出している。このため、ユニット支持体のみな らず、スピーカユニットの当該高剛性材料部分からも共振音が空気中へ直接に音 波となって放出されるという問題があった。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、上述の現状に鑑み、これまでユニット支持体のみならずスピーカユ ニットのコーン乃至ダイヤフラム以外の一部に使用されていた材料もすべて共振 を免れないという現実の認識から出発する。ユニット支持体等の共振をデッドニ ングによって完全に除去することは不可能であるが、ユニット支持体等の共振が 起こす空気中への音波放射を遮音壁内に閉じ込め、遮蔽することは可能である。 そこで、ユニット支持体を遮音壁内に密閉、格納することで、共振音は当該密閉 室内では存在しても、当該遮音壁を通過して外部の空気中へ音波が放射されるこ とはなく、聴覚上、共振音はほぼ完全に除去できることに想到するに至った。 そこで、本考案はユニット支持体等の共振による共振音を共振体であるユニッ ト支持体のみならずスピーカユニット自体の高剛性材料部分を遮音壁内に密閉、 格納することで共振音を除去して再生音の音質を飛躍的に向上させるスピーカの 構造を提供せんとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案によれば、上記の課題は、スピーカユニットと、該スピーカユニットを 支持固定する高剛性材料製のユニット支持体とを備えた後面解放型のスピーカに おいて、該スピーカユニットの高剛性材料部分及びユニット支持体の内外全表面 を吸音材にて被覆するとともにその被覆表面全体をさらに音響学的に内部損失の 高い防音シートで密閉した遮音壁にて囲繞することにより解決される。

【０００９】 スピーカユニット支持体は、バッフル乃至はフレーム構造を有することができ 、これを構成する高剛性材料としては鋼鉄等の硬質金属、硬質プラスチック、乃 至はガラス、磁器等の通例のセラミックスやファインセラミックスが好ましい。 また、該スピーカユニットは、ダイナミックスピーカユニット、コンデンサスピ ーカユニットのいずれでも用い得る。

【００１０】 該スピーカユニット支持体やスピーカユニットの高剛性材料部分の内外面全体 を被覆する吸音材としては、グラスウールやロックウール等を用い、比較的密度 の濃いものを用いる。この吸音材の被覆全表面をさらに被覆する防音シート材と しては、音響学的内部損失の高いものがよく、例えば鉛粉末入りゴム乃至はポリ プロピレン等の軟質プラスチック等の防音材が好ましい。 また、上記遮音壁は、当該ユニット支持体の底部に複数の底部に複数の脚を設 けてもよい。

【００１１】

【作用】

音響再生信号が供給されてスピーカユニットが作動すると、該スピーカユニッ トの前面から再生音が放射されると共に、この再生音の音波と逆位相の音波がス ピーカユニット支持体やスピーカユニットの構成部材である永久磁石、コーンハ ウジング乃至はダイヤフラム支持体、電極支持体等の高剛性材料部分に達する。 すると当該ユニット支持体等が共振し、共振音が遮音壁内に放出されるが、ユニ ット支持体は全体が遮音壁に囲繞されているために、この共振音波は当該遮音壁 内にとどめられ、外部に漏れることはない。

【００１２】 また、該ユニット支持体の底部に複数の脚を設ければ、スピーカ設置床に面接 触して面全体で振動を伝えることなく、スピーカの底面とわずかな凹凸を有する 床との間に生じる隙間の空気が共振することを防止することができ、共振の影響 をより少なくし、再生音質の正確性をより高めることとなる。

【００１３】

【実施例】

次に、添付図面を参照しつつ、本考案を実施例により更に詳細に説明すること とする。なお、各実施例中の対応する同一名称の構成要素には同一符号を付して 説明する。 第１図は、本考案の一実施例を示すもので、ユニット支持体を側面視が逆Ｔ字 形状の平面バッフルとした後面解放型スピーカの構造を示す縦断面図であり、図 中、符号１はダイナミックスピーカユニット、２はスピーカユニット支持体であ る平面バッフル、３はこの平面バッフル２を密閉収容する遮音壁である。

【００１４】 該平面バッフル２は、ファインセラミックス製で垂直板部１と水平板部２２と から側面形状が逆Ｔ字状に構成され、垂直板部中央の上方寄りに形成された開口 ２１にユニットフレーム４及び小ネジ６を介してダイナミックスピーカユニット １が取り付けられている。水平板部２２の下面には４個の脚５が取り付けられて いる。なお、平面バッフル２を構成する材料はファインセラミックスに限られず 、ガラス、磁器等の通例のセラミクス、或は硬質プラスチック等の高剛性材料と 適宜代替し得る。

【００１５】 該スピーカユニット１は、中心に永久磁石１２と、永久磁石を収容した断面Ｕ 字状の継鉄１３を有し、継鉄の先端には振動板である放射状のコーン１１が取り 付けられている。コーン１１の外側には継鉄１３の外周に固定してコーンハウジ ング１４が取り付けられ、当該コーンハウジングの先端はリング板状のユニット フレーム４に固定されている。ユニットフレーム４は上述のように小ネジ６で垂 直板部２１の開口２１縁部に螺着される。

【００１６】 上記平面バッフル２と、ダイナミックスピーカユニット１の高剛性材料製部分 すなわちコーンハウジング１４及び継鉄１３は遮音壁３の中に密閉収容されてい る。すなわち、前面側からみた場合、ダイナミックスピーカユニット１のコーン １１を除く他の部分はすべて遮音壁３の中にその脚５と共に収容され、後面側は 全面が遮音壁に覆われている。この遮音壁３は、ユニットフレーム４、平面バッ フル２及びスピーカユニット１のコーンハウジング１４の表面全体、並びに継鉄 １３の裏側露出部分全面を被覆した比較的密度の濃いグラスウールの吸音材３ａ と、当該吸音材３ａの被覆面全体をさらに被覆した鉛粉末入りゴムシート製の防 音シート３ｂから構成されている。防音シート３ｂの角部分にはすべて曲面を形 成していわゆる回折効果により遮音の実効を上げるようにしている。

【００１７】 なお、上記スピーカユニット１のコーンハウジング１４は、十文字状に形成し てもよく、かかる場合には第２図に示すように、当該コーンハウジングを被覆す る遮音壁３の間４箇所にそれぞれコーン裏面に通じる透孔Ｈを形成してもよい。 要は、スピーカユニット１の高剛性材料部分が露出しないように有効に密閉遮蔽 されればよいのである。

【００１８】 かかる後面解放型のスピーカ構造においては、ダイナミックスピーカユニット １の作動によりユニット支持体２並びに当該スピーカユニット１の継鉄１３及び コーンハウジング１４等の高剛性材料製部分に高周波数帯域の共振音が発生し、 その共振音はこれら高剛性材料製部分の表面を被覆した吸音層３ａに吸収され、 さらにその外側を被覆密閉している共振鋭度Ｑの極めて平坦な防音壁３ｂにより 確実に遮音される。ここで、該吸音材は比較的密度の濃いものを使用しているの で、配管内の流体の高速流動による管体の共振音を消音するいわゆるラギング（ lagging）効果が得られる。

【００１９】 また、該ユニット支持体２底部の脚５のスピーカ設置床への点接触は、面接触 を防止して面全体で振動を伝えることなく、スピーカ本体底面と床面との間に生 じる隙間における空気の共振を外部でなく遮音壁内に生じさせることができる。

【００２０】 第３乃至５図は、他の実施例に係るもので、コンデンサスピーカユニットを用 いてなる後面解放型スピーカの構造を示すものである。 図中、符号１ａはコンデンサスピーカユニット、２ｂはスピーカユニット支持 体であるフレーム、３はこのフレーム２ｂを密閉収容する遮音壁である。

【００２１】 コンデンサスピーカユニット１ａは、板状のダイヤフラム１１ａと、該ダイヤ フラムを保持するユニットフレーム４ａと、ダイヤフラム１１ａの前後両面側全 体に渡って水平に張り渡した電極ネット１００、１００と、電極ネット１００を 支持する垂直方向に延びた多数本の電極支持体１０１と、この電極支持体の中央 付近で水平方向に掛け渡した水平補強材１０２とから構成される。電極ネット１ ００はＵ字状に曲げられた両側端部をユニットフレーム４ａの前後面に固定する と共に、中間部は両外側面に当接して垂直方向に直交せしめた帯板状の電極支持 体１０１、１０１・・によって固定されている。これらの電極支持体は最も振動 幅の大きい中央付近を中心に上記水平補強材１０２により適宜補強される。

【００２２】 上記のスピーカユニット１ａの高剛性材料部分であるユニットフレーム４ａ、 電極支持体１０１及び水平補強材１０２と、フレーム２ｂとは、第３図乃至第５ 図に示すようにそれぞれ遮音壁３の中に密閉収容している。この遮音壁３は、ユ ニットフレーム４ａ、電極支持体１０１、水平補強材１０２及びフレーム２ｂの 内外面全体をそれぞれ被覆した比較的密度の濃いグラスウールの吸音材３ａと、 当該吸音材３ａの被覆面全体をさらに被覆した鉛粉末入りゴムシート製の防音シ ート３ｂから構成している。上記実施例と同様、防音シート３ｂの角部分にはす べて曲面を形成していわゆる回折効果により遮音の実効を上げるようにしている 。

【００２３】 かかる態様のスピーカ構造においても、上述の実施例と同様の機能が確認され た。すなわち、ダイヤフラム１１ａの作動によるフレーム２ｂ、並びに当該スピ ーカユニット１ａのユニットフレーム４ａ及び電極支持体１０１等の高剛性材料 製部分に発生した高周波数帯域の共振音は、これら高剛性材料製部分の表面を被 覆した吸音層３ａに吸収され、さらにその外側を被覆密閉している共振鋭度Ｑの 極めて平坦な防音壁３ｂにより確実に遮音される。

【００２４】

【考案の効果】

本考案によるスピーカの構造によれば、コーンやダイヤフラム等の振動に伴う ユニット支持体等の共振による共振音を共振体であるユニット支持体のみならず スピーカユニット自体の高剛性材料部分を吸音材と防音シートとからなる遮音壁 内に密閉したので、スピーカユニットの作動により発生するユニット支持体やス ピーカユニット自体の高剛性材料部分の共振音は全域にわたって遮音壁内で有効 に消音することができ、スピーカユニットによる再生周波数特性に悪影響を与え ず、供給された周波数信号に極めて忠実な音が再現される。かくて、これまで困 難であった後面解放型スピーカの再生音の改善ができたものである。

【００２５】 さらには、ユニット支持体の底部に複数の脚を設ければ、スピーカ設置床に面 全体で振動を伝えることなく、しかもわずかとはいえ凹凸のある床面との間に生 じる隙間の空気共振を遮音壁内に取り込むことができ、共振の影響をより減少さ せたスピーカ構造とすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示すもので、ユニット支持
体を側面視が逆Ｔ字形状の平面バッフルとした後面解放
型スピーカの構造を示す縦断面図である。

【図２】第１図のスピーカユニットの継鉄及びコーンハ
ウジングの被覆態様を示す背面側からみた断面図であ
る。

【図３】コンデンサスピーカユニットを用いてなる後面
解放型スピーカの構造を示す横断面図である。

【図４】第３図のＸ−Ｘ線矢視部分断面図である。

【図５】第４図のＹ−Ｙ線矢視断面図である。

【符号の説明】

１ ダイナミックスピーカユニット １ａ コンデンサスピーカユニット ２、２ａ ユニット支持体 ３ 遮音壁 ３ａ 吸音材 ３ｂ 防音シート ４、４ａ ユニットフレーム ５ 脚 １１ コーン １１ａ ダイヤフラム １２ 永久磁石 １３ 継鉄 １４ コーンハウジング １００ 電極ネット １０１ 電極ネット支持体 １０２ 水平補強材

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 スピーカユニットと、該スピーカユニッ
   トを支持固定する高剛性材料製のユニット支持体とを備
   えた後面解放型のスピーカにおいて、該スピーカユニッ
   トの高剛性材料部分及びユニット支持体の内外全表面を
   吸音材にて被覆するとともにその被覆表面全体をさらに
   音響学的に内部損失の高い防音シートで密閉してなる遮
   音壁を形成したことを特徴とするスピーカの構造。
2. 【請求項２】 上記スピーカユニットはダイナミックス
   ピーカユニットである請求項１に記載のスピーカの構
   造。
3. 【請求項３】 上記スピーカユニットはコンデンサスピ
   ーカユニットである請求項１に記載のスピーカの構造。
4. 【請求項４】 上記ユニット支持体の底部には複数の脚
   を備えるとともに、該脚部も該遮音壁内に閉じこめてな
   る請求項１乃至３に記載のスピーカの構造。