JPH0568464U - 作業用ワイパー - Google Patents

作業用ワイパー

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JPH0568464U JP617692U JP617692U JPH0568464U JP H0568464 U JPH0568464 U JP H0568464U JP 617692 U JP617692 U JP 617692U JP 617692 U JP617692 U JP 617692U JP H0568464 U JPH0568464 U JP H0568464U
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、作業者の手や指先、道具に付着し
た病原菌やウイルスなどの微生物を吸着保持して確実に
拭い取ることができ、作業者の手や指先、道具を介して
微生物が健康な動植物へ接触感染するのを確実に防止で
きる作業用ワイパーを提供することを目的とするもので
ある。 【構成】 本考案は、 【化1】 (ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル
基又はペンタフルオロフェニルメチル基、Xはハロゲン
原子)で表される官能基を有する水不溶性または水難溶
性のビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に
付着していることを特徴とする作業用ワイパーをその要
旨とした。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば農業用、酪農用、魚介類や食肉などの食品加工用、或いは医 療用、研究用、実験用などに使用される作業用ワイパーに関する。詳細には、当 該作業者の手や指先、道具に付着した病原菌やウイルスなどの微生物を吸着保持 して確実に拭い取ることができ、作業者の手や指先、道具を介して微生物が他の 動植物へ接触感染するのを確実に防止できる作業用ワイパーに関する。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
農作業などの作業を行っていく過程で、作業者は病原菌やウイルスなどの微生 物に侵されている動植物と接触することがある。また、作業用の鋏やナイフなど の道具類にあっても同様に作業中に微生物に侵されている動植物と接触すること がある。この接触時に作業者の手や指先、道具上に微生物で汚染された樹液や体 液が付着することがあった。従来、作業者の手や指先、道具に付着した樹液や体 液などの汚れは、織布、不織布、紙、編物などの多孔質な繊維質基材よりなる作 業用ワイパーで拭い取られていた。
【0003】 しかしながら、従来のワイパーでは、作業者の手や指先、道具上の体液や樹液 などの汚れを拭い取ることはできても、作業者の手や指先、道具上の微生物を完 全に取り除くことはできず、微生物は作業者の手や指先、道具を介して他の動植 物へと感染していった。
【0004】 例えば農園芸作業、特に果樹栽培の剪定作業では一人の作業者が一日に何本も の果樹の剪定を行っていく。この間作業者の手や指先、道具の汚れは何度もワイ パーで拭き取られるのだが、作業者の手や指先、道具上の微生物までは完全に取 り除くことができなかった。このため、作業者が別の健康な果樹の剪定を行った とき、微生物が付着している手や指先、道具が健康な果樹と接触し、この接触時 に微生物が健康な果樹に付着し、これにより健康な果樹も微生物に侵されてしま うということがあった。
【0005】 本考案は、このような課題に鑑みなされたものであり、当該作業者の手や指先 、道具に付着した病原菌やウイルスなどの微生物を吸着保持して確実に拭い取る ことができ、作業者の手や指先、道具を介して微生物が健康な動植物へ接触感染 するのを確実に防止できる作業用ワイパーを提供することを目的とするものであ る。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記目的を達成するため、請求項1記載の考案は、 「
【0007】
【化2】
【0008】 (ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル基又はペンタフルオロ フェニルメチル基、Xはハロゲン原子)で表される官能基を有する水不溶性また は水難溶性のビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に付着しているこ とを特徴とする作業用ワイパー」をその要旨とした。
【0009】 請求項2記載の考案は、「繊維質基材が不織布であり、該不織布の構成繊維表 面にビニル系共重合体が付着していることを特徴とする作業用ワイパー」をその 要旨とした。
【0010】 又、請求項3記載の考案は、「ビニル系共重合体と共に殺菌剤が繊維質基材の 一部または全部に付着していることを特徴とする作業用ワイパー」をその要旨と した。
【0011】 本考案のワイパーを構成する繊維質基材としては、特に限定されないが、レー ヨン、コットンなどの親水性繊維を含む不織布、織布、編物、紙などが好ましい 。特に三次元構造からなる不織布を用いた場合、その表面積は飛躍的に大きくな り、後述するビニル系共重合体を構成繊維表面に薄く均一に付着させることがで き、ビニル系共重合体の単位重量当りの表面積を大きくすることができる。尚、 基材として不織布を用いる場合、その見かけ密度は0.05g/cm3 以上であ ることが望ましい。というのは密度が0.05g/cm3 を下回る場合には、基 材の形状保持性が低下すると共に、基材中の該ビニル系共重合体を付着させる繊 維量が少なくなることから、これに伴ってビニル系共重合体の付着量も減り、微 生物吸着能も低下することになるからである。尚、基材中に親水性繊維を含ませ る場合、親水性繊維と基材の形状を保持するポリエチレン、ポリプロピレンなど の繊維との配合比は、該ビニル系共重合体の付着量等を考慮して決定する。
【0012】 本考案のビニル系共重合体としては、4−ビニルピリジンとモノビニルモノマ ーとを共重合した後、ハロゲン化物を作用させて得られる、下記の一般式で表さ れるビニル系共重合体を使用することができる。
【0013】
【化3】
【0014】 ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル基またはペンタフルオロ フェニルメチル基、R2 は水素原子またはC1〜C3のアルキル基、Xはハロゲン 原子、Yは水素原子、C1〜C3のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボ キシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基である。また、このビニル系 共重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体である。
【0015】 このビニル系共重合体は、従来より知られた橋かけポリビニルピリジニウムハ ライド(特公昭62−41641号公報に記載)と同様の優れた微生物吸着能を 有するにも拘らず、水には不溶又は難溶でありながら、有機溶媒には可溶であっ て、これを溶液とすることができるので、従来の橋かけポリビニルピリジニウム ハライドでは不可能であった、他の基材(ワイパー)への含浸やコーティングな どの加工を行うことができるようになっている。
【0016】 共重合に使用するモノビニルモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテ ンなどのモノオレフィン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エス テル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、脂肪族ビニルエステル、アクリロ ニトリル及びこれらの誘導体などがあるが、これに限らず、種々のものが単独又 は組合せて使用できる。ただし、親水性の高い官能基を有するモノビニルモノマ ーを使用すると、得られる共重合体が重合度によっては水溶性となるので望まし くない。
【0017】 この4−ビニルピリジンとモノビニルモノマ−との比率、すなわち、n:mの 割合は、使用されるモノビニルモノマーの種類や、重合度によっても異なるが、 大略10:90〜90:10の範囲にあるのが望ましい。この範囲よりも4−ビ ニルピリジンの割合が少ないと十分な微生物吸着能が得られず、これよりも多い と得られる共重合体が水溶性の高いものとなってしまう。また、上記ビニル系共 重合体の重合度は少なくとも300以上であることが望ましく、これより重合度 が低いと、得られる共重合体の水溶性が高いものとなる。
【0018】 モノビニルモノマーと4−ビニルピリジンとの共重合体は、ハロゲン化アルキ ル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化ペンタフルオロフェニルメチルなどのハロ ゲン化物と反応させることにより、ピリジンを4級化し、次式で表わされるピリ ジニウム基を形成する。
【0019】
【化4】
【0020】 このピリジニウム基が主体となって微生物を吸着保持する働きをしているもの と考えられる。この機構は明らかではないが、このピリジニウム基は正に帯電し ており、一般に微生物の細胞表面は負に帯電していることから、静電気的な相互 作用が一つの重要な因子であると推定される。
【0021】 この様にして得られたビニル系共重合体は、水に対して実質的に不溶又は難溶 であって、有機溶剤には可溶である。この性質を利用して、上記ビニル系共重合 体は有機溶剤に溶かされて溶剤溶液とされる。この有機溶剤としては、アルコー ル類、エステル類、フェノール類、エーテル類、芳香族炭化水素類などが使用で きるが、取り扱い易さ等の点から考えて、アルコール類を使用することが望まし い。
【0022】 溶液中に溶解したビニル系共重合体は、作業用ワイパーの繊維質基材に含浸、 コーティング等の手段で付与される。この後、乾燥工程を経ることにより、上記 ビニル系共重合体はワイパーの繊維質基材の構成繊維表面に付着されることにな る。尚、ビニル系共重合体はワイパー全体に付着させても良いが、図1に示すよ うに、該ワイパー11の片面のみにビニル系共重合体を含浸してビニル系共重合 体を付着させた層12を形成しても良い。なお、図2に示すように、ビニル系共 重合体13は構成繊維14の表面を被覆するように付着していることが望ましい 。又、ワイパーの形状、構造、或いはデザインに応じて部分的に形成するように しても良い。
【0023】 ワイパーの繊維質基材に対するビニル系共重合体の付着量としては特に限定さ れないが、ビニル系共重合体の付着量が該作業用ワイパーに対し0.01〜20 wt%の範囲のものが微生物吸着力が高く、かつ経済的である。20wt%を越 える多量のビニル系共重合体を付着した場合には、ビニル系共重合体の使用量が 増す割には吸着効果は上がらず、不経済となる。
【0024】 また、本考案におけるビニル系共重合体としては、上記ビニル系共重合体の他 に、以下に示すような4−ビニルピリジンと架橋性ジビニルモノマーとをワイパ ーの繊維質基材上で共重合させ、ハロゲン化物によって4級化させたものも用い ることができる。
【0025】 このビニル系共重合体において用いられる架橋性ジビニルモノマーとしては、 ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル 化合物、ジアクリル酸エチレングリコールエステル、ジメタクリル酸エチレング リコールエステル等の脂肪族ジビニル化合物等を挙げるとができる。この架橋性 ジビニルモノマーは単独で或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】 この架橋性ジビニルモノマー及び4−ビニルピリジンは、前記ワイパーの繊維 質基材に対して溶液の形態で付与される。つまり、架橋性ジビニルモノマー及び 4−ビニルピリジンをアルコール類、エステル類、フェノール類、エーテル類、 芳香族炭化水素類などの有機溶剤中に添加して溶液とするのである。この溶液に 前記ワイパーの繊維質基材を漬けて含浸させることにより、或いはワイパーの繊 維質基材表面にコーティングすることにより、所定量の架橋性ジビニルモノマー 及び4−ビニルピリジンをモノマーの状態でワイパーの繊維質基材表面に付与す る。次いで有機溶剤の全部又は一部を除去し、架橋性ジビニルモノマー及び4− ビニルピリジンをワイパーの繊維質基材表面に付着させるのである。尚、ワイパ ーの繊維質繊維質基材表面に付着される4−ビニルピリジンに対する架橋性ジビ ニルモノマーの割合は、15モル%以下であることが望ましく、これを超えると 微生物の吸着力は低下する。ワイパーに対するビニル系共重合体の付着量として は特に限定されないが、ビニル系共重合体の付着量が該ワイパーに対し0.01 〜20wt%の範囲のものが微生物吸着力が高く、かつ経済的である。また、各 モノマーを含む溶液には過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどの 慣用のラジカル開始剤が添加されている。更には各モノマーを含む溶液には、ス チレン、メチルメタクリレートなどの反応性ビニルモノマーが加えられていても よい。
【0027】 このようにしてワイパーの繊維質基材の一部または全部にモノマーの状態で付 着した架橋性ジビニルモノマー及び4−ビニルピリジンは加熱下で共重合される 。重合温度は常圧又は加圧下、50〜100℃で行われる。
【0028】 得られた共重合体は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化 ペンタフルオロフェニルメチルなどのハロゲン化物と反応させることにより、ピ リジンを4級化し、ピリジニウム基を有する架橋構造のビニル系共重合体が得ら れる。尚、ハロゲン化物の使用量は共重合体中の4−ビニルピリジン単位の含有 量に応じて適宜決定される。
【0029】 この様にして得られたビニル系共重合体は、水及び有機溶媒に対して実質的に 不溶又は難溶であり、特公昭62−41641号公報に記載のビニル系共重合体 とは同様な優れた微生物吸着能を示すものとなる。加えてこのビニル系共重合体 は、ワイパーの基材表面にモノマーの状態で付着され、このワイパーの基材上で 共重合されていることから、ビニル系共重合体の単位重量当りの表面積は増大し 、その微生物吸着効率は飛躍的に向上したものとなる。
【0030】 以上、本考案の作業用ワイパーの基材に付着されるビニル系共重合体として2 つの好ましい例を挙げたが、優れた微生物吸着能を発現するところの、ハロゲン 化されたピリジニウム基を分子内に有すること、微生物を吸着保持できること、 該ビニル系共重合体が溶出しないように、水に対し不溶または難溶であること、 含浸やコーティングなどの加工を容易に行うことができること、といった要件を 備えたビニル系共重合体であるならばこれに限定されるものではない。
【0031】 尚、本考案のビニル系共重合体によって吸着する対象となる微生物とは、細菌 、かび類、藻類、ウイルス等をいう。
【0032】 尚、本考案のビニル系共重合体と共に殺菌剤を作業用ワイパーの基材に付着す るようにしたならば、微生物吸着能と共に殺菌性能をも備えた作業用ワイパーを 得ることができる。殺菌剤としては、例えば水不溶性のゼオライトを殺菌性を有 する金属イオンで置換した抗菌性ゼオライト、ポリビニル、ポリアクリレート、 ポリエステル、ポリアミドなどのポリマー鎖にピグアナイドまたは第4アンモニ ウム塩を固定化したポリマー型固定化殺菌剤、3−(トリメトキシシリル)−プ ロピルトリメチルオクタデシルアンモニウムクロライドなどのシリコーン型固定 化殺菌剤などが好適に使用できる。
【0033】
【実施例】
以下、本考案を実施例に従って詳細に説明する。 実施例1 4−ビニルピリジンとスチレンとを30:70モルの割合で共重合した後、4 −ビニルピリジンと等モルのベンジルブロミドで4級化処理してピリジニウム基 を有するビニル系共重合体を得た。一方、レーヨン繊維(繊度1.5デニール) からなる繊維ウェブを水流絡合処理して、目付90g/m2 の不織布よりなる基 材を得た。前記ビニル系共重合体をエタノール溶液中に溶解し、この溶液中に基 材を含浸した後、75℃で乾燥することにより作業用ワイパーを得た。
【0034】 実施例2 4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとアゾビスイソブチロニトリルとをモ ル比で99:1:1の割合で含むエタノール溶液を調整する。一方、レーヨン繊 維(繊度1.5デニール)からなる繊維ウェブを水流絡合処理して、目付90g /m2 の不織布よりなる基材を得た。
【0035】 前記基材をエタノール溶液中に浸漬した後、室温でエタノールを蒸発させて、 不織布の構成繊維表面に4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとを付着させる 。次いで、80℃の温度で5時間、恒温槽中に静置して前記4−ビニルピリジン とジビニルベンゼンとを共重合させる。この後共重合体の付着した不織布を反応 器に入れ、同容器内に臭化ベンジルとエタノールを加えて80℃で6時間反応さ せて4級化処理し、臭化ベンジルにより4級化されたピリジニウム基を有し、か つ架橋構造を有するビニル系共重合体が基材の構成繊維表面に付着した作業用ワ イパーを得た。
【0036】
【考案の効果】
上記構成を備えたことにより、請求項1記載の作業用ワイパーにあっては、優 れた微生物吸着能を有するビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に付 着していることから、該ワイパーで作業者が手や指先、道具の汚れを拭い取るこ とにより、作業者の手や指先、道具上の微生物を確実に拭い取ることができる。 このため、作業者の手や指先、道具を介して微生物が他の動植物へ接触感染する のを確実に防止することができる。また、本考案のビニル系共重合体は水不溶性 または水難溶性であることから、ワイパーが水に濡れても溶出することが無い。 又、このワイパーのビニル系共重合体は熱に対しても微生物吸着能が損なわれる ことが少ないため煮沸消毒することもでき、一定期間使用した後は煮沸消毒を施 し、再び使用することができる。
【0037】 又、請求項2記載の作業用ワイパーにあっては、三次元構造からなる不織布を 基材として用いていることから、その表面積は飛躍的に大きくなり、ビニル系共 重合体を構成繊維表面に薄く均一に付着させることができ、ビニル系共重合体の 単位重量当りの表面積を大きくすることができ、該ワイパーの微生物の拭い取り 性能を大幅に増大させることができる。
【0038】 請求項3記載の作業用ワイパーにあっては、ビニル系共重合体と共に殺菌剤が 付着されていることから、作業者の手や指先、道具上の微生物を吸着保持するの みならずワイパー上で殺菌してしまうため、他の動植物への感染防止効果をより 向上させることができる。
【提出日】平成5年3月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば農業用、酪農用、魚介類や食肉などの食品加工用、或いは医 療用、研究用、実験用などに使用される作業用ワイパーに関する。詳細には、当 該作業者の手や指先、道具に付着した病原菌やウイルスなどの微生物を吸着保持 して確実に拭い取ることができ、作業者の手や指先、道具を介して微生物が他の 動植物へ接触感染するのを確実に防止できる作業用ワイパーに関する。
【0002】
【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】
農作業などの作業を行っていく過程で、作業者は病原菌やウイルスなどの微生 物に侵されている動植物と接触することがある。また、作業用の鋏やナイフなど の道具類にあっても同様に作業中に微生物に侵されている動植物と接触すること がある。この接触時に作業者の手や指先、道具上に微生物で汚染された樹液や体 液が付着することがあった。従来、作業者の手や指先、道具に付着した樹液や体 液などの汚れは、織布、不織布、紙、編物などの多孔質な繊維質基材よりなる作 業用ワイパーで拭い取られていた。
【0003】 しかしながら、従来のワイパーでは、作業者の手や指先、道具上の体液や樹液 などの汚れを拭い取ることはできても、作業者の手や指先、道具上の微生物を完 全に取り除くことはできず、微生物は作業者の手や指先、道具を介して他の動植 物へと感染していった。
【0004】 例えば農園芸作業、特に果樹栽培の剪定作業では一人の作業者が一日に何本も の果樹の剪定を行っていく。この間作業者の手や指先、道具の汚れは何度もワイ パーで拭き取られるのだが、作業者の手や指先、道具上の微生物までは完全に取 り除くことができなかった。このため、作業者が別の健康な果樹の剪定を行った とき、微生物が付着している手や指先、道具が健康な果樹と接触し、この接触時 に微生物が健康な果樹に付着し、これにより健康な果樹も微生物に侵されてしま うということがあった。
【0005】 本考案は、このような課題に鑑みなされたものであり、当該作業者の手や指先 、道具に付着した病原菌やウイルスなどの微生物を吸着保持して確実に拭い取る ことができ、作業者の手や指先、道具を介して微生物が健康な動植物へ接触感染 するのを確実に防止できる作業用ワイパーを提供することを目的とするものであ る。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記目的を達成するため、請求項1記載の考案は、 「
【0007】
【化2】
【0008】 (ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル基又はペンタフルオロ フェニルメチル基、Xはハロゲン原子)で表される官能基を有する水不溶性また は水難溶性のビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に付着しているこ とを特徴とする作業用ワイパー」をその要旨とした。
【0009】 請求項2記載の考案は、「繊維質基材が不織布であり、該不織布の構成繊維表 面にビニル系共重合体が付着していることを特徴とする作業用ワイパー」をその 要旨とした。
【0010】 又、請求項3記載の考案は、「ビニル系共重合体と共に殺菌剤が繊維質基材の 一部または全部に付着していることを特徴とする作業用ワイパー」をその要旨と した。
【0011】 本考案のワイパーを構成する繊維質基材としては、特に限定されないが、レー ヨン、コットンなどの親水性繊維を含む不織布、織布、編物、紙などが好ましい 。特に三次元構造からなる不織布を用いた場合、その表面積は飛躍的に大きくな り、後述するビニル系共重合体を構成繊維表面に薄く均一に付着させることがで き、ビニル系共重合体の単位重量当りの表面積を大きくすることができる。尚、 基材として不織布を用いる場合、その見かけ密度は0.05g/cm3 以上であ ることが望ましい。というのは密度が0.05g/cm3 を下回る場合には、基 材の形状保持性が低下すると共に、基材中の該ビニル系共重合体を付着させる繊 維量が少なくなることから、これに伴ってビニル系共重合体の付着量も減り、微 生物吸着能も低下することになるからである。尚、基材中に親水性繊維を含ませ る場合、親水性繊維と基材の形状を保持するポリエチレン、ポリプロピレンなど の繊維との配合比は、該ビニル系共重合体の付着量等を考慮して決定する。
【0012】 本考案のビニル系共重合体としては、4−ビニルピリジンとモノビニルモノマ ーとを共重合した後、ハロゲン化物を作用させて得られる、下記の一般式で表さ れるビニル系共重合体を使用することができる。
【0013】
【化3】
【0014】 ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル基またはペンタフルオロ フェニルメチル基、R2 は水素原子またはC1〜C3のアルキル基、Xはハロゲン 原子、Yは水素原子、C1〜C3のアルキル基、ベンジル基、エーテル基、カルボ キシル基、カルボン酸エステル基またはアリール基である。また、このビニル系 共重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体である。
【0015】 このビニル系共重合体は、従来より知られた橋かけポリビニルピリジニウムハ ライド(特公昭62−41641号公報に記載)と同様の優れた微生物吸着能を 有するにも拘らず、水には不溶又は難溶でありながら、有機溶媒には可溶であっ て、これを溶液とすることができるので、従来の橋かけポリビニルピリジニウム ハライドでは不可能であった、他の基材(ワイパー)への含浸やコーティングな どの加工を行うことができるようになっている。
【0016】 共重合に使用するモノビニルモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテ ンなどのモノオレフィン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エス テル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、脂肪族ビニルエステル、アクリロ ニトリル及びこれらの誘導体などがあるが、これに限らず、種々のものが単独又 は組合せて使用できる。ただし、親水性の高い官能基を有するモノビニルモノマ ーを使用すると、得られる共重合体が重合度によっては水溶性となるので望まし くない。
【0017】 この4−ビニルピリジンとモノビニルモノマ−との比率、すなわち、n:mの 割合は、使用されるモノビニルモノマーの種類や、重合度によっても異なるが、 大略10:90〜90:10の範囲にあるのが望ましい。この範囲よりも4−ビ ニルピリジンの割合が少ないと十分な微生物吸着能が得られず、これよりも多い と得られる共重合体が水溶性の高いものとなってしまう。また、上記ビニル系共 重合体の重合度は少なくとも300以上であることが望ましく、これより重合度 が低いと、得られる共重合体の水溶性が高いものとなる。
【0018】 モノビニルモノマーと4−ビニルピリジンとの共重合体は、ハロゲン化アルキ ル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化ペンタフルオロフェニルメチルなどのハロ ゲン化物と反応させることにより、ピリジンを4級化し、次式で表わされるピリ ジニウム基を形成する。
【0019】
【化4】
【0020】 このピリジニウム基が主体となって微生物を吸着保持する働きをしているもの と考えられる。この機構は明らかではないが、このピリジニウム基は正に帯電し ており、一般に微生物の細胞表面は負に帯電していることから、静電気的な相互 作用が一つの重要な因子であると推定される。
【0021】 この様にして得られたビニル系共重合体は、水に対して実質的に不溶又は難溶 であって、有機溶剤には可溶である。この性質を利用して、上記ビニル系共重合 体は有機溶剤に溶かされて溶剤溶液とされる。この有機溶剤としては、アルコー ル類、エステル類、フェノール類、エーテル類、芳香族炭化水素類などが使用で きるが、取り扱い易さ等の点から考えて、アルコール類を使用することが望まし い。
【0022】 溶液中に溶解したビニル系共重合体は、作業用ワイパーの繊維質基材に含浸、 コーティング等の手段で付与される。この後、乾燥工程を経ることにより、上記 ビニル系共重合体はワイパーの繊維質基材の構成繊維表面に付着されることにな る。尚、ビニル系共重合体はワイパー全体に付着させても良いが、図1に示すよ うに、該ワイパー11の片面のみにビニル系共重合体を含浸してビニル系共重合 体を付着させた層12を形成しても良い。なお、図2に示すように、ビニル系共 重合体13は構成繊維14の表面を被覆するように付着していることが望ましい 。又、ワイパーの形状、構造、或いはデザインに応じて部分的に形成するように しても良い。
【0023】 ワイパーの繊維質基材に対するビニル系共重合体の付着量としては特に限定さ れないが、ビニル系共重合体の付着量が該作業用ワイパーに対し0.01〜20 wt%の範囲のものが微生物吸着力が高く、かつ経済的である。20wt%を越 える多量のビニル系共重合体を付着した場合には、ビニル系共重合体の使用量が 増す割には吸着効果は上がらず、不経済となる。
【0024】 また、本考案におけるビニル系共重合体としては、上記ビニル系共重合体の他 に、以下に示すような4−ビニルピリジンと架橋性ジビニルモノマーとをワイパ ーの繊維質基材上で共重合させ、ハロゲン化物によって4級化させたものも用い ることができる。
【0025】 このビニル系共重合体において用いられる架橋性ジビニルモノマーとしては、 ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル 化合物、ジアクリル酸エチレングリコールエステル、ジメタクリル酸エチレング リコールエステル等の脂肪族ジビニル化合物等を挙げるとができる。この架橋性 ジビニルモノマーは単独で或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】 この架橋性ジビニルモノマー及び4−ビニルピリジンは、前記ワイパーの繊維 質基材に対して溶液の形態で付与される。つまり、架橋性ジビニルモノマー及び 4−ビニルピリジンをアルコール類、エステル類、フェノール類、エーテル類、 芳香族炭化水素類などの有機溶剤中に添加して溶液とするのである。この溶液に 前記ワイパーの繊維質基材を漬けて含浸させることにより、或いはワイパーの繊 維質基材表面にコーティングすることにより、所定量の架橋性ジビニルモノマー 及び4−ビニルピリジンをモノマーの状態でワイパーの繊維質基材表面に付与す る。次いで有機溶剤の全部又は一部を除去し、架橋性ジビニルモノマー及び4− ビニルピリジンをワイパーの繊維質基材表面に付着させるのである。尚、ワイパ ーの繊維質繊維質基材表面に付着される4−ビニルピリジンに対する架橋性ジビ ニルモノマーの割合は、15モル%以下であることが望ましく、これを超えると 微生物の吸着力は低下する。ワイパーに対するビニル系共重合体の付着量として は特に限定されないが、ビニル系共重合体の付着量が該ワイパーに対し0.01 〜20wt%の範囲のものが微生物吸着力が高く、かつ経済的である。また、各 モノマーを含む溶液には過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリルなどの 慣用のラジカル開始剤が添加されている。更には各モノマーを含む溶液には、ス チレン、メチルメタクリレートなどの反応性ビニルモノマーが加えられていても よい。
【0027】 このようにしてワイパーの繊維質基材の一部または全部にモノマーの状態で付 着した架橋性ジビニルモノマー及び4−ビニルピリジンは加熱下で共重合される 。重合温度は常圧又は加圧下、50〜100℃で行われる。
【0028】 得られた共重合体は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化 ペンタフルオロフェニルメチルなどのハロゲン化物と反応させることにより、ピ リジンを4級化し、ピリジニウム基を有する架橋構造のビニル系共重合体が得ら れる。尚、ハロゲン化物の使用量は共重合体中の4−ビニルピリジン単位の含有 量に応じて適宜決定される。
【0029】 この様にして得られたビニル系共重合体は、水及び有機溶媒に対して実質的に 不溶又は難溶であり、特公昭62−41641号公報に記載のビニル系共重合体 とは同様な優れた微生物吸着能を示すものとなる。加えてこのビニル系共重合体 は、ワイパーの基材表面にモノマーの状態で付着され、このワイパーの基材上で 共重合されていることから、ビニル系共重合体の単位重量当りの表面積は増大し 、その微生物吸着効率は飛躍的に向上したものとなる。
【0030】 以上、本考案の作業用ワイパーの基材に付着されるビニル系共重合体として2 つの好ましい例を挙げたが、優れた微生物吸着能を発現するところの、ハロゲン 化されたピリジニウム基を分子内に有すること、微生物を吸着保持できること、 該ビニル系共重合体が溶出しないように、水に対し不溶または難溶であること、 含浸やコーティングなどの加工を容易に行うことができること、といった要件を 備えたビニル系共重合体であるならばこれに限定されるものではない。
【0031】 尚、本考案のビニル系共重合体によって吸着する対象となる微生物とは、細菌 、かび類、藻類、ウイルス等をいう。
【0032】 尚、本考案のビニル系共重合体と共に殺菌剤を作業用ワイパーの基材に付着す るようにしたならば、微生物吸着能と共に殺菌性能をも備えた作業用ワイパーを 得ることができる。殺菌剤としては、例えば水不溶性のゼオライトを殺菌性を有 する金属イオンで置換した抗菌性ゼオライト、ポリビニル、ポリアクリレート、 ポリエステル、ポリアミドなどのポリマー鎖にピグアナイドまたは第4アンモニ ウム塩を固定化したポリマー型固定化殺菌剤、3−(トリメトキシシリル)−プ ロピルトリメチルオクタデシルアンモニウムクロライドなどのシリコーン型固定 化殺菌剤などが好適に使用できる。
【0033】
【実施例】
以下、本考案を実施例に従って詳細に説明する。 実施例1 4−ビニルピリジンとスチレンとを30:70モルの割合で共重合した後、4 −ビニルピリジンと等モルのベンジルブロミドで4級化処理してピリジニウム基 を有するビニル系共重合体を得た。一方、レーヨン繊維(繊度1.5デニール) からなる繊維ウェブを水流絡合処理して、目付90g/m2 の不織布よりなる基 材を得た。前記ビニル系共重合体をエタノール溶液中に溶解し、この溶液中に基 材を含浸した後、75℃で乾燥することにより作業用ワイパーを得た。
【0034】 実施例2 4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとアゾビスイソブチロニトリルとをモ ル比で99:1:1の割合で含むエタノール溶液を調整する。一方、レーヨン繊 維(繊度1.5デニール)からなる繊維ウェブを水流絡合処理して、目付90g /m2 の不織布よりなる基材を得た。
【0035】 前記基材をエタノール溶液中に浸漬した後、室温でエタノールを蒸発させて、 不織布の構成繊維表面に4−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとを付着させる 。次いで、80℃の温度で5時間、恒温槽中に静置して前記4−ビニルピリジン とジビニルベンゼンとを共重合させる。この後共重合体の付着した不織布を反応 器に入れ、同容器内に臭化ベンジルとエタノールを加えて80℃で6時間反応さ せて4級化処理し、臭化ベンジルにより4級化されたピリジニウム基を有し、か つ架橋構造を有するビニル系共重合体が基材の構成繊維表面に付着した作業用ワ イパーを得た。
【0036】
【考案の効果】
上記構成を備えたことにより、請求項1記載の作業用ワイパーにあっては、優 れた微生物吸着能を有するビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に付 着していることから、該ワイパーで作業者が手や指先、道具の汚れを拭い取るこ とにより、作業者の手や指先、道具上の微生物を確実に拭い取ることができる。 このため、作業者の手や指先、道具を介して微生物が他の動植物へ接触感染する のを確実に防止することができる。また、本考案のビニル系共重合体は水不溶性 または水難溶性であることから、ワイパーが水に濡れても溶出することが無い。 又、このワイパーのビニル系共重合体は熱に対しても微生物吸着能が損なわれる ことが少ないため煮沸消毒することもでき、一定期間使用した後は煮沸消毒を施 し、再び使用することができる。
【0037】 又、請求項2記載の作業用ワイパーにあっては、三次元構造からなる不織布を 基材として用いていることから、その表面積は飛躍的に大きくなり、ビニル系共 重合体を構成繊維表面に薄く均一に付着させることができ、ビニル系共重合体の 単位重量当りの表面積を大きくすることができ、該ワイパーの微生物の拭い取り 性能を大幅に増大させることができる。
【0038】 請求項3記載の作業用ワイパーにあっては、ビニル系共重合体と共に殺菌剤が 付着されていることから、作業者の手や指先、道具上の微生物を吸着保持するの みならずワイパー上で殺菌してしまうため、他の動植物への感染防止効果をより 向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の作業用ワイパーを示した拡大断面図で
ある。
【図2】ビニル系共重合体の繊維への付着状態を模式的
に示す拡大図である。
【符号の説明】
11 作業用ワイパー 12 ビニル系共重合体を付着させた層 13 ビニル系共重合体 14 繊維
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【考案の名称】 作業用ワイパー
【実用新案登録請求の範囲】
【化1】 (ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキ
ル基又はペンタフルオロフェニルメチル基、Xはハロゲ
ン原子)で表される官能基を有する水不溶性または水難
溶性のビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部
に付着していることを特徴とする作業用ワイパー。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の作業用ワイパーを示した拡大断面図で
ある。
【図2】ビニル系共重合体の繊維への付着状態を模式的
に示す拡大図である。
【符号の説明】 11 作業用ワイパー 12 ビニル系共重合体を付着させた層 13 ビニル系共重合体 14 繊維
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08F 226/06 MNL 7242−4J D04H 1/46 A 7199−3B D06M 15/356

Claims (3)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 【化1】 (ただし、式中R1はベンジル基、C4〜C16のアルキル
    基又はペンタフルオロフェニルメチル基、Xはハロゲン
    原子)で表される官能基を有する水不溶性または水難溶
    性のビニル系共重合体が繊維質基材の一部または全部に
    付着していることを特徴とする作業用ワイパー。
  2. 【請求項2】前記繊維質基材が不織布であり、該不織布
    の構成繊維表面にビニル系共重合体が付着していること
    を特徴とする請求項1記載の作業用ワイパー。
  3. 【請求項3】 前記ビニル系共重合体と共に殺菌剤が繊
    維質基材の一部または全部に付着していることを特徴と
    する請求項1又は2記載の作業用ワイパー。
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