JPH056170U - 内接型ギヤポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ［目的］ 内接型ギヤポンプの高圧側の作動室から低圧
側の作動室にチップクリアランスを介してオイルがリー
クすることを防止する。 ［構成］ ポンプハウジング１の支持穴１₁ の半径を内
歯ギヤ２の半径よりも僅かに大きく形成するとともに、
外歯ギヤ４を支持する回転軸３の中心Ｏ′を前記支持穴
Ｏの中心に向けて偏倚させ、これにより内歯ギヤ２の上
部外周を支持穴１ ₁ の内周に接近させる。この状態から
ポンプを駆動すると、吐出ポート８側の作動室６ｄ〜６
ｆに作用する吐出圧によって内歯ギヤ２は右方向（吐出
ポート８側）に押圧され、その右部外周が支持穴１₁ の
内周に接近する。その結果、内歯ギヤ２は下方向にも僅
かに移動して内歯ギヤ２の歯先２₂ と外歯ギヤ４の歯先
４₂ 間のチップクリアランスＣが小さくなり、オイルの
リーク量が減少する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、例えば自動車用オイルポンプとして使用される内接型ギヤポンプに 関し、特に、ポンプハウジングの内部において内歯ギヤと外歯ギヤを偏心状態で 噛合させて両ギヤ間に作動空間を形成し、この作動空間に開口する吐出ポートと 吸入ポート間の連通を前記両ギヤの歯先によってシールするタイプの内接型ギヤ ポンプに関する。

【０００２】

【従来の技術】

自動車の内燃機関の各部に潤滑油を供給するオイルポンプとして、部品点数が 少なく構造が簡単なギヤポンプが一般的に使用されている。ギヤポンプはポンプ ハウジングの内部で複数の外歯ギヤを噛合させた外接型ギヤポンプと、ポンプハ ウジングの内部で内歯ギヤと外歯ギヤを噛合させた内接型ギヤポンプとに大別さ れる。そして内接型ギヤポンプは、内歯ギヤと外歯ギヤとにより容積が拡大・縮 小する作動室を画成するタイプのもの（所謂トロコイドポンプ）と、内歯ギヤと 外歯ギヤ間に配設した三日月状の仕切り部材に両ギヤの歯先を当接させて作動空 間を画成するタイプのものとに分類される。

【０００３】 図６は上記前者の内接型ギヤポンプの構造を示すもので、ポンプハウジング１ の内部に形成された円形の支持穴１₁ には、トロコイド曲線よりなる９個の内歯 ２₁ を備えた内歯ギヤ２が回転自在に支承される。支持穴１₁ を貫通してポンプ ハウジング１の左右の側板（図示せず）に回転自在に支持される回転軸３には、 トロコイド曲線よりなる８個の外歯４₁ を備えた外歯ギヤ４がキー５で結合され る。回転軸３の中心Ｏ′は支持穴１₁ の中心Ｏに対して下方に距離δだけ偏心し ており、これにより外歯ギヤ４の下部位置にある外歯４₁ の歯先４₂ は内歯ギヤ ２の内歯２₁ の歯元に係合するとともに、外歯ギヤ４の上部位置にある外歯４₁ の歯先４₂ は内歯ギヤ２の内歯２₁ の歯先２₂ に対向する。

【０００４】 内歯ギヤ２と外歯ギヤ４の噛合により、両ギヤ２，４間には回転軸３が矢印Ａ 方向に回転するのに伴って容積が拡大・縮小する複数の作動室６ａ〜６ｆが円弧 状に形成される。ポンプハウジング１の側板には、容積が拡大する側の作動室６ ａ〜６ｃに連通する吸入ポート７と、容積が縮小する側の作動室６ｄ〜６ｆに連 通する吐出ポート８が形成される。

【０００５】 而して、回転軸３と共に外歯ギヤ４が矢印Ａ方向に回転すると、その外歯ギヤ ４に噛合する内歯ギヤ２も同方向に回転し、吸入側の作動室６ａ〜６ｃには吸入 ポート７から作動流体としてのオイルが吸入される。内歯ギヤ２と外歯ギヤ４の 回転に伴い、前記吸入側の作動室６ａ〜６ｃは吐出側の作動室６ｄ〜６ｆに移行 し、オイルは吐出ポート８から吐出される。このとき、吸入ポート７に連通する 作動室６ａ〜６ｃのオイルは低圧であるのに対し、吐出ポート８に連通する作動 室６ｄ〜６ｆのオイルは高圧であるため、内歯ギヤ２の歯先２₂ と外歯ギヤ４の 歯先４₂ 間のチップクリアランスＣを通して高圧側の作動室６ｄから低圧側の作 動室６ｃへオイルがリークし、ポンプの性能が低下する。そして前記オイルのリ ーク量は、ポンプの吐出圧が増加する程大きくなり、且つ温度が上昇してオイル の粘性が低下する程大きくなる。

【０００６】 そこで、上記チップクリアランスＣを通してのオイルのリークを抑制すべく、 ポンプハウジングの支持穴に接続する凹部を形成し、この凹部に装着した弾性部 材によって内歯ギヤを一方向に付勢することにより、内歯ギヤと外歯ギヤの歯先 間のチップクリアランスを減少させるものが提案されている（特開昭５６−１２ ９５８８号公報参照）。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら上記従来の内接型ギヤポンプは、内歯ギヤを付勢する弾性部材と 該弾性部材を装着する凹部の加工が必要になるため、部品点数および製造コスト か増加する問題がある。しかも、前記弾性部材は常に一定の押圧力で内歯ギヤを 付勢するので、吐出圧が低くオイルのリーク量が少ない場合には、弾性部材の押 圧力が過剰となって摩擦力が増加し、ポンプが大きな駆動力を必要とする問題が ある。

【０００８】 本考案は前述の事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造で吐出圧の大きさに 応じた自緊力を発生させ、内歯ギヤと外歯ギヤの歯先間のチップクリアランスを 減少させることが可能な内接型ギヤポンプを提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

前記目的を達成するために、本考案は、ポンプハウジングに形成した円形の支 持穴に回転自在に支承される内歯ギヤと前記支持穴の中心に対して偏心した中心 を有する回転軸に支承される外歯ギヤとを互いに噛合させ、前記内歯ギヤと外歯 ギヤ間に形成される作動室の両端に開口する吸入ポートと吐出ポート間の連通を 前記内歯ギヤと外歯ギヤの歯先でシールする内接型ギヤポンプにおいて、支持穴 の半径を内歯ギヤの半径よりも僅かに大きく形成して内歯ギヤの外周と支持穴の 内周間に内歯ギヤの半径方向の移動を許容する間隙を形成するとともに、回転軸 の中心を支持穴の中心に接近する方向に偏倚させて内歯ギヤの外周と支持穴の内 周間の間隙を前記回転軸の偏倚方向側において減少させたことを特徴とする。

【００１０】

【実施例】

以下、図面に基づいて本考案の実施例を説明する。

【００１１】 図１〜図５は本考案の一実施例を示すもので、図１は内接型ギヤポンプの不作 動状態を示す図、図２は同じく作動状態を示す図、図３はオイルの温度と吐出圧 の関係を示すグラフ、図４は図１に対応するギヤの位相が異なる図、図５は図２ に対応するギヤの位相が異なる図である。尚、本実施例において図６に示した従 来のポンプと同一の部材には同一の符号が付してある。

【００１２】 図１に示すように、この内接型ギヤポンプのポンプハウジング１の支持穴１₁ の半径は、その内部に支承される内歯ギヤ２の半径よりもａだけ大きく形成され 、内歯ギヤ２は支持穴１₁ に対して半径方向に距離ａだけ移動可能である。また 、支持穴１₁ の中心Ｏを基準とした外歯ギヤ４の回転軸３の中心Ｏ′の偏心量は 、図６の従来のものがδであるのに対し、本実施例のものはδ−ａとされる。す なわち、回転軸３の中心Ｏ′は支持穴１₁ の中心Ｏに距離ａだけ近づく方向（図 １における上方）に偏倚している。その結果、支持穴１₁ の内周と内歯ギヤ２の 外周間に幅ａの均一なクリアランスが形成されるべきところ、上方に距離ａだけ 偏倚した外歯ギヤ４に押し上げられて内歯ギヤ２も上方に距離ａだけ偏倚し、図 １の上部位置Ｐ₂ において前記クリアランスがゼロになるとともに、下部位置Ｐ ₁ において前記クリアランスが２ａとなる。このとき、内歯ギヤ２の内歯２₁ の 歯先２₂ と外歯ギヤ４の外歯４₁ の歯先４₂ 間には僅かなチップクリアランスＣ が形成されるか、あるいは作動室６ｃ，６ｄ間に圧力差が生じた場合に前記チッ プクリアランスＣが形成され得る状態にある。

【００１３】 この状態から図２に示すように回転軸３を駆動して外歯ギヤ４と内歯ギヤ２を 矢印Ａ方向に回転させると、吸入ポート７から作動室６ａ〜６ｃに吸入されたオ イルは作動室６ｄ〜６ｆから吐出ポート８に吐出される。その際に、高圧側の作 動室６ｄのオイルが前記歯先２₂ ，４₂ 間のチップクリアランスＣを拡大して低 圧側の作動室６ｃにリークしようとする。しかしながら、高圧側の作動室６ｄ〜 ６ｆに対向する内歯ギヤ２の内面に作用する吐出圧により、ポンプの不作動状態 において支持穴１₁ の内面にＰ₂ 点で当接していた内歯ギヤ２は、支持穴の内面 にＰ₃ 点で当接するように右方向に移動する。その結果、内歯ギヤ２は図１の状 態に比べて僅かに下方にも移動し、前記歯先２₂ ，４₂ 間のチップクリアランス Ｃを縮小して作動室６ｄから作動室６ｃへのオイルのリークを規制する。

【００１４】 ポンプの吐出圧によってチップクリアランスＣを縮小する上記自緊作用は吐出 圧の増加に伴って次第に増大するため、吐出圧の低い状態から高い状態まで常に 適切な力で前記チップクリアランスＣを調整するように作用する。尚、図２のポ ンプの作動状態において、内歯ギヤ２の下方への移動に伴って内歯ギヤ２と外歯 ギヤ４の噛み合い部分（両ギヤ２，４の下部位置）のクリアランスが僅かに増加 するが、元々前記噛み合い部分は油膜の長さが長いため、高圧側の作動室６ｆか ら低圧側の作動室６ａへのオイルのリーク量が増加する虞れは無い。

【００１５】 以上の説明は、内歯ギヤ２と外歯ギヤ４の位相が両ギヤ２，４の上部位置で歯 先２₂ ，４₂ が正対する状態のものであるが、図４および図５に示すように前記 状態から位相がずれた状態においても、ポンプの運転による自緊作用でチップク リアランスＣが減少することは明らかである。

【００１６】 而して、図３に破線で示す従来のポンプでは、温度の上昇に伴ってオイルの粘 性が低下するためにリーク量が増えて吐出圧が大きく減少しているが、実線で示 す本実施例のポンプでは、前述の自緊作用によるチップクリアランスＣの減少に より吐出圧の低下率を大幅に緩和することが可能となる。

【００１７】 以上、本考案の実施例を詳述したが、本考案は前記実施例に限定されるもので なく、実用新案登録請求の範囲に記載された本考案を逸脱することなく、種々の 小設計変更を行うことが可能である。

【００１８】 例えば、本考案の内接型ギヤポンプは自動車の潤滑油供給用のオイルポンプに 限定されず、種々の用途に適用可能である。また、内歯ギヤ２と外歯ギヤ４の歯 数も実施例のものに限定されず、適宜変更可能である。

【００１９】

【考案の効果】

以上のように本考案によれば、ポンプハウジングに形成した支持穴の半径を内 歯ギヤの半径よりも僅かに大きく形成して内歯ギヤの外周と支持穴の内周間に間 隙を形成し、且つ回転軸の位置を支持穴の中心からの偏心量が減少する方向に偏 倚させたので、その回転軸の偏倚方向側において前記内歯ギヤの外周と支持穴の 内周間の間隙が減少する。この状態からポンプを運転すると、吐出圧によって押 圧された内歯ギヤが吐出ポート側に移動し、前記間隙は吐出ポート側で小さくな る。その結果、内歯ギヤは前記偏倚方向と逆方向に移動して内歯ギヤと外歯ギヤ の歯先間のチップクリアランスが減少し、そのチップクリアランスを通しての吐 出ポート側から吸入ポート側へのオイルのリークを減少させることができる。し かも、ポンプの吐出圧の増加によりオイルのリーク量が増加すると、それに伴っ てチップクリアランスを減少させる自緊力も増加するため、広範囲な吐出圧にお いて常に適切な自緊力でオイルのリークを防止することができる。また本考案は 新たな部材を何等必要とせず、従来の内接型ギヤポンプの寸法緒元を変更するだ けで実施可能であるため、極めて低コストである。

【図面の簡単な説明】

【図１】内接型ギヤポンプの不作動状態を示す図

【図２】同じく作動状態を示す図

【図３】オイルの温度と吐出圧の関係を示すグラフ

【図４】図１に対応するギヤの位相が異なる図

【図５】図２に対応するギヤの位相が異なる図

【図６】従来の内接型ギヤポンプを示す図

【符号の説明】

１・・・・・・ポンプハウジング １₁ ・・・・・支持穴 ２・・・・・・内歯ギヤ ２₂ ・・・・・歯先 ３・・・・・・回転軸 ４・・・・・・外歯ギヤ ４₂ ・・・・・歯先 ６ａ〜６ｆ・・作動室 ７・・・・・・吸入ポート ８・・・・・・吐出ポート Ｏ・・・・・・支持穴の中心 Ｏ′・・・・・回転軸の中心

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 上野 穣 埼玉県和光市中央１丁目４番１号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 ポンプハウジング（１）に形成した円形
   の支持穴（１₁ ）に回転自在に支承される内歯ギヤ
   （２）と前記支持穴（１₁ ）の中心（Ｏ）に対して偏心
   した中心（Ｏ′）を有する回転軸（３）に支承される外
   歯ギヤ（４）とを互いに噛合させ、前記内歯ギヤ（２）
   と外歯ギヤ（４）間に形成される作動室（６ａ〜６ｆ）
   の両端に開口する吸入ポート（７）と吐出ポート（８）
   間の連通を前記内歯ギヤ（２）と外歯ギヤ（４）の歯先
   （２₂ ，４₂ ）でシールする内接型ギヤポンプにおい
   て、 支持穴（１₁ ）の半径を内歯ギヤ（２）の半径よりも僅
   かに大きく形成して内歯ギヤ（２）の外周と支持穴（１
   ₁ ）の内周間に内歯ギヤ（２）の半径方向の移動を許容
   する間隙を形成するとともに、回転軸（３）の中心
   （Ｏ′）を支持穴（１₁ ）の中心（Ｏ）に接近する方向
   に偏倚させて内歯ギヤ（２）の外周と支持穴（１₁ ）の
   内周間の間隙を前記回転軸（３）の偏倚方向側において
   減少させたことを特徴とする、内接型ギヤポンプ。