JPH0558811U - エンジン排気音の適応型能動消音装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、エンジン排気音の適応型能動消音
装置に関し、エンジン排気音を適応フィルタを用いて能
動的に消音することを目的とする。 【構成】 エンジンの排気管出口付近に嵌挿されたスピ
ーカ２をそなえるとともに、該排気管１から排出される
排気音を参照信号として検出する参照信号検出手段４
と、該スピーカ２からの音と排気音との合成音を制御点
信号として検出する制御点信号検出手段５とをそなえ、
該参照信号検出手段４で検出された参照信号と該制御点
信号検出手段５で検出された制御点信号とを受けて、該
制御点信号が最小となるように該スピーカ２からの音波
信号を制御するための適応フィルタを用いた制御手段７
を設けるように構成する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、エンジン排気音の適応型能動消音装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来より、エンジン排気音の消音手段としては、マフラ（消音器）が代表的で ある。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、近年においては、エンジン排気音をマフラを使用しないで消すため の研究が行なわれるようになってきた。 本考案は、このような状況下において創案されたもので、エンジン排気音を適 応フィルタを用いて能動的に消音できるようにした、エンジン排気音の適応型能 動消音装置を提供することを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

このため、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置は、エンジンの排気 管出口付近に嵌挿されたスピーカをそなえるとともに、該排気管から排出される 排気音を参照信号として検出する参照信号検出手段と、該スピーカからの音と排 気音との合成音を制御点信号として検出する制御点信号検出手段とをそなえ、該 参照信号検出手段で検出された参照信号と該制御点信号検出手段で検出された制 御点信号とを受けて、該制御点信号が最小となるように該スピーカからの音波信 号を制御するための適応フィルタを用いた制御手段が設けられたことを特徴とし ている（請求項１）。

【０００５】 また、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置は、該参照信号検出手段 および該制御点信号検出手段がそれぞれマイクロホンで構成され、該参照信号検 出手段を構成するマイクロホンが、該排気管出口に向けて配設されるとともに、 該制御点信号検出手段を構成するマイクロホンが、該スピーカに向けて配設され たことを特徴としている（請求項２）。

【０００６】 さらに、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置は、該スピーカが車両 のリヤバンパをバックキャビティとして利用すべく、該スピーカが内部空洞式リ ヤバンパに取り付けられていることを特徴としている（請求項３）。

【０００７】

【作用】

上述の本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置では、参照信号検出手段 にて、排気管から排出される排気音を参照信号として検出し、制御点信号検出手 段にて、スピーカからの音と排気音との合成音を制御点信号として検出し、これ らの参照信号と制御点信号とを、適応フィルタを用いた制御手段へ入力すること により、制御点信号が最小となるように、スピーカからの音波信号を制御する（ 請求項１）。

【０００８】 また、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置（請求項２）では、排気 管出口に向けて配設されたマイクロホンで、参照信号が検出されるとともに、ス ピーカに向けて配設されたマイクロホンで、制御点信号が検出される。 さらに、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置では（請求項３）、ス ピーカが車両のリヤバンパをバックキャビティとして利用している。

【０００９】

【実施例】

以下、図面により、本考案の一実施例としてのエンジン排気音の適応型能動消 音装置について説明すると、図１は本装置の概略構成図、図２は図１のＩＩ−Ｉ Ｉ矢視図、図３はスピーカとマイクの取付例を側方からみた模式図、図４はスピ ーカとマイクの取付例を後方からみた模式図、図５はマイクの指向特性を説明す る図、図６は適応フィルタによる制御アルゴリズムを説明する図、図７はその作 用説明図である。

【００１０】 さて、この実施例では、図１〜図４に示すように、車載用エンジンＥの排気管 １の出口付近に、スピーカ２が嵌挿されている。すなわち、このスピーカ２は、 スピーカコーン，永久磁石の中央部をそれぞれ穴明けし、この穴に適宜の断熱材 を介して排気管１を通しているのである。 また、このスピーカ２は、図３，図４に示すように、車体後端下部に取り付け られた内部空洞式リヤバンパ３に取り付けられており、これにより、スピーカ２ は車両のリヤバンパ３をバックキャビティとして利用していることになる。

【００１１】 さらに、排気管１から排出される排気音を参照信号として検出する参照信号検 出手段４が設けられるとともに、スピーカ２からの音と排気音との合成音を制御 点信号として検出する制御点信号検出手段５が設けられている。 ここで、上記の参照信号検出手段４および制御点信号検出手段５はそれぞれマ イクロホン４ａ，５ａで構成され、更に参照信号検出手段４を構成するマイクロ ホン（参照マイク）４ａは、排気管１の出口に向けて配設されるとともに、制御 点信号検出手段５を構成するマイクロホン（制御マイク）５ａは、スピーカ２に 向けて配設されている。なお、少なくとも参照マイク４ａの指向特性は図５のよ うになっており、このような指向特性のマイクは安価で求められる。

【００１２】 さらに、これらの参照マイク４ａや制御マイク５ａの排気管１への取付方は次 のとおりである。すなわち、図３，図４に示すように、排気管１に嵌挿されるセ ラミック製の支持部材６に、参照マイク４ａが排気管１の出口に向けて配設され るとともに、制御マイク５ａがスピーカ２に向けて配設されている。なお、この 支持部材６は、複数箇所をボルト６ａを締め付けることで、排気管１に取り付け られるようになっている。

【００１３】 ところで、参照信号検出手段４で検出された参照信号と制御点信号検出手段５ で検出された制御点信号とを受けて、制御点信号が最小となるように、スピーカ ２からの音波信号を制御するためのコントローラ７が設けられているが、このた めに、このコントローラ７は、最小自乗誤差推定法（ＬＭＳ法）によるアルゴリ ズムを用いた適応フィルタを有する制御手段として構成されている。すなわち、 このコントローラ７では、参照マイク４ａで検出された参照信号と制御マイク５ ａで検出された制御点信号とから、上記ＬＭＳ法によるアルゴリズムを用いて、 適応フィルタのフィルタ係数を更新していくようになっている。なお、このコン トローラ７は、電源オンにてスタンドアロン動作するようになっている。

【００１４】 つぎに、このコントローラ７で実行される基本アルゴリズムについて説明する と、まず、このコントローラ７での消音制御（アクティブノイズコントロール） はＦｉｌｔｅｒｅｄ−Ｘ ＬＭＳアルゴリズムを用いた適応ＦＩＲフィルタによ り行なう。基本ブロック図を図６に示す。このブロック図において、Ｗは適応Ｆ ＩＲフィルタ、ＬＭＳはＬＭＳアルゴリズムである。

【００１５】 そして、このコントローラ７においては、排気音源より参照信号Ｘ（ｔ）を入 力し、ＦＩＲにより畳み込んで出力Ｙ（ｔ）を求める。すなわち、Ｙ（ｔ）は次 の（１）式で表される。 Ｙ（ｔ）＝ΣＷ（ｉ）Ｘ（ｔ−ｉ） ・・（１） なお、この（１）式については、ｉ＝０〜Ｎ−１についての総和をとるように なっている。

【００１６】 また、このコントローラ７で、−Ｙ（ｔ）を出力すると、音場の伝達特性によ り、制御点における誤差信号Ｅが得られる。 Ｅ（ｔ）＝Ｔ（ｚ）Ｘ（ｚ）−Ｄ（ｚ）Ｙ（ｚ） ・・（２） ここで、Ｔは排気音伝達系の特性〔排気音源（参照マイク４ａ設置位置）から 制御点（制御マイク５ａ設置位置）までの音響伝達特性を含む〕、Ｄは消音伝達 系の特性〔スピーカ２から制御点（制御マイク５ａの設置位置）までの音響伝達 特性を含む〕である。

【００１７】 さらに、上記の誤差信号Ｅ（ｔ）とＸ（ｔ）よりＬＭＳアルゴリズム（符号Ｌ ＭＳ参照）を用いて、適応フィルタＷのフィルタ係数Ｗ（ｉ）を更新する。つま り、 Ｗｎ（ｉ）＝Ｗｏ（ｉ）＋ｋＥ（ｔ）Ｘ（ｔ−ｉ） （ｉ＝０〜Ｎ−１） ・・（３） ここで、Ｗｎ（ｉ）は更新後のフィルタ係数、Ｗｏ（ｉ）は更新前のフィルタ 係数、ｋは更新係数である。

【００１８】 これにより、フィルタは誤差信号を最小とする最適フィルタに収束するのであ る。 このように適応フィルタを用いてエンジン排気音を能動的にしかも効果的に消 音できるが、更に参照マイク４ａや制御マイク５ａおよびスピーカ２を排気管１ の外部に取り付けられているので、排気管内のような高温，高湿環境下に、参照 マイクや制御マイクおよびスピーカを設置する場合に比べ、安価なマイク等の使 用が可能となり、コストの低減に寄与するのである。

【００１９】 また、スピーカ２が内部空洞式リヤバンパ３に取り付けられているので、スピ ーカ３が車両のリヤバンパ３をバックキャビティとして利用することができ、こ れにより省スペース化をはかりながら、効果的な消音を実行できる。 なお、本消音装置を作動させない場合（システムオフ時）、騒音レベルは図７ に実線で示す特性Ａのようになるが、本消音装置を作動させた場合（システムオ ン時）、騒音レベルは図７に点線で示す特性Ｂのようになる。これからも、本装 置によって、広い周波数にわたって、優れた消音効果が得られていることがわか る。

【００２０】

【考案の効果】

以上詳述したように、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置（請求項 １）によれば、エンジンの排気管出口付近に嵌挿されたスピーカをそなえるとと もに、該排気管から排出される排気音を参照信号として検出する参照信号検出手 段と、該スピーカからの音と排気音との合成音を制御点信号として検出する制御 点信号検出手段とをそなえ、該参照信号検出手段で検出された参照信号と該制御 点信号検出手段で検出された制御点信号とを受けて、該制御点信号が最小となる ように該スピーカからの音波信号を制御するための適応フィルタを用いた制御手 段が設けられるという簡素な構成で、適応フィルタを用いてエンジン排気音を能 動的にしかも効果的に消音できる利点がある。

【００２１】 また、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置（請求項２）では、該参 照信号検出手段および該制御点信号検出手段がそれぞれマイクロホンで構成され 、該参照信号検出手段を構成するマイクロホンが、該排気管出口に向けて配設さ れるとともに、該制御点信号検出手段を構成するマイクロホンが、該スピーカに 向けて配設されているので、マイクを排気管の外部に取り付けることができ、こ れにより、排気管内のような高温，高湿環境下に、マイクを設置する場合に比べ 、安価なマイクの使用が可能となり、その結果、コストの低減に寄与するという 利点がある。

【００２２】 さらに、本考案のエンジン排気音の適応型能動消音装置（請求項３）では、該 スピーカが内部空洞式リヤバンパに取り付けられているので、スピーカが車両の リヤバンパをバックキャビティとして利用することができ、これにより省スペー ス化をはかりながら、効果的な消音を実行できる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例としてのエンジン排気音の適
応型能動消音装置の概略構成図である。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ矢視図である。

【図３】スピーカとマイクの取付例を側方からみた模式
図である。

【図４】スピーカとマイクの取付例を後方からみた模式
図である。

【図５】マイクの指向特性を説明する図である。

【図６】適応フィルタによる制御アルゴリズムを説明す
る図である。

【図７】本考案の一実施例の作用説明図である。

【符号の説明】

１ 排気管 ２ スピーカ ３ リヤバンパ ４ 参照信号検出手段 ４ａ 参照マイク ５ 制御点信号検出手段 ５ａ 制御マイク ６ 支持部材 ６ａ ボルト ７ コントローラ（適応フィルタを用いた制御手段） Ｅ エンジン

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンの排気管出口付近に嵌挿された
   スピーカをそなえるとともに、 該排気管から排出される排気音を参照信号として検出す
   る参照信号検出手段と、 該スピーカからの音と排気音との合成音を制御点信号と
   して検出する制御点信号検出手段とをそなえ、 該参照信号検出手段で検出された参照信号と該制御点信
   号検出手段で検出された制御点信号とを受けて、該制御
   点信号が最小となるように該スピーカからの音波信号を
   制御するための適応フィルタを用いた制御手段が設けら
   れたことを特徴とする、エンジン排気音の適応型能動消
   音装置。
2. 【請求項２】 該参照信号検出手段および該制御点信号
   検出手段がそれぞれマイクロホンで構成され、該参照信
   号検出手段を構成するマイクロホンが、該排気管出口に
   向けて配設されるとともに、該制御点信号検出手段を構
   成するマイクロホンが、該スピーカに向けて配設された
   ことを特徴とする、請求項１記載のエンジン排気音の適
   応型能動消音装置。
3. 【請求項３】 該スピーカが車両のリヤバンパをバック
   キャビティとして利用すべく、該スピーカが内部空洞式
   リヤバンパに取り付けられていることを特徴とする、請
   求項１記載のエンジン排気音の適応型能動消音装置。