JPH055061A - ポリアリーレンチオエーテル組成物 - Google Patents

ポリアリーレンチオエーテル組成物

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JPH055061A
JPH055061A JP21461291A JP21461291A JPH055061A JP H055061 A JPH055061 A JP H055061A JP 21461291 A JP21461291 A JP 21461291A JP 21461291 A JP21461291 A JP 21461291A JP H055061 A JPH055061 A JP H055061A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 色調、流動性、結晶化特性の改良されたポリ
アリーレンチオエーテル組成物を提供すること。 【構成】 ポリアリーレンチオエーテルに、フェニレン
チオエーテル繰り返し単位を有し、かつ、少なくとも一
方の末端に−SH基を有する低分子量物を添加してなる
ポリアリーレンチオエーテル組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、色調、流動性、結晶化
特性の改良されたポリアリーレンチオエーテル組成物に
関する。
【0002】
【従来の技術】ポリフェニレンスルフィドに代表される
ポリアリーレンチオエーテル(以下、PATEと略記)
は、その優れた耐熱性、機械的特性、耐薬品性などのた
め、繊維、シート、フィルム、各種成形品の材料とし
て、電気・電子分野、自動車分野、機械・精密機械分野
など広範な分野に用いられている。成形用途としては、
例えば、ガラス繊維や無機充填材などで強化されたコン
パウンドとして、射出成形用途などに適用されている。
【0003】PATEは、一般に、結晶性のポリマーで
あり、結晶化度により種々の特性が変化し、機械的強
度、射出成形性にも大きな影響を及ぼす。
【0004】ところで、PATEの射出成形において
は、急速に高い結晶化度を達成すること、成形サイクル
を速めることが望まれ、また、低温金型を用いることが
要求される場合がある。また、特に、封止材のような精
密成形、大型品の成形、薄肉品の成形などにおいては、
流動性を高めることが要求される。さらに、PATEコ
ンパウンドは、金型温度、シリンダー温度、成形サイク
ル、射出圧力などにより成形品の色調が変化するため、
色調の安定化が求められる。
【0005】従来、ポリフェニレンスルフィドの結晶化
特性を損なわずに、急速結晶化を計るため、クレジルジ
フェニルホスフェートなどのリン酸エステルを添加する
ことが提案されている(特開昭62−230850号公
報)。リン酸エステルを添加した組成物は、ポリフェニ
レンスルフィド単独の場合と比較して、結晶化速度が増
大するけれども、溶融粘度低下効果は比較的小さい。ま
た、ガラス転移温度(Tg)が大幅に低下するため、耐
熱性が不充分となる。しかも、溶融押出時にリン酸エス
テルが一部揮発する問題がある。さらに、成形品の色調
改善効果はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、色
調、流動性、結晶化特性の改良されたポリアリーレンチ
オエーテル組成物を提供することにある。本発明者ら
は、前記従来技術の有する問題点を克服するために鋭意
研究した結果、PATEに、フェニレンチオエーテル繰
り返し単位を有し、かつ、少なくとも一方の末端に−S
H基を有する低分子量物を添加することにより、上記目
的が達成できることを見出した。
【0007】すなわち、PATEに該低分子量物を添加
すると、リン酸エステルを添加した場合と比較して、少
量の添加でも溶融粘度が著しく低下して、流動性が顕著
に向上した組成物が得られる。また、結晶化速度が速く
なり、金型温度を低くすることができ、成形サイクルを
短縮することができる。
【0008】しかも、驚くべきことに、末端に−SH基
を有する低分子量物を添加した組成物は、その色調が顕
著に改善され、安定化効果を発揮することが見出され
た。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至っ
たものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、溶融粘度(310℃、剪断速度1200sec-1
測定)が200〜106ポイズの一般式(I)
【0010】
【化4】 〔ただし、Arはアリーレン基を示す〕で表される繰り
返し単位を含有するポリアリーレンチオエーテル(A)
に、一般式(II)
【0011】
【化5】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
4の整数である。また、nは平均重合度を表し1.3〜
30の範囲である〕を有し、かつ、少なくとも一方の末
端に−SH基を有する低分子量物(B)を添加してなる
ことを特徴とする色調、流動性、結晶化特性の改良され
たポリアリーレンチオエーテル組成物が提供される。
【0012】以下、本発明について詳述する。 (PATE(A)) 本発明で使用するPATE(A)は、ポリマーの主繰り
返し単位として一般式(I)
【0013】
【化6】 を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに
好ましくは90重量%以上含む芳香族ポリマーである。
ここで、Arは、アリーレン基であり、ベンゼンから水
素原子2個を除いた残基を意味し、これに核置換基を有
するものを包含する。好ましいアリーレン基としては、
化7、化8を挙げることができる。
【0014】
【化7】
【0015】
【化8】 〔ただし、Rは、炭素数6以下のアルキル基やアルコキ
シ基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
4の整数である〕また、PATE(A)は、その溶融粘
度(310℃、剪断速度1200sec-1で測定)が2
00〜106ポイズ、好ましくは500〜105ポイズ、
さらに好ましくは1000〜105ポイズのポリマーで
ある。このような高分子量のPATEに、低分子量物
(B)を添加することにより、流動性改善効果などを発
揮することができる。
【0016】繰り返し単位一般式(I)は、通常、p−
フェニレンチオエーテル単位、m−フェニレンチオエー
テル単位およびこれらの混合単位である。一般式(I)
以外の少量成分を構成する単位としては、例えば、ジフ
ェニルスルフォンスルフィド単位、ビフェニルスルフィ
ド単位、ジフェニルケトンスルフィド単位、ジフェニル
エーテルスルフィド単位、2,6−ナフタレンスルフィ
ド単位などを挙げることができる。
【0017】このようなPATEの製造方法は、特に限
定されないが、通常、p−ジクロルベンゼン、m−ジク
ロルベンゼンなどのジハロゲン置換芳香族化合物と、硫
化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物との反応によっ
て得られる。例えば、米国特許第3,919,177
号、米国特許第4,645,826号などに開示されて
いるように、アルカリ金属硫化物と、ジハロゲン置換芳
香族化合物とを、N−メチルピロリドンなどの極性有機
溶媒中で、水の存在下に、加熱して重合することにより
得ることができる。重合に際し、トリクロルベンゼンな
どのポリハロベンゼンを添加して共重合させることによ
り、若干の架橋・分枝構造を導入したPATEも用いる
ことができる。
【0018】このようなPATEの中でも、ポリフェニ
レンチオエーテル(すなわちポリフェニレンスルフィ
ド)、特に、ポリp−フェニレンチオエーテル、あるい
はm−フェニレンチオエーテル単位を少量成分として含
有するポリp−フェニレンチオエーテルが物性および入
手の容易さから賞用される。
【0019】(低分子量物(B)) 本発明で用いる低分子量物(B)は、一般式(II)
【0020】
【化9】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
4の整数である。また、nは平均重合度を表し1.3〜
30の範囲である〕で表され、かつ、少なくとも一方の
末端に−SH基を有するものである。
【0021】このような低分子量物は、ポリフェニレン
チオエーテルを、含水極性有機溶媒中、アルカリ金属硫
化物を作用させて解重合する方法により好適に得ること
ができる。あるいは、p−ジクロルベンゼン、m−ジク
ロルベンゼンなどのジハロゲン置換芳香族化合物と、硫
化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とを、N−メチ
ルピロリドンなどの極性有機溶媒中で反応させてポリフ
ェニレンチオエーテルを製造するに際し、通常よりもア
ルカリ金属硫化物の割合を大きくし、例えば、ジハロゲ
ン置換芳香族化合物/アルカリ金属硫化物の比(モル
比)を0.5〜0.95とすることにより得ることがで
きる。ただし、少なくとも一方の末端をチオール基(−
SH基)とするために、これらの方法で得られたアルカ
リチオラート末端を有する低分子量物は、酸で処理され
る。
【0022】本発明者らは、先に、PATEにアルカリ
金属硫化物を作用させると、PATEの主鎖が切断して
解重合し、末端にアルカリチオラート基を有する化合物
の得られることを見出したが(特願平2−109479
号、特願平2−109480号)、本発明で用いる低分
子量物(B)は、この方法を利用して、ポリフェニレン
チオエーテルを解重合することにより、得ることができ
る。
【0023】具体的には、主繰り返し単位として一般式
(III)
【0024】
【化10】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
4の整数である〕で表されるフェニレンチオエーテル繰
り返し単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以
上、さらに好ましくは90重量%以上含むポリフェニレ
ンチオエーテル(PPTE(C))を原料として用い
る。
【0025】このPPTE(C)は、溶融粘度(310
℃、剪断速度1200sec-1で測定)が106ポイズ
程度の高重合度のポリマーから、繰り返し単位数が数個
好ましくは数十個程度の低重合度のオリゴマーまで含ま
れる。若干の架橋・分枝構造を導入したポリマーであつ
てもよい。さらに、オフ・スペック品や成形屑、廃プラ
スチックなども使用できる。
【0026】このような原料PPTE(C)の製造方法
は、特に限定されないが、例えば、前記PATE(A)
と同様の方法により得ることができる。PPTE(C)
としては、通常、ポリフェニレンチオエーテル、特に、
ポリp−フェニレンチオエーテル、あるいはm−フェニ
レンチオエーテル単位を少量成分として含有するポリp
−フェニレンチオエーテルが物性および入手の容易さか
ら賞用される。したがって、低分子量物(B)における
好ましいフェニレンチオエーテル繰り返し単位は、p−
フェニレンチオエーテル単位および/またはm−フェニ
レンチオエーテル単位である。
【0027】PPTE(C)の解重合に使用するアルカ
リ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウ
ム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、お
よびこれらの混合物を例示することができる。また、水
硫化アルカリと水酸化アルカリから反応系においてin
situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いるこ
とができる。
【0028】極性有機溶媒としては、例えば、N−メチ
ルピロリドンなどのN−アルキルピロリドン、1,3−
ジアルキル−2−イミダゾリジノン、テトラアルキル尿
素、ヘキサアルキル燐酸トリアミド等に代表されるアプ
ロチック有機アミド溶媒が、反応系の安定性が高いので
好ましい。
【0029】少なくとも一方の末端にチオール基(−S
H基)を有する低分子量物(B)は、通常、 (イ)極性有機溶媒1kg当たり、水0.1〜20モル
を含有する含水極性有機溶媒、 (ロ)極性有機溶媒1kg当たり、一般式(III)
【0030】
【化11】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
4の整数である〕で表されるフェニレンチオエーテル繰
り返し単位を含有するポリフェニレンチオエーテル
(C)0.1〜5基本モル〔ただし、基本モル数とは、
一般式(III)で表される繰り返し単位を構成する原
子の原子量の総和を1グラム分子として算出したモル
数〕、および (ハ)ポリフェニレンチオエーテル(C)1基本モルに
対して、アルカリ金属硫化物0.01〜1モル、を含む
混合物を200〜300℃で、0.1〜30時間、解重
合反応させ、しかる後、得られたアルカリチオラート基
を有する低分子量物を酸で処理して末端を−SH基とす
ることにより得ることができる。
【0031】解重合の反応温度は、通常、200〜30
0℃、好ましくは220〜290℃、より好ましくは2
35〜280℃である。200℃未満では、解重合とア
ルカリチオラート化が不十分になったり、反応時間が長
くなり過ぎ、また、300℃を越えると、架橋反応を起
こし易くなり、いずれも好ましくない。
【0032】反応時間は、通常、0.1〜30時間、よ
り好ましくは0.5〜20時間である。0.1時間未満
では、反応が不十分になるおそれがあり、逆に、30時
間を越えると経済的に不利になる。
【0033】解重合工程での水の共存量は、極性有機溶
媒1kg当たり0.1〜20モル、好ましくは0.2〜
10モルの範囲が望ましい。0.1モル未満もしくは2
0モルを越えると、望ましくない副反応が起こるおそれ
がある。
【0034】解重合に供するPPTE(C)の量は、極
性有機溶媒1kg当たり0.1〜5基本モル、好ましく
は0.2〜4基本モルの範囲が望ましい。0.1基本モ
ル未満では、生産性が低下し、逆に、5基本モルを越え
ると、反応系の粘性が高くなり、いずれも好ましくな
い。
【0035】アルカリ金属硫化物の量は、PPTE
(C)1基本モル当たり0.01〜1モル、好ましくは
0.03〜0.8モル、さらに好ましくは0.04〜
0.7モルの範囲が望ましい。アルカリ金属硫化物の量
は、増加するにしたがい、解重合物の平均分子量は減少
するので、この量により解重合物の平均分子量のコント
ロールが可能である。0.01モル未満では、目標とす
る平均重合度をもった低分子量物(B)が得られにく
く、逆に、1モルを越えると、経済的に好ましいもので
はない。
【0036】含水極性有機溶媒、PPTE(C)および
アルカリ金属硫化物を含む混合物は、該混合物を100
倍(重量比)の水に希釈した水溶液のpH値が9以上、
好ましくは10以上になるようなアルカリ性であること
が望ましい。pH値が9未満では、解重合とアルカリチ
オラート化が不充分になるおそれがある。
【0037】混合物を所望のアルカリ性にするために、
PPTE(C)1基本モル当たり0.001〜1モル、
好ましくは0.01〜0.5モルの塩基性化合物の添加
が好適である。このような塩基性化合物としては、アル
カリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、
および炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙
げることができる。
【0038】かくして、少なくとも一方の末端にアルカ
リチオラート基を有する低分子量物が得られる。このよ
うな低分子量物は、通常、両末端にアルカリチオラート
基を有するものが主体となっていると考えられる。そし
て、この方法によれば、低重合度のオリゴマーから高重
合度のポリマーに至るPPTEを解重合することがで
る。
【0039】このアルカリチオラート基は、低分子量物
を塩酸水溶液などの酸で処理することにより、チーオー
ル基(−SH基)末端を有する低分子量物(B)に変換
される。
【0040】低分子量物(B)の平均重合度nは、通
常、1.3〜30、好ましくは1.5〜25、さらに好
ましくは2〜22である。平均重合度が大きすぎると、
流動性改善効果が減少する。
【0041】(組成物)本発明の組成物は、通常、PA
TE(A)100重量部に対して、低分子量物(B)を
通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量
部、さらに好ましくは1〜10重量部添加してなるもの
である。添加割合が過小であると、流動性改善効果など
が少なく、逆に、過大であると、溶融粘度が低下しすぎ
るため、好ましくない。
【0042】低分子量物(B)は、溶融粘度低下効果が
大きいため、少量添加により効率よく流動性に優れたP
ATE組成物を与えることができる。低分子量物(B)
の添加割合を変化させることにより、所望の溶融粘度の
組成物を得ることができる。したがって、本発明の組成
物は、特に、封止材のような精密成形、大型品の成形、
薄肉品の成形などの成形用材料としてきわめて好適なも
のである。
【0043】本発明のPATE組成物は、示差走査熱量
計(DSC)で測定した熱転移点挙動によると、低分子
量物(B)の添加割合が増大するにつれ、ガラス転移温
度(Tg)および結晶化温度(Tc1)が低下し、融点
(Tm)および溶融結晶化温度(Tc2)が増大する。
〔ただし、これらの熱転移温度は、PATE組成物サン
プルを室温から10℃/分の速度で340℃まで昇温し
て、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(TC1)お
よび融点(Tm)を測定し、ついで、340℃で3分間
保持した後、10℃/分の速度で降温して溶融結晶化温
度(Tc2)を測定したものである。〕このように、本
発明の組成物においては、結晶化し得る最低温度の結晶
化温度(Tc1)が低下する一方、溶融結晶化温度(T
2)が上昇するため、結晶化速度が速くなるととも
に、溶融加工(成形)時の結晶化し得る温度領域が広が
り、成形性が改善され、成形サイクルの短縮や金型温度
を低くすることも可能となる。また、ガラス転移温度
(Tg)は低下するものの、その低下度合いは少なく、
しかも融点(Tm)が増大し、結晶化度が改善されるた
め、耐熱性は保持ないしは改良される。
【0044】また、低分子量物(B)は、リン酸エステ
ルなどの一般の可塑剤とは異なり、溶融押出時の揮発が
ほとんど見られない。しかも、重要なことは、低分子量
物(B)を添加したPATE組成物は、溶融加工成形品
の色調が顕著に改善されることである。この理由は、低
分子量物(B)による安定化効果のためと推定される。
【0045】本発明のPATE組成物は、さらに、PA
TE(A)100重量部に対して、0〜400重量部の
無機充填材および/または繊維状充填材を含有すること
ができる。
【0046】無機充填材としては、例えば、タルク、マ
イカ、カオリン、クレイ、シリカ、アルミナ、シリカア
ルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウ
ム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシ
ウム、カーボンブラック、黒鉛、窒化ケイ素、ガラス、
ハイドロタルサイト、酸化ジルコニウム等の粉末を挙げ
ることができる。
【0047】繊維状充填材としては、例えば、ガラス、
炭素、黒鉛、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ
素、アラミドなどの繊維、あるいはケイ酸カルシウム
(ウォラストナイトを含む)、硫酸カルシウム、炭素、
窒化ケイ素、ボロンなどのウィスカーなどが挙げられ
る。その他、所望により、顔料、離型剤、紫外線吸収
剤、安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0048】
【実施例】以下、本発明について、実施例および比較例
を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら
の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】なお、物性の測定方法は以下のとおりであ
る。 <数平均分子量>数平均分子量は、ゲル・パーミエイシ
ョン・クロマトグラフ法(GPC法)で求めた。測定条
件は、以下のとおりである。 カラム:SHODEX AT 80 M/S 直列2本 溶 媒:α−クロルナフタレン 流 速:0.7ml/分 温 度:220℃ 試料濃度:0.05重量% 注入量:200μl 検出器:水素炎イオン検出器(FID) 分子量校正:標準ポリスチレンおよび
【0050】
【化12】 データ処理:SIC 7000B (システムインスツ
ルメント社製)
【0051】なお、低分子量物の数平均分子量は、該低
分子量物の調製時に得られる反応終了後の液をサンプリ
ングし、大過剰のヨウ化メチルを加えて、室温で一昼夜
撹拌して末端アルカリチオラート基をメチルエーテルに
変えた後、この反応液を多量の水に投入して、中和、水
洗、脱水および室温での減圧乾燥を経て得たものを試料
サンプルとして測定した。原料PATEは、そのまま試
料サンプルとした。
【0052】<熱転移温度>溶融押出物を320℃の温
度でホットプレスし、急冷して、厚さ約0.5mmのシ
ートに成形した後、当該シートを示差走査熱量計(DS
C:メトラー社製)を用いて、窒素雰囲気中、室温から
10℃/分の速度で340℃まで昇温して、ガラス転移
温度(Tg)、結晶化温度(TC1)および融点(T
m)を測定した。ついで、340℃で3分間保持した
後、10℃/分の速度で降温して溶融結晶化温度(Tc
2)を測定した。
【0053】<溶融粘度>溶融粘度(η*)は、重合上
がりのものについては、320℃の温度でホットプレス
して得たシートを、また組成物については、溶融押出物
を320℃の温度でホットプレスして得たプレスシート
を裁断したものを試料とし、東洋精機社製のキャピログ
ラフを用いて、310℃の温度、1200sec-1の剪
断速度で測定した。
【0054】<色 調>東京電色社製のカラーアナライ
ザーを用いて、明度(L)を測定した。試料は、溶融押
出物を320℃の温度でホットプレスし、急冷して、厚
さ約1mmのシートに成形した後、当該シートをギヤー
オーブン中150℃の温度で30分間結晶化処理したシ
ート、および当該結晶化処理したシートをさらに200
℃で2時間エイジングしたシートを用いた。
【0055】[参考例1] (PATEの調製)N−メチルピロリドン(NMP)
7.0kg、含水硫化ナトリウム3.03kg(18.
0モル、水分53.6重量%)を、チタン内張りオート
クレーブ中に仕込み、窒素ガスで置換後、徐々に200
℃まで昇温しながら、水1.32kgを含むNMP溶液
2.02kgと硫化水素0.41モルを溜出させた。
【0056】ついで、p−ジクロロベンゼン2.65k
g(18.03モル)、水0.24kg(13.3モ
ル)およびNMP3.70kgの混合溶液を供給し、2
20℃で5時間反応させた後、さらに水を0.72kg
(40.0モル)を圧入し、255℃に昇温して3時間
反応させた。得られた反応混合液をスクリーンで篩分け
し、顆粒状ポリマーを分離した後、アセトンで洗浄、つ
いで、塩化アンモニウム水で洗浄、最後に塩酸酸性水溶
液で洗浄後脱水し、100℃で乾燥して白色顆粒状のポ
リフェニレンチオエーテル(PATE(1))を得た。
このPATE(1)の溶融粘度は1450ポイズ、ま
た、数平均分子量は、約11,000であった。
【0057】[参考例2] (低分子量物の調製−1)チタン内張りオートクレーブ
中で、PATE(1)150.0g(1.39基本モ
ル)、NMP1.5kg、含水硫化ナトリウム115g
(0.68モル、水分53.6重量%)の混合物を撹拌
混合して混合液を調製した。この混合液の微量サンプル
を100倍重量の水で希釈した水溶液のpH値は10以
上であった。この混合液を撹拌しながら240℃で2.
5時間加熱し、PATE(1)の分子鎖を硫化ナトリウ
ムで切断的に解重合して、末端の少なくとも一つがアル
カリチオラート化された低分子量物に変化させた。
【0058】この反応液は、100℃の温度で実質的に
均一溶液状であり、PATE(1)に由来する粒子は認
められなかった。ついで、この反応液を多量の塩酸酸性
水溶液に投入して生成物を析出させ、これを濾別した
後、水洗、アセトン洗を行ない、室温で減圧乾燥して、
白色の粉末(PPTE−L(1))を得た。
【0059】このPPTE−L(1)の赤外線吸収スペ
クトルには、PATE(1)には観測されなかった25
60cm-1にSHの伸縮振動に基づく吸収が観測され
た。また、GPCを用いて測定したPPTE−L(1)
の数平均分子量は、約300であった。
【0060】これは、一般式(IV)
【0061】
【化13】 で表わされるnとして、約2.2に相当する。
【0062】[実施例1〜3、比較例1〜2]PATE
(1)100重量部に対して、PPTE−L(1)を表
1に示す割合で添加して、ブラベンダー社製の小型単軸
押出機を用いて、310℃の温度で溶融押出した。得ら
れた溶融押出物について、熱転移温度、溶融粘度、およ
び色調を測定した。結果を表1に示した。
【0063】比較のために、PATE(1)単独で、P
PTE−L(1)を添加しない場合(比較例1)、ポリ
フェニレンチオエーテルの可塑剤として効果があるとさ
れているクレジルジフェニルホスフェート(CDP)を
添加した場合(比較例2)について、同様に溶融押出し
て、物性を測定した。結果を一括して表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】表1から明らかなように、本発明の低分子
量物(B)を添加することにより、色調および流動性が
改善されることが分かる。特に、低分子量物(B)の添
加割合が少量でも、溶融粘度の低下効果が大きく、流動
性が顕著に改善される。また、本発明の組成物は、ガラ
ス転移温度(Tg)および結晶化温度(Tc1)が低下
する一方、融点(Tm)および溶融結晶化温度(T
2)が増大しており、易結晶化特性の得られることが
分かる。これに対して、CDPを添加した組成物(比較
例2)は、溶融粘度の低下効果が比較的少なく、ガラス
転移温度(Tg)の低下が大きく、色調改善効果がほと
んど見られない。
【0066】[参考例3] (低分子量物の調製−2)チタン内張りオートクレーブ
中で、PATE(1)1944g(18.0基本モ
ル)、NMP10kg、含水硫化ナトリウム302g
(1.80モル、水分53.6重量%)、水酸化ナトリ
ウム120g(3モル)、水270g(15.0モル)
の混合物を撹拌混合して混合液を調製した。この混合液
の微量サンプルを100倍重量の水で希釈した水溶液の
pH値は10以上であった。この混合液を撹拌しながら
240℃で2.5時間加熱し、PATE(1)の分子鎖
を硫化ナトリウムで切断的に解重合して、末端の少なく
とも一つがアルカリチオラート化された低分子量物に変
化させた。この反応液は、100℃の温度で実質的に均
一溶液状であり、PATE(1)に由来する粒子は認め
られなかった。
【0067】得られた反応液を、参考例2と同様に処理
して、白色の粉末(PPTE−L(2))を得た。この
PPTE−L(2)の赤外線吸収スペクトルには、PA
TE(1)には観測されなかった2560cm-1に吸収
が観測された。また、GPCを用いて測定したPATE
−L(2)の数平均分子量は、約1200であった。
【0068】これは、一般式(IV)
【0069】
【化14】 で表わされるnとして、約10.5に相当する。
【0070】[参考例4] (低分子量物の調製−3)チタン内張りオートクレーブ
中で、PATE(1)1000g(9.24基本モ
ル)、NMP10kg、含水硫化ナトリウム76g
(0.45モル、水分53.6重量%)、水酸化ナトリ
ウム100g(2.5モル)、水400g(22.2モ
ル)の混合物を撹拌混合して混合液を調製した。この混
合液の微量サンプルを100倍重量の水で希釈した水溶
液のpH値は10以上であった。この混合液を撹拌しな
がら248℃で2時間加熱し、PATE(1)の分子鎖
を硫化ナトリウムで切断的に解重合して、末端の少なく
とも一つがアルカリチオラート化された低分子量物に変
化させた。この反応液は、100℃の温度で実質的に均
一溶液状であり、PATE(1)に由来する粒子は認め
られなかった。
【0071】得られた反応液を、参考例2と同様に処理
して、白色の粉末(PPTE−L(3))を得た。この
PPTE−L(3)の赤外線吸収スペクトルには、PA
TE(1)には観測されなかった2560cm-1に吸収
が観測された。また、GPCを用いて測定したPPTE
−L(3)の数平均分子量は、約2300であった。
【0072】これは、一般式(IV)
【0073】
【化15】 で表わされるnとして、約20.7に相当する。
【0074】[実施例4〜5]PATE(1)100重
量部に対して、それぞれPPTE−L(2)およびPP
TE−L(3)を5重量部添加して、ブラベンダー社製
の小型単軸押出機を用いて、310℃の温度で溶融押出
した。
【0075】得られた溶融押出物について、熱転移温
度、溶融粘度、および色調を測定した結果を表2に示し
た。比較のために、PATE(1)単独の場合(比較例
1)についても、併せて示した。
【0076】
【表2】 表2の結果からも、低分子量物(B)の添加による色
調、流動性、結晶化特性の顕著な改善効果が理解でき
る。
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、色調、流動性、結晶化
特性の改良されたポリアリーレンチオエーテル組成物が
提供される。本発明の組成物は、成形性が良好であり、
特に、封止材のような精密成形、大型品の成形、薄肉品
の成形などの成形用材料としてきわめて好適である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融粘度(310℃、剪断速度1200
    sec-1で測定)が200〜106ポイズの一般式
    (I) 【化1】 〔ただし、Arはアリーレン基を示す〕で表される繰り
    返し単位を含有するポリアリーレンチオエーテル(A)
    に、一般式(II) 【化2】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
    基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
    基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
    4の整数である。また、nは平均重合度を表し1.3〜
    30の範囲である〕で表され、かつ、少なくとも一方の
    末端に−SH基を有する低分子量物(B)を添加してな
    ることを特徴とする色調、流動性、結晶化特性の改良さ
    れたポリアリーレンチオエーテル組成物。 【請求項2】 ポリアリーレンチオエーテル(A)10
    0重量部に対して、低分子量物(B)0.1〜20重量
    部を添加してなる請求項1記載の組成物。 【請求項3】 低分子量物(B)が、 (イ)極性有機溶媒1kg当たり、水0.1〜20モル
    を含有する含水極性有機溶媒、 (ロ)極性有機溶媒1kg当たり、一般式(III) 【化3】 〔ただし、Rは炭素数6以下のアルキル基やアルコキシ
    基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ
    基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは1〜
    4の整数である〕で表される繰り返し単位を含有するポ
    リフェニレンチオエーテル(C)0.1〜5基本モル
    〔ただし、基本モル数とは、一般式(III)で表され
    る繰り返し単位を構成する原子の原子量の総和を1グラ
    ム分子として算出したモル数〕、および (ハ)ポリフェニレンチオエーテル(C)1基本モルに
    対して、アルカリ金属硫化物0.01〜1モル、を含む
    混合物を200〜300℃で、0.1〜30時間、解重
    合反応させ、しかる後、酸で処理して末端を−SH基と
    したものである請求項1または2記載の組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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