JPH0546922U - フランジ付きヘリカルギヤの粉末成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 フランジ付きヘリカルギヤの粉末成形体を作
成する金型のダイ内周面をテーパーとすることで、粉末
成形体の引き抜き抵抗を減少させる。 【構成】 フランジを設けたヘリカルギヤの粉末成形用
金型であって、フランジ部を作成する大径部および歯車
部を作成する小径部とからなるダイと、一方から挿入さ
れフランジ部の上端面を作成する上パンチと、他方から
挿入され歯車部の下端面を作成する下パンチとから構成
され、前記大径部は上方に向けて拡径されたテーパーに
形成されている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、フランジ付きヘリカルギヤを粉末冶金法により製造する際の粉末成 形体を作製する金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、焼結部品は押し型を使用することから多量生産においてコストダウン を図ることができるため、歯車やスプロケットなど多種の機能部品に応用されて いる。

【０００３】 この焼結部品は、あらかじめ粉末をプレスにより圧縮成形するが、従来、例え ば図３に示すような、ヘリカルギアにフランジが設けられた粉末成形体Ｖを製造 するには、図２に示す金型を用いていた。

【０００４】 この金型は、上記図３に示した粉末成形体Ｖの外周面を作製するため、上方に フランジ部Ｖ１を作製する大径部５ｇと、下方にヘリカルギヤ部Ｖ２を作製する 小径部５ｈとの段付き貫通孔を有するダイ５と、前記大径部５ｇの上方から挿入 され前記フランジ部Ｖ１の上端面を作製する上パンチ６と、前記小径部５ｈの下 方に挿入され前記ヘリカルギヤ部Ｖ２の下端面を作製する下パンチ４とから構成 されている。そして、小径部５ｈの内周面に形成されたヘリカルギヤ部Ｖ２に対 応するねじ部５ｆに、下パンチ４の周面に形成されたねじ部４ｆが螺合しつつ、 ダイ５の昇降によって、主軸ブロック１に回転自在に支持された下パンチ４が回 動しながらダイ５に対して相対移動するようになっている。尚、符号３は粉末成 形体Ｖの軸穴Ｖ３を作製するコアロッドであり、下パンチ４から独立して昇降す る。

【０００５】 このような金型では、粉末を圧縮して得られる成形体Ｖを、ダイ５を上昇させ て、下パンチ４を強制的に回転させることにより、ヘリカルギヤＶ２の歯形を保 持してダイ５の上方へ引き抜くようになっている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上記ヘリカルギアのような軸方向に対して捩れをもった歯形を有す る粉末成形体Ｖは、前記歯形を保持するために引き抜き時に回転を与えなければ ならないが、一方、フランジ部Ｖ１が設けられているので、係るフランジ部Ｖ１ の周面への、ダイ５の大径部５ｇ内周面における引き抜き抵抗が捩れ方向に作用 する。そのため、引き抜き時にヘリカルギヤ部Ｖ２とフランジ部Ｖ１との境界部 にてクラック等の損傷が発生することがあり、安定度の高い製造が困難であった 。

【０００７】 本考案はこのような実情に鑑みて、上記形状の粉末成形体における引き抜き抵 抗を減少させることを目的に鋭意検討の結果見いだされたものであり、その目的 とするところは、軸に対して捩れた歯形を有し、かつ端面にフランジが形成され たヘリカルギヤの粉末成形体を確実に作製することのできる金型を提供すること にある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上記課題を解決するために、本考案のフランジ付きヘリカルギヤの粉末成形体 用金型では、フランジが設けられたヘリカルギヤを形成する粉末成形体の金型で あって、前記粉末成形体の外周面を作製する貫通孔を有し、該貫通孔がフランジ 部を作製する大径部、および内周面にねじ部が形成されヘリカルギヤ部を作製す る小径部とからなるダイと、前記貫通孔の一方から挿入され前記フランジ部の上 端面を作製する上パンチと、前記貫通孔の他方から挿入され前記ヘリカルギヤ部 の下端面を作製する下パンチとからなり、この下パンチの外周面には前記ねじ部 に螺合するねじ部が形成され、かつ前記ダイの前記大径部は上方に向けて拡径さ れたテーパーに形成されていることを特徴とする。

【０００９】

【作用】 下パンチが、成形体のヘリカルギヤ部を作製するダイの小径部に形成されたね じ部に沿って回転上昇すると、粉末成形体も下パンチに同伴し、かつ前記ねじ部 に案内されて、作製されたヘリカルギヤ部が破損することなく取り出される。こ のとき、フランジ部を作製するダイの大径部は、上方に向けて拡径されたテーパ ーに形成されているから、粉末成形体の僅かな回転上昇によりそのフランジ部が 開放されて係る大径部での引き抜き抵抗がない。

【００１０】

【実施例】

本考案の一実施例を図面に基づき、従来例と同一の部分には同一符号を用いて 説明する。

【００１１】 本考案に係るフランジ付きヘリカルギヤの粉末成形用金型（以下単に金型とい う。）は、その要部が図１に示され、フランジ付きヘリカルギヤの粉末成形体（ 以下単に成形体という。）Ｗをそのフランジ部Ｗ１を上方に配置して作製するも のであり、成形体Ｗの外周面を作製する貫通孔が形成されたダイ５Ａと、前記貫 通孔の上方から挿入され成形体Ｗにおけるフランジ部Ｗ１の上端面を作製する上 パンチ６ａ，６ｂと、前記貫通孔の下方から挿入されヘリカルギヤ部Ｗ２の下端 面を作製する下パンチ４とから概略構成されている。

【００１２】 また、ダイ５Ａの上記貫通孔は、上方がフランジ部Ｗ１を作製する大径部５ｂ と、下方がヘリカルギヤ部Ｗ２を作製する小径部５ｃとから形成されている。そ して、上記小径部５ｃの内周面にはねじ部５ｅが形成され、紛体を圧縮成形した ときにこのねじ部５ｅに準じて、成形体Ｗのヘリカルギヤ部Ｗ２が作製されるよ うになっている。一方、下パンチ４の外周面にはねじ部４ｅが形成され、圧縮成 形する際には下パンチ４の上部が上記貫通孔の小径部５ｃに形成されたねじ部５ ｅに螺合するようになっている。

【００１３】 さらに、本考案の金型では、上記貫通孔の大径部５ｂが、上方に向けて拡径さ れたテーパーに形成されている。この大径部５ｂの内周面は、金型の断面である 図１に示されるように、ダイ５の貫通孔に挿入される上パンチ６ａの垂直な外周 面に対して、およそ１°ないし２°のテーパー面となっており、これにより成形 体Ｗにおけるフランジ部Ｗ１の引き抜き抵抗をなくすものであり、あまりその傾 斜角が大きいと、不要にフランジ部Ｗ１の周面を斜傾させることとなり、修正代 が増加するので好ましくない。

【００１４】 また、図１では、成形体Ｗのフランジ部Ｗ１が段付きに形成され、その上端面 にカムが形成されたものが例示されており、係るフランジ部Ｗ１を作製するため に、紛体圧縮時にダイ５の貫通孔の上方から挿入されるパンチが上パンチ６ａ， ６ｂに２分割され、一方の上パンチ６ａの下端面がカム作製面となっている。な お、この金型の軸心には、コアロッド３が下パンチ４および上パンチ６ｂに対し て摺動自在に、かつ独立して昇降可能に配置され、これによりヘリカルギヤとな る成形体Ｗの軸穴を作製するようになっている。

【００１５】 このように構成された金型を使用して成形体Ｗを作製するには、図２に示した ようなプレスに装着し、上パンチ６ａ，６ｂをダイ５Ａの上方に離間させた状態 でダイ５の貫通孔に粉末を充填した後、この上パンチ６ａ，６ｂを下降させて圧 縮成形する。図１はその圧縮成形時の状態を示しているが、成形後は上記上パン チ６ａ，６ｂを上昇させるとともに、ダイ５を下降させて下パンチ４を相対的に 持ち上げる。

【００１６】 このとき、下パンチ４はダイ５Ａの小径部５ｃに螺着されているので、回動し ながら相対的に上昇する。また、この下パンチ４の相対移動により成形体Ｗが押 し上げられるが、この際、ダイ５の小径部５ｃには、成形体Ｗのヘリカルギヤ部 Ｗ２を作製したねじ部５ｅが形成されており、下パンチ４もこのねじ部５ｅに沿 って回転するので、成形体Ｗも下パンチ４に同伴し、かつ前記ねじ部５ｅに案内 されて、成形されたヘリカルギヤ部Ｗ２が破損することなくダイ５の上方に取り 出される。

【００１７】 同時に、成形体Ｗのフランジ部Ｗ１を作製する、ダイ５の貫通孔における大径 部５ｂは、上方に向けて拡径されたテーパーに形成されているから、成形体Ｗの 僅かな回転および相対的な上昇によりそのフランジ部Ｗ１が大径部５ｂから開放 される。すなわち、フランジ部Ｗ１においては、ダイ５の大径部５ｂからの引き 抜き抵抗を受けることがない。

【００１８】 このように、本考案の金型では、下パンチ４の外周面に、成形体Ｗのヘリカル ギヤ部Ｗ２を作製する、ダイ５の小径部５ｃのねじ部５ｅに螺合するねじ部４ｅ を形成し、さらに、成形体Ｗのフランジ部Ｗ１を作製する大径部５ｂを上方に向 けて拡径されたテーパーに形成したので、成形体Ｗのヘリカルギヤ部Ｗ２を保持 し、かつダイ５の貫通孔からの摺動抵抗を減少させることができ、したがって、 ヘリカルギヤ部Ｗ２とフランジ部Ｗ１との境界部にてクラック等の損傷が発生す ることがなく、安定度の高い製造が可能となるのである。

【００１９】 尚、本考案の金型は、例示したヘリカルギアの粉末成形体にのみ適用され得る ものでなく、軸に対して捩れた歯形を有し、かつ端面にフランジが形成されたヘ リカルギヤの粉末成形体に好適である。また、図では軸穴を有するヘリカルギヤ の粉末成形体が示されているが、係る軸穴の有無に限定されるものではない。

【００２０】

【考案の効果】

以上述べたように、本考案によれば、粉末成形体を引き抜くときのフランジ部 における摺動抵抗をなくすことができるので、ヘリカルギヤ部とフランジ部との 境界部にてクラック等の損傷の発生がなく、安定度の高い製造が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す要部断面図である。

【図２】金型を装着するプレスおよび従来の金型を示す
要部断面図である。

【図３】フランジ付きヘリカルギヤの粉末成形体の一例
を示す外観図である。

【符号の説明】

４ 下パンチ ４ｅ ねじ部 ５ ダイ ５ｂ 大径部 ５ｃ 小径部 ５ｅ ねじ部 ６ａ，６ｂ 上パンチ Ｗ 粉末成形体 Ｗ１ フランジ部 Ｗ２ ヘリカルギヤ部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 フランジが設けられたヘリカルギヤを形
   成する粉末成形体の金型であって、前記粉末成形体の外
   周面を作製する貫通孔を有し、該貫通孔がフランジ部を
   作製する大径部、および内周面にねじ部が形成されヘリ
   カルギヤ部を作製する小径部とからなるダイと、前記貫
   通孔の一方から挿入され前記フランジ部の上端面を作製
   する上パンチと、前記貫通孔の他方から挿入され前記ヘ
   リカルギヤ部の下端面を作製する下パンチとからなり、
   この下パンチの外周面には前記ねじ部に螺合するねじ部
   が形成され、かつ前記ダイの前記大径部は上方に向けて
   拡径されたテーパーに形成されていることを特徴とする
   フランジ付きヘリカルギヤの粉末成形用金型。