JPH05331636A - 強誘電体薄膜の形成方法 - Google Patents
強誘電体薄膜の形成方法Info
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- JPH05331636A JPH05331636A JP14074692A JP14074692A JPH05331636A JP H05331636 A JPH05331636 A JP H05331636A JP 14074692 A JP14074692 A JP 14074692A JP 14074692 A JP14074692 A JP 14074692A JP H05331636 A JPH05331636 A JP H05331636A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)薄膜を気相成長させる際、パイロクロ
ア相の形成を防止する。 【構成】 主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜を気相成長法によって基板に成長
させる際、特に成長初期時に過剰なPbもしくはPbの
酸化物を基板に供給するようにする。成長初期時の薄膜
はその後に成長する薄膜に比べてより多量のPbもしく
はPbの酸化物を必要とするが、この条件が満たされる
のでパイロクロア相は形成されず、ペロブスカイト相の
みが形成される。
3 (x>0.1)薄膜を気相成長させる際、パイロクロ
ア相の形成を防止する。 【構成】 主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜を気相成長法によって基板に成長
させる際、特に成長初期時に過剰なPbもしくはPbの
酸化物を基板に供給するようにする。成長初期時の薄膜
はその後に成長する薄膜に比べてより多量のPbもしく
はPbの酸化物を必要とするが、この条件が満たされる
のでパイロクロア相は形成されず、ペロブスカイト相の
みが形成される。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種電子デバイスに適
用される主たる組成がPb(Zr1-x Tix)O3 (x
>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造からな
る強誘電体薄膜の形成方法に関する。
用される主たる組成がPb(Zr1-x Tix)O3 (x
>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造からな
る強誘電体薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電型薄膜はその強誘電特性を生かして、強
誘電体メモリ素子,焦電型赤外線検出器,圧電素子,電
気光学素子等の各種の電子デバイスに適用されている。
3 (x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電型薄膜はその強誘電特性を生かして、強
誘電体メモリ素子,焦電型赤外線検出器,圧電素子,電
気光学素子等の各種の電子デバイスに適用されている。
【0003】このような強誘電体薄膜を形成する方法と
しては、主として高周波スパッタリング法が用いられて
いる。例えば特公昭59−38169号公報に示される
ように、ターゲット材料としてPbOとTiO2 との混
合粉末を用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高周波ス
パッタリング法によって成長させることが知られてい
る。また、特開平1−93088号公報に示されるよう
に、マルチカソードを備えて各々にターゲット材料とし
てPbとTiを用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高
周波スパッタリング法によって成長させることが知られ
ている。
しては、主として高周波スパッタリング法が用いられて
いる。例えば特公昭59−38169号公報に示される
ように、ターゲット材料としてPbOとTiO2 との混
合粉末を用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高周波ス
パッタリング法によって成長させることが知られてい
る。また、特開平1−93088号公報に示されるよう
に、マルチカソードを備えて各々にターゲット材料とし
てPbとTiを用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高
周波スパッタリング法によって成長させることが知られ
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来の強誘電
体薄膜の形成方法では、強誘電体薄膜の成長時に強誘電
性を示すペロブスカイト相以外に、常誘電性を示すパイ
ロクロア相が形成され易いという問題がある。
体薄膜の形成方法では、強誘電体薄膜の成長時に強誘電
性を示すペロブスカイト相以外に、常誘電性を示すパイ
ロクロア相が形成され易いという問題がある。
【0005】このため強誘電特性が失われてしまうこと
が多いので、各種電子デバイスに適用するのが困難とな
る。この不要なパイロクロア相が形成される原因は現在
のところ明確には解明されていない。このため、従来に
おいては、用いる基板の種類に応じて薄膜成長時の基板
温度を調整したり、成膜後に熱処理を行う等の対策を施
しているが、十分な成果は得られていない。また、この
ような対策を施すことは煩雑な操作が必要となる。
が多いので、各種電子デバイスに適用するのが困難とな
る。この不要なパイロクロア相が形成される原因は現在
のところ明確には解明されていない。このため、従来に
おいては、用いる基板の種類に応じて薄膜成長時の基板
温度を調整したり、成膜後に熱処理を行う等の対策を施
しているが、十分な成果は得られていない。また、この
ような対策を施すことは煩雑な操作が必要となる。
【0006】本発明は以上のような問題に対処してなさ
れたもので、煩雑な操作を不要にして薄膜成長時のパイ
ロクロア相の形成を防止するようにした強誘電体薄膜の
形成方法を提供することを目的とするものである。
れたもので、煩雑な操作を不要にして薄膜成長時のパイ
ロクロア相の形成を防止するようにした強誘電体薄膜の
形成方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造か
らなる強誘電体薄膜を気相法によって所定の基板上に成
長させる際に、前記強誘電体薄膜の成長初期時に過剰な
PbもしくはPbの酸化物を基板に供給することを特徴
とするものである。
に本発明は、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造か
らなる強誘電体薄膜を気相法によって所定の基板上に成
長させる際に、前記強誘電体薄膜の成長初期時に過剰な
PbもしくはPbの酸化物を基板に供給することを特徴
とするものである。
【0008】
【作用】本発明者の実験結果によれば、特に成長初期時
の薄膜はその後に成長する薄膜に比べてより多量の組成
原料を必要とし、この条件が満たされない場合はパイロ
クロア相が形成され易いことがわかった。従って、主た
る組成がPb(Zr1-xTix )O3 (x>0.9)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ことにより、前記実験結果に沿った有効な対策を施すこ
とができるようになるので、パイロクロア相の形成を防
止することができる。
の薄膜はその後に成長する薄膜に比べてより多量の組成
原料を必要とし、この条件が満たされない場合はパイロ
クロア相が形成され易いことがわかった。従って、主た
る組成がPb(Zr1-xTix )O3 (x>0.9)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ことにより、前記実験結果に沿った有効な対策を施すこ
とができるようになるので、パイロクロア相の形成を防
止することができる。
【0009】
【実施例】先ず、実施例の説明に先立って本発明者の実
験結果について説明する。
験結果について説明する。
【0010】主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.9)薄膜を気相法によって成長させる場合の
薄膜の結晶性に及ぼす薄膜組成の影響について調べた。
その結果次の事実が判明した。
(x>0.9)薄膜を気相法によって成長させる場合の
薄膜の結晶性に及ぼす薄膜組成の影響について調べた。
その結果次の事実が判明した。
【0011】すなわち、通常の薄膜成長技術において
は、薄膜成長の初めから終りまで化学量論比に基いて一
定の比率で金属元素あるいはその酸化物等の組成原料を
基板に供給して薄膜を成長させているが、この場合前記
組成の薄膜成長中に供給されるPb量が不足すると、薄
膜はパイロクロア相が主体となる。図4はこの様子を説
明する薄膜のX線回折パターンで、横軸はX線回折角
(2θ)、縦軸はX線強度(CPS:Count Per Secon
d)を示しており、乃至はPb(Zr1-x Tix)O
3 (x>0.9)薄膜において、金属元素としてのPb
の平均組成が各々異なる5種類のサンプルを示してい
る。
は、薄膜成長の初めから終りまで化学量論比に基いて一
定の比率で金属元素あるいはその酸化物等の組成原料を
基板に供給して薄膜を成長させているが、この場合前記
組成の薄膜成長中に供給されるPb量が不足すると、薄
膜はパイロクロア相が主体となる。図4はこの様子を説
明する薄膜のX線回折パターンで、横軸はX線回折角
(2θ)、縦軸はX線強度(CPS:Count Per Secon
d)を示しており、乃至はPb(Zr1-x Tix)O
3 (x>0.9)薄膜において、金属元素としてのPb
の平均組成が各々異なる5種類のサンプルを示してい
る。
【0012】すなわち、Pbの平均組成がは1.2
9,は1.21,は1.12,は1.06,は
0.83の各サンプルを示している。図4から明らかな
ように、Pbの平均組成の少ないサンプルほどパイロク
ロア相が形成され易くなる。このようなパイロクロア相
形成を防止するには、化学量論比より一定以上のPb成
分を薄膜中に含ませる必要があることがわかった。
9,は1.21,は1.12,は1.06,は
0.83の各サンプルを示している。図4から明らかな
ように、Pbの平均組成の少ないサンプルほどパイロク
ロア相が形成され易くなる。このようなパイロクロア相
形成を防止するには、化学量論比より一定以上のPb成
分を薄膜中に含ませる必要があることがわかった。
【0013】しかしこのように化学量論比より過剰なP
bを薄膜中に含ませると、例えペロブスカイト相だけの
薄膜が得られたとしても、過剰なPbは薄膜に欠陥を発
生させるように働くため、強誘電体特性を劣化させるこ
とになるので望ましくない。
bを薄膜中に含ませると、例えペロブスカイト相だけの
薄膜が得られたとしても、過剰なPbは薄膜に欠陥を発
生させるように働くため、強誘電体特性を劣化させるこ
とになるので望ましくない。
【0014】そこで、なぜ薄膜中にPb量が不足すると
パイロクロア相が形成されてしまうのか、その原因を詳
細に調べた。その結果、成長初期時の薄膜はその後に成
長する薄膜に比べて、著しくPb量が不足しており、こ
のため特に成長初期時の薄膜にパイロクロア相が形成さ
れ易くなること、及び一度パイロクロア相が形成されて
しまうと、その後に成長する薄膜もペロブスカイト相で
なくパイロクロア相に形成されてしまうことがわかっ
た。
パイロクロア相が形成されてしまうのか、その原因を詳
細に調べた。その結果、成長初期時の薄膜はその後に成
長する薄膜に比べて、著しくPb量が不足しており、こ
のため特に成長初期時の薄膜にパイロクロア相が形成さ
れ易くなること、及び一度パイロクロア相が形成されて
しまうと、その後に成長する薄膜もペロブスカイト相で
なくパイロクロア相に形成されてしまうことがわかっ
た。
【0015】従って、薄膜を形成する場合、特に成長初
期時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給す
ることにより、パイロクロア相の形成を防止してペロブ
スカイト相のみを形成することが可能となる。
期時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給す
ることにより、パイロクロア相の形成を防止してペロブ
スカイト相のみを形成することが可能となる。
【0016】以下このような実験結果に基づく本発明の
実施例を説明する。
実施例を説明する。
【0017】図1は本発明の強誘電体薄膜の形成方法を
実施するために用いられる高周波スパッタリング装置を
示すもので、1は真空容器,2,3,4は各々第1のマ
グネトロンカソード,第2のマグネトロンカソード,第
3のマグネトロンカソードで、これら第1乃至第3のマ
グネトロンカソード2,3,4にはターゲット材料とし
てそれぞれPb,Zr及びTiO2 が装着される。
実施するために用いられる高周波スパッタリング装置を
示すもので、1は真空容器,2,3,4は各々第1のマ
グネトロンカソード,第2のマグネトロンカソード,第
3のマグネトロンカソードで、これら第1乃至第3のマ
グネトロンカソード2,3,4にはターゲット材料とし
てそれぞれPb,Zr及びTiO2 が装着される。
【0018】5,6,7は各々第1乃至第3の高周波電
源で、それぞれ第1乃至第3のマグネトロンカソード
2,3,4に接続されて各々を高周波電力により駆動す
るためのものである。8は基板ホルダー,9は基板ホル
ダー8に設けられているヒーター,10は基板ホルダー
8に回転可能に装着された例えばMgO単結晶からなる
基板,11は各マグネトロンカソード2,3,4と基板
10との間に移動可能に配置されたシャッター,12は
電源,13は供給バルブ,14は排気バルブである。
源で、それぞれ第1乃至第3のマグネトロンカソード
2,3,4に接続されて各々を高周波電力により駆動す
るためのものである。8は基板ホルダー,9は基板ホル
ダー8に設けられているヒーター,10は基板ホルダー
8に回転可能に装着された例えばMgO単結晶からなる
基板,11は各マグネトロンカソード2,3,4と基板
10との間に移動可能に配置されたシャッター,12は
電源,13は供給バルブ,14は排気バルブである。
【0019】次にこのような高周波スパッタリング装置
を用いて、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜の形成方法を説明する。
を用いて、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜の形成方法を説明する。
【0020】先ず、予めシャッター11で各マグネトロ
ンカソード2,3,4を覆った状態で真空容器1内を約
10-4Pa以下に排気した後、電源12によってヒータ
ー9に通電して基板ホルダー8上の基板10を約650
℃に加熱する。以後基板10はこの温度を維持する。次
に、基板10の温度が安定した後、供給バルブ13を開
放して真空容器1内にArとO2 との混合ガスからなる
スパッターガスを約30sccm流入させて、排気バル
ブ14を調整して真空容器1内を約2Paに保持する。
ンカソード2,3,4を覆った状態で真空容器1内を約
10-4Pa以下に排気した後、電源12によってヒータ
ー9に通電して基板ホルダー8上の基板10を約650
℃に加熱する。以後基板10はこの温度を維持する。次
に、基板10の温度が安定した後、供給バルブ13を開
放して真空容器1内にArとO2 との混合ガスからなる
スパッターガスを約30sccm流入させて、排気バル
ブ14を調整して真空容器1内を約2Paに保持する。
【0021】次に、図示しない回転源によって基板ホル
ダー8を回転させた後、各高周波電源5,6,7によっ
て各マグネトロンカソード2,3,4を駆動する。例え
ば第1のマグネトロンカソード2に240W,第2のマ
グネトロンカソード3に160W,第3のマグネトロン
カソード4に400Wの高周波電力を印加する。これに
よって各マグネトロンカソード2,3,4上のターゲッ
ト材料としてのPb,Zr,TiO2 は蒸発させられ
る。
ダー8を回転させた後、各高周波電源5,6,7によっ
て各マグネトロンカソード2,3,4を駆動する。例え
ば第1のマグネトロンカソード2に240W,第2のマ
グネトロンカソード3に160W,第3のマグネトロン
カソード4に400Wの高周波電力を印加する。これに
よって各マグネトロンカソード2,3,4上のターゲッ
ト材料としてのPb,Zr,TiO2 は蒸発させられ
る。
【0022】続いて、シャッター11を各マグネトロン
カソード2,3,4上から回転させることにより移動さ
せると、蒸発した各ターゲット材料は基板10上に付着
するのでPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.9)薄
膜が成長を開始する。このときPbを装着した第1のマ
グネトロンカソード2には高めの高周波電力を印加して
いるので、Pbは過剰に蒸発されて基板10上に付着す
る。
カソード2,3,4上から回転させることにより移動さ
せると、蒸発した各ターゲット材料は基板10上に付着
するのでPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.9)薄
膜が成長を開始する。このときPbを装着した第1のマ
グネトロンカソード2には高めの高周波電力を印加して
いるので、Pbは過剰に蒸発されて基板10上に付着す
る。
【0023】この状態で、約50オングストローム以下
の膜厚に相当した時間だけ薄膜を成長させた後、第1の
マグネトロンカソード2に印加する高周波電力を180
Wに低下させ、以後所定の膜厚になるまで基板10上に
薄膜の成長を継続する。所定の膜厚が得られたら各高周
波電源5,6,7及び電源12による通電を停止する。
なお、第1のマグネトロンカソード2の高周波電力を途
中で240Wから180Wに低下しないで、そのまま薄
膜成長を継続した場合は、薄膜の平均組成は、Pb量が
化学量論比に対し約30%過剰になってしまう不具合が
生じる。
の膜厚に相当した時間だけ薄膜を成長させた後、第1の
マグネトロンカソード2に印加する高周波電力を180
Wに低下させ、以後所定の膜厚になるまで基板10上に
薄膜の成長を継続する。所定の膜厚が得られたら各高周
波電源5,6,7及び電源12による通電を停止する。
なお、第1のマグネトロンカソード2の高周波電力を途
中で240Wから180Wに低下しないで、そのまま薄
膜成長を継続した場合は、薄膜の平均組成は、Pb量が
化学量論比に対し約30%過剰になってしまう不具合が
生じる。
【0024】図2は、以上のような本発明実施例によっ
て得られたPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.9)
薄膜のX線回折パターンを示すものである。なお、薄膜
は2,000オングストロームに成長させた例で示して
いる。図2から明らかなように、X線回折角の全範囲に
わたってペロブスカイト相のみが形成され、パイロクロ
ア相は形成されていないことが確認できた。これによっ
て強誘電特性に優れた薄膜を得ることができる。なお、
中央部左側のパターンは基板10の回折によるパターン
であり、このパターンは薄膜の評価には関与しない。
て得られたPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.9)
薄膜のX線回折パターンを示すものである。なお、薄膜
は2,000オングストロームに成長させた例で示して
いる。図2から明らかなように、X線回折角の全範囲に
わたってペロブスカイト相のみが形成され、パイロクロ
ア相は形成されていないことが確認できた。これによっ
て強誘電特性に優れた薄膜を得ることができる。なお、
中央部左側のパターンは基板10の回折によるパターン
であり、このパターンは薄膜の評価には関与しない。
【0025】次に、本発明実施例のように薄膜成長初期
時に過剰なPbを蒸発させないで、化学量論比に基いて
のみ薄膜を成長させた比較例(従来例)について説明す
る。
時に過剰なPbを蒸発させないで、化学量論比に基いて
のみ薄膜を成長させた比較例(従来例)について説明す
る。
【0026】この場合は、Pbが装着されている第1の
マグネトロンカソード2に対しては、Zrが装着されて
いる第2のマグネトロンカソード3に対する高周波電力
160Wに近似した180Wを印加した状態で、本実施
例に準じて、始めから終りまで一定の比率でPbを蒸発
させて薄膜の成長を行わせる。所定の膜厚になるまで成
長を継続することにより、基板10上には、平均組成が
Pb(Zr1-x Tix)O3 (x=0.6)となる化学
量論比組成、すなわちPbと(Zr+Ti)とのモル比
が1:1の薄膜が形成される。
マグネトロンカソード2に対しては、Zrが装着されて
いる第2のマグネトロンカソード3に対する高周波電力
160Wに近似した180Wを印加した状態で、本実施
例に準じて、始めから終りまで一定の比率でPbを蒸発
させて薄膜の成長を行わせる。所定の膜厚になるまで成
長を継続することにより、基板10上には、平均組成が
Pb(Zr1-x Tix)O3 (x=0.6)となる化学
量論比組成、すなわちPbと(Zr+Ti)とのモル比
が1:1の薄膜が形成される。
【0027】図3は以上の方法で得られたPb(Zr
1-x Tix )O3 (x=0.6)薄膜のX線回折パター
ンを示すものである。薄膜は2,000オングストロー
ムに成長させた例で示している。図3から明らかなよう
に、この方法で成長させた薄膜には、X線回折角35度
及び73度付近にパイロクロア相が発生しており、パイ
ロクロア相とペロブスカイト相とが混在しているのが確
認された。
1-x Tix )O3 (x=0.6)薄膜のX線回折パター
ンを示すものである。薄膜は2,000オングストロー
ムに成長させた例で示している。図3から明らかなよう
に、この方法で成長させた薄膜には、X線回折角35度
及び73度付近にパイロクロア相が発生しており、パイ
ロクロア相とペロブスカイト相とが混在しているのが確
認された。
【0028】このように本実施例によれば、Pb(Zr
1-x Tix )O3 (x>0.9)薄膜を成長させる際、
成長初期時に過剰なPbを基板に供給するようにしたの
で、ペロブスカイト相のみを形成することができ、パイ
ロクロア相の形成を防止することができる。これによっ
て、従来のように基板温度を調整したり、成膜後に熱処
理を行う等の煩雑な操作を不要にして、薄膜成長時のパ
イロクロア相の形成を防止することができる。
1-x Tix )O3 (x>0.9)薄膜を成長させる際、
成長初期時に過剰なPbを基板に供給するようにしたの
で、ペロブスカイト相のみを形成することができ、パイ
ロクロア相の形成を防止することができる。これによっ
て、従来のように基板温度を調整したり、成膜後に熱処
理を行う等の煩雑な操作を不要にして、薄膜成長時のパ
イロクロア相の形成を防止することができる。
【0029】なお、本実施例ではターゲット材料を複数
用いた多元スパッタリング法によって薄膜成長を行った
例で示したが、過剰なPb量を基板に供給できるような
方法であれば、それに限らず多元蒸着法,CVD法等の
他の気相成長法で行っても同様な効果を得ることができ
る。また基板の材料としてもMgO単結晶以外に、石
英,白金等の他の材料を用いることができる。さらに本
発明は、例えばLa,Nb,Ta,Zn,Mn等の添加
物が微量含まれるようなPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)薄膜の形成に適用しても同様な効果を
得ることができる。
用いた多元スパッタリング法によって薄膜成長を行った
例で示したが、過剰なPb量を基板に供給できるような
方法であれば、それに限らず多元蒸着法,CVD法等の
他の気相成長法で行っても同様な効果を得ることができ
る。また基板の材料としてもMgO単結晶以外に、石
英,白金等の他の材料を用いることができる。さらに本
発明は、例えばLa,Nb,Ta,Zn,Mn等の添加
物が微量含まれるようなPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)薄膜の形成に適用しても同様な効果を
得ることができる。
【0030】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、主た
る組成がPb(Zr1-x Tix )O3(x>0.9)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ようにしたので、パイロクロア相の形成を防止すること
ができる。
る組成がPb(Zr1-x Tix )O3(x>0.9)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ようにしたので、パイロクロア相の形成を防止すること
ができる。
【図1】本発明の強誘電体薄膜の形成方法の実施に用い
られる高周波スパッタリング装置を示す構成図である。
られる高周波スパッタリング装置を示す構成図である。
【図2】本発明実施例によって得られた薄膜のX線回折
パターンである。
パターンである。
【図3】従来例によって得られた薄膜のX線回折パター
ンである。
ンである。
【図4】本発明の原理を示すための薄膜のX線回折パタ
ーンである。
ーンである。
1 真空容器 2,3,4 マグネトロンカソード 5,6,7 高周波電源 8 基板ホルダー 9 ヒータ 10 基板 11 シャッター
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 強誘電体薄膜の形成方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種電子デバイスに適
用される主たる組成がPb(Zr1-x Tix)O3 (x
>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造からな
る強誘電体薄膜の形成方法に関する。
用される主たる組成がPb(Zr1-x Tix)O3 (x
>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造からな
る強誘電体薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電型薄膜はその強誘電特性を生かして、強
誘電体メモリ素子,焦電型赤外線検出器,圧電素子,電
気光学素子等の各種の電子デバイスに適用されている。
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電型薄膜はその強誘電特性を生かして、強
誘電体メモリ素子,焦電型赤外線検出器,圧電素子,電
気光学素子等の各種の電子デバイスに適用されている。
【0003】このような強誘電体薄膜を形成する方法と
しては、主として高周波スパッタリング法が用いられて
いる。例えば特公昭59−38169号公報に示される
ように、ターゲット材料としてPbOとTiO2 との混
合粉末を用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高周波ス
パッタリング法によって成長させることが知られてい
る。また、特開平1−93088号公報に示されるよう
に、マルチカソードを備えて各々にターゲット材料とし
てPbとTiを用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高
周波スパッタリング法によって成長させることが知られ
ている。
しては、主として高周波スパッタリング法が用いられて
いる。例えば特公昭59−38169号公報に示される
ように、ターゲット材料としてPbOとTiO2 との混
合粉末を用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高周波ス
パッタリング法によって成長させることが知られてい
る。また、特開平1−93088号公報に示されるよう
に、マルチカソードを備えて各々にターゲット材料とし
てPbとTiを用いて、基板上にPbTiO3 薄膜を高
周波スパッタリング法によって成長させることが知られ
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来の強誘電
体薄膜の形成方法では、強誘電体薄膜の成長時に強誘電
性を示すペロブスカイト相以外に、常誘電性を示すパイ
ロクロア相が形成され易いという問題がある。
体薄膜の形成方法では、強誘電体薄膜の成長時に強誘電
性を示すペロブスカイト相以外に、常誘電性を示すパイ
ロクロア相が形成され易いという問題がある。
【0005】このため強誘電特性が失われてしまうこと
が多いので、各種電子デバイスに適用するのが困難とな
る。この不要なパイロクロア相が形成される原因は現在
のところ明確には解明されていない。このため、従来に
おいては、用いる基板の種類に応じて薄膜成長時の基板
温度を調整したり、成膜後に熱処理を行う等の対策を施
しているが、十分な成果は得られていない。また、この
ような対策を施すことは煩雑な操作が必要となる。
が多いので、各種電子デバイスに適用するのが困難とな
る。この不要なパイロクロア相が形成される原因は現在
のところ明確には解明されていない。このため、従来に
おいては、用いる基板の種類に応じて薄膜成長時の基板
温度を調整したり、成膜後に熱処理を行う等の対策を施
しているが、十分な成果は得られていない。また、この
ような対策を施すことは煩雑な操作が必要となる。
【0006】本発明は以上のような問題に対処してなさ
れたもので、煩雑な操作を不要にして薄膜成長時のパイ
ロクロア相の形成を防止するようにした強誘電体薄膜の
形成方法を提供することを目的とするものである。
れたもので、煩雑な操作を不要にして薄膜成長時のパイ
ロクロア相の形成を防止するようにした強誘電体薄膜の
形成方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造か
らなる強誘電体薄膜を気相法によって所定の基板上に成
長させる際に、前記強誘電体薄膜の成長初期時に過剰な
PbもしくはPbの酸化物を基板に供給することを特徴
とするものである。
に本発明は、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造か
らなる強誘電体薄膜を気相法によって所定の基板上に成
長させる際に、前記強誘電体薄膜の成長初期時に過剰な
PbもしくはPbの酸化物を基板に供給することを特徴
とするものである。
【0008】
【作用】本発明者の実験結果によれば、特に成長初期時
の薄膜はその後に成長する薄膜に比べてより多量の組成
原料を必要とし、この条件が満たされない場合はパイロ
クロア相が形成され易いことがわかった。従って、主た
る組成がPb(Zr1-xTix )O3 (x>0.1)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ことにより、前記実験結果に沿った有効な対策を施すこ
とができるようになるので、パイロクロア相の形成を防
止することができる。
の薄膜はその後に成長する薄膜に比べてより多量の組成
原料を必要とし、この条件が満たされない場合はパイロ
クロア相が形成され易いことがわかった。従って、主た
る組成がPb(Zr1-xTix )O3 (x>0.1)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ことにより、前記実験結果に沿った有効な対策を施すこ
とができるようになるので、パイロクロア相の形成を防
止することができる。
【0009】
【実施例】先ず、実施例の説明に先立って本発明者の実
験結果について説明する。
験結果について説明する。
【0010】主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O3
(x>0.1)薄膜を気相法によって成長させる場合の
薄膜の結晶性に及ぼす薄膜組成の影響について調べた。
その結果次の事実が判明した。
(x>0.1)薄膜を気相法によって成長させる場合の
薄膜の結晶性に及ぼす薄膜組成の影響について調べた。
その結果次の事実が判明した。
【0011】すなわち、通常の薄膜成長技術において
は、薄膜成長の初めから終りまで化学量論比に基いて一
定の比率で金属元素あるいはその酸化物等の組成原料を
基板に供給して薄膜を成長させているが、この場合前記
組成の薄膜成長中に供給されるPb量が不足すると、薄
膜はパイロクロア相が主体となる。図4はこの様子を説
明する薄膜のX線回折パターンで、横軸はX線回折角
(2θ)、縦軸はX線強度(CPS:Count Per Secon
d)を示しており、乃至はPb(Zr1-x Tix)O
3 (x>0.1)薄膜において、金属元素としてのPb
の平均組成が各々異なる5種類のサンプルを示してい
る。
は、薄膜成長の初めから終りまで化学量論比に基いて一
定の比率で金属元素あるいはその酸化物等の組成原料を
基板に供給して薄膜を成長させているが、この場合前記
組成の薄膜成長中に供給されるPb量が不足すると、薄
膜はパイロクロア相が主体となる。図4はこの様子を説
明する薄膜のX線回折パターンで、横軸はX線回折角
(2θ)、縦軸はX線強度(CPS:Count Per Secon
d)を示しており、乃至はPb(Zr1-x Tix)O
3 (x>0.1)薄膜において、金属元素としてのPb
の平均組成が各々異なる5種類のサンプルを示してい
る。
【0012】すなわち、Pbの平均組成がは1.2
9,は1.21,は1.12,は1.06,は
0.83の各サンプルを示している。図4から明らかな
ように、Pbの平均組成の少ないサンプルほどパイロク
ロア相が形成され易くなる。このようなパイロクロア相
形成を防止するには、化学量論比より一定以上のPb成
分を薄膜中に含ませる必要があることがわかった。
9,は1.21,は1.12,は1.06,は
0.83の各サンプルを示している。図4から明らかな
ように、Pbの平均組成の少ないサンプルほどパイロク
ロア相が形成され易くなる。このようなパイロクロア相
形成を防止するには、化学量論比より一定以上のPb成
分を薄膜中に含ませる必要があることがわかった。
【0013】しかしこのように化学量論比より過剰なP
bを薄膜中に含ませると、例えペロブスカイト相だけの
薄膜が得られたとしても、過剰なPbは薄膜に欠陥を発
生させるように働くため、強誘電体特性を劣化させるこ
とになるので望ましくない。
bを薄膜中に含ませると、例えペロブスカイト相だけの
薄膜が得られたとしても、過剰なPbは薄膜に欠陥を発
生させるように働くため、強誘電体特性を劣化させるこ
とになるので望ましくない。
【0014】そこで、なぜ薄膜中にPb量が不足すると
パイロクロア相が形成されてしまうのか、その原因を詳
細に調べた。その結果、成長初期時の薄膜はその後に成
長する薄膜に比べて、著しくPb量が不足しており、こ
のため特に成長初期時の薄膜にパイロクロア相が形成さ
れ易くなること、及び一度パイロクロア相が形成されて
しまうと、その後に成長する薄膜もペロブスカイト相で
なくパイロクロア相に形成されてしまうことがわかっ
た。
パイロクロア相が形成されてしまうのか、その原因を詳
細に調べた。その結果、成長初期時の薄膜はその後に成
長する薄膜に比べて、著しくPb量が不足しており、こ
のため特に成長初期時の薄膜にパイロクロア相が形成さ
れ易くなること、及び一度パイロクロア相が形成されて
しまうと、その後に成長する薄膜もペロブスカイト相で
なくパイロクロア相に形成されてしまうことがわかっ
た。
【0015】従って、薄膜を形成する場合、特に成長初
期時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給す
ることにより、パイロクロア相の形成を防止してペロブ
スカイト相のみを形成することが可能となる。
期時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給す
ることにより、パイロクロア相の形成を防止してペロブ
スカイト相のみを形成することが可能となる。
【0016】以下このような実験結果に基づく本発明の
実施例を説明する。
実施例を説明する。
【0017】図1は本発明の強誘電体薄膜の形成方法を
実施するために用いられる高周波スパッタリング装置を
示すもので、1は真空容器,2,3,4は各々第1のマ
グネトロンカソード,第2のマグネトロンカソード,第
3のマグネトロンカソードで、これら第1乃至第3のマ
グネトロンカソード2,3,4にはターゲット材料とし
てそれぞれPb,Zr及びTiO2 が装着される。
実施するために用いられる高周波スパッタリング装置を
示すもので、1は真空容器,2,3,4は各々第1のマ
グネトロンカソード,第2のマグネトロンカソード,第
3のマグネトロンカソードで、これら第1乃至第3のマ
グネトロンカソード2,3,4にはターゲット材料とし
てそれぞれPb,Zr及びTiO2 が装着される。
【0018】5,6,7は各々第1乃至第3の高周波電
源で、それぞれ第1乃至第3のマグネトロンカソード
2,3,4に接続されて各々を高周波電力により駆動す
るためのものである。8は基板ホルダー,9は基板ホル
ダー8に設けられているヒーター,10は基板ホルダー
8に回転可能に装着された例えばMgO単結晶からなる
基板,11は各マグネトロンカソード2,3,4と基板
10との間に移動可能に配置されたシャッター,12は
電源,13は供給バルブ,14は排気バルブである。
源で、それぞれ第1乃至第3のマグネトロンカソード
2,3,4に接続されて各々を高周波電力により駆動す
るためのものである。8は基板ホルダー,9は基板ホル
ダー8に設けられているヒーター,10は基板ホルダー
8に回転可能に装着された例えばMgO単結晶からなる
基板,11は各マグネトロンカソード2,3,4と基板
10との間に移動可能に配置されたシャッター,12は
電源,13は供給バルブ,14は排気バルブである。
【0019】次にこのような高周波スパッタリング装置
を用いて、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜の形成方法を説明する。
を用いて、主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜の形成方法を説明する。
【0020】先ず、予めシャッター11で各マグネトロ
ンカソード2,3,4を覆った状態で真空容器1内を約
10-4Pa以下に排気した後、電源12によってヒータ
ー9に通電して基板ホルダー8上の基板10を約650
℃に加熱する。以後基板10はこの温度を維持する。次
に、基板10の温度が安定した後、供給バルブ13を開
放して真空容器1内にArとO2 との混合ガスからなる
スパッターガスを約30sccm流入させて、排気バル
ブ14を調整して真空容器1内を約2Paに保持する。
ンカソード2,3,4を覆った状態で真空容器1内を約
10-4Pa以下に排気した後、電源12によってヒータ
ー9に通電して基板ホルダー8上の基板10を約650
℃に加熱する。以後基板10はこの温度を維持する。次
に、基板10の温度が安定した後、供給バルブ13を開
放して真空容器1内にArとO2 との混合ガスからなる
スパッターガスを約30sccm流入させて、排気バル
ブ14を調整して真空容器1内を約2Paに保持する。
【0021】次に、図示しない回転源によって基板ホル
ダー8を回転させた後、各高周波電源5,6,7によっ
て各マグネトロンカソード2,3,4を駆動する。例え
ば第1のマグネトロンカソード2に240W,第2のマ
グネトロンカソード3に160W,第3のマグネトロン
カソード4に400Wの高周波電力を印加する。これに
よって各マグネトロンカソード2,3,4上のターゲッ
ト材料としてのPb,Zr,TiO2 は蒸発させられ
る。
ダー8を回転させた後、各高周波電源5,6,7によっ
て各マグネトロンカソード2,3,4を駆動する。例え
ば第1のマグネトロンカソード2に240W,第2のマ
グネトロンカソード3に160W,第3のマグネトロン
カソード4に400Wの高周波電力を印加する。これに
よって各マグネトロンカソード2,3,4上のターゲッ
ト材料としてのPb,Zr,TiO2 は蒸発させられ
る。
【0022】続いて、シャッター11を各マグネトロン
カソード2,3,4上から回転させることにより移動さ
せると、蒸発した各ターゲット材料は基板10上に付着
するのでPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.1)薄
膜が成長を開始する。このときPbを装着した第1のマ
グネトロンカソード2には高めの高周波電力を印加して
いるので、Pbは過剰に蒸発されて基板10上に付着す
る。
カソード2,3,4上から回転させることにより移動さ
せると、蒸発した各ターゲット材料は基板10上に付着
するのでPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.1)薄
膜が成長を開始する。このときPbを装着した第1のマ
グネトロンカソード2には高めの高周波電力を印加して
いるので、Pbは過剰に蒸発されて基板10上に付着す
る。
【0023】この状態で、約50オングストローム以下
の膜厚に相当した時間だけ薄膜を成長させた後、第1の
マグネトロンカソード2に印加する高周波電力を180
Wに低下させ、以後所定の膜厚になるまで基板10上に
薄膜の成長を継続する。所定の膜厚が得られたら各高周
波電源5,6,7及び電源12による通電を停止する。
なお、第1のマグネトロンカソード2の高周波電力を途
中で240Wから180Wに低下しないで、そのまま薄
膜成長を継続した場合は、薄膜の平均組成は、Pb量が
化学量論比に対し約30%過剰になってしまう不具合が
生じる。
の膜厚に相当した時間だけ薄膜を成長させた後、第1の
マグネトロンカソード2に印加する高周波電力を180
Wに低下させ、以後所定の膜厚になるまで基板10上に
薄膜の成長を継続する。所定の膜厚が得られたら各高周
波電源5,6,7及び電源12による通電を停止する。
なお、第1のマグネトロンカソード2の高周波電力を途
中で240Wから180Wに低下しないで、そのまま薄
膜成長を継続した場合は、薄膜の平均組成は、Pb量が
化学量論比に対し約30%過剰になってしまう不具合が
生じる。
【0024】図2は、以上のような本発明実施例によっ
て得られたPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.1)
薄膜のX線回折パターンを示すものである。なお、薄膜
は2,000オングストロームに成長させた例で示して
いる。図2から明らかなように、X線回折角の全範囲に
わたってペロブスカイト相のみが形成され、パイロクロ
ア相は形成されていないことが確認できた。これによっ
て強誘電特性に優れた薄膜を得ることができる。なお、
中央部左側のパターンは基板10の回折によるパターン
であり、このパターンは薄膜の評価には関与しない。
て得られたPb(Zr1-x Tix )O3 (x>0.1)
薄膜のX線回折パターンを示すものである。なお、薄膜
は2,000オングストロームに成長させた例で示して
いる。図2から明らかなように、X線回折角の全範囲に
わたってペロブスカイト相のみが形成され、パイロクロ
ア相は形成されていないことが確認できた。これによっ
て強誘電特性に優れた薄膜を得ることができる。なお、
中央部左側のパターンは基板10の回折によるパターン
であり、このパターンは薄膜の評価には関与しない。
【0025】次に、本発明実施例のように薄膜成長初期
時に過剰なPbを蒸発させないで、化学量論比に基いて
のみ薄膜を成長させた比較例(従来例)について説明す
る。
時に過剰なPbを蒸発させないで、化学量論比に基いて
のみ薄膜を成長させた比較例(従来例)について説明す
る。
【0026】この場合は、Pbが装着されている第1の
マグネトロンカソード2に対しては、Zrが装着されて
いる第2のマグネトロンカソード3に対する高周波電力
160Wに近似した180Wを印加した状態で、本実施
例に準じて、始めから終りまで一定の比率でPbを蒸発
させて薄膜の成長を行わせる。所定の膜厚になるまで成
長を継続することにより、基板10上には、平均組成が
Pb(Zr1-x Tix)O3 (x=0.6)となる化学
量論比組成、すなわちPbと(Zr+Ti)とのモル比
が1:1の薄膜が形成される。
マグネトロンカソード2に対しては、Zrが装着されて
いる第2のマグネトロンカソード3に対する高周波電力
160Wに近似した180Wを印加した状態で、本実施
例に準じて、始めから終りまで一定の比率でPbを蒸発
させて薄膜の成長を行わせる。所定の膜厚になるまで成
長を継続することにより、基板10上には、平均組成が
Pb(Zr1-x Tix)O3 (x=0.6)となる化学
量論比組成、すなわちPbと(Zr+Ti)とのモル比
が1:1の薄膜が形成される。
【0027】図3は以上の方法で得られたPb(Zr
1-x Tix )O3 (x=0.6)薄膜のX線回折パター
ンを示すものである。薄膜は2,000オングストロー
ムに成長させた例で示している。図3から明らかなよう
に、この方法で成長させた薄膜には、X線回折角35度
及び73度付近にパイロクロア相が発生しており、パイ
ロクロア相とペロブスカイト相とが混在しているのが確
認された。
1-x Tix )O3 (x=0.6)薄膜のX線回折パター
ンを示すものである。薄膜は2,000オングストロー
ムに成長させた例で示している。図3から明らかなよう
に、この方法で成長させた薄膜には、X線回折角35度
及び73度付近にパイロクロア相が発生しており、パイ
ロクロア相とペロブスカイト相とが混在しているのが確
認された。
【0028】このように本実施例によれば、Pb(Zr
1-x Tix )O3 (x>0.1)薄膜を成長させる際、
成長初期時に過剰なPbを基板に供給するようにしたの
で、ペロブスカイト相のみを形成することができ、パイ
ロクロア相の形成を防止することができる。これによっ
て、従来のように基板温度を調整したり、成膜後に熱処
理を行う等の煩雑な操作を不要にして、薄膜成長時のパ
イロクロア相の形成を防止することができる。
1-x Tix )O3 (x>0.1)薄膜を成長させる際、
成長初期時に過剰なPbを基板に供給するようにしたの
で、ペロブスカイト相のみを形成することができ、パイ
ロクロア相の形成を防止することができる。これによっ
て、従来のように基板温度を調整したり、成膜後に熱処
理を行う等の煩雑な操作を不要にして、薄膜成長時のパ
イロクロア相の形成を防止することができる。
【0029】なお、本実施例ではターゲット材料を複数
用いた多元スパッタリング法によって薄膜成長を行った
例で示したが、過剰なPb量を基板に供給できるような
方法であれば、それに限らず多元蒸着法,CVD法等の
他の気相成長法で行っても同様な効果を得ることができ
る。また基板の材料としてもMgO単結晶以外に、石
英,白金等の他の材料を用いることができる。さらに本
発明は、例えばLa,Nb,Ta,Zn,Mn等の添加
物が微量含まれるようなPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)薄膜の形成に適用しても同様な効果を
得ることができる。
用いた多元スパッタリング法によって薄膜成長を行った
例で示したが、過剰なPb量を基板に供給できるような
方法であれば、それに限らず多元蒸着法,CVD法等の
他の気相成長法で行っても同様な効果を得ることができ
る。また基板の材料としてもMgO単結晶以外に、石
英,白金等の他の材料を用いることができる。さらに本
発明は、例えばLa,Nb,Ta,Zn,Mn等の添加
物が微量含まれるようなPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.1)薄膜の形成に適用しても同様な効果を
得ることができる。
【0030】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、主た
る組成がPb(Zr1-x Tix )O3(x>0.1)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ようにしたので、パイロクロア相の形成を防止すること
ができる。
る組成がPb(Zr1-x Tix )O3(x>0.1)で
示されるペロブスカイト型結晶構造からなる強誘電体薄
膜を気相法によって基板に成長させる際、特に成長初期
時に過剰なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給する
ようにしたので、パイロクロア相の形成を防止すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強誘電体薄膜の形成方法の実施に用い
られる高周波スパッタリング装置を示す構成図である。
られる高周波スパッタリング装置を示す構成図である。
【図2】本発明実施例によって得られた薄膜のX線回折
パターンである。
パターンである。
【図3】従来例によって得られた薄膜のX線回折パター
ンである。
ンである。
【図4】本発明の原理を示すための薄膜のX線回折パタ
ーンである。
ーンである。
【符号の説明】 1 真空容器 2,3,4 マグネトロンカソード 5,6,7 高周波電源 8 基板ホルダー 9 ヒータ 10 基板 11 シャッター
Claims (1)
- 【請求項1】 主たる組成がPb(Zr1-x Tix )O
3 (x>0.9)で示されるペロブスカイト型結晶構造
からなる強誘電体薄膜を気相法によって所定の基板上に
成長させる際に、前記強誘電体薄膜の成長初期時に過剰
なPbもしくはPbの酸化物を基板に供給することを特
徴とする強誘電体薄膜の形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14074692A JPH05331636A (ja) | 1992-06-01 | 1992-06-01 | 強誘電体薄膜の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14074692A JPH05331636A (ja) | 1992-06-01 | 1992-06-01 | 強誘電体薄膜の形成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05331636A true JPH05331636A (ja) | 1993-12-14 |
Family
ID=15275769
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14074692A Pending JPH05331636A (ja) | 1992-06-01 | 1992-06-01 | 強誘電体薄膜の形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05331636A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6287986B1 (en) | 1998-06-02 | 2001-09-11 | Fujitsu Limited | Sputtering film forming method, sputtering film forming equipment, and semiconductor device manufacturing method |
JP2010084160A (ja) * | 2008-09-29 | 2010-04-15 | Fujifilm Corp | 鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、圧電素子、および液体吐出装置 |
-
1992
- 1992-06-01 JP JP14074692A patent/JPH05331636A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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