JP2010084160A - 鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、圧電素子、および液体吐出装置 - Google Patents

鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、圧電素子、および液体吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】成膜材料を変更したり、下地膜等の形成を追加することなく、簡便に、(100)および/または(001)配向の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜を成膜することができる成膜方法、圧電素子、および液体吐出装置を提供する。
【解決手段】(100)および/または(001)配向の結晶配向性を有し、かつ、鉛を主成分とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜を成膜するに際し、成膜初期には、酸化物膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す鉛量が過剰となる初期成膜条件で酸化物膜を成膜し、その後、初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で酸化物膜を成膜することにより、前記課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、この成膜方法により成膜された鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜からなる圧電体を有する圧電素子、および、この圧電素子を具備する液体吐出装置に関するものである。
電界印加強度の増減に伴って伸縮する圧電性を有する圧電体と、圧電体に対して電界を印加する電極とを備えた圧電素子が、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電アクチュエータ等の用途に使用されている。インクジェット式記録ヘッドにおいて、高精細かつ高速な印刷を実現するためには圧電素子の高密度化が必要である。そのため、圧電素子の薄型化が検討されており、それに使用される圧電体の形態としては、加工精度の関係から、薄膜が好ましい。
また、高精細な印刷には、さらにインクとして高粘度なインクを使用する必要がある。高粘度のインクを吐出可能とするためには、圧電素子には、より高い圧電性能が要求される。したがって、膜厚の薄い圧電体膜を備え、且つ圧電性の良好な圧電素子が求められている。
近年、ジルコンチタン酸鉛(PZT)系の鉛含有薄膜などのペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有薄膜(以下、単に「鉛含有薄膜」ともいう)は、高い圧電性および強誘電性を有するため、強誘電メモリ等のメモリやインクジェットヘッド等の液体吐出装置に用いられることが期待されている。
また、このような鉛含有薄膜は、一軸配向膜や基板上に結晶軸をそろえて成長させた結晶の成すエピタキシャル膜にすると、膜の分極方向が揃うため、膜特性が向上することが知られている。
しかしながら、特別な工夫のない通常の一般的な作製方法で鉛含有薄膜を作製すると、(111)(110)(100)配向など、様々な配向の膜ができたり、パイロクロア相と呼ばれる異相が生成されやすいため、種々の工夫をして、安定に(100)配向膜を得る技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、圧電体薄膜素子を製造する際に、安定的に(100)配向の圧電体薄膜を形成するために、圧電体薄膜を形成する面に、圧電体薄膜の結晶の核となるチタンや酸化チタン等の結晶源を島状に形成することが開示されている。
また、特許文献2には、圧電素子を製造する際に、安定的に(100)配向の圧電体薄膜(PZT圧電膜)を形成するために、圧電体薄膜を形成する面に、NaCl型酸化物やチタン酸鉛のようなペロブスカイト型結晶構造と類似の構造を有する化合物を第2の配向制御層として形成することが開示されている。
さらに、特許文献3には、圧電特性に優れたペロブスカイト型結晶構造の圧電体薄膜(圧電/電歪膜)とするために、圧電体薄膜のAサイト成分、すなわち、鉛の成分量aと、Bサイト成分、すなわち、鉛以外の成分量bの関係を、0.8<a/b<1.0にすることが開示されている。
特許第3903474号公報 特開2003−188433号公報 特開2005−150491号公報
しかしながら、特許文献1および2に開示された圧電体薄膜の作製方法では、圧電体薄膜を形成する前に、結晶源や配向制御層の下地膜を形成しなければならないため、作業工程が増えて煩雑であるという問題がある。さらに、圧電体薄膜を作製する際に用いる物質とは別の物質を用いる必要があり、また、下地膜と圧電体薄膜とのコンタミネーションが懸念されるため、下地膜作製のために、圧電体薄膜とは別の設備が必要となり、その分、製造コストが増大するため、コスト的に不利であるという問題がある。
また、特許文献3は、0.8<a/b<1.0にすることで、ペロブスカイト型結晶構造の圧電/電歪膜が良好な特性を持つこと、すなわち良好な特性を持つ圧電/電歪膜の構成について開示するものではあるが、従来法で作製する場合、鉛が不足している膜は、パイロクロア相になり易いことが知られており、安定的にペロブスカイト型結晶構造の圧電/電歪膜を成膜する方法について全く開示していない。さらに、特許文献3には、安定的に(100)配向の圧電体薄膜を成膜することについては、一切、記載も示唆もされていない。
そこで、本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、成膜材料を変更したり、下地膜等の形成を追加することなく、すなわち、鉛含有酸化物膜を成膜するために用いる以外の材料を用いることなく、簡便に、(100)および/または(001)配向のペロブスカイト型結晶構造を有する鉛含有酸化物膜を作製することができる鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、この成膜方法により成膜された鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜からなる圧電体を有する圧電素子、および、この圧電素子を具備する液体吐出装置を提供することにある。
上記課題を達成するために、本発明の第1の態様は、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を有し、かつ、鉛を主成分とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法であって、成膜初期には、鉛量が過剰となる初期成膜条件で前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜し、その後、前記初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜することを特徴とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法を提供するものである。
ここで、前記鉛量とは、前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。
なお、本発明においては、鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜は、1種又は複数種の鉛含有ペロブスカイト型酸化物を主成分とする膜である。
また、本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜は、その結晶配向性において、(100)および/または(001)配向を主成分とするものであるが、本発明において、「配向を主成分とする」、または「結晶配向性を主たる成分として有する」とは、Lotgerling法により測定される配向率Fが、80%以上、より好ましくは90%以上であることと定義される。
配向率Fは、下記式(1)で表される。
F=(P−P)/(1−P)×100・・・(1)
上記式(i)中のPは、配向率Fを調べる薄膜(以下、単に「薄膜」ともいう)における配向面からの反射強度の合計と、薄膜の全反射強度の合計との比である。
例えば、薄膜における(100)配向の配向率Fを求める場合のPは、薄膜における(100)面からの反射強度I(100)の合計ΣI(100)と、薄膜における各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)と、の比、すなわち、{ΣI(100)/ΣI(hkl)}である。
さらに具体的には、(100)、(110)および(111)配向の3つが混ざっている場合は、ペロブスカイト結晶構造を有する薄膜の(100)配向の配向率Fを求める場合のPは、I(100)/[I(100)+I(101)+I(110)+I(111)]である。
なお、PZT圧電体の場合は、正方晶と菱面体とが存在するが、ここで、(100)という場合、(100)面および(001)面のいずれの配向面も指すものとする。また、(110)面および(101)面の場合も同様である。
他方、Pは、薄膜が完全にランダムな配向を有している場合のPの値である。
すなわち、薄膜が完全にランダムな配向をしている場合、P=Pであり、薄膜の配向率Fは、0%ととなる。逆に、薄膜が完全に配向を有している場合は、P=1であり、薄膜の配向率Fは、100%となる。
なお、成膜初期とは、成膜基板上に、鉛量が過剰となる成膜条件で、鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜(以下、単に「酸化物膜」ともいう)を所定厚さ、好ましくは、10nm〜1μmの厚さまで成膜する所定の期間である。
また、本発明においては、成膜初期条件は、酸化物膜を成膜する際に、鉛量が過剰となる成膜条件であり、成膜初期に成膜基板上に成膜される酸化物膜の鉛量が、成膜される酸化物膜に含有される鉛以外のカチオンに対して、1.07以上となるように、酸化物膜を成膜する成膜条件であるのが好ましい。
他方、基本成膜条件は、初期成膜条件より鉛量が少ない成膜条件であり、最終的に成膜される酸化物膜の鉛量が、この酸化物膜に含有される鉛以外のカチオンに対して、1.07未満になるように、酸化物膜を成膜する成膜条件であるのが好ましい。
ここで、上述した特許文献1〜3に開示される酸化物膜(圧電体)またはその成膜方法と、本発明の酸化物膜の成膜方法との差異について説明する。
上述の通り特許文献1および2に開示された圧電体薄膜の成膜方法では、圧電体薄膜を成膜基板上に形成する前に、予め成膜基板上に結晶源や配向制御層の下地膜を形成する必要がある。
これに対して、本発明の酸化物膜の成膜方法では、成膜初期の10nm〜1μmの領域で、鉛量が多い条件で(100)および/または(001)に配向した核を作製することにより、その後の成長は、鉛量が少なくても、下地の(100)および/または(001)膜の影響を受けながら成長するため、(100)および/または(001)配向が得難い鉛量や、異相のパイロクロア相になるような領域においても、安定して(100)および/または(001)配向膜を得ることが可能となるので、本発明の酸化物膜を成膜する前に、その配向性を制御するための特別な下地膜を成膜基板上に形成しておく必要がない。すなわち、この点で、本発明の成膜方法は、特許文献1および2に開示される成膜方法と明確に異なる。
また、上述の通り、特許文献3は、良好な特性を持つ圧電/電歪膜(圧電体薄膜)の構成について開示するものではあるが、安定的にペロブスカイト型結晶構造の圧電/電歪膜を成膜する方法について全く開示していないし、安定的に(100)配向の酸化物膜を成膜することについても、一切、記載も示唆もするものではない。したがって、特許文献3は、本発明の酸化物膜の成膜方法を開示するものではない。
また、上記課題を達成するために、本発明の第2の態様の圧電素子は、第1の態様の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法によって成膜された鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜からなる圧電体と、この圧電体に電圧を印加するために、前記圧電体の両面に形成された下部電極および上部電極を備え、前記圧電体の前記鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の前記下部電極界面付近の鉛量が、前記鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の全体の鉛量に対して等しいか多いことを特徴とする。
また、上記課題を達成するために、本発明の第3の態様の液体吐出装置は、第2の態様の圧電素子と、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記液体貯留室から外部に前記液体を吐出させる液体吐出口とを有することを特徴とする。
本発明によれば、鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜(酸化物膜)を成膜する前に、特別な下地膜を形成することなく、最終的に成膜された酸化物膜の鉛量が、鉛以外のカチオンに対して1.07未満でも、特に、鉛量が不足し、通常はパイアクロア相が生じる1.0未満であっても、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を有し、かつ、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を安定して成膜することができる。
すなわち、本発明によれば、酸化物膜を成膜するために用いる以外の材料を用いることなく、酸化物膜を作製する以外の特別な成膜設備や成膜材料を用いる必要がないため、成膜材料を変更することなく、低コストで、最終的に成膜された酸化物膜の鉛量が、鉛以外のカチオンに対して1.07未満でも、特に、1.0未満であっても、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を有し、かつ、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を実現することができる。
さらに、本発明によれば、最終的に成膜された酸化物膜に対する鉛量を制御することができるため、鉛量に応じて様々な電気的特性を持つ酸化物膜を形成することができる。例えば、成膜後の酸化物膜に対する鉛量が多いことにより、酸化物膜の電気特性が非対称となったり、または、低下したり、耐久性が低下したりという問題が起こる場合にも、成膜中の鉛量を制御して、このような問題が起こらない酸化物膜を形成することができるし、鉛量が少ないことにより、(100)および/または(001)配向が得難い鉛量や異相のパイロクロア相になる場合であっても、成膜中の鉛量を制御して、安定して(100)および/または(001)配向膜を得ることができる。
本発明によれば、用途に応じた電気的特性を持つ酸化物膜を形成することができる。
以下に、本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法、この成膜方法によって成膜された鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜からなる圧電体を有する本発明の圧電素子、および、この圧電素子を具備する本発明の液体吐出装置について、詳細に説明する。
本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法においては、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を主たる成分として有し、かつ、鉛を主成分とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜(以下、単に「酸化物膜」ともいう)を成膜する。このように、本発明の成膜方法によって得られる酸化物膜は、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜であるので、高い圧電性能および強誘電性能を有するものである。
ここで、本実施形態においては、(100)および/または(001)配向の配向率Fが、80%以上、より好ましくは、90%以上の酸化物膜を成膜するのが好ましい。配向率Fについては、上述の通りである。
なお、本発明者は、成膜する酸化物膜の結晶配向性は、成膜された酸化物膜中の鉛量によって決まることを知見し、成膜中の酸化物膜の鉛量を制御することにより、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を有する酸化物膜を成膜する方法を見出すに至ったものである。
ところで、従来は、成膜された酸化物膜の鉛量が多いと、(100)および/または(001)配向の割合が高い酸化物膜が成膜されていた。他方、成膜された鉛含有薄膜中の鉛量が少ないと、酸化物膜中に、(111)配向や(100)配向が混ざった酸化物膜が成膜され、また、パイロクロア相が生じ、さらに酸化物膜中の鉛量が少ないと、100%のパイロクロア型結晶構造を有する膜が成膜されていた。
そのため、特に、成膜後の酸化物膜における鉛量が、酸化物膜を成膜する鉛以外のカチオンに対して1.07未満、特に1.0未満の場合には、安定してペロブスカイト単相の酸化膜、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を成膜することは、非常に難しいものであった。
例えば、Tadao Sugimoto "Monodispersed Particle" (Elsevier) Chapter3に書かれているように、溶液中のAgBrの粒子成長において、一定温度下では、化学平衡の要請から、溶液中の溶解度積[Ag][Br]が一定である。この条件下で、Agが通常の状態より少なく、Brが通常の状態より多い条件、すなわち、pBrが小さい時に結晶成長を行うと、AgBrの結晶構造は、(100)面を有するサイコロ状の粒子となり、他方、Agが多い条件(pBrが大きい条件)において、結晶成長を行うと、AgBrの結晶構造は、(111)面が成長しやすく、八面体状の粒子となることが知られている。このような現象は、表面エネルギーの差が原因と考えられている。
そこで、鉛含有ペロブスカイトの場合のメカニズムは明らかではないが、本発明者は、上述した溶液中のAgBrの粒子成長と同様の現象が起きることにより、形成される酸化物膜においては、鉛が過剰な場合は、表面エネルギー的に(100)および/または(001)面が安定化し、その結果として、(100)および/または(001)面が成長しやすいと考えている。
このように、成膜される酸化物膜における鉛量が少ない条件で、(100)および/または(001)面を主成分とする酸化物膜を安定して成膜するには、成膜される酸化物膜の表面エネルギーを安定させる必要があるので、従来は、上述したように、酸化物膜を成膜する面、例えば基板側の面に、Ti等の核を作製しておく必要があったと考えられる。
しかしながら、酸化物膜を成膜する面に、Ti等の核を作製するためには、酸化物膜成膜以外の成膜材料や成膜設備等が必要とされるため、製造工程が増え、製造コストが増大するという問題があった。
そこで、本発明者は、以上のことを踏まえて、酸化物膜を成膜するために用いる以外の材料や設備を用いることなく、成膜される酸化物膜における鉛量が少ない条件で、(100)および/または(001)面が安定した酸化物膜を成膜するには、成膜初期には、鉛量が過剰となる初期成膜条件で酸化物膜を成膜し、次いで、初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で酸化物膜を成膜すれば良いことを見出した。
すなわち、本発明においては、成膜初期には、鉛量が過剰となる初期成膜条件で成膜基板上に(100)および/または(001)配向の核となる酸化物膜を成膜し、その後に成長する酸化物膜は、初期成膜条件よりも鉛量が少ない基本成膜条件であっても、先に成膜した(100)および/または(001)配向を主成分とする核として形成した酸化物膜の影響を受けながら成長して、(100)および/または(001)配向の酸化物膜となる。
このように、本発明においては、鉛過剰の成膜条件であると、(100)および/または(001)配向が安定化することを利用し、初期成膜量10nm〜1μmの領域で、鉛量が多い成膜条件で、(100)および/または(001)に配向した核を作製すれば、その後の成長は、鉛量が少なくても、下地の(100)および/または(001)膜の影響を受けながら成長するため、(100)および/または(001)配向が得難い鉛量や異相のパイロクロア相になるような領域においても、安定して(100)および/または(001)配向膜を得ることが可能となる。
そのため、本発明においては、通常であれば、パイロクロア型結晶構造を形成し、(100)および/または(001)配向を主成分とし難い鉛量、すなわち少ない鉛量の酸化物膜を成膜する場合においても、特別な下地層を形成することなく、安定して(100)および/または(001)配向の酸化物膜を成膜することができる。
したがって、本発明においては、成膜後の酸化物膜における最終的な鉛量が、成膜後の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して1.07未満で、特に、1.0未満であっても、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を形成することができる。
さらに、本発明においては、酸化物膜を成膜する以外の材料や設備を用いることなく、すなわち、製造工程や製造コストを増やすことなく、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を作製することができる。
なお、本発明においては、初期成膜条件としては、成膜初期に成膜される酸化物膜として、(100)および/または(001)配向が得られる成膜条件である必要がある。特に、初期成膜条件としては、初期成膜が終了した時点の酸化物膜中の鉛量が、初期成膜が終了した時点の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して、1.07以上になるように制御するのが好ましい。
また、初期成膜および基本成膜後の酸化物膜における鉛量が、成膜後の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して、1.07未満であっても、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を形成することができるように、鉛過剰の初期成膜条件では、10nm以上1μm以下、特に、50nm以上300nm以下の酸化物膜を成膜するのが好ましい。
また、本発明において、初期成膜後に行う基本成膜の基本成膜条件にも、特に限定はないが、最終的に、初期成膜および基本成膜後の鉛含有薄膜における鉛量が、初期成膜および基本成膜後の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して、1.07未満になるように制御するのが好ましい。
このように、初期成膜時は、初期成膜が終了した時点の酸化物膜中の鉛量が、初期成膜が終了した時点の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して、1.07以上になるようにし、その後の基本成膜においては、最終的に、成膜後の酸化物膜における鉛量が、成膜後の酸化物膜を形成する鉛以外のカチオンに対して、1.07未満になるようにして、酸化物膜を成膜することにより、安定して(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を形成することができる。
酸化物膜の成膜方法については、成膜初期には、初期成膜条件で酸化物膜を形成し、その後に、初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で酸化物膜を成膜できれば、特に限定は無く、スパッタ法、CVD(chemical vapor deposition)法、プラズマCVD法、PLD(pulse laser deposition)法、焼成急冷クエンチ法、アニールクエンチ法、および溶射急冷法や、ゾルゲル法等の公知の方法で形成すればよい。これらの中でも、特に、成膜温度・成膜レートの点からスパッタ法、特にRFスパッタ法が好ましい。
なお、酸化物膜の鉛量を制御する方法は、特に限定はないが、スパッタ法、特に、RFスパッタ法などの成膜方法に応じて、例えば、酸化物膜の成膜中の温度(成膜温度)、成膜中の基板のプラズマエネルギ、成膜中の雰囲気ガスの酸素分圧、成膜中の投入パワー、特にRF投入パワー、および成膜中の成膜圧力のうちのいずれかを、または、これらの2つ以上を組み合せて制御すればよい。
なお、鉛量の制御は、適用されるスパッタ法などの成膜方法が実施される装置等に応じて、成膜温度、基板のプラズマエネルギ、酸素分圧、およびRF投入電力などの投入パワーなどの成膜条件、例えば、上述した初期成膜条件および基本成膜条件を予め適切に設定しておき、種々の成膜条件(初期成膜条件および基本成膜条件の種々の組み合せ)について、各成膜条件(各組合せ)と鉛量との関係を予め求めておき、圧電膜を成膜する際の成膜条件(初期成膜条件および基本成膜条件)を制御するようにして所望の鉛量を得るようにすれば良い。
また、スパッタ法やPLD法によって、酸化物膜の鉛量を制御する場合には、公知のスパッタ装置またはPLD装置を用い、ターゲットを、初期成膜と基本成膜とにおいて、異なるターゲットを用いて、成膜に用いる鉛量を制御してもよいし、含有する鉛量が傾斜を有するなどの鉛量に分布のあるターゲットを用いて、成膜時の鉛量を制御してもよい。
また、本発明の酸化物膜の成膜方法においては、成膜速度は限定的ではなく、どのような速度で成膜しても良いが、スループットなどの観点から、酸化物膜を、1μm/h以上で形成することが好ましい。
本発明においては、上述の優れた膜特性を持ち、鉛を主成分として、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有するものであれば、どのような酸化物膜を成膜してもよいが、Pb、Zr、Ti、およびOを全て含む酸化物膜を成膜するのが好ましい。
このような本発明の酸化物膜は、下記化学式(2)で表されるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の薄膜であるのが好ましい。
Pb(Zr1−y,Ti1−zNbδ・・・(2)
ここで、化学式(2)中、Pbは、Aサイトの元素であり、Zr、TiおよびNbは、Bサイトの元素であり、Oは、酸素原子である。また、x、yおよびzは、x≦1.20、0≦y≦1、0≦z≦0.25であるのが好ましく、より好ましくは、0.4≦y≦0.6、0.1≦z≦0.2であるのが良い。なお、δは、ここではδ=3である場合が標準であるが、ペロブスカイト構造を取る得る範囲内で基準値からずれてもよい。
なお、上記化学式(2)において、xは、酸化物膜に含有される鉛量を示し、酸化物膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛の割合(モル比)を表す。したがって、本発明において、鉛量は、xで表され、上記化学式(2)において、x=Pb/(Zr+Ti+Nb)で表されるものである。ここで、xの下限値は、後述する実施例では、0.97であるが、本発明はこれに限定されるわけではなく、ペロブスカイト単相のPZTの薄膜が形成できる範囲であればいくらでも良い。
本発明法において、安定して(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜を形成するには、化学式(2)中のAサイトのPbの含有量xを、x≦1.20とするとともに、BサイトのTiとZrの組成を示すyの値を、0≦y≦1とし、また、BサイトのTiおよびZrの合計とNbとの組成を示すZの値を、0≦z≦0.25とするのが良い。このように、本発明法によって得られる酸化物膜は、(100)および/または(001)配向を主成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物膜であるので、高い圧電性能および強誘電性能を有する。
ここで、yの値を、正方晶相と菱面体相との相転移点であるモルフォトロピック相境界(MPB)組成の近傍となる値とすれば、より高い強誘電性能が得られるので、より好ましい。すなわち、yの値は、0≦y≦1であることが好ましく、0.4≦y≦0.6であることがより好ましく、0.47≦y≦0.57であることがさらに好ましい。また、zの値は、0≦z≦0.25であるのが好ましく、0.1≦z≦0.2であるのがより好ましい。
この他、上述したPZTと他の強誘電体と複合ペロブスカイト型結晶構造の酸化物であっても良く、例えば、PNN(ニッケル酸ニオブ酸鉛)‐PZT、PZN(亜鉛酸ニオブ酸鉛)‐PZT等も好ましい。
次に、このようにして成膜された本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜を用いる本発明の圧電素子およびこれを備えた本発明の液体吐出装置について説明する。以下では、液体吐出装置の代表例として、インクジェットヘッドを用いて説明するが、本発明はこれに限定されないのは言うまでもない。
図1は、本発明の圧電素子の一実施形態を用いたインクジェットヘッドの一実施形態の要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。なお、視認しやすくするために、構成要素の縮尺は、実際のものとは適宜異ならせてある。
図1に示すように、本発明のインクジェットヘッド50は、本発明の圧電素子52と、インク貯留吐出部材54と、圧電素子52とインク貯留吐出部材54との間に設けられる振動板56と、ノズル(液体吐出口)70とを有する。
まず、本発明の圧電素子について説明する。同図に示すように、圧電素子52は、基板58と、基板58上に順次積層された下部電極60、圧電体62および上部電極64とからなる素子であり、本発明の酸化物膜からなる圧電体62に対して、下部電極60と上部電極64とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。
基板58としては、特に制限的ではなく、シリコン、ガラス、ステンレス(SUS)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、サファイヤ、シリコンカーバイド等の基板を挙げることができる。なお、基板58として、シリコン基板の表面にSiO酸化膜が形成されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
また、下部電極60は、基板58の略全面に形成されており、この上に図中手前側から奥側に延びるライン状の凸部62aがストライプ状に配列したパターンの圧電膜62が形成され、各凸部62aの上に上部電極64が形成されている。
圧電体62のパターンは、図示するものに限定されず、適宜設計される。なお、圧電体62は、連続膜でも構わないが、圧電体62を、連続膜ではなく、互いに分離した複数の凸部62aからなるパターンで形成することで、個々の凸部62aの伸縮がスムーズに起こるので、より大きな変位量が得られ、好ましい。
下部電極60の主成分としては、特に制限的ではなく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,およびSrRuO等の金属または金属酸化物、およびこれらの組合せが挙げられる。
上部電極64の主成分としては、特に制限的ではなく、下部電極60で例示した材料、Al,Ta,Cr,およびCu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、およびこれらの組合せが挙げられる。
圧電体62は、上述の本発明の成膜方法を適用して成膜された酸化物膜からなる。
下部電極60と上部電極64の厚みは、例えば200nm程度である。圧電体62の膜厚は特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば1〜5μmである。
図1に示すインクジェットヘッド50は、概略、上記構成の圧電素子52の基板58の下面に、振動板56を介して、インクが貯留されるインク室(インク貯留室)68およびインク室68から外部にインクが吐出されるインク吐出口(ノズル)70を有するインク貯留吐出部材54が取り付けられたものである。インク室68は、圧電膜62の凸部62aの数およびパターンに対応して、複数設けられている。すなわち、インクジェットヘッド50は、複数の吐出部を有し、圧電膜62、上部電極64、インク室68およびインクノズル70は、各吐出部毎に設けられている。一方、下部電極60、基板58および振動板56は、複数の吐出部に共通に設けられているが、これに制限されず、個々に、または幾かずつまとめて設けられていても良い。
インクジェットヘッド50では、従来公知の駆動方法により、圧電素子52の凸部62aに印加する電界強度を凸部62a毎に増減させてこれを伸縮させ、これによってインク室68からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
本発明のインクジェットヘッドは、基本的に以上のように構成されている。
以上、本発明の酸化物膜の成膜方法、これによって成膜された酸化物膜からなる圧電体を有する圧電素子、ならびに、この圧電素子を具備するインクジェット装置などの液体吐出装置について種々の実施形態および実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例には限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や設計の変更を行ってもよいのは、勿論である。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、さらに、添付の図を用いて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは言うまでもない。
(実施例1)
成膜装置として、RFスパッタ装置(アルバック社製強誘電体成膜スパッタ装置MPS型)を用いた。
ターゲット材には、120mmφのPb1.3(Zr0.52Ti0.48)O組成の焼結体を用いた。
基板には、予め、Siウエハ上に、Ti20nm、(111)配向を主成分とするIr150nmを、順に、積層した基板を用いた。
ターゲット材と基板との間の距離は、60mmとした。
基板温度を420℃として、スパッタ装置の真空容器内に、Ar+O(2.5%)のガスを導入し、真空容器内の圧力を0.3Paで安定させて、真空容器内へRFパワーを500W投入し、初期成膜条件で、Nb添加PZTN膜(以下、単に、PZTN膜ともいう)を100nm成膜した(初期成膜)。
初期成膜条件は、鉛量が1.1となる条件であり、ここでは、初期成膜中の成膜温度を420℃とした。
次いで、その後、鉛量が1.1より少なくなる基本成膜条件として、成膜温度を510℃に上げて成膜中の鉛量を制御し、PZTN膜を4μmの厚さになるまで成膜した(基本成膜)。
得られたPZTN膜について、PANalytical社製蛍光X線装置アクシオスを用いて、蛍光X線(XRF)測定を行い、PZTN膜における鉛量を測定した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、2回実験したところ、2回とも0.0.97であった。
なお、この時、PZTN膜を4μmの厚さになるまで成膜するための成膜時間は、予め算出したものを用いた。
(実施例2)
実施例1と同様にしてPZTN膜を100nm成膜した後、基本成膜条件として、成膜温度を500℃に変更してPZTN膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして、PZTN膜を4μmの厚さになるまで成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、2回実験したところ、0.98および0.99であった。
(実施例3)
実施例1と同様にしてPZTN膜を100nm成膜した後、基本成膜条件として、成膜温度を480℃に変更してPZTN膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして、PZTN膜を4μmの厚さになるまで成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTNの鉛量は、2回実験したところ、膜は、鉛量が1.03および1.04であった。
(実施例4)
実施例1と同様にしてPZTN膜を100nm成膜した後、基本成膜条件として、成膜温度を450℃に変更してPZTN膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして、PZTN膜を4μmの厚さになるまで成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜は、鉛量が1.07のPZTN膜であった。
上記実施例1〜4で得られた4種のPZTN膜の膜厚を、アルバック社製触針式膜厚計デックタック6M)を用いて測定した。いずれのPZTN膜も、その膜厚は、4μmであった。
また、リガク社製薄膜評価用X線回折装置 ULTIMAを用いて、θ/2θ測定法によって、これらの4種のPZTN膜のX線回析を行った。その結果、これらのPZTN膜は、全てθ/2θ法によるX線回折により、XRDペロブスカイト単相であることが確認され、実質的に不純物を含まないPZTN膜であることが分かった。
また、上記実施例1〜4で得られた4種のPZTN膜について、θ/2θ法によるX線回析を行い、ペロブスカイト結晶構造の(100)面・(110)面・(111)面のピーク強度およびパイロクロア結晶構造のピーク強度を求め、これらの値を、I(100)/I(100)+I(110)+I(111)+I(パイロクロア結晶構造)の式に当てはめて、PZTN膜の(100)配向の割合を求めた。
その結果、実施例1〜4で得られたPZTN膜の(100)配向率は、全て100%であった。結果を、黒四角(■)で、図2に示す。
ここで、図2は、横軸が、最終的に成膜したPZTN膜における鉛量を表し、縦軸が、PZTN膜の(100)配向の割合(配向率)を示すグラフである。
なお、図2には、上記実施例1〜4で得られた4種のPZTN膜に加え、基本成膜条件を変えた以外は実施例1と同様にして本発明法を適用して得られた複数のPZTN膜について、成膜後の鉛量に対する(100)配向の割合(配向率)がプロットされている。
さらに、図2には、比較例として、成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を一定に維持した以外は実施例1と全く同様にして成膜して得られた多数のPZTN膜についても、成膜後の鉛量に対する(100)配向の割合(配向率)がプロットされている。
なお、実施例および比較例のいずれのPZTN膜も、その膜厚の測定結果は、4μmであった。
(比較例1)
成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を510℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZTN膜を4μmの厚さに成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、0.98であった。
このようにして得たPZTN膜における(100)配向の割合を求めたところ、0%であった。結果を、白四角(□)で、図2に示す。さらに、このときに得たPZTN膜は、パイロクロア結晶構造を有していた。
(比較例2)
成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を480℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZTN膜を4μmの厚さに成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、1.02であった。
このようにして得たPZTN膜における(100)配向の割合を求めたところ、約10%であった。結果を、白四角(□)で、図2に示す。
(比較例3)
成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を450℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZTN膜を4μmの厚さに成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、1.05であった。
このようにして得たPZTN膜における(100)配向の割合を求めたところ、約80%であった。結果を、白四角(□)で、図2に示す。
(比較例4)
成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を440℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZTN膜を4μmの厚さに成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、1.07であった。
このようにして得たPZTN膜における(100)配向の割合を求めたところ、約95%であった。結果を、白四角(□)で、図2に示す。
(比較例5)
成膜開始から成膜終了までの成膜中の成膜温度を420℃に一定に維持した以外は、実施例1と全く同様にして、PZTN膜を4μmの厚さに成膜した。
こうして、最終的に得られたPZTN膜の鉛量は、1.13であった。
このようにして得たPZTN膜における(100)配向の割合を求めたところ、約100%であった。結果を、白四角(□)で、図2に示す。
なお、比較例および実施例ともに、成膜されるPZTN膜における鉛量は、予め温度との関係を制御しておき、再現性よく得られるものである。
図2に示す結果より、白四角(□)で示す比較例のPZTN膜、すなわち成膜開始から成膜終了まで成膜温度を変えずに一定に維持して鉛量を変えずに成膜したPZTN膜は、成膜後の鉛量が、1.07未満の場合は、ペロブスカイト型の単層構造となるものの、急激に(100)配向が低下した。特に、成膜後の鉛量が、1.00未満のPZTN膜は、異相であるパイロクロア相の単相となり、全くペロブスカイト相の膜が得られなかった。
他方、実施例1〜4のPZTN膜、すなわち、成膜初期に、成膜温度を420℃にして
鉛量が1.1の過剰となる初期成膜条件で成膜し、その後、初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件(成膜温度が420℃より高温)で作製したPZTN膜は、成膜後の鉛量が、いずれの値であっても、安定して(100)配向膜を得ることが可能となった。
以上の結果より、成膜初期に鉛量を過剰とする初期成膜条件で成膜し、その後、初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で成膜することにより、成膜されたPZTN膜の成膜後の鉛量が、いずれの値であっても、安定した(100)配向膜を得ることができることがわかった。
また、PZTN膜の下面のIrが、(111)配向を主成分となる膜(電極)であることから、上述のような従来用いられてきたエピタキシャルな関係にある結晶核(下地膜)を用いることなく、安定した(100)配向膜を得ることが可能となったことがわかる。
また、実施例1において、鉛量が0.97の場合には、通常条件ではパイロクロア相になる領域である最初の100nmの部分をθ/2θ法によるX線回折によりもう少し詳細に測定した。
その結果、
初期 0nmでは、パイロクロア相 100%
初期 10nmでは、(100)配向 93% パイロクロア相 7%
初期 30nmでは、(100)配向 100%
初期 100nmでは、(100)配向 100%
であった。
この結果から、このように鉛量が不足する場合の初期の100nmの領域であっても、本発明法では、0nm〜10nmまでの極薄い領域を除いて、10nm〜100nmまできちんと(100)配向することが分かる。
以上の各実施例の結果から、本発明の効果は明らかである。
本発明の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜を用いるインクジェットヘッドの一実施形態の構造を示す断面図である。 本発明の実施例および比較例のPZTN膜の鉛量と(100)配向の割合との関係を表すグラフである。
符号の説明
50 インクジェットヘッド
52 圧電素子
54 インク貯留吐出部材
56 振動板
58 基板(支持基板)
60、64 電極
62 圧電膜
68 インク室
70 インク吐出口

Claims (18)

  1. (100)および/または(001)配向の結晶配向性を有し、かつ、鉛を主成分とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法であって、
    成膜初期には、鉛量が過剰となる初期成膜条件で前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜し、
    その後、前記初期成膜条件より鉛量が少ない基本成膜条件で前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜することを特徴とする鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
    ここで、前記鉛量とは、前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表す。
  2. 前記初期成膜条件は、(100)および/または(001)配向の結晶配向性を主たる成分として有する前記ペロブスカイト型酸化物膜を得られる成膜条件であることを特徴とする請求項1に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  3. 前記初期成膜条件によって、10nm以上1μm以下の前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜基板上に成膜することを特徴とする請求項1または2に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  4. 前記初期成膜条件は、前記初期成膜条件によって成膜基板上に成膜される前記ペロブスカイト型酸化物膜の鉛量が、前記初期成膜条件によって成膜される前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有される鉛以外のカチオンに対して、1.07以上となるように、前記ペロブスカイト型酸化物膜を前記成膜基板上に成膜する条件であり、
    前記基本成膜条件は、前記初期成膜条件によって成膜される前記ペロブスカイト型酸化物膜の鉛量が、前記初期成膜条件によって成膜される前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有される鉛以外のカチオンに対して、1.07未満となるように、前記ペロブスカイト型酸化物膜を成膜する条件であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  5. 前記ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法が、スパッタ法であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  6. 前記鉛量は、成膜中に成膜温度を制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  7. 前記鉛量は、成膜中に成膜基板のプラズマエネルギを制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  8. 前記鉛量は、成膜中の酸素分圧を制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  9. 前記鉛量は、成膜中の投入パワーを制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  10. 前記鉛量は、成膜中に成膜圧力を制御することによって制御されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  11. 前記圧電膜は、前記(100)および/または(001)配向の結晶配向性が90%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  12. 前記鉛含有薄膜が、Pb、Zr、TiおよびOを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  13. 前記ペロブスカイト型酸化物膜が、下記化学式(P)で表され、x≦1.20、0≦y≦1、0≦z≦0.25であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
    Pb(Zr1−y,Ti1−zNbδ・・・・(P)
    (上記化学式中、PbはAサイト元素であり、Zr、TiおよびNbはBサイトの元素であり、Oは酸素原子であり、xは、前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有される鉛量であり、前記ペロブスカイト型酸化物膜に含有されるカチオンのうちの鉛以外のカチオンに対する鉛のモル比を表し、かつ、δ=3である場合が標準であるが、ペロブスカイト構造を取る得る範囲内で基準値からずれてもよい。)
  14. 前記化学式において、0.4≦y≦0.6、0.1≦z≦0.2であることを特徴とする請求項13に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  15. 前記ペロブスカイト型酸化物膜の成膜速度が、1μm/h以上であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  16. 前記ペロブスカイト型酸化物膜の膜厚が、3μm以上であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の成膜方法によって成膜された鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜からなる圧電体と、
    この圧電体に電圧を印加するために、前記圧電体の両面に形成された下部電極および上部電極を備え、
    前記圧電体の前記鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の前記下部電極界面付近の鉛量が、前記鉛含有ペロブスカイト型酸化物膜の全体の鉛量に対して等しいか多いことを特徴とする圧電素子。
  18. 請求項17に記載の圧電素子と、
    液体が貯留される液体貯留室と、
    前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記液体貯留室から外部に前記液体を吐出させる液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置。
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