JPH05310765A - 新規なカルシウムシリカ複合有機錯体 - Google Patents

新規なカルシウムシリカ複合有機錯体

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JPH05310765A
JPH05310765A JP11609992A JP11609992A JPH05310765A JP H05310765 A JPH05310765 A JP H05310765A JP 11609992 A JP11609992 A JP 11609992A JP 11609992 A JP11609992 A JP 11609992A JP H05310765 A JPH05310765 A JP H05310765A
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ligand
silica composite
silica
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Toshiaki Sugawara
敏明 菅原
Hiroshi Igarashi
宏 五十嵐
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Abstract

(57)【要約】 【構成】本発明のカルシウムシリカ複合有機錯体は、下
記式: Ax 〔Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(C
aO)n ・(H2 O)m+n 〕 式中、Aは、有機のリガンドであり、xはリガンドAの
モル数であり、0<x≦1の数、n,m及びyは、それ
ぞれ、0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/
y<4,−1<m,m+n>0,を満足する数である、
で表される化学組成を有することを特徴とする。 【効果】優れた塩化水素捕捉性能を有し、塩素含有重合
体やポリオレフィン系樹脂の熱安定性を顕著に向上させ
る事が出来る。特に塩素含有樹脂に於いては、顕著な着
色防止性能と耐熱持続性能を同時に発揮させることがで
きる。然もこの錯体は、熱、光、湿分の存在下でも極め
て安定であり、粉体としての取扱も容易である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なカルシウムシリ
カ複合水酸化物有機錯体に関し、より詳細には、塩素含
有重合体やハロゲン含有触媒残渣を含むオレフィン系樹
脂の熱安定化作用、透明性及びアンチブロッキング作用
に優れた樹脂用安定剤として極めて有用なカルシウムシ
リカ複合水酸化物有機錯体に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル重合体の如き塩素含有重合体
は、加熱成形加工或いはその後の熱履歴により、脱塩化
水素等の熱分解反応に起因する着色或いは機械的性質の
低下を生じ易く、これを防止するための安定剤の配合が
一般に必要となる。また、チーグラー型触媒を用いて製
造されるオレフィン系樹脂中には、ハロゲン含有触媒残
渣が含まれており、やはり加熱成形加工時にこの残渣か
ら塩化水素が発生し、成形加工機に錆を生じさせたり、
黄変等の樹脂の劣化を招くことがあり、これを防止する
ために塩化水素を捕捉する安定剤を配合する事が広く行
われている。
【0003】この様な安定剤として、ハイドロタルサイ
トを使用することは古くから知られており、例えば特開
昭55ー80445号公報には、ハイドロタルサイトを
含ハロゲン樹脂の安定剤として用いることが記載されて
おり、また特公昭58−36012号公報には、含ハロゲン樹
脂にβージケトン化合物と下記式(3): Mg1-x ・Alx (OH)2 ・YX/2 ・mH2 O (3) 式中、xは、0<x≦0.5なる数を示し、Yは、CO
3 2- またはSO4 2- を示し、mは正の数を示す、で
表されるハイドロタルサイト類を配合することが示され
ている。
【0004】更に、特公昭59ー30737号公報に
は、チーグラー型触媒を用いて製造されたハロゲン含有
触媒残渣を含むポリオレフィンに、下記式(4): MX Aly (OH)2x+3y-2z(Y)Z ・aH2 O (4) 式中、Mは、Mg,CaまたはZnを示し、Yは、CO
3 またはHPO4 を示し、x,y,zは、それぞれ正数
であり、aは、ゼロまたは正数である、で示される複合
化物を少なくとも0.01重量%配合することが示され
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ハイドロタルサイト類
は、マグネシウムとアルミニウムの複合水酸化炭酸塩で
あって熱安定性に優れており、重合体に配合したとき透
明であるなどの利点を有している。このハイドロタルサ
イト類は、理想的には下記式(5): Mg6 Al2 (OH)16・CO3 ・mH2 O (5) 式中、mはゼロまたは正数である、で表される化学組成
を有するが、前記式(3)及び(4)から明らかな通
り、MgとAlがかなり広い範囲で固溶体を形成する性
質があり、厳密に組成が一定のものを製造することが困
難であるという問題がある。また、これらハイドロタル
サイト類は塩素含有樹脂やポリオレフィン樹脂の加工温
度である200℃内外で急激な脱水及び脱炭酸を生起す
る傾向にあり、これを添加した該樹脂の成形加工工程で
発泡現象を起こす不利益を有する。
【0006】本発明者等は、ある種のカルシウムシリカ
複合有機錯体は、合成条件の多少の変動にもかかわら
ず、化学組成の一定のものとして得られ、これを塩素含
有重合体やハロゲン含有触媒残渣を含むオレフィン系樹
脂に配合すると、優れた熱安定化作用が得られることを
見出した。本発明者等は更に、このカルシウムシリカ複
合水酸化物有機錯体は、最も熱安定化作用に優れている
Mg/Alのモル比が2〜2.5のハイドロタルサイト
に比しても、耐熱性に優れており、しかも樹脂への分散
性や、配合物の電気絶縁抵抗の点でも優れていることを
見出した。
【0007】即ち、本発明の目的は、樹脂に対する分散
性に優れ、樹脂用安定剤として極めて有用な新規カルシ
ウムシリカ複合有機錯体を提供することにある。本発明
の他の目的は、耐熱性に優れ、且つ透明性、電気絶縁性
にも優れた安定化塩素含有重合体組成物を提供すること
にある。本発明の更に他の目的は、ハロゲン含有触媒残
渣に由来するハロゲン化水素の捕捉性に優れたオレフィ
ン系樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、下記式
(1): Ax 〔Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・ (H2 O)m+n 〕 (1) 式中、Aは、有機のリガンドであり、xはリガンドAの
モル数であり、0<x≦1の数、n,m及びyは、それ
ぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表される化学組成を有し、且つ
下記X線回折像、 面間隔 相対強度(I/I0 ) 10.00Å〜11.50Å 100 4.50Å〜5.50Å 5〜150 3.70Å〜 4.00Å 10〜150 3.30Å〜 3.60Å 20〜150 3.04Å〜 3.09Å 300〜0 を有していることを特徴とするカルシウムシリカ複合有
機錯体が提供される。ここで有機リガンドとしては、β
−ジケトン化合物乃至β−ケト酸エステル化合物からな
る群より選ばれた少なくとも1種が適当である。
【0009】本発明によればまた、脂肪酸、脂肪酸塩、
ワックス及びカップリング剤からなる群より選ばれた少
なくとも1種のコーテイング剤でコーテイングされてい
る下記式 (2): Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・(H2 O)m+n (2) 式中、n,m及びyは、それぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表される化学組成を有し且つ面
間隔 3.04Å乃至3.09Å、2.78乃至2.8
2Å及び 1.81Å乃至1.84Åに主要X線回折ピ
ークを有するカルシウムシリカ複合水酸化物を、リガン
ド形成性有機化合物と混合することにより、該有機化合
物を該複合水酸化物の表面及び細孔内に化学的に吸着乃
至結合させることを特徴とする前記カルシウムシリカ複
合有機錯体の製造方法が提供される。
【0010】本発明によれば更に、前記カルシウムシリ
カ複合有機錯体から成る樹脂用安定剤が提供される。
【0011】本発明によれば更に、塩素含有重合体10
0重量部当たり、0.01乃至150重量部の量で前記カ
ルシウムシリカ複合有機錯体を含有する塩素含有重合体
組成物が提供される。
【0012】本発明によれば更に、ハロゲン含有触媒残
渣を含むオレフィン系樹脂100重量部当たり、0.0
1乃至150重量部の量で前記カルシウムシリカ複合有
機錯体を含有するオレフィン系樹脂組成物が提供され
る。
【0013】
【作用】図1は、X線回折図であり、スペクトルaは、
後述する実施例1において本発明のカルシウムシリカ複
合有機錯体(以下、単にCSH錯体と呼ぶことがある)
の合成に使用したカルシウムシリカ複合水酸化物(以
下、単に複合水酸化物と呼ぶことがある)のX線回折
図、スペクトルbは、上記複合水酸化物にβ−ジケトン
の一種であるアセチルアセトンを化学吸着乃至結合させ
た本発明のCHS錯体(Ca原子と同数のアセチルアセ
トンを使用)のX線回折図、スペクトルcは、比較例1
で用いた消石灰(六方晶形水酸化カルシウム)のX線回
折図、及びスペクトルdは、前記水酸化カルシウムと、
Ca原子と同数のアセチルアセトン分子との反応物(比
較例1)のX線回折図である。である。
【0014】スペクトルaにおいては、面間隔 3.0
4乃至3.09Å、2.78乃至2.82Å及び1.8
1乃至1.84Åになだらかで左右非対称のピークを有
し、このピークより狭角側に目立ったピークが存在しな
い。この事実から、本発明のCSH錯体合成に使用され
る複合水酸化物は、C軸方向の積み重ねの弱いa,b軸
方向、殊にb軸面に比較的強い規則性が認められる二次
元的なマトリックスから構成されていること、Ca(O
H)2 の六方晶形の回折像がないこと、及びCaイオン
を中心に置くトバモライト型のCaO6 八面体層が完成
されるに至らない形で、Caイオン及び水酸イオン及び
水分子がシリカ四面体間にサンドイッチされた二次元的
構造のカルシウムシリカ複合水酸化物の形態を有してい
るものと考えられる。
【0015】これに対してスペクトルbでは、上記複合
水酸化物のスペクトルaにおける面間隔3.04Åの回
折ピークが縮小して残留し、面間隔3.50Å、3.7
7Å及び10.16Åに新たな回折ピークが生じてい
る。即ち、上記複合水酸化物のの二次元的構造ではCa
イオン、OHイオン及び水分子とシリカ四面体とが形成
する空間内にアセチルアセトン分子がC軸方向から配位
することが立体的に可能である。従って、本発明のCH
S錯体においては、前記複合水酸化物のb軸方向の面間
隔が部分的に拡大し3.04Åより狭角側に回折ピーク
が現れ、更に同分子の配位により二次元的構造がC軸方
向へも積層し、三次元構造が形成されていることが、ス
ペクトルa及びbの比較から理解される。
【0016】また、一般的にCaイオンは、二座配位子
をとり1Caイオンが2分子のアセチルアセトン分子を
配位してカルシウムアセチルアセトナトジアコ錯体を形
成する。スペクトルc及びdの比較から明らかな通り、
水酸化カルシウム中のCaイオンと、これと同数のアセ
チルアセトン分子を反応させた場合、半数のCaが未反
応水酸化カルシウムとして残存することになる。このス
ペクトルdと、前記スペクトルbとの相違から理解され
るように、本発明のCHS錯体は、カルシウムアセチル
アセトナト錯体とは異なる構造を有するものである。
【0017】図2及び図3は、赤外線吸収スペクトルを
示す図であり、図2中、スペクトル−1は前記複合水酸
化物の赤外線吸収スペクトル、スペクトル−2は前記本
発明のCSH錯体の赤外線吸収スペクトル、スペクトル
−3はアセチルアセトンの赤外線吸収スペクトルを示
し、図−3はカルシウム−アセチルアセトナト錯体(比
較例3参照)の赤外線吸収スペクトルを示す。
【0018】上記スペクトル−3に示される様に、アセ
チルアセトンは、ケト型(1727〜1708カイザ
ー;CーOの伸縮振動)及びエノール型(1629カイ
ザー;OHC=CH−CO−の伸縮振動)の混合体より
成るが、スペクトル−2に示されるように、前記複合水
酸化物とアセチルアセトンとの反応により得られる本発
明のCHS錯体においては、アセチルアセトンの上記2
つのピークが消失しており、反応による新たな吸収が1
605〜1400カイザー及び1015〜975カイザ
ーに生じている。新吸収のうち、前者は、カルシウムに
対するアセチルアセトンのケトン基の配位によるもので
あり、後者は、この配位により変化したシリカ−カルシ
ウム間の結合の変化によるものと判断される。また、複
合水酸化物のスペクトル−1には、1630カイザーを
中心に水分子の存在を示すOHの変角振動に由来する吸
収があり、さらに1500カイザーを中心にCa−OH
結合の存在を示す変角振動吸収、1000カイザーを中
心にSi−Oの伸縮振動による吸収ピーク、及びSi−
OとCa,OH或いはHOHとが関与する吸収ピークと
が重なり分枝ピークを形成している。さらに、図−3に
示されているCa−アセチルアセトナト錯体の赤外線吸
収スペクトルでは、1個のカルシウム原子に4個の酸素
が配位している部分を中心とする錯体の骨格変角振動に
よる吸収が700カイザー中心に大きく現れ、本発明の
CSH錯体の赤外線吸収スペクトルとは明瞭に相違して
いる。
【0019】以上のX線回折図及び赤外線吸収スペクト
ルの解析から、本発明のCSH錯体は、Ca−アセチル
アセトナト錯体と化学組成および化学結合状態を異にす
る新規なカルシウムシリカ複合有機錯体であると理解さ
れる。
【0020】また図4に、前記複合水酸化物にアセチル
アセトンが化学吸着乃至結合した本発明の前記CSH錯
体の示差熱分析曲線を示す。この図4において、本発明
のCSH錯体の熱分解挙動を解析すると、図4中のDT
G曲線から明らかな通り、アセチルアセトン(沸点 1
30℃)は、カルシウムシリカ複合水酸化物に化学的に
吸着乃至結合されてリガンドを形成することにより分解
点が270℃に上昇している。また200℃前後におい
て、TG曲線の傾斜が平坦であり急激な減量がない。こ
れらの事実は、本発明のCSH錯体が塩素含有重合体等
の樹脂に配合された場合、その加熱成形時に耐熱性を発
揮し、発泡現象を生じない利点が発現することを意味す
る。
【0021】また、図5に前記Ca−アセチルアセトナ
ト錯体の示差熱分析曲線を示す。これらの示差熱分析曲
線を比較すると、Ca−アセチルアセトナト錯体の分解
温度は 284℃であるのに対して、本発明のCSH錯
体の分解温度は、それより約10℃低く、このCSH錯
体のリガンドのCaに対する配位エネルギーがCa−ア
セチルアセトナト錯体のそれより低いことが認められ
る。この事実は、両者のCaに対する配位構造の違いを
示しているとともに、塩素含有樹脂中でCSH錯体の方
が亜鉛化合物とリガンド交換が容易であり、着色防止効
果のある亜鉛キレート生成に有利であることを示してい
る。
【0022】
【発明の好適態様の説明】製造方法 本発明のCSH錯体は、基本的に言って、前記一般式
(2)、即ち、 Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・(H2 O)m+n (2) 式中、n,m及びyは、それぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表される化学組成を有し且つ面
間隔 3.04乃至3.09、2.78乃至2.82Å
及び 1.81Å乃至1.84Åに主要X線回折ピーク
を有するカルシウムシリカ複合水酸化物に、リガンド形
成性有機化合物を該複合水酸化物の表面及び細孔内に化
学的に吸着乃至結合させることによって製造される。
【0023】カルシウムシリカ複合水酸化物;上記のカ
ルシウムシリカ複合水酸化物は、例えば、室温乃至15
0℃の温度において、生石灰乃至消石灰とケイ酸を7乃
至15重量%の水スラリーにして攪拌し、加圧乃至常圧
条件で剪断下に合成されるものである。また、かかる複
合水酸化物としては、特開平4−15261号公報に開
示されている微結晶カルシウムシリケイトハイドレイト
をも好適に使用することができる。この複合水酸化物
は、同公報にも記載されているように、非晶質シリカと
水酸化カルシウムとを、水の存在下にメカノケミカル的
に反応させることによって得られる。ここでメカノケミ
カル的反応とは、非晶質シリカに機械的な摩擦力が加わ
る条件下での反応であり、一般にボールミル、チュウブ
ミル、振動ミル、ビーズミル等の反応装置を使用し、可
及的に低い温度、一般に70℃以下の温度、特に15乃
至50℃の温度で行われる。ここで用いる非晶質シリカ
としては、ホワイトカーボン、その他の湿式法非晶質シ
リカや、スメクタイト族粘土鉱物、例えば酸性白土、モ
ンモリロナオト、フーラースアース等の粘土鉱物を酸処
理して得られるシリカが好適に使用される。この非晶質
シリカは、一般に、150乃至400m2 /gのBET
比表面積を有するものであり、その二次粒子径は、1乃
至10μm、1乃至5μmの範囲にあるのが良い。非晶
質シリカと反応させる水酸化カルシウムは可及的に反応
性の高いものがよく、一般に石灰乳と呼ばれるもののう
ち、4乃至8重量%のCaO分を有するものが好適に使
用される。メカノケミカル反応時間は、ミルの容量や摩
砕条件等に寄っても相違するが、一般に6乃至80時間
の範囲から前記組成の複合水酸化物を生成するような条
件を選ぶ。また、非晶質シリカと水酸化カルシウムの使
用量は、例えばCa/Si原子比等が前述した組成を満
足するように設定すればよい。
【0024】本発明において、出発原料として使用され
る前記一般式(2)の複合水酸化物は、活性なCaイオ
ン及び水酸イオンを構造内に保有しており、有機リガン
ドの配位し易い二次元的構造を形成していることが顕著
な特徴である。このような活性なCaイオンを有してい
ない複合水酸化物を用いた場合には、本発明のCSH錯
体は得られない。例えば上述した複合水酸化物のような
組成を、更に150℃以上の高温、高圧の状態におく
と、トバモライト型結晶を形成する。このトバモライト
型結晶は、シリカ四面体層をCaO6 八面体層がサンド
イッチした三層構造を持ち、これがC軸方向にも積層し
た三次元的構造の結晶体である。これに、本発明と全く
同様にアセチルアセトン等のリガンド形成性有機化合物
を作用させても、化学的吸着乃至化学結合は生じない。
事実、前述した図1のスペクトルaとbに示されている
ようなX線回折ピークの変化は認められなかった。その
理由は、CaO6 八面体層の形成により、Caイオンが
シリカ四面体構造間に最密充填的に組み込まれ活性を減
じたためと考えられる。 同様に、ゾノトライト、炭酸カ
ルシウム等を用いて室温下又は加温下でアセチルアセト
ンと反応させても化学的吸着乃至結合は生起しない。
【0025】また本発明においては、上記の複合水酸化
物を、適当なコーテング剤を用いてコーテイング処理し
た形で使用することが重要である。即ち、コーティング
処理を行わないで上記複合水酸化物を使用した場合、該
水酸化物は2次凝集して微細な粉末とならないため、後
述するリガンド形成性有機化合物との反応を有効に行う
ことが困難となる。一般にかかるコーティング剤として
は、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸
等の脂肪酸;これら脂肪酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マ
グネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸;シラン系カッ
プリング剤、アルミニウム系カップリング剤;チタン系
カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤;ロジ
ン、石油樹脂等の官能性の樹脂コーティング剤;各種ワ
ックス類等を使用することができる。これらのコーティ
ング剤を用いての処理は、上記複合水酸化物の製造段階
において、反応系にこれらコーティング剤を添加した
り、あるいは複合水酸化物とこれらコーティング剤とを
混合することによって容易に行うことができる。一般
に、これらコーティング剤は、上記複合水酸化物100
重量部当たり、0.01乃至10重量部、特に1乃至8重
量部の割合で使用することが好適である。
【0026】リガンド形成性有機化合物;本発明におい
て、上述した複合水酸化物と反応させるべきリガンド形
成性有機化合物としては、先にも述べた通り、β−ジケ
トン化合物及びβ−ケト酸エステルの少なくとも1種が
好適に使用される。
【0027】かかるβ−ジケトン化合物としては、例え
ば、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,
3−シクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シク
ロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテ
トラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラ
ロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイル
シクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキ
サンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタ
ン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−
ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、
トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、
ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイ
ルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイル
メタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス
(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ビ
ス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、
ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4
−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、
ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイ
ルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)メタン、及び
ジビバロイルメタンルメタン、ビス(4−クロルベンゾ
イル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベン
ゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベ
ンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタ
ン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、
ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチル
アセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサ
ノイル)メタン、ジビバロイルメタン等を例示すること
ができ、最も好適なものとしてはアセチルアセトンを挙
げることができる。
【0028】またβ−ケト酸エステルとしては、アセト
酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル等
のアセト酢酸エステル、プロピオニル酢酸メチル、プロ
ピオニル酢酸エチル等のプロピオニル酢酸エステル、ベ
ンゾイル酢酸メチル、ベンゾイル酢酸ブチル等のベンゾ
イル酢酸エステル等を例示することができ、最も好適な
ものとしてはアセト酢酸エステルを挙げることができ
る。
【0029】反応;前述した複合水酸化物と上記リガン
ド形成性有機化合物との反応は、通常、コーティング処
理された複合水酸化物の水性スラリーを使用し、室温下
において、固液系でリガンド形成性有機化合物を緊密に
混合することによって行われる。反応は数分から数時間
で終了する。リガンド形成性有機化合物が固体である場
合には、これを溶解する溶媒を用いればよいが、反応系
を該リガンド形成性有機化合物の融点以上に加熱して行
うことも可能である。また上記反応は、剪断力下で行う
ことが好ましく、例えば上記固液系を粉砕機等を用いて
摩砕下に混合して反応を行うことが望ましい。例えばリ
ガンド形成性有機化合物としてアセチルアセトンを使用
した場合、複合水酸化物とアセチルアセトンとをミキサ
ー中室温にて0.5時間混合し、更に固液接触物を単に
静置した時には、反応終了に20〜24時間を要する
が、ミキサーや粉砕機を用いて摩砕下に混合したもの
は、数分〜数時間で反応が終了する。かかる反応は、複
合水酸化物中の活性なCaイオン及びOHイオンがリガ
ンド形成性有機化合物と接触することによって進行し、
該有機化合物が複合水酸化物に化学吸着乃至結合するこ
とによって錯体が形成するものと考えられる。反応後、
得られる生成物を必要によりろ過、水洗及び乾燥するこ
とによって、本発明のCSH錯体が得られる。
【0030】カルシウムシリカ複合有機錯体 かくして得られる本発明のCSH錯体は、X線回折、赤
外線吸収スペクトル、及び示差熱分析による水酸基量及
び有機リガンド吸着量の定量等により、前記一般式
(1)、即ち、 Ax 〔Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・ (H2 O)m+n 〕 (1) 式中、Aは、有機のリガンドであり、xはリガンドAの
モル数であり、0<x≦1の数、n,m及びyは、それ
ぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表され、化学量論的にほぼ一定
の化学組成を有しているとともに、下記X線回折像、 面間隔 相対強度(I/I0 ) 10.00Å〜11.50Å 100 4.50Å〜5.50Å 5〜150 3.70Å〜 4.00Å 10〜150 3.30Å〜 3.60Å 20〜150 3.04Å〜 3.09Å 300〜0 を有している。ここで各成分は、Ca/Siの原子比が
約0.5以上と成るように、またA/Caのモル比が
0.25以上と成るように調製するのがよい。また上記
X線回折像において、面間隔 3.04Å乃至3.09
Åの回折ピークは、複合酸化物の(SiO2 )・(Ca
O)に係るピークであり、有機リガンドの量がCaと等
モル(x=1)となった場合に、該ピークは実質的に消
失するものである。
【0031】本発明のCSH錯体は、一般に無定形の微
結晶であり、粒子は明確な定形粒子形状を示さず、粒子
間の凝集の程度は至って少なく、樹脂への分散性に優れ
ている。この粒径は特に制限はないが、一般に10μm
以下、特に0.1乃至5μmの範囲内にある。かかるC
SH錯体は、これに限定されないが、吸油量(JIS
Kー5101)が一般に70乃至150ml/100gの
範囲にあり、見掛比重(鉄シリンダー法)は、0.4乃
至0.7g/cm3 の範囲にある。
【0032】用途 本発明のCSH錯体は、樹脂に対する分散性に優れてお
り、樹脂用安定剤として使用することができ、樹脂によ
っても異なるが、一般に、樹脂100重量部当たり、
0.01乃至150重量部の量で配合され、優れた安定
化作用、透明性及びアンチブロッキング作用を示す。
【0033】特に本発明のCSH錯体は、優れた塩化水
素捕捉機能を有しており、塩素含有重合体や、ハロゲン
系触媒残渣を有するオレフィン系樹脂に配合された場合
に、これら樹脂の熱安定性を顕著に向上せしめる。
【0034】例えば、塩素含有重合体に対しては、上記
範囲内のうちでも特に、該重合体100重量部当たり、
好ましくは0.1乃至10重量部、最も好ましくは0.
5乃至2.0重量部の量で用いることにより、顕著な着
色防止機能と耐熱持続性能とが同時に発揮される。塩素
含有重合体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩
化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピ
レン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、
塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレ
ン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニ
ル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデ
ン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三
元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル
共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニ
ル−塩化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリ
デン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−スチレン
−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニルーアクリル
酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル
共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合
体、塩化ビニル−アクリロノトリル共重合体、内部可塑
化ポリ塩化ビニル等の重合体、及びこれらの塩素含有重
合体とポリエチレン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリスチ
レン、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエン−
スチレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−
スチレン共重合体等のブレンド物等を挙げることができ
る。また、本発明のCSH錯体が配合された塩素含有重
合体樹脂組成物には、その初期着色性等をさらに改善す
るために、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等
の脂肪酸の亜鉛塩を配合することが好ましい。通常、こ
の脂肪酸の亜鉛塩の配合量は、塩素含有重合体100重
量部当たり0.01乃至10重量部の量が適当である。
【0035】さらに、ハロゲン系触媒残渣を有するオレ
フィン系樹脂に対しては、上記前述した量割合うちでも
特に、該樹脂100重量部当たり0.01乃至10重量
部の量で用いるのが好適であり、このような量でCSH
錯体が配合されているオレフィン系樹脂組成物において
は、ハロゲン系触媒残渣による樹脂劣化が極めて有効に
防止される。かかるハロゲン系触媒残渣を有するオレフ
ィン系樹脂としては、ポリプロピレン、低−、中−、高
密度の或いは線状低密度のポリエチレン、結晶性プロピ
レン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合
体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル
酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0036】勿論、本発明のCSH錯体は、上述した塩
素含有重合体及びオレフィン系樹脂以外にも、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の
熱可塑性ポリエステル、6−ナイロン、6,6−ナイロ
ン、6,8−ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネイ
ト、ポリスルフォン類、ポリアセタール等の各種の熱可
塑性樹脂の安定剤、特に熱安定剤としても有用である。
【0037】また上記のように、本発明のCSH錯体が
配合された樹脂組成物には、それ自体公知の各種添加
剤、例えば非金属系安定剤、有機錫系安定剤、塩基性無
機酸塩等の他の安定剤乃至は安定助剤、可塑剤、多価ア
ルコール類、酸化防止剤、光安定剤、造核剤、充填剤、
エポキシ安定剤、有機キレーター、顔料、帯電防止剤、
防曇剤、難燃剤、滑剤等を、その安定性が損なわれない
範囲内において添加配合することが可能である。さら
に、上述した本発明のCSH錯体は、それ単独で使用し
てもよいし、また無機系助剤として、エアロジル、疎水
処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸マグネシウ
ム、カルシヤ、マグネシヤ、チタニヤ等の金属酸化物、
水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸
化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、A型、B型等の
合成セオライトおよびその酸処理物、又はその金属イオ
ン交換物からなる定形粒子等を、このCSH錯体にブレ
ンド乃至マブシた形で使用することも可能である。
【0038】
【実施例】以下の実施例において、原料であるカルシウ
ムシリカ複合水酸化物、得られたCSH錯体の物性等の
測定は、以下の方法で行った。 (1)X線回折 理学電機(株)製のRADーIBシステムを用いて、C
uーKαにて測定した。 ターゲット Cu フィルター 湾曲結晶グラファイトモノクロ
メータ 検出器 sc 電圧 40KVP 電流 20mA カウントフルスケール 700c/s スムージングポイント 25 走査速度 1°/min ステップサンプリング 0.02° スリット DS1°RS0.15mm S
S1° 照角 6° (2)赤外線吸収スペクトル(赤外線拡散反射光測定) 日本分光(株)製 FTIR8000のDR−81光
路、及びMCTセンサーを用いて測定した。測定条件と
しては、関係湿度35%の空気中、拡散反射光標準物質
としてKBR粉末を用い、MCTの保温に液体窒素を用
いた。 (3)示差熱分析 セイコウ電子工業(株)製SSCー5200TGーDT
Aシステムを用いて測定した。測定条件としては、標準
物質αーAl2 3 、昇温速度5℃/分、雰囲気は窒素
を用いた。 (4)化学分析 JIS R9011の石灰の化学分析法に準拠して行っ
た。 (5)数平均粒子径 明石ビームテクノロジー(株)製 走査電子顕微鏡WE
TーSEM(WSー250)を用いて、制限視野像中の
粒子径(μm)を算術平均して平均粒子径を求めた。 (6)見掛比重 JISKー6220に準拠して測定した。 (7)吸油量 JISKー5101−19に準拠して測定した。 (8)比表面積 カルロエルバ社製 Sorptpmatic Series 1800を使用
し、BET法により測定した。
【0039】実施例1 (原料カルシウムシリカ複合水酸化物の製造)酸化カル
シウム(CaO含量が99.9%)170.6gを3リ
ットルのビーカーにとり、蒸留水2670gを加えて攪
拌下に水和処理を行ない、CaO分6%の石灰乳スラリ
ーを得た。 次いで、 上記石灰乳スラリー 375g(CaO分、22.4
g) 平均粒径5μmの活性ケイ酸粉末 30.6g(SiO
2 含量:93.5%) 及び、 ステアリン酸カルシウム 3.9g を磁性ボールと共に1リットルのポットミルにいれ、5
4時間摩砕反応を行ないpH10.5のスラリーを得
た。これを、ろ過・水洗後、110℃で乾燥し、次いで
小型のサンプルミルで粉砕して微粉末を得た。得られた
微粉末について、X線回折、赤外線吸収スペクトル、示
差熱分析及び化学分析を行った。X線回折スペクトルを
図1のスペクトルa、赤外線吸収スペクトルを図2のス
ペクトル−1、及び示差熱分析曲線を図6に示した。
【0040】上記の分析の結果、この微粉末は、CaO
分と等モルの水分子及びCa数の倍量のOH基を構造内
に持つと推定され、且つ下記式、 Ca0.18・(OH)0.36・SiO2 ・(CaO)0.66
(H2 O)0.66 で表される化学組成を有する複合水酸化物が6重量%の
ステアリン酸カルシウムでコーテイング処理されている
ものであると認められる。また、図1のX線回折図(ス
ペクトルa)を見ると、これにはCaO或いはCa(O
H)2 に基ずく規則的な結晶面は存在しない。更に、図
6のTG曲線には、結晶水の脱離や強い水素結合エネル
ギーを有する金属水酸化物の分解による重力降下を示す
急激な傾きやピークが存在しない。図2の赤外線吸収ス
ペクトル−1においては、1500カイザーにCa−O
Hに関するピークが存在し、1000カイザー付近に認
められる極大ピークは、Si−O振動だけからなる単一
ピークではなく、Ca,OH,HOH及びCa−Oの関
与により分枝していることが認められる。しかも、40
0〜300カイザーの領域には、CaO単独による吸収
が存在していない。以上の事実から、この微粉末は、上
記式に示したようなCaO或いはH2 Oが単独の形では
その構造中には存在せず、Caイオン、OHイオン、H
OH、及びCaO6 八面体前駆体の一部を担う−Ca−
O−がシリカ四面体間に存在して二次元的構造を形成し
ているカルシウムシリカ複合水酸化物であると理解され
る。
【0041】(カルシウムシリカ複合有機錯体の製造)
上記で得られた複合水酸化物とアセチルアセトンとを、
4.8/20(重量比)の割合で、卓上ミキサーを用いて
室温下で0.5時間混合して粉末とし、実験用サンプルミ
ルで粉砕した。この粉砕物について、上記と同様の分析
を行った。X線回折スペクトルを図1のスペクトルb、
赤外線吸収スペクトルを図2のスペクトル−3、及び示
差熱分析曲線を図4に示した。上記図1のX線回折スペ
クトルbから明らかな通り、この粉砕物は、下記のX線
回折像、即ち、 面間隔 相対強度(I/I0 ) 10.16Å 100 5.08Å 7 3.78Å 13 3.47Å 31 3.06Å 27 を有している。また、下記式、 A0.29〔Ca0.18・(OH)0.36・SiO2 ・(Ca
O)0.66・(H2 O)0.66〕 (式中、Aはリガンドであるアセチルアセトンを示す)
で表される化学組成を有するカルシウムシリカ複合有機
錯体がステアリン酸カルシウムで被覆されている粒子で
あることが認められた。かかるカルシウムシリカ複合有
機錯体(試料H−1)のCa/Si原子比(一般式
(1)における1/yに相当),リガンドの吸着モル数
(一般式(1)におけるxに相当)、平均粒子径、吸油
量、見掛け密度を表1に示した。
【0042】実施例2 (原料カルシウムシリカ複合水酸化物の製造)酸化カル
シウム(CaO含量が99.9%)170.6gを3リ
ットルのビーカーにとり、蒸留水2670gを加えて攪
拌下に水和処理を行ない、CaO分6%の石灰乳スラリ
ーを得た。次いで、 前記石灰乳スラリー 375g(CaO分、22.4
g) 平均粒径5μmの活性ケイ酸粉末 27g(SiO2
量:93.5%) 及び、 ステアリン酸カルシウム 3.51g を、1リットルのビーカーに仕込み90℃で6時間攪拌
して反応を行い、pHが11.5のスラリーを得た。こ
のスラリーを、ろ過、水洗後、110℃で乾燥し、実験
用サンプルミルで粉砕したものを、実施例1と同様に分
析した。その結果、得られた粉砕物は、下記式 Ca0.66・(OH)1.30・SiO2 ・(CaO)0.33
(H2 O)0.33 で表される化学組成を有するカルシウムシリカ複合水酸
化物が、6.3重量%のステアリン酸カルシウムで被覆
されたものであることを確認した。
【0043】(カルシウムシリカ複合有機錯体の製造)
上記で得られた複合水酸化物とα−アセチル−γ−ブチ
ロラクトンとを、60/35(重量比)の割合で、実施
例1と同様の操作により、粉砕物を得た。この粉砕物に
ついて、実施例1と同様の分析を行ったところ、この粉
砕物は、下記のX線回折像、即ち、 を有しており、下記式、 A0.42〔Ca0.66・(OH)1.30・SiO2 ・(Ca
O)0.33・(H2 O)0.33〕 (式中、Aはリガンドであるα−アセチル−γ−ブチロ
ラクトンを示す)で表される化学組成を有するカルシウ
ムシリカ複合有機錯体がステアリン酸カルシウムで被覆
されている粒子であることが認められた。かかるカルシ
ウムシリカ複合有機錯体(試料H−2)のCa/Si原
子比、リガンドの吸着モル数、平均粒子径、吸油量、見
掛け密度を表1に示した。
【0044】実施例3 (原料カルシウムシリカ複合水酸化物の製造)酸化カル
シウム(CaO含量が99.9%)170.6gを3リ
ットルのビーカーにとり、蒸留水2670gを加えて攪
拌下に水和処理を行ない、CaO分6%の石灰乳スラリ
ーを得た。次いで、 前記石灰乳スラリー375g(CaO分、22.4g) 平均粒径5μmの活性ケイ酸粉末27g(SiO2
量:93.5%) 及び、 ステアリン酸カルシウム3.51g を、1リットルのステンレス製オートクレイブにて14
0℃、0.363MPaの水蒸気圧で5時間攪拌し反応
させ、実施例1と同様の操作により、 Ca0.21・(OH)0.40・SiO2 ・(CaO)0.75
(H2 O)0.75 で表される化学組成を有するカルシウムシリカ複合水酸
化物を得た。
【0045】(カルシウムシリカ複合有機錯体の製造)
上記で得られた複合水酸化物を用いた以外は、実施例1
と全く同様の操作により粉砕物を得た。この粉砕物につ
いて、実施例1と同様の分析を行ったところ、この粉砕
物は、下記のX線回折像、即ち、 を有しており、下記式、 A0.32〔Ca0.21・(OH)0.40・SiO2 ・(Ca
O)0.75・(H2 O)0.75〕 (式中、Aはリガンドであるアセチルアセトンを示す)
で表される化学組成を有するカルシウムシリカ複合有機
錯体がステアリン酸カルシウムで被覆されている粒子で
あることが認められた。かかるカルシウムシリカ複合有
機錯体(試料H−3)のCa/Si原子比、リガンドの
吸着モル数、平均粒子径、吸油量、見掛け密度を表1に
示した。
【0046】実施例4 (原料カルシウムシリカ複合水酸化物の製造)Ca/S
i原子比を0.36となるように調整した以外は、実施
例2と同様にしてカルシウムシリカ複合水酸化物の粉砕
物を得た。この複合水酸化物の化学組成は、下記式、 Ca0.20・(OH)0.40・SiO2 ・(CaO)0.16
(H2 O)0.14 で表されることを確認した。 (カルシウムシリカ複合有機錯体の製造)上記で得られ
た複合水酸化物のスラリーとα−アセチル−γ−ブチロ
ラクトンとを、1/0.4の重量比で実施例2と同様に
混合し、2.5時間攪拌下反応した後、ろ過し、110
℃で乾燥し、粉砕した。この粉砕物について、実施例2
と同様の分析を行ったところ、この粉砕物は、下記のX
線回折像、即ち、 を有しており、下記式、 A0.20〔Ca0.20・(OH)0.40・SiO2 ・(Ca
O)0.16・(H2 O)0.14〕 (式中、Aはリガンドであるα−アセチル−γ−ブチロ
ラクトンを示す)で表される化学組成を有するカルシウ
ムシリカ複合有機錯体がステアリン酸カルシウムで被覆
されている粒子であることが認められた。かかるカルシ
ウムシリカ複合有機錯体(試料H−4)のCa/Si原
子比、リガンドの吸着モル数、平均粒子径、吸油量、見
掛け密度を表1に示した。
【0047】比較例1 消石灰(Ca(OH)2 含量が98.2%)37.7g
(水酸化カルシウムとして0.5モル)とアセチルアセ
トン50g(0.5モル)を乳鉢中均一に混合し褐色の
粉末(試料HT−1)を得た。この物性を表1に示す。
尚、比較のために、上記消石灰(六方晶形水酸化カルシ
ウム)のX線回折図を図1のスペクトルcに示し、アセ
チルアセトンの赤外線吸収スペクトルを図2のスペクト
ル−3に示した。また得られた反応物(試料HT−1)
のX線回折図を図1のスペクトルdに示した。
【0048】比較例2 アセチルアセトン120gを用いた以外はすべて比較例
1と同様にして、試料HT−2を得た。この物性を表1
に示す。
【0049】比較例3 酸化カルシウム(CaO含量が99.9%)170.6
gを3リットルのビーカーにとり、蒸留水2670gを
加えて攪拌下に水和処理を行ない、CaO分6%の石灰
乳スラリーを得た。次いで前記石灰乳スラリー375g
(CaO分、22.4g)にアセチルアセトン85gを
添加し、2.5時間攪拌下反応を行ない、ろ過、110
℃での乾燥、粉砕を行った。得られた粉砕物(試料HT
−3)について、赤外線吸収スペクトルの測定及び示差
熱分析を行った。その赤外線吸収スペクトルを図3、及
びその示差熱分析曲線を図5に示す。これらの結果か
ら、この試料HT−3は、カルシウムアセチルアセトナ
トジアコ錯体と同定した。この物性を表1に示す。
【0050】比較例4 比較例3において用いた、有機リガンドをα−アセチル
−γ−ブチロラクトン160gとした以外は比較例3と
同様にして試料No.HT−4を得た。その物性を表1
に示した。
【0051】応用例1 前述した実施例及び比較例で得られた各試料を用いて、
これらを樹脂用安定剤として塩素含有樹脂に添加した場
合の熱安定性効果の評価を行った。。軟質ポリ塩化ビニルによる評価 以下の配合、成形などの手法により軟質塩化ビニルシー
トを作製し、評価試験をした。 (配合) 塩化ビニル樹脂(重合度:1050) 100重量部 ジオクチルフタレイト 50重量部 ステアリン酸亜鉛 0.5重量部 ジヒドロキシジフェニールプロパン 0.1重量部 試料 2.5重量部 (成形方法)上記配合組成物を温度150℃、7分間ロ
ールミル混練を行ない、厚さ0.5mmの均一な混和物
を作製し、次いで温度160℃、圧力130kg/cm
2 ,5分間加圧加熱し、厚さ1mmの軟質塩化ビニルシ
ートを作製した。 (試験方法) (1)熱安定持続時間;試料シートをガラス板にのせ、
185℃に調整したギヤ式熱老化試験機に入れ、15分
毎に取り出してその着色度を目視判定し、黒色分解する
時間を測定した。 (2)熱安定性 JIS K 6723に準拠し、試料シートを1mm×
1mmに裁断し、コンゴーレッド紙を装着した試験官に
試料チップ2gを充填、180℃に加熱し、塩化ビニル
の熱分解によるHCl離脱時間を測定した。 (3)電気絶縁性 JIS K 6723に準拠し、試料シートの30℃に
おける体積固有抵抗値を測定した。 (4)透明性 日本電色工業製.1001DP色差計を用い、試料シー
トの白色光透過率を測定した。得られた試験結果を表2
に示す。
【0052】硬質ポリ塩化ビニル板による評価 以下の配合、成形などの手法により硬質塩化ビニル板を
作製し、評価試験をした。 (配合) 塩化ビニル樹脂(重合度:1050) 100重量部 ステアリン酸亜鉛 0.25重量部 ジペンタエリスリトール 0.1重量部 ジペンタエリスリトールアジピン酸エステル 0.1重量部 ポリエチレンワックス 0.3重量部 顔料 0.2重量部 炭酸カルシウム 3.5重量部 試料 1.0重量部 (成形法)上記配合組成物を温度160℃、7分間ロー
ルミル混練を行ない、厚さ0.4mmの均一な混和物を
作製し、次いで温度180℃、圧力150kg/c
2 ,5分間加圧加熱し、厚さ1mmの硬質塩化ビニル
板を作製した。(試験方法) (1)熱安定持続時間 試料板を190℃に調整したギヤ式熱老化試験機に吊る
し入れ、10分毎に取り出してその着色度を目視判定
し、焦茶色に分解するまでの時間を測定した。得られた
試験結果を表3に示す。表2及び表3の結果から、本発
明によるカルシウムシリカ複合水酸化物重合体錯体の微
粉末からなる樹脂用安定剤は、軟質及び硬質塩化ビニル
に添加した場合、優れた熱安定化効果を発揮すると共
に、優れた絶縁特性や透明保持効果を発揮することが理
解される。
【0053】応用例2 前記実施例及び比較例で得られた各試料を、樹脂用安定
剤としてハロゲン残留触媒残渣を含むポリオレフィン樹
脂に添加したときの、黄化防止効果及び金型腐食防止効
果及び樹脂中分散性について評価を行った。ポリプロピレン樹脂による評価 以下の配合、成形等の手法によりポリプロピレンシート
を作製し、評価試験を行った。 (配合) ハロゲン残留触媒残渣を含むポリプロピレン樹脂 100重量部 試料 0.2〜0.5重量部 ビスフェノールA 0.1重量部 (成形方法)上記配合組成物を押出機を用いて260℃
でペレットにし、此の試料ペレットを厚さ1mm、た
て、よこ、100mm×100mmのステンレス鋼板製
の金枠にいれ、写真用厚手のフェロタイプ板と2mm厚
のアルミニウム板の重ね合わせではさみ、230±3℃
で30分間プレスした後、30±5℃の冷却プレスに移
し、成形投影面当たり約50kg/cm2 の圧力下で冷
却し、金型が40℃以下に成ったのち厚さ1mmのポリ
プロピレンシートを取り出し、以下に述べる試験を行っ
た。 (試験方法) (1)耐黄化試験 上記成形シートを85℃、90%RHの恒温恒湿槽にい
れ24日間放置した。この成形シートの表面色相を日本
電色工業製の色差計Model 1001DPにより測
定し、N値(黄色度)を求めた。N値が小さい程、耐黄
化性に優れている。 (2)腐食試験 上記成形工程でポリプロピレンと230±3℃、30分
間接触したフェロタイプ板を65℃、90%RHの恒温
恒湿槽にいれ24時間放置した。その後ちフェロタイプ
板とポリプロピレンとの接触面を日本電色製の光沢度計
ND101Dで測定角45度の反射率(光沢度)を求
め、試料による金型腐食の度合いを推量した。反射率が
大きい程耐腐食性に優れている。 (3)分散性試験 上記成形シートにつき、肉眼で分散性を評価した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【発明の効果】本発明のカルシウムシリカ複合水酸化物
有機錯体は、優れた塩化水素捕捉性能を有し、塩素含有
重合体やポリオレフィン系樹脂の熱安定性を顕著に向上
させる事が出来る。特に塩素含有樹脂に於いては、顕著
な着色防止性能と耐熱持続性能を同時に発揮させること
ができる。然もこの生成物は、熱、光、湿分の存在下で
も極めて安定であり、粉体としての取扱も容易である。
従来、塩化ビニルの加工時の初期着色防止を効果的に実
現するために、有機質のβージケトン類化合物が用いら
れて来たが、これらの物質は、一般に熱的に不安定で、
取り扱い難い液状乃至粘性体である場合が多く、又は高
価格な分子設計された高融点の結晶性粉末であり、際立
った耐熱持続性能を有する物質ではない。本発明によれ
ば、このような有機質のβージケトン類化合物の欠点が
極めて容易に解消され、βージケトン類化合物とカルシ
ウムシリカ複合水酸化物との混合物からは到底予測し得
ない耐熱性能を示す。また本発明の複合水酸化物有機錯
体は、塩基性の度合いが有機リガンドにより和らげら
れ、化学的にも物理的にも安定で、樹脂に与える損傷が
なく、しかも樹脂への分散性にも優れているという利点
が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 X線回折図であり、スペクトルaは、実施例
1で得られたカルシウムシリカ複合水酸化物のX線回折
スペクトル、スペクトルbは、実施例1で得られた本発
明のカルシウムシリカ複合有機錯体のX線回折スペクト
ル、スペクトルcは、比較例1で用いた消石灰のX線回
折スペクトル、及びスペクトルdは、比較例1で得た消
石灰−アセチルアセトン反応物のX線回折スペクトルで
ある。
【図2】 赤外線吸収スペクトルであり、スペクトル−
1は、実施例1で得られたカルシウムシリカ複合水酸化
物の赤外線吸収スペクトル、スペクトル−2は、アセチ
ルアセトンの赤外線吸収スペクトルであり、及びスペク
トル−3は、実施例1で得られた本発明のカルシウムシ
リカ複合有機錯体の赤外線吸収スペクトルである。
【図3】 比較例3で得た消石灰−アセチルアセトン反
応物の赤外線吸収スペクトルである。
【図4】 実施例1で得られた本発明のカルシウムシリ
カ複合有機錯体の熱分析曲線である。
【図5】 比較例3で得た消石灰−アセチルアセトン反
応物の熱分析曲線である。
【図6】 実施例1で得られたカルシウムシリカ複合水
酸化物の熱分析曲線である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年8月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】
【作用】図1は、X線回折図であり、スペクトルaは、
後述する実施例1において本発明のカルシウムシリカ複
合有機錯体(以下、単にCSH錯体と呼ぶことがある)
の合成に使用したカルシウムシリカ複合水酸化物(以
下、単に複合水酸化物と呼ぶことがある)のX線回折
図、スペクトルbは、上記複合水酸化物にβ−ジケトン
の一種であるアセチルアセトンを化学吸着乃至結合させ
た本発明のCSH錯体(Ca原子と同数のアセチルアセ
トンを使用)のX線回折図、スペクトルcは、比較例1
で用いた消石灰(六方晶形水酸化カルシウム)のX線回
折図、及びスペクトルdは、前記水酸化カルシウムと、
Ca原子と同数のアセチルアセトン分子との反応物(比
較例1)のX線回折図である。である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】これに対してスペクトルbでは、上記複合
水酸化物のスペクトルaにおける面間隔3.04Åの回
折ピークが縮小して残留し、面間隔3.50Å、3.7
7Å及び10.16Åに新たな回折ピークが生じてい
る。即ち、上記複合水酸化物のの二次元的構造ではCa
イオン、OHイオン及び水分子とシリカ四面体とが形成
する空間内にアセチルアセトン分子がC軸方向から配位
することが立体的に可能である。従って、本発明のCS
錯体においては、前記複合水酸化物のb軸方向の面間
隔が部分的に拡大し3.04Åより狭角側に回折ピーク
が現れ、更に同分子の配位により二次元的構造がC軸方
向へも積層し、三次元構造が形成されていることが、ス
ペクトルa及びbの比較から理解される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】また、一般的にCaイオンは、二座配位子
をとり1Caイオンが2分子のアセチルアセトン分子を
配位してカルシウムアセチルアセトナトジアコ錯体を形
成する。スペクトルc及びdの比較から明らかな通り、
水酸化カルシウム中のCaイオンと、これと同数のアセ
チルアセトン分子を反応させた場合、半数以上のCaが
未反応水酸化カルシウムとして残存することになる。こ
のスペクトルdと、前記スペクトルbとの相違から理解
されるように、本発明のCSH錯体は、カルシウムアセ
チルアセトナト錯体とは異なる構造を有するものであ
る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】上記スペクトル−3に示される様に、アセ
チルアセトンは、ケト型(1727〜1708カイザ
ー;CーOの伸縮振動)及びエノール型(1629カイ
ザー;OHC=CH−CO−の伸縮振動)の混合体より
成るが、スペクトル−2に示されるように、前記複合水
酸化物とアセチルアセトンとの反応により得られる本発
明のCSH錯体においては、アセチルアセトンの上記2
つのピークが消失しており、反応による新たな吸収が1
605〜1400カイザー及び1015〜975カイザ
ーに生じている。新吸収のうち、前者は、カルシウムに
対するアセチルアセトンのケトン基の配位によるもので
あり、後者は、この配位により変化したシリカ−カルシ
ウム間の結合の変化によるものと判断される。また、複
合水酸化物のスペクトル−1には、1630カイザーを
中心に水分子の存在を示すOHの変角振動に由来する吸
収があり、さらに1500カイザーを中心にCa−OH
結合の存在を示す変角振動吸収、1000カイザーを中
心にSi−Oの伸縮振動による吸収ピーク、及びSi−
OとCa,OH或いはHOHとが関与する吸収ピークと
が重なり分枝ピークを形成している。さらに、図−3に
示されているCa−アセチルアセトナト錯体の赤外線吸
収スペクトルでは、1個のカルシウム原子に4個の酸素
が配位している部分を中心とする錯体の骨格変角振動に
よる吸収が700カイザー中心に大きく現れ、本発明の
CSH錯体の赤外線吸収スペクトルとは明瞭に相違して
いる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】カルシウムシリカ複合水酸化物;上記のカ
ルシウムシリカ複合水酸化物は、例えば、室温乃至15
0℃の温度において、生石灰乃至消石灰とケイ酸を7乃
至15重量%の水スラリーにして攪拌し、加圧乃至常圧
条件で剪断下に合成されるものである。また、かかる複
合水酸化物としては、特開平4−15261号公報に開
示されている微結晶カルシウムシリケイトハイドレイト
をも好適に使用することができる。この複合水酸化物
は、同公報にも記載されているように、非晶質シリカと
水酸化カルシウムとを、水の存在下にメカノケミカル的
に反応させることによって得られる。ここでメカノケミ
カル的反応とは、非晶質シリカに機械的な摩擦力が加わ
る条件下での反応であり、一般にボールミル、チュウブ
ミル、振動ミル、ビーズミル等の反応装置を使用し、可
及的に低い温度、一般に70℃以下の温度、特に15乃
至50℃の温度で行われる。ここで用いる非晶質シリカ
としては、ホワイトカーボン、その他の湿式法非晶質シ
リカや、スメクタイト族粘土鉱物、例えば酸性白土、
ンモリロナイト、フーラースアース等の粘土鉱物を酸処
理して得られるシリカが好適に使用される。この非晶質
シリカは、一般に、150乃至400m2 /gのBET
比表面積を有するものであり、その二次粒子径は、1乃
至10μm、1乃至5μmの範囲にあるのが良い。非晶
質シリカと反応させる水酸化カルシウムは可及的に反応
性の高いものがよく、一般に石灰乳と呼ばれるもののう
ち、4乃至8重量%のCaO分を有するものが好適に使
用される。メカノケミカル反応時間は、ミルの容量や摩
砕条件等に寄っても相違するが、一般に6乃至80時間
の範囲から前記組成の複合水酸化物を生成するような条
件を選ぶ。また、非晶質シリカと水酸化カルシウムの使
用量は、例えばCa/Si原子比等が前述した組成を満
足するように設定すればよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正内容】
【0040】上記の分析の結果、この微粉末は、CaO
分と等モルの水分子及びCa数の倍量のOH基を構造内
に持つと推定され、且つ下記式、 Ca0.18・(OH)0.36・SiO2 ・(CaO)0.66
(H2 O)0.66 で表される化学組成を有する複合水酸化物が6重量%の
ステアリン酸カルシウムでコーティング処理されている
ものであると認められる。また、図1のX線回折図(ス
ペクトルa)を見ると、これにはCaO或いはCa(O
H)2 に基ずく規則的な結晶面は存在しない。更に、図
6のTG曲線には、結晶水の脱離や強い水素結合エネル
ギーを有する金属水酸化物の分解による重力降下を示す
急激な傾きやピークが存在しない。図2の赤外線吸収ス
ペクトル−1においては、1500カイザーにCa−O
Hに関するピークが存在し、1000カイザー付近に認
められる極大ピークは、Si−O振動だけからなる単一
ピークではなく、Ca,OH,HOH及びCa−Oの関
与により分枝していることが認められる。しかも、40
0〜300カイザーの領域には、CaO単独による吸収
が存在していない。以上の事実から、この微粉末は、上
記式に示したようなCaOが単独の形ではその構造中に
は存在せず、Caイオン、OHイオン、HOH、及びC
aO 6 八面体属前駆体の一部を担う−Ca−O−がシリ
カ四面体間に存在して二次元的構造を形成しているカル
シウムシリカ複合水酸化物であると理解される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正内容】
【0045】(カルシウムシリカ複合有機錯体の製造)
上記で得られた複合水酸化物を用いた以外は、実施例1
と全く同様の操作により粉砕物を得た。この粉砕物につ
いて、実施例1と同様の分析を行ったところ、この粉砕
物は、下記のX線回折像、即ち、 を有しており、下記式、 A0.32〔Ca0.21・(OH)0.40・SiO2 ・(Ca
O)0.75・(H2 O)0.75〕 (式中、Aはリガンドであるアセチルアセトンを示す)
で表される化学組成を有するカルシウムシリカ複合有機
錯体がステアリン酸カルシウムで被覆されている粒子で
あることが認められた。かかるカルシウムシリカ複合有
機錯体(試料H−3)のCa/Si原子比、リガンドの
吸着モル数、平均粒子径、吸油量、見掛け密度を表1に
示した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】赤外線吸収スペクトルであり、スペクトル−1
は、実施例1で得られたカルシウムシリカ複合水酸化物
の赤外線吸収スペクトル、スペクトル−3は、アセチル
アセトンの赤外線吸収スペクトルであり、及びスペクト
ル−2は、実施例1で得られた本発明のカルシウムシリ
カ複合有機錯体の赤外線吸収スペクトルである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08K 5/07 KAQ 7242−4J 9/00 KCM 7242−4J C08L 27/04 KGN 9166−4J

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1): Ax 〔Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・ (H2 O)m+n 〕 (1) 式中、 Aは、有機のリガンドであり、 xはリガンドAのモル数であり、0<x≦1の数、 n,m及びyは、それぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
    4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表される化学組成を有し、且つ
    下記X線回折像、 面間隔 相対強度(I/I0 ) 10.00Å〜11.50Å 100 4.50Å〜5.50Å 5〜150 3.70Å〜 4.00Å 10〜150 3.30Å〜 3.60Å 20〜150 3.04Å〜 3.09Å 300〜0 を有していることを特徴とするカルシウムシリカ複合有
    機錯体。
  2. 【請求項2】 前記(1)式における有機リガンドA
    が、β−ジケトン化合物乃至β−ケト酸エステル化合物
    からなる群より選ばれた単独乃至複合のリガンドである
    請求項1に記載のカルシウムシリカ複合有機錯体。
  3. 【請求項3】 脂肪酸、脂肪酸塩、ワックス及びカップ
    リング剤からなる群より選ばれた少なくとも1種のコー
    テイング剤でコーテイングされている下記式(2): Ca1-n ・(OH)2-2n・(SiO2 y ・(CaO)n ・(H2 O)m+n (2) 式中、 n,m及びyは、それぞれ、 0<1/y<3,0<n<1,0<(1+m)/y<
    4,−1<m,m+n>0, を満足する数である、で表される化学組成を有し且つ面
    間隔 3.04乃至3.09、2.78乃至2.82Å
    及び 1.81Å乃至1.84Åに主要X線回折ピーク
    を有するカルシウムシリカ複合水酸化物を、リガンド形
    成性有機化合物と混合し、該有機化合物を該複合水酸化
    物の表面及び細孔内に化学的に吸着乃至結合させること
    を特徴とする請求項1に記載のカルシウムシリカ複合有
    機錯体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のカルシウムシリカ複合
    有機錯体から成る樹脂用安定剤。
  5. 【請求項5】 塩素含有重合体100重量部当たり0.
    01乃至150重量部の量で請求項1に記載のカルシウ
    ムシリカ複合有機錯体を含有している塩素含有重合体組
    成物。
  6. 【請求項6】 塩素含有重合体100重量部当たり0.
    01乃至10重量部の量でカルボン酸亜鉛を含有する請
    求項5に記載の塩素含有重合体組成物。
  7. 【請求項7】 ハロゲン含有触媒残渣を含むオレフィン
    系樹脂100重量部当たり、0.01乃至150重量部
    の量で請求項1に記載のカルシウムシリカ複合有機錯体
    を含有しているオレフィン系樹脂組成物。
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