JP3650231B2 - リチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩、その製法及び用途 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、リチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩及びその製法に関するもので、より詳細には、塩素含有重合体やハロゲン含有触媒残渣を含むオレフィン系樹脂の熱安定化作用に優れた安定剤及び熱可塑性樹脂フィルムのアンチブロッキング剤又は赤外線吸収剤等として有用なLAHS及びその製法に関する。本発明は更にこれらの用途にも関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル重合体の如き塩素含有重合体は、加熱成形加工或いはその後の熱履歴において、脱塩化水素等の熱分解反応により着色し或いは機械的性質の低下を生じ易く、これを防止するための安定剤の配合が一般に必要となる。
また、チーグラー型触媒を用いて製造されるオレフィン系樹脂中には、ハロゲン含有触媒残渣が含まれており、この残渣が加熱成形加工時にやはり塩化水素を発生せしめて成形加工機に錆を生じさせたり、黄変等の樹脂の劣化を招く事があり、これを防止するために塩化水素を捕捉する安定剤を配合する事が広く行われている。
【0003】
この様な安定剤として、ハイドロタルサイトを使用する事は古くから知られており、例えば、特開昭55−80445号公報には、ハイドロタルサイトを含ハロゲン樹脂の安定剤として用いることが記載されており、また特公昭58−36012号公報には、含ハロゲン樹脂にβ−ジケトン化合物と式(2)、
Mg1-x ・Alx (OH)2 ・AX/2 ・mH2 O ‥‥(2)
式中、Xは0<X≦0.5なる数を示し、AはCO3 2- またはS O4 2- を示し、mは正の数を示す。
のハイドロタルサイト類を配合することが示されている。
【0004】
更に、特公昭59−30737号公報には、チーグラー型触媒を用いて製造されたハロゲン含有触媒残渣を含むポリオレフィンに、一般式(3)
Mx Aly (OH)2x+3y-2z(A)Z ・aH2 O ‥‥(3)
式中、MはMg,Ca,Zn,AはCO3またはHPO4 ,x,y,zは正数、aはゼロまたは正数、
で示される複合化物を少なくとも0.01重量%配合する事が示されている。
【0005】
ハイドロタルサイト類は、マグネシウムとアルミニウムの複合水酸化物炭酸塩で無毒であり、熱安定性にも優れ、重合体に配合したとき透明であるなどの利点を有している。
このハイドロタルサイト類は、理想的には式(4)
Mg6 Al2 (OH)16・CO3 ・mH2 O ‥‥(4)
式中、mはゼロまたは正数、
で表される化学組成を有するが、MgとAlがかなり広い範囲内で式(2)または式(3)で示される通り、固溶体を形成する性質があり、組成が厳密に一定なものを製造することが困難であるという問題がある。
【0006】
セルナ(C.J.Serna)等の
”Crystal-Chemical Study of Layered
[Al2 Li(OH)6 ]+ X- ・nH2 O"
(Clays and Clay Minerals, 25巻、384頁(1977))
と題する報文には、過剰の炭酸リチウムの水溶液に、アルミニウム・トリ(sec−ブトキシド)(ASB)のベンゼン溶液を液滴状に添加して、ASBを加水分解し、生成するゲルを、洗浄後、130℃で数日間熱水処理して、リチウム・アルミニウム複合水酸化物塩を合成することが記載されている。
【0007】
また、シソッコ(I,Sissoko)等の
”Anion Intercalation and Exchange in
Al(OH)3 -Derived Compounds”
(Journal of Solid State Chemistry, 25巻、283−288頁、(1985))
と題する報文には、LiOH及びNa2 CO3 を含む水溶液中に、AlCl3 を液滴状に添加して、pHを初期の13から終段の10.2に変化させて、ゲル状の沈殿を生成させ、これを攪拌下に熟成して、LAHSを生成させることが記載されている(後述する比較例1を参照)。
更に、本発明等の提案に係るには、一般式(1)、
[Al2 Li(OH)6 ]nX・mH2 O ‥‥(1)
式中、Xは無機または有機アニオンであり、nはアニオンの価数であり、mは3以下の数である、
で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩(以下LAHSと呼ぶ)において式、
OD=I(002)/I(110) ‥‥(2)
式中、I(002)は面間隔(d)7.67乃至7.84オングストロームに表れる面指数(002)のX線回折(Cu−Kα)ピークの相対強度を表し、且つI(110)は面間隔(d)4.41乃至4.45オングストロームに表れる面指数(110)のX線回折(Cu−Kα)ピークの相対強度を表す、
で定義される配向度(OD)が10以上、特に20以上であることを特徴とするLAHSが記載されており、このLAHSは、炭酸リチウムと塩化アルミニウムとを、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの存在下に水中で反応させ、反応混合物に高級脂肪酸または界面活性剤を配向増強剤として添加し、混合物を60乃至100℃の温度で、配向度(OD)が10以上となるように処理することにより得られることが記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら公知の方法で合成されるLAHSは、ゲル状粒子で結晶の発達が未だ不十分であり、粒子の形状及びサイズも不揃いで樹脂への配合剤としての用途には未だ不十分のものであった。
【0009】
また、前述した高配向度のLAHSは、ゲル粒子状のLAHSに比して、樹脂への配合性が良好であり、更に樹脂に配合したときの熱安定化作用等の諸性能も向上しているという利点があるものの、未だ結晶の発達が不十分で粒子の嵩密度が小さく、比表面積が大であり、粉体としての取扱い性(ハンドリング)が悪く、樹脂等への配合時の顔料性にも欠けるという問題があった。
【0010】
本発明者等は、ギブサイト型の水酸化アルミニウムをLAHSの母体乃至テンプレートとして利用し、このギブサイトの空位にリチウム成分を移行(マイグレーション)させることにより、高結晶性でしかもデンスなLAHSが得られることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の目的は、結晶が高度に発達しており、嵩密度が大きくしかも顔料性に優れているリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩及びその製法を提供するにある。
【0012】
本発明の他の目的は、反応系における原料の濃度を高濃度に保ちながら比較的短時間の内に合成を行うことができ、従って、生産性及びコストの点で優れているLAHSの製造法を提供するにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、上記リチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩から成る樹脂配合剤等を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、平均粒径が0.5乃至5μmであり且つ粒径20μm以上の粗粒分の含有量が2重量%以下であるギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子を使用し、該ギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子と、炭酸のリチウム塩または炭酸イオン及びリチウムイオンを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せとを水の存在下に反応させることを特徴とするリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩の製法(以下、単にマイグレーション法と呼ぶことがある)が提供される。
【0015】
本発明によれば、更に、実質上、化学式
〔Al2 Li(OH)6 〕nX・mH2 O …(1)
式中、Xは炭酸アニオンまたは重炭酸アニオンを主体とするアニオンであり、nはアニオンの価数であり、mは3以下の数である、
で表される組成を有し、且つ下記
面間隔d(A) ピーク強度 面指数
7.50乃至7.64 大 (002)
4.30乃至4.44 小 (110)
3.70乃至3.84 大 (004)
2.45乃至2.58 中 (006)
2.20乃至2.30 小 (016)
1.85乃至2.08 小 (017)
1.40乃至1.52 小 (330)
1.38乃至1.48 小 (600)
のX線回折像を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩において、下記数式
IS = tanθ2 /tanθ1 …(1)
式中、θ1 は一定の面間隔のX線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク接線とがなす角度を表し、θ2 は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を表す、
で定義される積層不整指数(IS )が面指数(016)のピークにおいて1.0以下であり且つ面指数(017)のピークにおいて1.0以下であることを特徴とするリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩が提供される。
本発明によれば更にまた上記リチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩から成る樹脂配合剤が提供される。
【0016】
【作用】
リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(LAHS)は、ギブサイト構造の水酸化アルミニウム八面体層の空位(ベーカント)にリチウムイオンが入り込み、その電荷を補うためにアニオンが組み込まれたものとされている。即ち、リチウムイオンはカチオンの中でイオン半径が最も小さく、しかも1価イオンとしては例外的に6配位イオンであるため上記空位に入り、上記構造をとるものと認められる。
【0017】
このLAHSは、層状構造でありしかもアニオンに対しイオン交換性を示す等、ハイドロタルサイトと類似した構造及び特性を示すことから、ハイドロタルサイト状化合物とか、リチウムハイドロタルサイトと呼ばれているが、ハイドロタルサイトは、ブルーサイト構造のマグネシウムの一部をアルミニウムで同形置換したものである点で、化学組成及び構造において、両者は全く相違するものと認められる。
【0018】
LAHS(炭酸塩)は、一般に前記したX線回折像を有するが、本発明によるリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩(以下LAHCと呼ぶ)は、前記数式(1)で定義される積層不整指数(IS )が面指数(016)のピークにおいて1.0以下、特に0.5乃至1.0であり且つ面指数(017)のピークにおいて1.0以下、特に0.5乃至1.0であることが顕著な特徴である。
【0019】
添付図面、図1は、本発明のマイグレーション法によるLAHCのX線回折像であり、図2は従来の共沈法によるLAHSのX線回折像である。図1と図2との対比から、従来の共沈法によるLAHCでは面指数(016)及び面指数(017)のピークがブロードで小さく、広角側にブロードなテーリングを生じているのに対して、本発明のマイグレーション法によるLAHCでは、面指数(016)及び(017)のピークがシャープで高くなり、前述した広角側テーリングが消失して、ピークがピーク垂線に対して対称に近い形となっているという事実が明らかとなる。
【0020】
図1及び図2のX線回折像からの積層不整指数(IS )の求め方を示す図3及び図4において、面指数(016)及び(017)のピークを拡大し、これらのピークについて、ピークの狭角側最大傾斜ピーク接線aと広角側最大傾斜ピーク接線bを引き、接線aと接線bの交点から垂線cを引く。次いで接線aと垂線cとの角度θ1 、接線bと垂線cとの角度θ2 を求める。積層不整指数(IS )は
IS =tanθ2 /tanθ1 …… (1)
の値として求める。この指数(IS )は、ピークが完全対称な場合は1.0であり、非対称の程度が大きくなる程大きな値となる。
【0021】
従来の共沈法によるLAHSでは、面指数(016)及び(017)のIS は夫々2.3及び1.6であるのに対して、本発明のマイグレーション法によるLAHCではこれらのIS 値が1.0以下となっている。
【0022】
このことは、次のことを物語っている。
即ち、LAHCでは、既に述べたように、リチウムイオンが組込まれた水酸化アルミニウム八面体基本層がC軸方向に積み重ねられた積層構造となっているが、従来の共沈法ではC軸方向からみて各基本層が前後左右にずれた状態で積層されていると共に、基本層のサイズも小さくなっていることを示している。これに対して、本発明のマイグレーション法によるLAHCでは、C軸方向からみて各基本層が前後左右にほぼ重なった状態で積層され、基本層のサイズも大きくほぼ一定となっていることを示している。
【0023】
本発明のLAHCは、このように結晶性に優れているため、嵩密度が大きいという特徴を有し、従来のLAHCが、JIS K6721で測定して、0.08乃至0.15g/cm3 の嵩密度を示すのに対して、0.15乃至0.30g/cm3 、特に0.16乃至0.30g/cm3 と約2倍にも達する嵩密度を有する。
【0024】
また、従来のLAHCは、一般に20乃至40m2 /gのBET比表面積を示すのに対して、本発明のLAHCは5乃至15m2 /gと約半分のBET比表面積を有する。
【0025】
更に、吸油量も40乃至70ml/100gと小さく、樹脂や塗料への配合性に優れている。
【0026】
本発明のLAHCは、数式(2)
OD=I(002)/I(110) ……(2)
式中、I(002)は面間隔(d)7.67乃至7.84オングストロームに表れる面指数(002)のX線回折(Cu−Kα)ピークの相対強度を表し、且つI(110)は面間隔(d)4.41乃至4.45オングストロームに表れる面指数(110)のX線回折(Cu−Kα)ピークの相対強度を表す、
で定義される配向度(OD)が10以下であり、本発明者等が先に提案したLAHCの配向度(OD)が10以上であるのとは区別される。
【0027】
以上述べたとおり、本発明によるLAHCは、小さな容積での輸送及び貯蔵が可能であり、また取扱いに際して粉塵の発生も少なく、粉体としてのハンドリングに優れている。
【0028】
本発明のLAHCにおいては、顔料体積濃度が共沈法のが40乃至45%であったのに対して、一般に45乃至55%の範囲にある。尚顔料体積濃度とは、下記式で定義される値をいう。
Or:顔料の吸油量(ml/100g)
Bρ:樹脂の密度(g/cm3)
Pρ:顔料の密度(g/cm3)
この顔料体積濃度が高いと言うことは塗料中への又は樹脂への配合が多量に行えることを示している。尚、本発明において上記式の樹脂の密度とは、吸油量の測定に使用したDOPの密度(0.9861g/cm3 )である。
【0029】
更に、樹脂配合剤としての用途等においても、充填性、顔料性がよく、樹脂への分散性乃至は配合が容易であるという利点を与える。
【0030】
本発明のLAHCは、ギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子と、炭酸のリチウム塩または炭酸リチウムを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せとを水の存在下に反応させることにより製造される。
【0031】
この反応では、原料として用いる水酸化アルミニウムがギブサイト型結晶を有するため、反応系中で実質上不溶な状態に保たれ、もう一方の原料であるリチウムイオンがギブサイト構造の水酸化アルミニウム八面体層の空位(ベーカント)に移行して入り込み、ギブサイト型構造が母体乃至テンプレートとなってLAHCの合成が行われるという特徴がある
【0032】
この反応、所謂マイグレーション(migration) 反応は、図5に模式的に示されており、ギブサイトのAl(OH)3 八面体(シャドウで示す)の空位(vacancy…白で示す)にLiOH(上面をハッチで示す)が移行し、且つ層間炭酸アニオン(ボール・アンド・スティックで示す)が入り込んで、Li2 Al4 (OH)12CO3 ・3H2 Oの合成が行われることが示されている。
【0033】
本発明で原料に用いる水酸化アルミニウムは、ギブサイト型結晶構造を有することは必須であるが、微粒子であることがマイグレーション反応の点で重要であり、一般に平均粒径が0.5乃至5μm、特に0.5乃至3μmで且つ粒径20μm以上の粗粒分の含有量が2重量%以下、特に0重量%以下であるのがよい。平均粒径が上記範囲よりも大きいものや粗粒分の含有量が上記範囲よりも多いものでは、マイグレーションによるLAHCの生成が不完全なものとなりやすく、一方粒径があまりに微細になると非晶質傾向があってやはりマイグレーション反応には適さなくなる。
【0034】
原料として使用するギブサイト型水酸化アルミニウムの一例のX線回折像を図6に示す。図6(ギブサイト)と図1(LAHC)との対比から、LAHCでは面指数(002)のピークが低角度側に移行しており、面間隔が増大していること、即ち基本層間に炭酸根が導入されていることが明らかとなる。
【0035】
反応に際しては、リチウムイオンが水酸化アルミニウム八面体層の空位に移行させるための温度が必要であり、一般に70℃以上、特に80乃至130℃の反応温度が望ましい。一方、反応系のpHはギブサイト型水酸化アルミニウムを実質上溶解するものであってはならなく、9乃至13の範囲が適当である。
本発明の方法では、反応系における固形分濃度を10乃至20重量%の高濃度に維持して合成を行うことができ、生産性及びコストの点で多大の利点をもたらす。
【0036】
【発明の好適態様】
(LAHC及びその製法)
本発明で一方の原料として用いるギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子は市販の合成品、例えば昭和電工(株)製のハイジライトとして容易に入手し得る。
【0037】
このギブサイト型水酸化アルミニウムは、前述した粒度特性を有することが望ましいが、上記粒度範囲外のものでも、湿式粉砕等により上記粒度範囲に粒度調整して、本発明の反応に用いることができる。
【0038】
他方の原料としては、炭酸のリチウム塩または炭酸リチウムを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せが使用される。
【0039】
炭酸のリチウム塩としては、炭酸リチウム、重炭酸リチウム或いはこれらの混合物が挙げられるが、炭酸リチウムが塩類の副生がない点で、原料として最も好適なものである。
【0040】
炭酸のリチウム塩を使用する代りに、炭酸イオン及びリチウムイオンを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せを用いることができ、ここでリチウム化合物としては、水酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム等の水溶性リチウム化合物が使用され、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等が使用される。
【0041】
本発明の方法において、リチウム系原料等はギブサイト型水酸化アルミニウムに対して、当量或いは当量以上の量で用いるのがよく、一般には反応の効率がよいので、当量或いは当量よりも若干過剰の量で用いればよい。
【0042】
反応に際して、ギブサイト型水酸化アルミニウムと溶液の形のリチウム原料等とを水の存在下に接触させればよく、この際、原料の添加の順序には特に制限はなく、水酸化アルミニウムの水性懸濁液に、溶液の形或いは固体の形のリチウム原料等を添加しても、或いは逆にリチウム原料等の溶液に水酸化アルミニウムを添加しても、或いは水性媒体中に水酸化アルミニウムとリチウム原料等を同時注加してもよい。
【0043】
反応は、固形分濃度が比較的薄い水性媒体中で行うこともできるが、本発明のマイグレーション法では例えば10乃至20重量%の固形分濃度のような高濃度で合成を行い得ることが利点の一つであり、比較的小容積の反応容器を使用して能率よくLAHCを合成することができる。
【0044】
反応は、一般に70℃以上、特に80乃至130℃の温度で攪拌下に行うのが好ましく、反応圧力等には格別の制限はなく、一般に常圧下での反応で十分であるが、温度が100℃を越える場合には自生圧力のような加圧下であってもよい。
【0045】
反応系のpHは、水酸アルミニウムが実質上反応系に溶出しないようなものであり、特に制限はないが、一般に9乃至13の範囲にあるのがよい。
【0046】
反応時間は、反応温度によっても相違するが、一般に1乃至10時間程度で十分であり、比較的短時間の内にLAHCを合成することができる。
【0047】
本発明の方法では、水溶性リチウム化合物に由来する炭酸根以外のアニオン、例えば、塩素イオン、硝酸イオン等が共存する場合がある。しかしながら、この場合にも、リチウムアルミニウム複合水酸化物中には炭酸イオンが優先的に組込まれるので、特に問題を生じることはない。LAHC中の炭酸アニオンは、全アニオンの50モル%以上、特に80モル%を占めていることが望ましい。
【0048】
反応終了後、生成したLAHCは、濾過、デカンテーション、遠心分離等の固−液分離手段で分離し、必要により水洗、乾燥して製品とする。リチウム原料として、炭酸リチウムを使用する場合には、異種イオンの共存がないので、水洗工程を省略することもできる。
【0049】
また、生成したLAHCの表面の特性を改質するために、LAHCを含む反応生成物中に高級脂肪酸或いは界面活性剤を添加して、LAHCを攪拌下に処理することもできる。
【0050】
高級脂肪酸としては、炭素数10乃至22、特に14乃至18の飽和乃至不飽和脂肪酸、例えばカプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が使用される。ステアリン酸が好適なものである。脂肪酸は勿論牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の混合脂肪酸であってもよい。
【0051】
アニオン界面活性剤としては、たとえば第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、第1級高級アルキルスルホン酸塩、第2級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフエノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩等アニオン界面活性剤であれば如何なるものでもよい。これらの界面活性剤のより具体的な化合物名は、たとえば、堀口博著「合成界面活性剤」(昭 41 三共出版)に開示してある。
【0052】
ノニオン界面活性剤としては、HLBの低いノニオン界面活性剤、特にHLBが12以下、最も好適には8以下のものが使用され、一般に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー等の内からHLBが上記範囲内にあるものを使用する。例えば、これらのノニオン界面活性剤では一般に、ポリオキシエチレン単位の含有量が減少するとHLBが減少するので、エチレンオキサイドの付加モル数を調節することにより、所望のHLBのノニオン界面活性剤を入手することができる。
【0053】
脂肪酸或いは界面活性剤の添加量は、LAHC当たり0.5乃至10重量%、特に1乃至5重量%であるのがよい。
【0054】
処理条件は、特に制限されないが、一般に60乃至100℃の温度で0.5乃至5時間程度攪拌下に処理を行うのがよい。脂肪酸の場合、用いた脂肪酸は反応系中に存在するナトリウムイオンと反応してナトリウム石鹸の形で水相中に移行し、生成したLAHCの表面処理が進行する。アニオン界面活性剤においても、塩でない有利の酸を使用すれば同様の反応が生じる。
得られた表面処理LAHCはそのままで樹脂用配合剤として使用し得るが、必要に応じ有機及び無機の助剤により後処理することができる。
このような有機の助剤としては、例えば次のものが挙げられる。
【0055】
ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属石鹸、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、各種ワックス類、未変性乃至変性の各種樹脂(例えばロジン、石油樹脂等)等のコーテイング剤で表面処理して、安定剤及び樹脂配合剤として使用することができる。これらのコーテイング剤は、LAHC当たり0.1乃至10重量%、特に0.5乃至5重量%の量で用いるのがよい。
【0056】
また、無機系助剤としては、エアロジル、疎水処理エアロジル等の微粒子シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、カルシア、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、ハイドロタルサイト、A型、P型等の合成ゼオライト及びその酸処理物又はその金属イオン交換物から成る定形粒子をLAHCにブレンド乃至まぶして使用するか又はLAHC粒子表面に沈着させて使用することもできる。なお、特に無機系助剤で処理することによりLAHCの屈折率を調整することができる。これらの無機助剤はLAHC当たり、0.01乃至10重量%、特に0.1乃至5重量%の量で用いるのがよく樹脂の配合剤として用いたとき、使用する樹脂に屈折率を合わせることができる。
【0057】
本発明により生成したままのLAHCの結晶は、合成条件等によっても相違するが、0.5乃至3モル程度(m)の水分を含有しているが、このものを300℃以下の温度で加熱乾燥して部分乃至完全脱水させることができる。
本発明によるLAHCは、前述した化学組成、結晶構造及び物性を有する。
【0058】
本発明によるLAHCの一例の電子顕微鏡写真を図7(倍率5000倍)及び図8(倍率10000倍)に示す。これらの写真から、本発明によるLAHCは、六角板状の多晶結晶であり、粒子の厚みが原料ギブサイト粒子に比して増大している。
また、この粒子は、レーザー散乱回折法で測定して、一般に0.2乃至10μm、特に0.5乃至6μmの体積基準メジアン径(D50)を有している。
【0059】
本発明のLAHCの赤外吸収スペクトルを図9に示す。この図9から明らかな通り本発明のLAHCは、波数547,735,1004,1375及び3443(cm-1)に大きな赤外線吸収特性スペクトルを有しており、農業用フィルム、特に温室用フィルムの赤外線吸収剤として有用である。
【0060】
(樹脂配合剤及び樹脂組成物)
本発明によるLAHCは、熱可塑性樹脂に対する樹脂配合剤、特に塩素キャッチヤー、熱安定剤、赤外線吸収剤、アンチブロッキング剤等として有用である。
【0061】
本発明によれば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、一般に0.01乃至10重量部のLAHSを配合する。配合量は勿論上記範囲内で樹脂の種類や用途に応じ適宜選定する。
本発明の一つの好適態様では、塩素含有重合体に、該重合体100重量部当たり、0.1乃至10重量部、特に0.5乃至1.0重量部の量で配合して用いるのがよい。
【0062】
塩素含有重合体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩素化ビニル−塩化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑化ポリ塩化ビニル等の重合体、及びこれらの塩素含有重合体とポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテンなどのα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、などのポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレンと他の単量体(例えば無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体とのブレンド品などを挙げることができる。
【0063】
この場合、塩素含有重合体100重量部当たり0.01乃至10重量部の脂肪酸亜鉛及び0.01乃至10重量部のβ−ジケトン或いはβ−ケト酸エステルを併用するのが望ましい。
【0064】
脂肪酸亜鉛としては前に例示したものが使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、従来この用途に公知のもの、例えば、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。
【0065】
勿論、本発明によるLAHCは、それ自体公知の各種添加剤、例えば非金属系安定剤、有機錫系安定剤、塩基性無機酸塩等の他の安定剤乃至は安定助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、造核剤、エポキシ安定剤、等を併用することができる。
特に後述するポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートのような結晶性樹脂の成形においては各種の造核剤を添加剤に併用され、透明性の向上や耐衝撃性の向上、成形サイクルの短縮及び寸法安定性の向上をもたらすものである。
【0066】
また塩素含有樹脂系においては、種々の安定剤との組合せ使用は可能であり、例えば有機錫安定剤との組合せ使用が好適であり、有機錫化合物としては、有機錫メルカプタイド類、有機錫サルファイド類、有機錫メルカプタイド・サルファイド類、有機錫メルカプトカルボキシレート類及び有機錫カルボキシレート類が包含される。
(1)有機錫メルカプタイド類としては、ジブチル錫ビス(ラウリルメルカプタイド)、ジメチル錫ビス(ステアリルメルカプタイド)、ジオクチル錫ビス(メルカプトエチル・トール油脂脂肪酸エステル)、ジオクチル錫ビス(2−メルカプトエチルカプリレート)、ジブチル錫ビス(メルカプトエチル・トール油脂脂肪酸エステル)、ジメチル錫ビス(メルカプトエチルステアレート)、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(ドデシルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(テトラデシルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(ヘキサデシルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(オクタデシルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(C12-16 混合アルキルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジメチル錫ビス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、ビス(2−メルカプトカルボニルエチル)錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ビス(2−ブトキシカルボニルエチル)錫ビス(ブチルチオグリコレート)等のジ有機錫メルカプタイド及びモノブチル錫トリス(ラウリルメルカプタイド)、モノブチルモノクロロ錫ビス(ラウリルメルカプタイド)、モノオクチル錫トリス(2−メルカプトエチルカプリレート)、モノブチル錫トリス(メルカプトエチル・トール油脂肪酸エステル)、モノメチル錫トリス(メルカプトエチル・トール油脂肪酸エステル)、モノメチル錫トリス(メルカプトエチルラウレート)、モノメチル錫トリス(メルカプトエチルステアレート)、モノメチル錫トリス(メルカプトエチルオレート)、モノオクチル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)モノオクチル錫トリス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(ドデシルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(ドデシルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(テトラデシルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(ヘキサデシルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(C12-16 混合アルキルチオグリコレート)、モノオクチル錫トリス(オクタデシルチオグリコレート)、モノブチル錫トリス(イソオクチルチオグレコレート)、モノブチル錫トリス(イソオクチルメルカプトプロピオネート)、モノメチル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、モノメチル錫トリス(テトラデシルチオグリコレート)、2−メトキシカルボニルエチル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、2−ブトキシカルボニルエチル錫トリス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)等のモノ有機錫メルカプタイドがあげられる。
(2) 有機錫サルファイド類としては、メチルチオスタノイック酸、ブチルチオスタノイック酸、オクチルチオスタノイック酸、ジメチル錫サルファイド、ジブチル錫サルファイド、ジオクチル錫サルファイド、ジシクロヘキシル錫サルファイド、モノブチル錫サルファイド、オキサイド、2−メトキシカルボニルエチル錫サルファイド、2−エトキシカルボニル錫サルファイド、2−ブトキシカルボニル錫サルファイド、2−イソプロポキシカルボニルエチル錫サルファイド、ビス(2−メトキシカルボニルエチル)錫サルファイド、ビス(2−プロポキシカルボニルエチル)錫サルファイド等があげられる。
(3)有機錫メルカプタイド・サルファイド類としては、ビス〔モノブチル・ジ(イソオクトキシカルボニルメチレンチオ)錫〕サルファイド、ビス〔ジブチルモノ(イソオクトキシカルボニルメチレンチオ)錫〕サルファイド、ビス〔ビス(2−メトキシカルボニルエチル)錫イソオクチルチオグリコレート〕スルファイド、ビス(メチル錫ジイソオクチルチオグリコレート)ジサルファイド、ビス(メチル/ジメチル錫モノ/ジイソオクチルチオグリコレート)ジサルファイド、ビス(メチル錫ジイソオクチルチオグリコレート)トリサルファイド、ビス(ブチル錫ジイソオクチルチオグリコレート)トリサルファイド、ビス〔メチル錫ジ(2−メチルカプトエチルカプリレート)サルファイド、ビス〔メチル錫ジ(2−メルカプトエチルカプリレート)〕ジサルファイド等があげられる。
(4)有機錫メルカプトカルボキシレート類としては、ジブチル錫−β−メルカプトプロピオネート、ジオクチル錫−β−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫メルカプトアセテート、ビス(2−メトキシカルボニルエチル)錫チオグリコレート)錫チオグリコレート、ビス(2−メトキシカルボニルエチル)錫メルカプトプロピオネート等があげられる。
(5)有機錫カルボキシレート類としては、モノ又はジメチル錫、モノ又はジブチル錫、モノ又はジオクチル錫あるいはモノ又はビス(ブトキシカルボニルエチル)錫のオクトエート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステレート、イソステアレート等の脂肪族一価のカルボキシレート類:マレートポリマー、ブチルマレート、ベンジルマレート、オレイルマレート、ステアリルマレート等のマレート;及びこれらの混合塩あるいは塩基性塩があげられる。
【0067】
可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤等のエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、塩素系可塑剤などがあげられる。
【0068】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などがあげられる。
【0069】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオンネート類及びペンタエリスリト−ルテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
【0070】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどがあげられる。
【0071】
紫外線吸収剤としては例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類があげられる。
【0072】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、例えば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレートなどがあげられる。
【0073】
難燃剤としては、
・テトラブロモビスフェノールA(TBA)
・2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン
・ヘキサブロモベンゼン(HBB)
・トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(TAIC−bB)
・2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモ・フェニル)プロパン(TBA−EO)
・デカブロモジフェニルオキシド(DBDPO)
・デカブロモジフェニルエーテル(DBDE)
・1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン(PBPE)
・N,N´−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(ETBP)
・1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン
・2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−〔2,3−ジブロモプロポキシ〕フェニル)プロパン(TBA−BP)
・ビス(3,5−ジブロモ−4−〔2,3−ジブロモプロポキシ〕フェニル)(TBS−BP)
・ポリジブロモフェニレンオキシド
・ビス(トリブロモフェノキシ)エタン
・エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド
・ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン
・ジブロモネオペンチルグリコール
・2,4,6−トリブロモフェノール
・トリブロモフェニルアリルエーテル
・テトラブロモビスフェノールS
・テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン
・2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン
・ポリ(ペンタブロモベンジル)・アクリレート
・トリブロモスチレン
・トリブロモフェニルマレイミド
・トリブロモネオペンチル・アルコール
・テトラブロモジペンタエリスリトール
・ペンタブロモベンジルアクリレート
・ペンタブロモフェノール
・ペンタブロモトルエン
・ペンタブロモフェニルオキシド
・ヘキサブロモシクロドデカン
・ヘキサブロモジフェニルエーテル
・オクタブロモフェノールエーテル
・オクタブロモフェニルエーテル
・オクタブロモジフェニルオキシド
・ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート
・ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド
・N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン
含ハロゲンポリホスフェート
芳香族臭素化合物
臭素化エポキシ樹脂
臭素化ポリスチレン
【0074】
造核剤としては、アルミニウム−p−第三ブチルベンゾエート、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートカルシウム塩、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート塩基性アルミニウム塩などがあげられる。
【0075】
エポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化魚油、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、トリス8エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシル−6−メチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどがあげられる。
【0076】
本発明の他の典型的用途では、オレフィン系樹脂に対してハロゲン系触媒残渣等による樹脂劣化を防止する目的で配合する。本発明の配合剤は、オレフィン系樹脂100重量部当たり0.01乃至10重量部の量で用いるのがよい。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、低−・中−・高密度の或いは線状低密度のポリエチレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低密度エチレン−ブテン−1共重合体、低密度エチレン−ヘキセン−1共重合体を挙げることが出来る。
【0077】
【実施例】
本発明を次の例で説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明で使用する各種の測定方法は以下によった。
【0078】
(1)X線回折
理学電機(株)製のRAD−IBシステムを用いて、Cu−Kαにて測定した。
ターゲット Cu
フィルター 湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器 SC
電圧 40KVP
電流 20mA
カウントフルスケール 700c/s
スムージングポイント 25
走査速度 1°/min
ステップサンプリング 0.02°
スリット DS1° RS0.15mm SS1°
照角 6°
【0079】
(2)積層不整指数(Is)
Isは下記式で定義される。
Is=tanθ2/tanθ1 … (1)
式中、θ1は一定の面間隔のx線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク接線とがなす角度を表し、θ2は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピーク接線とがなす角度を表す。
【0080】
(3)配向度(OD)
配向度(OD)は下記式で定義される。
OD=I(002)/I(110)
式中、I(002)は格子定数7.67乃至7.84オングストローム付近に出る(002)面のCu−KαX線回折線ピークの相対強度であり、I(110)は格子定数4.41乃至4.45オングストローム付近に出る(110)面の同じくX線回折線図ピークのピーク相対強度である。
【0081】
(4)平均粒径
平均粒径(メジアン径;μm)はコールターカウンター社製のレーザー回折型粒子サイズアナライザー(コールターR LS130)を用いて測定した。
【0082】
(5)見掛比重
JISK−6721に準拠して測定した。
【0083】
(6)吸油量
JISK−5101−19に準拠してDOPを用いて測定した。
【0084】
(7)比表面積
カルロエルバ社製Sorptomatic Series1800を使用し、BET法により測定した。
【0085】
(8)定数X及びm
JIS R9011の石灰の化学分析法に準拠して、Al/Liのモル比を測定し、250℃、3時間による原料よりmを算出した。
PVC樹脂による評価
次いで得られた試料(LAHC)を樹脂安定剤として評価する為、試料のLAHSを配合させた塩化ビニールシートを作成し、試料の分散性、塩素捕捉能及びシートの透明性を以下の方法で測定した。
【0086】
(9)成型法(PVCシート)
(配合)
塩化ビニル樹脂(重合度:1050) 100重量部
ジオクチルフタレイト 50重量部
ラウリン酸亜鉛 0.3重量部
ジベンゾイルメタン 0.1重量部
ジヒドロキシフェニールプロパン 0.2重量部
試料 1.4重量部
(成型方法)
上記配合組成物を150℃、5分間ロールミル混練を行い、厚さ0.5mmの均一な混和物を作成し、次いで温度160℃、圧力150kg/cm2 、5分間加圧加熱し、厚さ1mmの軟質塩化ビニルシートを作製した。
【0087】
(10)熱安定性(塩素捕捉能)
JIS K6723に準拠し、試料シートを1mm×1mmに裁断し、コンゴーレッドを装着した試験管に試料チップ2gを充填、180℃に加熱し、塩化ビニルの熱分解によるHCl離脱時間を測定した。
【0088】
(11)透明性(透過率)
試料シートの白色光透過率は、平間理化研究所製のフォト・エレクトロニック・フィルターフォトメーターを用いて測定した。
【0089】
(12)分散試験
上記成型シートに付き、肉眼で分散性を評価した。
ニコン製双眼偏光顕微鏡(Optiphoto−PolXTP)を用いて制限視野像中の試料シート中に存在する粒子径40μm以上の単位面積当たりの粒子数(個/mm2 )を求めた。
【0090】
(13)赤外線吸収スペクトル
日本分光(製)のFTIR−8000を使用して測定した。
ポリオレフィン樹脂による評価
本発明の樹脂安定剤によるハロゲン残留触媒残滓を含むポリプロピレン樹脂の黄化防止効果及び防錆効果を確認するために、以下の配合、成型などの手法によりポリプロピレンシートを作成し、評価試験を行った。
【0091】
上記配合組成物を押し出し機を用いて210℃でペレットにし、このペレットを260℃のダイ温度でインフレーション製膜法で厚さ50乃至60μmのフィルムに成型し、以下の物理特性を測定した。
【0092】
(15)耐黄化及び熱老化試験
上記成型シートを85℃、90%RHの恒温恒湿層に入れ24日間放置した。この成型シートの表面色相を日本電色工業製の色差計 Model 1001DPにより測定し、N値(黄色度)を求めた。N値が小さい程耐黄化性に優れている。この試験の結果を表2に示す。
【0093】
[実施例1]
本発明による高結晶性でデンス(重質)なリチウムアルミニウム複合水酸化物塩(LAHS)の調製は以下の通りである。
LAHSの製法とその特性
10リットルのステンレス容器内の3.5リットルイオン交換水中に、アルミナ(Al2 O3 )としての濃度が10%(以後ことわりのない限り重量%を意味する)になるように平均粒径1.4μmのギブサイト型水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH−42)617.5gと炭酸リチウム148.6gを加え、攪拌下に90℃に昇温させ、4時間反応させた。得られたLAHCの固形分濃度は16%で、反応終了pHは10.5であった。次いで攪拌加温下にステアリン酸ナトリウム18.2gを加え、約2時間の表面処理を行い、濾過後、110℃で乾燥させ、さらに粉砕分級させて617gのLAHS粉末を得た。それを試料No.1とし、物性を表1に示した。尚、本実施例における反応系の全アルミニウム原子当たりの炭酸イオンは0.17モル数であった。また、以下得られた試料No.1乃至5の密度は1.971であった。
【0094】
[実施例2]
実施例1において、炭酸リチウムの代わりに、炭酸ソーダと塩化リチウムを使用した以外は実施例1と同様にしてLAHS粉末を得、試料No.2とした。尚本実施例では濾過後、十分にイオン交換水で洗浄を行った。物性を表1に示す。
【0095】
[実施例3]
ギブサイト型水酸化アルミニウムを分級させ、平均粒径0.6μmで20μm以上が0.5%及び平均粒径が4.8μmで20μm以上が1.8%の水酸化アルミニウムを調製し、これを原料に使用した以外は実施例1と同様にして、LAHC粉末を得、試料No.3、No.4とした。尚、本実施例で得られたLAHCの固形分濃度は11.5%と18.5%であった。物性を表1に示す。
【0096】
[実施例4]
平均粒径0.6μmで20μm以上が1.8%のギブサイト型水酸化アルミニウムの分級品を原料に使用し、反応温度を130℃の水熱処理を行った以外は実施例1と同様にしてLAHC粉末を得た。尚反応時間は2時間で終了させた。これを試料No.5とした。物性を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
市販のギブサイト型水酸化アルミニウムで、平均粒径が4.8μmで20μm以上が4.5%である以外は、実施例1と同様にしてLAHC粉末を調製し、その試料No.H−1とした。物性を表1に示す。
【0098】
[比較例2]
比較例1において、平均粒径6μmで20μm以上が4.5%である以外は、実施例1と同様にしてLAHC粉末を調製し、それぞれ試料No.H−2、H−3とした。物性を表1に示す。
【0099】
[比較例3]
水酸化ナトリウム(NaOH含量が96%)24.08g炭酸ナトリウム(Na2 CO3 含量99%)3.73gを攪拌下蒸留水2.3リットルに加えて、これを40℃に加温する。次いで、この水溶液にCO3 /Liのモル比が0.7、Al/Liのモル比が2.0になるように塩化アルミニウム(Al2 O3 として20.48%)49.78gを蒸留水250mlに加えて調製した水溶液を徐々に注加した。注加終了後のpHは10.1であった。さらに攪拌下90℃の温度で15時間反応を行った。得られた反応懸濁液を濾過、水洗し、蒸留水に分散させ、固形分2.33%のLAHSスラリーを得た。次いでオレイン酸をLAHS固形分に対し、5%添加し攪拌下表面処理反応を行った。その後、濾過し60℃に乾燥させ、次いで小型サンプルミルにて粉砕し、配向増強処理リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(LAHS)を得た。これを試料No.H−4とした。物性を表1に示す。尚、試料No.H−4の密度は1.971g/cm3 であった。
【0100】
[比較例4]
水酸化ナトリウム(NaOH含量96%)24.08gと炭酸ナトリウム(Na2 CO3 含量99%)2.13g及び炭酸リチウム(LiCO3 含量99%)3.73gを攪拌下の蒸留水2.3リットルに加えて、これを40℃に加温する。次いで、この水溶液にCO3 /Liのモル比が2.0になるように塩化アルミニウム(Al2 O3 として20.48%)49.78gを蒸留水250mlに加えて調製した水溶液を徐々に注加した。注加終了後のpHは10.1であった。さらに攪拌下90℃の温度で15時間反応を行い固形分濃度3.5%のLAHSスラリーを得た。反応終了後、ステアリン酸1.1gを加え、攪拌下に表面処理反応(配向増強処理)を行った。得られた反応懸濁液を濾過し、水洗し70℃で乾燥し、小型サンプルミルで粉砕し、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩(LAHS)を得た。この試料をNo.H−5とした。物性を表1に示す。尚、試料No.H−5の密度は1.969g/cm3 であった。
【0101】
[実施例5]
ポリプロピレン樹脂粉末(三井石油化学(株)製ハイポールF657P)100重量部に対し2.6ジターシャリーブチルパラクレゾール0.15部、ステアリン酸カルシウム0.1部及びAB剤として配合剤を徐々に加え、スーパーミキサーで1分混合後、1軸押出機を用いて混練温度230℃で溶融混合してペレット化した。このペレットをTダイ成型により原反フィルムを作成し、次いで二軸延伸型成型機を用いて縦方向に6倍、更に横方向に12倍に延伸し厚さ15μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムについて以下の試験を行い、その結果について以下の試験を行い、その結果に付いて表3に示した。
ヘーズ :JIS K6714に基づいて、日本電色(株)製オートマチックデジタルヘイズメーターDH−20Dにより測定した。
ブロッキング性:2枚のフィルムを重ね、200g/cm2 の荷重をかけ40℃で24時間放置後、フィルムのはがれ易さにより以下のように評価した。
◎ 抵抗なくはがれるもの
○ ややはがれにくもの
△ はがれにくいもの
× 極めてはがれにくもの
フィッシュアイ:光学顕微鏡により、フィルム400cm2 中の0.1mm以上の個数で示した。
スクラッチ性 :断面10×10のフィルムに10kgの荷重をかけ3回すり合わせた前後のヘーズの差から求めた。
【0102】
[実施例6]
下記配合の組成物を150℃で6分間ロール混練した後170℃で5分間プレスして厚さ1mmのシートを作成塩ビ樹脂の初着防止性及び熱安定性について評価した。作成したシートから試験片を作成し、JIS K−6723に準拠し体積抵抗率試験(V・R)及び熱安定性試験(H・T)〔コンゴウレッド試験紙〕、又同じ条件で混練した後190℃15分間プレスして厚さ1mmのシートを作成しシートの着色性(白色度、色差、黄色度)を測定した。その結果、H・Tが90(分)、V・Rが1.0×1013、Wが88.8、△Eが8.3△N9.9であった。なお初着防止剤を使用しないもののH・Tは137(分)、V・Rは0.83×1013であった。
(配合)
ポリ塩化ビニル樹脂 100重量部
DOP 50重量部
エポキシ化大豆油 3重量部
LAHS 1.3重量部
ステアリン酸亜鉛 0.4重量部
ビスフェノールA 0.2重量部
初着防止剤(1・4ブタンジオールビス) 0.1重量部
尚シート着色性(白色度W、色差△E、黄色度△N)は日本電色工業1001DP色差計を用いて測定した。
【0103】
[実施例7]
本実施例では本発明のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩の微粉末からなる試料No.1の樹脂用安定剤(LAHS)を特に高耐熱性高温域で用いられる塩素化塩化ビニル樹脂に添加した場合の熱安定効果について説明する。
本発明の樹脂安定剤による塩素化塩化ビニル樹脂の熱安定効果を確認するために、以下の配合、成型等の手法により硬質シートを作成し、評価試験をおこなった。
(配合)
塩素化塩化ビニル樹脂 100重量部
メルカプトSn系安定剤 0.70重量部
エステル系ワックス 1.00重量部
試料 1.05重量部
(成型法)
上記配合組成物を160℃、7分間ロールミル混練を行い、厚さ0.4mmの均一な混和物を作成し、180℃、圧力150kg/cm2 、5分間加圧加熱し、厚さ1mmの塩素化塩化ビニル板を作成した。
(試験方法)
熱安定持続時間
試料板を190℃に調製したギヤ式熱老化試験機に吊るし入れ、10分毎に取り出してその着色度を目視判定し、焦茶色に分解するまでの時間を測定し、着色度を5段階評価で示した。得られた試験結果を表4に示す。
尚、比較例として試料抜きの配合、試料として、ハイドロタルサイト及びステアリン酸カルシウムを配合した試料板を同様に評価しし、合わせて表4に示した。この結果から、本発明によるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩微粉末から成る安定剤は塩素化塩化ビニル樹脂に添加された場合、他の安定剤に比較し卓越した安定化効果を発揮する事が理解される。
特にノーマルな塩化ビニルに優れた安定効果を与えるハイドロタルサイトおよびステアリン酸カルシウムは塩素化塩化ビニルに対してはかえって安定効果を妨げることも理解される。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、結晶が高度に発達しており、嵩密度が大きくしかも顔料性に優れているリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩及びその製法が提供される。
このリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩は、熱可塑性樹脂、特にオレフィン系樹脂の、安定剤、アンチブロッキング剤、赤外線吸収剤等の配合剤として有用である。従って、本発明によれば、このリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩を含む樹脂組成物をも提供される。
さらに、上記製法は、反応系における原料の濃度を高濃度に保ちながら比較的短時間の内に合成を行うことができるので、生産性及びコストの点で優れているので、該製法は工業的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるLAHCのX線回折像である。
【図2】比較例4によるLAHSのX線回折像である。
【図3】本発明によるLAHCのX線回折像の面指数(016)及び(017)のピークの拡大図である。
【図4】比較例4によるLAHSのX線回折像の面指数(016)及び(017)のピークの拡大図である。
【図5】マイグレーション反応の模式図である。
【図6】原料のギブサイト型水酸化アルミニウムの一例のX線回折像である。
【図7】本発明のLAHCの粒子構造を表す倍率5000倍の電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明のLAHCの粒子構造を表す倍率10000倍の電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明のLAHSの赤外線吸収スペクトルのチャートである。
Claims (12)
- 平均粒径が0.5乃至5μmであり且つ粒径20μm以上の粗粒分の含有量が2重量%以下であるギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子を使用し、該ギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子と、炭酸のリチウム塩または炭酸イオン及びリチウムイオンを形成し得るリチウム化合物と炭酸塩との組合せとを水の存在下に反応させることを特徴とするリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩の製法。
- リチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩が実質上化学式
〔Al2Li(OH)6〕nX・mH2O …(1)
式中、Xは炭酸アニオンまたは重炭酸アニオンを主体とするアニオンであり、
nはアニオンの価数であり、mは3以下の数である、
で表される組成を有する請求項1記載の製法。 - 反応を70℃以上の温度及び9乃至13のpHで行なう請求項1乃至2の何れかに記載の製法。
- 反応系中におけるギブサイト型水酸化アルミニウムの微粒子の濃度を10乃至20重量%の高濃度に維持して反応を行う請求項1乃至3の何れかに記載の製造法。
- 実質上、化学式
〔Al2Li(OH)6〕nX・mH2O …(1)
式中、Xは炭酸アニオンまたは重炭酸アニオンを主体とするアニオンであり、
nはアニオンの価数であり、mは3以下の数である、
で表される組成を有し、且つ下記
面間隔d(A) ピーク強度 面指数
7.50乃至7.64 大 (002)
4.30乃至4.44 小 (110)
3.70乃至3.84 大 (004)
2.45乃至2.58 中 (006)
2.20乃至2.30 小 (016)
1.85乃至2.08 小 (017)
1.40乃至1.52 小 (330)
1.38乃至1.48 小 (600)
のX線回折像を有するリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩において、下記数式
IS=tanθ2/tanθ1 …(1)
式中、θ1は一定の面間隔のX線回折ピークにおけるピーク垂線と狭角側ピーク
接線とがなす角度を表し、θ2は該ピークにおけるピーク垂線と広角側ピー
ク接線とがなす角度を表す、
で定義される積層不整指数(IS)が面指数(016)のピークにおいて1.0以下であり且つ面指数(017)のピークにおいて1.0以下であることを特徴とするリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩。 - 数式
OD=I(002)/I(110) …(2)
式中、I(002)は面間隔(d)7.67乃至7.84オングストローム
に表れる面指数(002)のX線回折(Cu−Kα)ピークの相対強度
を表し、且つI(110)は面間隔(d)4.41乃至4.45オング
ストロームに表れる面指数(110)のX線回折(Cu−Kα)ピーク
の相対強度を表す、
で定義される配向度(OD)が10以下である請求項5記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩。 - JIS K6721で測定した嵩密度が0.15乃至0.30の範囲にあることを特徴とする請求項5または6記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩。
- レーザー散乱回折法で測定して0.2乃至10μmの粒径を有する請求項5乃至7の何れかに記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩。
- 請求項5乃至8の何れかに記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩から成る樹脂配合剤。
- 請求項5乃至8の何れかに記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩から成り且つ波数3443cm−1を中心に波数547,735,1004及び1375cm−1の各赤外線領域に特性吸収スペクトルを有する赤外線吸収剤。
- 請求項5乃至8の何れかに記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩から成り且つフィルム厚が15乃至30μmの熱可塑性樹脂フィルムに使用されるアンチブロッキング剤。
- 熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100重量部当たり0.01乃至10重量部の請求項5乃至8の何れかに記載のリチウムアルミニウム複合水酸化物炭酸塩とから成ることを特徴とする樹脂組成物。
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