JPH05305691A - 親水性被膜ならびにその被膜の形成方法 - Google Patents

親水性被膜ならびにその被膜の形成方法

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JPH05305691A
JPH05305691A JP11044392A JP11044392A JPH05305691A JP H05305691 A JPH05305691 A JP H05305691A JP 11044392 A JP11044392 A JP 11044392A JP 11044392 A JP11044392 A JP 11044392A JP H05305691 A JPH05305691 A JP H05305691A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 二酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄などの平
均粒子径5μm以下の無機物質を含むケイ素のアルコキ
シドの溶液を金属の表面に塗布し、焼成し、さらにその
上にケイ素のアルコキシドの溶液を塗布し、焼成するこ
とにより形成した親水性被膜ならびにその形成方法。 【効果】 熱交換器の凝縮器などに要求される親水性お
よび水流れ性を有し、しかもアルカリ金属珪酸塩を含ま
ないため苛酷な使用条件においても長期間にわたって性
能の変化が起こらない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ルームエアコン、カー
エアコンなどの熱交換器の蒸発器における、フィンなど
に使用される金属板であって、とくに長期間にわたって
安定な耐蝕性および親水性表面を有する金属被膜ならび
にその被膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】一般に熱交換器、特に空気調節
器の蒸発器などにおいては、フィンの表面温度が大気の
露点以下になるためにフィンの表面に水が結露する。こ
の様な水分の付着は、熱交換される空気の流通抵抗の増
大をもたらすことによる熱交換性能の低下をはじめ、送
風に起因する騒音の発生、水滴の飛散などの様々の問題
の原因となる。
【0003】これらの問題点を解決することを目的とし
て、フィンの表面に親水性を付与し付着水の流れを良く
することにより、空気の流路の閉塞を防ぐことが一般的
に行われている。例えば、特開昭50−38645号明
細書には、アルニミウム表面をアルカリ金属炭酸塩とア
ルカリ金属クロム酸塩とを含有する溶液に浸漬し、被覆
し、さらにアルカリ金属酸化物と二酸化ケイ素とを含む
溶液に浸漬し、アルミニウム表面に連続した、粗い、多
孔性かつ親水性のコーティングを形成する方法が開示さ
れている。
【0004】特開昭62−235477号明細書には、
アルミニウム表面をアルカリ金属珪酸塩と無機硬化剤と
水溶性有機高分子化合物を含む溶液でコーティングし親
水性被膜を形成する方法が開示されている。
【0005】特開昭62−272099号明細書には、
アルミニウムからなる部品の表面に、シラノール基を有
する化合物とポリビニルピロリドンを含有する水性媒体
中に浸漬する方法が開示されている。
【0006】特開平1−208475号明細書には、ク
ロメート処理を施し、つぎに正リン酸を含むアルカリ金
属珪酸塩水溶液を塗布した後、さらに正リン酸溶液を塗
布し、しかる後加熱乾燥する方法が開示されている。
【0007】既述のように公開特許明細書に記載された
具体的方法について明らかにしたが、いずれの方法もア
ルカリ金属珪酸塩の呈する水との親和性をその根本原理
としており、被膜の耐久性の向上を図るために、無機硬
化剤や有機高分子成分を添加するなどにより耐久性の改
良を企図しているものということができる。また、同時
に表面を予め多孔質とし親水性を有する膜と基材との付
着性を強化することも試みられている。
【0008】このようなアルカリ金属珪酸塩の特性を利
用して付与された親水性は、その目的を充分に達成して
おり実用上においても広く使用されているものである。
しかしながら、この様な親水化被膜を長時間にわたり水
と接触させておくと、アルカリ金属珪酸塩の卓越した水
への溶解性のために、被膜の親水性の機能を発揮する部
分が消滅するという問題を生じることがある。また、カ
ーエアコンなどの閉鎖性の強い空間での使用において
は、人体の呼気に含まれる炭酸ガスあるいは有機物質と
アルカリ金属珪酸塩との反応による、炭酸塩の形成によ
る膜の変化または有機分解物による異臭を発生すること
も問題である。さらに有機高分子化合物を被膜の構成材
料の一部とするものにおいては、通常の使用条件ではそ
れほどの高温に曝されることはないものの長期間におけ
る耐熱性において不安を残している。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前述した問
題点を解決するために、有機化合物を被膜の構成材料と
せず、また長期間にわたりその親水性が本質的に変化す
ることのない被膜を金属表面に形成する方法について鋭
意検討を加えたところ、平均粒子径5μm以下の無機物
質および少なくともシリカを含有する膜の上にさらに少
なくともシリカを含有する膜を有する被膜が実用上必要
な親水性と同時に苛酷な条件、例えば、加熱水中におい
ても長時間にわたり安定であることを見出し本発明に到
った。
【0010】すなわち、本発明は、平均粒子径5μm以
下の無機物質および少なくともシリカを含有する膜の上
にさらに少なくともシリカを含有する膜を有する被膜で
あり、また平均粒子径5μm以下の無機物質と少なくと
もアルコール類などの有機溶媒に可溶な酸化ケイ素また
はケイ素のアルコキシドまたはその加水分解物を有機溶
媒に溶解した溶液を塗布し、乾燥し、焼成することによ
り平均粒子径5μm以下の無機物質および少なくともシ
リカを含有する膜を形成し、さらにその上に少なくとも
シリカを含有する膜を形成してなる親水性被膜の形成方
法である。
【0011】ところで、金属アルコキシドを基体の表面
に塗布し、焼成することは従来から各種の目的のもとに
様々の研究が行われ、いろいろの用途に利用されてお
り、そのなかにはほとんど本発明の方法と同様のように
見受けられるが、全く反対の目的、すなわち、基体の表
面を疎水化して防汚性を付与することを目的とするもの
も見られる。したがって、本発明においては金属アルコ
キシドを含む特定の組成からなる被膜形成用溶液を使用
することが必要であり、第1層目において使用する塗布
液は平均粒子径5μm以下の無機物質および少なくとも
焼成したときにシリカとなり得る可溶性のケイ素または
ケイ素のアルコキシドまたはその加水分解物とを含有す
る混合物であり、また第2層目において使用する塗布液
は少なくとも焼成したときにシリカとなり得るケイ素の
アルコキシドまたはその加水分解物とを含有してなる溶
液でなければならない。
【0012】本発明の被膜はアルカリ金属の珪酸塩は勿
論、アルカリ金属をも使用せず、それらの溶出による水
中での長期にわたる安定性の欠如を来すことはない。本
発明の被膜は、機械的強度が大きく、多孔性を有し、か
つ長期の安定性を保つことのできる親水性の膜である。
被膜の表面は図1に示すように微細な凹凸で覆われてい
ることが認められ、この凹凸が親水性の発現に関与して
いることと考えられる。しかしながら、図1において認
められる微粒子に起因する凹凸のみが本発明の親水性に
寄与しているのではなく、むしろ図1によっては確認す
ることの困難なさらに微細な細孔またはクラックが親水
性の主たる原因と考えられる。この微細な細孔の生成原
因は明確ではないが、第1層目の膜が焼成により形成さ
れるときにシリカ成分は収縮するにも拘わらず、固形分
は収縮しないため部分的に応力を残しながら膜となるた
めに、このような微細な細孔が表面に大きな密度で発生
するものと考えられる。
【0013】細孔を有する多孔質物質においては、水は
自身の表面張力により内部に浸透し、マクロには表面に
液体を接触させた場合の接触角の低さ、または表面に水
滴を滴下したときの広がりとして親水性を示すことが観
察される。本発明の被膜は、この様な機構による親水性
を示すと同時に、主にケイ素よりなる膜それ自身の表面
エネルギーに起因する親水性を併せ有するものである。
【0014】第1層目の膜の形成は、凹凸および微細な
細孔を発生させる主たる要因であるが、凹凸およびクラ
ックは膜自身の基材への付着強度を低下させる要因とも
なるものであり、使用条件によっては好ましくない場合
がある。また、著しい多孔性を予定してきわめて激しい
凹凸を付けた場合には、膜状を維持できず、固形分が剥
落することもある。
【0015】そこで、本発明者らはこのような被膜の上
にさらに固形分を含有しない膜を被覆することで、著し
い凹凸を有する被膜の優れた親水性を損なうことなく、
しかも固形分の剥落を防止することに成功したものであ
る。すなわち、第2層目の膜においてはそれ自身多孔性
を発生させることよりも、むしろ第1層目の凹凸、クラ
ックのうち膜の剥離、固形分の剥落に関与する不都合な
部分の付着性を向上させることを目的とし、これに加
え、表面エネルギーに依存する膜自身の親水性の改善を
も目的とするものである。
【0016】本発明の第1層目の膜における平均粒子径
5μm以下の無機物質の被膜中における組成は、3〜4
0wt%が好ましく、10〜30wt%がより好まし
い。ここで、各成分のwt%はすべての成分が酸化物と
なったとした場合における重量%とする。3wt%以下
の場合、膜は充分な凹凸および前記の微細孔を形成せ
ず、望ましい親水性を発現することなく、また40wt
%以上のときは膜の強度が低くなり、また粒子の剥落が
起こるため取扱い上好ましくない。
【0017】本発明の第1層目の膜における固形分であ
る平均粒子径5μm以下の無機物質としては、アルコー
ルまたは水への溶解性を実質上呈さない物質であればよ
いが、炭酸カルシウム、TiO2(ルチル、アナター
ゼ)、弁柄、α−酸化鉄、γ−酸化鉄、マグネタイト、
酸化クロム、二酸化マンガン、ミネラルファストエロ
ー、ネープルスエロー、カドミウムレッド、カドモポ
ン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、リトポンなどの顔料、マ
イカ、シリカ粒子、アルミナ、タルク、SiC、Si 3
4、BN、TiNなどのセラミックス微粒子、Si
C、Si34、BNのセラミックウィスカー、アスベス
ト、グラスウール、石英ウール、アルミナウール、シリ
カアルミナウール、チタン酸カリなどの繊維状物質およ
びこれらの混合物などが使用でき、顔料として微粒子化
されたものは好適である。微粒子の粒子径の分布はとく
に狭い必要はなく、0.05〜5μm程度に広く分布す
る方が好ましい。また繊維状物質の場合直径は0.05
〜5μm程度が好ましく、長さは100μm以下が好ま
しい。
【0018】本発明の被膜を形成するのに用いられる固
形分以外の成分の原料は、焼成処理により実質的に酸化
物を形成しうる金属化合物であればよく、膜の強度、製
膜性に優れた効果を有するSi、Al、Zr、Pb、Z
n、Fe、B、Ti、Snなどの化合物などであり、一
般的には当該金属の塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、硫
酸塩、有機酸塩、水酸化物、アルコキシ化合物またはこ
れらの水和物もしくは加水分解物が挙げられる。これら
およびこれら以外の金属の2種以上を同時に使用するこ
とも可能である。以下に主な金属について具体的な化合
物を挙げるが他の金属の場合においても同様の対応する
化合物が一般的に使用できる。
【0019】本発明におけるケイ素のアルコキシドは一
般式 Si(OR1)(OR2)(OR3)(OR4)、S
iCl(OR1)(OR2)(OR3)、SiCl2(OR
1)(OR2)またはSiCl3(OR1)(ただし、式中
1、R2、R3、R4はメチル基、エチル基、ノルマルプ
ロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカン
ダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基ま
たはフェニル基のいずれかを示す。)で表されるアルコ
キシ化合物またはその加水分解物であって、特にテトラ
エトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプ
ロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、テ
トラノルマルブトキシシラン、テトラターシャリブトキ
シシランなどまたはその加水分解物が好ましい。
【0020】また、本発明におけるアルコール類などの
有機溶媒に可溶な酸化ケイ素には、一般にコロイダルシ
リカと称する物が著名であるが、アルコール類に溶解さ
せた場合に溶解するかもしくは均一に分散するものであ
ればよい。
【0021】Al原料としてAlCl3 、Al2(SO4)
3 、Al( NO3)3 、ラウリル酸アルミニウム、ステア
リン酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウム等のAl
塩またはそれらの含水塩、もしくはポリ塩化アルミニウ
ム、ベーマイトのようなAlの水酸化物、または一般式
Al( OR1)( OR2)( OR3)、AlCl (OR1)(
OR2)、AlCl2(OR1)(ただし、式中R1 、R2
3 はメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマル
ブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エ
トキシエチル基またはフェニル基のいずれかを示す。)
で表されるアルコキシ化合物であって、特にトリエトキ
シアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、ト
リノルマルプロポキシアルミニウム、トリセカンダリブ
チルアルミニウム、クロロジイソプロポキシアルミニウ
ム、クロロジセカンダリブチルアルミニウム、ジクロロ
イソプロポキシアルミニウム、ジクロロセカンダリブチ
ルアルミニウム等が挙げられる。
【0022】Ti原料としてTiCl4 、TiO Cl
2 、Ti( NO3)4 、TiO(NO3)2等のTi塩または
それらの含水塩、もしくは一般式 Ti( OR1)( OR
2)( OR3)( OR4)、TiCl( OR1)( OR2)( OR
3)、TiCl2(OR1)( OR2)またはTiCl3(OR1)
(ただし、式中R1 、R2 はメチル基、エチル基、ノル
マルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、
セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチ
ル基またはフェニル基のいずれかを示す。)で表される
アルコキシ化合物のうち、テトラエトキシチタン、テト
ラノルマルプロポキシチタン、テトライソプロポキシチ
タン、テトラノルマルブトキシチタン、クロロトリエト
キシチタン、ジクロロジノルマルブトキシチタン、トリ
クロロノルマルブトキシチタン等もしくはジブトキシチ
タンアセチルアセトナート、イソプロポキシジチタンオ
クチレングリコレートが挙げられる。
【0023】また、Zr原料としてZrCl4 、ZrO
Cl2 、Zr( NO3)4 、ZrO(NO3)2 、ステアリン
酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、2−エチル
ヘキサン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセト
ナート等のZr塩またはそれらの含水塩、もしくは一般
式 Zr( OR1)( OR2)( OR3)( OR4)、ZrCl
( OR1)( OR2)( OR3)、ZrCl2(OR1)( OR2)
またはZrCl3(OR 1)(ただし、式中R1 、R2 はメ
チル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル
基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシ
エチル基、エトキシエチル基またはフェニル基のいずれ
かを示す。)で表されるアルコキシ化合物のうち、テト
ラエトキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジ
ルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テト
ラノルマルブトキシジルコニウム、クロロトリエトキシ
ジルコニウム、ジクロロジノルマルブトキシジルコニウ
ム、トリクロロノルマルブトキシジルコニウム等が挙げ
られる。
【0024】第1層目の被膜形成に使用される塗布薬液
の濃度は、溶液に占める固形分以外の金属の比率とし
て、0.1〜5mol/l が好ましいが、0.4〜2
mol/l がより好ましい。固形分以外の金属濃度が
0.1mol/l よりも低いと1回の塗布操作におい
て形成される膜が薄いものとなり、繰り返し塗布に要す
る回数が増え実用上不都合となる。一方5mol/lよ
り高い場合はチョーキング(粉吹き現象)や過大な体積
収縮のため膜の剥離が生じることがあるため好ましくな
い。しかしながら、必ずしもこの濃度条件でなければな
らないという訳ではなく、添加物、溶媒の種類により粘
度の調節は可能である。
【0025】第2層目の被膜形成に使用される塗布薬液
の濃度は、溶液に占める金属の比率として、0.1〜5
mol/lが好ましいが、0.3〜1mol/lがより
好ましい。金属濃度が0.1mol/lよりも低いと1
回の塗布操作において形成される膜が薄いものとなり、
繰り返し塗布に要する回数が増え実用上不都合となる。
また逆に金属濃度が5mol/lよりも高い場合には、
第1層目の親水性の原因である微細な細孔を充填し、親
水性を損ない、さらに剥離を発生させるなどという不利
益がある。しかしながら、必ずしもこの濃度条件でなけ
ればならないという訳ではなく、添加物、溶媒の種類に
より粘度の調節により膜厚を調整することは可能であ
る。
【0026】濃度調節用の溶媒にはアルコール類を用い
るのがよく、メタノール、エタノール、i−プロパノー
ル、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノー
ル、t−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエ
タノール、エチレングリコールなどが例示でき、これら
の2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0027】この時得られる親水性被膜の膜厚は、第1
層目は0.1〜10μmが好ましく、0.3〜5μmが
より好ましい。細孔容積は膜厚にほぼ比例するので膜厚
が0.1μmよりも薄い膜では、金属表面の凹凸の生成
効果、親水性の付与効果が充分でなく、一方、10μm
よりも厚い膜では微粒子の剥落が著しくなり、また剥離
が生じやすく好ましくない。また、第2層目は0.05
〜2μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。
0.05μm以下では充分な固形分の剥落防止効果が得
られず、2μmより厚い場合には第1層目の親水性の原
因である微細な細孔を充填し、親水性を損ない、さらに
剥離を発生させるなどという不都合があり好ましくな
い。
【0028】第1層目および第2層目はそれぞれ1回の
塗布で形成することも複数回で形成することも可能であ
る。本明細書において第1層目または第2層目という用
語は単に被膜形成操作上の第1回目、第2回目の塗布ま
たは膜の形成をいうのではなく、それぞれの構成の異な
った膜を単位としていうものである。
【0029】薬液の基板上への塗布は、浸漬法、スプレ
ー法、ローラーコート法、フローコート法、スクリーン
印刷法、刷毛塗り等の方法により行うが、第2層目は浸
漬法が好ましい。
【0030】親水性表面を有する金属の種類は、熱伝導
性、化学的安定性、機械的強度などをもとに使用条件を
考慮して選択されるが、鉄、アルミニウム、アルミニウ
ム合金、銅、真鍮、ステンレスなどが好ましく、それら
の形状は板状、波板状または中空コイル状のものが一般
的であるが、各種の金属またはセラミックスを積層した
ものや複合したものに親水性を付与することも当然可能
である。
【0031】本発明の被覆方法においては基板の表面を
各種の前処理を施すことは有用である。機械研磨、電気
研磨、酸洗浄、アルカリ洗浄、水洗浄あるいは有機溶剤
による脱脂洗浄などはいずれの金属にたいしても有効で
ある。アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合には
当分野において周知の技術である、アルマイト処理、ク
ロメート処理あるいは亜鉛、チタン、ジルコニウムなど
の燐酸塩による化成処理などが耐蝕性、被膜の付着性の
向上を目的として使用することもできる。さらに本発明
の目的を逸脱しない範囲においては、有機高分子化合物
による前処理を適用できる場合もある。
【0032】各種方法により形成された塗膜は、50〜
200℃で5〜30分間乾燥および仮焼成し、電気炉に
より300℃以上で10〜60分間焼成することにより
強固な被膜となるが、2回以上の操作を行う場合は、仮
焼成のみで引き続き塗布操作を施し最終段階のみ300
℃以上で焼成し優れた親水性表面を有する金属を得るこ
ともできる。しかしながら、第1層目と第2層目の間に
おいては仮焼成のみではなく300℃以上で焼成をおこ
なうことが好ましい。焼成温度の上限はとくに限定する
必要はないが、ステンレス鋼においては、約500℃以
下が好ましい。
【0033】以下に実施例によりさらに詳しく本発明を
説明する。
【0034】
【実施例】実施例1 攪拌機を具えた500ccの三ツ口フラスコに、無水エ
タノール150gを入れ、攪拌しながらオキシ塩化ジル
コニウム8水和物64.4gを投入し、溶液が透明にな
った後、さらにエタノールを添加し1.0mol/lの
オキシ塩化ジルコニウム溶液を調整した。ついで、攪拌
機を具えた2Lの三ツ口フラスコに、SiO2換算2
0.0wt%のテトラエトキシシランのエタノール溶液
500gを入れ、攪拌しながら前記のオキシ塩化ジルコ
ニウム溶液の210ccを添加し、1時間攪拌を続けた
後、平均粒子径0.2μmのルチル型酸化チタン 1
6.8gを投入し、それをさらにSiO2とZrO2の濃
度が1.0mol/lになるように、エタノール約12
00ccで希釈し、第1層目の塗布用溶液を調整した。
【0035】第2層目塗布用の0.3mol/lのテト
ラエトキシシランのエタノール溶液は、SiO2換算2
0.0wt%のテトラエトキシシランのエタノール溶液
(コルコート(株)製)をエタノールで希釈して調整し
た。
【0036】第1層目の塗布用溶液を500ccガラス
製ビーカーに取り、その中へ50x100x0.2mm
のSUS304製の試料片を投入し、次いで試料片を4
mm/secの一定速度で塗布用溶液から引き上げ、空
気中、70℃で20分間乾燥し、さらに電気炉により空気中
150℃で20分間仮焼成し、室温まで冷却した。
【0037】ついで、再度同様の塗布、乾燥を繰り返
し、その後さらに5℃/minの速度で200℃から4
50℃に昇温し、20分間そのまま保持し、電気炉から
取り出し放冷した。
【0038】第2層目の塗布用溶液を500ccガラス
製ビーカーに取り、その中へ第1層目の膜を被覆したS
US304製の試料片を投入し、次いで試料片を4mm
/secの一定速度で塗布用溶液から引き上げ、空気
中、70℃で20分間乾燥し、その後さらに5℃/minの
速度で200℃から450℃に昇温し、20分間そのま
ま保持し、電気炉から取り出し放冷したところ、白色の
被膜が形成された試料片が得られた。
【0039】被覆処理を施した試料について次の評価試
験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。 耐酸性試験: ガラス製の1Lビーカーに1重量%
塩酸溶液をいれ、その中に試料を浸漬し、室温で24時
間放置した。時間の経過後試料を流水により洗浄し、表
面状態の観察を目視により行った。評価は全く変化の見
られない物を○、クラックや剥離を認められるものを×
とし、中間を△とした。
【0040】 耐溶剤試験: ガラス製の1Lビーカ
ーにアセトンをいれ、その中に試料を浸漬し、室温で2
4時間放置した。時間の経過後試料を流水により洗浄
し、表面状態の観察を目視により行った。評価は全く変
化の見られない物を○、クラックや剥がれの見られるも
のを×とし、中間を△とした。
【0041】 水割れ試験: 蒸留水を入れたビーカ
ーに試料を10秒浸漬し、速やかに引き上げた際の水の
切れ方を評価し、水滴の全く見られないものを○、全面
にわたり水滴以外に濡れた部分の認められない場合を
×、その中間を△とした。
【0042】 濡れ拡がりの測定: 試料の表面にマ
イクロシリンジで5μlの蒸留水を静かに滴下し、5秒
後における水滴の拡がりをノギスで測定した。また、親
水性の加速試験としての温水浸漬試験は、経時変化につ
いては45℃の蒸留水に浸漬し、所定時間経過後、槽よ
り取り出し、ついで80℃で恒量になるまで乾燥し、室
温に冷却した上で前記の測定を行った。
【0043】それぞれの測定結果は表1に示す。被膜の
濡れ拡がり性および水割れ試験において比較例と比べ極
めて優れた親水性を有することは明白である。
【0044】
【表1】
【0045】実施例2 攪拌機を具えた2Lの三ツ口フラスコに、SiO2換算
20.0wt%のテトラエトキシシランのエタノール溶
液(コルコート(株)製)500gを入れ、それに35
%塩酸約1ccと水50ccを添加し50℃において3
時間還流下に攪拌した。ついで、攪拌しながら大日精化
(株)製の黒色顔料#9590(CuO、Fe2O、C
23などの0.5〜2μmの粒子径を有する混合物)
を25g投入し、それをさらにSiO2の濃度が1.2 m
ol/lになるように、エタノール約900ccで希釈
し、黒色の第1層目膜の塗布用溶液を調整した。
【0046】この塗布用溶液を500ccガラス製ビー
カーに取り、その中へ50x100x0.2mmのSU
S304製の試料片を投入し、次いで試料片を4mm/
secの一定速度で塗布用溶液から引き上げ、空気中、
70℃で20分間乾燥し、さらに電気炉により空気中で5℃
/minの速度で200℃から500℃に昇温し、20
分間そのまま保持し、電気炉から取り出し放冷すると、
黒色の被膜が形成された試料片が得られた。
【0047】第2層目の塗布用溶液を500ccガラス
製ビーカーに取り、その中へ第1層目の膜を被覆したS
US304製の試料片を投入し、次いで試料片を4mm
/secの一定速度で塗布用溶液から引き上げ、空気
中、70℃で20分間乾燥し、その後さらに5℃/min
の速度で200℃から450℃に昇温し、20分間その
まま保持し、電気炉から取り出し放冷した。被膜の表面
の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0048】被覆処理を施した試料について実施例1と
同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確
認した。結果は表1に示す。被膜の濡れ拡がり性および
水割れ試験において比較例と比べ極めて優れた親水性を
有することは明白である。
【0049】実施例3、4、5 実施例1と同様の方法により、表1の各欄に示す原料、
溶媒を用い被膜を形成し、実施例1と同様の評価を行っ
た結果を同表に示す。弁柄は粒子径0.4〜0.8μm
の物を用いた。いずれの場合も被膜の濡れ拡がり性およ
び水割れ試験において比較例と比べ極めて優れた親水性
を有することは明白である。
【0050】比較例1、2、3 実施例1、2、4とそれぞれ同様の第1層膜を被覆した
試料について実施例1と同様の試験を行った。結果は表
2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】比較例4 珪酸ソーダの1.0mol/lの水溶液を用いて、実施
例1と同様の被膜形成をおこなった。結果は表2に示
す。
【0053】
【発明の効果】本発明の被膜は、実施例の結果を示す表
1から明らかなように、熱交換器の蒸発器などに要求さ
れる親水性および水流れ性を有し、しかもアルカリ金属
の珪酸塩や有機物を含まないため苛酷な使用条件におい
ても長期間にわたって性能の変化しない親水性を発現す
るという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の試料の走査型電子顕微鏡写真であ
る。
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】 実施例2の基板上に形成された薄膜の走査型電子顕微鏡
写真である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒子径5μm以下の無機物質および
    少なくともシリカを含有する膜の上にさらに少なくとも
    シリカを含有する膜を有する親水性被膜。
  2. 【請求項2】 無機物質が少なくとも二酸化チタン、酸
    化クロム、酸化鉄から選ばれる1種以上を含有する混合
    物もしくは単一の物質である請求項1記載の親水性被
    膜。
  3. 【請求項3】 金属表面の少なくとも一部が請求項1ま
    たは請求項2記載の親水性被膜を有してなる熱交換器ま
    たは蒸発器。
  4. 【請求項4】 少なくともケイ素のアルコキシドまたは
    その加水分解物と平均粒子径5μm以下の無機物質とを
    含有してなる溶液を基材の表面に塗布、焼成して形成
    し、その上に少なくともケイ素のアルコキシドまたはそ
    の加水分解物を含有してなる溶液を基材の表面に塗布、
    焼成して形成することを特徴とする請求項1または請求
    項2記載の親水性被膜の形成方法。
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