JP4952052B2 - 親水性被膜及びその被膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、親水性被膜及びその被膜の形成方法、特に超親水性を有する被膜及びその被膜の形成方法に関する。
親水性材料は、文字とおり水とのなじみが良いという特性を有するために、多くの分野で利用されている。親水性材料の表面では水は水滴状、いわゆる中途半端な球状とならないので見かけの透明性を確保でき、さらには表面に付着した油性汚れでも水と共に洗い流すことが可能なため、例えば防汚ガラスとして注目されている。また、いわゆる界面での濡れ特性が向上するので、その境膜発生メカニズムの違いを利用することにより伝熱特性を促進させることも可能である。しかし、その性質上、バルク材としての親水性材料よりも親水性材料を被膜化した利用が多くの場合に有用である。このような状況の下、より親水性の良好な被膜が求められている。一般的に、親水性は純水接触角の大きさで表され、約50度以下の純水接触角を有する場合は親水性ありと判断されることが多い。しかし、近年では特に超親水性と呼ばれる被膜が世の中から求められている。この超親水性は、純水接触角で30度以下、さらには10度以下で定義されることが多いが、より小さな純水接触角を有する超親水性被膜が望まれている。
大きな親水性、すなわち純水接触角が30度以下、さらには純水接触角が10度以下の被膜を形成することができれば、その応用範囲は広い。例えば、酸性雨、硫化ガス及び二酸化炭素等の増加を始めとする昨今の種々の地球環境の悪化から、例えば窓ガラスの汚染がひどくなる状況にある。窓ガラスの汚染がひどくなると、ガラス自体の強度が損なわれるばかりか、室内が暗くなるので室内照明のための電気代が増加する。また、省エネルギや紫外線劣化防止のため、ガラス表面に施した赤外線・紫外線反射膜の効果も損なわれる。しかし、例えば高層ビルの窓ガラスの場合、その洗浄は容易ではない。また親水膜を付与した窓ガラスでは、その表面に付着した堅固な汚れを水と共に洗い流すことできるので、主に高層ビルの窓ガラス等にメンテナンスフリーの窓ガラスとして採用され始めている。
また、ヒートパイプの性能向上及び/又は小型化も期待できる。ヒートパイプは、その内部に存する液体の蒸発と凝縮による潜熱を利用することにより加熱又は冷却の効果を得るが、より効率的に加熱又は冷却を行うためには蒸発部ではより親水性であることが望ましい(例えば、特許文献1)からである。
なお、親水性を向上させる方法としては、種々の方法が考えられ、開示されている。例えば、アルミニウム表面をアルカリ金属炭酸塩とアルカリ金属クロム酸塩とを含有する溶液に浸漬し、被覆し、さらにアルカリ金属酸化物と二酸化ケイ素とを含む溶液に浸漬し、アルミニウム表面に連続した、粗い、多孔性かつ親水性被膜のコーティングを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
また、アルミニウム表面をアルカリシリケート(アルカリ金属ケイ酸塩)と無機硬化剤と水溶性有機高分子化合物を含む溶液でコーティングすることにより親水性被膜を形成する方法(例えば、特許文献3)が、アルミニウムからなる部品の表面に、シラノール基を有する化合物とポリビニルピロリドンを含有する水性媒体中に浸漬することによる親水性付与の方法(例えば、特許文献4)が、クロメート処理を施し、つぎに正リン酸を含むアルカリシリケート(アルカリ金属ケイ酸塩)水溶液を塗布した後、さらに正リン酸溶液を塗布し、しかる後加熱乾燥することによる親水性被膜形成方法(例えば、特許文献5)が開示されている。
さらには、本出願人も基材の最外表面に形成したシリカ被膜であって、ケイ素のアルコキシドを有機溶媒に溶解した溶液又はその加水分解物から生成され、該シリカ被膜の表面に無機物質に起因する凹凸とともに微細な細孔又はクラックを有することを特徴とする被膜及びその形成方法に関する出願を行っている(例えば、特許文献6、7)。
既述のように公開特許公報に記載された具体的方法について明らかにしたが、いずれの方法もアルカリシリケート(アルカリ金属ケイ酸塩)の呈する水との親和性をその根本原理としており、実用上要求される被膜の耐久性の向上を図るために、無機硬化剤や有機高分子成分を添加するなどにより耐久性の改良を企図しているものということができる。また、同時に表面を予め多孔質とし親水性を有する膜と基材との付着性を強化することも試みられている。
また、酸化チタンの光誘起超親水化現象を利用した親水性被膜も近年使われるようになり、例えば自動車のドアミラーに貼るフィルムや自動車のボディコート等、世の中に受け入れられている(例えば、特許文献8)。
一方、昨今の環境問題の高まりから、貝殻の利用に関する研究が行われ、その特異的な焼成貝殻の特性が最近発見され、注目を浴びている。その貝殻の多くは産業廃棄物として埋め立てられているが、その廃棄量が膨大であることから近年、自治体を始めとした研究機関や企業において、その有効利用策が検討されている。その一つに貝殻焼成カルシウムのもつ消毒効果がある。
貝殻焼成カルシウムは、貝殻を焼成して得られるカルシウム主体の新しい材料である。貝殻焼成カルシウムに関する研究の結果、前述した消毒効果の他、消臭効果や抗菌性の増大効果が知られている(例えば、特許文献9)。
貝殻焼成カルシウムは、それ自身カルシウム源として食品への添加の他、病原菌、細菌等の駆除剤用、野菜や果樹の残存農薬の洗浄用、医薬品用あるいは漆喰等の建築用壁材等に用いられている。なお、貝殻焼成カルシウムは、国連の食料農業機関(FAO)および世界保健機構(WHO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)において、食品への添加の一日摂取許容量が非制限とされていることから明らかなように、その安全性は食品としても問題がない。さらには、一種の廃棄物であることから、その有効利用は産業発展に寄与すると同時にコスト的にも充分対応し得る材料である。
特開平5−164342号公報 特開昭50−38645号公報 特開昭62−235477号公報 特開昭62−272099号公報 特開平1−208475号公報 特開平5−302173号公報 特開平5−305691号公報 WO96/29375号公報 特開2000−72610号公報
親水性が極めて良好な、例えばその純水接触角が30度以下、好ましくは10度以下の親水性被膜の出現が期待されているが、実用に耐えうる親水性被膜はほとんどない。親水性被膜と称していても、そのほとんどは純水接触角が30度を越えている。また、純水接触角が30度以下の親水性被膜の場合でもすぐにその特性が下がり、実用的な使い方では数日程度しか持たない親水性被膜も多い。
酸化チタンの光触媒効果を利用したWO96/29375号公報に例示されている被膜は有用なものといえるが、光触媒は紫外線や可視光線等の照射により発現するので、太陽光暴露もしくは紫外線ランプ等による照射が必要で、例えば熱交換器フィン等ように微細で複雑な構造の材料に適用するのは簡単ではない。また、実用レベルにある親水性被膜といっても、そのコストが非常に高く、現実的な社会利用性はほとんどない。このように、純水接触角が30度以下で保持される親水性被膜は極めて少なく、まして純水接触角が10度以下で保持される親水性被膜は現実的にはないというのが現状である。
すなわち、特開平5−164342号公報で開示されたヒートパイプにおいて、親水膜といっても純水接触角が32度以上のものである。また、特開昭50−38645号公報、特開昭62−235477号公報、特開昭62−272099号公報、特開平1−208475号で開示されたアルカリシリケート(アルカリ金属ケイ酸塩)の特性を利用して付与された親水性膜は広く使用されているものであるが、この様な親水性被膜を長時間にわたり水と接触させておくと、アルカリシリケート(アルカリ金属ケイ酸塩)の有する水への強い溶解性のために、徐々に被膜の親水性の機能を発揮する部分が消滅するという問題を生じることがある。また、カーエアコンなどの閉鎖性の強い空間での使用においては、人体の呼気に含まれる炭酸ガスあるいは有機物質とアルカリシリケートとの反応による、炭酸塩の形成による膜の変化または有機分解物による異臭やカビ発生からのシックハウス等の問題もある。さらに有機高分子化合物を被膜の構成材料の一部とするものにおいては、通常の使用条件ではそれほどの高温に曝されることはないものの長期間における耐熱性において不安を残している。しかし、従来使われてきたアルカリシリケートを単独で使う手法は、初期の親水性に対する効果は認められるが、微量の水への溶解性、すなわち自己溶解性のために、長期の耐久性にはなはだ劣るものであった。
また、特開平5−302173号公報や特開平5−305691号公報の方法においても、良好な純水接触角の親水性被膜を得ることはできるが、24時間経過の時点ですら特性低下が認められるように、まだ社会的にニーズに対して十分に対応できているとは言えない。さらに、酸化チタンの光誘起超親水化現象を利用したWO96/29375号公報の親水性被膜においても、複雑な機械装置に組み込む事が困難でかつ高価であるという問題点を含むと同時に、上述の問題を十分に満足しているとは言えないものである。
一方、貝殻焼成カルシウムについての研究が進み、消毒効果や消臭効果さらには抗菌性を増大させる効果等があることは知られているが、特開2000−72610号公報によってもその他の応用例は少なく、まだまだ不明の点が多く、その特性が確認されているとは言い難い状況下にある。
上記の問題点を鋭意検討し、その課題解決するに鑑みたところ、その発明に至ったものであり、従来にはなかった親水性、その保持性並びにコストを含めたその産業利用性が極めて大きいものである。
すなわち、基材の最外表面に形成されるアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムを含む被膜であって、その純水接触角が30度以下である親水性被膜である。
また、該被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの和が30〜100wt%にある前述の親水性被膜である。
また、該被膜は第1層目と第2層目からなり、該被膜の第1層目の主体は貝殻焼成カルシウム、第2層目の主体はアルカリシリケートである前述の親水性被膜である。
また、該被膜において、アルカリシリケートが最外層に配されている前述の親水性被膜である。
また、該被膜の厚さが1〜300μmである前述の親水性被膜である。
また、該アルカリシリケートはリチウム、ナトリウム、カリウムのいずれかからなるアルカリシリケートである前述の親水性被膜である。
また、該アルカリシリケートのSiO2/M2O(M:アルカリ金属)のモル比が1〜8の範囲からなる前述の親水性被膜である。
また、該貝殻焼成カルシウムとして用いる貝殻は、ホタテ貝、アワビ、カキ及びウバガイから少なくとも1種類以上が選択されている前述の親水性被膜である。
また、該貝殻焼成カルシウムの平均粒径が0.1〜100μmである前述の親水性被膜である。
さらに、前述の該親水性被膜を形成するにあたり、貝殻焼成カルシウムを塗布する工程、アルカリシリケートを塗布する工程及び加熱する工程のそれぞれを少なくとも1回以上有する親水性被膜の形成方法である。
さらにまた、基材に貝殻焼成カルシウムを塗布する工程の後にアルカリシリケートを塗布する工程を有する前述の親水性被膜の形成方法である。
さらにまた、加熱する工程においては、200〜500℃の温度範囲で加熱する工程を有する前述の親水性被膜の形成方法である。
本発明による親水性被膜は、熱交換器の凝縮器などに要求される親水性を有し、苛酷な使用条件においても長期間にわたって性能の変化しない親水性や抗菌、防カビ、脱臭機能を発現するという効果を有する。
基材の最外表面に形成されるアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムを含む被膜であって、その純水接触角が30度以下である親水性被膜である。基材の最外表面に形成されるとしたのは、本発明の親水性がその効果を最大限に発揮するのが、基材の最外表面であるからである。基材の最外表面とは、単に物理的な基材の最外表面という意味に加え、親水性を始めとする諸物性が要求される基材の上層であるという意味も含んでいる。アルカリシリケートを含むとしたのは、アルカリシリケートが有する基本的な親水性に対するという特徴に基づくものである。また、貝殻焼成カルシウムを含むとしたのは、貝殻焼成カルシウムの防カビ、抗菌、脱臭機能を有することと特異な構造が有する基材とリチアシリケートアルカリシリケートとの物理的・化学的結合性および付着性・親和性、そのものがもつ親水性等に代表される特徴に基づくものである。また、その純水接触角が30度以下である親水性被膜としたのは、その純水接触角が30度を超えると、所定の親水性が得られないからである。より好ましくは20度以下、さらに好ましくは10度以下である。ここで、純水接触角が30度以下として以下を用いたのは、例えば純水接触角が5度よりも小さくなると、高精度の測定は難しくなるが、極めて0度に近い純水接触角の親水性被膜をも含むからである。なお、純水接触角の測定は、JISR3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準じて行われる。
なお、基材としては、熱伝導性、化学的安定性、機械的強度、耐久性等を始めとする要求される各種の使用条件を考慮して選択されるが、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、ステンレススチールに代表される金属、金属合金、ガラスや陶磁器に代表されるセラミックスはもちろんのことサーメットや炭素材料、各種建築部材や車輌用部材、電子材料部材等、リチアシリケートと貝殻焼成カルシウムを含む被膜が付着できるものであれば、何でも基材としての応用は可能である。また、板状でも、曲面形状でも、中空コイル状でも、さらには不織布を始めとする繊維状のものでも一般的に使用されているものであれば、その形状には限定されない。さらには、各種の材料を積層したものや複合したものでも良い。
アルカリシリケートとは一般的なアルカリ金属珪酸塩を言い、アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウムを代表とするアルカリ金属から選ばれることが好ましい。より好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属である。リチウム、ナトリウム、カリウム以外のアルカリ金属でも良いが、その要求特性に対してコストが高くなりすぎかつその特性が偏るので、リチウム、ナトリウム、カリウムの単独又はそれを混合したアルカリ金属が用いられる。なお、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリシリケートの中でも、リチアシリケートがさらに好ましい。
本発明で用いる貝殻焼成カルシウムとは、焼成前の主成分が炭酸カルシウムである貝殻を焼成することで、二酸化炭素を取り除く脱炭酸化が徐々に進むことにより得られる、酸化カルシウム(CaO)もしくは、酸化カルシウムと炭酸カルシウムの混在したものである。その貝殻焼成カルシウムの成分については、特に限定はないが、炭酸カルシウムの一部が酸化カルシウムに変換できれば良く、本発明においては、具体的には、貝殻の主成分である炭酸カルシウムと、それを焼成することにより得られる酸化カルシウム、もしくは、酸化カルシウムと炭酸カルシウムの混在したもの又はそれぞれの混合状態(酸化カルシウムと炭酸カルシウムを混合)で用いることが好ましい。炭酸カルシウムと酸化カルシウム、各成分の割合は焼成温度及び焼成時間により異なり、適宜、調整することができる。
なお、貝殻焼成カルシウムは、例えば従来の薬品から作られた酸化カルシウム、あるいは酸化カルシウムと炭酸カルシウムの混合物等とは全く異なることに注意しなければならない。本発明は、貝殻焼成カルシウムとアルカリシリケートとの組み合わせに限定されるものであり、従来の薬品から作られた酸化カルシウム、あるいは酸化カルシウムと炭酸カルシウムの混合物等では所定の効果を得ることはできない。もちろん、貝殻焼成カルシウムに従来の薬品を添加することは構わないが、あくまで貝殻焼成カルシウムを有することが前提となる。
親水性被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの和が30〜100wt%にあることが好ましい。該被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの和が30wt%未満であると、親水性、耐久性、表面平滑性等の要求を全て得ることが極めて難しくなる。なお、該被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの和が100wt%であることは、全く問題はない。なお、より好ましくは50〜100wt%、さらに好ましくは60〜100wt%である。本発明の被膜を形成するために、アルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムが主体的に使われるが、それ以外の成分の原料を使うことも可能である。但し、上述したように、その混入量についての限定はある。
貝殻焼成カルシウム以外の物質としては、一般的な無機粉末や鉱物性粉末を使用することも可能である。例えば、無機粉末としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、けいそう土、バーミュキュライト、ヒル石、ゼオライト、弁柄、酸化チタン、焼成顔料等やシリカゾル、アルミナゾル等があるが、これらに限定されるものではない。
親水性被膜中には、アルカリシリケートと貝殻カルシウムが両方とも含まれていることが必要だが、アルカリシリケートが1〜99wt%、又は貝殻焼成カルシウムが1〜95wt%含有されていることが好ましい。該被膜中のアルカリシリケートが1〜99wt%含有としたのは、アルカリシリケートが1wt%よりも少ないと、被膜の親水性が低減する問題が発生するからである。一方、アルカリシリケートが99wt%を越えると被膜の耐久性の問題が発生する。より好ましくは20〜80wt%、さらに好ましくは30〜60wt%である。また、該被膜中の貝殻焼成カルシウムが1〜95wt%含有としたのは、貝殻焼成カルシウムが1wt%よりも少ないと耐久性の問題が発生するからである。一方、貝殻焼成カルシウムが95wt%を越えると被膜の親水性の問題が発生する。より好ましくは20〜80wt%、さらに好ましくは30〜60wt%である。
親水性被膜の厚さは1〜300μmであることが好ましい。該親水性被膜の厚さは1〜300μmとしたのは、該親水性被膜の厚さが1μm未満であると、親水性の付与効果が充分でないという問題が発生するからである。一方、該親水性被膜の厚さが300μmを越えると、表面平滑性の他、クラックや剥離発生の問題が発生する。より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmである。ここで、上述の値は平均的な値を示している。貝殻焼成カルシウムは一般的には0.1〜100μmの大きさを有し、かつ複雑な形状をしているため、アルカリシリケートのみでは被膜の厚さを均一とすることができないためである。前述したように、親水性被膜の厚さは一様ではないことが多いが、本発明の親水性被膜での最薄部の厚さは上述の値の約1割程度である。なお、親水性被膜は、1回の塗布で上述した主たる2層を形成することも可能であるし、複数回に分けた塗布で2層以上からなる多層膜を形成することも可能である。
本発明を実施するに当たり、アルカリシリケートや貝殻焼成カルシウムを溶かした溶液を用いるが、その濃度が調節されていることが好ましい。上述の親水性被膜の厚さに有用となる場合が多いからである。濃度調節用の溶媒には水もしくはアルコール類・一般有機溶媒を用いるのがよく、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、酢酸エステル、カルボン酸、低級炭化水素、脂肪族、芳香族等の一般溶剤が例示できる。また、これらの2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
該被膜は第1層目と第2層目からなり、被膜の第1層目の主体は貝殻焼成カルシウム、第2層目の主体はアルカリシリケートであることが好ましい。ここで、第1層目とは主に基材に接触している層を指し、第2層目とは主に第1層の上にある層をいう。第1層目の主体が貝殻焼成カルシウムであることにより、強力な基材との付着力を有し、複雑な表面を形成して、比表面積を増大させ、イオン交換機能や触媒機能を有して水の表面吸着性を増大させ親水性を長時間維持する、いわゆる耐久性が増加する。第1層目の上に位置する第2層目の主体がアルカリシリケートであることにより、熱処理により焼成カルシウムとの密着性や親水性が増加する。すなわち、第1層目の主体を貝殻焼成カルシウム、第2層目の主体をアルカリシリケートとすることにより、被膜が基材に強固に密着し、かつ従来にない親水性を有し、かつその親水性が長期間維持される。なお、本構成はマクロ的にみた場合であり、ミクロ的にみた場合は異なる場合がある。すなわち、ミクロ的にみた場合には、基材の上に直接アルカリシリケートが配されているところがあるし、貝殻焼成カルシウムと貝殻焼成カルシウムの間にアルカリシリケートが入り込んでいるところもある。しかし、マクロ的にみた場合には、概ね上述の構成である。前述したように、基材第2層目の上に再び貝殻焼成カルシウムを主体的に配した第3層目を有することも可能である。この場合、第4層目としてアルカリシリケート主体の層を配することもできる。さらに、主体的に含むとは、必ずしも限定されるものではないが、マクロ的にみて概ね70wt%以上を指すが、多少の増減は許される。
アルカリシリケートのSiO2/M2O(M:アルカリ金属)のモル比は1〜8の範囲からなることが好ましい。アルカリシリケートのSiO2/M2O(M:アルカリ金属)のモル比が1未満の場合、所定の親水性が得られない。一方、アルカリシリケートのSiO2/M2O(M:アルカリ金属)のモル比が8を越えると、貝殻焼成カルシウムとの接合の問題が発生する。より好ましくは2〜7、さらに好ましくは3〜7である。
貝殻焼成カルシウムとして用いる貝殻はホタテ貝、アワビ、カキ、及びウバガイから少なくとも1種類以上が選択されている親水性被膜であることが好ましい。もちろん、本発明で用いられる貝殻としては、焼成前の成分が炭酸カルシウムを主成分として含有する貝殻であれば特に限定はなく、具体的には、赤貝、アサリ、ホタテ貝、アワビ、カキ、ウバガイ(ホッキ貝)、イモガイ、サクラガイ、サザエ、シジミ、タイラギ、タニシ、トリガイ、ハマグリ、バカガイ等が用いられる。しかし、特に好ましくは、ホタテ貝、アワビ、カキ、及びウバガイの貝殻である。
貝殻焼成カルシウムを製造する場合、500〜1200℃の温度範囲にて焼成する。好ましくは、600〜1100℃の温度範囲である。焼成時間については、焼成温度により異なるが、前述の貝殻焼成カルシウムを好ましい割合にするためには、適宜、調整することができる。
貝殻焼成カルシウムの平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。貝殻焼成カルシウムの平均粒径が0.1μm未満であると、貝殻焼成カルシウムの有する付着強度性や親水性が低下する。一方、貝殻焼成カルシウムの平均粒径が100μmを越えると、被膜に凹凸が発生しやすくなり、美観性や摩擦による問題等が発生する。より好ましくは0.5〜70μm、さらに好ましくは1〜20μmである。ここで、平均粒径とは、貝殻焼成カルシウムの長い部分の長さと短い部分の長さの平均という意味である。これは、貝殻焼成カルシウムが例えば球状のような定型性を一般的には示さないので、単純な粒径との表現とすると、その大きさの限定がしにくくなるためである。なお、貝殻焼成カルシウムの粉砕は、焼成処理や加工方法によっても異なるが、一般的には貝殻焼成カルシウムの衝突を利用して粉砕されたものが良好な結果を示す。
本発明で使用する貝殻焼成カルシウムの具体的な例としては、例えば、貝殻としてホタテ貝を用い、その高温焼成物の粉砕品(商品名CAV、日本天然素材株式会社製)やホタテ貝の低温焼成物の粉砕品(商品名CAI、日本天然素材株式会社製)がある。他にも、例えばシェルパウダー社、ステップ社、チャフローズ社を始めとする貝殻焼成カルシウムの生産メーカーがあるが、上述した生産メーカーに限定はされない。
該親水性被膜を形成するにあたり、貝殻焼成カルシウムを塗布する工程、アルカリシリケートを塗布する工程及び加熱する工程のそれぞれを少なくとも1回以上有する親水性被膜の形成方法であることが好ましい。ここで、貝殻焼成カルシウム塗布工程、アルカリシリケートを塗布する工程及び加熱する工程のそれぞれを少なくとも1回以上有するとしたのは、それぞれの工程が必須であるためであるが、必ずしも1回のみとするものではない。例えば、加熱工程を2回以上に分けることも可能である。
基材に貝殻焼成カルシウムを塗布する工程の後にアルカリシリケートを塗布する工程を有することが好ましい。基材に接する部分は、貝殻焼成カルシウムあるいは貝殻焼成カルシウムを主体とする層が有用であり、その上にアルカリシリケートを塗布するのが、親水性被膜として良好な性質を示すからである。このため、基材に塗布するのは貝殻焼成カルシウムを塗布する工程が先になり、その後アルカリシリケートを塗布することになる。
塗布液により被膜を形成した後に加熱する工程においては、200〜500℃の加熱工程を有することが好ましい。加熱工程において200〜500℃が好ましいのは、200℃未満の場合には親水性に富んだ堅牢な被膜が形成されなくなるためである。一方、500℃を越えると、例えば蝋結させた材料を用いた基材の場合に蝋結部そのものが外れるといった問題が発生する。なお、塗布液により被膜を形成した直後においては、20〜200℃で乾燥させるのが好ましい。
親水性被膜は、アルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムが混入された有機溶媒から、又はその加水分解された混合物から生成される親水性被膜の形成方法であることが好ましい。薬液の基板上への塗布は、浸漬法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、刷毛塗り等の方法により行う。
本発明の親水性被覆の形成方法においては基材の表面に各種の前処理を施すことも有用である。機械研磨、ブラスト処理、電解研磨、酸洗浄、アルカリ洗浄、水洗浄あるいは有機溶剤による脱脂洗浄などはいずれの材料に対しても有効である。各種方法により形成された被膜は、50〜200℃で5〜30分間乾燥および仮焼成し、電気炉により200〜500℃で0.5〜10時間焼成することにより優れた親水性表面を有する金属を得ることができる。焼成温度・焼成時間の上限はとくに限定する必要はないが、一般的なアルミニウム、ステンレスを用いる場合においては、500℃以下が好ましい。
なお、太陽の当たらない北面のガラス窓ガラスでは結露からくる黒カビ発生が問題になっており、これらは酸化チタン等の光触媒の効果が期待できないため恒常的な防カビ対策が求められている。このような問題に関しても、本発明に基づく親水性被膜貝殻焼成カルシウムを含む親水性被膜はそれ自身に長期に防カビ、抗菌機能および親水性を有しており、太陽光や紫外線の当たらない窓ガラス、熱交換器、フィン、送水管内壁等の部材に対しても広く応用が期待される。
以下、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが0.1mmに切り出した市販のアルミニウム平板(合金No#1070)を基材とした。第1層としてホタテ貝を約800℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約3μmに粉砕した後、貝殻焼成カルシウム10wt%にノニオン系界面活性剤3wt%、イソプロピルアルコールを87wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度2.5wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約3分間浸漬した後、引き上げた。この後、120℃で1時間乾燥させた。
次に、上記コートをしたアルミニウム基材の上に、第2層としてSiO2/Li2Oのモル比が3.5/1のリチウムシリケートゾルを固形分濃度5%水溶液に調製した約23℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。120℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約9.0μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は0度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量をICP発光分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約80wt%、貝殻焼成カルシウムは約20wt%、その他の不純物はほとんどゼロであった。
さらに、被覆処理を施した試料について次の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。
(1) 耐酸性試験: ガラス製の1Lビーカーに0.5wt%塩酸溶液をいれ、その中に試料を浸漬し、室温で24時間放置した。時間の経過後試料を流水により洗浄し、表面状態の目視観察により判断した。評価は全く変化の見られないものを○、クラックや剥離を認められるものを×とし、その中間を△とした。
(2) 水割れ試験: 蒸留水を入れたビーカーに試料を約10秒間浸漬し、速やかに引き上げた際の水の切れ方を評価した。水滴が全く見られず全面水膜で覆われるものを○、数秒後に水膜がハジキ、水膜が割れる状態が認められるものを×とし、部分的に水滴が残る中間的なものを△とした。
(3) 濡れ拡がり性試験: 試料の表面にマイクロシリンジで5μLの蒸留水を滴下し、5秒後における水滴の拡がり直径をノギスで測定した。5秒後の水滴の直径が8mm以上を○、4mm以上8mm未満を△、4mm未満を×とした。
(4)耐久性試験 親水性の加速試験として被膜の煮沸浸漬試験を行った。サンプルを沸騰した蒸留水に24時間浸漬し、槽より取り出し、ついで80℃で2時間乾燥させ、室温に冷却した上で外観変化及び前記の濡れ拡がり性の評価を行った。
膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例2]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが0.1mmに切り出した市販の銅板を基材とした。第1層としてホタテ貝を約600℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約5μmに粉砕した後、貝殻焼成カルシウム10wt%にノニオン系界面活性剤3wt%、イソプロピルアルコールを20wt%、純水67wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をイソプロパノールで固形分濃度10wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをした銅基板の上に、第2層としてSiO2/Li2Oのモル比が4.5/1のリチウムシリケートゾルを固形分濃度8%水溶液に調製した約23℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約15.0μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は0度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量をICP発光分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約94wt%、貝殻焼成カルシウムは約5wt%、その他の不純物は約1wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例3]
幅が100mm、長さが100mmで厚さが1mmに切り出した市販のアルミニウム不織布を基材とした。第1層としてホタテ貝を約1100℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約10μmに粉砕した後、
貝殻焼成カルシウム20wt%にノニオン系界面活性剤5wt%、イソプロピルアルコールを75wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度5wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った浸漬用バスに上記のアルミニウム不織布の基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをしたアルミニウム不織布に、第2層としてSiO2/Li2Oのモル比が7.5/1のリチウムシリケートゾルを固形分濃度3%水溶液に調製した約25℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約12μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は21度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約7wt%、貝殻焼成カルシウムは約93wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白であるとも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例4]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが0.1mmに切り出した市販の真鍮板を基材とした。第1層としてホタテ貝を約800℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約3μmに粉砕した後、貝殻焼成カルシウム20wt%にノニオン系界面活性剤5wt%、イソプロピルアルコールを75wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度4wt%に調製したものと、コロイダルシリカ(日産化学IPA―ST)4%溶液を体積比で4:1に混合したものを塗布液とし、この入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをした真鍮基材の上に、第2層としてSiO2/Na2Oのモル比が3.0/1のナトリウムシリケートゾルを固形分濃度10%水溶液に調製した約25℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約18μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は13度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約40wt%、貝殻焼成カルシウムは約50wt%、その他シリカで約10wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例5]
内径が2mm、肉厚が0.5mmで長さが300mmの銅パイプを基材とした。第1層としてホタテ貝を約750℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約3.0μmに粉砕した後、貝殻焼成カルシウム10wt%に酸化チタン粉末(石原産業製)10%ノニオン系界面活性剤5wt%、イソプロピルアルコールを50wt%、純水25wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムと酸化チタンの懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度2.0wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った25℃温度の塗布液を浸漬用バスに上記の銅パイプを室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをした銅パイプ材の表面と内面に、第2層としてSiO2/Na2Oのモル比が5/1のナトリウムシリケートゾルを固形分濃度5%水溶液に調製した約25℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約8μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は5度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約60wt%、貝殻焼成カルシウムは約20wt%、酸化チタンは約20wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例6]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが0.1mmに切り出した市販のステンレス板を基材とした。第1層としてホタテ貝殻焼成カルシウムを約1000℃で焼成した(日本天然素材株式会社製)ものを粒子径を約3.0μmに粉砕した後、この貝殻焼成カルシウム3wt%に針状の酸化鉄17wt%とノニオン系界面活性剤5wt%、イソプロピルアルコールを75wt%添加してアルミナボールミルで約2時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムと酸化鉄の懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度2wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをしたアルミニウム基材の上に、第2層としてSiO2/Na2Oのモル比が3/1のナトリウムシリケートゾルを固形分濃度7.5%水溶液に調製した約23℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約5μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は14度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約30wt%、貝殻焼成カルシウムは約10wt%、酸化鉄が約60wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例7]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが1mmに切り出した市販のアルミニウム不織布を基材とした。第1層としてホタテ貝を約1100℃で焼成したこの貝殻焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)の粒子径を約3μmに粉砕した後、貝殻焼成カルシウム10wt%にカーボンナノチューブ(昭和電工製)3wt%ノニオン系界面活性剤5wt%とイソプロピルアルコールを82wt%添加してアルミナボールミルで約4時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。
この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度5wt%に調製したものを塗布液とし、この23℃溶液の入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。この後、150℃で40分間乾燥させた。
次に、上記コートをしたアルミニウム基材の上に、第2層としてSiO2/K2Oのモル比が3/1のカリウムシリケートゾルを固形分濃度5%水溶液に調製した約23℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに350℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約12μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は0度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約50wt%、貝殻焼成カルシウムは約45wt%、カーボンナノチューブが約5wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例8]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが2mmに切り出したソーダライムガラスを基材とした。第1層としてホタテ貝を約900℃で焼成した焼成カルシウム(日本天然素材株式会社製)を用いた。この貝殻焼成カルシウムの粒子径を約5μmに粉砕した後、湿式分級で平均粒子径0.03〜1μmの微粉末を得た。
この微粉末貝殻焼成カルシウム8wt%に同上の湿式分級した平均粒子径0.02〜3.0μmの天然ゼオライト12wt%ノニオン系界面活性剤3部、イソプロピルアルコールを77wt%添加してアルミナボールミルで約6時間分散混合させて貝殻焼成カルシウムの懸濁液を調製した。この懸濁溶液をエタノールで固形分濃度8wt%に調製したものを塗布液とし、これの入った浸漬用バスに上記のアルミニウム基板を室温で約5分間浸漬した後、引き上げた。
次に、上記コートをしたソーダライムガラス基板上に、第2層としてSiO2/K2Oのモル比が3/1のカリウムシリケートゾルを固形分濃度2.0%水溶液に調製した約30℃の溶液の入った浸漬用バスの中に約5分間浸漬した後、引き上げた。150℃で第1加熱処理を約1時間行った後、さらに500℃で1時間の第2加熱処理を行った。この結果、被膜の膜厚が約1.5μmの被膜を得た。
協和界面科学(株)自動接触角計CA−Z型を用い、純水を5μL滴下してこの被膜の純水接触角を測定したところ、その純水接触角は0度であった。
被膜の一部を剥がし取り、その被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの含有量を湿式分析法により調べたところ、アルカリシリケートは約7wt%、貝殻焼成カルシウムは約40wt%、ゼオライト53wt%であった。
さらに、実施例1で行ったのと同様の評価試験を行い、膜の親水性と化学的安定性を確認した。膜の親水性と化学的安定性とも、極めて優れた特性を有することは明白である。
[実施例9]
実施例3に準じ、その被膜化のための工程を2度繰り返した。その結果、基材とするアルミニウム不織布の上に4層構造を有する被膜物質ができたが、特に問題は見出されなかった。すなわち、この物質の純水接触角は0度であり、耐酸性、水割れ性、濡れ広がり性、耐久性とも実施例1で得られた結果とほぼ同様であった。なお、合計の膜厚は約20μmであった。
[実施例10]
実施例9に準じ、その被膜化のための工程を何度も度繰り返すことにより、基材とするアルミニウム不織布の上に合計の膜厚が約280μmを有する被膜物質ができたが、特に問題は見出されなかった。すなわち、この物質の純水接触角は0度であり、耐酸性、水割れ性、濡れ広がり性、耐久性とも実施例1で得られた結果とほぼ同様であった。
[比較例1]
幅が50mm、長さが100mmで厚さが0.1mmに切り出したアルミニウム平板(合金No#1070)を基材とした。実施例1に条件に準じて製作したが、貝殻焼成カルシウムのみをコートし、アルカリシリケートを用いなかった。
アルカリシリケート被膜がない場合の純水接触角は85度であり、親水膜ではなかった。また24時間や耐酸性では被膜が徐々に溶解し、水割れ試験でも試料を10秒浸漬し、速やかに引き上げた時では数分後に、水膜が部分的にハジキ、親水性は失活していた。また、濡れ拡がり性は水滴の直径が3.8mmであり、煮沸試験の耐久性もきわめて劣ったものであった。
[比較例2]
貝殻焼成カルシウムのみをコートし、アルカリシリケートの代わりに酸化チタン被膜を付与した以外は実施例2に準じて製作した。その結果は、接触角が47度であり、耐酸化性は○、水割れ性は△だったが、濡れ拡がり性は4.8mmで△、耐久性は1週間後には親水性は示さず△から×になった。被膜の耐久性は○であった。
[比較例3]
リチアシリケートのみの被膜を付与した以外は、実施例2に準じて製作した。その結果は、接触角は12度で良好であったが、耐酸性は×、水割れ性は○であった。さらに、濡れ拡がり性は初期は9.7mmで良好だったが、1週間後には4.1mmφで×、耐久性は30日後には親水性は示さないようになり、△から×に変化した。顕微鏡で調べたところ、被膜の一部に溶解が認められ、室温での耐久性試験では30日経過した場合は表面にカビが発生していた。このカビ発生も親水性劣化に影響したものと考えられる。
[比較例4]
実施例1に準じて行ったが、加熱処理工程の処理温度を510℃としたところ、1週間後の耐久性試験が○から△に変化した。
[比較例5]
実施例1に準じて行ったが、加熱処理工程の処理温度を190℃としたところ、1週間後の耐酸化性、水割れ性、濡れ拡がり性耐久性試験が○から△に変化した
[比較例7]
貝殻焼成カルシウムを3%、カリウムシリケートを24%とすること以外は、実施例8に準じた。その結果、得られた被膜の純水接触角は32度であり、水割れ性及び濡れ広がり性は△であった

Claims (10)

  1. 基材の最外表面に形成されるアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムを含む被膜であって、その純水接触角が30度以下であり、
    該被膜が、少なくとも、貝殻焼成カルシウムを主体とする第1層目と、アルカリシリケートを主体とする第2層目を有する層構成の被膜であり、
    塗布液により被膜を形成した後に200〜500℃の温度範囲で加熱する工程を有する被膜形成方法により形成される被膜であることを特徴とする親水性被膜。
  2. 該被膜中のアルカリシリケートと貝殻焼成カルシウムの和が30〜100wt%にあることを特徴とする請求項1に記載の親水性被膜。
  3. 該被覆において、アルカリシリケートが最外層に配されていることを特徴とする請求項1または請求項に記載の親水性被膜。
  4. 該被膜の厚さが1〜300μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の親水性被膜。
  5. 該アルカリシリケートはリチウム、ナトリウム、カリウムのいずれかからなるアルカリシリケートであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の親水性被膜。
  6. 該アルカリシリケートのSiO/MO(M:アルカリ金属)のモル比が1〜8の範囲からなることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の親水性被膜。
  7. 該貝殻焼成カルシウムとして用いる貝殻は、ホタテ貝、アワビ、カキおよびウバガイから少なくとも1種類以上が選択されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の親水性被膜。
  8. 該貝殻焼成カルシウムの平均粒径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の親水性被膜。
  9. 請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の該親水性被膜を形成するにあたり、貝殻焼成カルシウムを塗布する工程、アルカリシリケートを塗布する工程及び加熱する工程のそれぞれを少なくとも1回以上有し
    加熱する工程においては、200〜500℃の温度範囲で加熱する工程を有することを特徴とする親水性被膜の形成方法。
  10. 基材に貝殻焼成カルシウムを塗布する工程の後にアルカリシリケートを塗布する工程を有することを特徴とする請求項に記載の親水性被膜の形成方法。
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