JPH05283091A - 固体高分子電解質型燃料電池装置 - Google Patents

固体高分子電解質型燃料電池装置

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JPH05283091A
JPH05283091A JP4074813A JP7481392A JPH05283091A JP H05283091 A JPH05283091 A JP H05283091A JP 4074813 A JP4074813 A JP 4074813A JP 7481392 A JP7481392 A JP 7481392A JP H05283091 A JPH05283091 A JP H05283091A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 動作温度が 100℃以下のPEFCの発電効率
の低下や経時劣化等を防止し、長期間安定に動作さ得る
固体高分子電解質型燃料電池装置を提供する。 【構成】 燃料極22と酸化剤極23とにより挟持され
た固体高分子電解質膜24を有する単セル25を複数積
層してPEFC本体21を構成する。このPEFC本体
21の冷却に、PEFCの動作温度近傍の沸点を有する
液体を用いる。また、液体原料としての水および液体燃
料は、液体原料気化機構により気化される。この液体原
料気化機構は、水の気化用熱源の少なくとも一部とし
て、改質器からの廃熱や改質ガスが有する熱量を用いて
いる。気化された水および液体燃料は、改質器43で水
素に富むガスに改質された後、PEFC本体21の燃料
極22に供給される。酸化剤極23には空気が供給さ
れ、発電反応が生じる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イオン伝導性を有する
固体高分子を電解質として用いた固体高分子電解質型燃
料電池装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高効率のエネルギー変換装置とし
て、燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、これに
用いる電解質の種類により、例えばアルカリ性水溶液
型、固体高分子電解質型、りん酸型等の低温動作燃料電
池と、溶融炭酸塩型、固体酸化物電解質型等の高温動作
燃料電池とに大別される。
【0003】これら燃料電池のうち、電解質としてプロ
トン伝導性を有する固体高分子電解質膜(Polymer Elect
rolyte:以下、PE膜と記す)を用いた燃料電池(以
下、PEFCと記す)は、コンパクトな構造で高出力密
度が得られ、かつ簡略なシステムで運転が可能なことか
ら、宇宙用や車両用等の移動用電源として注目されてい
る。
【0004】上記PE膜としては、スルホン酸基を持つ
ポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンス
ルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フ
ルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンを
グラフト化したもの等が知られており、最近ではパーフ
ルオロカーボンスルホン酸膜(例えばナフィオン:商品
名、デュポン社製)等が用いられている。このようなP
E膜を用いたPEFCは、ガス拡散層および触媒層とし
ての機能を有する一対の多孔質電極、すなわち燃料極と
酸化剤極とでPE膜を挟持すると共に、両電極の外側に
燃料室および酸化剤室を形成する溝付きの集電体を配し
たものを単セルとし、このような単セルを冷却板等を介
して複数積層することにより構成される。
【0005】このようなPEFCを用いた発電装置は、
一般に水を含む液体燃料を水素に富むガスに改質する改
質器等と組み合せることにより構成されている。図14
に、一般的な燃料電池発電装置の構成を示す。同図にお
いて、1は燃料極2と酸化剤極3とで挟持したPE膜4
を有する単セルを複数積層してなるPEFC本体であ
り、燃料極2には改質器5から水蒸気を含む燃料ガス
(水素に富むガス)が供給される。また、酸化剤極3に
はブロア6から酸化剤ガスとして空気が供給される。P
EFC本体1の動作温度は、通常、PE膜4の耐久性等
を考慮して 100℃以下、例えば80℃〜90℃程度に設定さ
れるため、PEFC本体1は冷却板7を介して冷媒8を
循環させることにより冷却している。
【0006】ここで、アルコール等の液体燃料9は、燃
料用気化器10により冷媒8の熱量によって気化された
後、改質器5に導入される。すなわち、PEFC本体1
の発電に伴う発熱量を気化熱量として利用している。改
質器5には、上記した液体燃料の蒸気と共に水蒸気を導
入し、これらが導入された改質器5の反応管(図示せ
ず)をバーナ11で加熱することにより改質反応を進行
させ、水素に富むガスすなわち燃料ガスを生成してい
る。水蒸気の生成は、燃料用気化器10と同様に、PE
FC本体1の発電に伴う熱量を気化用熱源とする水用気
化器12により、水13を水蒸気としている。また、P
E膜4は、飽和吸湿された状態では高い伝導性を示すも
のの、乾燥するとほとんど絶縁体となるため、この意味
からも燃料ガス中に水蒸気を含ませている。
【0007】なお、PEFC本体1の出力制御は、発電
指令に従って、出力制御装置14により燃料電池電流を
制御することによって行い、同時に燃料電池電流に応じ
て燃料ガス量や空気量を変化させている。図中15は電
力変換装置である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したよ
うなPEFC発電装置において、パーフルオロカーボン
スルホン酸膜に代表されるPE膜4は85℃前後では安定
であり、電池作動条件下で 4万時間以上の耐久性を示す
ものの、それ以上の温度(特に 100℃以上)になると劣
化速度が高くなるため、冷却板7に冷媒8を流して冷却
を行い、80℃〜90℃程度の温度(動作温度)に保つよう
に構成している。
【0009】しかしながら、冷媒8としては一般的に水
が用いられており、水の沸点はよく知られているように
100℃(大気圧下)であるため、 100℃では蒸発の潜熱
により一定温度となるものの、PE膜4が最も安定に存
在し得る85℃前後の温度に保つためには、循環させる水
の温度コントロールを厳密に行わなければならないとい
う欠点があった。また、PEFCの発電能力増大のため
にセルの大型化が進むと、セル面内での起電反応の不均
一性が顕著になり、従って発熱も不均一となるため、一
部では多量の熱が発生する。このような場合に、水を冷
媒として用いていると、水の沸点である 100℃になる部
分が多数存在することとなり、その部分ではPE膜4が
激しく劣化し、長期間安定に動作させることができない
という問題が発生している。
【0010】このように、従来の装置構成では、PEF
Cが安定に動作し得る、例えば80℃〜90℃程度の温度に
保つことが困難であるため、PEFCの経時安定性の向
上を図ることが強く望まれていた。
【0011】一方、図14に示した装置構成において
は、改質器5へ液体原料を送り込む前に燃料電池の発電
に伴う発熱により、水を含む液体原料を十分に気化さ
せ、改質器5での反応をすみやかに行わせることが重要
なポイントになっている。これに対して、動作温度が 1
00℃以下であるPEFCの場合には、沸点が 100℃以下
の液体燃料は十分に気化し得るものの、十分な水蒸気量
を得ることは当然できず、改質器5での反応性が低下し
たり、またPE膜4の劣化を誘発する等の問題が生じて
しまう。
【0012】このようなことから、動作温度が 100℃以
下であるPEFCにおいても、外部から熱を供給するこ
となく十分な水蒸気量を得ることを可能にし、これによ
って発電効率の低下を防止すると共に、長期間安定に動
作させ得るような装置構成の出現が強く望まれていた。
【0013】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、動作温度が 100℃以下であるPEF
Cの発電効率の低下や経時劣化等を防止し、長期間安定
に動作させ得る固体高分子電解質型燃料電池装置を提供
することを主な目的としており、具体的には 100℃以下
の動作温度を安定に保持し得る固体高分子電解質型燃料
電池装置、およびそのような動作温度でも十分な水蒸気
量が得られる固体高分子電解質型燃料電池装置を提供す
ることを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明における第1の固
体高分子電解質型燃料電池装置は、燃料極と酸化剤極と
により挟持された固体高分子電解質膜を有する単セルが
複数積層されて構成された燃料電池本体と、この燃料電
池本体内に冷媒を循環させ、発電中に生じる熱を除去す
る冷却機構とを具備する固体高分子電解質型燃料電池装
置において、前記冷媒として、前記燃料電池本体の動作
温度近傍の沸点を有する液体を用いたことを特徴として
いる。
【0015】また、第2の固体高分子電解質型燃料電池
装置は、燃料極と酸化剤極とにより挟持された固定高分
子電解質膜を有する単セルが複数積層されて構成された
燃料電池本体と、水および液体燃料を気化させる液体原
料気化機構と、前記気化された水および液体燃料を水素
に富むガスに改質する改質器と、前記改質ガスを前記燃
料極に供給する燃料ガス供給系と、前記酸化剤極に酸化
剤ガスを供給する酸化剤ガス供給系とを具備する固体高
分子電解質型燃料電池装置において、前記液体原料気化
機構は、少なくとも前記水の気化用熱源の少なくとも一
部として、前記改質器からの廃熱および前記改質ガスが
有する熱量の少なくとも一方を用いていることを特徴と
している。
【0016】さらに、上記第2の固体高分子電解質型燃
料電池装置において、前記酸化剤ガス供給系としてター
ボコンプレッサを用い、前記ターボコンプレッサを前記
改質器からの廃熱で動作させると共に、該ターボコンプ
レッサにより加圧された酸化剤ガスが有する熱量を、前
記液体原料気化機構における水の気化用熱源の一部とし
て用いたことを特徴としている。
【0017】
【作用】本発明の固体電解質型燃料電池装置において
は、まずPEFC本体の動作温度近傍の沸点を有する液
体を冷媒として用いている。このため、燃料電池本体の
温度が動作温度すなわち冷媒の沸点近傍に達すると、冷
媒が蒸発しはじめ、この蒸発潜熱によりPEFC本体が
発生する熱を吸収して、PEFC本体の温度を一定の設
定動作温度に保つことができる。また、PEFCのセル
面内に不均一な熱領域が発生しても、基本的には冷媒の
沸点以上とはならないため、PE膜が長期間安定な状態
を保ち得る温度(動作温度)を保つことができる。よっ
て、PEFC本体の長寿命化を達成することが可能とな
る。
【0018】また、本発明の固体電解質型燃料電池装置
においては、液体原料の一部である水の気化熱量とし
て、改質器からの廃熱や改質ガスが有する熱量を利用し
ている。これらは十分な熱量を有することから、これら
と例えば冷媒との熱交換を併用することにより、十分な
水蒸気量を得ることが可能となる。よって、改質器での
反応性の低下やPE膜の劣化を防止することができ、こ
れによりPEFC本体の長寿命化や高効率化を達成する
ことが可能となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の固体電解質型燃料電池装置の
実施例について、図面を参照して説明する。
【0020】図1は、本発明の一実施例の固体電解質型
燃料電池装置の概略構成を示す図である。同図におい
て、21は燃料極22と空気極23とで挟持した固体高
分子電解質膜(PE膜)24を有する単セル25を複数
積層して構成した燃料電池本体、すなわちPEFC本体
である。
【0021】上記単セル25の一構成例を図2に示す。
PE膜24の両表面上には、アノード側電極となる燃料
極22と、カソード側電極となる酸化剤極23とが一体
的に形成されている。PE膜1は、パーフルオロカーボ
ンスルフォン酸樹脂、例えばナフィオン(商品名、デュ
ポン社製)等のプロトン伝導性のイオン交換樹脂により
構成されている。また、燃料極22および酸化剤極23
は、多孔質状態のガス拡散電極であり、多孔質触媒層と
ガス拡散層の両方の機能を兼ね備えるものである。これ
ら電極22、23は、白金、パラジウムあるいはこれら
の合金等の触媒を担持した導電性微粒子、例えばカーボ
ン微粒子をポリテトラフルオロエチレンのような疎水性
樹脂結合剤により保持した多孔質体によって構成されて
いる。
【0022】また、燃料極22の他方の面には、多孔質
カーボン支持体26を介して、燃料ガス例えば水素に富
む改質ガスの通路となると共に燃料室を形成する溝27
aが設けられた導電性物質、例えばカーボンからなる集
電板27が配置されている。また、酸化剤極23の他方
の面には、多孔質導電性撥水層28を介して、酸化剤ガ
ス例えば空気の通路が上記燃料ガス通路と直交するよう
に設けられ、かつ酸化剤室を形成する溝29aを有する
導電性物質、例えばカーボンからなる集電板29が配置
されている。これら集電板27、29はセパレータとし
ての機能も有している。
【0023】これらPE膜24、燃料極22、酸化剤極
23および集電板27、29等の積層体により、PEF
Cの単セル25が構成されている。そして、このような
単セル25を、図3に示すように、冷却板30を介して
複数直列に積層することによりPEFCスタック、すな
わちPEFC本体21が構成されている。このPEFC
本体21の発電に伴って発生する熱は、冷媒タンク31
に収容された冷媒32を、各冷却板30内に冷媒循環ポ
ンプ33で供給することにより除去され、PEFC本体
21は安定した動作が可能な 100℃以下の温度、例えば
80℃〜90℃程度の動作温度で運転される。冷媒32は、
冷媒循環配管34により循環使用され、冷媒タンク31
に付設された冷却フィン35等により冷却される。ま
た、図4は冷却板30の一具体例を示す図であり、この
冷却板30は熱伝導性に優れた材質、例えばカーボン、
銅、アルミニウム合金等からなる冷却板本体36内に、
冷媒流通パイプ37を埋め込んだ構成となっている。ま
た、冷却板30としては、厚さ 0.2mm〜 0.5mm程度の薄
板に、パイプに相当する冷媒流通溝を形成したもの等を
用いることもできる。
【0024】そして、この実施例の固体電解質型燃料電
池装置においては、上記冷媒32として、PEFC本体
21の動作温度近傍の沸点を有する液体を用いている。
このような冷媒32としては、PEFC本体21の設定
動作温度に対して±10℃の範囲に沸点を有する有機系液
体、またPE膜24の種類にもよるが、沸点が 100℃未
満の有機系液体を用いることが好ましい。冷媒の沸点が
PEFC本体21の動作温度に対して +10℃を超える
と、過熱点(ホットスポット)が発生する危険性が高ま
り、PE膜24の劣化を速めることとなる。また、冷媒
の沸点が動作温度に対して -10℃未満となると、PEF
C本体21の動作温度が低くなり過ぎて、発電効率の低
下を招くこととなる。
【0025】このような冷媒の具体例としては、メタノ
ールやエタノール等の低級アルコールや、上記沸点を満
足するフッ素系不活性液体等が挙げられる。このフッ素
系不活性液体としては、炭化水素の水素の少なくとも一
部をフッ素や塩素等で置換した低沸点液体、例えばパー
フルオロカーボンや代替フロン等が挙げられる。このよ
うなフッ素系不活性液体は、不燃性で安全性に優れ、か
つ熱伝導性が高いために冷媒として好適である。
【0026】上記したような条件を満足する冷媒32を
用いることにより、冷媒32の蒸発潜熱によって、冷媒
32の沸点近傍の温度すなわち設定動作温度に、PEF
C本体21の温度を保つことができる。また、PEFC
本体21のセル面内に不均一な熱領域が発生しても、冷
媒32の沸点より異常に高い温度とはならないため、P
E膜24が長期間安定な状態を保ち得る動作温度を保つ
ことができる。
【0027】PEFC本体21の動作温度を一定に保つ
冷媒32は、上述したように、冷却板30および冷媒循
環配管34を介して循環使用される。そして、この冷媒
循環配管34には、液体燃料用気化器38および第1の
水用気化器39が介挿されている。これら気化器38、
39は、PEFC本体21の発電に伴う発熱量を気化熱
量として利用する熱交換器である。液体燃料タンク40
に収容されたアルコール等の液体燃料41は、基本的に
沸点が低いために、液体燃料用気化器38のみによっ
て、すなわち冷媒32との熱交換のみによって十分に気
化することができる。よって、液体燃料タンク40から
液体燃料供給ポンプ42により液体燃料用気化器38に
送られて蒸気化され、この蒸気化された液体燃料が改質
器43に導入されるよう構成されている。
【0028】これに対して、水タンク44に収容された
水45は、冷媒32との熱交換のみでは熱量が不足し、
十分に蒸気化することができない。そこで、まず水供給
ポンプ46によって上記した第1の水用気化器39に送
り予熱した後、第2の水用気化器47に送る。この第2
の水用気化器47は、改質器43から送出される改質ガ
スの熱量を気化熱量として利用する熱交換器である。こ
こで、改質ガスは 150℃程度の温度を有するため、十分
な熱量を得ることができる。また、改質ガスはPEFC
本体21に供給する際には、動作温度程度まで冷却しな
ければならないため、上記第2の水用気化器47は改質
ガスの冷却装置としても機能する。
【0029】これら第1および第2の水用気化器39、
47だけでも、水量等によっては十分な水蒸気を発生さ
せることが可能であるが、この実施例においては改質器
43の加熱用バーナ48の廃熱を熱源とする第3の水用
気化器49で最終的に水を気化させ、改質器43に導入
している。改質器バーナ48の廃熱は、十分な熱量を有
するため、十分な水蒸気量例えば飽和水蒸気量を得るこ
とができる。
【0030】このように、水45はまず冷媒32の熱に
より加熱(第1の水用気化器39)され、次に改質ガス
と熱交換(第2の水用気化器47)されて沸点近くまで
加熱され、最後に改質器バーナ48の廃熱と熱交換(第
3の水用気化器49)され、蒸気として改質器43に導
入される。従来例のように冷媒の熱のみではなく、改質
口ガスが有する熱量や改質器バーナ48の廃熱を利用す
ることにより、確実に水蒸気を生成することができる。
【0031】このようにして改質器43に導入された、
蒸気化された液体燃料および水蒸気は、改質器43内で
改質器バーナ48により加熱され、水蒸気を含む燃料ガ
ス、すなわち水素に富むガスに改質された後、PEFC
本体21の燃料極22に供給される。また、酸化剤極2
3には、ブロア50から酸化剤ガスとして空気が供給さ
れる。このように、燃料ガスと空気とをPEFC本体2
1に供給することにより発電が行われる。
【0032】なお、上記改質器バーナ48には、メタノ
ール等の助燃燃料がポンプ51により供給されると共
に、ブロア52から空気が供給される。また、改質器バ
ーナ48には、燃料極22から排出される未反応水素を
含むオフガスを供給する配管53、および酸化剤極23
の出口側に接続された凝集器54により凝集された反応
生成物を供給する配管55が接続されており、改質器バ
ーナ48の燃焼コストの低減を図っている。
【0033】次に、上記構成の固体電解質型燃料電池の
具体例について説明する。まず、10個の単セル25(例
えば 300mm× 300mm)を用い、 2つの単セル25に 1つ
の冷却板30となるように積層して、PEFC本体21
を組み立てた。そして、冷媒32としてフッ素系不活性
液体、具体的にはフロリナート FC-84(商品名、住友ス
リーエム社製:沸点80℃)を用いて、PEFC本体21
を冷却しつつ電池運転を行い、中央部の単セル25(第
5セル)での面内温度分布を測定した。
【0034】また、本発明との比較例として、冷媒とし
て水を用いると共に、冷媒の循環量等により電池運転温
度を85℃に設定し、上記実施例と同様に、第5セルの面
内温度分布を測定した。
【0035】図5に比較例の面内温度分布を、また図6
に実施例の面内温度分布を示す。図5から明らかなよう
に、冷媒として水を用いた比較例では、燃料ガスおよび
酸化剤ガスの出口側にホットスポットが生じていた。こ
れに対し、図6から明らかなように、実施例では低沸点
冷媒による熱除去効果によって、ホットスポットは生じ
ておらず、安定して電池運転が可能であることが分か
る。
【0036】また、図7に上記実施例および比較例のセ
ル電圧の経時変化を示す。なお、セルの運転条件は、作
動温度(セル中心部温度)が85℃となるようにした。図
7から明らかなように、比較例のPEFCはホットスポ
ットの影響によってPE膜が劣化し、1000時間経過後に
セル電圧が徐々に低下したのに対し、実施例のPEFC
では長時間安定に動作させることができることが分か
る。
【0037】また、上記した実施例の固体高分子電解質
燃料電池装置を用いて、上述した冷媒および運転条件で
水蒸気の発生量を調べたところ、十分な水蒸気量が得ら
れていることを確認した。このように、冷媒として低沸
点有機液体、すなわち冷媒との熱交換量が水よりさらに
低い液体を用いた場合においても、改質ガスの熱量や改
質バーナ48の廃熱により、十分な気化熱量を確保する
ことができ、これにより十分な量の水蒸気を得ることが
可能となる。従って、改質器43で効率よく改質反応を
進行させることができると共に、水分量の不足によるP
E膜24の劣化を防止することができる。
【0038】なお、上記実施例においては、冷媒として
有機液体を用いた例につい説明したが、改質ガスの熱量
や改質バーナ48の廃熱を水45の気化熱として利用す
ることは、冷媒として水を用いる場合においても有効で
ある。すなわち、水を冷媒として用いる場合において
も、PEFCの運転温度が 100℃であると、水の気化に
要する熱量を十分に得ることはできないため、改質ガス
の熱量や改質バーナ48の廃熱を気化熱量として利用す
ることにより、初めて十分な水蒸気量を得ることが可能
となる。
【0039】次に、本発明の他の実施例について図8を
参照して説明する。この実施例の固体電解質型燃料電池
装置においては、酸化剤ガス供給系としてターボコンプ
レッサ61を用いており、このターボコンプレッサ61
にその動作熱として、改質器バーナ48の廃熱を供熱管
62を介して供給している。ターボコンプレッサ61に
よれば、加圧空気をPEFC本体21の酸化剤極23に
供給することができるため、電池性能のより一層の向上
を図ることができる。また、ターボコンプレッサ61か
ら排出される加圧空気は 200℃程度の温度となるため、
この加圧空気が有する熱量を水45の気化熱として用い
ることができる。そこで、この実施例においては、加圧
空気供給配管63に第3の水用気化器64として熱交換
器を配置している。
【0040】すなわち、この実施例においては、水タン
ク44に収容された水45は、前述した実施例と同様
に、まず水供給ポンプ46によって第1の水用気化器3
9に送られ、冷媒32の熱量により予熱された後、改質
ガスとの熱交換器である第2の水用気化器47に送られ
る。この第2の水用気化器47によって、さらに加熱さ
れた水45は、上記した第3の水用気化器64に送ら
れ、水蒸気化された後に改質器43に導入される。
【0041】この実施例の固体電解質型燃料電池装置に
よれば、改質器バーナ48の廃熱をターボコンプレッサ
61の動作熱として用い、加圧空気の供給を可能にする
と共に、加圧空気が有する熱量を水45の気化熱量の一
部として利用することを可能にしているため、前述した
実施例と同様に、液体原料の一部となる水45を十分に
飽和水蒸気化することができ、かつ電池性能の向上を図
ることができる。
【0042】上記した実施例の固体電解質型燃料電池装
置を用いて、前述した実施例と同様な冷媒および運転条
件で電池運転を行い、その際の水蒸気の発生量を調べた
ところ、前述した実施例と同様な良好な結果が得られ
た。
【0043】なお、上記した各実施例においては、水の
気化熱量として、冷媒が有する熱量と併用して、改質ガ
スの熱量、改質バーナ48の廃熱、加圧空気の熱量等を
用いているが、これらのみで水の気化を行うような装置
構成とすることもできる。
【0044】また、上記実施例においては、液体燃料と
してメタノール等のアルコールを用いた例について説明
したが、これらとガソリンとの混合物を用いることも可
能である。また、このアルコール等とガソリンとの混合
物は、本発明による固体電解質型燃料電池装置に限ら
ず、各種の燃料電池に対しても有効である。これは、ガ
ソリンに含まれる炭化水素は沸点が 160℃以下であり、
改質器の動作温度 250℃では蒸発して、触媒上にて改質
され、水素に富むガスとすることができるためである。
【0045】ところで、前述した各実施例の固体電解質
型燃料電池においては、改質ガスの熱量、改質バーナ4
8の廃熱、加圧空気の熱量等を気化熱量として水を蒸気
化させ、例えば飽和蒸気圧に相当する水を燃料ガス中に
含ませて供給する装置について説明したが、例えば以下
に示すような構成を採用することによって、燃料ガス量
とは別個に、PE膜24に単独で水を供給することが可
能となる。PE膜を加湿する場合に、燃料ガスの流量で
PE膜の加湿量を制御すると、燃料ガスの多量供給によ
る発電効率の低下を招く恐れがあるためである。
【0046】図9に示すように、この実施例における燃
料極(アノード)側の集電体70は、燃料室となる溝を
有する多孔質カーボン製集電体本体71の側面に沿わせ
て、吸水性を有する多孔質シート72が配置されて構成
されている。この多孔質吸水性シート72としては、高
分子多孔質シート、例えばシートフェノール樹脂を主成
分とする多孔質シート(具体的にはユニベックス(商品
名、ユニチカ社製)やカイノール樹脂シート等が用いら
れる。
【0047】そして、このアノード側の集電体70と、
カソード側の空気室となる溝73aを有する緻密質カー
ボン製集電体73とで、燃料極/PE膜/酸化剤極によ
る積層体74を挟むことにより、単セル75を構成す
る。また、多孔質吸水性シート72の四隅に給水穴72
aを設け、この給水穴72aに絶縁性を有する給水用多
孔質パイプ76、例えば孔径 1μm 〜 2μm 程度のテフ
ロン多孔質体、孔径10μm 程度のガラス多孔質体、孔径
1μm 〜10μm 程度、気孔率 40%〜 60%程度のセラミッ
クス多孔質体等を挿入して水を供給する。なお、給水穴
72aと給水用多孔質パイプ76との間には、水の分配
が円滑に進むように、吸湿性のよいセラミックス粉末や
粉末状高分子材料等を詰めておくとよい。
【0048】上記多孔質吸水性シート72を有するアノ
ード側集電体70の具体例を、図10および図11に示
す。なお、図11(a)は図10のA−A′断面を、図
11(b)は図10のB−B′断面を示している。これ
らの図に示すアノード側集電体70は、枠状に形成した
多孔質吸水性シート72内に多孔質カーボン製集電体本
体71を挿入配置すると共に、溝71aの一部にも多孔
質吸水性シート72を配置して構成している。このよう
な構成とすることにより、水を多孔質カーボン製集電体
本体71側に均一に供給することができる。ただし、改
質ガスを流す方向、すなわち溝71aの形成方向と直交
する側の多孔質吸水性シート72の高さは、ガス流を阻
害しないように、ウエッブ部(溝71aの残肉部)72
bより0.1mm〜 0.2mm程度低くなるように設定すること
が好ましい。
【0049】給水用多孔質パイプ76より供給された水
は、多孔質吸水性シート72を通じて、多孔質カーボン
製集電体本体71、燃料極およびPE膜を順に加湿して
いくことになり、PE膜を単独で十分に加湿することが
できる。また、カソード側の集電体73は、緻密なカー
ボン板で構成しているため、水供給過剰によるフラッデ
ィング現象を引き起こすこともない。
【0050】また、図12に水の供給方法を示す。例え
ば、単セル75を積層してなるPEFC本体77の上方
に設置した水タンク78から定量ポンプ79により水を
供給する。この際、水の供給は、PEFC本体77のセ
ル電圧をセル電圧モニタ80で測定し、このセル電圧が
一定となるように、すなわち定格電圧が所定低下率(例
えば5%)となったときに、ポンプ79が作動するように
制御系81で制御する。これにより、反応ガス量とは独
立して水分量をコントロールすることができる。なお、
水タンク78への水の供給は、例えば図13に示すよう
に、酸化剤極から排出される反応生成物から水分のみを
水分分離器82等で取り出し、さらに含まれる不純イオ
ンや不純物等を除去装置83で取り除いた後、水タンク
78へ供給すればよい。不純イオンはイオン交換樹脂等
によって、また不純物は活性炭等によって除去すること
ができる。
【0051】なお、上記PE膜への水供給方法は、本発
明の固体電解質型燃料電池装置に限らず、電解質を加湿
する必要がある各種の燃料電池に適用可能である。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、 1
00℃以下の動作温度を安定に保持することができるた
め、あるいは 100℃以下の動作温度でも十分な水蒸気量
が得られるため、動作温度が 100℃以下であるPEFC
の発電効率の低下や経時劣化等を防止することができ、
よって長期間安定にかつ効率よく運転することが可能な
固体高分子電解質型燃料電池装置を提供すること可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のPEFC装置の構成を示す
図である。
【図2】本発明の一実施例のPEFC装置における単セ
ル構造を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例のPEFC装置における冷媒
の循環経路を示す図である。
【図4】本発明のPEFC装置に用いる冷却板の一構成
例を示す図である。
【図5】水を冷媒として用いた従来のPEFC装置の電
池運転時におけるセル内の温度分布を示す図である。
【図6】本発明の一実施例によるPEFC装置の電池運
転時におけるセル内の温度分布を示す図である。
【図7】本発明の一実施例によるPEFC装置の電池特
性を従来例と比較して示す図である。
【図8】本発明の他の実施例のPEFC装置の構成を示
す図である。
【図9】水の供給方法を改善した単セルの構成を示す図
である。
【図10】図9に示す単セルに用いたアノード側集電体
の構成を示す図である。
【図11】図10に示すアノード側集電体の断面図であ
る。
【図12】図9に示す単セルへの水供給方法を説明する
ための図である。
【図13】図9に示す単セルを用いたPEFCの水循環
方法を説明するための図である。
【図14】従来の燃料電池の装置構成を示す図である。
【符号の説明】
21……PEFC本体 22……燃料極 23……空気極 24……固体高分子電解質膜(PE膜) 25……単セル 30……冷却板 32……冷媒 30……冷却板 38……液体燃料用気化器 39……第1の水用気化器 43……改質器 47……第2の水用気化器 48……改質器バーナ 49、64……第3の水用気化器 50……空気供給用ブロア 61……ターボコンプレッサ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料極と酸化剤極とにより挟持された固
    体高分子電解質膜を有する単セルが複数積層されて構成
    された燃料電池本体と、この燃料電池本体内に冷媒を循
    環させ、発電中に生じる熱を除去する冷却機構とを具備
    する固体高分子電解質型燃料電池装置において、 前記冷媒として、前記燃料電池本体の動作温度近傍の沸
    点を有する液体を用いたことを特徴とする固体高分子電
    解質型燃料電池装置。
  2. 【請求項2】 燃料極と酸化剤極とにより挟持された固
    定高分子電解質膜を有する単セルが複数積層されて構成
    された燃料電池本体と、水および液体燃料を気化させる
    液体原料気化機構と、前記気化された水および液体燃料
    を水素に富むガスに改質する改質器と、前記改質ガスを
    前記燃料極に供給する燃料ガス供給系と、前記酸化剤極
    に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給系とを具備する
    固体高分子電解質型燃料電池装置において、 前記液体原料気化機構は、少なくとも前記水の気化用熱
    源の少なくとも一部として、前記改質器からの廃熱およ
    び前記改質ガスが有する熱量の少なくとも一方を用いて
    いることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の固体高分子電解質型燃料
    電池装置において、 前記酸化剤ガス供給系としてターボコンプレッサを用
    い、前記ターボコンプレッサを前記改質器からの廃熱で
    動作させると共に、該ターボコンプレッサにより加圧さ
    れた酸化剤ガスが有する熱量を、前記液体原料気化機構
    における水の気化用熱源の一部として用いたことを特徴
    とする固体高分子電解質型燃料電池装置。
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