JPH05282660A

JPH05282660A - 磁気記録媒体およびその製造方法

Info

Publication number: JPH05282660A
Application number: JP7956792A
Authority: JP
Inventors: Akitoshi Hirozawa; 明敏廣澤
Original assignee: Mitsubishi Electric Corp
Current assignee: Mitsubishi Electric Corp
Priority date: 1992-04-01
Filing date: 1992-04-01
Publication date: 1993-10-29

Abstract

(57)【要約】【目的】耐久性が高く磁気ヘッドとの摺接状態が良好
な磁気記録媒体を得る。【構成】基体１の上に、金属もしくはそれらの合金か
らなる強磁性金属薄膜層２を設け、この強磁性金属薄膜
のうえに、一部または全部が中空球状分子で構成された
中空球状薄膜層３を塗布または蒸着もしくはスパッタリ
ングにより被着させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、非常に耐久性の高い磁
気記録媒体およびその製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】強磁性金属薄膜層を記録層とする磁気記
録媒体は、通常、鉄、ニッケル、コバルト等の金属また
はこれらの合金を、真空蒸着または塗布等によりポリエ
ステルフィルムなどの基体上に被着させてつくられ、高
密度記録に適した特性を有するが、磁気ヘッド等との摺
接により、摩耗や損傷を受け易くて、耐久性に問題があ
る。

【０００３】従来から、この問題を解決するため、図６
のように強磁性金属薄膜層２上に保護膜層１２を形成し
て、摩擦の低減や耐久性の向上などを試みている。例え
ば、テレビジョン学会誌Ｖｏｌ．４４，Ｎｏ．９，ｐ
ｐ．１２０３〜１２１０（１９９０）では、保護膜層１
２の材料として、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、フッ素
系潤滑剤などが示されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の保
護膜層では、未だ充分な耐久性を得られていない。ま
た、今後、記録すべき情報量が増加してくるにつれて、
今以上の耐久性が要求される。

【０００５】この発明は、このような問題点を解消する
ためになされたもので、従来の保護膜層の材料より、分
子構造的に安定し、弾力性と耐久性のある材料によっ
て、強磁性薄膜層を保護して記録媒体の耐久性の向上と
潤滑剤として磁気ヘッド等との摺接状態を良好にするこ
とを目的としている。

【０００６】また、記録媒体が、金属もしくはそれらの
合金からなる強磁性金属で構成されるため、帯電するこ
とがあるので、導電性の優れた保護膜層により、記録媒
体の帯電を抑制することを目的とする。

【０００７】さらに、強磁性薄膜層自体に耐久性のある
材料を用いることにより、記録媒体の耐久性を向上させ
ることを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】基体上に設けた強磁性金
属薄膜層の上に、中空球状分子により構成された保護膜
層を蒸着、塗布などにより形成させる。

【０００９】また、中空球状分子の中でも非常に安定し
ているＣ60やＣ70、または、中空球状分子とフッ素など
との化合物、または中空球状分子の中に金属原子を取り
込んだ分子で保護膜層を構成する。

【００１０】また、記録層を構成する材料の少なくとも
一部分を、強磁性の性質を有する中空球状分子で構成し
たものである。

【００１１】

【作用】強磁性薄膜層上に、分子構造の対称性が非常に
優れており、丈夫な分子構造となっている中空球状分子
で構成された保護膜層を設けたので、非常に耐摩耗性の
高い、耐久性に優れた磁気記録媒体が得られる。

【００１２】

【実施例】

実施例１．図１はこの発明の一実施例の断面図である。
図において、１は基体（ポリエステルフィルム）、２は
強磁性金属薄膜層、３は中空球状分子Ｃ60によって一部
または全部が構成された中空球状保護膜層である。

【００１３】炭素原子のみによって構成された中空球状
分子は、ダイヤモンド、グラファイトに次ぐ新しい形態
の炭素である。本実施例で用いられるＣ60はその代表的
な分子である。Ｃ60は、図２に示すような炭素原子が対
称的にならんだサッカーボール状の分子構造で、中空球
状分子の中でも最も球体に近い構造であり、非常に安定
した特性を有し、通常、グラファイトと同じくらい柔ら
かく、加圧して体積を７０％以下に圧縮するとダイヤモ
ンドなみに硬くなり、その後、圧力を取り除くと、結晶
は元の状態に戻るような弾力性のある性質を有する。中
空球状分子については、例えば、日経サイエンスの１９
９１年１２月号，ｐｐ．３６〜４８にも記載されてい
る。

【００１４】次に、実施例１の磁気記録媒体の製造方法
の一例を説明する。ポリエステルフィルムなどの基体１
の上に、強磁性金属を真空蒸着法によって強磁性金属薄
膜層２を被着させて記録層を構成する。次に、Ｃ60のベ
ンゼン溶液を強磁性金属薄膜層２の上に塗布した後、乾
燥させてＣ60による保護膜層３を強磁性金属薄膜層上に
形成する。

【００１５】この実施例１のように構成された磁気記録
媒体においては、磁気ヘッドの接触により、Ｃ60の中空
球状保護膜層３は圧縮されて、弾力性のある分子構造の
ため、Ｃ60の中空球状保護膜層３の厚みは減少する。圧
縮されたＣ60の分子はダイヤモンドなみに硬くなり、そ
の硬度で記録媒体を保護する。

【００１６】したがって、本実施例１では、磁気ヘッド
の接触時に、Ｃ60の中空球状保護膜層３の厚みは減少に
より、スペーシングを極小とし、ダイヤモンドなみの硬
度で保護するという、記録媒体の最大の能力を引出しな
がら記録媒体を走行させ、しかも、十分な耐久性を有す
る記録媒体が得られる。

【００１７】実施例２．実施例１では、Ｃ60だけで保護
膜層を構成しているが、本実施例２では、脂肪酸エステ
ル等を潤滑剤、グラファイトなどの導電性粉末を帯電防
止剤としてＣ60と混合したもので、中空球状保護膜層を
構成する。これにより、実施例１と同様の効果と、さら
に、磁気記録媒体と磁気ヘッドとの摩擦を軽減して、磁
気ヘッドの走行を安定に保ちつつ、磁気ヘッドと記録媒
体の寿命を延ばすことができる。

【００１８】実施例３．実施例１では、強磁性金属薄膜
２の上部に中空球状保護膜層３を塗布することにより形
成したが、本実施例３では真空中で中空球状分子Ｃ60を
レーザによって４００℃以上に加熱することにより昇華
させ、これにより中空球状分子Ｃ60を強磁性金属薄膜層
２に被着させて、中空球状保護膜層３を形成する。この
実施例３では、実施例１と同様な耐久性に優れた磁気記
録媒体が得られる。なお、本実施例３では、熱源をレー
ザとしたが、その他の熱源を使用しても問題ないことは
容易に類推できる。

【００１９】さらに、本実施例３では、実施例１より薄
い中空球状保護膜層３が強磁性金属薄膜層上に形成でき
る為、記録媒体の強磁性薄膜層２と磁気ヘッドとの距離
が短くなり、スペーシング・ロスが抑制されることによ
り、記録再生特性の向上が得られる。

【００２０】実施例４．実施例１では、Ｃ60を保護膜層
の材料として中空球状保護膜層３を形成しているが、本
実施例４では、Ｃ70を中空球状保護膜層３の材料として
使用する。Ｃ70は、図３に示すようにラグビーボール状
の分子構造であり、その長軸方向を軸としてスピンして
いるので、分子に異方性が存在する。それを利用して、
次のような方法で、記録媒体においてＣ70の長軸方向を
磁気ヘッドの走行方向に対して垂直方向と同じにする。

【００２１】図４は、本実施例４における記録媒体製造
方法の概念図である。基体１上に強磁性金属薄膜層２を
設け、強磁性金属薄膜層２上にＣ70より構成された中空
球状保護膜層３を塗布されたばかりのシート５を、図４
のように送り込む。送り込まれたシート５は、サイドの
異極性の磁石６、７により直流磁界を与えられながら、
乾燥させられる。

【００２２】上記の過程により、シート５における中空
球状分子Ｃ70の長軸方向は、磁石により発生する直流磁
界方向と同じになる。その後、シート５は、ローラ９を
経由して、ワインダ１０に巻取られる。この巻取られた
シート５が、本実施例における記録媒体であり、Ｃ70の
長軸方向は、磁気ヘッドの走行方向に対して垂直方向と
同じになる。

【００２３】なお、本実施例４では、磁気ヘッドの走行
方向を記録媒体の長さ方向と同じとして、Ｃ70の長軸方
向を上記のように向けたが、回転磁気ヘッドを用いた場
合、磁気ヘッドの走行方向は記録媒体の長さ方向とは異
なってくるが、磁石６、７で与えられる磁界の向きを調
節すれば、Ｃ70の長軸方向が磁気ヘッドの走行方向に対
して垂直にできることは容易に類推できる。

【００２４】Ｃ70はＣ60と同様に強靭な分子であるの
で、実施例１と同様に本実施例４で得られる記録媒体は
従来より、耐久性の優れたものである。また、Ｃ70の長
軸方向を、磁気ヘッドの走行方向に対して垂直にするこ
とにより、磁気ヘッドの安定した走行特性が得られる。

【００２５】実施例５．実施例４では、Ｃ70を塗布によ
り被着させたが、本実施例５では蒸着によりＣ70を強磁
性金属薄膜２上に被着させる。この蒸着時に、直流磁界
を掛けてＣ70の長軸方向を磁気ヘッドの走行方向に対し
て垂直になるように蒸着させる。この被着させる方法と
しては、蒸着のほか、イオンビーム、電子ビームまたは
スパッタリングによる被着方法が可能である。

【００２６】本実施例５では、実施例４と同様な効果
と、実施例４より薄い中空球状保護膜層が得られるの
で、磁気記録におけるスペーシングロスが抑制され、記
録再生特性が向上される。

【００２７】実施例６．Ｃ60を完全にフッ素化させるこ
とにより得られるＣ60Ｆ60は優れた潤滑剤である。した
がって、このＣ60Ｆ60を強磁性金属薄膜層上に、真空蒸
着もしくは塗布により被着させて保護膜層を形成させ
る。これにより、潤滑剤として、記録媒体と磁気ヘッド
との摩擦を軽減して、記録媒体と磁気ヘッドの寿命を延
ばすことができる。

【００２８】また、導電性に優れた中空球状分子を用い
れば、帯電妨止剤としての作用を兼ね備えた保護膜が得
られる。

【００２９】実施例１〜６では、中空球状分子を保護膜
層の材料として用いたが、強磁性の性質を有する中空球
状分子、例えば、図５に示すようなＣｏ、Ｎｉ、Ｆｅな
どの強磁性金属原子４を取り込んだ中空球状分子を強磁
性薄膜層に用いれば、記録層自体が耐久性のある磁気記
録媒体が得られることは容易に類推できることである。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
中空球状分子Ｃ60またはＣ70を含む材料を塗布もしくは
蒸着によって、強磁性薄膜層上に被着させて、中空球状
保護膜層を形成したので、強磁性薄膜層を磁気ヘッドと
の摺接による摩耗や破損から保護し、従来の記録媒体よ
り耐久性の高い記録媒体が得られる。

【００３１】また、中空球状分子Ｃ60，Ｃ70は優れた潤
滑剤としての性質を有するので、磁気ヘッドとの摺接状
態を良好にすることができる。

【００３２】また、中空球状分子Ｃ60，Ｃ70は導電性が
高いので、磁気記録媒体の帯電防止に効果を示す。

【００３３】さらに、強磁性体の性質を有する中空球状
分子を強磁性薄膜層に用いたので、記録層自体が耐久性
のある磁気記録媒体が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例１による磁気記録媒体を示す
拡大断面図である。

【図２】中空球状分子Ｃ60の分子構造図である。

【図３】中空球状分子Ｃ70の分子構造図である。

【図４】金属原子を取り込んだ中空球状分子の分子構造
図である。

【図５】実施例４における製造概念図である。

【図６】従来の磁気記録媒体の拡大断面図である。

【符号の説明】

１基体（ポリエステルフィルム）２強磁性金属薄膜層３中空球状保護膜層４金属原子５シート６磁石７磁石９ローラー１０ワインダ１２保護膜層

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】基体と、この基体の面上に形成されてい
る金属もしくはそれらの合金からなる強磁性金属薄膜層
と、この強磁性金属薄膜層のうえに形成されている中空
球状分子であるＣ60またはＣ70を含む材料で構成された
中空球状保護膜層を備えたことを特徴とする磁気記録媒
体。
【請求項２】中空球状保護膜層が、Ｃ60またはＣ60に
所定の物質を化合させてできる中空球状分子で構成され
ていることを特徴とする請求項１記載の磁気記録媒体。
【請求項３】中空球状保護膜層が、Ｃ70またはＣ70に
所定の物質を化合させてできる中空球状分子で構成され
ることを特徴とする請求項１記載の磁気記録媒体。
【請求項４】中空球状保護膜層を構成している中空球
状分子Ｃ70が、記録媒体の磁気ヘッド走行方向に対して
規則的に配列されていることを特徴とする請求項３記載
の磁気記録媒体。
【請求項５】所定の物質が、フッ素、シリコン、酸
素、アルカリ金属などである請求項２または請求項３記
載の磁気記録媒体。
【請求項６】強磁性金属薄膜層の一部もしくは全部
が、強磁性金属原子を中に取り込んだ強磁性体の性質を
示す中空球状分子Ｃ60またはＣ70により構成されている
ことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項７】基体上に、金属もしくはそれらの合金か
らなる強磁性金属薄膜層を設け、この強磁性金属薄膜層
のうえに、一部または全部が中空球状分子で構成された
保護膜層を塗布または蒸着もしくはスパッタリングによ
って被着させること特徴とする磁気記録媒体の製造方
法。
【請求項８】請求項７において、磁気記録媒体の中空
球状保護膜層を構成する材料が液相もしくは気相から固
相に変化するとき、磁界をかけることを特徴とする磁気
記録媒体の製造方法。
【請求項９】請求項８において、磁気記録媒体に対
し、磁気ヘッドの走行方向に対して垂直方向に磁界をか
けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。