JPH05279828A - 深絞り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方法 - Google Patents

深絞り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方法

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JPH05279828A
JPH05279828A JP10399392A JP10399392A JPH05279828A JP H05279828 A JPH05279828 A JP H05279828A JP 10399392 A JP10399392 A JP 10399392A JP 10399392 A JP10399392 A JP 10399392A JP H05279828 A JPH05279828 A JP H05279828A
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hot
plating
steel strip
temperature
temperature range
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JP10399392A
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English (en)
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Seirou Hiwatari
惺朗 日渡
Toshiyuki Higuchi
敏之 樋口
Koichiro Tanaka
幸一郎 田中
Masami Ogura
正美 小倉
Jiro Yamazaki
二郎 山崎
Hideo Kato
秀夫 加藤
Kazuaki Ezaka
一彬 江坂
Junji Haji
純治 土師
Osamu Kono
治 河野
Junichi Wakita
淳一 脇田
Kaoru Kawasaki
薫 川崎
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ZnもしくはZnとAlの合金を主成分とす
る溶融めっきを施した、▲r▼値及びΔr値の良好な加
工用熱延鋼板を生産性よく経済的に製造する。 【構成】 鋳造から熱間圧延に至る過程の熱履歴を制御
することにより鋼板の▲r▼値の向上、Δr値の改善を
図り、かつ、熱間圧延後350℃以上での表面清浄化、
その後350〜600℃へのめっき前板温調整、鋼板へ
のZn系溶融めっきを連続的に行い、少なくとも表面清
浄化完了以降は非酸化性もしくは還元性に雰囲気調整す
る。 【効果】 従来よりも生産性、経済性が格段向上し、耐
食性の良好な加工用熱延鋼板が製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱延鋼板にZnもしくは
ZnとAlの合金を主成分とする溶融めっきを施した、
深絞り性の指標である▲r▼値とr値の異方性を示すΔ
r値の良好な熱延溶融めっき鋼帯の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、代表的な熱延めっき鋼帯としてZ
n系溶融めっき熱延鋼帯が知られており、その一般的製
造方法は、熱間圧延終了後コイル状に巻き取られ、10
0℃未満に3〜4日かけて自然冷却された後、表面スケ
ール除去のため酸洗ラインにおいて80℃程度で処理さ
れ、さらにその後、溶融めっきラインで処理される。な
お、Zn系溶融めっき冷延鋼板の場合は、酸洗と溶融め
っきの間に冷間圧延が行われる。
【0003】また、溶融めっきラインとしては、鋼帯を
700〜800℃程度に加熱し、酸化性雰囲気ガス中で
酸洗工程およびその後の搬送時に鋼板表面に付着したス
マット等と呼ばれる異物(酸化鉄、水酸化鉄、塩化鉄、
珪酸塩等)、油脂等のめっき性を阻害する表面皮膜・汚
物を燃焼除去し、それらの高温での除去に伴って発生す
る鋼帯表面の酸化皮膜をさらに水素雰囲気ガス中で還元
することにより、めっき密着性に必要な表面清浄性を確
保し、その後非酸化性もしくは還元性雰囲気中でめっき
浴温近傍まで冷却して溶融めっきするいわゆるゼンジマ
ー法、あるいは鋼帯を700〜800℃程度に加熱し、
水素雰囲気ガス中で酸洗工程およびその後の搬送時に鋼
板表面に付着したスマット等と呼ばれる異物、油脂等の
めっき性を阻害する表面皮膜・汚物を除去し、めっき密
着性に必要な表面清浄性を確保し、その後非酸化性もし
くは還元性雰囲気中でめっき浴温近傍まで冷却して溶融
めっきするいわゆる無酸化炉法が採用されている。
【0004】上記700〜800℃程度の加熱は冷間圧
延により加工を受けた鋼帯のミクロ組織を再結晶させ、
材質調整することをも目的としているが、熱延鋼板をめ
っき原板とする場合、冷間圧延をめっき前に行わないた
め、ミクロ組織の再結晶・材質調整を目的とした700
〜800℃程度の再結晶焼鈍を行う必要はないが、酸洗
工程およびその後の搬送時に鋼板表面に付着したスマッ
ト等と呼ばれる異物、油脂等のめっき性を阻害する表面
皮膜・汚物を除去し、さらにそれらの高温での除去に伴
って発生する鋼帯表面の酸化皮膜を還元し、めっき密着
性に必要な表面清浄性を確保するため、700〜800
℃程度への加熱が避けられないのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、めっき密着
性に必要な表面清浄性を確保するために、コイルを3〜
4日かけて100℃未満へ冷却した後、700〜800
℃程度の高温まで再加熱することは、コイルの広大な冷
却スペース、膨大な再加熱エネルギー・長大な加熱炉を
必要とするため、操業コスト負担が大きく、製造工期の
短縮が困難である。さらに、その後、両者の中間的温度
であるめっき浴温の500℃程度近傍まで冷却すること
は熱エネルギーの多大な損失である。さらに、高温の水
素雰囲気中では鋼板に水素が吸蔵され、めっき後、この
水素が鋼板とめっきの界面に放出され、めっき表面にふ
くれ状の欠陥を誘起するという欠点がある。また、高温
に加熱されると変態組織の焼き戻し、析出物の再固溶、
粒成長等が短時間で起こり、熱間圧延工程で調整された
鋼板材質の劣化、変動をきたすという欠点がある。
【0006】以上の問題を解決するため、例えばめっき
前処理としてNiまたはNi系合金を被覆する方法が特
開昭61−44168号公報に開示されているが、加熱
温度の低減は可能なものの、前処理温度が150℃以下
であるため一旦コイルを冷却することが避けられず、依
然として広大なコイルの冷却スペースが必要で巻取り後
の所要日数を短縮できないばかりか、コイルの保有熱を
利用することが出来ず、エネルギー損失もまぬがれず、
さらに前処理工程数増のため操業コストが増大する。ま
た、外観の劣化のみならず、耐剥離性、耐食性の劣化に
つながるめっき表面のふくれ状欠陥を避けるため、加熱
温度を600〜720℃に低減する方法が特開昭52−
95543号公報に開示されているが、酸による洗浄の
ため鋼板温度は一旦100℃未満に低下させることが避
けられないため、上記諸問題の解決には至らず、さらに
600〜720℃の加熱温度では依然として膨大なエネ
ルギー・長大な加熱炉を必要とするため、操業コスト低
減効果は小さく、変態組織の焼き戻し、析出物の再固
溶、粒成長等も依然として起こるため、鋼板材質の劣
化、変動を回避することはできない。
【0007】一方、熱延鋼板の▲r▼値の向上について
は、特開昭59−226149号公報に記載のごとく、
Tiを用いた極低炭素鋼を油潤滑圧延で製造する方法、
または特開昭62−192539号公報に記載のごと
く、Nb、Ti等の合金を添加して製造する方法があ
る。しかし、前者に関しては、油潤滑で使用する圧延油
は高濃度であり、必然的に圧延自体がスリップ限界ぎり
ぎりの条件で行うことになり、圧延温度、圧延速度、圧
延可能なサイズ等の制約が大きく生産効率の悪化が否定
できない。また、ロールに付着した油を取り除く等の手
間が必要になり作業性、生産性が悪いという欠点もあ
る。一方後者に関しては、Nb、Ti等の合金を使用す
るので合金コストが高く経済的でないという問題もあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はコイルの保有熱
を利用し、酸洗工程を省略して、連続的に表面清浄化、
温度調整、めっきを行い、かつ、少なくとも表面清浄化
完了以降めっき直前までは非酸化性もしくは還元性に雰
囲気調整することにより、鋼板の温度調整に要する熱エ
ネルギー・設備を極小化し、巻取り以降の所要時間を短
縮し、在庫金利、在庫スペースを極小化することによ
り、納期短縮と操業コスト低減を達成するとともに、良
好なめっき密着性を維持しつつ、めっき表面のふくれ状
欠陥、腰折れ、鋼板材質の劣化、変動を回避することを
第1の課題とし、生産性がよく合金コストの高くならな
い▲r▼値とΔr値の優れた熱延鋼板の製造方法を提供
することを第2の課題とし、これらの2つの課題を解決
した上で、めっき表面性状、めっき密着性、▲r▼値、
Δr値が全て優れている熱延溶融めっき鋼帯の製造方法
を提供する。本発明の要旨は以下〜の通りである。
【0009】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
%、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
℃以上で巻取った後、350℃以上での表面清浄化、3
50〜600℃への温度調整、溶融めっきを連続的に行
い、かつ、少なくとも表面清浄化完了以降めっき直前ま
でを非酸化性もしくは還元性に雰囲気調整することを特
徴とする深絞り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼
帯の製造方法。
【0010】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
%、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
℃以上で巻取った後、巻戻しに際しての歪付加、350
℃以上での表面清浄化、350〜600℃への温度調
整、溶融めっきを連続的に行い、かつ、少なくとも表面
清浄化完了以降めっき直前までを非酸化性もしくは還元
性に雰囲気調整することを特徴とする深絞り性とめっき
性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方法。
【0011】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
%、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
℃以上で巻取った後、350℃以上での表面清浄化、3
50〜600℃への温度調整、表面活性化、溶融めっき
を連続的に行い、かつ、少なくとも表面清浄化完了以降
めっき直前までを非酸化性もしくは還元性に雰囲気調整
することを特徴とする深絞り性とめっき性に優れた熱延
溶融めっき鋼帯の製造方法。
【0012】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
%、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
℃以上で巻取った後、巻戻しに際しての歪付加、350
℃以上での表面清浄化、350〜600℃への温度調
整、表面活性化、溶融めっきを連続的に行い、かつ、少
なくとも表面清浄化完了以降めっき直前までを非酸化性
もしくは還元性に雰囲気調整することを特徴とする深絞
り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方
法。
【0013】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】(1)鋼板化学成分および熱間圧延条件 本発明者等は上記課題を達成するため鋼板化学成分およ
び熱間圧延条件に関して種々の実験検討を行い以下の知
見を得た。
【0015】重量%で、Mn:0.10〜0.60%、
S:0.001〜0.006%を含み、その他Feおよ
び不可避的成分からなる溶鋼を用いて1400〜120
0℃の温度域を5℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固して
鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲を
5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保定保温
し、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以内
にAr3 点+100℃以下の温度で開始し、Ar3 点以
上で等温仕上げ圧延を終了すると、仕上げ圧延時にMn
Sとして析出するS量が仕上げ圧延までの間に充分に固
溶状態で確保され、この確保により仕上げ圧延時に析出
量と析出サイズが制御された微細なMnSが析出し、こ
れによりオーステナイトの再結晶が効果的に制御され、
オーステナイトの圧延集合組織が充分に発達し、この圧
延集合組織から変態したフェライトは(112)面の集
積が高くなり、▲r▼値が向上する。この時前記した仕
上げ圧延により鋼板表層部に大きな剪断歪が働いて該表
層部の集合組織をランダム化するため、Δr値が小さく
なる。
【0016】なお、1200℃から1100℃の温度履
歴であるが、平均降温速度が5℃/分以上30℃/分以
下になればよく、鋳片の厚みによっては単なる空冷でも
いいし、冷媒を用いた冷却あるいは加熱を用いてもよ
い。また、この間完全な保温が一部含まれていてもよ
く、幅や厚みの調整用の圧延が介在してもよい。
【0017】以下、巻取温度の下限の限定理由について
述べる。
【0018】巻取温度が350℃未満では、巻戻し時に
腰折れと称される歪模様が発生し、めっき後の外観品位
を害するとともに、コイルの保有熱の有効利用ができな
くなり、エネルギー損失を生ずるため、めっき前の35
0〜600℃への温度調整に要する設備が長大となり、
設備コストの低減効果を享受できない。さらに、350
℃未満で巻取った場合には、めっき前の350〜600
℃への温度調整により、変態組織の焼き戻し等に起因す
る鋼板材質の劣化、変動を生じるため、350℃以上と
する。
【0019】また、コイルの保有熱を最大限に有効利用
するため、熱間圧延機出側に近接した巻取装置、いわゆ
る近接コイラーを設けてもよい。
【0020】なお、後工程の表面清浄化効率を高めるた
め、スケール厚を薄くする工程条件を採用することも可
能である。例えばAr、N2 等の不活性雰囲気中での圧
延、スケール生成抑制作用を有する溶媒を含む冷却水を
使用した圧延スタンド間やホットランテーブル上での冷
却、巻取ったコイルのN2 シール雰囲気ボックス内での
冷却、フェライト域圧延、圧延直後急冷などの採用が可
能である。
【0021】(2)表面清浄化条件 表面清浄化は酸液を使用しないドライデスケーリングか
つ/または還元に限定される。これにより酸洗工程に起
因する鋼板表面に付着したスマット等と呼ばれるめっき
性を阻害する異物の発生が避けられるため、異物を加熱
除去する必要はなく、それらの高温での除去に伴って発
生する鋼帯表面の酸化皮膜をさらに高温水素雰囲気ガス
中で還元する必要もなく、めっき密着性に必要な表面清
浄性を確保することが可能となる。
【0022】具体的な表面清浄化方法としては真空アー
ク(10-1〜10-6Torr)、水素プラズマ、還元性
ガスによる気相還元、直火バーナーによる直火還元、磁
性研磨(数十ミクロン〜数百ミクロンの磁性粉を使
用)、ショットブラスト、サンドブラスト、グリッドブ
ラスト、ワイヤーブラシ、グラインダーなどを単独ない
しは組合せて利用することができる。
【0023】なお、表面清浄化により得られためっき密
着性に必要な表面清浄性を維持ないしはその効果をより
高めるため、少なくとも表面清浄化完了後めっき直前ま
ではアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気、不活性ガス
と水素の混合雰囲気、水素雰囲気等の非酸化性もしくは
還元性雰囲気に維持する必要がある。非酸化性もしくは
還元性雰囲気中で表面清浄化を実施してもよいことはい
うまでもない。
【0024】特にSi等の易酸化性元素を含有する難め
っき材に対しては還元性雰囲気を採用することが望まし
く、Siスケール模様等のスケール疵・欠陥を有する鋼
帯に対しては真空アークを採用することが望ましい。
【0025】また、表面清浄化は350℃以上で実施し
なければならない。表面清浄化温度が350℃未満では
通板時の曲げ曲げ戻し等に伴う鋼板の変形により腰折れ
と称される歪模様が発生し、外観品位を害する。さら
に、コイルの保有熱の有効利用ができなくなり、エネル
ギー損失を生ずるため、350〜600℃へのめっき前
の板温調整に要する設備が長大となり、設備コストの低
減効果を享受できない。
【0026】なお、表面清浄化効率の向上を目的とした
スケールへのクラック導入を行うために歪を付加するス
キンパス、テンションレベラー、ベンディングロール等
の装置を必要に応じて設けてもよい。これらは歪模様を
細かいピッチで多数発生させる作用も有しており、上記
腰折れの無害化効果も有する。
【0027】(3)表面清浄化後の工程条件 表面清浄化により得られためっき密着性に必要な表面清
浄性を維持ないしはその効果をより高めるため、表面清
浄化完了後、連続的に非酸化性もしくは還元性雰囲気中
で350〜600℃にめっき前板温調整を行い、めっき
を行う。
【0028】以下、めっき前板温の限定理由を述べる。
【0029】350℃未満ではいわゆるぬれ性が確保で
きず、不めっきないしはめっき密着性の劣化を生ずる。
さらに、350℃未満では通板時の曲げ曲げ戻し等に伴
う鋼板の変形により腰折れと称される歪模様が発生し、
外観品位を害する恐れもでてくる。
【0030】一方、600℃を越えると、変態組織の焼
き戻し、析出物の再固溶、粒成長等に起因する鋼板材質
の劣化、変動が生ずるとともに、還元雰囲気中の水素が
鋼板中へ吸蔵されやすくなり、めっき表面のふくれ状欠
陥を生じやすくなる。さらに、ZnとFeの合金化反応
が過度に進行し、Γ相等の脆いめっき層が出現し、めっ
き密着性を劣化させる。また、温度調整に要するエネル
ギーコスト・設備コストの観点からも600℃を越える
と損失が多大となる。
【0031】温度調整設備としてはいわゆるラジアント
チューブ式炉のみならず、設備コンパクト化、熱応答
性、還元能等の観点から、通電加熱、直火還元、誘導加
熱等の急速加熱装置の採用が可能である。また、本製造
方法では熱間圧延工程にて材質が造り込まれているた
め、材質調整のための高温での再結晶焼鈍は必要がな
い。
【0032】さらに、上記ぬれ性の改善、後述の合金化
処理時の合金化特性の改善を目的にめっき前にブラシ研
磨、スキンパス圧下等の表面活性化手段を採用すること
も可能であり、めっき完了後、必要とされる特性・用途
に応じて、いわゆる合金化処理、スキンパス、クロメー
ト処理、ボンデ処理、塗装などの種々の後処理を1種な
いしは2種以上適宜選択することが可能である。
【0033】また、溶融めっき方法として、浴中への鋼
帯浸漬のみならず、ロールコーター、スプレー、電磁ポ
ンプ等による浴の持ち上げ等を利用することも可能であ
り、本発明を真空蒸着、イオンプレーティング等へ利用
することも可能である。
【0034】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼片を連続鋳造
により製造し、表2に示す熱延条件でコイルを製造し、
以下に示す条件で表面清浄化、溶融めっきを行った。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】 (注) CCS:鋳造冷却速度 降温度条件:降温速度20℃/分 FTO:仕上げ圧延開始温度 1200℃×10分一定 FTE:仕上げ圧延終了温度 1100℃×10分一定 MST:凝固開始から 降温速度50℃/分 圧延開始までの時間 CT:巻取温度
【0037】
【実施例1】表1および表2に示した条件で製造された
コイルを用いて、以下の条件で真空アークによるドライ
デスケーリング、溶融めっきを行った。
【0038】(めっき条件) めっき浴温:470℃、めっき前板温:480℃ めっき浴成分:Zn−0.2%Al 雰囲気:80%N2 −20%H2 めっき付着量:190g/m2
【0039】(ドライデスケーリング条件) デスケーリング温度:350℃ 電圧:15V 電流:0.03m2 あたり100A 陰極:鋼帯 陽極:水冷したCu
【0040】その後めっき密着性を図2に模式的に示す
DUPONT衝撃試験機(落下高さ:50cm、落下重
量:27kg重、ポンチ形状:φ10×5mm、ダイス
径:φ20)で、めっき表面のふくれ状欠陥および腰折
れを目視で、材質を▲r▼値測定(引張試験)で評価し
た。なお、評価はめっき後、30日経過してから実施し
た。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】鋼種A〜Fの種々の成分系に対し、優れた
めっき密着性を示し、ふくれ状欠陥・腰折れのない、高
▲r▼値でかつΔrの小さい熱延鋼板が得られた。
【0043】さらに裸耐食性、塗装耐食性を塩水噴霧試
験で、化成処理性を化成皮膜付着量で、塗装密着性をエ
リクセン試験で評価したが、いずれの特性も良好であっ
た。しかし、本発明例に比べ、平均降温条件を満たさな
かった鋼番4、圧延開始温度がAr3 +100℃以下の
条件を満たさなかった鋼番5、凝固時の冷却速度条件を
満たさない鋼番6はいずれも▲r▼値が低く、保温条件
が上限を外れた鋼番7は▲r▼値は良好であるがΔrが
大きく、圧延温度がAr3 未満となった鋼番8は▲r▼
値が低く、Sが含有条件を外れた鋼番9、11、13も
▲r▼値が低い。また、S含有条件と降温保温条件を満
たさない鋼番10は▲r▼値が低く、S含有条件と保温
条件の外れた鋼番12は▲r▼値は良好であるがΔrが
大きく、鋳造開始から仕上げ圧延開始までの時間が長い
鋼番14は▲r▼値が低い。
【0044】
【実施例2】表1および表2に示した条件で製造された
コイルを用いて、以下の条件で磁性研磨と還元の併用に
よる表面清浄化、溶融めっきを行った。
【0045】めっき浴温:470℃、めっき浴成分:Z
n−0.10%Al めっき浴中浸漬時間:8秒 雰囲気:85%N2 −15%H2 、めっき付着量:90
g/m2
【0046】その後、不めっきの有無を目視で、めっき
密着性を図2に示すDUPONT衝撃試験機で、めっき
表面のふくれ状欠陥および腰折れを目視で、材質をr値
測定(引張試験)で評価した。なお、評価はめっき後、
30日経過してから実施した。
【0047】結果を表4に示す。No.1は表面清浄化
温度が高すぎるため、ふくれ状欠陥が発生した。また表
面清浄化温度を条件内に揃えてもNo.2のようにめっ
き前板温が高すぎるとふくれ状欠陥が発生し、さらにZ
nとFeの合金化が過度に進行したため、めっき密着性
も劣化を生じた。また逆にNo.3はめっき前板温が低
すぎるため、めっき密着性が劣化し、不めっき部を生じ
た。No.5は表面清浄化温度が低すぎるため、コイル
巻戻し時に腰折れが発生した。また、No.7は焼鈍温
度が低すぎ、鋼板が再結晶できなかったために高い▲r
▼値は得られなかった。No.9は、適切な表面清浄化
温度が確保できなかった例で、そのために腰折れが発生
した。
【0048】
【表4】
【0049】No.4、6、8は本発明の条件を満たし
ており、優れためっき密着性を示し、ふくれ状欠陥・腰
折れはみとめられず、しかも▲r▼値、Δrともに良好
なめっき製品が得られた(凡例は表3に同じ)。
【0050】
【実施例3】表1および表2に示した条件で製造された
コイルを用いて、以下の条件で真空アークによるドライ
デスケーリング、溶融めっきを行った。
【0051】鋼番:2 デスケーリング温度:380℃ めっき浴中浸漬時間:4秒 雰囲気:100%N2 めっき付着量:150g/m2
【0052】その後めっき密着性を図2に示すDUPO
NT衝撃試験機で、めっき表面のふくれ状欠陥および腰
折れを目視で、材質をr値測定(引張試験)で評価し
た。なお、評価はめっき後、30日経過してから実施し
た。結果を表5に示す。各種浴成分に対し、優れためっ
き密着性を示し、ふくれ状欠陥・腰折れもみとめられ
ず、▲r▼値とΔr値の良好なめっき製品が得られた
(凡例は表3に同じ)。
【0053】
【表5】
【0054】
【実施例4】表1および表2に示した条件で製造された
コイルを用いてショットブラストと水素還元による表面
清浄化、溶融めっきを行い、不めっきの有無を目視で、
めっき密着性を図2に示すDUPONT衝撃試験機で、
めっき表面のふくれ状欠陥および腰折れを目視で、材質
をr値測定(引張試験)で評価した。なお、評価はめっ
き後、30日経過してから実施した。結果を表6に示
す。不めっきがなく、優れためっき密着性を示し、ふく
れ状欠陥・腰折れもみとめられず、▲r▼値とΔr値の
良好なめっき製品が得られた(凡例は表3に同じ)。
【0055】
【表6】 鋼記号:1 表面清浄化温度:500℃ 雰囲気:3%N2 +97%H2 めっき付着量:150g/m2 めっき浴中浸漬時間:10秒
【0056】
【実施例5】表1および表2に示した条件で製造された
コイルを用いて水素還元による表面清浄化、溶融めっき
を行い、不めっきの有無を目視で、めっき密着性を図2
に示すDUPONT衝撃試験機で、めっき表面のふくれ
状欠陥および腰折れを目視で、材質をr値測定(引張試
験)で評価した。なお、評価はめっき後、30日経過し
てから実施した。結果を表7に示す。不めっきがなく、
優れためっき密着性を示し、ふくれ状欠陥・腰折れ・材
質劣化もみとめられず、▲r▼値とΔr値の良好なめっ
き製品が得られた(凡例は表3に同じ)。
【0057】
【表7】 鋼記号:2 表面清浄化温度:600℃ 雰囲気:25%N2 +75%H2 めっき付着量:270g/m2 めっき浴中浸漬時間:6秒
【0058】
【発明の効果】本発明は、従来方法のごとくTi、Nb
等の合金を使用する事なく、また、油潤滑圧延を行うこ
となく、良好な▲r▼値でかつΔrの小さい加工性熱延
鋼板を経済的に生産性、作業性良く製造することを可能
とし、かつ、より経済的に表層に亜鉛めっきを施すこと
ができるので、当業分野にもたらす産業上の効果は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の熱履歴の例を従来法と比較
した模式図である。
【図2】DUPONT衝撃試験機の模式図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 9/48 J C23C 2/40 (72)発明者 小倉 正美 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 山崎 二郎 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 加藤 秀夫 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 江坂 一彬 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内 (72)発明者 土師 純治 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 河野 治 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 脇田 淳一 大分県大分市大字西ノ洲1 新日本製鐵株 式会社大分製鐵所内 (72)発明者 川崎 薫 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
    %、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
    および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
    の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
    て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
    を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
    た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
    内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
    をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
    巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
    ℃以上で巻取った後、350℃以上での表面清浄化、3
    50〜600℃への温度調整、溶融めっきを連続的に行
    い、かつ、少なくとも表面清浄化完了以降めっき直前ま
    でを非酸化性もしくは還元性に雰囲気調整することを特
    徴とする深絞り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼
    帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
    %、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
    および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
    の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
    て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
    を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
    た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
    内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
    をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
    巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
    ℃以上で巻取った後、巻戻しに際しての歪付加、350
    ℃以上での表面清浄化、350〜600℃への温度調
    整、溶融めっきを連続的に行い、かつ、少なくとも表面
    清浄化完了以降めっき直前までを非酸化性もしくは還元
    性に雰囲気調整することを特徴とする深絞り性とめっき
    性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
    %、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
    および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
    の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
    て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
    を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
    た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
    内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
    をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
    巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
    ℃以上で巻取った後、350℃以上での表面清浄化、3
    50〜600℃への温度調整、表面活性化、溶融めっき
    を連続的に行い、かつ、少なくとも表面清浄化完了以降
    めっき直前までを非酸化性もしくは還元性に雰囲気調整
    することを特徴とする深絞り性とめっき性に優れた熱延
    溶融めっき鋼帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量%で、Mn:0.10〜0.60
    %、S:0.001〜0.006%を含み、その他Fe
    および不可避的成分からなる鋼の1400〜1200℃
    の温度範囲を5.0℃/分以上の冷却速度で鋳造凝固し
    て鋳片とし、該鋳片の1200〜1100℃の温度範囲
    を5℃/分以上30℃/分以下の平均降温速度で保温し
    た後、該鋳片の仕上げ圧延を前記凝固開始から60分以
    内にAr3 点+100℃以下の温度域で開始し、該圧延
    をAr3 点以上の等温温度域で終了し、350℃以上で
    巻取って鋼帯とし、該鋼帯を冷却してコイル状に350
    ℃以上で巻取った後、巻戻しに際しての歪付加、350
    ℃以上での表面清浄化、350〜600℃への温度調
    整、表面活性化、溶融めっきを連続的に行い、かつ、少
    なくとも表面清浄化完了以降めっき直前までを非酸化性
    もしくは還元性に雰囲気調整することを特徴とする深絞
    り性とめっき性に優れた熱延溶融めっき鋼帯の製造方
    法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105268740A (zh) * 2014-05-30 2016-01-27 宝山钢铁股份有限公司 热轧免酸洗直接还原热镀产品的生产方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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