JPH05279737A - 鋼板材質予測装置 - Google Patents

鋼板材質予測装置

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JPH05279737A
JPH05279737A JP15940991A JP15940991A JPH05279737A JP H05279737 A JPH05279737 A JP H05279737A JP 15940991 A JP15940991 A JP 15940991A JP 15940991 A JP15940991 A JP 15940991A JP H05279737 A JPH05279737 A JP H05279737A
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JP
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model
temperature
rolling
calculated
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JP15940991A
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English (en)
Inventor
Atsuhiko Yoshie
淳彦 吉江
Masaaki Fujioka
政昭 藤岡
Yoshiyuki Watabe
義之 渡部
Shinichi Shimomura
慎一 下村
Satoshi Akamatsu
聡 赤松
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼板の金属組織、各元素の析出状態、偏析濃
度および材質を計算によって推定することで、製品に対
する物理的評価を行うことなく、鋼板の組織や材質を製
造段階で予測できるようにする。 【構成】 連続鋳造法によって作られた鋼片を温度が常
温まで低下する前に加熱炉に挿入して熱間圧延温度まで
温度調整した後、圧延および冷却を施して製造される鋼
板に対し、前記鋼片の成分、製造条件に基づいて鋼板の
金属組織、析出物の析出状態、偏析の濃度を予測し、さ
らに鋼板の材質を推定する鋼板材質予測装置であって、
成分条件および鋳造条件(鋳片厚、引抜速度、時間な
ど)に基づいて連続鋳造後の鋼片が圧延前の加熱炉に挿
入されるまでの析出物の状態、偏析の状態および金属組
織の状態を鋳造モデル101によって算出し、鋳造後の
鋼片が圧延前の加熱炉に挿入されるまでの温度履歴を熱
片搬送モデル102によって算出し、この結果に基づい
て鋼板の組織や材質を予測する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製品に対する物理的評
価を行うことなく、厚鋼板などの組織材質を製造段階で
予測できるようにした鋼板材質予測装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】例えば、厚鋼板などのユーザにおいて
は、製品の納入と共に、その材質検査結果を添付するこ
とを要求されている場合がある。この要求に対し、従
来、メーカー側は製品の一部を切り出し、これに対し物
理的な特性測定(引張り強度、靱性など)を行ってい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したよう
な人為的な特性測定は、多大な時間を要し、製品の出
荷、納品などに影響を与えている。
【0004】また、現状では、完成品になった後でしか
その材質を知ることができないが、将来的には、製造前
に材質を予測し、要求される材質を精度よく確実に得ら
れる製造条件を設定するような技術の開発が望まれてい
る。
【0005】そこで、本発明の目的は、与えられた条件
に従って、材質予測を自動的に行えるようにした鋼板材
質予測装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、連続鋳造法によって作られた鋼片を温度
が常温まで低下する前に加熱炉に挿入して熱間圧延温度
まで温度調整した後、圧延および冷却を施して製造され
る鋼板に対し、前記鋼片の成分、製造条件に基づいて鋼
板の金属組織、析出物の析出状態、偏析の濃度を予測
し、さらに鋼板の材質を推定する鋼板材質予測装置にお
いて、成分条件および鋳造条件に基づいて連続鋳造後の
鋼片が圧延前の加熱炉に挿入されるまでの析出物の状
態、偏析の状態及び金属組織の状態を鋳造モデルによっ
て算出する第1の計算手段と、鋳造後の鋼片が圧延前の
加熱炉に挿入されるまでの温度履歴を熱片搬送モデルに
よって算出する第2の計算手段とを設けるようにしてい
る。
【0007】
【作用】上記した手段によれば、鋳片厚、引抜速度、時
間などの鋳造条件、及び成分条件により連続鋳造後の鋼
片が圧延前の状態、偏析状態、金属組織の状態などが鋳
造モデルによって算出され、鋳造後の鋼片が圧延前の加
熱炉に挿入されるまでの温度履歴が熱片搬送モデルによ
って算出され、これらの結果により鋼板の金属組織、各
元素の析出状態、偏析濃度及び材質を計算により推定す
る。したがって、製品に対して物理的評価を行うことな
く、厚鋼板などの組織や材質を製造段階で予測すること
ができる。また、要求される材質仕様を確実に実現可能
な製造条件が設定可能であり、従来のように完成品に対
する検査測定が不要になる。
【0008】
【実施例】図1は本発明による鋼板材質予測方法を示す
演算フローチャートである。また、図2は本発明が適用
される鋼板製造ラインの例を示す設備構成図である。な
お、以下においては、厚鋼板の製造を例に説明する。
【0009】図2に示すように、鋼板の製造設備として
は、まず成分を調整する製鋼工程12、溶鋼を鋳造する
連続鋳造設備13がある。さらに、連続鋳造された鋳片
の温度を低下させずに、圧延前の加熱炉まで搬送する熱
片搬送14がある。製鋼工程12及び連続鋳造設備13
は上位計算機によって管理される製鋼プロセスコンピュ
ータ15によって制御される。
【0010】一方、圧延設備は、圧延の前にスラブ(例
えば、長さ2〜4m、幅1〜2.5m、厚み250mm前
後)を加熱する加熱炉2、大まかな圧延を行う粗圧延機
3、粗圧延された鋼板を要求板厚に圧延する仕上圧延機
4、この仕上圧延機4によって圧延された鋼板に生じた
反りを調整するホットレベラ(HL)5、このホットレ
ベラ5を出た厚鋼板1を冷却する冷却装置6の各々を備
えて構成されている。
【0011】なお、加熱炉2、粗圧延機3、仕上圧延機
4、ホットレベラ5及び冷却機6の各々には、その駆動
を制御し、また稼動中の情報を得るためにプロセスコン
ピュータ(以下、プロコンという)が接続されている。
また、製鋼工程および連続鋳造、造塊工程の駆動を制御
し、また稼動中の情報を得るためにもプロセスコンピュ
ータが接続されている(製鋼プロコン15、加熱プロコ
ン7、圧延プロコン8、及び冷却プロコン9)。これら
プロコンは、中央制御室10に設置された上位コンピュ
ータ(不図示)に接続され、この上位コンピュータは生
産計画に従って製鋼プロコン15、加熱プロコン7、圧
延プロコン8及び冷却プロコン9を管理する。また、製
品となった厚鋼板1に対し、機械試験を行う場合の機械
試験システム11が設けられ、その試験結果は中央制御
室10に送られる。
【0012】次に、図1に示す鋼板材質予測処理につい
て説明する。図1の処理を実行するには、これを実現す
るソフトウェアを作成し、これをコンピュータにロード
すればよい。
【0013】本発明による鋼板材質予測方法は、大別し
て鋳造モデル、圧延モデル及び組織・材質モデルから成
る。
【0014】鋳造モデル101は、成分条件と鋳造条件
をもとに、連続鋳造後の鋼片が圧延前の加熱炉に挿入さ
れるまでの析出物の状態、偏析の状態および金属組織の
状態を計算するモデルであり、その詳細は図3及び図4
に示すとおりである。
【0015】熱片搬送モデル102は、鋳造後の鋼片が
圧延前の加熱炉に挿入されるまでの温度履歴を計算する
モデルであり、その詳細は図5に示すとおりである。
【0016】圧延モデル103は鋳造モデルおよび熱片
搬送モデルで計算された偏析濃度、析出物状態、金属組
織をもとに、圧延および引続き行われる冷却中の加熱、
温度保持、圧延、変態を通じての元素の析出、元素の拡
散、金属組織の状態を計算するモデルであり、その詳細
は図7に示すとおりである。
【0017】組織・材質モデル104は、固溶強化、析
出硬化、フェライト粒径の影響を分離して定式化するこ
とで材質を算出するために設けられたモデルであり、そ
の詳細は図11に示すとおりである。
【0018】次に、各モデルの演算の詳細について図3
〜図11を参照して説明する。
【0019】図3は鋳造モデル101の処理の詳細を示
すフローチャートである。成分305をインプットし、
次に連続鋳造の場合は鋳片厚および引抜き速度、冷却水
量密度および引抜き後の経過時間をもとに鋳造温度モデ
ル101で計算された温度履歴304をインプットし、
計算に必要な初期状態を設定する(ステップ306)。
【0020】また鋳造後温度低下中に熱片搬送用の保熱
炉または保熱台車に挿入する場合は図5に示す熱片搬送
モデル303で計算された温度履歴304をインプット
し、計算に必要な初期状態を設定する(ステップ30
6)。ついで状態図の計算を行う(ステップ401)。
【0021】また、成分条件305は、wt%で示さ
れ、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(M
n)、燐(P)、硫黄(S)、銅(Cu)、ニッケル
(Ni)、クローム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニ
オブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、タ
ンタル(Ta)、アルミニウム(Al)及び窒素
(N)、希土類元素(Rem)、カルシウム(Ca)、
ボロン(B)、タングステン(W)、酸素(O)などで
ある。
【0022】次に、析出物の固溶量および析出物粒径の
計算を行う(ステップ402)。次に状態図よりγ/α
変態が開始したか否かを判定し(ステップ403)、否
であればγ1相になるまで温度が低下したか否かを判定
する(ステップ404)。否であれば、液相、δ相、γ
相の分率を計算し(ステップ405)、γ相については
等軸晶、柱状晶それぞれの分率を計算する(ステップ4
06)。また合せて合金元素の相間の分配を計算して
(ステップ408)偏析濃度の計算を行う(ステップ4
09)。この計算をγ1相となる温度まで繰返す。ステ
ップ404でγ1相となる温度以下であると判定された
場合は、γ粒径の粒成長(ステップ407)および合金
元素の拡散による偏析濃度の変化(ステップ410)を
計算する。この計算をγ/α変態開始となる温度まで繰
返す。次にステップ403でγ/α変態開始温度まで温
度が低下したと判定された場合は、変態モデル411に
よりフェライト粒径、各相の組織分率、析出物の状態、
偏析濃度を計算する(ステップ412)。この変態モデ
ルの詳細は図6に示すとおりである。
【0023】これらの計算の過程で、鋳片が保熱炉また
は保熱台車に挿入された場合(ステップ415,41
6)は、その時点の金属組織の状態、析出物の状態、偏
析濃度を初期値として圧延モデルにインプットする(ス
テップ414)。
【0024】図5は熱片搬送モデルの詳細である。鋳片
が保熱炉または保熱台車に挿入された時点でのスラブ厚
と鋳片温度501と、保熱炉または保熱台車の雰囲気温
度および保持時間502を熱片搬送温度モデル503へ
インプットし、圧延前の加熱炉挿入までの温度履歴を計
算する。
【0025】図6は変態モデル411の処理を詳細に示
すフローチャートである。
【0026】鋼の変態挙動は変態前のγ状態(γ粒径あ
るいは単位体積当りの粒界面積、残留転位密度、析出物
の固溶・析出状態)、冷却速度の影響を受ける。本モデ
ルはこれらをステップ600,601,602から入力
し、またスラブ位置による成分変動の影響は、偏析の状
態603より入力し、変態の進行及び粒界フェライト、
粒内フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサ
イトの各組織分率、さらにフェライトのうち形状が粒状
のものについては、その粒径及び分率を計算するもので
ある。この計算方法は以下の通りである。まず、当該成
分における状態図を計算し(ステップ604)各組織が
熱力学的に生成可能な条件(温度領域)を求める。次
に、生成可能と判断された組織について任意の微小時間
内の変態量の増分(ステップ606)及びフェライトに
ついてはこの間の生成粒数の増分(ステップ605)を
求める。
【0027】また、フェライトが生成する場合には形状
が針状か粒状かの判断を行い、粒状である場合にはステ
ップ605で求めた生成粒数を粒状フェライトの粒数の
増分、ステップ606で求めた変態量の増分を粒状フェ
ライト量の増分とし、針状である場合には変態量の増分
のみを求める(ステップ607)。次に、変態に伴う発
熱等を冷却温度モデルにフィードバックするためにステ
ップ606で得られた変態量に応じた温度変化を計算す
る(ステップ608)。以上の計算を各板厚位置につい
て冷却終了まで繰返し、変態量及び粒状フェライト粒数
の増分を加算することにより、最終的な組織の各組織分
率、粒状フェライトの分率及びその粒数を求めることが
できる。更に、板厚方向のm点について計算が終了した
後(ステップ609)に粒状フェライトの粒径を粒数と
分率から求める(ステップ610)。また、ステップ6
06,608の結果を基にフェライト、パーライト、ベ
イナイトの各々が生成した平均温度(平均生成温度)を
計算する(ステップ611)。以上の計算でフェライト
を粒状、針状に分離しておく理由は、粒状や針状の形状
が材質に関与することに着目したものであって、材質の
予測を高精度に行うことを可能とするためである。ま
た、平均生成温度は生成した温度によって材質が異るこ
とから必要になるもので、前述の組織、材質モデル10
4の硬度算出で用いられるものである。
【0028】図7は予備圧延モデルの詳細を示すフロー
チャートである。ここでの計算は主として、加熱、保定
間の計算、圧延工程の計算及び圧延終了後の変態の計算
からなる。
【0029】鋳造モデル101で計算された偏析濃度7
01、析出物の状態702、金属組織703の各々を入
力する。さらに、スラブ厚・炉雰囲気温度・時間情報7
06を用いて加熱モデル705により算出された温度履
歴707を得る。この計算結果及びスラブ厚・昇熱速度
・保定温度・時間情報708に基づいて初期状態モデル
704により加熱γ粒径、析出物の状態710を算出す
る。さらに拡散モデル709により偏析濃度711を計
算する。これらの計算結果は、熱間加工モデル712に
入力される。
【0030】熱間加工モデル712の計算に際しては、
温度(パス間時間)713及び相当歪・歪速度714が
必要であるが、温度713は圧延温度モデル715から
求められ、相当歪・歪速度714は歪モデル716から
求められる。そして、圧延温度モデル715及び歪モデ
ル716は、入・出側厚、加熱温度、パス間時間、ロー
ル径・回転数情報717を用いて算出される。
【0031】熱間加工モデル712の計算結果600
(圧延後γ粒径、残留転位密度、偏析濃度)、析出物状
態601、温度履歴602(圧延終了後の冷却温度モデ
ルから算出)の各々は、変態モデル411に入力され
る。析出物状態601は、圧延温度モデル715で得ら
れた温度717、成分718に基づいて析出モデル71
9で計算することにより求められる。
【0032】変態モデル411は、図6に示したものと
同一であり、冷却温度モデル721によって得られた温
度履歴602に基づいてフェライト粒径、組織分率、平
均生成温度、析出物状態及び偏析濃度723を算出す
る。冷却温度モデル721は、変態モデル411による
変態量720及び空冷・水冷区分、水量密度・水冷装置
内通板速度、成分情報722に基づいて温度履歴602
を算出する。
【0033】図8は図7に示した初期状態モデル704
の詳細処理を示すフローチャートである。
【0034】まず、析出物状態801、偏析濃度802
及び金属組織803の各々を定数・初期値設定処理80
4へ入力する。次に、スラブ温度・時間情報707又は
加熱条件708よりスラブ加熱履歴をインプットし、計
算に必要な定数及び初期値を設定する(ステップ80
4)。ついで、状態図の計算を行う(ステップ80
5)。
【0035】次に、加熱時間が設定値をオーバーしたか
否か判定(ステップ806)し、否であれば析出物の固
溶量及び析出物粒径の計算を行う(ステップ807)。
【0036】この後、設定時間内であればγ粒成長を計
算する。ただし、周知のように鋼材は、温度が高くなる
に伴って結晶構造の変化によってα粒状態あるいはθ
(セメンタイト)からγ粒状態へ変態する。
【0037】そこで、このγ粒の成長状態を、ステップ
805で計算された各状態ごとに異った手法により計算
する。すなわち、温度に応じてγ単相域のほかγ+α
域、γ+α+θ域の各々についてもγ粒成長の計算を行
うのである(ステップ808)。
【0038】熱間加工モデル712は、再結晶の潜伏期
を定式化することにより、回復と再結晶を明確にし、圧
延中と圧延後の粒径(単位体積当りの粒界面積)や残留
転位密度などのオーステナイト状態を安定的に計算する
ために設けられている。
【0039】この熱間加工モデル712は、図7に示し
たようにγ粒径析出物状態、偏析濃度710、圧延温度
モデル715に基づく温度・パス間時間情報713、及
び歪モデル716に基づく相当歪・歪速度情報714と
により、演算結果600(圧延γ粒径、転位密度、歪
み)を演算する。なお、圧延温度モデル715及び歪モ
デル716は、圧延条件717(入側板厚,出側板厚,
加熱温度,パス間時間,ロール径,ロール回転数)に基
づいて算出される。
【0040】析出モデル719は、核生成と成長を分離
し、さらに個々の析出粒子の成長を考慮することで圧延
中及び圧延後のオーステナイト中における析出物状態を
算出するために設けられている。この析出モデル719
により析出物状態を求めるに際しては、圧延温度モデル
715による温度情報717、成分情報718及び熱間
加工モデルの演算結果600に基づいて析出元素(例え
ば、Ti,Ta,V,Nb)の固溶量、析出量、析出物
平均粒径を演算し、析出物状態601として出力する。
【0041】図9は熱間加工モデル712の処理の詳細
を示すフローチャートである。
【0042】この処理は、加熱γ粒径710、析出物の
状態901、偏析濃度902、温度・パス間時間情報7
13及び相当歪・歪速度情報714を入力条件として行
われる。鋼板を複数回パスさせて圧延を行った場合、各
パス間において、圧延→回復→再結晶を経る過程で、転
位密度が図10のように変化する。このため、各パス毎
に再結晶、回復を計算する必要がある。各パス毎及び圧
延終了後のγ粒径、平均転位密度等の計算は以下のよう
に行う。
【0043】まず、鋼板の内部の状態を知るために、表
面から中心部に向って一定距離ごとにm個の位置を定め
る(ステップ903)。そして、この各々について前記
入力条件に基づき、圧延後のγの単位体積当りの粒界面
積を計算する(ステップ904)。
【0044】圧延の圧下量が大きいと、瞬時的に再結晶
即ち動的再結晶を生じる。そこで、動的再結晶が生じて
いるか否かを判定し、生じている場合には転位密度及び
再結晶粒径を計算する(ステップ905)。動的再結晶
が完了しない場合には、この後再結晶が生じるまでの時
間を計算し、さらに回復による転位密度の減少及び静的
再結晶を計算(再結晶率、再結晶粒径)する(ステップ
906)。
【0045】また、再結晶が終了している場合には粒成
長を計算し(ステップ907)、さらに結晶粒の平均粒
径及び平均転位密度を算出(ステップ908)する。こ
れを最終パスまで繰返すことにより(ステップ909)
最終パス情報(板厚m点のオーステナイト粒界面積及び
その転位密度)を得る(ステップ910)。
【0046】図11は組織・材質モデル104の処理の
詳細を示すフローチャートである。
【0047】ここでは、鋼板1の材質を表現する硬度、
引張強さ、及び靱性を計算することを目的としている。
まず、成分情報718、析出物の状態情報601、偏析
濃度1101及び変態モデルの演算結果723の各入力
条件に基づいて、フェライト、ベイナイト及びパーライ
トの各々の硬さを計算する(ステップ1102)。
【0048】さらに、粒径情報及び成分情報に基づいて
降伏点の計算(ステップ1103)を行い、ついでステ
ップ1102による硬度計算値を用いて引張強さを計算
(ステップ1104)する。また、粒径情報、成分情報
及び硬度計算値の各々に基づいて靱性を計算する(ステ
ップ1105)。以上の処理をm個の点について実行し
(ステップ1106)、すべてについて行われた場合に
は、処理が終了し、材質予測を行うことができる。この
結果は、フロッピーディスクなどの記録媒体に保存され
ると共に、プリンタによって打出される。 <試験例>図12〜図14は本発明による試験条件の一
例を示し、図12は8品種(鋼ナンバー1〜8)の鋼の
各々の化学成分(重量%)を示し、図13は13種類の
鋼(鋼板番号A〜M)に対する圧延条件を示している。
また、図14は9ロットの厚鋼板をサンプルとし、各々
に対する長さ方向(L)にカットしたサンプルについて
機械的性質及び組織の比較結果を示している。
【0049】ここでは、顕微鏡などによる実測値と上記
した予測方法による計算値との比較を示しているが、図
より明らかなように、実測値と計算値とは近似し、極め
て高い精度で予測できたことがわかる。
【0050】このように、高信頼な予測が可能になるこ
とから、将来的には、客先が要求する材質に応じ製品の
製造条件を容易に算出することも可能になる。
【0051】なお、以上の説明においては、厚鋼板のス
ラブ再加熱プロセスを例にしたが、熱延鋼材全般に本発
明は適用することが可能である。
【0052】
【発明の効果】上記したように、本発明によれば、連続
鋳造法によって作られた鋼片を温度が常温まで低下する
前に加熱炉に挿入して熱間圧延温度まで温度調整した
後、圧延及び冷却を施して製造される鋼板に対し、前記
鋼片の成分、製造条件に基づいて鋼板の金属組織、析出
物の析出状態、偏析の濃度を予測し、さらに鋼板の材質
を推定する鋼板材質予測装置において、成分条件及び鋳
造条件に基づいて連続鋳造後の鋼片が圧延前の加熱炉に
挿入されるまでの析出物の状態、偏析の状態及び金属組
織の状態を鋳造モデルによって算出する第1の計算手段
と、鋳造後の鋼片が圧延前の加熱炉に挿入されるまでの
温度履歴を熱片搬送モデルによって算出する第2の計算
手段とを設けるようにしたので、製品に対して物理的評
価を行うことなく、厚鋼板などの組織や材質を製造段階
で予測することができる。また、要求される材質仕様を
確実に実現可能な製造条件を設定でき、従来のように完
成品に対する検査測定を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鋼板材質予測装置の予測処理を示
すフローチャートである。
【図2】本発明が適用される鋼板製造ラインの概要を示
す設備構成図である。
【図3】本発明に係る鋳造モデルの詳細を示すフローチ
ャートである。
【図4】図3に続く鋳造モデルの詳細を示すフローチャ
ートである。
【図5】本発明に係る熱片搬送モデルの詳細を示すフロ
ーチャートである。
【図6】変態モデルの詳細を示すフローチャートであ
る。
【図7】圧延モデルの詳細を示すフローチャートであ
る。
【図8】図7に示した初期状態モデルの詳細処理を示す
フローチャートである。
【図9】熱間加工モデルの詳細処理を示すフローチャー
トである。
【図10】圧延式の転位密度変化を示す特性図である。
【図11】組織・材質モデルの詳細を示すフローチャー
トである。
【図12】鋼の化学成分を示す説明図である。
【図13】鋼の圧延条件の一例を示す説明図である。
【図14】サンプル厚鋼板を長さ方向にカットした場合
の機械的性質及び組織を比較した結果を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 厚鋼板 2 加熱炉 3 粗圧延機 4 仕上圧延機 6 冷却装置 7 加熱プロセスコンピュータ 8 圧延プロセスコンピュータ 9 冷却プロセスコンピュータ 10 中央制御室 15 製鋼プロセスコンピュータ 101 鋳造モデル 102 熱片搬送モデル 103 圧延モデル 104 組織・材質モデル
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年3月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】 本発明による鋼板材質予測方法は、大別
して鋳造モデル、鋳片搬送モデル、圧延モデル及び組織
モデル、材質モデルから成る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】 また、フェライトが生成する場合には形
状が針状か粒状かの判断を行い、粒状である場合にはス
テップ605で求めた生成粒数を粒状フェライトの粒数
の増分、ステップ606で求めた変態量の増分を粒状フ
ェライト量の増分とし、針状である場合には変態量の増
分のみを求める(ステップ607)。次に、変態に伴う
発熱等を冷却温度モデルにフィードバックするためにス
テップ606で得られた変態量に応じた温度変化を計算
する(ステップ608)。以上の計算を各板厚位置につ
いて変態終了まで繰返し、変態量及び粒状フェライト粒
数の増分を加算することにより、最終的な組織の各組織
分率、粒状フェライトの分率及びその粒数を求めること
ができる。更に、板厚方向のm点について計算が終了し
た後(ステップ609)に粒状フェライトの粒径を粒数
と分率から求める(ステップ610)。また、ステップ
606,608の結果を基にフェライト,パーライト,
ベイナイトの各々が生成した平均温度(平均生成温度)
を計算する(ステップ611)。以上の計算でフェライ
トを粒状、針状に分離しておく理由は、粒状や針状の形
状が材質に関与することに着目したものであって、材質
の予測を高精度に行うことを可能とするためである。ま
た、平均生成温度は生成した温度によって材質が異なる
ことから必要になるもので、前述の組織、材質モデル1
04の硬度算出で用いられるものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】 図7は圧延モデルの詳細を示すフローチ
ャートである。ここでの計算は主として、加熱、保定間
の計算、圧延工程の計算及び圧延終了後の変態の計算か
らなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正内容】
【0048】 さらに、粒径情報及び成分情報に基づい
て降伏点の計算(ステップ1103)を行い、ついでス
テップ1102による硬度計算値を用いて引張強さを計
算(ステップ1104)する。また、粒径情報、成分情
報及び硬度計算値の各々に基づいて靭性を計算する(ス
テップ1105)。以上の処理をm個の点について実行
し(ステップ1106)、すべてについて行われた場合
には、処理が終了し、材質予測を行うことができる。こ
の結果は、フロッピーディスクなどの記録媒体に保存さ
れると共に、プリンタによって打出される。 〈試験例〉図12〜図14は本発明による試験条件の一
例を示し、図12は8品種(鋼ナンバー1〜8)の鋼の
各々の化学成分(重量%)を示し、図13は13種類の
鋼(鋼板番号A〜M)に対する圧延条件を示している。
また、図14は13ロットの厚鋼板をサンプルとし、各
々に対する長さ方向(L)にカットしたサンプルについ
て機械的性質及び組織の比較結果を示している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】 圧延中の転位密度変化を示す特性図であ
る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下村 慎一 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 赤松 聡 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社中央研究本部内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続鋳造法によって作られた鋼片を温度
    が常温まで低下する前に加熱炉に挿入して熱間圧延温度
    まで温度調整した後、圧延および冷却を施して製造され
    る鋼板に対し、前記鋼片の成分、製造条件に基づいて鋼
    板の金属組織、析出物の析出状態、偏析の濃度を予測
    し、さらに鋼板の材質を推定する鋼板材質予測装置にお
    いて、成分条件および鋳造条件に基づいて連続鋳造後の
    鋼片が圧延前の加熱炉に挿入されるまでの析出物の状
    態、偏析の状態及び金属組織の状態を鋳造モデルによっ
    て算出する第1の計算手段と、鋳造後の鋼片が圧延前の
    加熱炉に挿入されるまでの温度履歴を熱片搬送モデルに
    よって算出する第2の計算手段とを設けることを特徴と
    する鋼板材質予測装置。
JP15940991A 1991-06-04 1991-06-04 鋼板材質予測装置 Pending JPH05279737A (ja)

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