JP2509486B2 - 鋼板の材質予測方法 - Google Patents

鋼板の材質予測方法

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JP2509486B2
JP2509486B2 JP3207165A JP20716591A JP2509486B2 JP 2509486 B2 JP2509486 B2 JP 2509486B2 JP 3207165 A JP3207165 A JP 3207165A JP 20716591 A JP20716591 A JP 20716591A JP 2509486 B2 JP2509486 B2 JP 2509486B2
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政昭 藤岡
義之 渡部
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製品に対する物理的評
価を行うことなく、厚鋼板などの組織や材質を製造段階
で予測できるようにした鋼板の材質予測方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】例えば、厚鋼板などのユーザにおいて
は、製品の納入と共に、その材質検査結果を添付するこ
とを要求してくる場合がある。この要求に対し、従来、
メーカー側は製品の一部を切り出し、これに対し物理的
な特性測定(引張り強度,靭性など)を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したよう
な人為的な特性測定は、多大な時間を要し、製品の出荷
・納品などに影響を与えている。
【0004】また、現状では、完成品になった後でしか
その材質を知ることができないが、将来的には、製造前
に材質を予測し、要求される材質を精度よく確実に得ら
れる製造条件を設定するような技術の開発が望まれてい
る。
【0005】そこで、本発明の目的は、与えられた条件
に従って、材質予測を自動的に行えるようにした鋼板の
材質予測方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、鋼片の厚みと鋼成分、鋳造条件、均熱拡
散熱処理条件、予備圧延条件、圧延条件(入側及び出側
の鋼板厚み、パス間時間など)に基づいて圧延後のγ組
織を算出し、この算出結果及び冷却条件(水冷・空冷領
域、冷却帯通板速度など)に基づいて変態後の金属組織
の単位(フェライト粒径、マルテンサイトのラスサイズ
など)及び組織分率を算出し、この算出結果及び再加熱
条件、焼入れ条件、焼き戻し条件(再加熱温度、焼入れ
温度、焼き戻し温度、焼き戻し炉内保持時間、昇温速度
など)に基づいて焼き戻し後の析出物の析出状態、残留
γの分解状態を算出し、これらによって鋼板の材質を推
定するようにしている。
【0007】
【作用】上記した手段によれば、鋼板の製造実績もしく
は製造前に設定される条件を入力し演算させることによ
り、材質(引張強度,靭性など)の判定の鍵となる組織
構成相の分率、平均生成温度、金属組織単位の寸法及び
各元素の固溶・析出状態等が製造工程の任意の段階で求
めることができる。これにより、製造段階で材質予測を
行うことができ、また、要求される材質仕様を確実に実
現可能な製造条件が設定可能であり、従来のように完成
品に対する検査測定が不要になる。
【0008】
【実施例】図1は本発明が適用される鋼板製造ラインの
例を示す設備構成図である。また図2は、本発明による
鋼板の材質予測法を示す演算フローチャートである。
【0009】以下においては、厚鋼板の製造を例に説明
する。
【0010】図1に示すように、鋼板の製造設備として
は、まず成分を調整する製鋼工程102、溶鋼を鋳造す
る連続鋳造設備103または鋼塊に鋳造する造塊を行う
設備104がある。さらに、スラブの偏析を高温の熱処
理により軽減させる均熱拡散熱処理工程105、造塊後
の鋼塊を分塊するかまたは連続鋳造鋳片の厚みを減ずる
予備圧延工程106がある。この均熱拡散処理工程10
5、予備圧延工程106は場合によって、その片方また
は両方を使用すれば良く、またどちらを先に使用しても
良い。また特に使用しなくても良い。
【0011】さらに、圧延の前に鋼片(例えば、長さ1
〜5m,幅1〜2.5m,厚み250mm前後)を加熱
する加熱炉1,大まかな圧延を行う粗圧延機2,粗圧延
された鋼板を要求板厚に圧延する仕上圧延機3,この仕
上圧延機3によって圧延された鋼板に生じた反りを調整
するホットレベラ(HL)4,このホットレベラ4を出
た厚鋼板を冷却する冷却装置5及び厚鋼板を熱処理する
ための再加熱装置6.1,焼入れ装置6.2,焼き戻し
装置6.3の各々を備えて構成されている。
【0012】また、製鋼工程及び連続鋳造、造塊工程の
駆動を制御し、また稼働中の情報を得るためにプロセス
コンピュータが接続されている(製鋼分塊プロコン10
1)。
【0013】さらに、加熱炉1,粗圧延機2,仕上圧延
機3,ホットレベラ4,冷却装置5及び熱処理装置6.
1〜6.3の各々には、その駆動を制御し、また稼働中
の情報を得るためにプロセスコンピュータ(以下、プロ
コンという)が接続されている(加熱プロコン7,圧延
プロコン8,冷却プロコン9及び熱処理プロコン200
1)。これらプロコンは、中央制御室10に設置された
上位コンピュータ(不図示)に接続され、この上位コン
ピュータは生産計画に従って加熱プロコン7,圧延プロ
コン8,冷却プロコン9及び熱処理プロコン2001を
管理する。また、製品となった厚鋼板に対し、材質試験
を行うための機械試験システム11が設けられ、その試
験結果は中央制御室10に送られる。
【0014】次に、図2に示す鋼板の材質予測法につい
て説明する。
【0015】図2の処理を実行するには、これを実現す
るソフトウェアを作成し、これをコンピュータにロード
すればよい。
【0016】本発明による鋼板材質予測方法は、大別し
て鋳造モデル,均熱拡散熱処理モデル,予備圧延モデ
ル,圧延モデル,熱処理モデル及び組織・材質モデルか
ら成る。
【0017】鋳造モデル107は、成分条件と鋳造条件
をもとに、連続鋳造または造塊後の析出物の状態、偏析
の状態及び金属組織を計算するモデルであり、その詳細
は図3に示す通りである。
【0018】均熱拡散熱処理モデル108は鋳造モデル
により計算された偏析濃度、析出物状態及び金属組織を
もとに、均熱拡散熱処理中の加熱、温度保持、変態を通
じての元素の析出、元素の拡散、金属組織の状態を計算
するモデルであり、その詳細は図4に示す通りである。
【0019】予備圧延モデル109は鋳造モデルまたは
均熱拡散熱処理モデルで計算された偏析濃度、析出物状
態及び金属組織をもとに、予備圧延または分塊圧延中の
加熱、温度保持、圧延、変態を通じての元素の析出、元
素の拡散、金属組織の状態を計算するモデルであり、そ
の詳細は図5に示す通りである。
【0020】圧延モデル110は鋳造モデルまたは均熱
拡散熱処理モデルまたは予備圧延モデルで計算された偏
析濃度、析出物状態、金属組織をもとに、圧延及び引き
続き行われる冷却中の加熱、温度保持、圧延、変態を通
じての元素の析出、元素の拡散、金属組織の状態を計算
するモデルであり、その詳細は図5に示すものと同じで
ある。
【0021】熱処理モデル1001は、鋳造モデル、均
熱拡散熱処理モデル、予備圧延モデル及び圧延モデルで
計算された偏析濃度、析出物状態、金属組織をもとに、
熱処理中の加熱、保持、変態を通じて元素の析出、元素
の拡散、金属組織の状態を計算するモデルであり、その
詳細は図6に示す通りである。
【0022】組織・材質モデル111は、固溶強化、析
出硬化、金属組織単位の大きさの影響を分離して定式化
することで材質を算出するために設けられたモデルであ
り、その詳細は図7に示す通りである。
【0023】次に、各モデルの演算の詳細について図3
〜図7を参照して説明する。
【0024】図3は鋳造モデル107の処理の詳細を示
すフローチャートである。成分115をインプットし、
次に連続鋳造の場合は鋳片厚及び引抜き速度、冷却水量
密度及び引抜き後の経過時間を、また造塊法の場合は鋼
塊サイズをもとに鋳造温度モデル114で計算された温
度履歴116をインプットし、計算に必要な初期状態を
設定する(ステップ118)。次いで状態図の計算を行
う(ステップ119)。
【0025】また成分条件115は、WT%で示され、
炭素(C),シリコン(Si),マンガン(Mn),燐
(P),硫黄(S),銅(Cu),ニッケル(Ni),
クロム(Cr),モリブデン(Mo),ニオブ(N
b),バナジウム(V),チタン(Ti),タンタル
(Ta),アルミニウム(Al),ボロン(B),タン
グステン(W),コバルト(Co),カルシウム(C
a),希土類元素(Rem),窒素(N),及び酸素
(O)等である。
【0026】次に、析出物の固溶量及び析出物粒径の計
算を行う(ステップ121)。次に状態図よりγ/α変
態が開始したか否かを判定し(ステップ133)、否で
あればγ1相になるまで温度が低下したか否かを判定す
る(ステップ122)。さらに、この結果が否であれ
ば、液相、δ相、γ相の分率を計算し(ステップ12
3)、γ相については等軸晶、柱状晶それぞれの分率を
計算する(ステップ124)。また合わせて合金元素の
相間の分配を計算して(ステップ126)、偏析濃度の
計算を行う(ステップ127)。この計算をγ1相とな
る温度まで繰り返す。ステップ122でγ1相となる温
度以下であると判定された場合は、γ粒径の粒成長(ス
テップ125)及び合金元素の拡散による偏析濃度の変
化(ステップ129)を計算する。この計算をγ/α変
態開始となる温度まで繰り返す。次にステップ133で
γ/α変態開始温度まで温度が低下したと判定された場
合は、変態モデル38によりフェライト粒径、各相の組
織分率、析出物の状態、偏析濃度を計算する(ステップ
130)。この変態モデルの詳細は図8に示す通りであ
る。
【0027】図8は変態モデル38の処理を詳細に示す
フローチャートである。
【0028】鋼の変態挙動は変態前のγ状態(γ粒径あ
るいは単位体積当たりの粒界面積,残留転移密度,析出
物の固溶・析出状態),冷却速度の影響を受ける。本モ
デルはこれらを33,37,40から入力し、また、ス
ラブ位置による成分変動の影響は偏析の状態128より
入力し、変態の進行及び粒界フェライト,粒内フェライ
ト,パーライト,ベイナイト,マルテンサイトの各組織
分率、さらにフェライトのうち形状が粒状のものについ
ては、その粒径及び分率を計算するものである。この計
算方法は以下の通りである。まず、当該成分における状
態図を計算し(ステップ381)各組織が熱力学的に生
成可能な条件(温度領域)を求める。次に、生成可能と
判断された組織について任意の微小時間内の変態量の増
分(ステップ383)及びフェライトについてはこの間
の生成粒数の増分(ステップ382)を求める。
【0029】また、フェライトが生成する場合には形状
が針状か粒状かの判断を行い、粒状である場合にはステ
ップ382で求めた生成粒数を粒状フェライトの粒数の
増分,ステップ383で求めた変態量の増分を粒状フェ
ライト量の増分とし、針状である場合には変態量の増分
のみを求める(ステップ384)。次に、変態に伴う発
熱等を冷却温度モデルにフィードバックするためにステ
ップ383で得られた変態量に応じた温度変化を計算す
る(ステップ385)。以上の計算を各板厚位置につい
て冷却終了まで繰り返し、変態量及び粒状フェライト粒
数の増分を加算することにより、最終的な組織の各組織
分率,粒状フェライトの分率及びその粒数を求めること
ができる。さらに、板厚方向のm点について計算が終了
した後(ステップ386)に粒状フェライトの粒径を粒
数と分率から求める(ステップ387)。また、ステッ
プ383,385の結果を基にフェライト,パーライ
ト,ベイナイトの各々が生成した平均温度(平均生成温
度)を計算する(ステップ388)。以上の計算でフェ
ライトを粒状,針状に分離しておく理由は、粒状や針状
の形状が材質に関与することに着目したものであって、
材質の予測を高精度に行うことを可能とするためであ
る。また、平均生成温度は生成した温度によって材質が
異なることから必要になるもので、前述の組織,材質モ
デル111の硬度算出で用いられるものである。
【0030】図4は均熱拡散熱処理モデルの詳細を示す
フローチャートである。計算は主として、加熱、保定間
の計算と炉から抽出した後の変態の計算からなる。
【0031】 偏析濃度20.2、析出物の状態20.
3、金属組織20.4をインプットする。さらに、スラ
ブ厚・炉雰囲気温度・時間から加熱モデル22により算
出された温度履歴をインプットする。これをもとに初期
状態モデル20により加熱γ粒径、析出物の状態を算出
し、さらに拡散モデル128により偏析濃度を計算す
る。これらの計算結果26は変態モデル38にインプッ
トされる。また冷却温度モデル39より計算された温度
も合わせて変態モデル38にインプットされ、フェライ
ト粒径、各相の組織分率、析出物の状態、偏析濃度、平
均生成温度を計算する(ステップ43)。この変態モデ
ルは図8に示したものと同一である。
【0032】図9は初期状態モデルの詳細を示すフロー
チャートである。偏析濃度25.2、析出物の状態2
5.1、金属組織25.3をインプットする。
【0033】次にスラブ温度・時間情報23または加熱
条件21よりスラブ加熱履歴をインプットし、計算に必
要な定数及び初期値を設定する(ステップ201)。次
いで、状態図の計算を行う(ステップ202)。
【0034】次に、加熱時間が設定値をオーバーしたか
否か判定(ステップ203)し、否であれば析出物の固
溶量及び析出物粒径の計算を行う(ステップ204)。
【0035】この後、設定時間内であればγ粒成長を計
算する。ただし、周知のように鋼材は、温度が高くなる
に伴って結晶構造の変化によってα粒状態あるいはθ
(セメンタイト)からγ粒状態へ変態する。
【0036】そこで、このγ粒の成長状態を、ステップ
202で計算された各状態ごとに異なった手法により計
算する。すなわち、温度に応じてγ単相域のほかγ+α
域、γ+α+θ域の各々についてもγ粒成長の計算を行
うのである(ステップ205)。
【0037】図5は予備圧延モデルの詳細を示すフロー
チャートである。計算は主として、加熱、保定間の計
算、圧延工程の計算及び圧延終了後の変態の計算からな
る。偏析濃度20.2、析出物の状態20.3、金属組
織20.1をインプットする。さらに、スラブ厚・炉雰
囲気温度・時間から加熱モデル22により算出された温
度履歴をインプットする。これをもとに初期状態モデル
20により加熱γ粒径、析出物の状態を算出し、さらに
拡散モデル128より偏析濃度を計算する。これらの計
算結果26は熱間加工モデルにインプットされる。この
初期状態モデルは図9で説明したものと同一である。
【0038】 熱間加工モデル27は、再結晶の潜伏期
を定式化することにより、回復と再結晶を明確にし、圧
延中と圧延後の粒径(単位体積当りの粒界面積)や残留
転位密度などのオーステナイト状態を安定的に計算する
ために設けられている。
【0039】 この熱間加工モデル27は、γ粒径析出
物状態、偏析濃度26,圧延温度モデル28に基づく温
度・パス間時間情報29,及び歪モデル30に基づく相
当歪・歪速度情報31とにより、演算結果33(圧延γ
粒径,転位密度,歪み)を演算する。なお、圧延温度モ
デル28及び歪モデル30は、圧延条件32(入側板
厚,出側板厚,加熱温度,パス間時間,ロール径,ロー
ル回転数)に基づいて算出される。
【0040】析出モデル35は、核生成と成長を分離
し、さらに個々の析出粒子の成長を考慮することで圧延
中及び圧延後のオーステナイト中における析出物状態を
算出するために設けられている。この析出モデル35に
より析出物状態を求めるに際しては、圧延温度モデル2
8による温度情報34,成分情報36及び熱間加工モデ
ルの演算結果33に基づいて析出元素(例えば、Ti,
Ta,V,Nb)の固溶量,析出量,析出物平均粒径を
演算し、析出物状態37として出力する。
【0041】図10は熱間加工モデル27の処理の詳細
を示すフローチャートである。
【0042】 この処理は、加熱γ粒径26,析出物の
状態26.1,偏析濃度26.2,温度・パス間時間情
報29及び相当歪・歪速度情報31を入力条件として行
われる。鋼板を複数回パスさせて圧延を行った場合、各
パス間において、圧延→回復→再結晶を経る過程で、
位密度が図11のように変化する。このため、各パス毎
に再結晶,回復を計算する必要がある。各パス毎及び圧
延終了後のγ粒径,平均転位密度等の計算は以下のよう
に行う。
【0043】まず、鋼板の内部の状態を知るために、表
面から中心部に向かって一定距離ごとにm個の位置を定
める(ステップ271)。そして、この各々について前
記入力条件に基づき圧延後のγの単位体積当りの粒界面
積を計算する(ステップ272)。
【0044】 圧延の圧下量が大きいと、瞬時的に再結
晶即ち動的再結晶を生じる。そこで、動的再結晶が生じ
ているか否かを判定し、生じている場合には転位密度
び再結晶粒径を計算する(ステップ273)。動的再結
晶が完了しない場合には、この後再結晶が生じるまでの
時間を計算し、さらに回復による転位密度の減少及び静
的再結晶を計算(再結晶率,再結晶粒径)する(ステッ
プ274)。
【0045】 また、再結晶が終了している場合には、
粒成長を計算し(ステップ275)、さらに結晶粒の平
均粒径及び平均転位密度を算出(ステップ276)す
る。これを最終パスまで繰り返すことにより最終パス情
報(板厚m点のオーステナイト粒界面積及びその転位密
)を得る(ステップ277)。
【0046】熱間加工モデルの計算結果33及び析出物
状態37、さらに冷却温度モデルにより算出された圧延
終了後の温度履歴40は変態モデル38にインプットさ
れる。変態モデル38は図8で説明しとものと同一であ
る。
【0047】圧延モデルの詳細を示すフローチャートは
図5に示した予備圧延モデルの場合と同じである。計算
は主として、加熱、保定間の計算、圧延工程の計算及び
圧延終了後の変態の計算からなる。モデルの構成は図5
で説明した予備圧延モデルと同一であるので省略する。
【0048】 図6は、熱処理モデル1001の処理の
詳細を示すフローチャートである。
【0049】入力項目は、圧延モデル110の演算結果
110.1,熱処理条件51(板厚,昇温速度,保定温
度・時間,空冷・水冷区分,推量密度等)に基づいて熱
処理温度モデル501から計算される熱処理の温度・時
間情報502及び析出モデル35で演算される熱処理前
の固溶・析出状態63である。
【0050】ここでの熱処理は焼入−焼戻処理を意味
し、モデルは焼入演算部53と焼戻演算部54とに別れ
ている。
【0051】 焼入演算部53は、前述の初期状態モデ
ル20及び変態モデル40で構成され、再加熱組織状態
と焼入条件に応じた変態(焼入)組織を演算する。
【0052】焼戻演算部54は、焼入時の組織情報50
5及び固溶・析出状態64とから焼戻条件に基づいて炭
化物・析出物の状態、組織の分解・生成を産出する(ス
テップ507)。このとき析出モデル35を並行して演
算し、その結果はステップ507の演算に用いられる。
【0053】以上の計算で、最終組織構成各相の分率、
平均生成・分解温度及び金属組織単位のサイズを算出す
る(ステップ508)。
【0054】 図7は組織−材質モデル111の処理の
詳細を示すフローチャートである。
【0055】ここでは、鋼板の材質を表現する降伏点、
引張強さ及び靭性を計算することを目的としている。入
力項目は、熱処理モデル1001の演算結果52と析出
モデル60の演算結果である最終的な各元素の固溶・析
出状態65である。
【0056】まず、上記入力項目に基づいて、各組織
(フェライト,ベイナイト,パーライト,及びマルテン
サイト)の各々の硬さの計算(ステップ601)、及び
降伏点の計算(ステップ602)を行う。次いでステッ
プ601による硬度計算値を用いて引張強さを計算(ス
テップ603)する。さらに入力項目に基づいて靭性を
計算(ステップ604)し、処理を終了する。
【0057】以上、一連の演算を行うことにより、材質
予測を行うことができる。この結果は、フロッピーディ
スクなどの記録媒体に保存されると共に、プリンタによ
って打出される。 <試験例>図12は本発明に供した鋼の化学成分、図1
3は製造条件、図14は粒径・分率などの組織因子及び
材質の実測値と上記予測法による計算値を示すものであ
る。
【0058】図14より明らかなように、実測値と計算
値とは近似し、極めて高い精度で予測できたことがわか
る。
【0059】このように、高信頼な予測が可能になるこ
とから、将来的には、客先が要求する材質に応じ製品の
製造条件を容易に算出することも可能になる。
【0060】なお、以上の説明においては、厚鋼板の製
造プロセスを例としたが、熱延鋼材全般に本プロセスは
適用することができる。
【0061】
【発明の効果】本発明は上記の通り構成されているの
で、次に記載する効果を奏する。
【0062】請求項1の鋼板材質予測方法においては、
連続鋳造または鋼塊法によって作られた鋼片に、均一拡
散熱処理、予備圧延のいずれか一方または両方を経た後
あるいは鋳造後そのまま圧延、冷却及び熱処理を施して
製造される鋼板に対し、鋼の成分情報及び鋳造条件に基
づいて鋼片の金属組織、析出物の状態、偏析の状態を算
出し、この算出結果及び均一拡散熱処理情報に基づいて
鋼片の金属組織、析出物の状態、偏析の状態を算出し、
この算出結果及び予備圧延条件に基づいて鋼片の金属組
織、析出物の状態、偏析の状態を算出し、この算出結果
及び圧延条件に基づいて鋼板の金属組織、析出物の状
態、偏析の状態を算出し、この算出結果及び冷却条件に
基づいて鋼板の金属組織、析出物の状態、偏析の状態を
算出し、この算出結果及び熱処理条件(再加熱,焼入
れ,焼き戻し条件)に基づいて鋼板の金属組織、析出物
の状態、偏析の状態を算出し、これらによって前記鋼板
の材質を推定するようにしたので、製造段階で材質予測
を行うことができ、また、要求される材質仕様を確実に
実現可能な製造条件が設定可能であり、従来のように完
成品に対する検査測定が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される鋼板製造ラインの概要を
示す設備構成図である。
【図2】 本発明による鋼板材質予測方法を示す演算フ
ローチャートである。
【図3】鋳造モデルの詳細を示すフローチャートであ
る。
【図4】均熱拡散熱処理モデルの詳細を示すフローチャ
ートである。
【図5】予備圧延モデル及び圧延モデルの詳細を示すフ
ローチャートである。
【図6】熱処理モデルの詳細を示すフローチャートであ
る。
【図7】組織・材質モデルの詳細を示すフローチャート
である。
【図8】変態モデルの詳細を示すフローチャートであ
る。
【図9】初期状態モデルの詳細を示すフローチャートで
ある。
【図10】熱間加工モデルの詳細を示すフローチャート
である。
【図11】圧延時の転移密度変化を示す特性図である。
【図12】本発明に供した鋼の化学成分の内容を示す図
である。
【図13】製造条件の内容を示す図である。
【図14】本発明の粒径・分率などの組織因子及び材質
の実測値と上記予測法による計算値を示す図である。
【符号の説明】
1 厚鋼板 2 加熱炉 3 粗圧延機 4 仕上圧延機 6 冷却装置 6.1 再加熱装置 6.2 焼入れ装置 6.3 焼き戻し装置 7 加熱プロセスコンピュータ 8 圧延プロセスコンピュータ 9 冷却プロセスコンピュータ 10 中央制御装置 20 初期状態モデル 27 熱間加工モデル 38 変態モデル 101 製鋼分塊プロセスコンピュータ 107 鋳造モデル 108 均熱拡散熱処理モデル 109 予備圧延モデル 110 圧延モデル 111 組織・材質モデル 1001 熱処理モデル 2001 熱処理プロセスコンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下村 慎一 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社 君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 平4−369003(JP,A) 特開 平4−361158(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続鋳造または鋼塊法によってつくられ
    た鋼片に、均一拡散熱処理、予備圧延のいずれか一方ま
    たは両方を経た後あるいは鋳造後そのまま圧延、冷却及
    び熱処理を施して製造される鋼板に対し、前記鋼片の成
    分、製造条件に基づいて鋼板の金属組織、析出物の析出
    状態、偏析の濃度を予測し、さらに鋼板の材質を推定す
    る鋼板の材質予測方法において、圧延に先立つ加熱前の
    上記鋼材の金属組織、析出物の析出状態、偏析の濃度
    を、成分条件と鋳造条件をもとに連続鋳造または造塊後
    の金属組織、析出物の状態、偏析の状態を計算するモデ
    ルである鋳造モデル、鋳造モデルで計算された金属組
    織、偏析濃度、析出物状態をもとに、均熱拡散熱処理中
    の加熱、温度保持、変態を通じての金属組織の状態、析
    出物の状態、偏析の状態を計算するモデルである均熱拡
    散熱処理モデル、鋳造モデルまたは均熱拡散熱処理モデ
    ルで計算された金属組織、偏析濃度、析出物状態をもと
    に、予備圧延または分塊圧延中の加熱、温度保持、圧
    延、変態を通じての金属組織の状態、析出物の状態、偏
    析の状態を計算するモデルである予備圧延モデルで演算
    し、さらに圧延及び冷却に引き続いて施される再加熱−
    焼入れ−焼き戻しの一連の熱処理後の上記鋼材の金属組
    織、偏析濃度、析出物状態を成分条件、冷却後の金属組
    織、偏析濃度、析出物状態をもとに計算するモデルであ
    る熱処理モデルで演算することを特徴とする鋼板の材質
    予測方法。
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