JPH0527713Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、四輪自動車や自動二輪車等の車両に
搭載されるドラムブレーキであつて、詳しくは、
操作レバーを用いてブレーキシユーを拡開作動す
る機械式の車両用ドラムブレーキにおけるブレー
キシユーの戻し構造に関する。

〔従来の技術〕

バツクプレートに対向配置された一対のブレー
キシユーを、操作レバーにて作動するこの種機械
式のドラムブレーキとしては、例えば実公昭63−
46734号公報に示されるものがある。

このドラムブレーキは、両ブレーキシユーのウ
エブの中間部が、バツクプレートに浮動可能に弾
持され、各ウエブの一端部を、バツクプレートに
突設したアンカーピンに支持されると共に、両ウ
エブの他端部間にスライデイングサポートが介装
されている。

一方のウエブには、ブレーキケーブルに牽引さ
れる操作レバーが枢支され、該操作レバーと他方
のウエブとの間に、両ブレーキシユーの後退限を
規制するストラツトが配設されると共に、各ウエ
ブとアンカーピンとの間には、ブレーキシユーを
縮径方向に付勢するコイル状のリターンスプリン
グがそれぞれ張設されている。

これにより、ブレーキドラムの回転方向に対し
てリーデイング側となる一方のブレーキシユー
（以下、一次側のブレーキシユーという）の作動
力を、スライデイングサポートを介して他方のブ
レーキシユー（以下、二次側のブレーキシユーと
いう）に伝達し、双方のブレーキシユーにリーデ
イング作用を行なわせるようにしており、操作レ
バーを回動させて制動操作を行なうと、一次側の
ブレーキシユーでは、一端部がアンカーピンから
離間して拡開し、更に二次側のブレーキシユーで
は、一端部がアンカーピンを回動支点に拡開して
制動作用を行ない、またこの制動操作を解除する
と、両ブレーキシユーが縮径して行き、一次側の
ブレーキシユーの一端部がアンカーピンに当接し
て、非作動状態に復帰するようになつている。

〔考案が解決しようとする課題〕 このような構成では、双方のブレーキシユー
が、ブレーキドラムとの摺接によつて、ブレーキ
ドラムの回転方向へ引摺られ、一次側のブレーキ
シユーでは、拡開支点となる他端部がスライデイ
ングサポートと共に二次側のブレーキシユー方向
へスライドし、また二次側のブレーキシユーで
は、拡開支点となる一端部が、アンカーピン回り
に回動して各々ずれるため、リターンスプリング
の引張力では、制動操作を解除された両ブレーキ
シユーの一端部を、アンカーピンの正しい当接位
置に戻すことができず、ブレーキシユーが非対称
形となつて、ブレーキシユーが常にブレーキドラ
ムに接触した状態のいわゆる引摺り現象を生じる
こととなる。

本考案は、かかる実情を背景にしてなされたも
ので、その目的とするところは、非制動時のブレ
ーキシユーを正規の後退位置に戻して、ブレーキ
シユーの引摺りを防止するようにしたブレーキシ
ユーの戻し構造を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は、上述の目的を達成するため、バツク
プレートに対向配置される一対のブレーキシユー
の中間部を、バツクプレートに浮動可能に弾持
し、該ブレーキシユーの一端部を、バツクプレー
トに突設したアンカーピンにて支持すると共に、
ブレーキシユーの他端部間にスライデイングサポ
ートを介装した車両用ドラムブレーキにおいて、
前記各ブレーキシユーのドラム内径側に、該ブレ
ーキシユーの一端部を前記アンカーピン方向に付
勢する戻しスプリングの基端をそれぞれ固着し、
一方の戻しスプリングの先端を、アンカーピンの
ドラム外周側に係止すると共に、他方の戻しスプ
リングの先端をアンカーピンのドラム内周側に係
止したことを特徴とするものでである。

〔作用〕

先端をアンカーピンのドラム外周側に係止され
る一方の戻しスプリングは、ブレーキドラムの回
転に対してリーデイング側となる一次側のブレー
キシユーに、また先端をアンカーピンのドラム内
周側に係止される他方の戻しスプリングは、一次
側のブレーキシユーにスライデイングサポートを
介して押動される二次側のブレーキシユーにそれ
ぞれ設けられ、これらブレーキシユーの一端部
は、それぞれの戻しスプリングにて、アンカーピ
ンの正規の位置に支持されるよう付勢される。

次に、これらブレーキシユーが制動操作される
と、各ブレーキシユーは、それぞれの戻しスプリ
ングの引張力に抗して、前記従来技術で述べたよ
うに拡開作動し、またこの制動操作が解除される
と、一方の戻しスプリングが、一次側のブレーキ
シユーの一端部をアンカーピン方向へ引戻し、ま
た他方の戻しスプリングが、二次側のブレーキシ
ユーの一端部をアンカーピン回りに逆方向へ回動
して、両ブレーキシユーの一端部を、アンカーピ
ンの正規の位置に支持させ、ブレーキシユーを対
称形に復帰させる。

〔実施例〕

以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明
する。

ドラムブレーキ１は、図示しないブレーキドラ
ムの回転方向Ａに対する一次側のブレーキシユー
２と二次側のブレーキシユー３とをバツクプレー
ト４に対向配置し、該ブレーキシユー２，３の両
端部を、アンカーピン５とフローテイングサポー
ト６とに支持される機械式ブレーキで、二次側の
ブレーキシユー３とバツクプレート４との間に
は、ブレーキワイヤ７にて牽引操作される操作レ
バー８が配設されている。

ブレーキシユー２，３は、それぞれバツクプレ
ート４と平行に配置されるウエブ９ａと、該ウエ
ブ９ａの外縁に交差方向に固設されるリム９ｂ
と、このリム９ｂの背面に貼着されるライニング
９ｃとからなつている。

これらブレーキシユー２，３は、ウエブ９ａの
略中間部を、シユーホールドピン１０とシユーホ
ールドスプリング１１にて、バツクプレート４に
浮動可能に弾持され、前述の如く、一端部９ｄを
アンカーピン５に支持されると共に、他端部９
ｅ，９ｅ間に、アジヤスト機構を備えたフローテ
イングサポート６と、リターンスプリング１２と
が介装されている。

各ウエブ９ａの外側には切欠き９ｆが形成さ
れ、両切欠き９ｆ，９ｆとアンカーピン５との間
には、両ブレーキシユー２，３を縮径方向に付勢
するコイル状のリターンスプリング１３，１４が
張設されている。

操作レバー８は、基端８ａを、ブレーキシユー
３のウエブ９ａに、支軸１５にて回動可能に軸支
され、先端８ｂに上記ブレーキワイヤ７が接続さ
れている。操作レバー８とブレーキシユー２のウ
エブ９ａとの間には、両ブレーキシユー２，３の
後退限を規制するストラツト１６が、アンカーピ
ン５の内側に近接して嵌合されており、更にスト
ラツト１６の一端とブレーキシユー３のウエブ９
ａとの間には、ストラツト１６と操作レバー８の
嵌合状態を保持するスプリング１７が張設されて
いる。

上記ウエブ９ａ，９ａの一端部９ｄ，９ｄに
は、戻しスプリング１８，１９がそれぞれ突設さ
れている。この戻しスプリング１８，１９は、制
動操作を解除された両ブレーキシユー２，３を縮
径方向へ付勢するリターンスプリング１３，１４
を助勢し、ブレーキドラムに引摺られてずれたブ
レーキシユー２，３の一端部９ｄ，９ｄを、正規
の後退位置へ戻すように設けられたもので、取付
け部となる基端１８ａ，１９ａを、それぞれ一端
部９ｄ，９ｄのドラム内径側にビス２０にて固着
される。

一次側のブレーキシユー２に固着される一方の
戻しスプリング１８は、二次側のブレーキシユー
３に固着される他方の戻しスプリング１９よりも
長く形成され、その先端１８ｂを、アンカーピン
５のドラム外径側に圧接して係止されると共に、
両端１８ａ，１８ｂの間をＳ字状に膨らませた一
方の湾曲部１８ｃで、アンカーピン５の略半周を
包持して装着される。また、他方の戻しスプリン
グ１９は、先端１９ｂをやや反らせて、アンカー
ピン５のドラム内径側に圧接して係止される。

ブレーキシユー２，３には、上述のように装着
された戻しスプリング１８，１９と、リターンス
プリング１３，１４との引張力が働き、非作動時
の一端部９ｄ，９ｄは、円弧状に形成されたそれ
ぞれの端面９ｇ，９ｇが、第１図に示す如くアン
カーピン５に支持され、両ブレーキシユー２，３
が対称形に配置される。

本実施例は、以上のように構成され、矢印Ａ方
向に回転するブレーキドラムに対し、ブレーキワ
イヤ７を牽引して操作レバー８を回動すると、ス
トラツト１６を介して双方のブレーキシユー２，
３が拡開する。

ブレーキドラムと摺接する一次側のブレーキシ
ユー２の反力は、フローテイングサポート６を二
次側のブレーキシユー３側へスライドさせ、ブレ
ーキシユー３がアンカーピン５を支点に拡開し
て、双方のブレーキシユー２，３のリーデイング
作用にてブレーキドラムを制動する。

この時、一次側のブレーキシユー２では、一端
部９ｄの端面９ｇが、戻しスプリング１８の中間
部のＳ字形を伸ばしながら、アンカーピン５から
離れて開き、更にブレーキドラムの回転方向へ引
摺られて、他端部９ｅが、スライデイングサポー
ト６と共に二次側のブレーキシユー３方向へスラ
イドする。また、二次側のブレーキシユー３で
は、拡開支点となる一端部９ｄが、戻しスプリン
グ１９を撓ませながら、アンカーピン５回りに回
動して作動する。

一方、戻しスプリング１８，１９は、先端１８
ｂ，１９ｂが、アンカーピン５へ圧接状態で略同
位置に係止されたまま、両ブレーキシユー２，３
の作動を許容する。

次に、上述の制動操作を解除すると、リターン
スプリング１３，１４が、両ブレーキシユー２，
３を縮径させ、これに協働して一方の戻しスプリ
ング１８が、一次側のブレーキシユー３の一端部
９ｄをアンカーピン５方向（第２図の矢印Ｂ方
向）へ引戻し、また他方の戻しスプリング１９
が、二次側のブレーキシユー３の一端部９ｄをア
ンカーピン回りに逆方向（第２図の矢印Ｃ方向）
へ回動して、ブレーキシユー２，３の一端部９
ｄ，９ｄを、第１図に示す正規の非作動位置に付
勢する。

これにより、両ブレーキシユー２，３が対称形
に復帰し、またフローテイングサポート６やリタ
ーンスプリング１３，１４等の他の構成部材も偏
りなく復帰するので、ブレーキシユー２，３の引
摺りが防止される。

〔考案の効果〕

本考案は、以上説明したように、バツクプレー
トに浮動可能に弾持される各ブレーキシユーのド
ラム内径側に、ブレーキシユーの一端部をアンカ
ーピン方向に付勢する戻しスプリングの基端をそ
れぞれ固着し、一方の戻しスプリングの先端を、
アンカーピンのドラム外周側に係止すると共に、
他方の戻しスプリングの先端をアンカーピンのド
ラム内周側に係止したから、制動操作を解除され
たブレーキシユーを正規の後退位置へ確実に復帰
させて、ブレーキシユーの引摺りを防止すると共
に、設定された制動能力を長期間に亙つて充分に
発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の一実施例を示し、第１図はドラム
ブレーキの正面図、第２図は要部正面図である。 １……ドラムブレーキ、２，３……ブレーキシ
ユー、４……バツクプレート、５……アンカーピ
ン、６……フローテイングサポート、７……ブレ
ーキワイヤ、８……操作レバー、９ａ……ウエ
ブ、９ｄ……ウエブ９ａの一端部、９ｅ……ウエ
ブ９ａの他端部、９ｇ……一端部９ｄの端面、１
３，１４……リターンスプリング、１６……スト
ラツト、１８，１９……戻しスプリング、１８
ａ，１９ａ……基端、１８ｂ，１９ｂ……先端、
１８ｃ……湾曲部、２０……ビス。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. バツクプレートに対向配置される一対のブレー
   キシユーの中間部を、バツクプレートに浮動可能
   に弾持し、両ブレーキシユーの一端部を、バツク
   プレートに突設したアンカーピンにて支持すると
   共に、ブレーキシユーの他端部間にスライデイン
   グサポートを介装した車両用ドラムブレーキにお
   いて、前記各ブレーキシユーのドラム内径側に、
   該ブレーキシユーの一端部を前記アンカーピン方
   向に付勢する戻しスプリングの基端をそれぞれ固
   着し、一方の戻しスプリングの先端を、アンカー
   ピンのドラム外周側に係止すると共に、他方の戻
   しスプリングの先端をアンカーピンのドラム内周
   側に係止したことを特徴とする車両用ドラムブレ
   ーキにおけるブレーキシユーの戻し構造。