JP4741646B2 - スローアウェイエンドミルおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、工具本体の先端部に形成されたインサートポケットに切削インサートを着脱自在に取り付けて構成されるスローアウェイエンドミルおよびその製造方法に関する。
従来より、工具本体の先端部にインサートポケットを形成し、このポケット内に切削インサートを保持するよう構成されたスローアウェイエンドミルが用いられている。
このようなスローアウェイエンドミルでは、インサート着座面に加工負荷がかかり、そこで発生した応力がインサートポケット部の側壁面と着座面とエンドミルの先端面とが交わる隅R部分に集中し、これを基点としてクラックが発生し、エンドミルの寿命を早めてしまうという不具合があった。
図6は、上述したような不具合を改善した従来のスローアウェイエンドミルの先端部分を示している。このエンドミル21では前記応力集中を回避するために、エンドミル先端面22における隅R形状の断面円弧を大きくとり、該断面円弧の大きさは前記エンドミル内方へ向かうに従い漸次減少するような切欠溝23が形成されている。(例えば、特許文献1参照。)この様な従来例においては、確かに前記エンドミル先端面22における隅Rの断面円弧が大きく、これにより応力が分散され易くなるので前述した様な応力集中によるクラックの発生は抑制できる。
登録実用新案第2557737号公報
しかしながら、このような形状の加工を行うためには、前記インサートポケットの加工における基準面となる前記着座面に対し、加工する側の工具を三次元的に傾斜させる、又は前記加工する側の工具に対し加工される側のエンドミルを三次元的に傾斜させる必要があり、この手法は工具や加工箇所等の位置決め等が難しく非常に手間を要する。
また前記切欠溝の様な形状にするためには超硬製のソリッドエンドミルで加工する必要があるが、前記超硬製ソリッドエンドミルといえどもφ2程度の小径工具であり剛性的に不十分なため、前記切欠溝のような形状を単一の加工パスで加工することは難しく、複数の加工パスに分割して加工する必要性が生じる。
さらに、前記超硬製ソリッドエンドミルで加工した場合、前記切欠溝の内壁面に加工痕が残り易く、前記切欠溝の先端面側隅R部の断面円弧を大きくすることにより応力の分散性を高めても、前記切欠溝の内壁面に粗い加工痕である傷が残っていれば、その傷を起点としてクラックが発生し易いので、前述した不具合を解決するには未だ不十分であるといえる。
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、スローアウェイエンドミルおよびその製造方法において、クラックの発生を抑制することによりホルダー強度を高めることが出来る、エンドミルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、請求項1のスローアウェイエンドミルの製造方法は、工具本体の先端部にスローアウェイインサートを保持するインサートポケットを備え、該インサートポケット内の側壁面と着座面との境界部分に断面円弧状の凹溝を備えてなるスローアウェイエンドミルの製造方法において、前記エンドミルの先端面側から前記境界軸線と平行に配置した面取り工具で前記エンドミルの先端面と前記凹溝との交差エッジ部に沿って面取り加工を行うとともに、前記着座面と前記エンドミルの外周面との交差稜部にも面取り加工を行い、前記エンドミルの先端面と前記凹溝との交差エッジ部の面取り部分である第1面取り部の表面粗さを、前記着座面と前記エンドミルの外周面との交差稜部の面取り部分である第2面取り部の表面粗さよりも小さくなるように加工することを特徴としている。
また、前記課題を解決するため、請求項のスローアウェイエンドミルは、工具本体の先端部にスローアウェイチップを保持するインサートポケットが設けられたスローアウェイエンドミルであって、前記工具本体は、前記インサートポケット内の側壁面と着座面との境界部分に設けられた凹溝と、該凹溝と前記工具本体の先端面との交差部に設けられた第1面取り部と、前記着座面と前記外周面との交差部に設けられた第2面取り部と、を有しており、前記第1面取り部の表面粗さは、前記第2面取り部の表面粗さよりも小さいことを特徴としている。
本発明によれば、応力が集中し易くクラックの発生源となり易い前記エンドミルの先端面と前記凹溝との交差エッジ部の面取り部の表面粗さを小さくすることにより加工痕である傷が小さくなり、該傷を起点とするクラックを抑制することが出来、結果としてエンドミル本体の強度を高めることが出来るとともにエンドミルの寿命も向上させることが出来る。
以下、本発明の実施形態を添付図面により説明する。
図1乃至図5は本発明の実施例を示すものであり、図1は本実施例によるスローアウェイエンドミルのインサートポケット付近の斜視図、図2は側面視図、図3は先端面視図、図4は面取り部断面形状の概略図、図5は面取り工具の概略形状図を示している。
図1に示すように、スローアウェイエンドミル1の先端部に形成されたチップポケット2内の先端面11に隣接する位置にインサートポケット3が形成され、該インサートポケット3内の側壁面4と着座面6との境界部分に断面円弧状の凹溝7を備えている。該凹溝7の加工方法については、図2に示すように前記側壁面4と前記着座面6との境界軸線9に対して垂直に配置したボールエンドミル10によって加工される。ただし図3に示すように前記スローアウェイエンドミル1の半径方向における前記ボールエンドミル10の傾き角度αは、前記凹溝7の深さや前記側壁面4と前記着座面6との角度関係により任意に設定できる。
ここで前記凹溝7の大きさを規定する断面円弧形状のR寸法については、前記エンドミル1のサイズやインサートのサイズによっても前後するが、R0.5〜R1.0の範囲にあることが望ましい。R0.5より小さすぎると前述した応力の分散性が不十分となり、そこを起点としてクラックが発生し易くなる恐れがある。またR1.0より大きすぎるとインサートの拘束面となる前記側壁面4や前記着座面6の面積が狭くなるためインサートの拘束が不安定になり易いことに加えて、エンドミル1本体の厚みが小さくなるため強度不足となり、クラックや破損が発生してしまう恐れがある。
尚、実施例では前記側壁面4と前記着座面6の境界部全長にわたって前記凹溝7を形成しているが、前記境界部の前記先端面11側の一部及び外周面13側の一部のみに凹溝を形成してもよい。ただし前記凹溝が未形成の部分は隅Rが極端に小さいので、前述した様に応力の分散性が不十分となり、そこを起点としてクラックが発生し易くなる恐れがあるため、前記凹溝は前記境界部の全長にわたって形成することが望ましい。
また前記凹溝7と前記エンドミル先端面11との交差部には第1面取り部12が設けられている。前記第1面取り部12の加工方法としては、図2に示すように前記境界軸線9と平行に面取り工具15を配置し、前記エンドミル先端面11側より前記面取り工具15で突き加工するだけであるので、被加工物である前記エンドミル1の加工位置に対する前記面取り工具15の位置等が容易に設定出来ることにより、結果として面取り加工が容易に行える。
前記面取り部の形状としては、図4にその断面概略図を示す。図4(a)は断面凹円弧状、図4(b)は断面直線状、つまりC面形状であり、図4(c)は断面凸円弧状である。ここで前記先端面11と前記第1面取り部12との交差部によって前記第1面取り部12の先端面側R寸法が定義されるが、面取りを施すことにより前記凹溝7におけるR寸法に対し前記先端面側R寸法を大きくすることが出来、これにより特に応力が集中し易くクラックの発生源となり易い先端面11と前記凹溝7との交差エッジ部における応力の分散性が高められ、前記交差エッジ部を起点とするクラックを抑制することが出来る。
また前記着座面6と前記エンドミル先端面11及び外周面13との交差稜部に微小面取り部14(第2面取り部)が設けられている。実際にインサートを装着しエンドミルとして使用した場合における加工負荷、つまり応力は、前述のとおり前記エンドミル先端面11と前記凹溝7との交差エッジ部に集中し易いが、この部分に面取りを施すことにより前記先端面側R寸法を大きくすることに加えて、この部分の表面粗さを前記微小面取り部14(第2面取り部)におけるそれよりも良好にし、面取りをする際の加工痕である傷を限りなく小さくすることにより、該傷を起点とするクラックを抑制することが出来る。ちなみに前記微小面取り部には応力集中が起こらないので、多少傷のある粗い面取りを行っても、そこがクラックの発生源とはなり得ない。
また前記各断面形状を加工するための面取り工具15としては、図5にその概略形状を示す。図5(a)はボールエンドミル形状であり、これで突き加工することにより図4(a)に示すような断面凹円弧状の面取り形状となる。図5(b)は切刃部分が直線状であり、これで突き加工することにより図4(b)に示すようなC面の断面形状となる。図5(c)は切刃部分が凹円弧状であり、これで突き加工することにより図4(c)に示すような断面凸円弧状の面取り形状となる。尚、前述したように前記境界軸線9と平行に面取り工具15を配置し、前記エンドミル先端面11側より前記面取り工具15で突き加工することにより前記面取り形状が形成されるが、図5(a)に示したボールエンドミル形状の面取り工具のみに関しては、前記境界軸線9に対して平行でなく該境界軸線9に対して傾斜角度をもって突き加工した場合でも、図4(a)に示すような断面凹円弧状の面取り形状が得られる。ただし加工容易性の観点から考慮するなら、前述の様に前記境界軸線9と平行に配置した面取り工具15で突き加工する手法が望ましい。
また図5に示すような各面取り工具は、その先端位置に切刃部16を備え、他方にシャンク部17を備えている。前記切刃部16は超硬部材のものが一般的であるが、砥石部材のものを使用することが望ましい。前記砥石部材からなる面取り工具を使用することにより、第1面取り部12の表面粗さが良好となり、加工痕である傷が限りなく小さくなるので、該傷を起点とするクラックを抑制することが出来、結果としてエンドミル本体の強度を高めることが出来るとともにエンドミルの寿命も向上させることが出来る。さらには前述した凹溝7についても、砥石部材で切刃部が構成された仕上げ用工具で仕上げ加工を行い、前記ボールエンドミル10での加工痕である傷を限りなく小さくしておけば、該傷を起点とするクラックを抑制し、エンドミル本体の強度をさらに高めることが出来る。
尚、本発明における第1面取り部12と従来例における切欠溝23とをその表面粗さの観点から比較すると、従来例の切欠溝23の場合は溝加工であるため切削除去量が多く加工負荷が大きいので、必然的に汎用的な超硬製のソリッドエンドミルで加工することとなり、その加工表面には加工痕である傷が残ってしまい易いため、前述のようなクラックを抑制できるような表面粗さは得られない。これに対し本発明における第1面取り部12の場合、面取り加工であるため切削除去量が少なく、加工負荷が小さいため前述のような砥石部材を切刃として備えた仕上げ用工具での加工が可能であることにより、加工痕である傷が限りなく小さくなるので、該傷を起点とするクラックを抑制することが出来ることに加え、前述のとおり切削除去量が少ないので仕上げ用工具で単一の加工パスで加工可能なため、従来例に対し加工時間も短縮できる。
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意のものとすることが出来ることは云うまでもない。
本発明のスローアウェイエンドミルのインサートポケット付近の斜視図である。 図1のスローアウェイエンドミルの側面視図である。 図1のスローアウェイエンドミルの先端面視図である。 面取り部の断面形状概略図である。 面取り工具の概略図である。 従来のスローアウェイエンドミルのインサートポケット付近の概略図である。
符号の説明
1:スローアウェイエンドミル
2:チップポケット
3:インサートポケット
4,5:側壁面
6:着座面
7,8:凹溝
9:境界軸線
10:ボールエンドミル
11:先端面
12:第1面取り部
13:外周面
14:微小面取り部(第2面取り部)
15:面取り工具
16:切刃部
17:シャンク部
21:スローアウェイエンドミル
22:先端面
23:切欠溝
α:ボールエンドミル10の傾き角度

Claims (2)

  1. 工具本体の先端部にスローアウェイインサートを保持するインサートポケットを備え、該インサートポケット内の側壁面と着座面との境界部分に断面円弧状の凹溝を備えてなるスローアウェイエンドミルの製造方法において、前記エンドミルの先端面側から前記境界軸線と平行に配置した面取り工具で前記エンドミルの先端面と前記凹溝との交差エッジ部に沿って面取り加工を行うとともに、前記着座面と前記エンドミルの外周面との交差稜部にも面取り加工を行い、前記エンドミルの先端面と前記凹溝との交差エッジ部の面取り部分である第1面取り部の表面粗さを、前記着座面と前記エンドミルの外周面との交差稜部の面取り部分である第2面取り部の表面粗さよりも小さくなるように加工することを特徴とするスローアウェイエンドミルの製造方法。
  2. 工具本体の先端部にスローアウェイチップを保持するインサートポケットが設けられたスローアウェイエンドミルであって、
    前記工具本体は、前記インサートポケット内の側壁面と着座面との境界部分に設けられた凹溝と、該凹溝と前記工具本体の先端面との交差部に設けられた第1面取り部と、前記着座面と前記外周面との交差部に設けられた第2面取り部と、を有しており、
    前記第1面取り部の表面粗さは、前記第2面取り部の表面粗さよりも小さいスローアウェイエンドミル。
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