JP4573340B2 - テーパ溝加工用テーパボールエンドミル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本願発明は、金型等のリブ溝加工等に用いるテーパ溝加工用テーパボールエンドミルの改良に関し、更に詳しくは、切削加工面の面粗さや耐折損性を向上させたテーパ溝加工用テーパボールエンドミルに関する。
【0002】
【従来の技術】
金型には、プラスチック製品やダイカスト製品等にリブを付すためのリブ溝あるいはキャビティ部にテーパ状断面溝等のテーパ溝を有するものがある。また、該テーパ溝を加工する工具においては、該テーパ溝が細くて深いため、種々の検討がなされてきた。これらのテーパ溝の底部の形状は、平らなもの、その隅部にアールを設けたものや全体がアール状のものがあり、特に最近では製品側の安全性を考慮し、全体がアール状のテーパ溝の加工に対するニーズが増加している。
【0003】
テーパ溝の底部全体がアール状のテーパ溝を加工する工具については、例えば、特開平8−281512号に開示されているテーパ溝加工用エンドミルがあり、これは、剛性と切削性に優れ、彫り込み切削の可能な円弧状の底刃をもつテーパ溝加工用エンドミルである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、エンドミルの刃数は、工具寿命、加工能率の面から可能な限り多い方が良好とされているが、この種のテーパ溝では加工形状が細くて深いため、前述のテーパ溝加工用エンドミルのような工具を使用する場合、工具軸方向の1回当たりの切り込みを少なくし、回数を繰り返すことにより最終テーパ溝を加工するため、主に使用する切れ刃部位は工具先端部の切れ刃となる。特に工具先端がボール刃のものは、図4に示す様にボール刃と該ボール刃に続く外周刃との繋ぎ部付近の距離にある外周刃の一部となる。
【0005】
しかしながら、チップポケット確保のため、先端ボール刃の刃数を2枚にする以外はボール刃に続く外周刃との繋ぎ部付近の距離にある外周刃の一部に関しては、従来の技術で示した公報においても何の記載も考慮もされておらず、エッジ部となるボール刃と連続しない外周刃の先端部位においては、強度的にも弱く、切削加工時にチッピングや欠けを生じ、切削加工面の面粗さや耐折損性に課題があった。尚、全外周刃に対して、連続したボール刃を設けることも可能であるが、先端ボール中心部付近は、構成上2枚刃となるため、上述と同様の課題が生じることとなる。
【0006】
【本発明の目的】
本発明は以上のような背景をもとになされたものであり、金型等のリブ溝加工等に用いるテーパ溝加工用テーパボールエンドミルであって、切削加工面の面粗さや工具寿命を向上したテーパ溝加工用テーパボールエンドミルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明では、金型等のリブ溝加工等に用い、先端ボール刃と、前記先端ボール刃に連続する外周刃と前記先端ボール刃とは連続しない外周刃からなるテーパ溝加工用テーパボールエンドミルであって、前記外周刃の総刃数を4枚以上の偶数刃数とし、該エンドミル正面視で、略対称の位置にある1対の外周刃に連続して2枚の先端ボール刃を有し、先端ボール刃と連続しない外周刃は、該外周刃の先端部の位置と該エンドミルの先端部との間隔が、軸線方向で測定したときの長さで、ボール刃の半径に0.05〜0.5mm加えた長さとし、かつ、該先端ボール刃のアール45°部の心厚を該部位の刃径に対して20〜50%としたことを特徴とするテーパ溝加工用テーパボールエンドミルである。
【0008】
【発明の実施の形態】
テーパ溝加工用テーパボールエンドミルは、工具先端径が小さく工具先端径に対して刃長が長いのが特徴である。外周刃の総刃数を4枚以上の偶数刃数にしたのは、ボール刃に続く外周刃との繋ぎ部付近の距離にある外周刃の一部を除く外周刃は、テーパ溝の側面を形成及び仕上げ作用をし、切削量が少ないため、刃数は多い方が有利である。ここで、加工面のアール状の底面とテーパ状の側面の繋ぎ部の段差をできるだけ生じさせないようにするために先端ボール刃は外周刃と連続させる必要があり、また、先端ボール刃はチップポケットの確保及び切削抵抗のアンバランスによる工具折損誘発防止のため、エンドミル正面視で略対称の位置に2枚設けたので、外周刃の総刃数を4枚以上の偶数刃数とした。
【0009】
更に、先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部の位置と該エンドミルの先端部との間隔が、軸線方向で測定したときの長さで、ボール刃の半径に0.05〜0.5mm加えた長さとしたことにより、先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部を切削量の多い主切れ刃部位からできるだけ外すようにしたものであり、切削加工時にチッピングや欠けの発生を抑制し、切削加工面の面粗さや工具寿命を向上するものである。ここで、0.05mm未満では、該先端部が主切れ刃になる可能性が高く、0.5mmを越えるとテーパ状の側面の仕上げ面を形成する部位の刃数が異なり、面粗さを劣化させるため、0.05〜0.5mmの範囲とした。好ましくは0.3mm以下が良い。
【0010】
また、先端ボール刃部のチップポケットを確保するために、該先端ボール刃のアール45°部の心厚を該部位の刃径に対して20〜50%とした。例えば、20%より小さいと、剛性が不足し、また、50%を超えると十分な先端ボール刃部のチップポケットを確保することができなくなるため、20〜50%の範囲とした。上記範囲内にすることにより、切り屑の噛み込みを抑制し、面粗さや工具寿命を向上させることができる程度の剛性とした。また、ギャッシュ部と滑らかにつなぎ、通常のアールギャッシュ形状は凸状またはフラット状であるが、凹状にしてもよく、ギャッシュ形状と組み合わせることによりさらにチップポケットを拡げることができる。
【0011】
更に、ボール刃と連続しない外周刃の先端部を面取り状にしたことにより、該先端部の強度を向上させ、さらにチッピングや欠けの発生を抑制したものである。
そのため、該面取り状はアール状にすることが好ましい。なお、更に、高硬度膜及び/または潤滑膜をコーティングしたことにより、耐摩耗性を向上させるだけでなく、チッピングや欠けの発生を抑制し、面粗さや工具寿命を向上させることができ、乾式切削やミストを用いたセミドライ加工にも対応できることは言うまでもない。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0012】
【実施例】
図1〜3に示す様な、硬さHRA92.5の超微粒子超硬合金製で先端ボール刃半径R=0.5mm、外周テーパ片角α=1°、刃長l=10mm、外周ねじれ角θ=25°で切れ刃の刃数を先端ボール刃1で2枚、外周刃2で4枚とし、該先端ボール刃1は、エンドミル正面視で略対称の位置に設け、先端ボール刃に連続する外周刃と滑らかに連続させ、先端ボール刃のアール45°部の心厚を該部位の刃径に対して40%に設定し、TiAlN膜を被覆したテーパ溝加工用テーパボールエンドミルを用い、先ず、本発明例として先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部3の位置を工具軸線方向で該エンドミルの先端部から、0.55mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、すなわち先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部の位置と該エンドミルの先端部との間隔を、軸線方向で測定したときの長さで、ボール刃の半径に0.05〜0.5mm加えた長さとし、各5本製作した。また、比較例として0.50mm、すなわち先端ボール刃の半径としたものも各5本製作した。
【0013】
切削試験は、被削材S50C(HRC23)、傾斜片角1°のテーパ側壁を有する溝深さ8mmの直線止まり溝加工で、水溶性切削液を用いた湿式の往復切削とし、回転数20000回転/min、送り速度600mm/min、工具軸方向の1回当たりの切り込み量t=0.05mm/passで行い、工具損傷の状態及び加工面の状態について観察した。
【0014】
本発明例の0.55mm、0.6mm、0.8mmの位置にした例は、先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部3が微小チッピングにより僅かに摩耗していたが、溝深さ8mmまで問題なく加工でき折損した例はなく、加工面も良好であった。また、本発明例の1.0mmの位置にしたものは、他の本発明例と同様に溝深さ8mmまで問題なく加工できたものの、側壁加工面において、刃数の違いによる送り方向の筋が現れ、加工面の状態が若干劣る結果となったが、折損はなかった。
比較例である0.50mm、すなわち先端ボール刃の半径R分の位置のものは、切削初期より先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部3にチッピングが発生し、溝深さ6〜7mm加工した地点で5本とも折損により寿命となった。加工面においてもチッピングにより、ムシレ及び傷が生じた加工面となった。
【0015】
先の本発明例0.6mmを用いて、先端ボール刃のアール45°部の心厚を該部位の刃径に対して10%、20%、30%、40%、50%、60%に設定したものを各5本製作して、同じ諸元で試験を行った。
本発明例の20〜50%のものは、溝深さ8mmまで問題なく加工でき、面粗さも良好であった。比較例の刃径に対して10%ものは、溝深さ8mmまで加工できたものの5本中4本が先端ボール刃で欠損を発生し、比較例の60%のものは溝深さ4〜7mmで切り屑詰まりにより、5本とも折損により寿命となり、加工面も切り屑が凝着し、曇った面であった。
【0016】
先の本発明例40%を用いて、図5に示す様に先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部3にアール状の面取り9を施し、同じ諸元で試験を行った。本発明例は、該先端部においても通常摩耗の形態を示し、工具摩耗値及び加工面粗さ共にさらに良好となった。
【0017】
【発明の効果】
本願発明を適用することにより、金型のリブ溝加工等に用いるテーパ溝加工用テーパボールエンドミルにおいて、切削加工面の面粗さや耐折損性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例の側面図を示す。
【図2】図2は、図1の要部拡大図を示す。
【図3】図3は、図1の本発明の一実施例の正面図を示す。
【図4】図4は、切削状態の概要図を示す
【図5】図5は、本発明の他の実施例の要部側面拡大図を示す。
【符号の説明】
1 先端ボール刃
2 外周刃
3 先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部
4 先端ボール刃切削部
5 外周刃切削部
6 主切れ刃切削部
7 一回切り込み前までの切削完了部
8 一回切り込んだ時の切削部
9 面取り部
R 先端ボール刃半径
l 刃長
t 工具軸方向一回当たりの切り込み量
α 外周テーパ片角
θ 外周ねじれ角
Claims (2)
- 金型等のリブ溝加工等に用いられ、先端ボール刃と、前記先端ボール刃に連続する外周刃と前記先端ボール刃とは連続しない外周刃からなるテーパ溝加工用テーパボールエンドミルであって、前記外周刃の総刃数を4枚以上の偶数とし、該エンドミル正面視で、略対称の位置にある1対の外周刃に連続して2枚の先端ボール刃を有し、先端ボール刃と連続しない外周刃は、該外周刃の先端部の位置と該エンドミルの先端部との間隔が、軸線方向で測定したときの長さで、ボール刃の半径に0.05〜0.5mm加えた長さとし、かつ、該先端ボール刃のアール45°部の心厚を該部位の刃径に対して20〜50%としたことを特徴とするテーパ溝加工用テーパボールエンドミル。
- 請求項1記載のテーパ溝加工用テーパボールエンドミルにおいて、先端ボール刃と連続しない外周刃の先端部を面取り状にしたことを特徴とするテーパ溝加工用テーパボールエンドミル。
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