JP2007075944A - ボールエンドミル - Google Patents

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Abstract

【課題】ボールエンドミルによる高硬度金型の切削加工において、cBN焼結体からなる刃部と工具本体の接合強度の向上、ならびに、粗切削加工における切刃寿命の向上及び仕上げ切削加工における仕上げ面の面粗さの向上をはかる。
【解決手段】工具先端部に形成した刃部21と、この刃部21から工具基端側に向かって順次、首部31と、シャンク部40と、を連続的に形成し、前記刃部21の工具先端部に設けた略半円状のボール刃22aと、このボール刃22aに連続して工具基端側へ延びる外周刃22bとを形成してなるボールエンドミル10において、少なくともボール刃22aがcBNを含有するcBN焼結体20からなり、このcBN焼結体20と一体焼結した超硬合金30の端部を前記シャンク部40に差込み鑞付けするとともに、前記ボール刃22aの切刃稜線に沿って特定形状のホーニング26を形成するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は金型等を加工するためのボールエンドミルに関し、特に、切刃が立方晶窒化硼素を含有する多結晶焼結体からなり、工具径が0.5〜6.0mmの範囲にある小径のボールエンドミルに関する。
近年、金型の高精度・短納期化の要求が強くなっており、切削加工の能率を高めるため焼き入れ処理した金型に対して粗切削加工及び仕上げ切削加工を行う、いわゆる直彫り加工が主流となってきている。また、金型の長寿命化の要求も高く、硬さ50HRCを超える材料が増えつつある。以下の説明では、前述した、焼き入れ処理した金型及び硬さ50HRCを超える金型を高硬度金型という。
このような事情を背景として、金型の切削加工に用いられるボールエンドミルにおいては、切刃寿命の向上をはかるため、従来用いられてきた超硬合金あるいは被覆超硬合金よりも耐摩耗性が高い立方晶窒化硼素(以下、「cBN」という。)を含有した多結晶焼結体(以下、「cBN焼結体」という。)が用いられている。この種のボールエンドミルを図5に例示する。
図5に示すボールエンドミルは、円弧形状の先端ボール刃13が少なくとも1つ形成されているボールエンドミルであり、先端ボール刃13を含む先端部全体がcBN焼結体で構成されており、先端ボール刃が形成された部分にセラミックコーティングが施されているものである。このボールエンドミルは、cBN焼結体層10と母材超硬合金層11とを一体焼結したブランク材から切り出された円柱体の母材超硬合金部分にシャンク2を鑞付けするとともに、前記円柱体のcBN焼結体部分に先端ボール刃13を形成してある。先端ボール刃13が母材超硬合金から外れることがなく、先端ボール刃13がS字刃形に容易に形成でき、先端ボール刃13が耐熱摩耗性に優れるというものである(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−144131号公報
しかしながら、図5に示すボールエンドミルでは、工具径が6.0mm以下程度の小径になると、一体焼結したcBN焼結体と母材超硬合金の接合にくらべ、鑞付けした母材超硬合金とシャンク2の接合が弱くなるため、高硬度金型を粗切削加工した場合には、先端ボール刃13に高い切削抵抗が作用し、刃部は母材超硬合金ごと鑞付け部から外れてしまうおそれがあった。
また、先端ボール刃13を研削砥石によって研削成形するとき、切刃稜線には0.010mm程度の微小な欠けが発生するおそれがあり、この微小な欠けは、金型の仕上げ切削加工において、仕上げ面の表面に転写され面粗さを悪化させるおそれがあり、さらに、金型の粗切削加工において、チッピングや欠損等の起点となり局所的な損傷を急速に進行させ、切刃寿命を短くしたり不安定にしたりするおそれがあった。
本発明は、前記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、高硬度金型の切削加工において、cBN焼結体と工具本体の接合強度の向上、ならびに、粗切削加工における切刃寿命の向上及び仕上げ切削加工における仕上げ面の面粗さの向上をはかったボールエンドミルを提供することにある。
前記の課題を解決するため、本発明は、工具先端部に形成された刃部と、この刃部から工具基端側に向かって順次、首部と、シャンク部と、が連続的に形成され、前記刃部の工具先端部に設けられた略半円状のボール刃と、このボール刃に連続して工具基端側へ延びる外周刃とが形成されてなるボールエンドミルにおいて、少なくともボール刃が立方晶窒化硼素(cBN)を含有する多結晶焼結体(cBN焼結体)からなり、この多結晶焼結体(cBN焼結体)と一体焼結された超硬合金の端部が前記シャンク部に差込み鑞付けされ、さらに、前記ボール刃の切刃稜線に沿って特定形状のホーニングが形成されていることを特徴とするボールエンドミルである。本発明における多結晶焼結体(cBN焼結体)とは、立方晶窒化硼素(cBN)を20体積%以上含み、TiC−Al、TiCN−Al、WC−Co−Al、TiN−WC−Al等の結合相を用いて焼結された多結晶焼結体(cBN焼結体)、または、上記のような結合相が一切用いられない立方晶窒化硼素(cBN)のみを焼結した多結晶焼結体(cBN焼結体)である。
前記の構成を有したボールエンドミルによれば、cBN焼結体と一体焼結された超硬合金の一端部がシャンク部に設けた差込み孔に差込み鑞付けにより接合されて、大きな鑞付け面積を確保することができ接合強度が大幅に高められる。さらに、鑞付け部は、ボール刃から遠ざかり当該ボール刃の発熱の影響が及びにくくなるため、鑞付けの接合強度が低下しにくくなる。以上のことから、切削抵抗及びボール刃の発熱によってcBN焼結体が外れるという問題が解消する。
さらに、ボール刃の切刃稜線に沿って設けられた特定形状のホーニングは、当該切刃稜線に発生した微小な欠けを除去するため、金型の仕上げ切削加工における仕上げ面の面粗さが良化するとともに、チッピングや欠損等の局所的な損傷が抑制されボール刃の長寿命化及び安定化する。
本発明のボールエンドミルにおいて、前記ホーニングは、ボール刃に直交する断面でみたとき、すくい面側の幅が0.01〜0.10mmの範囲にあり、且つ前記すくい面に平行な直線とのなす角度が10°〜45°の範囲にある平坦なホーニング面で形成されている。その理由は、前記ホーニングの幅が0.01mm未満、前記ホーニングの角度が10°未満の少なくともいずれか一方となった場合、切刃稜線部の微小な欠けを除去できないおそれがあり、前記ホーニングの幅が0.10mmを超えるか、もしくは前記ホーニングの角度が45°を超えるかの少なくともいずれか一方となった場合、切削抵抗が大きくなりcBN焼結体がエンドミル本体から外れるおそれがあるからである。また、すくい面に平行な直線とのなす角度が10°未満になっても微小な欠けが除去されないおそれがあり、45°を超えると切削抵抗が大きくなりcBN焼結体が外れるか、もしくは切刃に溶着が発生し加工面の面粗さを悪化させてしまうおそれがあるからである。
さらに、前記ホーニングに関して、前記ホーニング面と逃げ面との交差稜線部が、その断面で0mmを超え且つ0.003mm以下の丸みをもつか、もしくは丸みのないシャープエッジに形成されていることが好ましい。そうすると、金型の切削加工におけるボール刃の食付き性がきわめて良好となるため、工具ビビリがなく仕上げ面の面粗さの良好な切削加工が可能となる。前記交差稜線に0.003mmを超える丸みが形成された場合には、ボール刃が食付きにくくなり、工具ビビリ、あるいはチッピングや欠損等の損傷が生じやすくなり、仕上げ面の面粗さが悪化しやすくなる。
次に、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。本発明を適用したボールエンドミルを図1〜図4に例示する。図1は軸心に直交する方向からみた正面図である。図2は軸心方向先端側からみた先端視拡大図である。図3は要部の拡大底面図である。図4はボール刃に設けたホーニングの拡大図である。
図1のボールエンドミル10において、刃部21を構成するcBN焼結体20は、超硬合金30と一体焼結されている。このcBN焼結体20と超硬合金30の一体焼結素材は、1.0〜4.0mm厚のcBN焼結体層と、6.0〜12.0mm厚の超硬合金層を一体焼結した円板状素材からワイヤーカットによって切り出された円柱状素材Aである。この円柱状素材Aは、形成される刃部21の最大径に応じて、その直径が1.0〜6.5mmの範囲で選択され、超硬合金30の工具基端側の端部32をシャンク部40の端面に設けた差込み孔41に差込み鑞付けすることによって、シャンク部40に一体的に接合されている。このように差込み鑞付けすることによって鑞付け面積が大幅に増すことから鑞付けの接合強度が大幅に大きくなる。特に、鑞付け接合部の外れを防止する効果は、従来技術では鑞付け面積の確保が難しい工具径0.5〜6.0mmの小径工具において顕著である。また、後述するホーニングを切刃に形成したボールエンドミルのように、切削抵抗が高くなるものに対しても非常に有効である。
本実施形態におけるcBN焼結体とは、cBNを20体積%以上含み、TiC−Al、TiCN−Al、WC−Co−Al、TiN−WC−Al等の結合相を用いて焼結されたcBN焼結体、または、上記のような結合相が一切用いられないcBNのみを焼結したcBN焼結体である。そして、前記のcBN焼結体において、cBNの平均粒径は、例えば0.1〜5.0μmの範囲のものが用いられる。
前記円柱状素材Aの長さは、必要とするシャンク部40からの突出し長さに応じて7.0〜16.0mmの範囲で選択され、cBN焼結体層の長手方向の幅は、必要とする刃部21の長さに応じて1.0〜4.0mmの範囲で選択される。シャンク部40は直接又はチャックホルダ等の保持部を介して工作機械の主軸に取付けられるため、機械的強度の高い超硬合金からなるのが望ましいが、ハイスや合金鋼等の鉄基金属で製作することもできる。
cBN焼結体20からなる刃部21の外周面には、軸心CLを挟んで対称的に一対のチップポケット25が切欠き形成されている。各チップポケット25は、図1において、回転方向K後方側を向く壁面が工具先端中心付近から基端側に向かうにつれ軸心CLから漸次離間するように形成され、図3において、工具回転方向Kを向く壁面は、工具先端から基端側に向かって前記軸心CLに沿って延びる平面状に形成されたすくい面23となる。さらに刃部21の外周面には、前記すくい面23に交差する逃げ面24が形成されていて、これらすくい面23と逃げ面24の交差稜線には、工具先端側に中心角が略90°をなす円弧状のボール刃22aと、このボール刃22aから連続して工具基端側に延びる直線状の外周刃22bとが形成されている。以下、これらボール刃22a及び外周刃22bを総じて切刃22と呼ぶ。なお、金型の切削加工では主にボール刃22aが切削を担うことから、当該ボール刃22aのみをcBN焼結体20で構成した態様としても特に支障はない。また、本実施形態において、切刃22はねじれない直刃の形式となっているが、すくい面23、逃げ面24をねじれ面で構成し、ねじれ刃とすることも可能である。
刃部21の成形は研削砥石を用いた研削加工により行われる。このとき、研削抵抗、振動等を起因とした微小な欠けが切刃稜線部に生じやすくなる。この微小な欠けが生じたボールエンドミルで金型を切削加工した場合、仕上げ切削加工では、微小な欠けが仕上げ面に転写するため面粗さが悪化し後工程の磨き加工にかかる時間が長くなるという問題がある。また、金型の粗切削加工では、微小な欠けを起点としてチッピングや欠けが発生するため局所的な損傷が急速に進行し切刃寿命が短くなるという問題がある。
微小な欠けを解消するため、本ボールエンドミル10では、切刃稜線に沿って特定形状のホーニング26を形成している。このホーニング26は、図4に示すように、すくい面23に対して所定の角度で傾斜する平坦なホーニング面26aで構成されていて、切刃22に直交する断面でみたとき、すくい面23側のホーニング幅Wが0.01〜0.10mmの範囲にあり、且つ前記すくい面23に平行な直線とのなすホーニング角度θが10°〜45°の範囲にある。このようにホーニング形状を特定形状とした理由は、ホーニング幅Wが0.01mmになると微小な欠けが残存するおそれがあり、0.10mmを超えると切削抵抗が高くなり切れ味が悪化するおそれがあるからである。ホーニング角度θが10°未満においても微小な欠けが残留するおそれがあり、45°を超えると切れ味が悪化するおそれがあるからである。
ホーニング面26aと逃げ面24の交差稜線部には、チッピングや欠損の起点となる微小な欠けがないこと、もしくは微小な欠けがあってもその最大幅が0.005mm以下に限定されることが望ましい。微小な欠けの幅は、切刃方向の幅又は切刃直角方向の幅のいずれか大きい方の幅とし、すくい面23側の幅又は逃げ面24側の幅のいずれか大きい方の幅を最大幅とした。微小な欠けの最大幅を0.005mm以下に限定したのは、0.005mmを超えると、高硬度鋼の仕上げ切削加工における仕上げ面の面粗さが悪化し後工程の磨き仕上げ加工にかかる時間が長くなるおそれがあり、粗切削加工では、当該欠けを起点としてチッピングや欠損が生じることによって損傷が急速に進行し切刃22の短寿命が短くなるおそれがあるからである。
ホーニング26が形成された切刃稜線における微小な欠けの最大幅を0.005mm以下におさえるために、ホーニング面26aは所定の面粗さに管理されている。これは、切刃稜線の微小な欠けがホーニング面26aの表面の凹凸に対応して生じるからであり、ホーニング面26aの面粗さは、最大高さRz(JIS B0601:'01)で0.003mm以下に管理するのが好ましい。特に好ましくは0.001mm以下である。
さらに、高硬度金型への切刃22の食付き性に配慮して、切刃22の直交断面において、ホーニング面26aと逃げ面24の交差部は、丸みのないシャープエッジとされている。これは、高硬度金型への切刃22の食付きを良くして、工具ビビリや工具振動をおさえ仕上げ面精度及び面粗さを良化するためである。前記交差部を円弧状としても良いが、その場合、その円弧の曲率半径は、0.003mmを超えると切刃22が食付きにくくなることから、0.003mm以下とすべきである。
本発明を適用したボールエンドミルを軸心に直交する方向からみた正面図である。 図1に示すボールエンドミルを軸心方向先端側からみた先端視拡大図である。 図1に示すボールエンドミルの要部拡大底面図である。 切刃に設けたホーニングの断面拡大図である。 従来のボールエンドミルの要部正面図である。
符号の説明
10 ボールエンドミル
20 多結晶焼結体(cBN焼結体)
21 刃部
22 切刃
22a ボール刃
22b 外周刃
23 すくい面
24 逃げ面
25 チップポケット
26 ホーニング
26a ホーニング面
30 超硬合金
31 首部
32 超硬合金の端部
40 シャンク部
41 差込み孔
A 円柱状素材

Claims (3)

  1. 工具先端部に形成された刃部と、この刃部から工具基端側に向かって順次、首部と、シャンク部と、が連続的に形成され、前記刃部の工具先端部に設けられた略半円状のボール刃と、このボール刃に連続して工具基端側へ延びる外周刃とが形成されてなるボールエンドミルにおいて、
    少なくともボール刃が立方晶窒化硼素を含有する多結晶焼結体からなり、この多結晶焼結体と一体焼結された超硬合金の端部が前記シャンク部に差込み鑞付けされ、さらに、少なくとも前記ボール刃の切刃稜線に沿って特定形状のホーニングが形成されていることを特徴とするボールエンドミル。
  2. 前記ホーニングは、すくい面側の幅が0.01〜0.10mmの範囲にあり、且つ前記すくい面に平行な直線とのなす角度が10°〜45°の範囲にある平坦なホーニング面で形成されていることを特徴とする請求項1記載のボールエンドミル。
  3. 前記ホーニング面と逃げ面の交差稜線部が、その断面で0mmを超え且つ0.003mm以下の円弧状、もしくは丸みのないシャープエッジに形成されていることを特徴とする請求項2記載のボールエンドミル。
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