JPH05261589A - 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒 - Google Patents
高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒Info
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- JPH05261589A JPH05261589A JP6072092A JP6072092A JPH05261589A JP H05261589 A JPH05261589 A JP H05261589A JP 6072092 A JP6072092 A JP 6072092A JP 6072092 A JP6072092 A JP 6072092A JP H05261589 A JPH05261589 A JP H05261589A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、高Ｃｒフェライト系耐熱鋼の溶接
に際し、高温におけるクリープ破断強度を高めるととも
に、靱性を向上できる被覆アーク溶接棒を提供する。 【構成】 本発明は鋼心線と被覆剤からなる高Ｃｒフェ
ライト系耐熱鋼用として適性の良好な被覆アーク溶接棒
であり、鋼心線と被覆剤の両方または一方にＣ、Ｓｉ、
Ｍｎ、Ｖ、Ｎｂ、Ｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗを含有し、
さらにＣｏ、Ｃｕの両方または一方を含有することを特
徴とするものであり、溶接金属中のδフェライトの生成
を抑制し、クリープ破断強度と靱性を格段に向上でき
る。
に際し、高温におけるクリープ破断強度を高めるととも
に、靱性を向上できる被覆アーク溶接棒を提供する。 【構成】 本発明は鋼心線と被覆剤からなる高Ｃｒフェ
ライト系耐熱鋼用として適性の良好な被覆アーク溶接棒
であり、鋼心線と被覆剤の両方または一方にＣ、Ｓｉ、
Ｍｎ、Ｖ、Ｎｂ、Ｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗを含有し、
さらにＣｏ、Ｃｕの両方または一方を含有することを特
徴とするものであり、溶接金属中のδフェライトの生成
を抑制し、クリープ破断強度と靱性を格段に向上でき
る。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は高Ｃｒフェライト系高強
度耐熱鋼用の被覆アーク溶接棒に関するものであり、さ
らに詳しくは高温におけるクリープ特性、靱性、耐割れ
性に優れた溶接金属を得る被覆アーク溶接棒に係わるも
のである。
度耐熱鋼用の被覆アーク溶接棒に関するものであり、さ
らに詳しくは高温におけるクリープ特性、靱性、耐割れ
性に優れた溶接金属を得る被覆アーク溶接棒に係わるも
のである。
【０００２】
【従来の技術】高温型のエネルギープラント用鋼材とし
て、クリープ強度が極めて優れ、且つオーステナイト系
ステンレス鋼に見られるような応力腐食割れの心配が少
ないフェライト系耐熱鋼が使用され始めており、この種
の耐熱鋼用の溶接材として、例えば特開昭５５−３０３
５４号公報に開示されているＣｒ−Ｍｏ系鋼用被覆アー
ク溶接棒の如く、ＮｉやＭｎ等の添加量を限定し、オー
ステナイト相安定化元素を含有させ、溶接金属中の粗大
フェライト相を減少させるようにしたものが提案されて
いるが、Ｎｉを多量に含有させた場合には長時間クリー
プ破断強度が低下し、多量のＮｉやＭｎを含有させた場
合は、溶接金属の耐割れ性が低下するので、目標とする
高性能の溶接金属を得ることはできない。
て、クリープ強度が極めて優れ、且つオーステナイト系
ステンレス鋼に見られるような応力腐食割れの心配が少
ないフェライト系耐熱鋼が使用され始めており、この種
の耐熱鋼用の溶接材として、例えば特開昭５５−３０３
５４号公報に開示されているＣｒ−Ｍｏ系鋼用被覆アー
ク溶接棒の如く、ＮｉやＭｎ等の添加量を限定し、オー
ステナイト相安定化元素を含有させ、溶接金属中の粗大
フェライト相を減少させるようにしたものが提案されて
いるが、Ｎｉを多量に含有させた場合には長時間クリー
プ破断強度が低下し、多量のＮｉやＭｎを含有させた場
合は、溶接金属の耐割れ性が低下するので、目標とする
高性能の溶接金属を得ることはできない。
【０００３】また、特開昭６２−２２０３００号公報で
は、９％Ｃｒ系鋼の溶接において溶接棒中に適量のＷを
添加するとともにＷをＭｏ量との関係で限定共存させる
ことにより、溶接金属に析出する炭化物の粗大化をＶ4
Ｃ3 、ＮｂＣの析出で長時間にわたり抑制するととも
に、さらにＭｏ2 Ｃ 、Ｗ2 Ｃの析出バランスを適正な
範囲に保つことによって高温長時間側のクリープ破断強
度を向上させている。さらに、特開平２−２８０９９３
号公報では９〜１２％Ｃｒ系溶接材料の如く、Ｃ、Ｓ
ｉ、Ｍｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗ、Ｖ、Ｎｂ、Ａｌ、Ｎ
添加量を限定し、Ｃｒｅｑを１３以下とする溶接材料が
提案されている。しかしながら、これらのものでは大幅
なクリープ破断強度を向上させるものではなく、靱性面
からはマルテンサイト相中にδフェライト相を析出して
著しく低下させるという欠点を有する。δフェライト相
は基地中マルテンサイトより著しく軟らかい相であり、
このような軟らかい第二相が硬い基地中に分散する場
合、全体の衝撃特性は著しく低下する。
は、９％Ｃｒ系鋼の溶接において溶接棒中に適量のＷを
添加するとともにＷをＭｏ量との関係で限定共存させる
ことにより、溶接金属に析出する炭化物の粗大化をＶ4
Ｃ3 、ＮｂＣの析出で長時間にわたり抑制するととも
に、さらにＭｏ2 Ｃ 、Ｗ2 Ｃの析出バランスを適正な
範囲に保つことによって高温長時間側のクリープ破断強
度を向上させている。さらに、特開平２−２８０９９３
号公報では９〜１２％Ｃｒ系溶接材料の如く、Ｃ、Ｓ
ｉ、Ｍｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗ、Ｖ、Ｎｂ、Ａｌ、Ｎ
添加量を限定し、Ｃｒｅｑを１３以下とする溶接材料が
提案されている。しかしながら、これらのものでは大幅
なクリープ破断強度を向上させるものではなく、靱性面
からはマルテンサイト相中にδフェライト相を析出して
著しく低下させるという欠点を有する。δフェライト相
は基地中マルテンサイトより著しく軟らかい相であり、
このような軟らかい第二相が硬い基地中に分散する場
合、全体の衝撃特性は著しく低下する。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な問題を有せず、高温強度や高温クリープ破断強度、さ
らには耐割れ性等を損なうことなく粗大フェライト相を
減少し、母材に匹敵する強度、靱性および耐割れ性を有
する溶接金属を確保できる高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用
被覆アーク溶接棒を提供することを目的とする。
な問題を有せず、高温強度や高温クリープ破断強度、さ
らには耐割れ性等を損なうことなく粗大フェライト相を
減少し、母材に匹敵する強度、靱性および耐割れ性を有
する溶接金属を確保できる高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用
被覆アーク溶接棒を提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項１の要旨
とするところは、被覆アーク溶接棒全重量に対してＦｅ
以外の元素として重量比で、Ｃ：０．０１〜０．１２
％、Ｓｉ：０．３〜２．４％、Ｍｎ：０．３〜１．９
％、Ｖ：０．０３〜０．４０％、Ｎｂ：０．０１〜０．
１５％、Ｎ：０．０１〜０．０８％、Ｃｒ：５．８〜１
３％、Ｎｉ：０．０５〜１．２％、Ｍｏ：０．３〜１．
６％、Ｗ：０．５〜３．５％を含有し、さらにＣｏ：
１．０〜５．０％とＣｕ：０．５〜４．０％の両方また
は一方を含有し、その他に上記以外のアーク安定剤、ス
ラグ生成剤、粘結剤を含む被覆剤を含有することを特徴
とする高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒に
ある。
とするところは、被覆アーク溶接棒全重量に対してＦｅ
以外の元素として重量比で、Ｃ：０．０１〜０．１２
％、Ｓｉ：０．３〜２．４％、Ｍｎ：０．３〜１．９
％、Ｖ：０．０３〜０．４０％、Ｎｂ：０．０１〜０．
１５％、Ｎ：０．０１〜０．０８％、Ｃｒ：５．８〜１
３％、Ｎｉ：０．０５〜１．２％、Ｍｏ：０．３〜１．
６％、Ｗ：０．５〜３．５％を含有し、さらにＣｏ：
１．０〜５．０％とＣｕ：０．５〜４．０％の両方また
は一方を含有し、その他に上記以外のアーク安定剤、ス
ラグ生成剤、粘結剤を含む被覆剤を含有することを特徴
とする高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒に
ある。
【０００６】また、本発明の請求項２の要旨とするとこ
ろは、請求項１において、Ｃｏ、ＣｕをＭｏ、Ｗとの間
に（Ｍｏ＋Ｗ）／（Ｃｏ＋Ｃｕ）≦２．５の関係が成立
するように含有させたことを特徴とする高Ｃｒフェライ
ト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒にある。本発明の最大の
特徴は高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒に
おいて、溶接して得られる溶接金属のδフェライトの生
成を抑制して、靱性低下を抑制し、クリープ破断強度と
靱性を格段に高めたところにある。
ろは、請求項１において、Ｃｏ、ＣｕをＭｏ、Ｗとの間
に（Ｍｏ＋Ｗ）／（Ｃｏ＋Ｃｕ）≦２．５の関係が成立
するように含有させたことを特徴とする高Ｃｒフェライ
ト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒にある。本発明の最大の
特徴は高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒に
おいて、溶接して得られる溶接金属のδフェライトの生
成を抑制して、靱性低下を抑制し、クリープ破断強度と
靱性を格段に高めたところにある。
【０００７】以下に本発明の各成分の限定理由について
述べる。なお、本発明においては、前述のＣ、Ｓｉ、Ｍ
ｎ、Ｖ、Ｎｂ、Ｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗ、Ｃｏ、Ｃｕ
は鋼心線中に含有させる場合が多いが、鋼心線と、被覆
剤、スラグ生成剤、アーク安定剤等に含有させても近似
的な効果が得られる。鋼心線には、前述の成分の他には
Ｐ：０．０２重量％以下、Ｔｉ：０．０１重量％以下、
Ｏ：０．０５重量％以下を含有することもあり、残部が
Ｆｅおよび不可避不純物からなるものである。
述べる。なお、本発明においては、前述のＣ、Ｓｉ、Ｍ
ｎ、Ｖ、Ｎｂ、Ｎ、Ｃｒ、Ｎｉ、Ｍｏ、Ｗ、Ｃｏ、Ｃｕ
は鋼心線中に含有させる場合が多いが、鋼心線と、被覆
剤、スラグ生成剤、アーク安定剤等に含有させても近似
的な効果が得られる。鋼心線には、前述の成分の他には
Ｐ：０．０２重量％以下、Ｔｉ：０．０１重量％以下、
Ｏ：０．０５重量％以下を含有することもあり、残部が
Ｆｅおよび不可避不純物からなるものである。
【０００８】
【作用】以下に本発明における成分限定の理由を詳細に
説明する。 Ｃ：０．０１〜０．１２重量％ Ｃは焼き入れ性と強度確保のため０．０１重量％以上必
要であるが、耐割れ性の観点から上限を０．１２重量％
とした。
説明する。 Ｃ：０．０１〜０．１２重量％ Ｃは焼き入れ性と強度確保のため０．０１重量％以上必
要であるが、耐割れ性の観点から上限を０．１２重量％
とした。
【０００９】Ｓｉ：０．３〜２．４重量％ Ｓｉは脱酸剤として添加するものであるが、溶接作業性
確保の上からも必要である。０．３重量％未満では、脱
酸不足によって溶接金属中に気孔が発生しやすく、一方
２．４重量％を超えると靱性の低下を招くので上限を
２．４重量％と定めた。
確保の上からも必要である。０．３重量％未満では、脱
酸不足によって溶接金属中に気孔が発生しやすく、一方
２．４重量％を超えると靱性の低下を招くので上限を
２．４重量％と定めた。
【００１０】Ｍｎ：０．３〜１．９重量％ Ｍｎは脱酸のためのみでなく、強度保持上も必要な成分
である。上限を１．９重量％としたのは、これを超すと
靱性の点から好ましくないからであり、下限は脱酸に必
要な量として０．３重量％と定めた。 Ｖ：０．０３〜０．４０重量％ Ｖは炭窒化物として析出させて強度を確保するため最低
０．０３重量％が必要であるが、他方０．４０重量％を
超えると、かえって強度が低下するので上限を０．４０
重量％とした。
である。上限を１．９重量％としたのは、これを超すと
靱性の点から好ましくないからであり、下限は脱酸に必
要な量として０．３重量％と定めた。 Ｖ：０．０３〜０．４０重量％ Ｖは炭窒化物として析出させて強度を確保するため最低
０．０３重量％が必要であるが、他方０．４０重量％を
超えると、かえって強度が低下するので上限を０．４０
重量％とした。
【００１１】Ｎｂ：０．０１〜０．１５重量％ ＮｂはＶと同様炭窒化物として析出して強度を確保する
ほか、結晶粒を微細化して靱性を高める元素としても重
要であるため最低０．０１重量％が必要であるが、０．
１５重量％を超えるとその効果は飽和してしまうだけで
なく溶接性の低下も招くので上限を０．１５重量％とし
た。
ほか、結晶粒を微細化して靱性を高める元素としても重
要であるため最低０．０１重量％が必要であるが、０．
１５重量％を超えるとその効果は飽和してしまうだけで
なく溶接性の低下も招くので上限を０．１５重量％とし
た。
【００１２】Ｎ：０．０１〜０．０８重量％ Ｎは基地中に固溶しても、また窒化物として析出しても
著しい耐クリープ性に寄与するため最低０．０１重量％
を必要とする。一方、０．０８重量％を超えると窒化物
が多量に析出して、逆に靱性が低下するなどの問題が生
じるので上限を０．０８％と定めた。
著しい耐クリープ性に寄与するため最低０．０１重量％
を必要とする。一方、０．０８重量％を超えると窒化物
が多量に析出して、逆に靱性が低下するなどの問題が生
じるので上限を０．０８％と定めた。
【００１３】Ｃｒ：５．８〜１３重量％ Ｃｒは耐酸化性と焼入れ性を確保する上で非常に重要な
元素であるため最低５．８重量％を必要とするが、１３
重量％を超すと耐割れ性を損なうと同時にδフェライト
を析出させ、靱性の低下が著しくなるので上限は１３重
量％とした。 Ｎｉ：０．０５〜１．２重量％ Ｎｉはδフェライトの生成を抑制し、使用中の脆化軽減
に有効な元素であり、高温で長時間使用される用途に対
しては必須の元素であるが、０．０５重量％未満ではそ
の効果は得られない。他方１．２重量％を超すと高温ク
リープ特性を低下させるので上限を１．２重量％とし
た。
元素であるため最低５．８重量％を必要とするが、１３
重量％を超すと耐割れ性を損なうと同時にδフェライト
を析出させ、靱性の低下が著しくなるので上限は１３重
量％とした。 Ｎｉ：０．０５〜１．２重量％ Ｎｉはδフェライトの生成を抑制し、使用中の脆化軽減
に有効な元素であり、高温で長時間使用される用途に対
しては必須の元素であるが、０．０５重量％未満ではそ
の効果は得られない。他方１．２重量％を超すと高温ク
リープ特性を低下させるので上限を１．２重量％とし
た。
【００１４】Ｍｏ：０．３〜１．６重量％ Ｍｏは固溶体強化により、高温強度を顕著に高める元素
で、使用温度、圧力上昇に対する耐性向上の目的で添加
するが、多量に添加された場合溶接性を損ない、且つδ
フェライトを析出させるため靱性の低下を招く。したが
って添加範囲として上限を１．６重量％とした。一方、
Ｗとの共存において、高温強度、特に高温長時間側での
クリープ破断強度の向上に効果のあるのは０．３重量％
以上であるので下限を０．３重量％とした。
で、使用温度、圧力上昇に対する耐性向上の目的で添加
するが、多量に添加された場合溶接性を損ない、且つδ
フェライトを析出させるため靱性の低下を招く。したが
って添加範囲として上限を１．６重量％とした。一方、
Ｗとの共存において、高温強度、特に高温長時間側での
クリープ破断強度の向上に効果のあるのは０．３重量％
以上であるので下限を０．３重量％とした。
【００１５】Ｗ：０．５〜３．５重量％ Ｗはフェライト系溶接金属のクリープ破断強度に寄与す
る固溶体強化元素として最も優れた元素である。特に、
高温長時間でのクリープ破断強度向上の効果は極めて大
きい。しかしながら０．５重量％未満ではＭｏとの共存
において効果は発揮できないので下限を０．５重量％と
定めた。しかし過剰に添加すると、δフェライトを析出
させ溶接金属の靱性が低下し、溶接作業性も低下するの
で上限を３．５重量％とした。
る固溶体強化元素として最も優れた元素である。特に、
高温長時間でのクリープ破断強度向上の効果は極めて大
きい。しかしながら０．５重量％未満ではＭｏとの共存
において効果は発揮できないので下限を０．５重量％と
定めた。しかし過剰に添加すると、δフェライトを析出
させ溶接金属の靱性が低下し、溶接作業性も低下するの
で上限を３．５重量％とした。
【００１６】Ｃｏ：１．０〜５．０重量％ ＣｏはＭｏ、Ｗ添加によって生じるδフェライトの析出
という問題点を相殺する重要な元素であり、最低１．０
重量％以上を必要とする。しかし過剰に添加するとＡｃ
1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり組織の安
定化処理ができなくなるという欠点を有するので、上限
を５．０重量％と定めた。
という問題点を相殺する重要な元素であり、最低１．０
重量％以上を必要とする。しかし過剰に添加するとＡｃ
1点を下げるため、高温焼戻しが不可能となり組織の安
定化処理ができなくなるという欠点を有するので、上限
を５．０重量％と定めた。
【００１７】Ｃｕ：０．５〜４．０重量％ ＣｕはＣｏと同様にＭｏ、Ｗによって生じるδフェライ
トの析出という問題点を相殺する元素であり、最低０．
５重量％以上を必要とする。しかし過剰に添加すると、
高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなく
なるので上限を４．０重量％とした。
トの析出という問題点を相殺する元素であり、最低０．
５重量％以上を必要とする。しかし過剰に添加すると、
高温焼戻しが不可能となり組織の安定化処理ができなく
なるので上限を４．０重量％とした。
【００１８】本発明の被覆アーク溶接棒に含まれる元素
の種類および最適含有率は上記のとおりであり、上記の
要件を満足する限り本発明の目的は達成されるが、各元
素の機能を総合的に考慮し、靱性を所定のレベルに確保
し、溶接金属の高温クリープ破断強度を一層効果的に高
めるには、下記の式を満足することが最適である。 （Ｍｏ＋Ｗ）／（Ｃｏ＋Ｃｕ）≦２．５ 本発明の被覆アーク溶接棒は、例えば前述の元素を含有
する鋼心線にアーク安定剤、鉄粉、アルカリ成分、ルチ
ール等のスラグ生成剤、硅酸ソーダ、硅酸カリを含有す
る水ガラス等の粘結剤と共に混練してなる被覆剤を通常
の溶接棒塗装機により被覆塗装した後、水分を除去する
ために３００〜５５０℃で焼成して製造する。
の種類および最適含有率は上記のとおりであり、上記の
要件を満足する限り本発明の目的は達成されるが、各元
素の機能を総合的に考慮し、靱性を所定のレベルに確保
し、溶接金属の高温クリープ破断強度を一層効果的に高
めるには、下記の式を満足することが最適である。 （Ｍｏ＋Ｗ）／（Ｃｏ＋Ｃｕ）≦２．５ 本発明の被覆アーク溶接棒は、例えば前述の元素を含有
する鋼心線にアーク安定剤、鉄粉、アルカリ成分、ルチ
ール等のスラグ生成剤、硅酸ソーダ、硅酸カリを含有す
る水ガラス等の粘結剤と共に混練してなる被覆剤を通常
の溶接棒塗装機により被覆塗装した後、水分を除去する
ために３００〜５５０℃で焼成して製造する。
【００１９】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。この実施
例においては表１に示すように、本発明に従って規定さ
れる元素を含有させた鋼心線（４．０ｍｍ径）の外周に
被覆率３０％となるように表２の組成の被覆剤を塗布
し、被覆アーク溶接棒を多数種（１３本）製造した。得
られた各溶接棒を用い、供試母材として厚さ２０ｍｍの
ＡＳＴＭ規格Ａ３８７ Ｇｒ２２、９Ｃｒ−１Ｍｏ鋼、
９Ｃｒ−１Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ鋼、９Ｃｒ−０．５Ｍｏ
−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ鋼、１２Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−
Ｗ鋼を図１に示すような開先（厚さＴ＝２０ｍｍ、開先
角度θ＝２０°、ルートギャップＬ＝１２ｍｍ）を形成
し、アーク溶接を行った。なお、溶接条件は、溶接電流
１２０アンペア、溶接入熱２０ｋＪ／ｃｍ、予熱・パス
間温度１５０〜２００℃、下向き姿勢のアーク溶接であ
る。このアーク溶接で得られた溶接金属を７４０℃で４
時間の後熱処理をした後、６００℃、２２０Ｎ／ｍｍ2
の応力でのクリープ破断試験および試験温度０℃での２
ｍｍＶノッチ衝撃試験を行った。
例においては表１に示すように、本発明に従って規定さ
れる元素を含有させた鋼心線（４．０ｍｍ径）の外周に
被覆率３０％となるように表２の組成の被覆剤を塗布
し、被覆アーク溶接棒を多数種（１３本）製造した。得
られた各溶接棒を用い、供試母材として厚さ２０ｍｍの
ＡＳＴＭ規格Ａ３８７ Ｇｒ２２、９Ｃｒ−１Ｍｏ鋼、
９Ｃｒ−１Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ鋼、９Ｃｒ−０．５Ｍｏ
−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ鋼、１２Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−
Ｗ鋼を図１に示すような開先（厚さＴ＝２０ｍｍ、開先
角度θ＝２０°、ルートギャップＬ＝１２ｍｍ）を形成
し、アーク溶接を行った。なお、溶接条件は、溶接電流
１２０アンペア、溶接入熱２０ｋＪ／ｃｍ、予熱・パス
間温度１５０〜２００℃、下向き姿勢のアーク溶接であ
る。このアーク溶接で得られた溶接金属を７４０℃で４
時間の後熱処理をした後、６００℃、２２０Ｎ／ｍｍ2
の応力でのクリープ破断試験および試験温度０℃での２
ｍｍＶノッチ衝撃試験を行った。
【００２０】表２に上記クリープ破断試験結果を破断時
間（ｈ）で示し、また衝撃試験結果をｖＥ０℃（Ｊ）で
示す。溶接棒ＳＷ−１〜ＳＷ−１３は、いずれも本発明
の要件を全て満たしており、溶接金属組織はδフェライ
トの析出はなくマルテンサイト単相組織であり、後熱処
理後の靱性およびクリープ破断特性が良好であった。溶
接棒ＳＷ−１４〜ＳＷ−２３は比較例を示す。溶接棒Ｓ
Ｗ−１４は通常の耐熱鋼用として使用されている２１／
４％Ｃｒ−１％Ｍｏ系溶接棒の例であり、溶接棒ＳＷ−
１５は、さらに耐高温腐食性を向上させた熱交換器用溶
接棒であるが、いずれも本発明溶接棒に比べ、著しくク
リープ破断強度が低い。溶接棒ＳＷ−１６は９Ｃｒ−１
Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系の溶接棒の例であるが、Ｃ量が本
発明溶接棒に比べて著しく高いので、溶接時に割れが発
生し、耐割れ性および衝撃値が低下している。溶接棒Ｓ
Ｗ−１７はＮ量が本発明範囲の上限を超えるものであっ
て、溶接金属にブロホールが発生するとともに靱性が乏
しかった。溶接棒ＳＷ−１８はＣｏ、Ｃｕがないためδ
フェライトが生じ、靱性が低下している。溶接棒ＳＷ−
１９は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＶ量が本
発明範囲の上限を超えるものでクリープ破断強度が低
い。溶接棒ＳＷ−２０は１２Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−
Ｖ−Ｗ系でＮｂ量が本発明範囲の下限を下回っており、
クリープ破断強度が低く、δフェライトが生じ、靱性が
低下している。溶接棒ＳＷ−２１は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ
−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＷ量が本発明範囲を外れており、δ
フェライトが生じ、靱性が低下している。溶接棒ＳＷ−
２２は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＭｏ量が
本発明範囲を外れており、クリープ破断強度が低い。溶
接棒ＳＷ−２３は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系
でＣｏ、Ｃｕ量が本発明範囲を外れており、クリープ破
断強度が低く、δフェライトが生じ靱性が低い。
間（ｈ）で示し、また衝撃試験結果をｖＥ０℃（Ｊ）で
示す。溶接棒ＳＷ−１〜ＳＷ−１３は、いずれも本発明
の要件を全て満たしており、溶接金属組織はδフェライ
トの析出はなくマルテンサイト単相組織であり、後熱処
理後の靱性およびクリープ破断特性が良好であった。溶
接棒ＳＷ−１４〜ＳＷ−２３は比較例を示す。溶接棒Ｓ
Ｗ−１４は通常の耐熱鋼用として使用されている２１／
４％Ｃｒ−１％Ｍｏ系溶接棒の例であり、溶接棒ＳＷ−
１５は、さらに耐高温腐食性を向上させた熱交換器用溶
接棒であるが、いずれも本発明溶接棒に比べ、著しくク
リープ破断強度が低い。溶接棒ＳＷ−１６は９Ｃｒ−１
Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系の溶接棒の例であるが、Ｃ量が本
発明溶接棒に比べて著しく高いので、溶接時に割れが発
生し、耐割れ性および衝撃値が低下している。溶接棒Ｓ
Ｗ−１７はＮ量が本発明範囲の上限を超えるものであっ
て、溶接金属にブロホールが発生するとともに靱性が乏
しかった。溶接棒ＳＷ−１８はＣｏ、Ｃｕがないためδ
フェライトが生じ、靱性が低下している。溶接棒ＳＷ−
１９は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＶ量が本
発明範囲の上限を超えるものでクリープ破断強度が低
い。溶接棒ＳＷ−２０は１２Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−
Ｖ−Ｗ系でＮｂ量が本発明範囲の下限を下回っており、
クリープ破断強度が低く、δフェライトが生じ、靱性が
低下している。溶接棒ＳＷ−２１は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ
−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＷ量が本発明範囲を外れており、δ
フェライトが生じ、靱性が低下している。溶接棒ＳＷ−
２２は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系でＭｏ量が
本発明範囲を外れており、クリープ破断強度が低い。溶
接棒ＳＷ−２３は９Ｃｒ−０．５Ｍｏ−Ｎｂ−Ｖ−Ｗ系
でＣｏ、Ｃｕ量が本発明範囲を外れており、クリープ破
断強度が低く、δフェライトが生じ靱性が低い。
【００２１】
【表１】
【００２２】
【表２】
【００２３】
【発明の効果】本発明の被覆アーク溶接棒は従来の９〜
１２％Ｃｒ鋼用被覆アーク溶接棒と比較して、高温での
クリープ破断強度を著しく高めたものであり、靱性およ
び溶接性などの特性にも優れている。例えば表１、表２
に示したように本発明の要件を満たすものは、本発明の
要件を満たさないもの（比較例）と比べて高温クリープ
特性だけでなく、靱性および溶接性に優れていることは
明らかで、各種発電ボイラ、化学圧力容器などに使用さ
れる９〜１２％Ｃｒ系鋼等の高Ｃｒフェライト系耐熱鋼
を溶接する場合に適性の高い被覆アーク溶接棒である。
１２％Ｃｒ鋼用被覆アーク溶接棒と比較して、高温での
クリープ破断強度を著しく高めたものであり、靱性およ
び溶接性などの特性にも優れている。例えば表１、表２
に示したように本発明の要件を満たすものは、本発明の
要件を満たさないもの（比較例）と比べて高温クリープ
特性だけでなく、靱性および溶接性に優れていることは
明らかで、各種発電ボイラ、化学圧力容器などに使用さ
れる９〜１２％Ｃｒ系鋼等の高Ｃｒフェライト系耐熱鋼
を溶接する場合に適性の高い被覆アーク溶接棒である。
【図１】実施例に用いた溶接部の開先形状を示す断面図
である。
である。
１ 被溶接材 ２ 裏当材
Claims (2)
- 【請求項１】 被覆アーク溶接棒全重量に対してＦｅ以
外の元素として重量比で、 Ｃ ：０．０１〜０．１２％、 Ｓｉ：０．３〜２．４％、 Ｍｎ：０．３〜１．９％、 Ｖ ：０．０３〜０．４０％、 Ｎｂ：０．０１〜０．１５％、 Ｎ ：０．０１〜０．０８％、 Ｃｒ：５．８〜１３％、 Ｎｉ：０．０５〜１．２％、 Ｍｏ：０．３〜１．６％、 Ｗ ：０．５〜３．５％を含有し、さらに Ｃｏ：１．０〜５．０％と Ｃｕ：０．５〜４．０％ の両方または一方を含有し、その他に上記以外のアーク
安定剤、スラグ生成剤、粘結剤を含む被覆剤を含有する
ことを特徴とする高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アー
ク溶接棒。 - 【請求項２】 被覆アーク溶接棒全重量に対してＦｅ以
外の元素として重量比で、 Ｃ ：０．０１〜０．１２％、 Ｓｉ：０．３〜２．４％、 Ｍｎ：０．３〜１．９％、 Ｖ ：０．０３〜０．４０％、 Ｎｂ：０．０１〜０．１５％、 Ｎ ：０．０１〜０．０８％、 Ｃｒ：５．８〜１３％、 Ｎｉ：０．０５〜１．２％、 Ｍｏ：０．３〜１．６％、 Ｗ ：０．５〜３．５％ を含有し、さらに Ｃｏ：１．０〜５．０％と Ｃｕ：０．５〜４．０％ の両方または一方が前記Ｍｏ、Ｗとの関係において （Ｍｏ＋Ｗ）／（Ｃｏ＋Ｃｕ）≦２．５ なる関係が成立する範囲で含有しており、その他に上記
以外のアーク安定剤、スラグ生成剤、粘結剤を含む被覆
剤を含有することを特徴とする高Ｃｒフェライト系耐熱
鋼用被覆アーク溶接棒。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP4060720A JP2543801B2 (ja) | 1992-03-17 | 1992-03-17 | 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆ア―ク溶接棒 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP4060720A JP2543801B2 (ja) | 1992-03-17 | 1992-03-17 | 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆ア―ク溶接棒 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH05261589A true JPH05261589A (ja) | 1993-10-12 |
| JP2543801B2 JP2543801B2 (ja) | 1996-10-16 |
Family
ID=13150402
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP4060720A Expired - Lifetime JP2543801B2 (ja) | 1992-03-17 | 1992-03-17 | 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆ア―ク溶接棒 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2543801B2 (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPH09122972A (ja) * | 1995-10-30 | 1997-05-13 | Nippon Steel Corp | 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒 |
| KR20180089310A (ko) * | 2017-01-31 | 2018-08-08 | 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 | 피복 아크 용접봉 |
| CN112975195A (zh) * | 2021-02-09 | 2021-06-18 | 天津市金桥焊材集团股份有限公司 | 一种600MPa级耐火耐候钢焊条 |
Citations (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPH01215491A (ja) * | 1988-02-24 | 1989-08-29 | Nkk Corp | Ｃｒ−Ｍｏ系低合金鋼用被覆アーク溶接棒 |
| JPH01215490A (ja) * | 1988-02-24 | 1989-08-29 | Nkk Corp | Ｃｒ−Ｍｏ系低合金鋼用溶接ワイヤ |
-
1992
- 1992-03-17 JP JP4060720A patent/JP2543801B2/ja not_active Expired - Lifetime
Patent Citations (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPH01215491A (ja) * | 1988-02-24 | 1989-08-29 | Nkk Corp | Ｃｒ−Ｍｏ系低合金鋼用被覆アーク溶接棒 |
| JPH01215490A (ja) * | 1988-02-24 | 1989-08-29 | Nkk Corp | Ｃｒ−Ｍｏ系低合金鋼用溶接ワイヤ |
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPH09122972A (ja) * | 1995-10-30 | 1997-05-13 | Nippon Steel Corp | 高Ｃｒフェライト系耐熱鋼用被覆アーク溶接棒 |
| KR20180089310A (ko) * | 2017-01-31 | 2018-08-08 | 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 | 피복 아크 용접봉 |
| JP2018122329A (ja) * | 2017-01-31 | 2018-08-09 | 株式会社神戸製鋼所 | 被覆アーク溶接棒 |
| CN112975195A (zh) * | 2021-02-09 | 2021-06-18 | 天津市金桥焊材集团股份有限公司 | 一种600MPa级耐火耐候钢焊条 |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP2543801B2 (ja) | 1996-10-16 |
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